財務のご相談に来られるお客様の大多数は、新しいビジネスプランに取り組むための

資金調達を望んでおられます。

これまで多くの新規ビジネスに財務面で関わらせていただきましたが、

1年程度で一気に年商数億円の規模にスケールアップする事業もあれば、

中々立ち上がらない事業もあります。

これらの違いを財務面から検証してみます。

 

比較的スケールアップの早い事業は、「キャッシュの回りが良い」、もしくは

「利益率が高い」という共通点があります。

創業初年度で3億円の売上高を計上した企業の取引条件は、売上金が末締め翌月末回収、

外注費の支払いが20日締め翌々月5日となっています。

支払日を入金日の5日後に設定することで、支払いを気にすることなく売上を伸ばすことが

できます。

在庫も持たないビジネスですので、資金が在庫に寝ることもありません。

 

また、新規事業としてネット販売に取り組み、初年度で1億円の売上高を計上した企業の場合は、

まず、現金で仕入を行い、仕入れた商品を平均1か月弱で販売し、販売後1か月弱で代金を

回収するという流れです。

仕入から代金の回収まで、約2か月弱の期間を要しますが、粗利益率が80%と高いため、

仕入から回収までの1サイクル毎に、(再投資)に回せる資金がどんどん膨らみます。

 

逆に立ち上がりの遅いビジネスの特徴は、受注から納品までの仕掛かり時間が長い、

仕入から代金回収までの期間が長い、利益率が低い、といった点が挙げられます。

いくら営業力があっても、資金がボトルネックとなって、スケールアップの速度が遅くなります。

 

新規事業はリスクが高いため、金融機関の融資姿勢は消極的です。

多くの融資は望めませんので、調達できる金額の範囲内で事業を軌道に乗せることが

極めて重要になります。

創業を含め、これから新規事業に取り組まれる方にとって、そのビジネスが軌道に乗るまでに、

一体どれぐらいの資金が必要になるかを、正確に見極めることが重要です。

その事業は、(銀行借入を含む)自身の資金力で軌道に乗せられるものかどうかを、

慎重に検討しましょう。

 

新規事業が上手く行かない要因として、営業力の不足がよく挙げられますが、

「思った以上に資金が必要なビジネスだった・・・」という資金の見込み違いが

案外多いように思います。

税務に付加して、金融機関対応と財務に対する強みを有することを宣言する当事務所には、

様々な相談が寄せられます。

前回に続いて、一部をご紹介させていただきます。

 

Q13:

「売上が安定しない。いつも不安がつきまとう。」

 

A13:

「売上が安定しない。いつも不安がつきまとう。」創業当初から順調に業績を伸ばされ、

初年度から2億円近い売上(税引き前利益は700万円超です。)を計上された社長様からの

ご相談です。

極めて順調な立ち上がりですが、300万円の資本金と、創業融資700万円、売上の割には

小資本とも言えます。

 

○「再来月の売上が読めない。万が一、売上が急激に減少すれば倒産するのではないか?

日々不安だ。」とおっしゃっておられます。

 

・売掛金の回収サイトを、買掛金の支払いサイトよりも早く設定することで、増加の運転資金を

伴わない成長を実現されています。

・月末の現預金残高は多いように見えますが、月中は極小になっています。不安なはずです。

 

○近未来の資金繰りシミュレーションを当事務所で実施しました。

※この「近未来の資金繰りシミュレーション」については、随時対応させていただきます。

ご相談ください。社長様の安心材料になります。または、問題点が確認できます。

 

・最悪な状況、売上高が前年比で通年20%ダウン(社長様コメント)した時の

近未来の資金繰り状況は?

 

(結果)

赤字転落しますが、一年以内に資金繰りが切れることはない。

・粗利益率が2%上がった(当事務所提示)時の資金繰り状況は?

(結果)

社長様の想定以上に資金繰り・利益が増えることの気付き。

・当事務所より、資金調達計画を提示して、即刻資金調達できる(可能性大)旨を伝えて、

この資金調達計画を資金繰り計画に織り込みます。

(結果)

社長様の不安の払しょくと、成長への確信を持たれる。

・新規の雇用計画、固定費増を織り込んで、近未来の資金繰り計画を立案しました。

(結果)

売上10%増、粗利益率2%増、固定費1,000万円増…、資金調達3,000万円

 

○資金調達と継続的なフォローが重要です。

・上記計画に対する進捗管理を毎月行います。計画にずれがあれば、都度社長様と対応を

協議します。

・必要な資金調達に関しては、当事務所が窓口になって適時行います。

・資金のダムを作って、そのダムの高さを維持し続けています。常に、月商の数か月分の資金を

有しています。

・トラブルで、受注が一定期間滞った期間がありましたが、資金余力があったために、慌てずに

対応することができました。

 

◎当事務所は、上記の様なサービスをご提供できます。

税務に付加して、金融機関対応を含む財務の機能を提供する

「資金繰り円滑化サービス=財務部長の代行業務」です。

 

Q14:

「資金繰りに時間が取られる。いつも気を使っている。」

A14:

余裕資金をほとんど持ち合わせていないために、月中の資金繰りを行っておられます。

10日の入金を15日の支払いに…、日々の資金残高を気にしながらやりくりされておられます。

当所で診断した結果、借入れ余力は十分にあります。

 

○借入れ余力があるにもかかわらず、手持ち資金を極小にして、その結果資金繰りに時間と

神経を使っておられる社長様は少なくありません。

・借入れに対する過度の嫌悪感がそうさせているのでしょうか?

・資金繰りを行うことも社長の仕事だと考えておられるのでしょうか?

・金利のコストが、社長の手間暇、社長が神経をすり減らすことより高いと考えて

おられるのでしょうか?

・何かが起これば、最悪倒産の危機を迎えます。このリスクをどう回避するのでしょうか?

 

◎月商の2か月分程度の資金を、通年を通して持ち続ける資金計画を作成し、

運転資金の調達、継続管理、借換えの継続実施を当事務所が行っています。

今では、「常に資金繰りを気にしながら生きてきた…早くこうすべきだった。」(社長様)と

おっしゃっておられます。

平成28年度第1四半期分(4月~6月)、セーフティネット保証5号の指定業種が

発表されました。

セーフティネット保証5号とは、業況の悪化している業種を営む中小企業に対して、

信用保証協会の保証限度額の別枠化等を行う制度です。

信用保証協会の一般保証制度は、無担保で8,000万円以内ですが、

セーフティネット保証制度は、さらに別枠で8,000万円の保証枠が設けられます。

※あくまでも利用可能な限度額であり必ず8,000万円の保証がもらえるということでは

ありません。

 

◆セーフティネット保証の利用要件は以下になります。

1.ご自身の運営する事業が指定業種に含まれていること。

※以下経済産業省のHPにてご確認願います。

http://www.meti.go.jp/press/2015/03/20160322006/20160322006-b.pdf

2.かつ、最近3か月の売上高が、前年同期比5%以上減少していること。

 

通常の融資審査は業績が悪いと通りませんが、本制度は業績が悪くなければ利用することが

出来ない制度です。

また通常の金利は、業績が悪くなるほど高くなりますが、本制度は低い金利で利用することが

出来ます。

業績が悪くなることを歓迎したくはありませんが、そうなった場合には利用したい制度です。

 

・足元の売上は減少しているが通期の売上高は増加見込みである。

・複数の事業を営んでいる場合はどうなるのか。etc

 

本制度の利用についてご質問やご相談があれば、お気軽にお問い合わせください。

指定業種は3か月毎に変更されます。

また、いつの時点の売上高を昨年と比較するかで利用の可否が変わりますので、

タイミングを逃さないよう気を付けてください。

税務に付加して、金融機関対応と財務に対する強みを有することを宣言する当事務所には、

様々な相談が寄せられます。

3回前に続いて、一部をご紹介させていただきます。

 

Q11:

「新しい投資計画書を示しながら新規の融資を打診したが、計画書の内容を確認するまでもなく、

『融資は難しいです。 (銀行担当者)』」と言われた。

 

A11:

精魂込めて作り上げた投資計画書を確認してもらえない段階で、融資を断られたことに納得が

いかない様子の相談者様でしたが

…金融機関は、新規の融資を検討する時、まず、直近の決算書(及び試算表)を確認します。

この決算書と足元の推移が健全であると判断した時に、新規融資の検討を開始します。

健全でなければ、新規融資の検討自体を行いません。

 

○直近の決算書(及び試算表)の確認方法は…

1.直近の決算書から簡易キャッシュフロー(税引き後利益+減価償却費)を確認します。

この簡易キャッシュフローの金額が、現時点の借入総額の10分の1以上であることが最低条件です。

2.債務超過でないことが必要です。

※1又は2が突出して優良な時、または、提供できる担保がある場合など、

上記の限りではありません。上記はあくまでも簡易的な診断です。

実際には、突っ込んだ財務分析を行います。

 

○1と2を満たす時、現時点においては健全である…と判断されて、新規融資の検討、

投資計画書の確認を始めます。

直近の決算書の確認で融資できないとなれば、当然投資計画書の確認は行いません。

 

◎当事務所にて、診断を行った結果、新規融資を受けられる可能性は極めて低いことが

わかりました。

相談者様に対しては、融資を受けられない理由、どうなれば融資を受けられるのかを

ご説明して納得いただきました。

 

Q12:

「リスケジュールの交渉中だが、直近に借入れた銀行分だけは、返済額も少ないので

返済を続けようと考えていたが、他の金融機関が強硬に反対してきた。ダメなのか?」

 

A12:

数カ月前に融資を受けたばかりの金融機関にリスケジュールの相談をしたら、厳しい口調で

叱責されたそうです。

であるならば、その金融機関に対しては返済を続けて、他の金融機関にはリスケジュールを

お願いしようと他の金融機関に相談したら、他の金融機関に断られた、との相談です。

 

○融資の借入れを行ってすぐに返済猶予を求めることは、そもそも返済できないことがわかって

いたのに借入れを行ったのではないか、との疑念を生みます。

返済できないことがわかっていて借入れを起こす行為は、信義に反します。

程度加減によっては法律に違反する犯罪行為になります。

新規借り入れ直後の返済猶予は認められないケースがあります。

 

○金融機関に対して返済猶予などの金融支援を依頼する時は、衡平でなければならないとする

ルール「衡平性の原則※」(=すべての金融機関に対して衡平に金融支援を受ける。)があります。

ある金融機関にのみ返済を続ける、このような例外は原則成立しません。

この場合では、返済猶予依頼先の金融機関の同意が得られません。

このままでは、すべての借入れに対してリスケジュールができません。※一部例外があります。

 

◎当事務所にて、状況の確認を行った結果、当該事象は、直近借入後の予見不可能な

緊急事態による急激な業績の悪化が原因であり、借入れ時においては予見が難しかった旨を、

対象金融機関に丁寧に説明しました。

一部担保(実質価値は小さい)を追加で提供して了解を得ました。

(これも厳密に言うと「衡平性の原則」から外れますが。)

借入先の全金融機関からリスケジュールの承諾を得ることができました。
当事務所が、モニタリングを継続し、会社様のサポートと金融機関への窓口業務を担っています。

融資が通るケースと通らないケースの違いはどこにあるのでしょうか。

先日あった大変めずらしいご相談を紹介します。

飲食業で独立を考えているAさんは、日本政策金融公庫に融資を申し込み、700万円の融資を

受けました。

しかし、出店を予定していた物件が獲得出来なかったため、融資金を一旦全額返済しました。

それから数か月して新たな物件が見つかったため、再度融資を申し込んだところ、

今度は融資を断られたそうです。

2回目の申込額が1,000万円に増えてはいますが、それでも数か月前には融資に通った人物が、

なぜ今回は通らなかったのでしょうか。

融資審査が通る要件について考えてみます。

融資審査は、ポジティブな要因がネガティブな要因を上回った時に「可決」となります。

Aさんの場合を考えます。

 

◆1回目の申し込み

<ポジティブ要因>

・飲食業のキャリアが長い。

・人気の高いショッピングセンターへの出店である。

<ネガティブ要因>

・自己資金が80万円と少ない。

・自己資金の額に比べて借入申込額が700万円と大きい。

 

◆2回目の申し込み

<ポジティブ要因>

・飲食業のキャリアが長い。

<ネガティブ要因>

・自己資金が80万円と少ない。

・自己資金の額に比べて借入申込額が1,000万円と大きい。

 

Aさんには、元々「自己資金が少ない」という大きなネガティブ要因があります。

1回目の申し込み時は、「人気の高いショッピングセンターへの出店」というポジティブな

要因があり、総合的にポジティブな要因が上回りました。

しかし、2回目の申し込み時は、立地条件が前回よりも劣っていたため加点要素がなく、

かつ申し込み金額も増加したため、ネガティブな要因の方が大きく上回ってしまいました。

 

天秤に乗せたバスケットに、ポジティブな材料とネガティブな材料をそれぞれ入れていき、

最終的にポジティブな材料が重くなれば「可決」になる。という考え方は、創業融資だけに

限ったものではありません。

これから融資にチャレンジしようと考えている方は、この考え方を参考にしてください。

創業(開業)初期には、創業赤字が発生します。

創業日当日は赤字でしょう。創業月も赤字でしょう。

赤字期間は資金が沈み続けます。

資金が底をつくまでに、黒字に転換しなければ、事業は継続できません。

(※財務的な黒字と資金の黒字とは、厳密にはイコールではありません。

ここでは資金黒字、資金赤字を指します。)

 

○では、いつ黒字になるのでしょうか?

○何を基準に赤字・黒字を判断するのでしょうか?

 

■創業に必要な最低限の「事業パッケージ」を決めることから始めましょう。

〔例〕

・従業員は2名必要…人件費

・事務所は10坪必要…保証金や備品

・自身の費用は月にいくら必要…役員報酬(生活費)

・その他費用は…

等々

必要な初期投資とランニング費用が算出されます。

必要資金と月次の損益分岐点がわかります。

自分自身が設計した「事業パッケージ」に沿って、事業の黒字ラインが決まります。

 

■創業事業計画は、「事業パッケージ」の設計に力点を置いてください。この、創業に必要な

最低限の「事業パッケージ」、これは創業の成否を決める大きな要因になります。

1.この「事業パッケージ」が大きすぎて、黒字化するまで資金が持たない、または、

実力不足でいつまでも黒字化できない。

2.この「事業パッケージ」が小さすぎて、事業が立ち上がらない。

前者が多いのですが、案外後者も少なくありません。

 

○月商400万円が月次損益分岐点売上高の飲食店、十分な経験がなければ、決して容易な

売上高ではありません。相応のメニュー・立地・マネージメントが必要になります。

初めて飲食店を開業される方には、重すぎる「事業パッケージ」です。

初めて飲食店を開業されるのなら、半分以下の損益分岐点を想定される方が

よいでしょう。(上記1)

 

○スタッフを3人雇って開業する○○コンサルティング、相応の事務所を構えて、広告にも費用を

かける、月次損益分岐点売上高は350万円になります。

相応の実績や経験がなければ、損益分岐点売上高としては小さくない計画です。

スタッフを3人雇うので、当初から受注が必要、故に、広告にも大きな費用を投入する、

このような論理で費用は膨らみます。

スタッフ1名から始めることができれば、損益分岐点売上高は、100万円程度引き下げることが

できます。(上記1)

 

○逆に、事務所も置かず、人も雇わず、1円創業・一人開業の●●コンサルタント、

営業費用もかけずに足で稼ぐ、月次の損益分岐点売上高は50万円になります。

スタート時はこれでよいとする考え方もありますが、相応の顧客を獲得することもできず、

鳴かず飛ばずで終わることも少なくありません。

お金をかけなければ良い、こんな単純な話でもありません。(上記2)

 

■「計画通りに進まない」この達観が必要です。

売上の主体は他人・世間です。自分の思い通りに行かないことが多いものです。

一方、費用や投資は、自分自身が主体者ですので思い通りに進みます。

創業計画の内、費用や投資は計画通りに執行されますが、売上は予定通りには上がらない、

これがそもそも計画と言うものです。そんなものです。この達観が必要です。

 

思い通りに行かない計画を軌道に乗せるためには、努力を継続する時間を稼ぐしか

他に方法はありません。粘ることです。粘るためには、当然資金が必要になります。

実力以上の大きな損益分岐点売上高を自らが設定して、粘る時間を敢えて短くする必要は

ありません。また、創業初期には、この粘る時間を少しでも稼ぐために、積極的に資金調達に

動くべきです。

 

■創業時には…

○自分自身にとって最適な「事業パッケージ」を設計してください。

○「計画通りに進まない」この達観を持って、「計画通りに進まない」ことに備えてください。

備えるために資金調達に励んでください。

 

創業融資サポートの詳細についてはこちら>>

http://www.kagawa-keiri.com/230/

 

ある関与先様との雑談です。毎月のお金のやりくりに結構な神経を使っているとのことです。

多忙な毎日において、「10日の入金を15日の支払いに充てて・・・足りない分の支払いは

月末に回して・・・」といった事を考えるのが面倒くさいとおっしゃいます。

 

○以下が同社のバランスシートの一部です。年商は約1億円です。

現預金   700万円 / 借入金 2,000万円

売掛金 1,200万円 / 買掛金   600万円

 

毎月末日の現預金残高は700万円程度残っていますので、根本的に資金繰りが回っていない

訳ではありません。ただ、月初から月中にかけて支払いが先行しますので、

月中の資金が一時的にタイトになるようです。財務内容は健全で調達余力のある会社です。

なぜ借入を活用しないのか不思議に思ったため、率直にお聞きしたところ、

社長は驚いた顔をして、「資金繰りが回っているのに借りる必要がなぜあるのか?」と

おっしゃいました。

社長のお考えは、「借入をしたら返さなくてはならないし金利も発生する。やりくりをすれば

資金は回るのだし、わざわざ借入をする必要はない。」とのことです。

確かに正しいお考えですが、違った考え方もできます。

「金利は発生するが、自己資金で返す必要のない借入なので借りておいた方が良い。」と

いう考え方です。

 

日繰りから解放されるために2,000万円を借りた場合のバランスシートを想像してみます。

 

○2,000万円を借りた場合のバランスシート

現預金 2,700万円 / 借入金 4,000万円

売掛金 1,200万円 / 買掛金   600万円

 

借入金残高が2,000万円増えていますが、同じく現預金も2,000万円増えていますので、

実質的な借入金の増加額は0円です。翌月の月中は一時的に現預金が減少し、

「現預金<借入金」という状態になりますが、月末には「現預金=借入金(実質無借金)」の

状態に戻ります。

「自己資金で返す必要がない。」というのは、約定返済毎に現預金と借入金が同時に減って

いくためです。単に借りたお金から返しているだけですので、約定返済が進んでも

「現預金=借入金(実質無借金)」の状態はずっと継続します。

いつでも一括返済できる現預金を有していますので、返済をそこまで意識する必要はありません。

もちろん金利は必要です。

仮に2,000万円を2%で調達したとして、年間40万円、毎月3万円強の金利です。

但し、社長が日繰りから解放され、より生産性の高い経営に専念できることを考えると、

決して高くはないはずです。

 

関与先様も、「借入は出来るだけしない方が良いという固定観念があり、日繰りを行うのが

当たりまえの日常になっていた。」とおっしゃっていました。

 

今では、キャッシュポジションを高く取る経営を実践し、

日繰りから解放されて経営に専念しておられます。

■創業時には、適切と考える固定費を算出して、その固定費を稼ぐための損益分岐点売上高を

見つけてください。粗利益率も想定してください。

・適切と考える固定費

・想定した粗利益率

・必要な損益分岐点売上高

まずは、固定費を無駄に膨らませない、粗利益率を安易に落とさないで、必要な売上高を

確保することに集中しましょう。

そして、この損益分岐点売上高を確保できるまでの赤字期間をしのげるだけの資金調達を

継続して行いましょう。

さらに、この期間の資金繰り計画を立てて管理してください。

 

■ここからが本題ですが…

○短期間で破たんする創業者の特徴は、

・上記の計画を持っていない

・上記の計画を立案すると、整合性がそもそも取れていない

(計画がないから気付かないが、上手く行っても破たんしていた。)

・損益分岐点売上高を安易に達成できると思い込む

・適切と考える固定費が高すぎるために、損益分岐点売上高が実力に対して高すぎる

創業融資の計画等で、金融機関が確認したいのは、上記の事柄です。

 

○従って、創業融資の計画書では、以下の事を織り込みます。

・損益分岐点売上高の実現可能性の確認(実現できる蓋然性が高いこと)

・計画上の整合性の確認

・計画が遅れた時の備え(資金余力)

創業計画は、利益計画よりも、資金繰り計画を立案すべきです。

 

■ここからがさらに本題ですが…

○そもそも計画通りに事業が立ち上がるのか?

・もちろん計画次第ですが、計画通りに進まないのが事業です。計画通りに立ち上がらないことを

想定内として事業を開始すべきです。

・計画通りに立ち上がらないことへの備えは、資金的な余力を持つことしかありません。

・もちろん、永遠に立ち上がらない事業なら早めに手仕舞いすべきですが、事業に自信が

あれば粘るべきです。そのためには資金が必要です。

 

○過度に保守的になって、必要な投資や経費を掛けられない創業者も事業を立ち上げられません。

・事業に応じた投資や経費は投入しないと事業としての体を成しません。これができないために

立ち上がらない事業もあります。

○計画は計画、適時見直しも必要です。

・やってみないとわからない、これも事業の本質です。

・当初の計画にとらわれ過ぎず、適時修正を加える判断も重要です。

 

■いよいよ本題ですが…

「現実的には、ある程度先を考えておきながら適時対応していくことになるだろう」

「実現された戦略は最初から明確に意図したものではなく、行動の一つひとつが集積され、

その都度学習する過程で戦略の一貫性やパターンが形成される」

〔『戦略サファリ』(ヘンリー・ミンツバーグ氏著・齋藤嘉則訳)より引用〕

※ヘンリー・ミンツバーグ氏は、カナダのマギル大学経営大学院のクレゴーン記念教授、

およびINSEADの組織理論学の教授。古典的な経営理論を批判する異色の経営学者、

欧米ではピーター・ドラッカーと並び称される経営学の大家です。

 

計画がなければ始められません。進むべき大体の方向、道しるべが必要です。

また、どれぐらいのペースで進めば、主に資金が足りるのか、一つの基準としても計画は有効です。

一方、近未来を完全に予見できる程の知見を持ち合わせている人は稀有です。

また、日々の経験と成長は、新しい気付きをもたらします。当初計画へ固持し過ぎると、

新しい気付きを反映できなくなります。

計画の必要性を認識しながらも、当初の計画にとらわれ過ぎない経営が必要です。

ヘンリー・ミンツバーグ教授のメッセージを、再度ご確認ください。

 

「現実的には、ある程度先を考えておきながら適時対応していくことになるだろう」

「実現された戦略は最初から明確に意図したものではなく、行動の一つひとつが集積され、

その都度学習する過程で戦略の一貫性やパターンが形成される」

 

創業融資サポートの詳細についてはこちら>>

http://www.kagawa-keiri.com/230/

マイナス金利政策の導入に伴い、貸出金利引き下げの動きが見られます。

借入の活用を考えている経営者様も多いと思いますが、借入による調達と資本による調達の

効果的な使い分けについて解説します。

会社の総資本は、借入(他人資本)と資本(自己資本)から成り立っています。

費用の観点から見ると、借入は固定的な利息の支払いが発生し、資本は業績変動により

配当が発生します。

 

■ 総資本が1,000万円の下記2社を比較します。

・A社は、総資本の100%が資本です。借入はありません。

・B社は、資本が200万円で借入が800万円です。 (借入金の金利は3%)

 

両社ともに80万円の営業利益を出した場合、A社の税引き前利益は80万円となりますが、

B社は約24万円の利息が発生しますので、税引き前利益は56万円となります。

しかし、資本で稼いだ税引き前利益の割合で考えると、A社の資本利益率は8%であるのに

対して、B社の資本利益率は28%となります。B社の方がA社よりも資本効率が20%高く

なっています。

このことから、借入を活用した方が、自己資本だけで事業を行うよりも、資本の効率が高くなる

ことが分かります。

これを財務レバレッジと呼んでいます。

 

ただ、逆に営業利益が20万円に減少した場合、A社の税引き前利益は20万円と変わりませんが、

B社は、利息の支払い約24万円により、税引き前利益が▲4万円となります。

この場合の資本利益率は、A社が2%であるのに対して、B社は▲2%です。

財務レバレッジは、プラスだけでなくマイナスにも大きく作用することを忘れてはいけません。

利益が確実に獲得できる状況であれば、借入を積極的に活用することで、効率よく大きな利益を

獲得できます。

一方、利益があまり取れない状況であれば、反対に、借入利息が利益を圧迫してしまいます。

 

自社が成長段階にある場合は、借入の積極的な活用を検討してみる価値がありそうです。

しかし、新規事業への取組等、赤字が見込まれる場合は、借入よりも資本の活用が適しています。

日本政策金融公庫が取り扱う資本性ローン等にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

税務に付加して、金融機関対応と財務に対する強みを有することを宣言する当事務所には、

様々な相談が寄せられます。

前回に続いて、一部をご紹介させていただきます。

 

Q9:

『融資依頼を行ったら銀行の担当者に「役員報酬が少ない。」

と言われた。役員報酬が少ないと借入れが受けられないのか?』(相談者様)

A9:

融資依頼をするために決算書を提示した時に、出入りの銀行の担当者が

「役員報酬が少ないですね。」と言ったそうです。

併せて、新規の融資に難色を示されたので、相談者様は役員報酬が少ないと借入れが

受けられないのか?との疑問を持たれたようです。

○金融機関が新規の融資を検討する時には、まず現状の財務の健全性を確認します。

・簡易キャッシュフロー(税引き後利益+減価償却費)を確認します。

・この簡易キャッシュフローの要素となる税引き後利益を確認するために、販売管理費も

確認します。

・この時、役員報酬が過少であれば、本来はもっと役員報酬が必要となるため、

税引き後利益が少なくなるのではないか? と考えたと推測できます。

・金融機関が考える役員報酬額に置き換えた時、簡易キャッシュフローが極小であったため、

新規融資に難色を示されたようです。

○役員報酬の多い・少ないではなく、実態の税引き後利益がポイントです。

※融資審査時の財務診断は他にもあります。簡易キャッシュフローの診断はほんの一部です。

◎当事務所にて、診断を行った結果、奥様の所得が給与に計上されており、

社長様の役員報酬は過少であっても、世帯所得は常識の範囲内である、

役員報酬額の是正(税引き後利益の減額補正)は必要ない旨を、銀行担当者に説明することで、

理解を得ました。誤解を解きました。

金融機関との折衝は、当事務所が行いました。必要な金額の新規融資を調達できました。

 

Q10:

「雨が降ってきたから傘(お金)は貸さない、晴れている時は傘(お金)を貸すと言う」銀行とは

どんなところだ?

A10:

6か月前に融資を受けませんかとの提案をいただいたそうです。

その時は断ったが、その後、主要な取引先との取引がなくなって、業績が悪化して

赤字に転落しています。(試算表ベースで大赤字です。)

同じ銀行に融資依頼を行うも、「融資できない(銀行担当者)」との回答だったそうです。

○金融機関は総じて、「雨が降っている時には傘を貸しません。晴れたら傘を貸しに来ます。」

金融機関にあるのはすべて「日傘」ですから当然です。

金融機関にある傘はすべて「日傘」であって「雨傘」ではないことを理解してください。

金融機関対応はこの趨勢を理解して行わないと本事案の様な間違えを起こします。

※「雨傘」は、国策としての制度融資や制度保証として時々貸し出される例外です。

 

◎当事務所にて財務診断を行いましたが、足元の業績の悪化が顕著で、

新規借り入れの返済原資となるキャッシュフローの見込みが立ちません。

新規の借入れは無理です。

・経営改善計画書を作成して既存借入れのリスケジュール(返済金額0円)を即座に実行しました。

・資金繰りシミュレーションを継続的に行いながら、資金ショートの回避と収支バランスの改善に、

財務部長として継続してご支援させていただいています。

当事務所のサービス「資金繰り円滑化サービス(財務部長の代行業務)」を導入いただいています。

社長様の経営改善を 資金繰り・財務面で継続的にサポートできています。

収支改善の目途が付けばいち早く、資金調達にもチャレンジします。

(この時は、リスケジュールを同時に解消します。)