借入が必要になりそうだと分かっていても、日々の業務に忙殺
されて後回しになり、いよいよ資金が切れそうなタイミングで
金融機関に駆け込む・・・ご経験のある社長様も多いのではな
いでしょうか。

本来、資金調達業務は、資金が不足した時だけ行う業務ではあ
りません。どれぐらいの資金が、何のために、いつ頃必要なの
かを事前に把握し、どれぐらいの資金を、どこから、どのよう
にして調達するかを戦略的に進めていく業務です。財務業務を
戦略的に進めるためには、財務に関する知識や経験が必要です。
まずは貴社の財務レベルをチェックしてみましょう。

□今期、どれくらいの資金調達が必要か分かっている。
□公庫、信金、地銀、メガバンク、ベンチャーキャピタル・・・
各金融機関の特性を熟知しており、どの金融機関から調達す
るのが最善か分かっている。
□短期借入、長期借入、社債、リース、出資・・・借入の種類
と特徴を熟知しており、どの方法で調達するのが最善か分か
っている。
□金融機関の考え方を熟知しており、金融機関が評価するポイ
ントを分かっている。
□融資を受けやすくするために必要な資料が何か分かっている。

いかがでしょうか。チェックの数が少ない場合は財務レベルに
改善の余地があります。業績が落ち込めば、途端に資金調達が
難しくなる可能性がありますので、次にご提案する財務戦略を
実践してみてはどうでしょうか。

■ 小規模企業が実践すべき財務業務

1.調達目標額を決める
仮に業績が落ち込んだ時、金融機関は助けになりません。自分
の身は自分で守らなくてはならないため、有事に備えて、「借
りられるだけ借りておく」ことを目標にしてはいかがでしょう
か。

2.取引金融機関(調達先)を選定する
小規模企業の調達先の選定基準は、「最も金利の低い金融機関
ではなく、最も多く貸してくれる金融機関」です。銀行の知名
度や、多少の金利差に惑わされず、積極的に融資をしてくれる
金融機関を選びましょう。年商3億円未満の企業の場合は、信
用金庫(組合)→地銀→メガバンクの順であたるのがセオリー
です。

3.金融機関と良好な関係を構築する
最大限の調達を行うためには、金融機関を味方につけることが
必須です。金融機関が好むのは、ディスクローズをしっかりと
行える企業です。試算表や資金繰り表をリアルタイムで作成し、
定期的に提出することで、金融機関からの信頼は大きく高まり
ます。

この程度の財務業務を実践するだけでも金融機関の反応は大き
く変わるはずです。資金調達は一発勝負ではありません。お金
を借りる時だけ対処するのではなく、戦略を持ち、日頃から資
金調達に備えておくと安心です。

前回号の続きです。
〔※ビジネスモデル俯瞰図とは、ビジネス全体の構造や流れを
把握し、事業の構造や事業の特徴、損益構造などをわかりやす
く整理した図表のことを指します。〕

事業全体の活性化や事業立地の付加・転換など、事業自体をそ
の本質から見直そうとするときは、ビジネスの全体像を現した
ビジネスモデル俯瞰図を作ってみるとわかりやすいです。
ビジネスモデル俯瞰図を使って、事業の活性化を図りたいとき
の着眼点を整理いたします。

■着眼点23:中期経営計画を疑ってみる!

●未来は予見できない、これは紛れもない事実です。自社の具
体的な未来予想図は描けません。それでいいのです。

であるにも関わらず、現時点を基準にした高精度な将来計画を
作り、その計画に過度に執着することは、これから起こり得る
イノベーションの芽を摘んでしまいかねません。
事業全体の活性化や事業立地の付加・転換など、事業自体をそ
の本質から見直そうとするときは、今手元にある中期経営計画
を疑ってみることも重要です。

●多くの成功者が語る過去からの成功談はすべて後付けです。

1.人は、その未来を予見することはできません。変数が多す
ぎるからです。
2.人は、過去を整理することは得意です。寄り道部分を除い
て単純化して話します。
3.故に、(多くの成功者は)あたかも計画通り進んで来たか
のように見えます。
4.事実はそうではなく、あまたの寄り道・失敗を経て今があ
ります。

高精度に未来を予見しようとする行為は百害あって一利なしで
す。未来につながるレールは存在しません。

●中期経営計画を鵜呑みにしてはいけません。

3年後、5年後、10年後の自社の姿なんて『わかるはずない!
わからなくていい!いや、決めつけてはいけない!』と考えて
みてはいかがですか。
5か年経営計画の意味は、『今の延長線上ならこうなるとのシ
ミュレーションに過ぎない』との認識が必要です。
これを経営計画と錯覚してしまうとイノベーションは起きませ
ん。5か年経営計画と呼ばず、【現状の延長時の5か年シミュ
レーション】と呼ぶべきではないでしょうか。

※【現状の延長時の5か年シミュレーション】には相応の存在
意義があります。

●中期経営計画の位置付けは…

◆既存事業の部分は『現状の延長時の5か年シミュレーション』
と定義して、正確な執行を心掛けましょう。

◆新規事業の部分は『想像力を働かせながら、加減しながら取
り組むこと』と定義して、柔軟に進捗させましょう。
新規事業の部分を計画に落とし込んで・決め込んでその計画通
りに執行すると、投資が先行(経費が先行)して危機を招くこ
とになりかねません。

◎以下の決意で経営してください。
未来は予見できない!未来を決め込まず、想像力を働かせなが
ら今を必死に生きる!

・高校生の進路指導で、『あなたは将来何になりたい?』
・新卒の入社試験で、『あなたは当社でどんなことを実現したい?』
こんな愚問を投げるのは止めましょう。当時自分が何を考えて
いたかを思い起こして考えてみましょう。

先日、日本政策金融公庫の資本性ローン2,000万円の調達
をお手伝いしました。資本性ローンとは、日本政策金融公庫が
取り扱う5年から15年の期日一括返済型の借入ですが、負債
ではなく資本と見做してもらえる特別な借入です。財務内容の
改善に取り組む企業や、売上がすぐには立たない新規事業に取
り組む企業に適した借入です。

S社の事例をご紹介します。

【S社の概要】
直近売上高 約2億5,000万円
直近簡易CF(税引後利益+減価償却費) 約1,500万円
直近純資産 ▲500万円
直近有利子負債 約1億6,500万円

数年前に大口顧客から契約を解除されたため売上が半減し、大
幅赤字、債務超過に陥ってしまいました。

その後、経費の見直しを中心としたコストカットに取り組み、
直近決算では約1,500万円のキャッシュフローを確保でき
るまでに回復したものの、毎月160万円の返済を継続してい
るため、依然として資金繰りは厳しい状況です。

よって、社長自身で資金調達に動いていたようですが、やはり
債務超過を理由に新規融資は全て断られたとのことでした。

S社のように、足元の業績が回復しているにも関わらず、債務
超過が原因で新規資金調達に苦慮している場合は、再生型資本
性ローンの活用がおすすめです。S社は500万円の債務超過
に陥っていますが、仮に2,000万円を資本性ローンで調達
できれば、債務超過ではなく1,500万円の資本正とみなす
ことができます。

早速、経営改善計画書を作成し、日本政策金融公庫に打診をし
たところ、「資本性ローンが入った後、追加で支援をしてくれ
る金融機関があった方が審査を進めやすい。」とのアドバイス
をもらいました。

アドバイスのとおり、メインの金融機関に出向き、資本性ロー
ンを活用した経営改善計画を説明すると、「確約はできないが、
債務超過を解消すれば、新たな融資も検討可能である。」との
見解をいただき、さらに、公庫の担当者に電話を入れて支援の
意思を表明してくださいました。

結果、満額2,000万円を資本性ローンで調達でき、その後、
メインの金融機関からも1,000万円の追加融資を受けるこ
とができました。公庫の担当者は、「やはり民間金融機関の支
援姿勢を確認できたことが良かった。」とおっしゃっていまし
た。

足元の業績が回復しているにも関わらず、債務超過により資金
調達に苦慮している企業様は、資本性ローンの活用をおすすめ
します。是非、ご相談ください。

前回号の続きです。
〔※ビジネスモデル俯瞰図とは、ビジネス全体の構造や流れを
把握し、事業の構造や事業の特徴、損益構造などをわかりやす
く整理した図表のことを指します。〕

事業全体の活性化や事業立地の付加・転換など、事業自体をそ
の本質から見直そうとするときは、ビジネスの全体像を現した
ビジネスモデル俯瞰図を作ってみるとわかりやすいです。
ビジネスモデル俯瞰図を使って、事業の活性化を図りたいとき
の着眼点を整理いたします。

■着眼点22:ビジネスの業務フローを抜本的に組み替える!

●ITやAI、ロボット技術が飛躍的に進化しています。

1.コンテンツは、音声や動画で保存ができ適時廉価に利用で
きるようになりました。学習や教育分野においては、遠方まで
勉強会やセミナー、研修のために移動する必要がなくなってき
ました。プロの提供する優良なコンテンツが、自身のスマホや
パソコン画面に提供されています。時間や距離の制約を受けな
い環境が整備されています。自身の学習や社員教育の方法を抜
本的に見直しましょう。

2.多くの業務がRPA(=ロボティック・プロセス・オートメ
ーション)により、現時点でも半自動化できます。人の手を必
要としない業務の領域が、順次拡大されることでしょう。単純
な入力作業、繰り返し業務は概ね置き換えができます。単純事
務業務は間もなく消滅します。

3.レジの自動化、無人レジを見かけるようになりました。無
人店舗の実験も始まりました。近々実用化されることでしょう。
レジ係という仕事は間もなく消滅します。さらに、店舗運営者
の仕事も激減することでしょう。

4.自動運転技術の実証実験が継続されています。5Gのイン
フラも整い、いよいよ本格始動です。耐久年数の長い自動車が
主役のため、完全切り替えには時間がかかりそうですが、長距
離移動の高速道路や、特定エリアに限定した限定稼働は時間の
問題でしょう。車両の運転という業務も激減しそうです。

5.AIを使った調理器具は、効率的にプロの調理技術を模倣し
ます。短時間で美味しい料理を確実に提供してくれます。料理
人という仕事も激減するはずです。

6.医療や法務などの高度な翻訳分野においても、AI自動翻訳
の精度がプロ翻訳家の精度に近づいています。プロの翻訳家を
必要としない時代はすぐそこまできています。プロの翻訳家と
いう仕事は近々消滅します。
…等々

我々は今、技術革新の真っただ中に置かれています。効率的に
勉強して、新しい技術を活用した新しい会社運営のスタイルを
模索していかねばなりません。また、労働力としての人手不足
は近々解消し、労働力は余ります。そうなります。

令和2年1月~3月のセーフティネット保証5号の指定業種が
発表されました。セーフティネット保証5号とは、業況の悪化
している中小企業が利用できる保証制度です。指定業種に含ま
れていなければ利用できない制度ですので、まずはご自身の業
種が指定業種に含まれているか、下記中小企業庁のホームペー
ジにてご確認ください。

◆指定業種一覧
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2019/1912205gou.pdf

ご自身の業種が指定業種に含まれていたら、直近3ヶ月間の売
上高を前年同期間の売上高と比較します。売上高が5%以上減
少していれば対象となりますので、セーフティネット保証制度
に申し込むことが可能です。(指定業種かつ売上減少が要件で
す。)

具体的な申し込みの流れは、まず市区町村長の認定を受け、そ
の後、銀行等金融機関に認定書を持ち込みます。認定の受け方
については中小企業庁のホームページでご確認ください。

◆認定の受け方(中小企業庁HPより引用)
対象となる中小企業の方は、法人の場合は登記上の住所地又は
事業実体のある事業所の所在地、個人事業主の方は事業実体の
ある事業所の所在地の市町村(または特別区)の商工担当課等
の窓口に認定申請書2通を提出(その事実を証明する書面等が
あれば添付)し、認定を受け、希望の金融機関または所在地の
信用保証協会に認定書を持参のうえ、保証付き融資を申し込む
ことが必要です。(引用終わり)

信用保証協会では、中小企業が利用できる保証限度額が無担保
で8,000万円と定められています。あくまでも利用可能な枠の
ことであり、必ず8,000万円の保証を受けられるということで
はありませんが、セーフティネット保証制度は、さらに別枠で
8,000万円の保証枠が設けられます。

通常の融資審査は業績が悪いと通りませんが、本制度は業績が
悪くなければ利用することができません。また、通常の金利は、
業績が悪くなればなるほど高くなりますが、本制度は低い金利
で利用することができます。業績が悪くなることを歓迎したく
はありませんが、そうなった場合には利用したい制度です。

「足元の売上高が一時的に減少しているだけでも利用できるか
?」「売上高は落ちているが利益が出ている場合は?」「売上
高が伸びている事業と落ちている事業がある場合は?」等、本
制度の利用についてご質問やご相談があれば、お気軽にお問合
せください。

前回号の続きです。
〔※ビジネスモデル俯瞰図とは、ビジネス全体の構造や流れを
把握し、事業の構造や事業の特徴、損益構造などをわかりやす
く整理した図表のことを指します。〕

事業全体の活性化や事業立地の付加・転換など、事業自体をそ
の本質から見直そうとするときは、ビジネスの全体像を現した
ビジネスモデル俯瞰図を作ってみるとわかりやすいです。
ビジネスモデル俯瞰図を使って、事業の活性化を図りたいとき
の着眼点を整理いたします。

■着眼点21:画像や紙の媒体から動画(音声)媒体への急激
なパラダイムシフトへの対応を!

画像や紙の媒体から動画(音声)媒体への急激なパラダイムシ
フトが始まっています。ホームページ・ブログやツイッターが
ユーチューブに、紙のカタログが動画のカタログに、書籍がリ
スニングブックに、社員やアルバイトの採用告知がホームペー
ジ上の画像から動画の案内に、教育用のマニュアルが紙から動
画に、ライブの教育セミナーがオンラインセミナーに…急激に
変わり始めています。
画像や紙の情報に比べて、動画の情報はその情報量が圧倒的に
勝ることは以前からわかっていましたが、近年これを実現する
ためのインフラが整備されたことが主な理由です。
※動画を作る仕事の需要が急増しそうです。

●あるメーカーは、毎年更新している商品カタログに加えて動
画を付加しました。商品のコンセプトや主力商品の特徴などを
動画に仕上げて、カタログと共に顧客に提供しています。カタ
ログだけでは十分伝えきれなかった商品の良さを、短い動画の
ダイジェスト版で広報できています。カタログ+動画、この組
み合わせがお勧めです。

●某飲食企業は、新規のアルバイト向けの導入教育用動画を制
作しました。それまでアルバイトの教育は都度店長が対面で行
っていましたが、動画を準備したことで、アルバイトの導入教
育の80%が自動化できたそうです。アルバイトの導入訓練に費
やしていた店長の実働時間を大きく削減できているようです。

※参考:動画の進化版であるVRの現時点の主要なマーケットは
教育分野です。ウォルマート・ケンタッキーフライドチキン
(KFC)、東日本旅客鉄道(JR東日本)等が実際に活用してい
ます。
コスト削減になる、リアルな体験感を得られること等がそのメ
リットと言われています。VRではなく、普通の動画でも十分有
益ですのでご検討ください。

※参考:〔出典:ウィキペディア(Wikipedia)〕
『VR・バーチャル・リアリティ(英: virtual reality)とは、
現物・実物(オリジナル)ではないが機能としての本質は同じ
であるような環境を、ユーザーの五感を含む感覚を刺激するこ
とにより理工学的に作り出す技術およびその体系。略語として
VRとも。日本語では「人工現実感」あるいは「仮想現実」と訳
される(#「仮想現実」という訳語について)。古くは小説や
絵画、演劇やテレビなども、程度の差こそあれVRとしての機能
を有している。』

◆半数以上の人が、買い物前に動画を探す!
Criteo社HPから引用させていただきました。
https://www.criteo.com/jp/company/
『Criteoが予測したとおり、2018年は動画広告市場が驚くべき
成長を遂げ、今や動画広告は最もエンゲージメント効果の高い
マーケティングフォーマットとなっています。その背景として、
スマートフォンで動画を視聴する習慣が国や地域、世代を超え
て一気に定着しつつあることが挙げられます。Googleの調査で
は、「買い物の前に動画を探す」と回答した人は全体の50%超。
YouTubeで商品やサービスの使い方を説明する、いわゆる「ハ
ウツー動画」の検索数は前年比70%も増えていることが明らか
になりました。ちなみに、ハウツー動画で特に人気の高い分野
は、日曜大工(DIY)、美容、そして料理でした。さらにGoogle
は、約53%のスマホユーザが、サイトやアプリにハウツー動画
を用意している企業に対して「好感が持てる」と回答したとい
う調査結果も明らかにしています。』

◎画像や紙の媒体から動画(音声)媒体への急激なパラダイム
シフトが始まっています。貴社の経営にも織り込んでください。

中小企業における財務の強化方法についてシリーズでお伝えし
ております。第1回目は、「試算表」を作成することの重要性
を、続く第2回目は、「資金繰り表」を作成することの重要性
をお伝えしました。3回目となる今回は、「中小企業が実践す
べき財務戦略」について解説致します。

試算表や資金繰り表は、それ自体は単なるデータであり、財務
に関する明確な指針を持って初めて価値あるものに変わります。
弊所では、「手元キャッシュをより多く持つ」ことを、中小企
業の財務指針として推奨しています。

手元キャッシュを厚くする主な理由は、「キャッシュが切れな
い限り倒産することはない。」、「キャッシュに余裕があれば
不測の事態が起きても落ち着いて対処できる。」「キャッシュ
があれば千載一遇のビジネスチャンスを逃さない。」ためです。
経営の目的を達成するために、キャッシュは絶対に欠かせない
要素のひとつです。

しかし、「元々潤沢な自己資金を持っている。」もしくは、
「毎月キャッシュが余るほど大きな利益を上げている。」ので
なければ、そう簡単に手元キャッシュを厚くすることはできま
せん。手元キャッシュを増やす最も現実的な方法は、「借入を
最大限活用する。」ことです。

借入を嫌う経営者も多いですが、そこには、困った時だけ金融
機関に頼れば良いという錯覚があります。金融機関はこちらの
都合で融資をしてくれません。不測の事態が起きた時、千載一
遇のビジネスチャンスに出会った時、都合よく融資を受けられ
るとは限らないのです。

中小企業の金融機関との正しいお付き合いの仕方は、自社のタ
イミングで融資を受けにいくのではなく、金融機関側のタイミ
ングで融資を受けて手元にキャッシュを置き、必要な時にその
キャッシュを使うというのが正解です。今すぐ必要でない資金
を借りるデメリットは余分な金利を払うことですが、いざとい
う時に融資を受けられないリスクに比べれば小さな問題です。
借入が増えると財務内容が悪くなると考える方もいらっしゃい
ますが、借入と同時にキャッシュも増えますので、実質的な借
入額が増える訳ではありません。

「借入を活用して手元キャッシュをより多く持つ。」ことの重
要性にご賛同いただけたならば、次は、「どうすれば金融機関
から最大限の融資を受けられるか。」という課題にお気づきに
なるのではないでしょうか。金融機関から最大限の融資を受け
るためには、自社の財務状況を定期的に金融機関に開示し、融
資が可能であれば、いつでも提案を持ってきてもらえる関係を
構築する必要があります。

試算表や資金繰り表は金融機関とのコミュニケーションツール
です。試算表や資金繰り表の提出なしに金融機関と円滑な関係
を構築することは出来ませんので、まずは、毎月しっかりと作
成しましょう。さらに、「キャッシュをより多く持つ。」とい
う財務指針も金融機関と共有出来れば、財務はより強固なもの
になります。

前々回号の続きです。
〔※ビジネスモデル俯瞰図とは、ビジネス全体の構造や流れを
把握し、事業の構造や事業の特徴、損益構造などをわかりやす
く整理した図表のことを指します。〕

事業全体の活性化や事業立地の付加・転換など、事業自体をそ
の本質から見直そうとするときは、ビジネスの全体像を現した
ビジネスモデル俯瞰図を作ってみるとわかりやすいです。
ビジネスモデル俯瞰図を使って、事業の活性化を図りたいとき
の着眼点を整理いたします。

■着眼点20:自社の広報媒体(主に動画)と自社のコミュニ
ティーの構築を!

●昔は、DMやチラシを主な告知媒体として使っていました。
店舗ビジネスでは、これらを使って来店を促し、ポイントカー
ドを配布して固定客化を狙っていました。昔々の販促・固定客
化の王道です。時に固定客限定のイベント等を行っていました。

●今は、ホームページや文章・画像を使ったSNSを活用しなが
ら、自社の告知を行っています。また、ネット販売は、大手販
売プラットフォームに出店して行っています。自社独自で顧客
にリーチしにくいからです。

●今後は、各社が自社の広報媒体(主に動画)を持ち情報配信
を行うことで、直接顧客にアプローチするようになります。さ
らに、各社が自社のコミュニティー(自社のビジネスオンライ
ンサロン=ファンクラブ)を運営するようになります。ネット
販売においても、自社が直接顧客に販売するようになり(D2C
モデル)、大手のプラットフォーマー(B2B2Cモデル)を経
由して販売する比率が下がります。
情報配信力とITリテラシーの高い企業は、エンドユーザーを囲
い込み、自社の商品やサービスを直接販売するようになります。
代理店や、ネット上での大手のプラットフォーマーをも中抜き
できる社会構造がついに出来上がりました。

◎エンドユーザーがスマホという極めて高機能な情報受信媒体
を標準装備しています。また、発信者から受信者(エンドユー
ザー)へ届けるためのインフラも完璧に整備されました。
このような環境に今我々は遭遇しています。この環境に適合す
るのか無視するのか?10年後の未来が大きく変わります。

◆我々が取り組むべきことは以下です。
1.尖った商品やサービスを開発する。
2.自社の情報配信チャンネル(動画を使った自社TVのような
もの※ユーチューブが現実的です。)を整備して情報配信
を始める。
3.顧客及び顧客候補を囲い込む自社のビジネスオンラインサ
ロン(自社のファンクラブ)を開設して囲い込む。

是非ご検討ください。

前回のメールマガジンでは、財務管理の強化は試算表の作成か
ら始まることをお伝えしました。しかし、試算表だけ作成すれ
ば十分かと問われると、そうではありません。試算表にはキャ
ッシュベースの収支が分からないというウィークポイントがあ
ります。

赤字になっても即倒産はしませんが、資金が底をつくと黒字で
も倒産します。そういう意味では、利益管理よりも資金繰り管
理の方が重要です。そして、資金繰りの管理を行うツールが
「資金繰り表」になります。資金繰り表は、毎月の入金額と支
出額を項目ごとにまとめた単純な表ですが、財務管理にとても
役立ちます。

殆どの社長様が何らかの資金繰り表を作成していると思います。
実際に表を作成していなくても、頭の中にはおおよその入金額
と支出額が入っているはずです。ただ、残念なことに今月もし
くは来月、といった短い期間の資金繰り状況しか把握できてい
ないのが実態ではないでしょうか。

短期間の資金繰り計画しか立てていないと、「お金が足りない
!」という事態が1か月ほど前にしか分からないということに
なります。1か月という時間は、資金調達を行うには決して十
分な時間ではありません。経営者としての他の大切な業務を削
ってでも資金調達に走り回らなくてはならなくなります。行き
当たりばったりの財務活動です。

計画的に財務活動を行うために実践していただきたいのは、向
こう1年間の「資金繰り計画」の作成です。1年程度先までの
資金繰り計画を立て、資金の流れを予測しながら、資金調達や
設備投資の計画を立てます。1年先の売上など分からないとい
う声もお聞きしますが、向こう1年間の「資金繰り計画」とあ
わせて、過去1年間の「資金繰り実績」も作成してみてくださ
い。過去の売上の動きから未来の売上の動きを何となく予測す
ることができるかもしれません。

財務管理の最大の目的は、「資金を切らさないこと」です。試
算表で利益を管理しながら、自社の資金調達力を高め、資金繰
り計画を立てて計画的に資金調達や設備投資を行えば、資金に
慌てることなく落ち着いて経営に専念できます。

新年あけましておめでとうございます。
令和2年、オリンピックイヤーの幕開けです。今年も人生を楽
しみながらも、ビジネスに真摯に向き合っていきましょう。

年初に当たって、もう一度、経営の基本指針について言及させ
ていただきます。一つの考え方としてご確認ください。

■1:無駄の少ない「Simple」な経営を目指してください。

余計なものをそぎ落とし、密度の濃い「Simple」な経営体に生
まれ変わりましょう。以下の仮説を持っています。
『日本の企業は売上高確保、増収(売上増)にこだわり過ぎて
います。何が何でも売上高を確保しようとすると、売上高を確
保するために多くの犠牲を払うことになります。利益を犠牲に
した安易な値引きや安い値決めを招きます。利益に見合わない
過大な広告コストを支払う羽目になります。採算を度外視した
幅広い品ぞろえや長時間営業を行うようになります。顧客の過
度な要求を受け入れてしまいます。売上至上主義は、分散症候
群や安売り症候群を招く原因のひとつです。脱・売上至上主義、
減収(売上減)を容認する経営に移行してください。』

売上高はいくらか?社員数は何人か?事務所は大きいか?立派
か?…事業体の良し悪しをこのような基準で判断するのではな
く、利益はいくらか?…この単純な尺度で図る発想も重要です。
同じ利益なら、売上は小さい方が、社員数は少ない方が、事務
所は狭い方がよい…こんな考え方もあるはずです。

■2:高収益「Profitable」な企業作りを目指してください。

売れた時には、大きな利益を出せる収益構造を当初から設計し
ましょう。高めの粗利益率の設定、高めの値付けを心掛けてく
ださい。値決めを外すなら高めに外してください。ビジネスと
して完成した時点での営業利益率は20%以上で設計してくだ
さい。安売り戦略は、経営の難易度を高め、事業体の創造力を
奪い去る原因になります。

■3:手持ち資金を潤沢「Ample」に維持してください。

資金余力は企業経営の余裕代、時間を提供してくれます。財務
機能を持ってください。資金は可能な限り潤沢に持ち続けまし
ょう。借入れの金利負担よりも、資金に困るリスクの方がはる
かに深刻であることを認識してください。また、借入れのタイ
ミングは、自社が資金を必要とするタイミング(借り手の都合)
ではなく、金融機関が融資できるタイミング(貸し手の論理)
に沿うことが重要です。総じて貸し手の方が強いからです。
資金余力がもたらす経営者の心の余裕と、増加分の金利負担を、
天秤にかけて比較してください。

※当事務所が提供する【財務部長の代行業務】の導入を検討し
てください。

■4:変化に対応できる柔軟性「Flexible」のある企業体を維
持してください。

計画のずれを想定した経営を行ってください。計画(売上の達
成)が遅れることを想定しながら経営してください。「コント
ロールできない売上を、コントロールできる売上以外の経費の
執行で調整する」、これが経営管理です。経費の執行をワンテ
ンポ遅らせる…これが不透明な時代に、企業体力が十分でない
事業体が選択すべき経営のコツです。また、遅れを許容するた
めの資金余力を持てる財務戦略が重要です。

■5:経営判断を明確「Clearly」にしてください。

感覚に頼らず、数字を基準にした論理的な経営を行ってくださ
い。曖昧な経営判断、お人好しな対応を止めましょう。経営は、
感覚や概念ではなく、数字で管理してください。感覚や概念を
基準に考えると、判断が曖昧になりがちです。数字基準での判
断は、その判断の精度を各段に向上させます。経営が締まりま
す。

◎経営の判断基準は何か?永遠のテーマです。 経営の判断基
準は無限にあります。逆にも真あり、敢えて真逆を攻めること
で成功することもあります。それでも、王道をお薦めいたしま
す。王道とは、多くの偉人が語り続けた経営の道です。上記の
方針は、偉人が語る経営の道に近似しているはずです。当然で
す、偉人の言葉を借りているからです。経営者の皆さま方が、
理詰めで考えて、腑に落ちた部分については、今後の指針とし
て、深く、深く…心に刻んでください。

本年度、皆さま方の更なるご発展とご健勝を心より祈念いたし
ます。引き続きよろしくお願いします。

感謝・合掌