銀行借入は、企業にとって重要な資金調達手段であり、その
利用方法によって事業の成否が左右されることがあります。
ここでは、良い借入と悪い借入について考えてみます。

まず、良い借入の例として、売上の増加に伴う仕入資金不足
を補うための借入があります。これは、売上が順調に伸びて
いる状況で発生する正常な資金需要であり、売掛金の回収が
確実であれば積極的に借入を行うべきです。ただし、販売先
の倒産や不良品の返品が発生すると、借入だけが残るリスク
があるため、注意が必要です。また、売上金の回収時期と仕
入代金の支払い時期を調整する等して、運転資金の必要額を
減らす努力も大切です。

次に、本社ビルを購入するための借入も良い借入の一例です。
キャッシュフローが安定しており、現在の家賃よりも返済額
や固定資産税額が低ければ、経費削減につながります。しか
し、不動産の流動性を考慮し、売却のしやすさも判断基準に
含めるべきです。

一方、悪い借入の例として、売上の減少を補うための借入が
あります。これは、人件費などの経費が支払えない場合に発
生し、赤字補填の可能性が高いです。受注が決まっていて入
金が見込まれる場合を除き、返済の目処が無い借入は避ける
べきです。リスケジュールなどで対応するのが良いでしょう。

銀行の担当者が熱心にすすめてくる借入についても考えてみ
ます。資金の使い道が明確でない場合でも、倒産回避のため
の資金として借入を行うことは良い戦略です。しかし、無計
画に借入を増やすと、返済が困難になるリスクがあるため、
慎重な判断が求められます。

新たに店舗を出店するための借入も、良い借入となる可能性
があります。既存店舗のキャッシュフローで新店舗の出店資
金を返済できる場合は、安心して挑戦できます。しかし、新
店舗の見込みキャッシュフローに依存する場合や、既存店舗
が赤字の場合は、リスクが高まります。

借入は、事業を拡大したり、倒産を回避したりするための重
要なツールです。適切な借入を行うことで、企業は成長の機
会を得ることができます。しかし、借入には常にリスクが伴
うため、計画的かつ慎重な判断が求められます。良い借入を
積極的に活用し、事業の成長を目指しましょう。

日本の労働市場は、生産年齢人口の減少に直面しており、これ
までの解決策としては女性や高齢者の労働力への参加が促進さ
れてきました。しかし、就業者数の増加が頭打ちとなり、労働
市場は新たな人材供給の制約に直面しています。さらに、労働
市場のホワイト化により、総労働時間の短縮と働く人に無理を
強いることができない社会環境が整備されました。今後は、本
当の意味での人手不足が起こります。

この問題を解決するために、デジタルトランスフォーメーショ
ン(DX化)が重要な戦略として考えられています。以下に要
点を整理して解説いたします。これ以外の選択肢は無いと言っ
ても過言ではありません。中小企業においても、本気で取り組
んでいかねばならない課題です。

◆1.業務自動化の推進

日本の企業は、業務自動化を通じて労働力不足を緩和すること
ができます。特に、RPA(Robotic Process Automation)
は、簡単な繰り返し作業を自動化することで、従業員をより創
造的または戦略的な業務に再配置するのに役立ちます。さらに、
人工知能(AI)と機械学習を利用することで、顧客サービス、
在庫管理、販売予測など、さまざまな業務プロセスを最適化し、
より複雑な意思決定を支援することが可能になります。

◆2.クラウド技術の利用

クラウド技術の活用は、データとアプリケーションのアクセス
を地理的な位置に依存しないものに変え、リモートワークやテ
レワークの普及を促進します。これにより、働き方の柔軟性が
増し、家庭と仕事のバランスを取りやすくなるため、特に女性
や育児中の親の労働参加を支援できます。また、クラウドを利
用することで、データの一元管理が可能となり、各部署やプロ
ジェクト間での情報共有がスムーズになります。

◆3.デジタルスキルの向上

DXを成功させるためには、従業員自身のデジタルスキルを向
上させることが必須です。企業は、継続的な教育プログラムを
提供し、従業員が新しいテクノロジーを効果的に活用できるよ
う支援する必要があります。これには、オンラインコースの提
供、ワークショップの開催、そして実際のプロジェクトへの技
術の統合が含まれます。

◆4.組織全体のデジタル化へのシフト

デジタルトランスフォーメーションは技術だけの問題ではなく、
企業文化や組織構造にも影響を及ぼします。経営層はデジタル
ファーストの姿勢を示し、イノベーションを推進する文化を構
築することが重要です。これにより、従業員は新しいアイデア
を提案しやすくなり、組織全体が変革に向けて動きやすくなり
ます。

◆5.セキュリティとプライバシーの確保

デジタル化が進む中で、データのセキュリティとプライバシー
の保護はますます重要になります。企業は適切なセキュリティ
対策を講じることで、サイバー攻撃やデータ漏洩のリスクを最
小限に抑え、顧客や従業員からの信頼を維持することが必要で
す。

このように、DX化は日本の人手不足問題に対する有効な対策
となり得ますが、その成功は技術の導入だけでなく、組織文化、
従業員のスキル、そしてセキュリティ対策の強化にも依存しま
す。これらの要素が統合されたアプローチにより、中小企業も
持続可能な成長を目指す事ができるはずです。

向う数十年間は生産年齢人口が増加しないことは確定した事実
です。一方、DX化のコストは大幅に下がり、そのクオリティー
や品質も日進月歩です。今こそDX化を推進するとの経営判断
が必要ではないでしょうか。

あるスタートアップ経営者から資金調達の相談を受けました。
エクイティで〇億円の調達を行ったが、次回はより高い株価で
エクイティファイナンスを実施したいため、まずはデッドファ
イナンスを活用して業績を向上させたいと考えている。しかし、
デッドファイナンスの経験がなく、自身で金融機関をあたった
が、反応は良くないというものでした。

エクイティを提供する投資家と、デッドを提供する金融機関で
は、考え方が全く異なります。それぞれのポイントをおさえた
事業計画書を、2つ用意する重要性について解説します。

■ エクイティファイナンスとは?
エクイティファイナンスは、企業が株式を発行して投資家から
資金を調達する方法です。投資家は企業の成長性や市場での拡
大可能性を重視します。このため、エクイティ用の事業計画書
では、以下の要素を強調することが求められます。

・成長戦略:市場規模や成長予測、競合優位性を明確にし、ど
のようにして市場シェアを拡大するかを示します。

・革新性:製品やサービスの独自性や革新性をアピールし、な
ぜそれが市場で成功するのかを説明します。

・チームの強み:経営陣やチームの経験や実績を強調し、プロ
ジェクトを成功に導く能力を示します。

数値計画は、大きな売上、大きな利益を描かないと投資家から
は魅力を感じてもらえません。

■デッドファイナンスとは?
デッドファイナンスは、銀行や金融機関からお金を借りる方法
です。金融機関は、企業が安定して利益を上げ、確実に返済で
きるかどうかを重視します。デッド用の事業計画書では、次の
要素が重要です。

・収益性:具体的な収益予測や利益率を示し、安定したキャッ
シュフローを確保できることを証明します。

・リスク管理:リスク要因を特定し、それに対する対策を明示
することで、金融機関に安心感を与えます。

・返済計画:具体的な返済スケジュールや資金繰り計画を提示
し、確実に返済可能であることを示します。

大きな売上、大きな利益ではなく、返済可能な安定した収益と
利益を確保できるかを重視します。

■ まとめ
スタートアップが資金調達を行う際には、エクイティとデッド
の違いを理解し、それぞれに適した事業計画書を用意すること
が重要です。これにより、資金調達の成功率を高め、企業の成
長を加速させることが可能となります。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

本年5月に公開された上記の白書の概要について、抜粋して引
用いたします。詳細は以下を確認してください。
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/PDF/2024gaiyou.pdf

『事業者が直面している課題として、売上高が感染症による落
ち込みから回復し、企業の人手不足が深刻化していることが挙
げられる。今後の展望として、就業者数の増加が見込めない中
で、日本の国際競争力を維持するためには、省力化投資や単価
の引上げを通じて、中小企業の生産性を向上させていくことが
期待される。』

(中小企業白書)
成長する中小企業の行動を分析すると、企業の成長には、人へ
の投資、設備投資、M&A、研究開発投資といった投資行動が
有効である。また、成長投資に伴う資金調達手段の検討も必要
である。

(小規模企業白書)
小規模事業者は、中小企業と比べ厳しい経営環境にある中で、
コストを把握した適正な価格の設定や、顧客ターゲットの明確
化に取り組むことで、売上高の増加につながることが期待でき
るほか、支援機関の活用も効果的である。また、新たな担い手
の参入も生産性向上の効果が期待できる。

◆人手不足
・売上高が感染症の落ち込みから回復する中で、人手不足が深
刻化。
・これまでは、生産年齢人口の減少を補う形で女性・高齢者の
就業が進んできたが、足下は就業者数の増加が頭打ちとなり、
人材の供給制約に直面。

◆雇用者一人当たり労働時間の減少と人手確保のための取組
・時間外労働の上限規制に伴い、雇用者一人当たり労働時間の
減少が労働投入量を下押ししている。
・人材を十分に確保できている企業では、働きやすい職場環境・
制度の整備が進んでいる。

◆人材確保・育成
・人材の確保に向けては、経営戦略と一体化した人材戦略を策
定した上で、職場環境の整備に取り組むことが重要。
・人材育成は、人材の定着や労働生産性の向上にもつながるこ
とが期待される。

◆賃上げ
・物価に見合った賃金の引上げを通じて、需要の拡大につなげ
る好循環を実現することが重要。
・春闘の賃上げ率・最低賃金の改定率は過去最高水準。一方で、
人材確保の必要性や物価動向を背景に、賃上げの原資となる業
績の改善が見られない中で、賃上げを行う企業が増加。

◆省力化投資
・人手不足への対応策として、採用等の人材確保に加えて省力
化に向けた設備投資も必要であるが、規模の小さな企業ほど省
力化投資が進んでおらず、省力化の取組余地が大きい。
・また、省力化投資は人手不足緩和だけでなく売上高増加にも
つながることが期待される。

◆生産性
・日本の経済成長は海外と比べ見劣りする中で、今後は就業者
数の減少が本格化する。
・国際的に見ても日本の生産性は低く、日本の国際競争力を維
持するためには中小企業の生産性の引上げが必要。

◆生産性の分子・付加価値の向上に向けて
・生産性向上に向けて、日本企業は低コスト化・数量確保の取
組を続けてきた。この結果、売上高や利益率は大企業が増加す
る一方、中小企業は発注側の売上減価低減の動きの中で低迷。
・今後は低コスト化・数量増加以上に、単価の引上げによる生
産性の向上も追及する必要がある。

◆価格転嫁
・賃上げ原資の確保に向けては、価格転嫁の促進が重要。価格
交渉が可能な取引環境が醸成されつつあるが、コスト増加分を
十分に転嫁できておらず、転嫁率向上のための取組強化が課題。
・十分な価格転嫁のためには、適切な価格交渉が重要。 転嫁に
関する協議の実施とともに、商品・製品の原価構成を把握して
交渉を進めることが有効。

◆パートナーシップ構築宣言と取引の実態
・パートナーシップ構築宣言企業は非宣言企業と比べて、より
多くの発注先と価格協議を行っており、価格転嫁にもより高い
水準で応じている傾向にある。
・ただし、 協議に十分に応じていない企業も一定数存在するた
め、宣言の実効性向上のための取組も重要。

◆事業承継
・足下では経営者年齢の分布が平準化しつつあるものの、半数
近くの中小企業で後継者が不在。
・一方、後継者が決まっている中小企業においても、承継の課
題を抱えている企業が見られる。

◆経営改善・再生支援
・感染症の感染拡大以降、経営改善・再生支援のニーズが高ま
っている。
・金融機関の経営支援により、財務内容の改善等の効果が期待
できる。経営改善・再生支援の効果を高めるためには、関係機
関が一丸となって経営改善・再生支援に取り組むことが求めら
れる。

詳細は以下を確認してください。
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/PDF/2024gaiyou.pdf

経営者の皆様は、日々「売上を上げなければ」「利益を出さな
ければ」と考えているのではないでしょうか。これは「PL脳」
と呼ばれる思考パターンです。PLとは損益計算書のことで、
売上や利益を示す大切な財務諸表です。しかし、PLだけにと
らわれすぎると、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。

■ PL脳の問題点
PL脳の最大の問題は、短期的な視点に陥りやすいことです。

1.売上至上主義:無理な値引きで売上を伸ばそうとし、利益
率が下がる

2.コスト削減偏重:将来への投資(研究開発や人材育成)を
削り、長期的な競争力が低下する

3.借入を避ける:「無借金経営」にこだわり、成長のチャン
スを逃す

これらは一時的にPLを良く見せますが、長期的には企業価値
を損なう可能性があります。

■ PL脳からの脱却
では、どうすればPL脳から抜け出せるでしょうか?

1.長期的視点を持つ:5年後、10年後の自社の姿を描き、
そこに向かって計画を立てましょう。

2.キャッシュフローを重視する:利益は会計上の数字ですが、
キャッシュは実際のお金の動きです。キャッシュフロー計算書
を定期的にチェックしましょう。

3.投資を恐れない:新しい設備や技術、人材への投資は短期
的にはコストになりますが、長期的な成長には不可欠です。

4.バランスシート(BS)も見る:PLだけでなく、BSも
確認しましょう。資産や負債の状況を把握することで、より総
合的な経営判断ができます。

5.非財務指標も重視する:顧客満足度や従業員のモチベーシ
ョンなど、数字に表れない要素も企業の価値を左右します。

■ 金融機関の理解を得るために
PL脳から脱却しようとすると、一時的にPLが悪化する可能
性があります。そのとき、金融機関の理解を得るのが難しいと
感じるかもしれません。しかし、多くの金融機関も企業の長期
的な成長を支援したいと考えていますので、以下のポイントを
押さえて、金融機関とコミュニケーションを取りましょう。

1.事業計画を明確に:なぜその投資が必要か、どのような成
果を期待しているかを具体的に説明しましょう。

2.定期的な報告:計画の進捗状況を定期的に報告し、信頼関
係を築きましょう。

3.キャッシュフロー重視:PLだけでなく、キャッシュフロ
ーの見通しも示しましょう。

4.業界動向の共有:自社の取り組みが業界トレンドに沿って
いることを説明しましょう。

PL脳から脱却し、長期的な視点で経営することは、決して難
しいことではありません。日々の小さな意識の変化から始めて
はいかがでしょうか。そうすることで、自社の真の価値を高め、
持続的な成長への道を切り開くことができると思います。

 

2018年1月、厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイド
ライン」を作成し「モデル就業規則」上で、それまで記載して
いた「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規
定を削除しました。そして、新たに「第67条に労働者は、勤務
時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」
という、副業を認める条文を追記しました。上記から6年が経
過しましたが、副業が緩やかに浸透してきたように感じます。

副業を認めることには、雇用者側にとって多くのメリットとい
くつかのリスクが存在します。長短を勘案して副業について検
討してください。

以下にメリットとリスクについてそれぞれの要点をまとめます。

■1.雇用者側のメリット

1.スキルの向上
従業員が副業を通じて新たなスキルや経験を身につけることが
でき、その知識を本業にも活用できます。

2.従業員の満足度向上
副業を通じてキャリアの選択肢と収入を増やすことができるた
め、従業員の満足度が向上し、結果的に離職率が低下します。

3.新しいアイデアの導入
異なる業界や環境での経験を持つ従業員から新しいアイデアや
視点がもたらされ、組織内の革新を促進します。

4.競争力の強化
副業を認めることで、企業は柔軟性を持って働ける魅力的な職
場と見なされ、優秀な人材の獲得や維持が容易になります。

5.組織のリスク分散
従業員が副業によって収入源を分散している場合、組織全体と
しての経済的リスクが軽減されることがあります。

■2.雇用者側のリスク

1.業務への集中力低下
従業員が副業に時間を割くことで、本業の生産性や集中力が低
下する可能性があります。

2.機密情報の漏えい
副業先が競合企業である場合、重要な情報が漏れるリスクがあ
ります。

3.法的・規制の問題
労働時間規制の違反や労働者の健康問題が起こる可能性があり、
企業が法的責任を問われることがあります。

4.内部の不公平感
副業をしていない従業員との間で不公平感が生じることがあり、
職場の士気やチームワークに影響を与える可能性があります。

5.タレントの流出
従業員が副業でより良い機会を見つけた場合、企業を離れる可
能性があります。

副業を認める際には、これらのメリットを最大化し、リスクを
最小限に抑えるために、明確なガイドラインと適切な管理体制
が必要です。副業に関するポリシーを設定し、従業員に対する
教育とサポートを行うことで、副業がもたらす利点を活かし、
潜在的な問題を予防することが必要です。

近い将来、副業を容認するように立法化されるのではないでし
ょうか。そうならなくても、副業禁止の就業規則が、採用にお
ける大きなデメリットになる時代が近く訪れます。この機会に
副業について考えてみてください。

節税の目的はキャッシュアウトを減らして資金を増加させるこ
とです。しかし、本来の目的を忘れ、節税自体が目的となって
しまっている経営者様が多くおられます。

ある社長様のお話です。その社長様はウェブサイトの制作事業
で起業しましたが、大手企業をクライアントに持っていたため、
設立当初からまとまった売上が立っていました。しかし、支払
う税金を少しでも減らすことが経営者の技量だと考え、極端に
言うと1億円の売上が出来れば、9,990万円の費用を使うよう
にしていたそうです。

税金とどう向き合っていくかというのは、経営の大きなテーマ
のひとつです。納税が資金繰りを圧迫することもありますし、
税金に対する過度な意識が、会社の成長を妨げることもありま
す。同社は後者のケースです。

キャッシュフローを最大化することが本来の目的であるはずな
のに、節税に意識が行き過ぎると、税金を出来るだけ払わない
ことが目的になってしまいます。利益を出さないように費用を
増やせば、税金を少なくするという目的は達成できますが、手
元にキャッシュは残りません。財務内容も悪くなり、借入もま
まならないため、資金繰りは当然厳しくなります。

同社の社長様も、設立から5年ほど経ってようやくそのことに
気づいたそうで、「節税を止めた途端に資金繰りが楽になりま
した。銀行が積極的に融資をしてくれるようになり、1,000万
円近くの税金を支払っても、億単位の資金を調達できるので資
金に余裕ができました。」とおっしゃっておられました。

税金は最大でも利益の35%程度です。利益以上に税金を払うこ
とは決してありませんので、税金が原因で倒産することは理論
上ありません。ただ、利益を資産の購入に充てたり、利益の受
取よりも税金の支払いが先に来たりする場合は納税が苦しくな
ります。この場合の問題は税金ではなくファイナンスです。税
金を払わないことに一生懸命になるより、ファイナンスを適切
に行い、税金を無理なく支払えるようにすることの方が重要です。

節税をしているのに資金繰りが苦しいと感じておられる社長様
はファイナンスを上手く活用できていないかもしれません。
当事務所は税務だけでなく、ファイナンスに関するアドバイス
も行っております。是非ご相談ください。

「今年度の最低賃金について議論していた厚生労働省の審議会
は24日夜に決着し、物価の上昇が続いていることなどを踏まえ、
過去最大となる時給で50円引き上げる目安でまとまりました。
全国平均の時給は1054円となり、これまでで最も高くなります。
最低賃金は企業が労働者に最低限支払わなければならない賃金
で、現在の時給は全国平均で1004円です。24日夜、労使双方
が参加した審議会が決着し、時給で50円、率にして5%引き上
げるとする目安でまとまりました。引き上げ額は去年の43円を
超えて過去最大です。」(2024年7月25日 厚生労働省ニュース
より引用〕

最低賃金の上昇率は、すべての報酬の昇給率にも影響します。
賃上げ5%が必要であるとの意味です。賃上げ5%以上の予算
化が必要です。

賃金が上がることは、労働者にとっては収入の増加や生活水準
の向上を意味しますが、企業にとってはさまざまな対応を迫ら
れる重要な課題です。対策にウルトラCはありません。貴社に
とって必要な項目を確認し、丁寧に対応していくしかありませ
ん。企業が賃金の引き上げにどのように対応するかについて、
以下に解説いたします。

■1.コスト管理の見直し

最低賃金の引き上げは、企業の人件費の増加を直接引き起こし
ます。特に、労働集約型の業界や中小企業では、この影響が大
きくなります。企業はまず、コスト構造全体を見直す必要があ
ります。無駄な経費の削減や業務効率化、固定費の変動費化な
ど、総コストを削減するための取り組みが求められます。

■2.労働生産性の向上

コストを削減する一方で、労働生産性を向上させることも重要
です。これには、従業員のスキルアップや教育訓練の強化、業
務プロセスの改善、そして自動化技術の導入などが含まれます。
例えば、最新のIT技術やロボット等を活用して業務を効率化
することにより、同じ労働時間でより多くの成果を上げられる
ようにすることが必要です。

■3.商品・サービスの価格設定

最低賃金の上昇は、最終的には商品の価格に転嫁されることが
一般的です。ただし、価格を上げることで顧客離れが起こるリ
スクもあります。企業は市場動向や競合他社の動きを注視し、
適切な価格設定を行う必要があります。また、価格を上げる際
には、付加価値の向上やサービスの改善を同時に行うことで、
顧客に納得してもらう工夫も必要です。

■4.雇用形態の多様化

人件費の増加に対しては、雇用形態の見直しも一つの対策にな
ります。正社員を減らし、パートタイムやアルバイト、契約社
員を増やすことで、柔軟な人員配置を行うことができます。ま
た、リモートワークの導入やフレックスタイム制の導入など、
働き方の多様化を進めることも有効です。これにより、効率的
な運営を行うことが重要です。

■5.財務戦略の再検討

最低賃金の引き上げによるコスト増加を乗り切るために、企業
の財務戦略も再検討が必要です。借入金の見直しや資金調達方
法の多様化、投資計画の修正など、企業の財務基盤を強化する
取り組みが求められます。また、政府や地方自治体の助成金や
補助金を活用することにより、最低賃金の引き上げに伴う財務
的な負担を軽減することも必要です。

■6.社内コミュニケーションの強化

最低賃金の引き上げに対する企業の対応策を従業員に理解して
もらうことも重要です。透明性のあるコミュニケーションを通
じて、企業の方針や取り組みを従業員に伝え、協力を求めるこ
とが必要です。また、従業員の意見やアイデアを積極的に取り
入れることで、現場のニーズに合った対応策を策定することに
も心がけましょう。

■7.顧客対応の強化

最低賃金の引き上げにより、コスト増加分を価格に転嫁する場
合、顧客対応も重要な課題となります。顧客に対して価格改定
の理由を丁寧に説明し、理解を得る努力が必要です。また、価
格改定に伴い、顧客サービスの向上や付加価値の提供を通じて、
顧客満足度を維持・向上させることが求められます。

最低賃金の引き上げは、企業にとってさまざまな課題を引き起
こしますが、それに対する適切な対応策を講じることで、企業
の持続可能な成長を実現することが可能です。コスト管理の見
直し、労働生産性の向上、価格設定の工夫、雇用形態の多様化、
財務戦略の再検討、社内外のコミュニケーションの強化など、
総合的な対策を講じることが重要です。企業は、変化する経済
環境に柔軟に対応し、持続的な競争力を維持するための努力を
続ける必要があります。

厳しいと感じる方も多いでしょうが、避けて通れない現実です。
受け入れて対策を打つしかありません。