卸事業を行うA社様の事例です。会社の幹部に経営を引き継ぎ
たいと考えており、そのための対策が求められていました。事
業承継時に最もよくある課題は下記の2点です。

1.事業を譲り受ける方が株式の購入資金を用意できない。
2.会社の借入に対して個人が連帯保証をすることに抵抗があ
る。

A社も同様に上記の課題に直面していました。資本金は1,000
万円(1,000株)ですが、幹部の方が個人的に用意できる資金
は100万円程度であり、過半数の議決権も取れない状況です。

この問題は自己株の買い取りにより解決しました。自己株の買
い取りとは、社長が持っている株式を、会社が自ら買い取る方
法です。社長が保有している株式1,000株のうち、900株を会
社に900万円で売却しました。会社が買い取った株式は議決権
を持ちませんので、社長は900万円の売却代金を手にしたうえ
で、残りの100株だけで100%の議決権を維持できます。よっ
て、この100株を幹部に100万円で売却すれば、議決権の100
%幹部に引き継ぐことができます。

次に個人保証の問題です。政府は、できるだけ経営者の個人保
証をとらないようにしようと「経営者保証に関するガイドライ
ン」を定めましたが、実務上は銀行も保証協会も簡単には無保
証に応じてくれません。最もこの制度に積極的に取り組んでい
るのは日本政策金融公庫だと感じます。

A社も個人保証を入れた借入が3,000万円超ありましたが、日
本政策金融公庫より無保証で4,000万円の借入を行うことがで
きたため、既存の金融機関とは交渉しやすくなりました。もち
ろん日本政策金融公庫は、既存借入の肩代わり資金として融資
をしてくれた訳ではありませんが、交渉が難航すれば一括返済
という最終手段で対応できます。

これらの事業承継対策は短期間に行った訳ではありません。特
に自己株の買い取りは、株価の問題もあるため、複数年に分け
て行っており、自己株式の買取資金についても、金融機関の協
力があって実現しました。

事業承継時にネックとなる問題は「資金」です。事業承継を考
えておられる経営者様は、是非ご相談ください。

前回号の続きです。

〔※ビジネスモデル俯瞰図とは、ビジネス全体の構造や流れを
把握し、事業の構造や事業の特徴、損益構造などをわかりやす
く整理した図表のことを指します。〕

事業全体の活性化や事業立地の付加・転換など、事業自体をそ
の本質から見直そうとするときは、ビジネスの全体像を現した
ビジネスモデル俯瞰図を作ってみるとわかりやすいです。
ビジネスモデル俯瞰図を使って、事業の活性化を図りたいとき
の着眼点を整理いたします。

■着眼点6:社員を個人事業主化した事例!
〔以下は、日経ビジネス・庄司容子氏の記事を引用させていた
だきました。〕

●体脂肪計で国内シェア首位の健康機器メーカー、タニタ(東
京・板橋)は2017年に新しい働き方の制度を導入した。タニタ
の社員が「個人事業主」として独立するのを支援するというも
のだ。独立した人には、従来のタニタでの仕事を業務委託し、
社員として得ていた収入を確保する。こうすることで働く時間
帯や量、自己研さんにかける費用や時間などを自分でコントロ
ールできるようにするのが狙いだ。副業としてタニタ以外の仕
事を受け、収入を増やすこともできる。
発案者であり、制度設計を主導した谷田千里社長は、「働き方
改革=残業削減」という風潮に疑問を抱いていたという。働き
たい人が思う存分働けて、適切な報酬を受け取れる制度を作り
たいと考え、導入したのがこの「社員の個人事業主化」だ。
開始から2年半がたち、手ごたえを感じているという谷田社長
に話を聞いた。対象はタニタ本体の社員のうち、希望する人。
退職し、会社との雇用関係を終了したうえで、新たにタニタと
「業務委託契約」を結ぶ。独立直前まで社員として取り組んで
いた基本的な仕事を「基本業務」としてタニタが委託し、社員
時代の給与・賞与をベースに「基本報酬」を決める。基本報酬
には、社員時代に会社が負担していた社会保険料や通勤交通費、
福利厚生費も含む。社員ではないので就業時間に縛られること
はなく、出退勤の時間も自由に決められる。
基本業務に収まらない仕事は「追加業務」として受注し、成果
に応じて別途「成果報酬」を受け取る。タニタ以外の仕事を請
け負うのは自由。確定申告などを自分で行う必要があるため、
税理士法人の支援を用意している。契約期間は3年で、毎年契
約を結びなおす。
2017年1月から始めた8人の場合、平均の収入は28.6%上がっ
た。この中には、従来会社が支払っていた社会保険料が含まれ、
独立した社員は任意で民間の保険などに加入する。一方、会社
側の負担総額は1.4%の増加にとどまった。3年目に入った現在、
26人の社員が独立した。

◎社員が担っていた社内業務を、その社員が引き継ぎながら独
立してもらう、併せて副業等も可能にして自由に働いてもらう
制度は斬新です。もちろん課題も山積でしょうが、汎用性のあ
る選択肢の一つに挙げられます。

■着眼点7:フリーランスを戦力として活用する事例!

●あるWEBマーケティング会社は、設立当初から社員の雇用
は行わず、年商4億円弱の今に至っても、社長と秘書兼事務の2
名で運営しています。業務は外部のフリーランスに原則すべて
業務委託して、受注窓口業務及び検収責任のみを担っています。
収益は、売上の約80%が外注費(原価)、約20%が粗利益、経
費は極小で極めて高収益です。

◎アウトソーシングではなく、そもそも外部のフリーランスを
戦力と定義して事業を始められたようです。副業解禁やフリー
ランスが増加するトレンドの中で、このモデルは今後ますます
増えるはずです。

■「専門性の高い業務とルーチン業務はアウトソーシングを活
用して」…このやり方はひと昔前の話になりそうです。専門性
の高いフリーランスが多数輩出され、また、ITツールが進化
した令和の時代は、事業の組み立て方も変わってくるのでしょ
う。アウトソーシング業務に対する制約がなくなりそうです。
そもそも外注先に退職リスクはありません。
契約先である経営者(フリーランス)が社員に比して責任感が
低いとの論拠も希薄です。また、労務リスクも大幅に減少しま
す。経営の新しい型として認識しておいた方がよさそうです。

金融機関が最も重視している財務指標のひとつが「自己資本比
率」です。自己資本比率が高いという事は、他人資本(借入等)
への依存度が低いという事ですので、それだけ経営が安定して
いると判断されます。

自己資本を増やす方法は2つです。「増資により資本金を増や
す」もしくは「税引後利益を増やす」です。しかし、日本の中
小企業は、代表者(一族)以外の第三者が株主となることが少
ないため、資本金はあまり大きくなりません。また、満足な税
引後利益を出し続けることも容易ではないため、多くの中小企
業は自己資本が脆弱な状態にあります。

金融機関は、自己資本が脆弱な企業に対して積極的な融資は出
来ません。よって金融庁は、中小企業の実情を考慮し、自己資
本に関していくつかの解釈を認めています。例えば、自己資本
が脆弱であっても、代表者の個人資産がある場合や、代表者個
人からの借入金がある場合は、それを実質自己資本とみなして
良いといった解釈です。そういった解釈のひとつに、「資本的
劣後ローンの取扱」があります。

資本的劣後ローンとは長期一括返済型の借入です。種々の要件
がありますが、実際は負債であるにも関わらず、金融庁はこの
借入を実質自己資本とみなしても良いとしています。企業側に
とっても、長期間返済義務のない資金が入ることで経営が安定
するうえ、みなし自己資本が増えて財務内容が改善されます。

日本政策金融公庫国民生活事業が取扱っている代表的な制度を
紹介します。

制度名:挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)
利用限度:4,000万円
利率:決算の業績に応じて3区分の利率が適用(1%から6.2%)
融資期間:5年1カ月以上15年以内
返済方法:期限一括返済(利息は毎月払)
担保・保証人:無担保・無保証人

技術やノウハウ等に新規性のある新規開業者や足元の業績は黒
字だが過去の赤字によって債務超過や実質債務超過に陥ってい
る企業様にとっては最適な制度です。

利用にあたっては、事業計画書の策定が必要になります。
ご相談ください。

前回号の続きです。

〔※ビジネスモデル俯瞰図とは、ビジネス全体の構造や流れを
把握し、事業の構造や事業の特徴、損益構造などをわかりやす
く整理した図表のことを指します。〕

事業全体の活性化や事業立地の付加・転換など、事業自体をそ
の本質から見直そうとするときは、ビジネスの全体像を現した
ビジネスモデル俯瞰図を作ってみるとわかりやすいです。
ビジネスモデル俯瞰図を使って、事業の活性化を図りたいとき
の着眼点を整理いたします。

■着眼点5:サービスを特定業種に絞り込む事例を紹介します。

●例えば、店舗の企画設計を行うA社は、製菓業界(菓子専門
店)に対象を絞り込んで店舗の企画・設計、施工管理を行いま
した。飲食店も、雑貨店も、住宅も、工場も…菓子専門店の店
舗以外は一切引受けません。菓子専門店で多くの実績を積み上
げて、その実績を同業界に対してのみ告知することで受注の連
鎖が起きます。当然、様々な業界に対応できる企画設計会社と
は、この業界に対するノウハウ・スキルの差がどんどん広がり
ます。あるレベルに到達した後は、価格競争に巻き込まれるこ
ともなく、極めて高い確率で受注できます。絞ることで習得し
たノウハウ・スキルの差は時間とともにどんどん広がります。

◎総花的な店舗の企画設計会社を経営している会社は星の数ほ
どあります。また、どんな店舗にも対応できるということの意
味は、それぞれに対する深い知見は有していないのと同義です。
上記の会社は、『菓子専門店以外はよくわかりませんが、菓子
専門店の店作りに関しては日本一です。』と言い放つことがで
きます。

●例えば、WEB制作、広告企画を行うB社は整体業に特化し
てホームページの制作と広告コンサルタントを行っています。
整体業に絞り込むことで、再現性の高い成功事例を効率的に収
集することができます。コンテンツの共用化も可能です。強い、
効率的なホームページの制作やコンサルティングを行えます。

◎総花的なWEB制作、広告企画会社は星の数ほどあります。
ここに事業立地を設定すると、上手に広告を行って、他社に負
けない価格設定で受注して、効率的にマネージメントできたと
きにのみ事業が存続できます。サービスを特定業種に絞り込む
こと、ここには大きな活路があります。

●例えば、コンサルタント事業を行うC社は、業種を分類して
その業種ごとにコンサルティングを行っています。また、その
業種は大分類ではなく小分類、とにかく細かく分類して攻めて
います。過去において、多くのコンサルタント会社は、業種で
はなくテーマで分類することが多く、この会社はコンサルタン
ト業界における新しいルールの創造者の地位を獲得しました。
基本の戦略は今も変わっていないようです。継続的な成功を収
めておられます。

◎ただでさえ難解なコンサルティング事業において、対象企業
の範囲を広げることは容易ではありません。業種を小分類まで
絞り込むことの最大のメリットは、コンサルタントの養成が容
易になることです。

■何でもできるは何もできないと同義です。

飲食店も、雑貨店も、住宅も、工場も…何でもできる?店舗の
企画設計会社はたくさんありますが、菓子専門店のみを対象と
する店舗の企画設計会社は稀有です。
幅広くWEB制作、広告企画を行う会社はたくさんありますが、
整体業のみを対象にするWEB制作、広告企画会社はあまり見
受けません。
総花的な経営コンサルタントはたくさんいますが、小さな業種
に真に特化したコンサルタントも稀です。
サービスを特定業種に絞り込む方法は、汎用性のある戦略です。

※困ったら、悩んだら絞り込むこと【Simple化】を考えてくだ
さい。広げるのではなく、絞り込むのです。多くの経営者が真
逆の施策を実行しています。

創業時からお付き合いしている企業様の第4期決算が終わりま
した。資本金100万円で会社を設立し、一緒に300万円の
創業融資を借りに行ったのが始まりです。毎期増収増益で推移
し、第4期の売上高は380百万円、経常利益は13百万円と
なりました。4年間の累積利益は27百万円です。

同社が順調に成長できた要因は、社長の経営手腕が優れている
ことはもちろんですが、他人資本(借入)を上手に活用できた
ことも要因のひとつです。4期が終わった時点で70百万円の
借入がありますので、自己資金100万円では成しえなかった
成長を、借入を活用することで実現できたと感じます。

借入が大きすぎるのではと懸念された方もいらっしゃるかもし
れませんが、同社は、借入が70百万円ある一方で、30百万
円の現預金と40百万円の売掛金を持っています。もし、今事
業をやめるなら、手元現金30百万円と売掛金40百万円の回
収で借入を一括完済することが可能です。もちろんこの辺りの
バランスも見ながら借入を進めてきました。

ただ、最初から借入が簡単にできた訳ではありません。創業融
資は500万円で申し込みましたが300万円しか出ませんで
した。また、保証協会の保証を取りつけるのも最初は苦労しま
した。実績を積み上げながら、少しずつ借入を増やしてきた結
果、70百万円になったという印象です。

利益が出る事業を有しているなら、資金を大きく調達して事業
に投入した方がリターンはより大きくなります。しかし、一朝
一夕に資金調達ができるようになる訳ではありません。銀行が
融資の判断材料としている「決算書」のあるべき姿をしっかり
とイメージし、それに向かって実績を着実に積み上げていく必
要があります。

同社も、1期目から税金をしっかり払って利益を計上し、不用
意な社長への貸付や、仮払等が発生しないように努めるなど、
しっかりと決算書をデザインしてきました。そして、決算書が
イメージに近づくに伴って資金調達額も増えています。

資金調達は長期戦です。今現在資金調達に苦労されている企業
様でも、まずは自社の決算書のあるべき姿をしっかりとイメー
ジし、それに向かって日々着実に実績を積み上げていけば、い
つか必ず調達ができる時が来ます。

ただ、「そもそもどのような決算書を目指せば良いか分からな
い。」という経営者様も多いと思います。是非、ご相談くださ
い。

前回号の続きです。

〔※ビジネスモデル俯瞰図とは、ビジネス全体の構造や流れを
把握し、事業の構造や事業の特徴、損益構造などをわかりやす
く整理した図表のことを指します。〕

事業全体の活性化や事業立地の付加・転換など、事業自体をそ
の本質から見直そうとするときは、ビジネスの全体像を現した
ビジネスモデル俯瞰図を作ってみるとわかりやすいです。
ビジネスモデル俯瞰図を使って、事業の活性化を図りたいとき
の着眼点を整理いたします。

■着眼点4:サービス代理店を付加する事例を紹介します。

…同業者や新規事業を求める事業者(個人含む)に、自社事業
のノウハウを提供して自社のパートナーとして活動してもら
う事例です。フランチャイズシステムも含みます。

●飲食店等でよくあるフランチャイズシステムもこの様式です。
自社の商品やサービスは(本来)自社でエンドユーザーに直接
提供・販売すべきものですが、同業者や新規事業を求める事業
者(個人含む)に対して自社のソリューション一式を提供して、
自社と同じビジネスを展開してもらうことで、加盟料やライセ
ンス料、供給品を提供して収益を上げます。
副業やフリーランスの方々が増える中で、比較的大きな資金を
要するフランチャイズシステムではなく、小資金で運営できる
ビジネスパッケージであれば、個人事業者やフリーランスにも
十分受け入れられるはずです。
例えば、多額な投資が必要で大きな売上を見込める商圏は自社
で展開し、自社で展開するのには小さすぎる商圏はそのエリア
に在住する個人に任せるオプションが現実的です。
今、このような小さな事業パッケージがたくさん生まれていま
す。副業やフリーランス、個人事業者はこのようなビジネスパ
ッケージを探しています。

◆例1)スマートフォンの修理を行う事業者Aは、大商圏では
好立地に自社店舗を出店して展開すると同時に、地方都市やロ
ーカルエリアでは自社ノウハウを提供する『修理ノウハウ習得
者』を養成して事業を行っています。訓練費用や機材提供収益
等を上げることができます。

◆例2)造園や庭仕事などのノウハウを、独立希望者に教えて
事業パートナーを募るB社があります。営業活動は本部が一括
で行い、業務は事業パートナーが受託して行います。B社は造
園や庭仕事の専門業者で、すべての業務を自社で行っていまし
たが、あるタイミングから事業パートナーとのアライアンスモ
デルに切り替えています。

◆例3)ウーバーイーツは、本部、飲食店、ユーザーの中に組
み込まれたサプライチェーンです。受注の仕組み作りと加盟飲
食店の開発は本部が行い、ユーザーへのデリバリー機能を引受
けます。

◎ビジネスモデル俯瞰図で説明すると、今回の事例は、お客様
に伸びる矢印に対して横向きの矢印を新たに作ることになりま
す。同業者や他業種の事業者、個人もパートナーとして引き込
みます。特に、副業やフリーランスの方々を自社のサプライチ
ェーンに引き込んで活躍してもらうモデルは、時流に適合した
最適解の一つです。

◎ビジネスモデル俯瞰図のお客様の軸を変えるという意味だけ
ではなく、今回ご紹介したモデルは拡張性・汎用性に優れたビ
ジネスの型です。独自性のある商品やサービスを有する事業者
様は、自社のみで展開するのではなく、そのソリューションを
ルール化して、同業者を含む第三者に対して提供することもで
きます。自社の有する独自性は、同業者にとっては極めて有益
な個性であり、同業者からのニーズも大きいはずです。一方、
ノウハウやスキルの保護のためには、契約方法や提供方法の工
夫が必要です。

融資の金利が決まるメカニズムは、借り手には良く分かりませ
ん。金利に無頓着すぎると相場よりも高い金利を支払わされる
可能性がありますし、金利にこだわりすぎると金融機関から融
資そのものを敬遠される可能性があります。本日は、金利のメ
カニズムと企業側が注意すべきポイントについて解説します。

◆制度融資の金利
日本政策金融公庫や信用保証協会の制度融資の中には、あらか
じめ金利が決められているものがあります。「不況業種の救済」
「独立開業者の支援」といった政府の施策に連動しているため、
金利は元々低く設定されており全ての利用者が同じ金利です。

◆貸し手の収益構造
信用金庫は、都市銀行に比べて一般的に0.5%から1.0%程度、
貸出し金利が高く設定されています。これは収益構造の違いが
理由です。都市銀行は市場から大ロットで資金を調達し、大企
業向けに大ロットで融資を行うため、効率良く資金を調達・運
用できます。一方、信用金庫は、職員が小ロットの定期預金を
数多く集め、中小零細企業向けに小ロットの融資を数多く行う
ため、都市銀行に比べてコストがかかります。取扱高が大きい
ほど安くなるというのは一般的な商売と同じです。

◆借り手の信用リスク
借り手の信用リスクによっても金利は変わります。金融機関は、
借り手の信用リスクに応じて引当金を積んでいますので、引当
金以上の金利設定をしなければ取引採算を確保することができ
ません。当然ながら、各融資先との取引採算を見ていますので、
採算が取れていない融資先に対しては、採算が合うよう金利を
上げてもらう、もしくは取引を解消する、などの対応策を検討
しています。

◆金融機関との交渉
貸出し金利は、貸し手の調達コストと借り手の信用リスクで決
まることが分かりましたが、企業側にとって最も重要なことは
「まず借りる事」です。「金利が○%以下だったら借りてあげ
ても良い。(金利が○%超だったら借りない。)」というぐら
い強い立場であれば話は別ですが、ほとんどの会社は貸しても
らえなければ困る立場だと思います。貸し手に収益メリットが
無くなるほどの行き過ぎた金利交渉を行った結果、調達そのも
のが出来なくなっては本末転倒です。1,000万円(返済期間5
年)の借入れで金利を0.1%引き下げたとして、5年間で約
25,000円、月416円程度の負担軽減にしかなりません。相手の
利を確保することが商売の大原則であることを考えると、最大
の事業パートナーである金融機関との金利交渉は慎重に行うこ
とをおすすめします。

前回号の続きです。

〔※ビジネスモデル俯瞰図とは、ビジネス全体の構造や流れを
把握し、事業の構造や事業の特徴、損益構造などをわかりやす
く整理した図表のことを指します。〕

事業全体の活性化や事業立地の付加・転換など、事業自体をそ
の本質から見直そうとするときは、ビジネスの全体像を現した
ビジネスモデル俯瞰図を作ってみるとわかりやすいです。
ビジネスモデル俯瞰図を使って、事業の活性化を図りたいとき
の着眼点を整理いたします。

■着眼点2:お客様を細分化して、特定のお客様への個別対応
を充実させた事例を紹介します。

●例えば、ある家電量販店(大手ではありません)は、過去の
販売履歴から、その過去の購買金額・年齢や自店との距離を定
めて重点顧客を選定し、その顧客には購買金額の過多にかかわ
らず個別無料配達を行っておられます。100円の商品一つで
も無料でお届けするとの意味です。訪問時の付加サービスや御
用聞き機能を充実させることで、高額家電の購入、過度に値引
きを必要としない売上につながっているようです。顧客に対し
て一律に対応するのではなく、その対象を分析・選別して細や
かに対応することで、その売上と利益を伸ばしておられます。

◎ビジネスモデル俯瞰図の中で、お客様へと伸びる矢印に着目
してください。お客様とは…細分化すると多くの属性が生まれ
ます。上記のお店の場合は、大手量販店がひしめくエリアで、
競合各社が自店への集客を試みる中、自店への誘導ではなく、
客先へ足を運ぶ選択を行いました。その仮説を持ったうえで、
お客様の選別を行ったのでしょう。
一方、あるお客様への個別対応を充実させることは、その他の
お客様を対象から除外することになります。漠然とお客様を捉
えるのではなく、(失礼な言い方になりますが)お客様を選別
する、この発想は重要です。

■着眼点3:事業者向けに事務機材を販売する事業会社様の事
例を紹介します。

●例えば、事業者向けに事務機材を販売する事業会社様は、地
方支店におけるその営業エリアが複数の県にまたがっており、
大変広範囲な営業エリアを設定していました。営業マンの日々
の平均訪問可能件数は2件未満で、遠方の時は1件だったそう
です。
あるタイミングから方針を見直して、その管轄するエリアを面
積で5分の1程度にまで絞り込みました。営業マンの平均訪問
件数は3倍以上に増え、売上・利益とも数倍に伸びています。

◎ビジネスモデル俯瞰図の中で、お客様へと伸びる矢印に着目
してください。お客様とは…細分化すると多くの属性が生まれ
ます。上記の事業会社では、ある意味欲張って、広範で実力を
上回るエリアを設定してしまっていたがために、大変非効率な
状況でした。エリアを適正な水準に是正したことで、営業効率
が飛躍的に改善し、売上・利益とも大きく伸びています。

限られた経営資源を広く分散させてしまうと、その成果も激減
します。【分散症候群】と呼ばれる経営上の疾病です。
【Simple化】絞り込んで、そこに集中的に経営資源を投下して
ください。

ビジネスモデル俯瞰図の中で、お客様へと伸びる矢印に着目し
てください。お客様とは…細分化すると多くの属性が生まれま
す。
ビジネスモデル俯瞰図を分析するときは、ビジネスの流れを示
す一つ一つの流れに着目して確認してください。特に、誰に売
るのか?=顧客の分析は重要です。

創業融資は事業を黒字化させるまでの資金借入です。事業が黒
字化した後は、更に事業を成長させるための資金調達が必要に
なりますが、この成長資金を十二分に獲得できるかどうかでそ
の後の成長曲線は大きく変わります。成長資金の調達が上手く
いかず、せっかく軌道に乗った事業が収縮してしまったり、思
うように成長曲線を描けなかったりする企業を多く見ています。
成長資金獲得のポイントを事例で解説します。

会社名:A社
事業内容:インターネット通信販売
営業年数:個人事業2年、法人1年

個人事業で通信販売を始めたところ、創業2年目で売上高が
1,000万円を超えたため、法人成りをしました。法人成り
をするタイミングで、日本政策金融公庫から300万円の創業
融資を受けました。

調達した創業資金を元手に、事務所の整備や人材の雇用を行い、
売上高は順調に拡大しました。また、法人1年目の期中に保証
付き融資500万円も調達することができたため、法人なり初
年度の業績は予想以上で推移しました。

しかし、利益や借入金の大部分は、仕入や人件費等の投資に回
していますので、利益が上がっても資金繰りにそれ程の余裕は
ありません。そのような状況の中、法人1期目の決算が間近に
迫りました。

A社の社長様が気にしたのは税金です。周りの先輩経営者から
のアドバイスもあり、保険加入や車の購入をしたいとの相談を
お受けしました。ここが大きな分かれ道です。

1.初年度の業績が思いのほか良かったため無理な節税を行う。
2.節税によって本来の税額よりも多額のキャッシュが流出す
る。
3.これにより手元資金が苦しくなるが、利益を圧縮したため、
決算内容が悪く金融機関から相手にされない。
4.常に資金が不足している状況に陥り思うように成長戦略が
描けない。

本当によくあるパターンです。A社の社長様は優れた事業力が
あり、資金があればもっと事業を伸ばせると思いましたので、
節税よりファイナンスを活用した拡大戦略の方が、未来が開け
ることを粘り強く説明しました。

最終的に納得いただき、売上高8,000万円、経常利益700
万円で決算を行いました。200万円弱の税金を納めることに
なりましたが、申告後すぐに2,000万円の資金調達を行う
ことが出来たため、仕入を増やし、その後の売上高は倍々で増
えていきました。無事に事業を成長軌道に乗せることができま
した。

そもそも創業黒字化が最も難しいところですが、無事に黒字化
を達成した企業でも、財務戦略の失敗により立ち行かなくなる
ケースがたくさんあります。1期目、2期目の決算処理が大変
重要になります。

〔※ビジネスモデル俯瞰図とは、ビジネス全体の構造や流れを
把握し、事業の構造や事業の特徴、損益構造などをわかりやす
く整理した図表のことを指します。〕

事業全体の活性化や事業立地の付加・転換など、事業自体をそ
の本質から見直そうとするときは、ビジネスの全体像を現した
ビジネスモデル俯瞰図を作ってみるとわかりやすいです。
ビジネスモデル俯瞰図を使って、事業の活性化を図りたいとき
の着眼点を整理いたします。

■着眼点1:自社の商品やサービスを販売しやすくするために、
ファイナンス機能を追加した事例を紹介します。

●例えば、ある製造卸販売事業者様の場合、その販売先候補や
卸先候補に対して、その与信上の懸念から新規先の開拓が十分
できていませんでした。このケースでは、商品力の問題よりも、
販売するための与信力の判断または付与が問題になります。
新規顧客開発のためにファイナンス機能を付加することで、大
きな売上アップを狙えます。

具体的には、
◆その1…クレジットの付与
新規販売先に対するクレジットを付与します。クレジット会社
と提携して、与信上の懸念から新規取引を避けていた販売先に
対しても営業を活性化できます。

◆その2…ファクタリングの付与
新規卸先に対してファクタリングを付与します。クレジット会
社と提携して、与信上の懸念から新規取引を避けていた卸先に
対しても営業を活性化できます。

クレジットやファクタリング等、商流を有する企業と金融会社
との相性は抜群です。上手に提携してください。上記の企業様
の場合、ファイナンス機能の付加で、10%以上の売上増を見
込めます。

●例えば、事業者向けに原材料をネットで販売するネット販売
会社が、その販売先に対して、自ら設立した金融会社を使って
ファイナンス事業を行いました。月末締め翌月末払いの支払い
サイトを、1か月伸ばす毎に1%の料率で金利を付与します。
支払いを2か月伸ばした時、月間購入額100万円に対して2
%の金利が付与されます。このファイナンスは年率12%の金
融商品です。この会社は、商材販売の利益に付加して、金融収
益を計上することができます。また、自社商材の販売実績と、
金融会社として確認できる個人情報を合わせて審査することで、
優良債権として運用できています。

金融会社を自らが設立するのには相応の体力が必要です。この
ケースでも、金融会社とのアライアンスで代替えできます。

■商品やサービスに自信があれば、ファイナンスなどの付加機
能の追加を検討してください。

日本の企業、特にメーカーは、その製品の単機能の性能を磨く
ことには優れているが、その製品の使われ方に対する全体設計
が米国企業に比べて苦手だといわれることがあります。
自動車作りでは世界一であっても、新しい自動車社会の構想力
ではグーグルに劣っているのかもしれません。
同様に、商品やサービス自体の性能や品質向上には熱心でも、
そのサービスや商品を販売するための仕組み、ソリューション
の構築は苦手かもしれません。

ビジネスモデル俯瞰図を確認するときは、サービスや商品だけ
ではなく、その販売を補完するソリューション整備に着目する
ことをお勧めします。
ここでご紹介したファイナンス機能の付加は、一つの有望な切
り口です。

また、事業計画を作成するときには、過去のビジネスモデルを
踏襲するのではなく、ビジネスモデル俯瞰図等を活用して、事
業全体の事業立地の付加・転換など、事業自体をその本質から
見直してください。

※銀行融資プランナー協会の正会員である当事務所は、クライ
アントに『お金の心配をできるだけしない経営を行ってもらう』
ための新しい機能(=金融機関対応を含む財務の機能)を持つ
ことを宣言いたします。
我々は、『税理士』ではなく、『新・税理士』です。
遠慮なくご相談ください。

○音声・パワーポイントレジュメ付の誌上無料セミナー(20分)
をご視聴ください。
【創業~中小零細企業経営者が押さえておくべき銀行取引の
基本ルール10!と3つの事例!】
…借り手の論理ではなく貸し手の論理で!
雨傘理論ではなく日傘理論で!