資金調達のご相談をお受けしていると、「日本政策金融公庫からは、『融資枠がいっぱいなのでこれ以上融資はできません。』と言われました。」というケースがしばしばあります。私の方から、「中小企業事業にもあたりましたか?」とお聞きすると、大抵の方が、「中小企業事業とは何でしょうか?」とおっしゃいます。

一般的に日本政策金融公庫というと、旧国民生活金融公庫、いわゆる国金をイメージされる方が圧倒的に多いようです。しかし、旧中小企業金融公庫、いわゆる中小公庫も、現在は日本政策金融公庫となっております。それぞれ、日本政策金融公庫国民生活事業と日本政策金融公庫中小企業事業です。

この国民生活事業と中小企業事業は、同じ会社ではありますが、窓口は全く別です。国民生活事業が無担保で2,000万円までの小口融資を行うのに対して、中小企業事業は、法人向けに大口の融資を行います。従いまして、創業間もない方や小規模な事業を営む企業様は国民生活事業で間に合いますが、企業が成長し、より大きな資金が必要となれば中小企業事業を利用することをおすすめします。

中小企業事業の利用について、年商規模など明確なルールは特にないようですが、弊所が関与した事例でいうと、最も規模が小さな企業様で年商約1億5,000万円です。海外出店資金として4,000万円を調達しました。こちらのお客さまも、国民生活事業からのお借り入れが既にあり、国民生活事業ではこれ以上融資はできないと言われていました。

昔は、国民生活金融公庫と中小企業金融公庫は別々の会社であったため、窓口も別々であることは一目して分かりました。しかし、現在は日本政策金融公庫に集約されているため、中小企業事業が分かりにくくなってしまったのかもしれません。不思議なことに、国民生活事業の方から、「こちらの枠が一杯なので中小企業事業をご利用されてはどうですか。」と中小企業事業を紹介されることも殆どないようです。

国民生活事業で2,000万円近くの借入が既にあり、これ以上の融資は制度上難しいと言われた企業様は、中小企業事業とお付き合いを始めるステージかもしれません。審査は厳しくなりますが、お手伝いしますのでチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

■「力相応攻める」・「己の今の実力を知る」、経営者が常に心掛けねばならない事柄です。近未来の大きな夢と今日の現実は、明確に区分して考えねばなりません。将来大化けする確信を持っていても、今は今、現実を踏まえた経営判断が必要です。

◆自己資金が100万円しかないのに、3,000万円の資金を必要とする事業を起こそうとする社長様も少なくありません。
「こんなにすごいアイデアがある。お金さえあれば…」との思いは理解できますが、「お金がない」のですから仕方ありません。「お金さえ…」ではなく、「(致命的な)お金がない…」のです。

○100万円の自己資金しかなければ、最大でも1,000万円の事業総予算を組んで創業してください。これでもぎりぎりです。
○3,000万円を必要とする事業を始めたいなら、自己資金を最低でも1,000万円は準備してください。これでもぎりぎりです。
○100万円の自己資金しかないのに、3,000万円の事業総予算の事業は始められません。これが現実です。受け入れてください。

◎大きな山を一度に超えることはできません。力相応の小さなステージを一つ一つ越えた後に、大きな夢を実現できます。

◆自社商品やサービスは、まず小さくても成功実績を作ってから、その後に優良な販路を求めてください。
「こんな商品・サービスを作りました。売ってくれる会社を紹介してください。」、突出してすごいものでない限り、この要望には応えられません。

○自社の商品やサービスは、まずは自分の力で販売実績を作ってください。売れている実績を示しながら、より優良な販路を開拓してください。
○実績のない商品やサービスを、優良企業は導入しません。
○実績のない商品やサービスを、第三者が斡旋することもありません。
※斡旋しても成就しません。

◎まずは自力で小さな販売実績を積み上げる以外に方法はありません。当初は、だれにも頼らず自分の力で小さな実績を積み上げてください。

◆優秀な人材が集まらないと嘆く社長様も少なくありません。
自社や自分の現状を棚にあげて、優秀な人材を求める社長様がいますが、これも無いものねだりです。

○良い会社になった時に、優秀な社員が入社します。
○今の実力相応の社員が入社してきます。鏡の原理です。
○まれに、将来性に賭けて入社してくれる人もいます。

◎優でない企業が優の人材を求めても無駄です。これも達観が必要です。まずは優のレベルになること、そうすれば優の人材が入社してきます。

■本当に何もなければ創業してはいけません。

金・人・モノ・販路…創業は、すべてないところから始まると言われますが、本当はそうではありません。本当に何もなければ創業してはいけません。

◆創業資金、これは絶対に必要です。借入金も含めて(自己資金の方が当然ベターですが)一円でも多い方が成功確率は向上します。間違えありません。
◆人、これは創業者自身を指します。ご自身の知見です。他に頼れる人は当面現れません。自分自身を唯一の人材と定義して、しっかり頑張っていきましょう。
◆モノ、これも創業者が創造できるモノでなければなりません。他には当面見つかりません。自らが創造していきましょう。
◆販路、これも最初はご自身で開拓してください。

創業は何もないところから始めるのではなく、自分以外には何もない、から始めてください。自分も含めて何もなければ始めることすらできません。故に、資金がなく、自分が頼りにならない創業は上手くいきません。

日本政策金融公庫の創業融資要件の本質はここにあるように思います。よくできた要件です。
※日本政策金融公庫の創業融資要件は以下です。
◎自己資金要件
◎経歴要件
○事業計画の蓋然性
○事業総予算の妥当性

創業の第一歩の踏み出し方は極めて重要です。
当事務所にご相談ください。

インターネットを経由して個人から中古品を買い取り、インターネットを経由して個人に販売するというビジネスモデルで起業したA社の1期目が終わりました。日本政策金融公庫からの創業融資の調達をお手伝いしたのがお付き合いの始まりです。

A社は、創業当初、利益率は低くても大量に販売すれば採算は合うという目論見で、他社よりも高い買取価格を設定していました。粗利益率が20%の設定です。しかし、粗利益率20%で向こう1年間の資金繰りシミュレーションを行ったところ、キャッシュフローを黒字化するためには、「資金が少ない」「事務所スペースが狭い」「人員も少ない」、という現在のリソースでは実現が難しい売上高が必須であることが分かりました。

よって、A社の社長様は料金の改定を含めた粗利益率の改善に取り組み、期末時点では粗利益率を30%程度にまで向上させることに成功しました。さらに5%程度は改善できる見込みです。A社の1年目は当然ながら赤字でしたが、自己資金と日本政策金融公庫の資金でつなぎながら、粗利益率30%~35%のビジネスモデルを確立することができました。

2期目に入った先日、今期の年間資金繰り計画をA社の社長様と立てました。一定のビジネスモデルは確立できたものの、現状のままでは、すぐに資金がショートする見込みです。まずは信用保証協会の保証付融資の調達に動き、500万円の資金を調達することができました。創業赤字の状態で資金調達ができるのはこれが最後ですので、この資金を使って何としてもキャッシュフローを黒字にしなくてはなりません。そのためのシミュレーションを行いました。

考え方としては2通りです。事務所の拡張、広告費、人材に資金を投入して一気にキャッシュフローの黒字化を目指す。もしくは、借り入れた500万円を出来るだけ使わないようにして、長く継続しながらチャンスをうかがう。前者の場合は計画どおりに売上が立たなければ、あっという間に資金不足に陥ります。後者の場合は、長く生きたところで今よりもじり貧になる可能性があります。

やはり前に攻めようということになり、その前提でシミュレーションを行ったところ、「現在300万円の月商を半年以内に600万円にしなくては資金がショートする。」という結果になりました。半年以内に売上を倍増させるためには、広告費を大きく増やさないといけませんし、事務所も広いところに移転しなくてはなりません。ただ、それを実行したところで、売上が必ず増えるという保証はありませんので、決断するのは大変難しいところです。

しかし、議論を重ねていくうちに、意外なところにボトルネックがあることが分かりました。A社は既に月商400万円程度の商品を持っているにも関わらず、人員不足でネットへの掲載が300万円程度しかできていないということです。売上が読めない広告費を投入するより、アルバイトを増員して掲載数を増やす方がよほど確実です。早速アルバイト代15万円の増加、売上高100万円の増加でシミュレーションを組み直してみると、資金繰りに余裕ができ、十分に実現可能な計画となりました。

中小企業は限られた資金で経営をしなくてはなりませんので、向こう1年程度の資金繰り計画を持つことをおすすめします。ポイントは、難しいものではなくシンプルな計画にすることです。

弊所では資金繰り計画の立案をお手伝いしております。ご活用ください。

日本電産は、著名なカリスマ経営者・永守重信氏の率いる巨大なモーター関連のメーカーです。赤字のモーター関連メーカーを次々と買収して、短期間で再建させ、グループ全体の売上高・シェアを拡大してこられました。
川勝宣昭氏(元日本電産取締役)の著書『日本電産永守重信・社長からのファクス42枚』(プレジデント社)を引用させていただいて、その成功の要因(のほんの一部)を紹介いたします。

■スピードこそ最大の武器…
「見積もりは24時間以内に出させよ」(永守重信会長)

日本電産の創業者・永守重信会長は、ご自身の著書『情熱・熱意・執念の経営』(PHP研究所)の中で、以下のように述べておられます。
「…最近わが社の傘下に入ったある会社と、日本電産の一番の違いはスピードです。その会社は、経営判断のスピード、そして決断してから実行するまでの時間がわが社の三倍ぐらいかかっていました。これ以外に、ほとんど問題点は見つかりません。高い技術力と優秀な人材、安定したマーケットも持っています。少し意識が低い社員、決断の遅い経営者がいただけで、赤字が百億円まで膨らんでしまったのです。いまの時代は、決断と実行のスピードの差が、そこまで会社の命運を左右します。…」

日本電産グループ企業のスピードを物語るエピソードが、川勝宣昭氏(元日本電産取締役)の著書『日本電産永守重信・社長からのファクス42枚』(プレジデント社)で紹介されています。
「…日本電産では「スピード」は社内スピードではなく、社外スピード、すなわち顧客とのスピードを意味します。…私が最初の任地、N社に着任して程なくして、永守社長から届いたファクスには「見積もりは24時間以内に出させよ」の文言が入っていました。それまでのN社は、営業マンが顧客からもらった見積もり依頼を、早くて1週間、遅ければ2~3週間もかけて届けていました。…開発や工場の見積もり担当者は、社内会議の合間合間に(見積もり作成を)やっているので、延び延びになるのです。
…営業マンがお客様のところに通いつめて、やっと見積り依頼をもらいます。…翌日午後には、(見積もりを持って)お客様を訪問することになります。これにはまず、お客様がびっくりします。そして、すぐに試作のオーダーをもらうことができるわけです。…」

現在は行われていないと川勝氏はおっしゃっていますが、日本電産の入社試験「早食試験」のエピソードは有名です。事前に社員が弁当を試食して、一番遅い社員の完食時間が10分だったので、入社試験では10分以内に完食した学生を無条件に合格させたとするエピソードです。入社試験にもスピードを取り入れていたようです。

■「2割の社員の支持があれば、改革は成功する。」
(永守重信会長)

川勝宣昭氏は同著の中で、以下の内容も紹介されています。
「…永守社長からの数百通におよぶファクスをもらいましたが、その中でこの『2割の社員の支持が、改革が始まる条件だ』という言葉は、時に辛酸、時に成功を味わいながら、何度も会社改革を経験した人でなければ引き出せない真実味がこめられている言葉だと思っています。…組織にはいろいろな人がいます。問題意識が高く、リーダーの改革に積極的に呼応する火ダネ社員、大勢が変わればそちらに引っ張られるが、普段は動かない様子見社員、改革に常に冷ややかな目で見ているシラケ社員ないしは抵抗勢力。この中で火ダネ社員は常に少数で、1割もいればいいほうでしょうか。現実はもっと少なく5%ぐらいかもしれません。改革の情熱に燃えるリーダーは、この混成社員集団に働きかけて、まず火ダネ社員をもっと燃えさせます。すると、火ダネ社員は積極的改革勢力となって周りに働きかけてくれるのです。次にリーダーは、この火ダネ社員と一緒に様子見社員に働きかけて、この動かなかった様子見社員を半燃焼状態からやがて燃焼状態に持っていきます。こうしてようやく2割のリーダーに対する支持勢力、火ダネ勢力を確保した瞬間から改革は動き出します。いままでとは嘘のように組織がスルスルと前向きに前進し出すのです。…」

日本電産の事業再建は、被買収会社の資産の切り売りも行わず、人員リストラも、役員陣もそのまま引き継いで、しかも、大勢の幹部を送り込むでもなく、進められるようです。川勝氏は単身で被買収会社に出向いておられます。資産の切り売りや人員リストラに代って行うのは、日本電産流の「意識改革」、2割を変えることなのでしょう。

※ご興味があればご購読ください。
『日本電産永守重信・社長からのファクス42枚』
〔プレジデント社・川勝宣昭氏(元日本電産取締役)著〕

平成29年度第1四半期分(4月~6月)、セーフティネット保証5号の指定業種が発表されました。セーフティネット保証5号とは、業況の悪化している中小企業が利用できる保証制度です。国が指定する業種でなければ利用できない制度ですので、まずはご自身の業種が指定業種に含まれているか、下記中小企業庁のホームページにてご確認ください。

◆指定業種一覧
http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2017/1703215gou.pdf

ご自身の業種が指定業種に含まれていたら、次に、直近3ヶ月間の売上高を前年同期間の売上高と比較します。もし、売上高が5%以上減少していれば対象となりますので、セーフティネット保証制度に申し込むことが可能です。(指定業種かつ売上減少が要件です。)

具体的な申し込みの流れは、まず市区町村長の認定を受け、その後、銀行等金融機関に認定書を持ち込みます。認定の受け方についても、下記中小企業庁のホームページでご確認ください。

◆認定の受け方(中小企業庁HPより引用)
対象となる中小企業の方は、法人の場合は登記上の住所地又は事業実体のある事業所の所在地、個人事業主の方は事業実体のある事業所の所在地の市町村(または特別区)の商工担当課等の窓口に認定申請書2通を提出(その事実を証明する書面等があれば添付)し、認定を受け、希望の金融機関または所在地の信用保証協会に認定書を持参のうえ、保証付き融資を申し込むことが必要です。(引用終わり)
http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_5gou.htm

通常の融資審査は業績が悪いと通りませんが、本制度は業績が悪くなければ利用することができません。また通常の金利は、業績が悪くなればなるほど高くなりますが、本制度は低い金利で利用することができます。業績が悪くなることを歓迎したくはありませんが、そうなった場合には利用したい制度です。

・足元の売上高が一時的に減少しているだけでも利用可能か?
・売上高は落ちているが利益が出ている場合は?
・売上高が伸びている事業と落ちている事業がある場合は?等、

本制度の利用についてご質問やご相談があれば、お気軽にお問合せください。

■情報やヒントは相手を選んで降りてきます。

幸運も不運も同じです。相手を選びます。
求める量と質に応じて降りてくる、と解説した方がわかり易いかも知れません。
○優良な情報を得る人は、そのような生き方をしています。
○優良な情報に恵まれない人は、そもそも情報を求めていないのでしょう。
○幸運をたくさん手にする人は、そのような考え方をしています。
○幸運を手にできない人は、幸運を避ける生き方をしているのでしょう。
原因と結果、ここでも因果の法則が働きます。

■『「カラーバス効果」とは心理学用語の一つです。カラーバスは「色を浴びる」の意味です。意識していることほど関係する情報が自分のところに舞い込んでくるようになるといったものです。例えば、「今日のラッキーカラーは赤」といわれると、街でその色ばかりに目が行くなども、カラーバス効果です。』(引用:ウィキペディア)

○求めている経営者と、求めていない経営者では、得られる成果物に大きな差が出ます。まず、求めなければなりません。
○漠然と求めると分散して、絞り込んで求めると集中して得られます。集中して求めなければなりません。
○良いものを求めると良いものが、そうでないものを求めるとそうでないものが得られます。良いものを求めなければなりません。

■貴方は、今何を求めていますか?何が欲しいですか?

○新商品のアイデアですか?
そうであるなら、新商品について考えながら・悩みながら日々を過ごしましょう。
○良い商談の引き合いですか?
そうであるなら、どんなご縁が欲しいですか?徹底的に欲しいご縁について考えながら日々を過ごしましょう。

◆「あなたは、どうやって重力の法則を発見したのですか?」
「年がら年中、そのことばかりを考えていただけです。」 (アイザック・ニュートン氏)
互いが引き合う重力についての仮説を持ち、そのことを考え続けていたニュートンには、リンゴが木から落ちる光景が、地球とリンゴが引き寄せあっているように見えたのでしょう。カラーバス効果です。

■経営者には求め(考え)続ける胆力が必要です。

ニュートンのように、年がら年中、寝ても覚めても求め続ける胆力を持ち合わせている人には次から次へとヒントが降ってきます。
このヒントを一つ一つ拾い集めて経営に反映することで、会社は出来上がっていくのでしょう。
◆経営者には、ニュートンのように、自社の経営について、年がら年中考え続ける胆力が求められます。これが経営者としての必要条件です。
◆さらに、この考え続ける行為が苦痛ではなく、楽しいと思えることも必要です。これが、経営者としての十分条件です。
これらの必要十分条件を満たせる自分を作り上げるプロセスが経営者としての修業でしょう。特に、創業者と二世には必要です。

■『3:4:3のルール』があります。

いつも上手くいっている上位の30%、常に苦しい下位の30%、鳴かず飛ばずの中位の40%、各グループの差は、経営者の求める対象や方法の違い、胆力の違いに原因があるように思います。
良いものを求め続ける胆力を持ち合わせている上位の30%、求めていない(または、良くないことばかり考えている)下位の30%、中間の40%、このような比喩が当てはまります。

◆『経営者一人の思いで、経営の99%は決まる』(故・船井総研創業者・船井幸雄先生)の言葉を思い出します。
経営者として、厳しい生き方を課して、日々を生き抜きましょう。

敢えて補足しますが、経営者とて人の子です。酒も飲めばいい、ゴルフ・釣りも良いでしょう。しかしながら、酒を飲むことに専念して酒を飲む、ゴルフに専念してゴルフをする、これは違うように思います。
経営を楽しく考えながら、酒を飲み、ゴルフや釣りを楽しんでください。

自社は果たしてどれぐらいの資金調達力があるのか、お分かりになっている経営者様は少ないと思います。

・当社は融資を受けられるのだろうか?
・融資を受けられない理由は何だろうか?
・最大どれぐらい借りることができるのだろうか?
・どうすれば融資を受けられるようになるのだろうか?
・次はいつごろ融資を受けられるのだろうか?

周りを見渡しても、これらの質問に根拠を示して答えてくださる方は殆どいないと思います。

ご質問に最も正確に答えられるのは金融機関の決裁担当者でしょう。ただ、金融機関の担当者は、原則この手の質問には答えません。よって、憶測も含めた様々な意見が出回ることになりますが、決裁担当者は、ある基本となる考え方に基づいて与信判断を行っています。もちろん個別事情やタイミングによって結果が異なることもありますが、「融資審査の基本となる考え方」を知れば、第三者でも、ある程度質問に答えられるようになります。

では、融資審査の基本的な考え方はどこで学ぶことができるのでしょうか。問題はここにあります。残念ながら、融資審査の基本的な考え方を親切丁寧に教えてくれるところは、金融機関の社内研修しかありません。

資金調達力を推し量る知識は、本来借り手である企業側が持っていると大変有益な知識です。例えば、資金あっての事業計画ですので、自社の資金調達力に見合わない計画を立ててしまい、資金難に陥ってしまうようなことは最低限回避できます。言い換えれば、自社の資金調達力が分からなければ、適切な新規設備投資額も分かりませんし、次のファイナンスのタイミングが分からなければ、手元資金を新規事業にどれぐらい費やして良いかも分からないはずですので、資金調達力を推し量る知識がなければ、精度の高い計画を立てることはできません。

…前回のつづきです。

■「働き方改革」は、経営にとって必ずしもマイナスではない、この仮説を持って考えてみたいと思います。

「…日本の2015年度の時間当たり労働生産性は、OECD35カ国中20位で42.1ドルです。米国68.3ドル、ドイツ65.5ドル、イタリア51.9ドル…」〔公益財団法人日本生産性本部労働生産性の国際比較2016年度版から引用〕

日本人が、国を挙げて「働き方改革」に取り組まねばならないほど、日本人は長時間働いています。一方、上記の国際比較からもわかるように、時間当たり生産性は極端に低い状況です。
では、なぜ時間当たり生産性がこれほど低いのでしょうか?

1.労働が間延びしているから、店舗ビジネスでは営業時間が長すぎるから。
2.価格が安すぎるから、総じて皆が安売りを仕掛けているから。
上記の二つの仮説には一定の信憑性がありそうです。
(※諸説ありますが。)

この仮説が正しければ、
1.間延びした労働時間を強制的に縮めてしまう、店舗ビジネスでは営業時間を短縮する。間延びした労働時間を圧縮する、店舗ビジネスでは低収益時間帯の営業を止めることになるため、労働時間を少なくしても収益力は落ちない。労務費を正確に計上しておれば、収益力は逆に向上する。
2.値上げする。適度な値上げでは、減収効果よりも増収効果の方が上回る。上記の新たな仮説もある程度納得できるはずです。

働き方改革は、経営にとって実はプラスではないか?と考える論拠はここにあります。

■サービス残業、未払い残業代…ブラック企業に対する制裁が厳格化されそうです。

「政府の規制改革推進会議(議長・大田弘子政策研究大学院大教授)は、長時間労働などの監視を強めるため、企業に立ち入り検査する労働基準監督署の業務の一部の民間委託を検討する。委託先は社会保険労務士を想定、主要国に比べて見劣りする監視体制を強化…」
※大企業だけでなく、広く法令順守を徹底するための体制整備の姿勢が伺えます。駐車違反の取り締まりを民間の「駐車監視員」に委託して、駐車禁止が一掃された事例などから、実現の可能性も少なからずありそうです。

これは大きな変化をもたらしそうです。
「残業時間の上限規制」や「勤務間インターバル規制」などの法整備を再度行う一方で、その監視体制を充実させようとしています。中小企業に対するお目こぼしも激減しそうな予感がします。

■時流は「働き方改革」です。時流に逆らわず、適合する道を選択しましょう。

大企業と中小企業では背景が異なりますが、その方向性は参考になります。大企業は、「働き方改革」に舵を切りはじめました。パラダイムシフトが始まりました。
以下、ほんの一部をご紹介いたします。

○「ヤマト運輸は値上げ、サービス内容の見直しの検討を始めました。」
○「ドコモは、営業日を年中無休から月1日程度の休業日を導入し、夜8時の閉店時間を1時間繰り上げる店舗を増やす方針で、4月から順次導入する。」
○「博多阪急(福岡市)は、店舗の営業時間の見直しに乗り出す。低層階を中心に、午後9時までだった閉店時間を1時間前倒しする。」
○「すかいらーくは、深夜2時以降朝5時までの深夜時間帯に営業を行っている、987店のうち約8割にあたる店舗を対象に、原則深夜2時閉店、朝7時開店の営業時間短縮を実施することを決定したと発表しました。」
○「低価格路線と24時間営業店舗の拡大で業績を伸ばしたマクドナルドも、営業時間短縮にかじを切った。」

繰り返しになりますが、「働き方改革」は時流です。パラダイムの転換は誰にも止められそうにありません。また、「働き方改革」は経営にとって必ずしもマイナスではない、この点も踏まえて、前向きに適合して行きましょう。
大きな時流、パラダイムの転換に逆行しても良いことは何一つありません。