社長様によって経営のスタンスはそれぞれです。家族を養える
範囲で・・・従業員を養える範囲で・・・100年続く企業を
目指して・・・上場企業を目指して・・・日本を代表するグロ
ーバルな企業を目指して・・・どのスタンスで経営するかは社
長様の自由であり、全てが正解です。ただ、規模の拡大を追求
するのであれば、ファイナンス(資金調達)を上手に活用でき
るかどうかで成長のスピードが大きく変わります。

単純な話ですが、自己資金を300万円持っていたとして、商
品を300万円分仕入れて売るよりも、さらに300万円を借
りてきて、600万円分の商品を仕入れて売った方が、より大
きな売上を創出することができます。社長様が600万円分の
商品を販売する事業力を有しているのであれば、迷わずファイ
ナンスを活用すべきです。

売上だけではありません。専門的には財務レバレッジと呼びま
すが、自己資本だけで経営を行うより、他人資本を取り入れた
方が、自己資本の効率が高まるという事実があります。もちろ
ん、利益がマイナスに振れた時には、自己資本だけで経営を行
うよりも資本効率が大きく低下するというデメリットもありま
すが、社長様が利益を出す事業力を有しているならば、迷わず
ファイナンスを活用すべきです。

世間的に見ても、1代で大きな企業を作った社長様は、ファイ
ナンスを巧みに活用して積極的な拡大戦略をとっています。決
して大企業だけの話ではなく、数億円規模の中小企業でも、資
本主義社会においては、資金力が大きい方が有利であることは
明白です。ファイナンスが重要な経営技術のひとつとされる理
由はそこにあります。

事業力があり利益を出す力のある社長様はもちろんですが、好
景気の時など、利益が出やすい環境が整ったときには、ファイ
ナンスの恩恵にあずかれるチャンスです。景気の流れを見極め
てファイナンスを上手に活用しましょう。

ただ、ファイナンスは経営技術であると述べたとおり、誰にで
も簡単に扱えるものではありません。思ったように調達出来な
いこともあるでしょうし、使い方を間違えば大きなダメージを
受けることになります。ご相談ください。

※相応の会社を作りたいのなら…との前提でのお話です。

『法人とは、自然人以外で、法律によって「人」とされている
ものをいう。「人」とは、法律的には、権利義務の主体たる資
格(権利能力)を認められた存在をいう。つまり法人は、自然
人以外で、権利能力を認められた存在ということになる。』
(ウィキペディアより引用)

我々人間は、一時も休むことなく、継続的な活動を続けていま
す。故に命をつなげています。一方、自然人でない法人は、法
律によって「人」とされていますが、それは無機質な物でしか
ありません。誰かが、ここに魂を吹き込まなければ命を持ちえ
ません。
法人の命は、24時間365日、一時も休むことなく、誰かが
生を与え続けることでのみ存命します。

法人に魂を吹き込めるのは社長です。これが代表者の最初の仕
事、そして、代表者である限り永遠に続けて行かねばならない
仕事です。
○貴方は、貴社(=法人)に生を与え続けていますか?
○眠りについている間、法人に生を与えることをおろそかにし
ていませんか?
○休日に、法人のことを忘れ去っていませんか?
○余暇に呆けて、法人をないがしろにしていませんか?
社長として、24時間365日、全身全霊で会社に生を与え続
ける覚悟が必要です。

社長だけではありません。
店舗の責任者が、本来無機質なお店に生を与え続けることがで
きておれば、そのお店は呼吸を続けます。部門の責任者が、本
来無機質な部門に生を与え続けることができておれば、その部
門は命を持って活動を続けます。
店長・部門長…責任者の責務は、自店・自部門に生を与え続け
ることで、無機質な物を生ある者に格上げすることです。

○「24時間365日眠るな」と言っているのではありません。
○「休みを取るな」と言っているのではありません。
○「余暇を楽しむな」と言っているのではありません。
◎「どんな時も、法人や自部門のことを忘れないであげて欲しい」
と言っているのです。

経営者が経営を考える時間の分母は24時間×365日=
8,760時間です。
執務の時間中は当然のこと、休息時や睡眠時にもできるだけ会
社のことを思いやってあげる必要があります。そうしなければ、
法人は絶命してしまいます。

だからこそ、余暇や休息が必要です。意識して体を休め、気を
晴らす必要があります。
それでも…「ゴルフのことだけを考えながらゴルフをやってい
るような人間を社長に選ばない」と、稲盛和夫氏〔京セラ名誉
会長〕が講演でおっしゃっておられました。

何を目指すかにもよりますが、一定以上の企業体を築き上げた
いと考えるなら、こんな生き方が必要なようです。多くの偉人
が口をそろえておっしゃっておられます。

貴方は、貴社(=法人)に生を与え続けていますか?そして、
このような生き方に賛同してくれる部門長を一人でも持ってい
ますか?自問自答してみてください。

ひとつのプロジェクト資金を複数の金融機関で融資することを、
「協調融資」と言います。大企業が大型の資金調達を行うとき
に、金融機関がシンジケート団を組成して行うシンジケートロ
ーンが協調融資の代表例でしたが、現在では、中小企業でも、
複数行が協調して融資を行うことが珍しくなくなってきました。

元々、金融機関は他の金融機関と積極的に連携を図ることはあ
りませんでした。今でも、民間の金融機関同士が連携を図るこ
とは殆どありませんが、日本政策金融公庫と民間金融機関は積
極的に連携を図るようになっています。

例えば、公庫が単独では融資が難しいと判断した場合、担当者
レベルで知り合いの民間金融機関を紹介してくれたりします。
また反対に、民間の金融機関が公庫に掛け合ってくれることも
あります。

企業側の協調融資のメリットは、大きな金額を調達しやすくな
る点です。少し無理をして大きな店舗を出店する場合など、金
額面で金融機関が融資を躊躇することがあります。このような
ケースでは、単独で全額を融資するのはNGでも、他の金融機
関とリスクを分け合えるのであれば、融資は可能と判断しても
らえることがあります。

ただ、金融機関同士の垣根が低くなったとはいえ、まだまだ担
当者レベルの交流が主体のようです。上手くいけば協調相手の
金融機関を紹介してもらえるかもしれませんが、基本的には自
分で金融機関をコーディネートしなくてはなりません。

また、協調融資は、融資額を半分ずつ2つの金融機関に割り当
てるよりも、どちらかの金融機関を主に据えて、不足部分をも
うひとつの金融機関に割り当てる方が上手くいきます。金融機
関への根回しが必要です。

その事業が将来立ち上がるかどうか?こんなことはだれにもわ
かりません。それでも論理と蓋然性から、高い確率で重要な問
題点を指摘して助言することは出来ます。
(※この確率にあてはまらない天才事業家は除外する前提で読
んでください。)

■以下は、創業時に陥りやすい間違え、財務無策の実例です。

◆1:創業1期目が赤字、2期目に追加の資金調達(融資)を
目論む計画
創業1期目が赤字の時、2期目の資金調達は容易ではありませ
ん。創業時の自己資金と創業融資で、黒字化まで自力で持って
いかないと、次の融資はほぼ受けられません。計画の見直しが
必要です。(財務無策です。)

◆2:創業自己資金300万円で初年度の資金調達金額
3,000万円とする計画
計画自体が無謀に見えます。創業時に、こんな多額な融資はほ
ぼ受けられません。計画の見直しが必要です。(財務無策です。)

◆3:創業自己資金50万円の会社が、創業1期と2期で累計
6,000万円の赤字を出す計画
どんなに経歴や計画書が立派であっても、この計画を支持する
金融機関はありません。そもそも力不相応な計画に見えます。
計画の見直しが必要です。(財務無策です。)

◆4:創業三ヵ年計画の資金繰りの辻褄が合っていない計画
資金繰り計画書を作ったら資金ショートします。資金繰り計画
を持ち合わせていないので、矛盾に気づいていません。計画の
見直しが必要です。(財務無策です。)

◆5:創業三ヵ年計画に、創業融資の返済原資を見出せない計画
返済を賄う利益を計画段階から計上できていません。返済原資
の無い融資を金融機関は行いません。計画の見直しが必要です。
(財務無策です。)

◆6:創業自己資金300万円、資金的にはぎりぎりの計画で
すが、創業融資をとりあえず受けない計画
「とりあえず自己資金でやってみて、必要になれば融資を受け
たい。」この考え方は根本から間違えています。行き詰まった
時に融資を受けられる可能性は高くありません。最初に創業融
資を受けるべきです。(財務無策です。)

■併せて、創業時に陥りがちな楽観主義について言及いたします。

◆1.『計画通りに進む』との楽観主義!
○10期目の会社が立てた11期目の計画、概ね計画通りに進
捗するでしょう。
○3期目の会社が立てた4期目の計画、計画の見積もりには不
安が残ります。
○創業時に立案した1期目の計画、過度に保守的に見積もらな
い限り当たりません。
計画通りに事業は進まないのです。これが実態です。それでも
計画は目安として必要です。目安を立てて、ずれを確認しなが
ら事業を運営するために必要です。

◆2.『少ない費用で立ち上がる』との楽観主義!
計画通りに進捗しなかったとき、それを解決するのは時間です。
当初立てた仮説を修正しながら試行錯誤を繰り返します。事業
自体が的外れでなければ、時間を要しながらも着地します。計
画に対して余分に費やした時間を埋められるのは資金・お金し
かありません。資金不足で頓挫する、これは時間を稼ぐ資金を
確保できないとの意味です。

◆3.『資金が必要になればお金は借りられる』との楽観主義!
計画通りに進まずに、時間が必要、時間を確保するための資金
が必要になった折に、金融機関に駆け込んで、資金を求めよう
とします。これは原則間違えです。難解です。
計画が遅れた、時間を掛ければ軌道に乗る、この蓋然性の説明
は容易ではありません。金融機関は原則、足元の進捗・実績を
基準に、将来生み出すキャッシュフローを勘案して融資の可否
を判断します。
(金融機関が有するのは「日傘」であって「雨傘」ではありま
せん。)
◎どうすればよいか…計画をしっかり立案します。一方で、そ
の計画を鵜呑みにせずに計画が遅れることを想定して資金を最
大限調達し続けること、これが正解です。

◆4.『安くしても売れればやって行ける』との楽観主義!
「とにかく売れさえすれば何とかなる」、このように考える社
長様も少なくありません。「売れなければ何ともならない・始
まらない」は正解ですが、「とにかく売れさえすれば何とかな
る」は正しくありません。
一定額以上売れた時には一定以上の利益を捻出できる値決め・
価格設定は経営上極めて重要です。手間暇をしっかり掛けて、
よくよく考えて、シミュレーションをしっかり行って、腫物に
触るように慎重に決めてください。とにかく値決めに対しては
全身全霊を注いでください。
◎どうすればよいか…安売りは絶対にしない、価格を売るため
の道具に使わない、安売りでしか勝負できない事業なら、事業
自体を再考してください。

信用保証協会による信用補完制度は、中小企業の資金繰りを支
える重要な制度ですが、平成30年4月1日より改正法律が施行
され、その在り方が見直されました。

見直しによる措置は次のとおりとなります。
(中小企業庁のホームページより抜粋)

◇危機関連保証の創設
大規模な経済危機、災害等の事態に際し、予め適用期限を区切
って迅速に発動できる新たなセーフティネットとして、危機関
連保証を創設します。

◇小規模事業者への支援拡充
小規模事業者の持続的発展を支えるため、限度額を拡充します。
(1,250万円→2,000万円)
※保証割合は100%保証を維持

◇創業関連保証の拡充
創業チャレンジを促すべく、創業関連保証の限度額を拡充しま
す。(1,000万円→2,000万円)
※保証割合は100%保証を維持

◇特定経営承継関連保証の創設
事業承継を一層促進するため、法の認定を受けた中小企業の代
表者個人が承継時に必要とする資金(株式取得資金等)を信用保
険の対象とします。

◇経営改善・事業再生の促進、再チャレンジ支援等
経営改善・事業再生を促す保証メニューを充実させるとともに、
抜本再生の円滑化(求償権放棄条例の整備等)を進め、信用保証
協会も経営支援を実施すべく機能強化を図ります。
また、経営者保証ガイドラインの運用開始から一定期間が経過
したところ、保証制度における運用を見直すこと等により、失
敗した場合にも再チャレンジしやすく、思い切った設備投資・
事業拡大ができる環境を整備します。

◇円滑な撤退支援
経営者が撤退を決断する場合にまず必要となる資金(買掛金決済、
原状復帰費用等のつなぎ資金)の調達が円滑に行えるよう、新た
な保証メニューを創設します。

◇信用保証協会における出資ファンドの対象拡大等
信用保証協会が地方創生に一層の貢献を果たすべく、地域の資
金需要に応えるための保証メニューの拡充(引き続き検討中)に
加え、再生ファンド以外のファンドに対しても出資ができるよ
うにします。

創業者、小規模事業者への支援が拡充された他、事業承継、再
生、撤退などの新たな支援が盛り込まれています。活用を検討
してはいかがでしょうか。
詳しくは、以下のホームページをご確認ください。
http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/shikinguri/hokan/index.htm

■社長に必要な資質をひとつだけあげるなら、それは当事者意
識です。社長には強烈な当事者意識、例え何が起きても、それ
が不条理や不運であっても、その運命も含めて100%自分の
責任と瞬時に思えるそれが必要です。

◆うまく行かない時、それはすべて社長ひとりの責任です。
100%です。
・例え約束していた取引を急に断られても…
・例え約束していた融資を突然反故にされても…
・例えたくさん売れると謳った広告の商品が全く売れなくても…
・例え信頼していた部下が勝手な都合で突然辞めると言ってき
ても…
・例え頭上から隕石が降ってきて当たっても…
・例えよくできた詐欺に引っかかっても…
(※詐欺の場合、法的な対応を別次元で検討ください。)
これが社長の立場です。

◆理由は簡単です。
・約束していた取引を急に断られた時は、恨むより先にやるべ
きことを考えねばなりません。
・融資を突然反故にされた時は、恨むより先に資金の目途を付
けねばなりません。
・全く売れなければ、恨むより先に次の売上を作らねばなりま
せん。
犯人探しに浪費する時間は無駄です。次の手を考えることが先
です。この時必要なのは、誰が悪いかではなく、何をすべきか
です。
次に再発防止を考えますが、相手が悪い、自分は悪くない、こ
の前提条件から自分自身の反省、総括はできません。他人に責
任を転嫁する人は、総じて間違えを繰り返します。

◆別の理由もあります。
上手く行かなかった責任を、他人や他社に転嫁しようとする社
長を世間は嫌います。経営の結果責任を負うのが社長の立場で
す。原因なんて本当はどうでもいいのです。要は、上手く行か
なかった、ということです。
他人や他社への責任云々の言動に賛同する人は、(少なくとも
一流人の中には)一人もいません。

■以下、アメリカの著名な牧師、ロバート・シュラー氏の言葉
を著書から引用します。

・もしこれが駄目なら、他にどんな方法があるかを検討しよう。
すべての可能性を調査しよう。
・自分のゴールまでの道、あるいはもう一つの残された道や可
能性を自分で決定しよう。
・自分の決断に責任をもとう。
・自分の運命に責任をもとう。
・自分はあやつり人形ではない。単なるスーパーコンピュータ
ーをはるかに越える魂をもった生き物が、己の意志で判断す
る、これが人間というものだ。そして、これがリーダーシッ
プだ。
自分のことは自分で考えよう。
・必要があれば、自分の精神構造や情緒パターンも積極的に変
えていこう。
・リーダーシップを、他人やほかの権力に売り渡すのはやめよ
う。
・消極的な思考に負けて、自己決断の責任を放棄するのはやめ
よう。
・いちばん先頭に立とう。自分の人生のリーダーは自分なのだ。
・権力におびえて、逃げ出すのはやめよう。
・いつまでも自分の魂の航海のキャプテンでいよう。席を離れ
たすきに、誰かが舵を奪い取って、あなたの肉体や心や永遠
の魂まであやつってしまうことのないように注意しよう。
(引用終わり。)

■決断したのは社長自身です。

・急に断られるような取引をあてにしたのは自分です。
・突然反故にされるような融資に期待したのは自分です。
・たくさん売れるという広告を信じ契約したのは自分です。
・突然辞めると言い出す部下を(辞めないと)信頼したのは自
分です。
・落ちてくる隕石の下を歩いていたのは自分です。
・詐欺に引っかかったのは自分です。

■強烈な当事者意識は社長に必要な資質の一つ目です。

景気のせいで…不況業種だから…△△に騙されて…上手く行か
ない、このような言葉を発する社長も残念ながら少なくありま
せん。すべて自分の力不足です。その運命まで含めて受け入れ
た時に、幸運が待ち構えている、と偉人たちはおっしゃってい
ます。

ある社長様と決算対策のお打ち合わせをした際、「税金を減ら
す方策はないか?」とご相談がありました。資金調達が上手く
行かないとのことで今期よりお付き合いを始めた社長様でした
ので、「納税額を減らすこと」と「資金調達を成功させること」
のどちらを優先しますかと聞き直したところ、「両方だ」とお
答えになられました。

納税額と資金調達はトレードオフの関係です。納税額を減らせ
ば資金調達は難しくなり、資金調達を成功させようと思えば納
税額を増やさなくてはなりません。このシンプルな原理原則に
逆らって、決算前に利益を一生懸命削り、決算後に一生懸命資
金調達に動いている社長様が多くいらっしゃいます。

先述の社長様にもご説明をし、再度どちらを優先させるかをお
聞きしたところ、「本当に利益を出せば資金調達ができるのか
?もし調達ができなかった場合は資金面で苦しくなる。不安だ。」
とおっしゃいました。

同社は増収増益で推移しており、このまま決算を迎えることが
できれば、融資を受けられる可能性は非常に高いと考えており
ましたが、社長様の不安を払拭するために、決算前に500万
円の資金調達を行いました。納税資金です。

その後、予定通り増収増益で決算を迎えることができ、資金調
達に動いた結果、総額で8,000万円の資金調達に成功しま
した。社長様は、「銀行の対応が全然違う。どうしてこんなに
融資をしてくれるのでしょうか?」と不思議そうでした。

どちらの社長様も、「利益を出せば融資を受けられるのは何と
なく分かっていたが、思ったよりも大きな金額を調達すること
ができた。」と口を揃えておっしゃいます。融資の上限は、利
益に対するレバレッジ効果が働くためだと感じます。

融資の上限はキャッシュフロー(純利益+減価償却費)に年数
をかけて算出します。キャッシュフローが100万円であれば、
7年分で700万円が融資の上限です。キャッシュフローが
500万円であれば、7年分で3,500万円となります。
400万円の利益の差で、資金調達力は2,800万円違って
きます。

税金面から考えても同様です。実効税率35%と仮定した場合、
100万円の利益で35万円、500万円の利益で175万円
の税金です。140万円の税金の差で、資金調達力は2,800
万円も違ってきます。

100万円の利益の圧縮が、700万円から1,000万円の
資金調達の機会を失わせています。資金調達が必要な企業様は
ご注意ください。

ビジネスにおける勝ち負け、その原因を分散度合いと価格戦略
から考察してみます。ご確認ください。

■分散度合いからの考察…
◎〔仮説〕1
【勝ち組企業は集中し、負け組企業は分散する。】

もう一度「集中・絞り込み度合い」を再考してください。成熟
し過当競争状態にある日本のマーケットにおいては、勝ち組は
集中し、負け組は分散しています。その原因は、自社顧客の定
義の仕方に起因しています。自社の顧客をしっかりと決め込ん
で、その顧客のみの満足度を追及する施策を充実させてくださ
い。

◆勝ち組企業の絞り込み戦略は…
・「強みに特化した品揃えをする」との信念を持っています。
・「品揃えは少ない方がよい」と思っています。
・「必要な時間帯のみ営業する」との意思を持っています。
・「営業時間は短い方がよい」と思っています。
・「顧客の要望は選別して聞き入れよう」と考えています。
勝ち組企業は、適度な自己都合主義を貫いています。自社がで
きることをしっかり認識できています。得意なこと、取り組む
べきことに特化して、それを求める顧客のみを自社の顧客と定
義しています。限定した顧客に対して、優良なサービスを提供
できています。
※適度な自己都合主義とは、本来の自社の顧客(マイノリティ
ー)のみを対象にすることです。

◇負け組企業は分散しています。
・「できるだけ幅広く品揃えする方がよい」と考えています。
・「品揃えは多い方がよい」と思っています。
・「できるだけ長時間営業する」との意思を持っています。
・「営業時間は長い方がよい」と思っています。
・「顧客の要望はできるだけ受け入れよう」と考えています。
負け組企業は過度な客指向主義に陥っています。自社ができる
こと・なすべきこと、そして、そのサービスの提供相手である
顧客の見極めが不十分です。戦略なきサービスの充実?は、底
なしの過度な客指向を招き、自社の経営体としての疲弊を招き
ます。
※過度な客指向とは、本来自社の顧客でない対象(マジョリテ
ィー)にまで気を使うことです。

■価格戦略からの考察…
◎〔仮説〕2
【勝ち組企業と負け組企業の価格戦略は真逆です。】

◆勝ち組企業の価格戦略は…
・「価格を売るための道具には使わない」との信念を持ってい
ます。
・「価格が安くても売れるわけではない」と思っています。
・「価格は、できるだけ高く設定すべき」と思っています。
・「(仮に)高すぎて売れないことが有っても仕方ない」と思
っています。
・「薄利で売るよりも、売れない方がよい」と考えています。
※うまくいけば、たくさん売れて儲かる「繁盛高収益」の状態
になれます。利益で次の投資ができ、さらなる成長を目指せま
す。うまくいかなければ、「閑散貧乏」の状態です。やり直せ
ます。

◇負け組企業の価格戦略は…
・「価格(安売り)を売るための道具」だと思っています。
・「価格は安い方が売れる」と思っています。
・「価格は、できるだけ安めに設定するべき」と思っています。
・「価格が高すぎて売れない」ことを過度に嫌います。
・「売れないより、薄利でも売れた方がよい」と考えています。
※うまくいってたくさん売れても「繁盛貧乏」に陥ります。儲
からないのに忙しい状態でバランスしてしまいます。後は頑張
って・頑張り続けて…現状維持が関の山です。

価格に対する二つの潮流があります。モノやサービスを安く買
おうとする潮流に巻き込まれることは得策ではありません。も
う一つの潮流、「良いモノ・必要なモノが欲しい。対価は払う」
に乗せましょう。気を付けてください。前者の潮流の方が目立
っています。後者は静かに流れています。
もう一度「価格戦略=値決め」を再考してください。「価格戦
略=値決め」は、経営成績の良し悪しに甚大な影響を与えてい
ます。勇気をもって「価格戦略=値決め」をご再考ください。
ズバリ値上げを検討してください。