2024年3月15日、経済産業省は金融庁・財務省との連携の下、
「経営者保証改革プログラム」の一環として、新しい信用保証
制度を発表しました。この制度は、中小企業経営者にとって重
要な資金調達手段となるものであり、以下にその概要を示しま
す。

■法人である中小企業が、一定の要件を満たすことで、保証料
率の上乗せを条件に経営者保証を提供しなくてもよくなります。

【要件】
1)過去2年間(法人の設立日から2年経過していない場合は、
その期間)において 決算書等を申込金融機関の求めに応じて
提出していること。

2)直近の決算において代表者への貸付金等がなく、かつ、代
表者への役員報酬、賞与、配当等が社会通念上相当と認められ
る額を超えていないこと。

3)直近の決算において債務超過でない(純資産の額がゼロ以
上である)こと又は直近2期の決算において減価償却前経常利
益が連続して赤字でないこと。

4)上記1)及び2)については継続的に充足することを誓約
する書面を提出していること。

5)中小企業者が、保証料率の上乗せにより保証人の保証を提
供しないことを希望していること。

【保証料率】
・上記の3)の要件の両方を満たす場合:
信用保証協会所定の保証料率に0.25%上乗せ

・上記の3)の要件のいずれか一方を満たす場合又は法人の設
立後2事業年度の決算がない場合:
信用保証協会所定の保証料率に0.45%上乗せ

■事業者選択型経営者保証非提供促進特別保証制度の概要
この制度の活用を促進するために、時限措置として保証料率の
一部を国が補助する特別保証制度が設けられます。

【保証料補助】
保証申込日に応じて、次の補助率に相当する額を国が補助しま
す。

・2024年3月15日~2025年3月31日の保証申込分
補助率 0.15%
・2025年4月1日~2026年3月31日の保証申込分
補助率 0.10%
・2026年4月1日~2027年3月31日保証申込分
補助率 0.05%

■プロパー融資借換特別保証制度の概要
経営者保証を求めない取組による信用収縮を防止し、民間金融
機関における取組浸透を促すために、例外的に、既往のプロパ
ー融資(経営者保証あり)から信用保証付き融資(経営者保証
なし)への借換を認める保証制度を時限的に創設します。

【概要】
・保証限度額:2億8,000万円
・保証期間:10年以内
・保証料率:0.45%~1.9%
・取扱期間:2027年3月31日まで

新しい信用保証制度の導入により、より柔軟な資金調達が可能
となり、経営の安定と成長が期待されます。経営者は、自社の
状況に応じて制度を活用することで、資金調達のリスクを軽減
し、事業の発展に向けた取り組みを加速させることができるで
しょう。

お人好しで会社をダメにしてしまう社長は少なくありません。
自己診断をお願いします。

・自分はお人好しだと思う。〔  〕
・自分は従業員に甘いと思う。〔  〕
・自分の判断は、どちらかと言うと甘いと思う。〔  〕
・自分の判断は、どちらかと言うと曖昧だと思う。〔  〕
・自分はNOと言いにくい性格だ。〔  〕

これらにはすべて迷わず×が付く経営を行わねばなりません。

一方、愛の無い経営では人はついてきません。『厳しい経営判
断に愛を添える経営』(稲盛和夫氏)が理想なのでしょう。

お人好し経営に陥る原因を探してみましょう。

■一つ目の原因は『弱さ』です。

○その場しのぎを繰り返す。
大局的な見地を持たずに、目先の事象を「目先迎合、その場し
のぎ」でやり過ごそうとする経営者がいます。問題点逃避型、
経営者には不適格です。

○皆に好かれたい、嫌われたくない。
出来るだけ敵を作らないように発言し行動することは経営者に
とって重要な行動指針です。無意味な敵は不要ですが、時に敵
対しても主義主張を通さねばならない場面もあります。社内に
対しても同じです。全員に良い?社長と思われることは不可能
です。嫌なことを言えない経営者です。考え直してください。

■二つ目の原因は『知見不足』です。

○全体最適が理解できていない。
経営判断においては、常に部分最適よりも全体最適を優先しな
ければなりません。この二つが矛盾する時に、部分最適を容易
に選択してしまう経営者がいます。知見が不足しています。
知見の習得が必要です。

■三つ目の原因は『考え違い』です。

○曖昧な指示しか出さない。お任せ主義。
皆に考えさせること、これはこれで重要です。一方、細かく・
明瞭に指示を出すことも重要です。前者ばかりの経営者は、真
の指揮官とは言えません。特に中小企業は、ほとんどが後者で
あるべきです。ご再考ください。

■四つ目の原因は『愛の取り違え』です。

○ボランティア精神を経営に持ち込み過ぎる。
言うまでもなく会社は社会のためにあります。
・行う事業が社会の役に立つ。
・従業員の雇用と教育を担う。
・納税して利益を世の中に還元する。
これらを実現・継続するために、提供する商品・サービスや役
務の価値と、その価格を図りながら、また、競合相手と戦いな
がら切磋琢磨しています。利益の追求も当然必須です。

一方、経営と比べてボランティア活動は、ある意味容易です。
捧げ続ければよいからです。経営にボランティア精神を持ち込
んではいけません。全く違う二種類の基準は同居できません。
容易なボランティア魂が会社を凌駕します。経営者は、まった
く別の場所・環境でボランティアに励むべきです。
または、「税引き後利益の○○%をボランティア活動に使う」、
このような明確な指針で対応すべきです。
「この商品は、ボランティア的な意味合いで値引きして」これ
をやると会社自体がダメになります。

愛の無い経営者は大成しません。愛は経営者としても、人とし
ても、最も必要な資質の一つです。この前提で、「経営者は心
に一匹の鬼を忍ばせる」経営を行いましょう。お人好しと愛を
区別して判断・行動して下さい。

帝国データバンクによると、2023年の倒産件数は、前年から
30%以上増加し、バブル崩壊以来の高い増加率となったそう
です。また、2024年4月にゼロゼロ融資の返済開始がピーク
を迎えることで、倒産件数がさらに加速すると見られています。

物の本によれば、倒産とは企業が債務の支払いができなくなっ
たり、経済活動の継続が困難になった状態を指します。倒産に
は法的倒産と私的倒産の二つのタイプがあり、法的倒産には再
建型の会社更生法や民事再生法、清算型の破産や特別清算の四
つに分けられます。私的倒産は銀行取引停止と内整理に分類さ
れます。

しかし、困難な状況に直面しても、倒産せずに事業を継続して
いる経営者もいます。家賃や人件費の支払いができない、返済
ができないという状況でも、倒産するわけではありません。基
本的には経営者の意思で法的整理や私的整理などの措置を取る
ことで初めて倒産となります。倒産するかどうかは経営者次第
です。

例えばある社長は、第三者からの資金支援を受けて事業拡大に
挑戦しましたが、新しく出店した店舗がうまくいかず、会社全
体の資金繰りが悪化しました。結局、新店舗の撤退を決断した
ところ、スポンサーからの支援が打ち切られ、これまでの支援
資金の返済を強く求められるようになりました。

ご相談に来られた時は、倒産以外に選択肢がないと思っていま
したが、倒産するかどうかは社長次第であることを説明しまし
た。「債務免除を受けて今が楽になっても、すぐには就職でき
ないし、収入がなくなるのは困る。止めることはいつでもでき
るので、もう少し頑張ってみよう」という結論に至りました。

資金繰り予測を立ててみると、銀行と大家の協力があれば何と
かなることがわかりました。計画書を作成して銀行と大家に相
談したところ、大家は延滞分の分割払いに、銀行は返済猶予に
快く応じてくれました。

約一年後、売上は大きく減少しましたが、わずかながら黒字決
算となりました。スポンサーからの嫌がらせも徐々に収まって
いるようです。社長は「この調子でいけば債務の返済も少しず
つできそうだ。一年前は現状から逃げることばかり考えていた
が、逃げなくて良かった。恐ろしいほどメンタルが強くなった
だけかもしれないが、今考えると何てことはない」と笑ってい
ました。

この選択が正しかったかどうかは分かりませんが、倒産しない
というのも一つの選択肢です。事業継続の可能性を探りたい方
は、是非ご相談してください。

過去の失敗を経て、再起を図ろうとする社長様からの相談を時
折受けます。また、再起の末、成功を収められた社長様も少な
くありません。逆に、失敗を繰り返す社長様もおられます。

■成功するか?失敗を繰り返すか?の差は、過去を総括できて
いるかどうかで決まります。

○「前回失敗した理由が自分以外にある」とおっしゃる社長は、
失敗を繰り返します。運が悪かった、だまされた、景気が…こ
のような言い訳を繰り返す人は、ほぼ間違えなくこれからも失
敗します。

・運が悪かったは、「判断を間違えた」であり、「判断を間違え
るのは自分自身の判断基準が悪かった」からです。
結局、自身の能力不足です。

・だまされた、景気が…これも同じです。
運が悪かった、だまされた、景気が…すべての事象を自身の問
題として認識できない間は、何度でも同じ過ちを繰り返します。

○再起した会社が経営危機に陥る理由は、前回失敗した理由と
同じです。売上至上主義、無管理経営で、ただやみくもに売上
の拡大に奔走する社長が経営危機対策の相談に来所されました。
直近期大幅な増収でありながら、営業赤字に転落しています。
増収でありながら、利益率の大幅な低下、固定費の増大になっ
ています。そして、「売上をいくら伸ばしたら黒字になります
か?」とおっしゃいます。
前回の失敗の理由をお聴きすると、「リーマンショックによる
景気の後退と、銀行の貸し渋り」と総括されます。

○この社長は、「安売り症候群」と呼ばれる病に侵されていま
す。利益率より売上高、経営管理より、我武者羅に売り歩く…
このような病です。前回の失敗も同じでした。今回も、同じ病
が原因で経営危機に直面しています。

■失敗の原因を確実に総括しておかないと、過ちを繰り返しま
す。原因を退治してください。

○(当事務所)「今回の経営危機の原因は、売上至上主義と無管
理経営に端を発した収益の悪化です。この結果を招いたのは、
100%社長様、あなたの責任です。社長は、『安売り症候群』と
いう社長の病を患っています。前回の失敗の原因も、(事情を
お聴きすると)今回の原因と同じです。リーマンショックや銀
行の貸し渋り等ではありません。この病を治療して直さないと、
再度破たんします。」と助言しました。

◎(相談者様)「よくわかりました。どうすればよいですか?」

○(当事務所)「まず、売上高・粗利益率・固定費の三つをバラ
ンスよく構成する月次の経営計画を作ります。売上至上主義を
脱して、バランスの良い経営を目指します。その上で、進捗を
月次で管理します。当事務所(病院)がお手伝いいたします。
『安売り症候群』、利益率より売上高、経営管理より、我武者
羅に売り歩く…この病の完治を目指しましょう。」

■失敗を経験することは、本来無駄ではありません。学んだ分
強くなることができるからです。

○賢明な社長は、前回の失敗の原因をしっかりと自覚して、総
括をしっかり済まされておられます。同じ轍を二度は踏まない、
この決意で臨まれます。

○一方、前回の失敗の責任を、自分以外の外部要因に転嫁され
ておられる社長は、失敗の総括ができていないために、同じ過
ちを繰り返しがちです。

他人の責任で自分が失敗することなど100%あり得ません。失
敗したら、必ず総括して、次に生かしてください。(小さな失敗
でも)これを繰り返すことで、社長力が磨かれていくはずです。

このような相談も承ります。まずは、ご相談ください。

中小企業の多くは、経営状況を把握するために税務会計を行っ
ています。税務会計は、法的な規定に基づいて税金を計算し、
申告するための会計です。一方、管理会計は、企業内での経営
判断や業績管理に役立つ会計です。しかし、中小企業経営者の
多くは管理会計の概念やメリットを十分に理解していないこと
があります。

まず、税務会計が中小企業において一般的であることについて
述べます。税務会計は、法律で規定された税金の計算や申告を
行うため、企業が法令を遵守し税金を支払うための重要な会計
です。多くの中小企業は、税務会計を行うことで、法的な義務
を果たし、税務署とのトラブルを避けることができます。

次に、管理会計という概念について説明します。管理会計は、
企業内での経営判断や業績管理に役立てることを目的とした会
計であり、税額の計算を目的とした税務会計とは異なります。
管理会計では、経営者や経営陣が企業の業績や財務状況を把握
し、経営方針を策定するための情報を集約しています。しかし、
中小企業では、管理会計を行っているところはまだ少ないのが
現状です。

管理会計のメリットは、経営状況をより正確に把握し、効果的
な経営戦略を立てることができる点が挙げられます。また、経
営者や経営陣が目標を設定し、業績を評価するための指標とし
て活用することができます。一方、管理会計の導入にはコスト
や時間がかかるというデメリットが、中小企業に管理会計が浸
透しない理由でもあります。

最後に、管理会計を導入する際のポイントについて述べます。
まず、経営者や経営陣が管理会計の重要性を理解し、積極的に
導入する意識を持つことが重要です。また、適切な管理会計シ
ステムを導入し、従業員の理解と協力を得ることも大切です。
管理会計の導入には、時間と労力が必要ですが、経営の効率化
や持続可能な成長を目指すためには欠かせないものです。

経営者の皆様は、管理会計の基本的な概念や手法を理解し、経
営の効率化や持続可能な成長を目指すために積極的に活用して
いきましょう。管理会計の導入に興味のある方は、是非ご相談
ください。

完璧な人はいません。故に、人はミスを犯します。多くの人達
がやり取りする会社では、ミスが多発しています。それでも、
ほぼ正確に業務を行う会社と、間違えだらけのポンコツ会社が
あります。

ポンコツ会社は信頼を得られません。ミスのリカバリーで利益
の大半が消え去っています。ミスは信頼と利益の大敵です。

ミスが多いのは、そもそも経営者が雑駁で、その思想が会社に
浸透しているからです。経営者の雑駁さを改める事こそ重要で
す。

■自己診断をお願いします。

・自分が書く文章に誤字・脱字はほとんどない。〔  〕
・自分の発する言葉に誤り・失言はほとんどない。〔  〕
・自分は決めたことを継続して実行できる。〔  〕
・自分は時間・納期に正確だ。〔  〕
・自分は出来る限り論理的に考え行動している。〔  〕
・自分は出来るだけ体系的・網羅的な思考を意識している。〔  〕
・自分の考えには一貫性がある。〔  〕

会社を運営するのは、『数百万点以上の部品からなる精巧なプ
ラモデルを組み立てるようなものだ。』と思っています。『精
密に設計し、正確に組み立てる』ことが必要条件です。(十分
条件は別にあります。)最大の敵は、『雑駁な』思考や行動で
す。

■『脱・雑駁』のためには、正確に行動することが重要です。

・自身のアウトプットには、その正確さを求める。
・自身が発する言葉には、その正確さを求める。
・約束は確実に履行する。
・時間は確実に守る。3分遅れではなく、5分前で行動する。
・納期は厳守する。ギリギリではなく、数日早めに納める。

人間は過ちを犯します。時に間違えたり、時に遅刻したり。ゆ
えに、自身を厳しく統制しておかないと、ダラダラの人生にな
ってしまいます。『雑駁』な人は、このダラダラを許容してし
まうのでしょう。ほんの少しの許容が、徐々にその限度を増し
ていきます。
・間違いだらけのアウトプット。
・裏付けや哲学の無い発言。
・細かい約束を反故にしても気にならない厚かましさ。
・3分遅れを許容する時間管理。
・納期ギリギリの業務管理。

行動の雑駁さは三流の証です。行動の正確さ・緻密さを維持継
続しましょう。

■『脱・雑駁』のためには、考え方の正確さが重要です。

・考え方に一貫性を持たせる。
・考え方から論理矛盾を排除する。
・考え方に沿った行動を心掛ける。

一貫した考え方に沿った企業運営を行わなければ、その企業は
体を成しません。ダッチロールします。
・良い商品やサービスは、一貫した考え方から創造されます。
・良い顧客は、企業の考え方に賛同してお付合いしてくれます。
・従業員も同じです。

考え方の雑駁さは三流の証です。一貫した考え方を貫きましょ
う。あわせて、考え方に沿った行動を心掛けてください。

■『雑駁』は企業経営の最大の敵です。

『数百万点以上の部品からなる精巧なプラモデルを組み立てる
(比喩)』会社運営のプロセスにおいて、『雑駁』は最大の敵
です。このウイルスは、シロアリのように企業の屋台骨を蝕み
ます。
・社長は、自分自身の『雑駁さ』を徹底的に排除する努力を続
けましょう。

この前提で、
・社内にはびこる『雑駁さ』に対しても、厳しく対処しましょ
う。『雑駁さ』を互いが責め合う文化を構築しましょう。

一流は、間違えなく『雑駁』ではありません。
一流を目指しましょう。

近年、多くの中小企業が様々な経営課題に直面しています。
その中でも特に顕著なのが「高コスト体質」を抱える企業です。
一方で、新興企業は限られたリソースを最大限に活用し、効率
的な経営を行っています。このコラムでは、高コスト体質企業
と新興企業との対比を通じて、経営改善のポイントを探ります。

高コスト体質企業では、売上が順調でも赤字体質が続くケース
が少なくありません。その背景には、管理部門の人件費負担が
大きいことが挙げられます。売上がピーク時の半分になっても、
管理部門の人員や業務オペレーションが削減されず、コストが
過剰に発生している状態です。一方、新興企業はITツールを駆
使して業務を効率化し、少数精鋭の体制で経営を回しています。

また、高コスト体質企業は相場よりも高い費用を支払っている
ケースも少なくありません。自社開発した管理ソフトのメンテ
ナンス費用が高額であるなど、適切なコスト管理ができていな
い状況です。一方で、新興企業は市販のソフト等を活用し、効
果的なコスト削減策を講じています。

さらに、高コスト体質企業は取引先との関係が硬直化しており、
相場よりも高い料金を支払っているケースも見受けられます。
業務提携の長い取引先に依存し、価格競争力を欠いている状況
です。一方、新興企業は柔軟な取引を通じて、コスト競争力を
維持しています。

高コスト体質企業と新興企業との対比を通じて、経営改善の重
要性が浮き彫りになりました。経営環境の変化に適応し、効率
的な経営を行うことが求められます。コスト削減や効率化を通
じて、競争力のある企業へと変革していくことが必要です。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

前回号からの続きです。

■すでに持ち合わせた知識や経験、身に付いたスキルのみでこ
れからの長い道のりを乗り切る必要はありません。経営の世界
でも、偉人たちによって、新しい発見や発明が日々行われてい
ます。我々凡人は、偉人たちの発明や発見を学んで、それを自
社の経営に取り入れればいいだけです。

現状の社会情勢・経営環境は必ずしも良い状況にはありません。
経営者としての悩みや痛みも少なくないはずです。それでも、
自社を、自分を守り抜き、成長させていかねばなりません。自
身が選んだ道である以上、腹をくくって臨まねばなりません。
では、どうすればよいか?この本質的な質問に対する解はたっ
た一つ、「何をすべきかわからなければ、何をすべきかをわか
るために学びましょう」です。知ることでやるべきことがわか
ります。失敗や不安を減らせます。楽になります。

米百俵(幕末の長岡藩)の話は有名ですが、同様に「日本の未
来を切り開くためには教育への投資が重要だ」との意見に異論
はないはずです。であるならば、会社を良くするためには、ト
ップ自身の学びが何よりも重要なはずです。従業員の教育では
なく社長自身の学びです。

■消防士は火に対する知見を有しています。

故に、大丈夫、危険だ…これらを正しく判断できます。危険な
火災現場に遭遇しても、最小限のリスクで最大限の対応ができ
るのはこのためです。仮に、無知な消防士(?)が消火活動を
行ったとすると、過度に恐れて適切な消化活動ができない、ま
たは、蛮勇で無茶なそれを行うことになるはずです。いずれも
正しい消火活動とは程遠い結果になります。消防士は、日々欠
かさず、火に対する勉強と訓練を積んでくれています。

■社長も経営を「知る」ことが重要です。

経営には不安がつきまといます。原材料の高騰や売上不振等、
不安が極限に達している方も多くいます。具体的な不安、漠然
とした不安…無限の不安が心に降り注いできます。ある種の必
然で仕方ありませんが、これらの不安を軽くする方法はありま
す。

◎人は、わからないことに多くの不安を感じるようです。
・「知る」ことで多くの不安が解消されます。
・「知る」ためには勉強が必要です。
故に、賢明な社長は日々勉強に励みます。

◎「知る」ことで、程度加減がわかります。
・「知る」ことで、ここまでは大丈夫、これ以上はダメ、この
境界が見えます。
・「知る」ことで、経営判断の精度が向上します。
故に、賢明な社長は日々勉強に励みます。

◎「知る」ことで、「自分の知らないこと」を認識できます。
・知らないことを認識すること(=「無知の知」)は重要です。
・「知る」ことに重点的に取り組むことができます。
・「自分の知らないこと」には取り組まない、または、他人の
知恵を借りる癖が付きます。
故に、賢明な社長は日々勉強に励みます。

■過度の心配は払しょくしましょう。チャンスを逃してしまい
ます。逆に、蛮勇もご法度です。会社をつぶしてしまいます。

「無知」な社長は2つのパターンに分かれます。

◆1.過度に恐れて攻めることができない社長。
リスクを過大評価して、一歩も前に進めません。前に向かって
アクセルを踏めない原因の一つは「知らない・わからない」か
らではないでしょうか?

◆2.蛮勇を背景に突っ走る社長。
リスクや実力を省みることなく、とにかくアクセルを踏み続け
ます。過度に邁進できる理由の一つは「知らない・わからない」
からではないでしょうか?

いずれも正しい経営とは程遠い結果になります。

■「知る」ことは大変大きな収穫をもたらします。

社長が経営の勉強をすることには大変大きな意味を持ちます。
その経営成績、収穫に直結します。ただ、社長が勉強すべきテ
ーマは極めて広範囲で、何からどのようにすればよいかわから
ない、とおっしゃる方も少なくありません。まさにその通りで
すが、これにもヒントはあります。

◎不安なことから勉強してください。不安を解消しましょう。

◆「無知」は大きな損失を招きます。損をします。
◆「無知」は不安の大きな原因の一つです。病みます。
「知る」ことで多くの事を解決できます。故に、賢明な社長は
日々勉強に励みます。

すでに持ち合わせた知識や経験、身に付いたスキルのみで乗り
切ろうとせず(経路依存)、新しい知見を手に入れながら前進
していきましょう。

ある社長様と決算対策のお打ち合わせをした際、「税金を減ら
す方法はないか?」とご相談がありました。この社長様は、元
々、資金調達が上手くいかないというご相談でお付き合いを始
めた社長様でしたので、「資金調達を成功させること」と「納
税額を減らすこと」のどちらを優先しますかとお聞きしたとこ
ろ、「両方だ」とお答えになられました。

納税額と資金調達額はトレードオフの関係です。納税額を減ら
せば資金調達は難しくなり、資金調達を成功させようと思えば
納税額を増やさなくてはなりません。このシンプルな原理原則
に逆らって、決算前に利益を一生懸命削り、決算後に一生懸命
資金調達に動いている社長様が多くいらっしゃいます。

先述の社長様にも説明し、再度どちらを優先させるかお聞きし
たところ、「税金を払うと資金面で苦しくなる。利益を出せば
本当に資金調達は可能になるのか?不安だ。」とおっしゃいま
した。

同社は増収増益で推移しており、このまま決算を迎えることが
できれば、融資を受けられる可能性は非常に高いと考えており
ましたが、社長様の不安を払拭するために、決算前に納税資金
として500万円の資金調達を行いました。

その後、節税のことは考えず、決算月まで精一杯営業活動を行
った結果、大幅な増収増益で決算を迎えることができました。
その決算を持って資金調達に動いたところ、総額で8,000
万円の資金調達に成功しました。社長様は、「銀行の対応が今
までと全然違う。どうしてこんなに融資をしてくれたのでしょ
うか?」と嬉しそうでした。

節税よりも調達を優先した社長様が口を揃えておっしゃるのは、
「利益を出せば融資を受けられるのは何となく分かっていたが、
思ったよりも大きな金額を調達することができた。」というこ
とです。想定以上の融資を受けられる理由は、利益に対するレ
バレッジ効果が働くためです。

融資の上限はキャッシュフロー(純利益+減価償却費)に年数
をかけて算出します。キャッシュフローが100万円であれば、
7年分で700万円が融資の上限です。キャッシュフローが
500万円であれば7年分で3,500万円となります。
400万円の利益の差で、資金調達力は2,800万円違って
きます。

税金面から考えても同様です。実効税率35%と仮定した場合、
100万円の利益で35万円、500万円の利益で175万円
の税金です。500万円の利益を100万円に圧縮した場合、
税金は140万円減らすことができますが、資金調達力は
2,800万円も違ってきます。

概ね100万円の利益の圧縮が、700万円程度の資金調達の
機会を失わせています。融資を活用してダイナミックな経営を
したいとお考えの経営者はご相談ください。

前回号からの続きです。

■我々の敵はもはや同業者ではありません。

世界標準の経営理論〔早稲田大学ビジネススクール、入山章栄
教授著、ダイヤモンド社〕の中で、レッドクイーン理論と(新)
レッドクイーン理論が紹介されています。

要点は、「同業者が切磋琢磨してそのスペック競争をしてきた
から日本の製造業は世界1の地位を手中に収めることができた。
一方、同質的なスペック競争に明け暮れてしまったがために、
その大局を見失い、世界標準から取り残された。」この主旨の
記述があります。

スペック競争の利点は、切磋琢磨することで磨かれること、こ
れをレッドクイーン理論と呼びます。一方、同質化競争の短所
は、大局を見失いパラダイムの変化に取り残されることで、こ
れを(新)レッドクイーン理論と呼びます。

※レッドクイーン(赤の女王)理論〔スタンフォード大学・ウ
ィリアムバーネット教授〕の語源は、不思議の国のアリスの続
編、鏡の国のアリス(ルイス・キャロル著)にある「今の場所
に踏みとどまりたければ、今の倍の速度で走れ」という言葉で
す。また、入山教授は、キツネとウサギの生存競争、ウサギは
キツネから逃げるためにその走るスピードが速くなる進化を遂
げてきた、一方、キツネはウサギを捕らえるためにより速く走
る、この無限競争を繰り返しているが、空から飛んでくる違う
敵には防戦できない、との例をあげておられます。

●日本のガラケーメーカーは誰を視ていたのか?
同業者間で過度な同質化競争を行っている間にスマートフォン
にそのすべてを奪われ全滅しました。

●書店は誰と戦っているのか?
電子書籍やネット書店に売上を侵食され続けています。

●自動車メーカーの敵は自動車メーカーではない?
シェアエコノミーの仕組みが、自動車運行の効率化を図り、総
台数を減らそうとしています。

●店舗型旅行代理店の敵は誰?
2000年以降に生まれたネット型旅行代理店に売上が大きく移
行しています。JTBの経営危機は、コロナ禍とは違う次元で
も起きていたはずです。

●TV局の敵は他局ではない?
他局との視聴率競争に明け暮れる間に、その時間をネットフリ
ックスやYouTubeに奪われています。その存在感が薄らいでい
ます。

●機械式時計の敵は誰?
(1980年頃、昔の話ですが)スイスの機械式時計メーカーが
日本のクオーツ時計に壊滅的なまでに叩きのめされました。
65,000人の内5万人が数年で失職したと言われています。

●あなた、貴社は誰と戦っていますか?
・・・・・

■我々の選択肢は以下の二つです。

◆1.「今の場所に踏みとどまりたければ、今の倍の速度で走
れ」
ルイス・キャロル氏の言葉に沿って、現状を維持するために倍
の努力を続ける、【管理的機能の強化・改善】を行う。

◆2.【事業開発≒イノベーション】を行う。

以下をご確認ください。

『多くの並みの中小企業のビジネスモデルはありきたりです。
また、成熟期後期から斜陽期を迎えています。事業をマシーン
に例えると、マシーン自体が2世代前の代物で老朽化していま
す。この状況下においても、ほとんどの経営者は過去の遺物
(事業)に過度に執着(経路依存)して【管理的機能の強化・
改善】に終始しています。本当に必要なのは管理機能の強化で
はなく【事業開発≒イノベーション】です。』(SP経営協会)

【管理的機能の強化・改善】ではなく、【事業開発≒イノベー
ション】を断行しませんか。経路依存を止める、そのための学
びを始めましょう。