「金利や融資枠は銀行が決めるものだから動かせない」と思っ
ていませんでしょうか。確かに正式な内部格付(リスクランク)
は、年1回、決算書をもとに更新されるのが原則です。しかし
実務の現場では、月次の数字と対話次第で“暫定的な先行修正”
が行われるケースも少なくありません。今回はその仕組みと、
銀行ごとの違いに注意しながら活用するポイントをまとめます。

1.銀行が月次で見る5つの指標
・自己資本比率
・営業キャッシュフロー
・売上総利益率
・有利子負債/EBITDA
・借入金依存度
これらを月次試算表で示し、改善の軌跡を共有することで「債
務者ランク改善の兆しあり」と営業店が本部に報告しやすくな
ります。

2.資金繰り表に載せる3つの「日数」
・売掛金回収サイト
・買掛金支払サイト
・在庫回転日数
資金の安定度を日数で可視化すると、非財務評価でプラス材料
になります。

3.事例(地方銀行で確認した複数ケースをモデル化)
製造業A社は、毎月月次レポートを提出。3か月連続で営業
CFが黒字化し、有利子負債/EBITDAが5.2→4.8倍へ改善し
たタイミングで、営業店裁量により金利が年0.3%先行引き下
げ。決算確定後、本部審査で正式に1ランクアップし、条件が
恒久化されました。
※内部格付の階級・先行修正の裁量は金融機関ごとに異なりま
す。本事例は一例であり、具体的な金利や改善幅は取引銀行で
ご確認ください。

4.金融機関別の大まかな傾向
・地方銀行:営業店判断で動く例があり、先行金利修正は
年▲0.2~0.4%程度。
・信用金庫・信用組合:店舗裁量が大きく、先行金利修正は
年▲0.1~0.3%程度。
・メガバンク:本部集中管理でハードルが高く、先行金利修正
は年▲0.05~0.2%程度。

5.提出サイクル&対話術チェックリスト
・月次締めは翌月10日以内
・レポートは「ワンシート+注記」
・改善策の実行状況を3行程度で記載
・四半期ごとに担当者と面談し、数字の裏付けを説明

正式格付は年1回でも、月次レポートは「期中の暫定評価」の
材料になります。数カ月続く改善を数字と言葉で示せば、金利
や枠が前倒しで緩和される可能性があります。ただし運用ルー
ルは銀行ごとに異なるため、必ず取引銀行に確認をしてくださ
い。

前回号の続きです。

経営を変えたい、会社を成長させたい、多くの経営者がそう願
います。しかし、そのためにまず取り組むべきは「戦略の見直
し」でも「人材の刷新」でもありません。最も効果的で、すぐ
に始められる変革の第一歩、それは「時間配分の見直し」です。

経済評論家・大前研一氏は次のように語っています。
「人間が変わる方法は3つしかない。ひとつ目は時間配分を変
えること。ふたつ目は住む場所を変えること。3つ目は付き合
う人を変えること。」
ここでは「時間配分を変えること」について言及します。

この言葉は、経営者の自己革新において極めて本質的です。な
ぜなら、時間は唯一、誰にとっても平等に与えられた資源であ
り、その使い方次第で成果が大きく変わるからです。

【1】今の「時間の使い方」は、未来の成果を決定している

経営者の1日は忙しく、会議、現場対応、経理、営業、トラブ
ル処理と、やることは山積みです。しかし、その多くは「緊急
だが重要ではない」仕事に追われていることが少なくありませ
ん。未来を変える仕事、戦略立案、人材育成、新規事業の構想、
資金調達の検討、こうした「重要だが緊急ではない」仕事に、
どれだけ時間を使えているかが経営者の成長を左右します。

【2】時間配分の見直しがもたらす変化

経営者が1日のうちたった1時間でも、「考える時間」「学ぶ
時間」「戦略を練る時間」にあてれば、半年後、1年後の企業
の方向性は大きく変わります。

・毎朝30分、思考を整理するノートを書く
・週に1時間、専門書を読む
・月に1日、オフィスを離れて未来を考える時間を確保する
こうした小さな時間の投資が、長期的なリターンを生むのです。

【3】「経営者でなければできない仕事」に集中せよ

時間を再配分する際、まず見直すべきは「自分でやらなくても
いい仕事」にどれだけ時間を使っているかです。

・経理処理を細かくチェックしていないか
・現場の細部に口を出しすぎていないか
・社員ができる仕事を、自分が抱え込んでいないか
こうした業務を手放し、「経営者にしかできない仕事」未来を
描き、方向を決め、資源を配分する仕事に時間を集中すべきで
す。

【4】時間の再配分は「行動の習慣化」から始まる

人は、自分が習慣化していないことには時間を割きません。だ
からこそ、まずは「変えたい時間の使い方」を習慣に落とし込
む工夫が必要です。

・朝イチに「今日の重要タスク」を決める
・毎週○曜日は「学びの時間に充てる」と決めておく
・月初の1日は「戦略レビューの日」とスケジューリングする
このように、あらかじめ時間をブロックし、“意図的に確保す
る”ことで、時間の質が変わり、経営者自身の視座も高まって
いきます。

【5】「忙しい=成果が出ている」と錯覚しない

多くの経営者が「忙しさ」に充実感を見出してしまいます。し
かし、忙しさは「思考停止」の温床にもなります。忙しい状態
こそ、時間配分を根本的に見直すサインだと捉えるべきです。

・自分がいなくても回る業務は手放す
・判断が遅れる業務は、最初から人に任せる
・アポイントは「緊急性」ではなく「戦略性」で優先順位をつ
ける
こうした意識改革により、本当に集中すべき仕事に時間が戻っ
てくるのです。

【結言】時間配分を変えることが、経営の未来を変える

中小企業の経営環境は、日に日に複雑さを増しています。判断
の質、スピード、視野の広さ、これらすべては、経営者自身の
「時間の使い方」の中から生まれます。

会社を変えたければ、まずは自分を変える。自分を変えるには、
何よりも先に「時間の再設計」を行うべきです。その第一歩は、
カレンダーの見直しからでも構いません。あなたの時間の流れ
を変えることが、社員の時間の流れを変え、最終的には会社全
体の成長サイクルを変えていくのです。

「本体の業績は伸び悩んでいる。だから事業Aだけを切り出し
て新会社を作り、ゼロから資金調達できないか」。このような
相談をお受けすることが、しばしばあります。しかし結論から
言えば、株主も代表者も同じままでは“新会社”とは見なされず、
融資の扉はほぼ開きません。

まず、日本政策金融公庫や信用保証協会は「事業の実態」を重
視します。法人番号が変わっても、経営者と株主が同一なら
“同じ会社”と判断され、既存企業の評価(赤字・リスケ中など)
がそのまま反映されます。
民間銀行が無担保・無保証のプロパー資金を、新設法人にいき
なり出すことも極めてまれです。

「では株主と代表者を他人に替えれば?」という声もあります。
確かに形式上は可能性が残りますが、それはもはや自分の事業
ではなく、資金調達の権利も意思決定も他者の手に渡ることを
意味します。新会社の経営者として責任が取れないまま資金調
達に成功しても、その後の経営が順調に進む保証はありません。
むしろ、経営権と資金コントロールを失うリスクが高まります。

金融機関が見ているのは「数字」と「態度」です。赤字でも、
借入のリスケ中でも、改善計画に沿って着実に利益を積み直す
姿勢こそが最大の信用回復策です。実績を積み、約束を守り、
報告を徹底する。地味ですが、これ以外に扉を開く方法はあり
ません。

もちろん、新会社設立を完全に否定するわけではありません。
事業を守るための法的整理や持株会社化など、合理的な再編が
必要な場面もあります。ただし前提は、「既存会社が示した誠
実な改善の軌跡」です。そこを飛ばして“形だけの別会社”に逃
げ込んでも、信用はゼロどころかマイナスからのスタートにな
ります。

金融機関は努力の痕跡を数字で測ります。赤字縮小→単月黒字
→通期黒字、この階段を上る企業には、確実に追加融資の可能
性が拡がります。「信用は借り換えできない」。だからこそ、
自社の帳票に一つでも多くの黒数字を刻むことが、次の資金調
達を呼び込む最短ルートになります。

もし改善の階段を上れないままでは、残念ながら市中金融機関
からの調達は現実的ではありません。その際は、個人的な支援
者や事業パートナーを探し、別ルートでの資金確保を検討する
ことになります。

形式だけを変えても評価の土台は変わりません。まずは本業の
改善と信頼の回復を図り、その上で組織再編や新会社設立を検
討することが、結果的に最短ルートとなります。

変革を志すとき、まず何を変えるべきか。経営戦略、商品、社
員、財務体質。確かにどれも重要ですが、もっと本質的で、か
つ確実に自分と会社を変える方法があります。

それは、「付き合う人を変えること」です。

経済評論家・大前研一氏は、次のように述べています。
「人間が変わる方法は3つしかない。時間配分を変えること。
住む場所を変えること。そして、付き合う人を変えること。」

この3つの中で、経営者が最も効果的に自分を変革できる手段
が、「誰と付き合っているか」を見直すことだと私は思います。

私たちは、気づかぬうちに周囲の人間の影響を大きく受けてい
ます。日々の会話、価値観、考え方、判断基準、時間の使い方、
そのほとんどは、自分の中から湧き出てきたものではなく、
「誰と交わっているか」によって決まっているのです。

経営者として、もし最近「成長が止まっている」「新しい視点
が湧かない」と感じているなら、それは人間関係の停滞が原因
かもしれません。日々付き合っている人が、あなたに変化と刺
激を与えているかどうか、まずはそこを点検してみてください。

以下に、経営者が人間関係を見直すべき具体的なポイントを提
言します。

【1】“反応型”の人間関係から、“目的型”の人間関係へ

取引先、地元の仲間、同業者、親しい古くからの付き合い、こ
れらは決して悪いものではありません。ただし、慣れ合いや惰
性だけの関係になっていないかを見直してください。経営者に
は、「学びたい」「刺激を受けたい」「意見を交換したい」と
いう目的意識を持った関係構築が必要です。

【2】「異質な人」と定期的に交流を持つ

同じ業界の人とばかり話していても、新しい発想は生まれませ
ん。異業種の経営者、異世代の起業家、海外で活躍している人、
専門家、アーティスト、価値観の異なる人との対話は、思考の
幅を広げ、柔軟な発想を可能にします。あえて「違和感のある
人」と会うことで、自分の思考回路を再構築できるのです。

【3】尊敬できる人とつながる

自分より経験豊かで、実績を積み重ねてきた経営者との交流は、
言葉にならない多くの学びをもたらします。成功している経営
者と定期的に会うだけで、考え方や判断スピード、経営者とし
ての「器量」の違いを肌で感じることができ、自らの基準も引
き上げられます。

【4】「人間関係の棚卸し」を実行する

1カ月に一度でも、自分が最近どんな人と時間を過ごしている
かを可視化してください。その中に、「ただの習慣的な付き合
い」「会うたびにエネルギーが削られる人」「過去の自分の延
長にいる人」はいないでしょうか。逆に、「話すと前向きにな
れる人」「自分に刺激を与えてくれる人」が足りていないなら、
意識的に時間をつくるべきです。

【5】人間関係を変えることを恐れない

「長く付き合ってきた人を変えるなんて申し訳ない」「断ち切
るのは失礼だ」という気持ちは理解できます。しかし、あなた
の時間と精神力は有限です。そしてそれは、あなた一人のもの
でなく、社員や顧客、家族の未来にも関わっている資源です。

成長したい、変革したいと本気で思うなら、付き合う人を変え
るという“決断”が必要です。それは他人を切ることではなく、
未来に向かう自分を選び直すことなのです。

中小企業の経営は孤独です。しかし、孤立してはいけません。
あなたの周囲に、あなたの思考を引き上げ、行動を促し、視野
を広げてくれる人はいますか?

もし今いないなら、今日からつくり始めましょう。誰と付き合
うかを変えれば、自分が変わります。自分が変われば、会社も
変わります。そして、その変化はやがて、社員と社会を巻き込
んだ“次の成長”へとつながっていくのです。

※銀行融資プランナー協会の正会員である当事務所は、クライ
アントに『お金の心配をできるだけしない経営を行ってもらう』
ための新しい機能(=金融機関対応を含む財務の機能)を持つ
ことを宣言いたします。
我々は、『税理士』ではなく、『新・税理士』です。
遠慮なくご相談ください。

「いつでも借りられる状態」を本気で目指すなら、 プロパー当
座貸越枠(銀行が与信の“最上位”と位置づける融資形態)の獲得
がゴールになります。
枠さえ確保できれば、必要なときに素早く資金を引き出し、返
済も自由。季節変動や大型受注への対応力が格段に高まります。

1.資金需要は“経常運転資金”で示す
まず前提として、銀行が枠を設定するのは「常に回し続ける運
転資金がある企業」です。売掛金・在庫・買掛金の実態を月次
で整理し、「日常的にこれだけの資金が回っている」と明確に
示しましょう。

2.利益こそ信用の源泉
当座貸越は、期日返済のない“出し入れ自由”の借入です。銀行
が安心して枠を出すには、「利益で将来の返済能力が継続的に
確保できる」という確信が欠かせません。赤字決算が続く企業
に枠はまず付きませんので、毎期きちんと黒字を積み上げる姿
勢を試算表や決算書で示すことが王道です。

3.自己資本で“余裕”を見せる
利益が蓄積され自己資本が厚くなるほど、バランスシートは強
固になり、銀行の与信判断は大幅に好転します。自己資本は
「返さなくてよい内部のクッション」ですので、ここが薄い間
は、枠ではなく1年以内の短期融資で留め置かれがちです。ま
ずは利益留保を最優先に考えましょう。

4.定期的な情報開示と対話
枠は“一度取ったら終わり”ではありません。銀行は最新情報で
企業を評価し続けます。月次試算表・資金繰り表をタイムリー
に提出し、四半期ごとに事業の進捗を共有する習慣を持てば、
「この会社は管理水準が高い」という印象を与え、枠の維持・
増枠に繋がります。

5.枠は“信用の循環装置”
当座貸越枠は資金を手元に置くためのものではなく、“信用を
循環させる装置”です。枠があることで、社内キャッシュを厚
めに保ち、仕入先や人材への投資を機動的に行えます。結果と
して利益が生まれ、自己資本が増え、さらに枠が拡大するとい
う好循環のスタート地点が「プロパー枠の獲得」です。

・経常運転資金を根拠に需要を提示する
・黒字体質を継続し、自己資本を厚くする
・情報開示と対話で銀行に安心感を与える

この三本柱を地道に積み上げれば、プロパー当座貸越枠は決し
て夢物語ではありません。枠を手に入れ、資金繰りの自由度を
高めて、次の成長ステージに備えましょう。

デジタル化が進む現代、WEBマーケティングは中小企業にとっ
て「選択肢」ではなく「必須戦略」となりました。
特に2025年以降は、SEOからLLMO(大規模言語モデル最適化)
への移行期に差し掛かり、出遅れた中小企業にも大きなチャン
スが訪れています。その背景、成功事例、今後の戦略について
解説します。

■1.なぜ中小企業にWEBマーケティングが重要なのか?

●1.小規模でも全国・世界にリーチできる

中小企業は資金力や人材に制限がある一方で、WEBを活用すれ
ば限られた資源でも大きなリーチが可能です。自社の強みを明
確に打ち出すことで、ニッチ市場でも圧倒的存在感を発揮でき
ます。

●2.広告よりも“育てる”型の資産になる

SEOやSNS運用、ブログなどのコンテンツマーケティングは、
広告と異なり“支出型”ではなく“資産型”の施策です。時間をか
けて作った記事は、数年後も継続的に集客し、問い合わせを生
み出します。

●3.顧客と直接つながる「信頼づくり」の場

BtoCでもBtoBでも、顧客はまず「検索」から入ります。情報
発信を続けることで、企業ブランドへの信頼が生まれ、競合と
の差別化にもつながります。

◆成功事例1:地方の工務店が月商3倍に

山形県の小さな工務店A社は、SEO施策とInstagramを連携し、
施工事例や住まいの知識を定期発信。
地元キーワード「山形 自然素材 住宅」で検索上位を獲得し、
問合せ数が半年で5倍に。結果、広告費ゼロで月商が約3倍に
伸長。
◎ポイント:地域性×専門性×SEOの掛け合わせ

◆成功事例2:老舗和菓子店がEC化に成功

創業70年の和菓子店B社は、コロナ禍で実店舗の来客が激減。
自社ECサイトを立ち上げ、ブログ記事で「贈答マナー」「和菓
子の意味」などを発信。検索流入が月1万PVに達し、EC売上
が前年比280%に。
◎ポイント:伝統文化×ストーリーSEO×体験価値

◆成功事例3:BtoB製造業がリード獲得10倍

金属加工業C社は、法人営業の縮小を機に、自社ホームページ
に「技術ノウハウブログ」と導入事例を掲載。検索から大手企
業の技術者が流入し、年間50件以上のリード獲得に成功。
◎ポイント:専門性×技術資料×長期SEO

■2.今は“出遅れ組”にとってもチャンスの時代

2025年6月以降、Google検索はAI Overviews(AIO)やチャ
ット型検索の導入により大きく変化すると予測されています。
従来のSEO(キーワード中心)ではなく、「文脈・意図・構造」
で評価されるLLMO時代(大規模言語モデル最適化)に突入し
ます。

ここでの重要点は、
・古い記事や量産型コンテンツはリセット対象に
・出遅れた企業でも、質の高いコンテンツを出せば一気に上位
を狙える
・GoogleもAI主導の“公平な検索”を目指している

つまり、過去にSEOの積み上げがなかった中小企業こそ、「今」
から本質的な施策を始めることで逆転のチャンスが広がってい
るのです。

■3.今こそ動くべき!中小企業のWEB戦略チェックリスト

・SEO対策の現状確認…サイトはGoogle検索で上位に出ている
か?
・ストーリーあるコンテンツの有無…顧客が読みたくなる情報
が整っているか?
・SNSやメールとの連携…流入後の「ファン化」導線があるか?
・モバイル・スピード対応…UXや技術的最適化ができているか?
・AI検索への最適化(LLMO対応)…構造化・FAQ・会話形式
の設計がなされているか?

中小企業にとって、WEBマーケティングは「広告の代替」では
なく、「未来への布石」です。今こそ、出遅れを恐れず、本質
的な価値提供に向けて発信を始めましょう。AI時代だからこそ、
人間らしさと信頼性のあるコンテンツが最大の資産になります。

「借りたお金は返すもの」。
もちろんこれは基本的な感覚ですし、個人の生活では当たり前
のことです。
ですが、企業経営、特に中小企業における運転資金の考え方は、
少し事情が異なります。

運転資金とは、事業を毎日動かしていくために、常に社内に存
在していなければならないお金です。
仕入れ→製造→販売→回収という流れの中で、売上が回収され
る前に出ていく支払がある限り、資金の循環は必要不可欠です。

よくある誤解に、「借りた運転資金を少しずつ返していけば、
やがて健全になる」という考えがあります。
ですが、正常な経営をしている限り、運転資金は返して終わり
ではなく、使いながら維持していくものです。
むしろ、事業が成長するほど必要な運転資金は増えていきます。
「一度借りて返しきる」という考え方は、事業の実態に合って
いないのです。

この考え方は、銀行の仕組みにも似ています。
たとえば銀行は、預金者から預かったお金をすぐに全額返すこ
とを前提にはしていません。
社会全体でお金が動いているという前提のもと、「一定の残高
が常に回っている」状態を保っています。
企業にとっての運転資金もまさに同じです。返し切ることを前
提にするより、“回し続ける”ことを意識すべき資金だと言える
でしょう。

もっと身近な例を挙げれば、従業員の給与や家賃の支払もそう
です。
こうした定常的な支出は、毎月確実に発生します。にもかかわ
らず「一度借りて返済すればOK」という姿勢では、資金はす
ぐに足りなくなってしまいます。
必要なのは、「毎月かかるお金は、常に循環する構造として資
金を組んでおく」という発想です。

また、運転資金と設備資金は必ず分けて考えるべきです。
設備資金は一度の支出(機械、車両、内装工事など)に対して、
回収計画に基づいて返済していきます。
一方、運転資金は事業を動かし続ける限り必要な“循環資金”で
す。
これを同じように返済してしまうと、キャッシュが回らなくな
るのです。

ですから、運転資金は「返済しきる」のではなく、不足すれば
追加で借りるというスタンスが基本です。
これをネガティブにとらえる必要はまったくありません。むし
ろ財務戦略としては正しい選択です。

資金を使いながら回す、そして必要なときに追加で確保する。
この柔軟性こそが、経営の継続性と安定性を生み出します。
ぜひ一度、自社の運転資金に対する考え方を整理してみてくだ
さい。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

インターネット検索の主役だったGoogle検索に、革命的な変化
が訪れています。2024年以降、「AIモード」や「生成AIによる
概要表示」が導入され、検索結果のあり方が大きく変わりつつ
あります。これまでのSEO(検索エンジン最適化)戦略に依存
してきた中小企業にとって、この変化は「転機」であり「チャ
ンス」でもあります。

■ なぜSEOだけでは不十分になるのか?

Google検索では、AIが複数のサイトを読み取り、自動的に要約
を表示する「AI概要」機能が始まっています。これにより、ユ
ーザーはサイトをクリックすることなく答えを得られるように
なりました。
これまでのSEO対策では「検索結果の1ページ目に表示される」
ことが最重要でしたが、今後は「AIに引用される情報になるか
どうか」が新しい判断軸となります。

■ 中小企業が今すぐ実践すべき5つの戦略

●1.E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の強化
AIは信頼できる情報を優先的に引用します。Googleも評価基準
としてE-E-A-Tを明確にしています。
・実名での執筆や監修者の記載(例:代表者のプロフィール)
・お客様の声、導入事例、失敗談も含めたリアルな体験談
・自社の専門性を示す継続的な情報発信

●2.構造化データの活用と読みやすいページ設計
AIが情報を読み取るには「構造」が重要です。HTMLの見出し
タグ(h2, h3)や表、箇条書きなどで論理構造を明確にしまし
ょう。
・見出しごとの情報整理
・表形式での価格比較やサービスの特徴紹介
・Q&A形式のFAQセクションの整備
これにより、AIが「引用しやすい情報」として認識しやすくな
ります。

●3.マルチメディアを活用した発信
テキストだけでなく、動画や画像、音声といった多様な情報形
式のニーズが高まっています。
・YouTubeに製品解説やお客様インタビュー動画を投稿
・InstagramやPinterestで視覚的に魅せる商品画像を共有
視覚・聴覚で伝える情報は、ユーザーの記憶にも残りやすく、
SNS拡散の起点にもなります。

●4.LINE公式やメールマガジンによる顧客の囲い込み
検索経由の集客が不安定になる中、「自社メディアでの顧客接
点」を確保することが急務です。
・LINE公式でのキャンペーン配信、予約受付
・メールマガジンでのお役立ち情報提供、特典案内
・ポイント制度や会員限定の情報でリピート率を向上
1度つながった顧客と定期的に接点を持ち、LTV(顧客生涯価
値)を高める戦略が重要です。

●5.Google以外の検索エンジンも視野に入れる
MicrosoftのBingやYou.comなど、AI機能を前面に出した検索
エンジンが成長中です。
・BingはChatGPTをベースにした要約検索を導入済み
・海外市場を狙う場合はYou.comなど新興検索も要注目
多様な検索環境に備えることが、将来的なアクセス確保に繋が
ります。

■ 結論:SEOは「終わる」のではなく「進化する」

AIの進化により、「検索上位を取れば集客できる」時代は終わ
りつつあります。しかし本質は変わりません。「信頼される情
報を提供する企業」が、AIにもユーザーにも選ばれるのです。
SEOはテクニックではなく、「ユーザーとの信頼関係構築の手
段」へと進化しているのです。

中小企業は、大企業にはない「現場の経験」や「顧客に寄り添
う姿勢」を武器に、今こそ情報発信力を強化しましょう。

新年度に入り、中小企業庁から「2025年度 中小企業施策利用
ガイドブック」が公開されました。
このガイドブックには、経営力強化や資金繰り、事業再構築、
事業承継、創業支援など、あらゆる経営フェーズに対応した支
援制度が一覧形式で整理されています。

「制度はたくさんあるけど、自分には関係ない」と思っていな
いでしょうか?
しかし、いざというときに頼りになる制度を知っているかどう
かで、経営の打ち手には大きな差が出ます。支援策は“困って
から”ではなく、“困る前”に活用できるようにしておくことが
重要です。

たとえば、金融分野では日本政策金融公庫や信用保証協会を通
じた低利融資、セーフティネット保証、資本性ローンなどの制
度が整理されています。これらは資金繰りが厳しいときだけで
なく、成長資金として活用することもできます。

また、経営力の強化に関する支援も多彩です。専門家派遣や経
営革新計画の認定支援、DXや事業再構築に関する補助制度も
紹介されています。こうした支援は、補助金の取得だけでなく、
銀行との信頼関係を築く材料にもなり得ます。

さらに、事業承継やM&A支援といった中長期的な課題への対
策も強化されています。経営者自身の引退や世代交代が近づい
ている場合、早期にこうした制度を確認しておくことが大切で
す。

ガイドブックの中身はボリュームがありますが、「今の自社に
関係あるところだけ見る」だけでも十分価値があります。必要
であれば、当事務所に相談しながら読み解くこともおすすめで
す。

支援策を「制度」として眺めるのではなく、「経営の引き出し
のひとつ」として持っておくと環境変化への対応力がまったく
違ってきます。

中小企業向けの支援策は年々アップデートされています。せっ
かく用意された道具を使いこなすためにも、一度この機会にガ
イドブックをチェックしてみてはいかがでしょうか。

■2025年度版中小企業施策利用ガイドブック
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/g_book/2025/index.html

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

人口減少、物価上昇、価値観の多様化等、激変する環境の中で、
中小企業が持続的に成長するためには、「新たな柱となる事業」
を育てる必要があります。しかし、新規事業と聞くと、「特別
な才能が必要」「資金が潤沢でなければ無理」と思われがちで
す。
実際には、多くの中小企業が“身近な不便”や“顧客の声”から新
たなビジネスを立ち上げ、成功しています。以下に、その実例
とともに、経営者が取るべき具体的なアプローチを5つに分け
て例示します。
※ネット上から引用させていただきました。

■1.「顧客のつぶやき」を見逃すな
事例:株式会社山崎製作所様(大阪府/金属加工業)

山崎製作所は、金属部品の試作品を作る町工場です。あるとき、
得意先の設計担当者が「試作品って、外注先に何度も図面を送
り直すのが面倒」とこぼしたことをきっかけに、自社でWeb
で図面を送受信・確認・修正できるシステムを独自開発しまし
た。このサービスは他社からも好評を得て、現在は外部企業に
もSaaS型で提供、売上の約20%を占める新規事業に成長して
います。

顧客の“ぼやき”には、必ず改善の余地が潜んでいます。「もっ
とこうなればいいのに」という声に耳を傾けることが、新規事
業の第一歩です。

■2.「小さく試す」ことでリスクを最小化
事例:有限会社ウメダ様(香川県/菓子製造業)

老舗和菓子店のウメダは、観光客の減少で売上が低迷していま
した。試験的に「和菓子×プロテイン」というユニークな健康
志向商品を開発し、まずは店頭に週末限定で並べたところ、若
年層やスポーツ愛好者にヒットしました。その反響を受けてEC
展開をスタートし、現在では全国に出荷する定番商品に育ちま
した。

初期投資を抑えた「小さなテスト販売」こそが、無駄なコスト
をかけずに市場の反応を得る最善策です。失敗しても傷は浅く、
成功すれば拡大の起点になります。

■3.「外部との接点」で視野を広げよ
事例:株式会社スワニー様(香川県/カバン製造)

キャリーバッグの老舗メーカー・スワニーは、製品展示会で介
護関係者から「シニア向けに、歩行補助になるキャリーバッグ
が欲しい」という声を受け、歩行支援機能付きバッグ「スワニー
ウォーカー」を開発しました。これが大ヒットし、介護市場に
新たな展開を切り拓きました。

異業種交流会、展示会、地域の勉強会などに参加し、既存の業
界の枠を超えたニーズに触れることが、新たな市場の扉を開く
きっかけになります。

■4.「社内から発想を募る仕組み」を持て
事例:有限会社エムアイエス様(新潟県/建設業)

現場作業員からのアイデアで誕生したのが、施工現場向けのス
マホ用現場管理アプリです。もともとは自社の業務効率改善の
ために作ったものでしたが、他社にもニーズがあると気づき、
ライセンス販売をスタートしました。現在では本業と並ぶ収益
源になっています。

「現場の声」「若手社員の気づき」など、ボトムアップの発想
を経営の意思決定に結びつける文化づくりが、企業にイノベー
ションをもたらします。

■5.「やめる」ことから始めよ
事例:株式会社マルヒデ岩崎製茶様(静岡県/製茶業)

伝統的なお茶の卸販売を行っていたマルヒデ岩崎製茶は、価格
競争の激化に直面していました。そこで思い切って卸売業から
撤退し、「海外の富裕層向け」の高級茶葉ブランドを立ち上げ
ました。海外展示会に積極出展し、現在では売上の8割を海外
が占める成功企業になりました。

新しい挑戦には、「やめる決断」が伴います。経営資源は有限
です。思い切って捨てることで、新規事業に集中できる土壌が
生まれます。

■未来は「外」にある

新規事業は、社長室でひねり出すものではありません。現場に、
顧客に、取引先に、そして異業種に、未来のヒントは、すでに
存在しています。中小企業にとって重要なのは、身近な情報を
「仮説」に変え、小さく実験しながら育てていく行動力です。

変化を恐れず、社内外の声に耳を澄ませてください。未来の収
益の柱は、あなたのすぐそばに、静かに芽吹いています。