あらゆる業種で原価や人件費が高騰しており、中小企業にとっ
ては利益の確保がますます難しくなりつつあります。利益は、
財務面において最も重要な指標となりますので、この波に上手
く適応できるかどうかが、企業の存続にとって重要な分かれ道
です。本日は、中小企業が実践できる効果的な値上げ戦略につ
いて考察します。

CoCo壱番屋は2019年から3年間で4回の値上げを実施し、客
単価を1000円以上に引き上げることに成功しました。その結果、
売上高は約515億円から約551億円に増加しています。成功の
要因は高付加価値化戦略にあります。例えば、期間限定の「ス
パイスカレー」(1,000円前後)を導入し、通常の600円程度
のカレーとの差別化を図りました。これにより、顧客に「ちょ
っとした贅沢」という特別感を提供しつつ、高単価商品の販売
を促進しました。

一方で、単純な値上げは顧客離れを招く可能性があります。例
えば、理由を明確に説明せずに突然値上げを行ったり、付加価
値の向上なしに価格だけを引き上げたりすると、顧客の反感を
買う可能性が高くなります。

値上げを行う際に考慮するポイントは下記と考えます。

1.付加価値の創出
中小企業でも、商品やサービスに付加価値を付けることで値上
げの正当性を高められます。例えば、食材の産地や品質をアピ
ールしたり、サービスの質を向上させたりすることで差別化を
図ります。

2.段階的な値上げ
一度に大幅な値上げを行うのではなく、新メニューや季節限定
商品から段階的に値上げを実施します。これにより、顧客の価
格感覚を徐々に変化させることができます。

3.透明性の確保
値上げの理由を誠実に説明することが重要です。原材料費の上
昇や品質向上のための投資など、具体的な理由を顧客に伝える
ことで理解を得やすくなります。

4.価格以外の要素のアピール
技術力、品質、納期の正確さなど、自社の強みを明確にし、そ
れらを前面に出して交渉することで、価格以外の価値を認めて
もらいやすくなります。

5.新規取引先の開拓
既存の取引先との値上げ交渉が難しい場合、自社の強みを評価
してくれる新規取引先を開拓することも有効です。

6.タイミング
世間一般の値上げの時期に合わせて実施することで、顧客の抵
抗感を軽減できる可能性があります。

値上げは慎重に進める必要がありますが、適切な戦略と準備を
行うことで、中小企業でも成功を収めることが可能です。利益
の確保は企業の存続にとって不可欠な要素です。ぜひ知恵を絞
り、具体的なアクションを起こしていきましょう。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

■日本の生産年齢人口(15歳から64歳までの労働可能な年齢
の人口)は、少子高齢化の影響により長期的に減少しています。
以下に、過去から将来にかけての日本の生産年齢人口の推移に
関する概要を示します。

◆1. 過去の推移
1990年代の日本の生産年齢人口は約8,700万人程度でピーク
を迎えていました。バブル崩壊後もこの水準を維持していまし
たが、少子化の影響が徐々に表れ始めました。
・2000年を境に、人口は緩やかに減少し始め、約8,300万人
程度まで減少。
・2010年頃にはさらに減少が進み、約8,000万人を割り込み
ました。
・2020年の生産年齢人口は約7,700万人でした。

◆2. 現在の状況(2020年時点)
2020年の生産年齢人口は約7,500万人程度に減少しています。
政府や多くの専門家によると、少子高齢化の進行により今後も
この減少傾向は続くとされています。

◆3. 将来の予測
日本の総人口が減少する中で、生産年齢人口も急速に減少する
見込みです。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、
以下のような予測がされています。
・2030年には生産年齢人口は約6,800万人程度まで減少。
・2040年には約5,900万人程度に減少。
・2050年には約5,000万人を下回る可能性がある。

■上記の様に、日本の中小企業が直面している人手不足の問題
は深刻です。この課題に対処するために、中小企業が取り組む
べき現実的な対策について整理してみます。当たり前のことば
かりですが、長期的な計画を立てて、着実に取り組んでいきま
しょう。

◆1.IT・自動化技術の導入
効率化を図るために、業務プロセスをデジタル化・自動化する
ことが効果的です。たとえば、RPA(ロボティック・プロセ
ス・オートメーション)やクラウドサービスを活用することで、
定型業務や単純作業を自動化し、従業員がより付加価値の高い
業務に集中できるようにします。

◆2.柔軟な働き方の提供
フレックスタイムやリモートワークなど、柔軟な働き方を導入
することで、潜在的な労働力を取り込みやすくなります。特に
育児中の女性や高齢者など、従来のフルタイム勤務が難しい人
々にも働く機会を提供できるようにすることで、労働力不足を
補うことができます。

◆3. 外国人労働者の活用
政府の政策により外国人労働者の受け入れが拡大しているため、
技能実習生や特定技能制度などを活用して、外国人労働者を受
け入れることも選択肢の一つです。ただし、文化的な違いや言
語の壁があるため、十分なサポート体制の整備が必要です。

◆4.シニア世代や主婦層の活用
定年後のシニア層や、育児や家庭の事情でフルタイムが難しい
主婦層を活用することも有効です。パートタイムや短時間勤務
などの柔軟な雇用形態を提供することで、これらの潜在労働力
を積極的に活用することができます。

◆5.従業員の定着率向上
離職率を低下させるために、働きやすい職場環境を整えること
が重要です。職場のコミュニケーションを円滑にしたり、ワー
クライフバランスを重視した施策を導入することで、従業員の
満足度を高め、長期的な雇用を促進します。

◆6.アウトソーシングやシェアリングエコノミーの活用
業務の一部を外部に委託するアウトソーシングや、他企業との
リソース共有(人材シェアリング)も、労働力不足への対策と
なります。専門業務や短期間のプロジェクトにおいては、外部
の専門家やフリーランスを活用することも有効です。

◆7.従業員のスキルアップと多能工化
中小企業は限られた人数で運営されることが多いため、従業員
一人ひとりが複数の業務を担当できるスキルを持つことが重要
です。従業員の教育や研修プログラムを通じてスキルアップを
図り、特定の職種に限定せず、さまざまな業務を担当できる
「多能工化」を推進することで、生産性を向上させます。

これらの対策を組み合わせることで、今後慢性的に続く人手不
足に対応していくしか方法はありません。即効性は無くても長
期目線での取り組みを始めませんか。

金融機関は決算書を基に融資審査を行いますが、税務目的で作
成された決算書をそのまま使用せず、財務の観点から修正を加
えます。これは、金融機関の主な関心が「貸したお金が返って
くるか」にあるためです。

以下に、簡単なセルフチェックの手順を紹介します。すべての
金融機関が必ず下記の手順で診断している訳ではありませんが、
基本的な考え方としてご了承願います。

1.損益計算書の修正および診断

◆ 減価償却不足を修正します。
減価償却の未計上は税務上問題ありませんが、利益が正しく計
上されないため、財務上は必ず計上します。よって減価償却不
足がある場合、「税引き後利益-償却不足額」で利益修正を行
います。

◆ 役員報酬を修正します。
役員報酬を減らして利益を大きく計上するなど、役員報酬は利
益の調整弁になりやすい項目です。役員報酬額を実際に必要な
生活費よりも過小に計上している場合は、「実際に必要な生活
費(※360万円程度)-役員報酬額」を税引き後利益から差
し引きます。反対に実際に必要な生活費以上の役員報酬を得て
いる場合は、「役員報酬額-生活に必要な生活費(※800万
円程度)」を税引き後利益に加算します。
※金額はイメージしやすいように例示したものです。
あくまでも参考程度とお考えください。

【返済能力の診断(診断その1)】
修正後の損益計算書を基に返済能力を診断します。企業の返済
能力は、「修正後の税引き後利益+減価償却費」で求められま
す。この値がプラスであれば第1段階の診断はクリアです。マ
イナスであればプロパー融資を受けるのは難しくなります。

【適正借入額の診断(診断その2)】
返済能力を確認したら、次は借入額が返済能力に見合っている
かを診断します。「(金融機関からの借入額-現預金)÷(税
引き後利益+減価償却費)」で求められる値が「10」未満に
収まっていれば資金調達余力があると判断されます。10以上
となった場合は新たな借入は難しくなりますが、正式な算式は
さらに細かいものになりますので個別でお問い合わせください。

2.貸借対照表の修正および診断

◆ 不良資産の修正
資産の中から、実際は価値の無い資産を減算していきます。
例えば、回収不能な売掛金や貸付金、不良在庫、使途不明な仮
払金などは減算の対象です。販売先が破産を申し立てた場合、
税務上は破産手続きが完了するまで資産に計上しておかなくて
はなりませんが、実態は回収見込みが薄いため、財務上は減算
します。

◆ 返済不要な負債の修正
社長個人からの借入金など、差し迫って返済が不要なものは負
債から減らすことが出来ます。

【安全性の診断(診断その3)】
倒産しにくい会社かどうかを、「自己資本」で判断します。こ
の場合も、修正後の貸借対照表を基に、「修正後の資産-修正
後の負債」で自己資本を算出します。損益計算書の診断結果が
良好で、この値もプラスであれば融資を受けられる可能性はさ
らに高くなります。

以上、3つの診断の結果はいかがだったでしょうか。ひとつで
もクリアできていない項目があれば財務面に問題を抱えている
ことになりますので、お早めにご相談ください。

少なくない経営者が金融機関対応に間違えた考え方を持ち込ん
でいます。真逆の対応をしておられる社長様も少なくありませ
ん。まず結論ですが、以下の3つを確認してください。

◎『雨傘理論』ではなく『日傘理論』で考えてください。
◎『借り手(会社)の論理』ではなく『貸し手(金融機関)の
論理』で考えてください。
◎『困ったら借りる』ではなく『借りられる時に借りる』で行
動してください。

以下で解説いたします。

■×『雨傘理論』⇒ 〇『日傘理論』

金融機関にある傘はすべて『日傘』です。(一部の制度融資を
除く)金融機関は、資金を必要とする会社にお金を貸すのでは
なく、返済してもらえる会社に融資をします。必要だから、な
ければ困るから貸してくれ…この理屈は通りません。このよう
に返済できるから融資をお願いしたい…この論理展開が重要で
す。

金融機関に、困った会社への救済融資という商品『雨傘』は存
在しません。一部(コロナ融資等)の制度融資は特例です。

■×『借り手(会社)の論理』⇒ 〇『貸し手(金融機関)の論理』

・今は資金が必要でないから借りない。金利ももったいない
・今は資金が必要だから借りたい。
上記は『借り手の論理』です。

・今は経営状況が良いから融資できますよ。
・今は経営状況が悪いから融資できませんよ。
これらは『貸し手の論理』です。

経営状況が良くて、資金が必要な時には、双方の意向がマッチ
して、資金調達ができますが、経営状況が悪ければ、資金が必
要になっても資金調達はできません。

■×『困ったら借りる』⇒ 〇『借りられる時に借りる』

資金余力が十分でない会社は、自社の都合ではなく、貸し手の
都合に合わせて資金調達を継続すべきです。少しばかりの金利
は、保険と割り切りましょう。金融機関のお世話にならなくて
いいと思える確証を持てるまでは、金融機関(貸し手)の都合
を優先してお付き合いしましょう。他に方法がないからです。

◆パワーバランスの欠落は経営者にとって致命傷!

金融機関との関係も、他の利害関係者同様本来は対等であるべ
きです。自社がいくら立派になって、金融機関の支援を必要と
しなくても威張らない、逆に、自社の経営が逼迫していても、
金融機関に媚びる必要はありません。この前提で申し上げるの
ですが、それでもパワーバランスは変動します。自社が相対的
に弱ければ、相手の基準に合わせていかねば事が運びません。

創業から中小零細企業の多くは、金融機関に対しては、自社の
都合『借り手の論理』ではなく、相手の都合『貸し手の論理』
で行動するしかありません。このセンスを持ち合わせていない
経営者は、金融機関対応だけでなく、その他すべてのビジネス
シーンでミスを連発しているはずです。

重要な事なので繰り返しますが…

◎『雨傘理論』ではなく『日傘理論』で考えてください。
◎『借り手(会社)の論理』ではなく『貸し手(金融機関)の
論理』で考えてください。
◎『困ったら借りる』ではなく『借りられる時に借りる』で行
動してください。

上記の3つの原則を守ってください。少なくない社長様が間違
えています。真逆の対応をしています。

中小企業の資金調達において、信用保証協会は非常に重要な役
割を果たしています。しかし、金融機関によって利用できる信
用保証制度が異なる場合があるという事実をご存知でしょうか。
本コラムでは、この視点を中心に、効果的な金融機関選びのポ
イントをご紹介します。

■ 金融機関ごとの制度の違い
信用保証協会の制度は、一見すべての金融機関で同じように利
用できるように思えますが、実際にはそうではありません。例
えば、大阪信用保証協会の金融機関連携型創業関連保証(ES
保証)は、りそな銀行や池田泉州銀行などの特定の金融機関で
のみ取り扱われています。このように、金融機関によって利用
できる制度が異なる場合があります。

■ 地域による違い
信用保証協会は基本的に都道府県ごとに設立された団体である
ため、保証制度の内容も地域によって異なります。例えば、あ
る県で利用できる制度が、隣の県では提供されていないことも
あります。そのため、自社の所在地で利用可能な制度を把握す
ることが重要です。

■ 金融機関選びのポイント

1)自社のニーズを明確にする
まず、必要な資金の規模や目的を明確にしましょう。これによ
り、どの制度や金融機関が最適かを判断する基準ができます。

2)複数の金融機関に相談する
各金融機関が取り扱う信用保証制度や融資条件について情報を
収集し、比較検討することが重要です。

3)地域性を考慮する
地域に根ざした金融機関は、地元の経済状況や産業特性を理解
している可能性が高いです。

4)メインバンクの重要性を認識する
創業融資を利用した金融機関が通常メインバンクとなります。
信用保証付融資を利用する際も、メインバンクとの関係が鍵と
なることがあります。

5)長期的な関係構築を考える
単に融資を受けるだけでなく、経営改善や事業再生のサポート
も考慮に入れて選択することが望ましいです。

信用保証協会の制度を活用した金融機関選びは、中小企業の成
長戦略の一環として捉えるべきです。金融機関によって利用で
きる制度が異なる可能性があることを念頭に置き、自社のニー
ズに最も適した金融機関を選択することが重要です。また、経
営状況や事業環境の変化に応じて、定期的に金融機関との関係
を見直すことも忘れないようにしましょう。

■ツキについて考えてみましょう。
ツキと上手に付き合うことは経営にとって大変重要なことです。

例えが少々不謹慎かもしれませんが、学生時代にかなりはまっ
ていたマージャンを思い出します。

マージャンには二つの鉄則があります。

○マージャンは確率論です。
可能な限り自分の手が揃いやすいように牌を集めるとともに、
可能な限り捨てた牌が相手に当たらないように捨てる、この二
つのこと(矛盾)を、確率を考えながら随時進めることが基本
です。

○ツキを考えて打ち方を変える。
不思議なもので、ツキはメンバーの四人をぐるぐる回っていま
す。このツキが来たときに攻めて、ツキが無いときは引く、具
体的に言うと、前者のときには自分の手作りを優先します。一
方、ツキの無いときは相手に振り込まないことを優先します。
この加減、ツキの見極めが重要です。

確率論に沿った打ち方が出来ない人は勝てません。確率論とい
う基本を知らないこと、言い換えるとミスを多発しているわけ
ですから、ツキも回ってきません。確率論に沿って打つための
訓練が必要です。また、ツキが来ているときにミスをすると、
不思議とツキは逃げていきます。不思議ですが事実です。確率
論が理解できていても、熱くなってツキの来ていないときに攻
める人も勝てません。我慢できないからです。流れが読めない
からでしょう。

『基本に忠実に胆力を維持しながら丁寧に一手一手打ち続ける。
ツキが無いときは無理をしないで他人の勝ちを容認する。(無
理して勝ちを狙わない。)ツキが来たら基本を厳守しながらも
強気に攻める。』

◎経営も同じです。

■ツキと上手に付き合うことは経営にとって大変重要なことで
す。

100品種の商品を扱う小売店があるとします。この店の売上が
昨年対比で90%とします。この店は全体では売上を10%落と
していますが、100品種の商品を一品毎見ていくと、必ず伸び
ている商品があります。この伸びている商品がツキのある商品
です。

厳密に分類すると、伸びている(ツキのある)商品群、落ちて
いる商品群、どちらでもない商品群、この三つに分かれます。
伸びている(ツキのある)商品群を更に伸ばすことが売上アッ
プのポイントです。そのためには、落ちている商品をはずすこ
とが必要です。

『伸びている(ツキのある)商品群を伸ばすことに躍起になっ
て、落ちている商品群をはずすことを忘れがちです。まずはは
ずしてみましょう。不要な商品群をはずすことで、伸びている
(ツキのある)商品群が羽を伸ばしてその力を発揮してくれま
す。はずすことからはじめましょう。』

■何もかも、可能な限り多くを手に入れようとする考え方は、
今後のビジネスにおいては難しいようです。

・得手、不得手があります。
・好き、嫌いがあります。
・向き、不向きがあります。
・理由のある分野、関連の薄い分野があります。
・伸びているもの、そうでないものがあります。

『後者に多くのエネルギーを掛けすぎています。前者に回るそ
れが少なくなっています。後者が多すぎて、前者との区別が付
きにくくなっています。後者が前者を邪魔しています。』

■ツキについてまとめてみます。

ツキは経営の道しるべです。常にツキの存在を意識し、徹底的
に付き合っていく心構えが重要です。ツキは身の回りにたくさ
ん存在します。それらを見つけることが経営者の仕事です。

・経営指標をよく検証しましょう。ツキを探し出してください。
・現場をよく見てみましょう。ツキを探してください。
・従業員の話をよく聞いてみましょう。ツキを探してください。
・取引先の意見も聞いてみましょう。ツキを探してください。
・さらに、世の中を見まわしてみましょう。ツキを探してくだ
さい。

『ツキを見つけたら、そのツキに沿って経営の舵を切ってくだ
さい。そのツキを追い回してください。成功者はこれをやって
います。容易ではありませんが意識してください。きっと上手
くいきます。』

◎ツキを探して、ツキと付き合う、ご再考ください。

事業の成長と資金調達は密接な関係にあります。特に、サービ
ス提供に先立って開発コストがかかるIT企業にとって、適切
な資金調達は事業拡大の生命線です。今回は、設立初年度で大
型の追加融資に成功したベンチャー企業の事例をご紹介します。

T社のS社長が当事務所に相談に来られたのは約10ヶ月前のこ
とです。「AIを活用した画像認識ソフトウェアの開発・販売
事業を立ち上げたい。会社設立と初期資金の調達をサポートし
てほしい」というご相談でした。

自己資金として100万円、家族からの支援金として200万円を
用意されていたため、日本政策金融公庫の創業融資制度を利用
して300万円の融資申請を行いました。審査の結果、申請通り
の300万円が承認され、合計600万円の資金で事業をスタート
しました。

T社のビジネスモデルは、独自開発のAI画像認識ソフトウェ
アを月額課金制で提供するものです。初期の600万円のうち400
万円をソフトウェア開発に投資し、2ヶ月で最小限の機能を持
つプロトタイプを完成させました。その後1ヶ月で数社の顧客
を獲得し、月額50万円の売上を達成。さらに2ヶ月で機能を拡
充し、月額売上は200万円に成長しました。

順調に見える成長でしたが、6ヶ月が経過した頃、S社長は新
たな課題に直面しました。大手企業からの引き合いが増え、サ
ーバー増強や機能拡張が急務となったためです。しかし、開発
費用や人件費の先行投資により、手元資金が枯渇しつつありま
した。このままでは成長の機会を逃してしまうと危機感を感じ
たS社長は、急遽追加融資の相談に来られました。

設立後わずか6ヶ月の企業への融資は、通常のケースでは困難
です。多くの金融機関は「1期目の決算後に再度ご相談くださ
い」と回答するのが一般的です。しかし、当事務所では以下の
対策を講じました。

1.決算書に近い品質の試算表を作成し、当事務所が金融機関
に直接説明を行いました。税理士事務所が責任を持って数字の
信頼性を担保することで、審査のハードルを下げることができ
ました。

2.詳細な資金繰り表を作成し、過去から現在、そして将来の
キャッシュフローを明確に示しました。これにより、追加資金
が成長のための前向きな投資であることを金融機関に理解して
もらえました。

3.事業計画書を精緻化し、大手企業との商談状況や市場の成
長性を具体的に示しました。

結果として、日本政策金融公庫から500万円の追加融資、地元
の信用金庫から保証協会付きで700万円の新規融資を獲得し、
合計1,200万円の資金調達に成功しました。この資金により、
T社は大規模な開発投資と営業強化を行い、半年後には月商
800万円を達成する見込みです。

この事例が示すように、企業と金融機関の間に税理士事務所が
入り、企業の信用を補完する新しい仕組みを活用することで、
ベンチャー企業の資金調達力は大きく向上します。また、金融
機関にとっても、成長性の高い企業への融資機会が増えるとい
うメリットがあります。

当事務所は銀行融資プランナー協会正会員として、このような
新しい資金調達の仕組みづくりを推進しています。急成長する
ベンチャー企業の皆様、資金調達でお悩みの際は、ぜひ当事務
所にご相談ください。皆様の事業の飛躍的な成長をサポートい
たします。

経営にウルトラCは滅多にありません。
一つ一つ理詰めで考え抜く、一つ一つ確実に行動に移す、都度
調整しながら継続して積み上げていく…この行為を粛々と続け
ていくことこそ王道です。

・理詰めで考える知力と、これを継続する知的胆力が必要です。
・確実に行動し続ける行動力と、これを継続する肉体的胆力が
必要です。
・中々上手く行かないことに耐える耐力、これを継続する精神
的胆力が必要です。

論理だけでは説ききれない世の中の事象を、それでも論理に置
き換えて整理して考えていくしか方法はありません。論理を放
棄して感覚や感情に依存した経営は、総じて上手く行かないよ
うに思います。また、考えるという意味は、「ある瞬間に考え
る」ではなく、「一定期間継続して、繰り返し・繰り返し…、
自分の頭と戦いながら思考を巡らす」と理解すべきです。
これが知的胆力です。

実を結ぶためには一定期間の積み上げが必要です。成果の出な
い努力を相当期間積み上げることでのみ、果樹を手にすること
ができるように思います。この「成果を伴わない努力」、この
存在を肝に銘じておくべきです。今日手にできた果実は、昨日
の努力の成果でも、前月の努力の成果でもありません。多分、
半年から数年前の努力の成果、いや、3年前の努力の成果と考
えるべきでしょう。成果を出すためには時間を要します。「成
果を伴わない努力」を惜しんで、次から次へと努力の対象を切
り替える経営者も、総じて上手く行きません。継続こそ成功の
キーワードです。
これが肉体的胆力です。

狙ったターゲットが正しい場合でも、最初から上手く行くケー
スは稀です。焦点が合っていないからです。この焦点を合わせ
る行為を「作り込み」と言います。おいしい商品を開発できて
も、提供するサイズ・価格・デザイン・販売方法・販売チャネ
ル・広告方法等々、それらの多くがジャストマッチした時にの
み、その商品はブレイクします。これらを合わせる行為を「作
り込み」と言います。開発に手間暇をかけても、「作り込み」
に掛ける手間暇を惜しんでいる会社様が多いように思います。
いきなりヒットすることは稀です。
あきらめずにヒットする商品に仕上げるための「作り込み」を
継続する胆力、これが精神的胆力です。

経営とは、江戸時代に中国の奥地の○○を目指す長い旅のよう
なものです。存在自体が不確実なゴールに向かって、一歩ずつ
歩みを続けて行かねばなりません。
日本から中国の奥地を目指すなら、まずは大陸に渡る手立てを
考えます。渡れる航路を求めて港に向かいます。そのためには、
港に向かうための旅費が必要になります。大陸に渡っても、続
く道の存在は不確実です。それでも渡ります。
ゴールまでの旅費の算段が読めなくても、それでも一歩ずつ前
に進みます。これらの過程では、様々なトラブルにも見舞われ
ることでしょう。トラブルをできるだけ避けながら、遭遇した
ら解決しながら、不確実なゴールに向かって歩み続けます。こ
の旅路にゴールは存在しません。

経営とは、ゴールではなく、そのプロセスそのものであるよう
に思います。知的胆力と肉体的胆力、そして精神的胆力を鍛え
ながら、経営という長旅に共に挑んでいきましょう。楽しみな
がら。

※当事務所は貴社の羅針盤を勤めます。

貴社が融資を申し込んだ後、金融機関の内部でどのようなプロ
セスを通じて審査が行われているかご存じでしょうか。審査の
プロセスを知ることで、融資獲得のコツが分かります。

金融機関の担当者は、融資の申し込みを受けたら稟議書を作成
します。稟議書は、担当者→代理→次長→副部長→部長(支店
長)等、少なくとも4~5名の目を通って決裁となるのが一般
的です。

決裁者は、支店の権限内であれば支店で決裁となりますが、支
店の権限範囲外であれば本部の審査役が決裁者となります。3
百万円の融資案件でも、30億円の案件でも同じ稟議書を作成
し、同じ様に回覧します。

担当者が稟議書を作成するにあたって最も必要なのは情報です。
融資の受け方を熟知している企業は、試算表、事業計画書、返
済計画書、資金繰り計画書、担保一覧などの豊富な情報を担当
者に提供します。目の前の担当者の先にいる数名の上司を納得
させないと融資がおりないことを知っているからです。

一方、とある企業は融資申し込みに際して試算表の提出すら嫌
がります。金融機関の担当者は情報不足により内容の薄い稟議
書しか作成できません。当然ながら数名の上司を納得させるこ
とも難しくなります。

金融機関の担当者は貴社のプレゼン担当でもあります。上司に
向けて最高のプレゼンをしてもらえなければ、決裁を勝ち取る
ことはできません。決して情報の提供を渋らず、上司と渡り合
える武器を提供してあげてください。

もし、どのような情報を提供すればよいか分からない。情報を
まとめるのが苦手等という場合は、是非、弊所までご相談くだ
さい。融資申込資料の作成をお手伝いさせていただきます。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

『経済における革新は、新しい欲望がまず消費者の間に自発的
に現われ、その圧力によって生産機構の方向が変えられるとい
うふうに行われるのではなく…(略)…、むしろ新しい欲望が
生産の側から教え込まれ、したがってイニシアティブは生産の
側にあるというふうにおこなわれるのが常である』
(ヨーゼフ・ シュムペーター )

■成熟社会における商品やサービスの開発について、大きなヒ
ントを、シュンペーターは提供してくれています。

・過去の経験や知識を探るだけでは、なかなか良い商品・サー
ビスは生み出せません。
・もう一つ、大局的な創造力・提案力が必要です。

○日常的に高頻度で消費する食品や雑貨、様々なサービスを、
消費者の近隣に高密度で配置したコンビニチェーン、この業態
を消費者は自ら望んだでしょうか?これらを利用してその恩恵
を知り、結果としてなくてはならないそれになったはずです。

○街中のいたるところに出来上がったコインパーキング場、自
動車を足として利用する人たちにとってはなくてはならない存
在です。小規模な遊休地を活用して、時間単位で課金する仕組
みを開発できたからこれらが成立しています。

○スマートフォンを手元に置いているはずです。この様な機能
を備えたIT端末を消費者は自ら望んだでしょうか?こんなこ
とができるから、便利で楽しいから、…ぜひ使ってください、
といわれて使い始めたら手放せなくなったはずです。

■シュンペーターは、これらの新しい何かを生み出すために
『5つの新結合』を提唱しています。

1.新しい財貨(製品)
・消費者がまだ知らない製品、または品質など。
2.新しい生産方式
・新しい生産方式や取扱い方法など。
フランチャイズ方式なども含まれる。
3.新しい販路の開拓
・従来の販売先ではない先など。
4.原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
・原料や半製品の新しい使い方など。
5.新しい組織の実現
・古い企業ではなく、新しい企業の出現など。

シュンペーターは、これらの新結合(イノベーション)を起こ
す経営者のことを企業家(起業家)と呼んでいます。また、企
業家であることと、事業を単に運営することとは別の行為であ
ると区別しています。

■シュンペーターは、変革を妨げる三つのハードルとして以下
を挙げています。

1.経験よりも洞察を必要とするが、経験に頼りがちであること。
2.実証されていない新しいことを始める難しさ。
3.新しいことを始めることで受ける、社会からの抵抗と批判。

シュンペーターは、新結合を狙う企業家は、(当初は)潮の流
れに逆らって泳ぐようなものだ、とも述べています。

■シュンペーターが提唱するイノベーションとは…

1.新たな欲望を生む魅力を消費者に提示する。
2.5つの新結合をヒントにする。
3.企業家であり続ける。

今から事業を立ち上げる経営者だけでなく、今隆々と経営を続
けている経営者にも、イノベーションは必要です。継続してイ
ノベーションを続けて行かなければ、いつかは衰退の憂き目に
甘んじるからです。

『社会の上層はいわばホテルのようなものであって、いつも人
々で一杯ではあるが、いつも違った人々で一杯なのである。こ
の人々というのは、われわれ多くのものが認めようとするより
もはるかに著しい程度で下から上がってきた人々である。』
(ヨーゼフ・ シュムペーター)

引用図書:「古代から現代まで2時間で学ぶ戦略の教室」
(ダイヤモンド社、鈴木博毅氏著)