決算書や試算表を受け取った時、多くの社長様は主に売上高や
利益をチェックしていると思います。もちろん間違いではあり
ませんが、是非、自己資本にも注目してください。

自己資本は貸借対照表の右下に表示され、純資産、株主資本等
と呼ばれることもあります。広辞苑では、「資産総額から負債
総額を差し引いた資産価値総額」と説明されていますが、簡単
に言うと資本金と累積損益の合計値です。

自己資本が重要だと言われる理由は、自己資本が大きければ大
きいほど安全性が高いと考えられるからですが、少し面白い見
方をすることもできます。

ともに設立10年目のA社とB社の比較です。両社とも自己資本
の額は3,000万円で同じですが、A社の資本金は100万円、B社
の資本金は2,500万円です。

事業を始める時に用意した種銭が資本金ですので、A社は100
万円の種銭で事業をスタートし、10年で2,900万円の利益を獲
得したことになります。一方B社は、2,500万円の種銭でスタ
ートしたものの、10年で500万円しか利益を獲得できなかった
ことになります。

B社の社長様が役員報酬を高く設定していて会社の利益を最大
限減らしている場合もありますが、一般的には少ない元手で多
額の利益を上げるA社の社長様の方が、高い経営手腕を有して
いると評価されます。

累積利益を極大化するためには下記の対策が必要です。

1.節税重視型経営からの脱却
累積利益は、毎年の「税引き後利益」の積み上げですので、極
端に節税志向の会社は、いつまで経っても累積利益は積み上が
りません。家族経営で銀行筋から資金調達を行う必要がなけれ
ば問題ありませんが、そうでなければ自己資本重視型の経営に
切り替える必要があります。

2.投資のコントロール
次から次に投資を行っているためずっと赤字という企業様があ
ります。株式公開を志向していてベンチャーキャピタル等から
資金を集められる企業以外は、投資をコントロールし、少なく
とも1年おきには利益を出せることを証明する必要があります。
また、より少ない投資で利益を獲得できるよう努力することも
重要です。

自己資本は経営手腕を映す鏡です。決算書を受け取ったら必ず
自己資本を確認し、ご自身の経営を評価する習慣をつけてはい
かがでしょうか。

…前回号のつづきです。

創業で成功するためには慎重な計画と相応の知識が必要です。
創業者としてビジネスを始める際によく見られる失敗の理由に
ついて解説します。これらのポイントに注意を払うことで、失
敗を減らすことができるはずです。

◆1.始める事業を間違えて儲からない!

事業を始める際に最も重要なのは、適切な事業を選ぶことです。
魅力的なアイデアや情熱は大切ですが、市場の需要や競争状況
を見極めることも重要です。事前の市場調査や競合分析を行い、
自身のアイデアが需要に応えるかどうかを確認しましょう。ま
た、自身のスキルや経験に合致しているかも検討しましょう。
成功するためには、自身の強みを活かした事業を選ぶことが重
要です。

◆2.値決めを間違えて、繁盛貧乏に陥る!

値決めは事業の収益性に大きな影響を与えます。価格を高く設
定すれば利益率は上がりますが、需要が減少する可能性もあり
ます。逆に、低価格設定では需要が高まるかもしれませんが、
利益が得られなくなるかもしれません。競合他社の価格や付加
価値を考慮し、適切な価格を設定することが重要です。また、
顧客に提供する価値や差別化ポイントを明確にし、適正な価格
設定を行いましょう。
※総じて安く設定しすぎるケースが多いように感じます。

◆3.規模拡大を優先し過ぎて破綻する!

事業の成長と規模拡大は重要ですが、適切なタイミングで行う
必要があります。急激な成長には多くのリソースとキャッシュ
フローが必要です。事業の基盤を築くためには、最初は小規模
ながら収益性の高い事業を構築することが重要です。安定した
収益を上げることで、持続可能な成長を実現しましょう。また、
成長にはリスクも伴いますので、計画的な規模拡大を行うこと
が重要です。

◆4.銀行対応を間違えて資金繰りに瀕する!

資金繰りは事業を継続する上で不可欠です。銀行との関係を築
くことは、迅速な資金調達や信用獲得につながります。しかし、
銀行対応を誤ると資金繰りに困難が生じることがあります。事
業計画や財務状況を正確かつ適切に提示し、銀行との信頼関係
を構築しましょう。また、複数の資金調達先を持つこともリス
ク分散の観点から重要です。資金繰りに関してはプロのアドバ
イスを受けることも検討しましょう。
※『銀行融資プランナー協会正会員』の当事務所にご相談くだ
さい。

◆5.努力の方向・方法を間違えて報われない!

努力は成功への近道ですが、努力が報われるためには適切な方
向性と方法が必要です。事業戦略やマーケティング戦略を見直
し、市場のニーズやトレンドに合わせた努力を行いましょう。
また、自己啓発や情報収集にも時間を割くことで、自身のスキ
ルや知識を向上させることができます。成功者のモデルやメン
ターを見つけ、アドバイスを受けることも有益です。努力を正
しい方向に向けることで、成果を上げることができます。

◆6.経営の基本ルールを知らずに大損する!

事業を成功させるためには、経営の基本ルールを理解しておく
ことが不可欠です。財務管理や法的事項、人材管理など、経営
における重要な要素を学びましょう。経験豊富なメンターや専
門家の助言を仰ぐことも有益です。また、経営の基礎を固める
ために経営者向けのセミナーや研修に参加することもおすすめ
です。経営の基本ルールを知ることで、事業の持続可能性や成
長性を高めることができます。

創業者としてビジネスを始める際には、これらのポイントに留
意することが重要です。失敗を避け、成功するためには正しい
選択と努力が必要です。目標に向かって着実に進み、経験を積
むことで、より良い未来を切り開いてください。

貴社の成功を祈念いたします。何でも相談ください。

金融機関の担当者からお聞きした話ですが、業績の悪化により
会社を清算する企業が増えているようです。

中には、「銀行がもっと貸してくれていたらこうはならなかっ
た。」と恨み言をおっしゃる経営者様もいらっしゃるとのこと
で、金融機関の担当者も大変辛い状況にあるようです。

あの時、銀行が融資をしてくれていたら・・・というセリフを
時々耳にしますが、経営の基本的なルールを誤って認識してい
ると感じます。もし、自己都合で資金がいくらでも調達できる
ならば、経営はもっと簡単です。相手(金融機関)都合の中で、
経営のかじ取りを行わなければならないから、経営は難しいの
ではないでしょうか。

相手都合でしか資金は調達できないという前提に立つなら、相
手がどういうルールで融資をしているかを知る必要があります。
そして、どのタイミングでどれぐらいの金額を調達できるか予
測を立て、その範囲内でできる事業を構築しなくてはなりませ
ん。銀行が融資をしてくれていたら・・・とおっしゃる経営者
様は、自身の事業計画に相手が合わせてくれると思い違いをし
てしまったのかもしれません。

また、金融機関の役割を誤って認識している経営者様も多くい
らっしゃいます。金融機関は、業績が悪化した時に助けてくれ
る救済機関だと考え、いざという時は融資を受ければよいとい
う甘い認識で赤字に対してあまり危機感を持たない経営者様で
す。コロナ融資など、救済を目的とした制度融資は確かに存在
します。しかし、これは政府が政策として行っている特殊な制
度融資です。金融機関には赤字企業を救済する融資は元々あり
ません。

金融機関が赤字救済をしない理由はシンプルです。連続赤字な
ど、慢性的な赤字体質に陥っている企業は、理論上、返済をし
続けることができないためです。裏を返すと、赤字が続けば、
仮に制度融資で調達できたとしても、いずれ経営が立ち行かな
くなる可能性が高いことを示唆しています。銀行が融資をして
くれていたら・・・とおっしゃる経営者様は、金融機関の役割
を誤って認識してしまったのかもしれません。

経営の基本的なルールと金融機関の役割を正しく認識できれば、
財務の重要性が見えてくるはずです。財務とは、利益管理はも
ちろん、中長期的に入ってくる資金と出ていく資金の予測を行
い、必要であれば金融機関から資金を調達するという活動です。
是非、ご相談ください。

少なくない創業者の方々が、知らないことでたくさん損をして
います。また、損している事にも気づいていません。ご確認く
ださい。

◆創業手続きについて

●1.【個人事業者で創業】VS【法人で創業】
個人事業者は、個人が無限責任を負うことをご存知ですか?
法人であれば会社がリスクからの防波堤になってくれます。

●2.【自分で税務申告】VS【税理士に依頼して税務申告】
税務申告は相当面倒で難解です。また、間違えた申告は後にリ
スクを伴います。金融機関の信用も低くなります。得策ではあ
りません。

●3.【自分で法人設立】VS【司法書士に依頼して法人設立】
司法書士に依頼した方が安い(同じ)です。ご存知ですか?
また、専門家に依頼すれば、定款なども正しく作ってもらえま
す。自分で手続きを行う理由が見当たりません。

◆資金調達

●4.【自己資金のみで開業】VS【創業融資を受けて開業】
成功確率は後者の方が圧倒的に高いです。過小資本は、その成
功確率を著しく低下させます。

●5.【エンジェルからの出資で調達】VS
【金融機関からの借入で調達】
エンジェル投資、このリスク、難しさ、ご存知ですか?設立初
期には事業パートナー以外の株主を作らないようにしましょう。
増資は相応の株価を付けた後に行ってください。

◆値決め

●6.【安くたくさん売る】VS【高めで少し売る】
たくさん売る事の難しさを理解していますか?最初は少ししか
売れません。たくさんではなく、少しの売上で黒字にできる価
格設定を行ってください。

●7.【価格で競争する】VS【サービス・商品で競争する】
価格競争は強者の戦略です。創業者は絶対にやってはいけませ
ん。安さを武器にする、この打ち手は封印してください。

◆事業構想

●8.【儲からない事業を始める】VS【儲かる事業を始める】
半分以上の創業者は、そもそも儲からないことを始めています。
上手くいかないことを始めてはいけません。始めようとする事
業の将来性や収益性をよく考えてください。

●9.【一過性の売上を繰り返す】VS
【継続的な売上を積み上げる】
積みあがる売上を最初から狙いませんか?積みあがらない事業
では生涯苦労します。日々頑張れば積み上げられる事業を構想
してください。

●10.【ありきたりな事業を始める】VS
【独自性のある事業を始める】
事業の成否は、最終的には事業(商品やサービス)の良し悪し
で決まります。売り方の上手下手は短期的な要因です。事業を
磨き込んでください。

●11.【他人と同じようにやる】VS【他人と差別化する】
独自性が無いなら差別化しましょう。最初から差別化戦略を練
って実行してください。その方法は学べばすぐに見つかります。

●12.【経営スキルは自分の頭で発明する】VS
【経営スキルは存在する知恵を発見する】
我々が考えて思いつくことはほぼすべて解明されています。
発明ではなく発見してください。

◆働き方

●13.【頭を使わず時間と体をささげて働く】VS
【勉強して知恵で勝負する】
どちらを選択されますか?体を酷使して働くより、頭を使って
稼ぐ方をお勧めします。大半の創業者は前者で生きています。
後者を選択してください。

◆社長の仕事

●14.【重要で緊急な事】VS【重要で緊急でない事】
社長の大半は前者にしか時間を充てていません。後者に時間を
十分充てることができれば、経営は自ずと上手く行くようにな
ります。仕事の時間配分に気を付けてください。誰も指摘して
くれません。

貴社の成功を祈念いたします。何でも相談ください。

「銀行さんから売上の入金口座を当行に移して欲しいと依頼さ
れているが、応じないといけないのか?」というご相談をよく
頂戴します。新規融資を申し込んだタイミングでこのような依
頼をされるケースが多いようです。

銀行から見ると、自行の口座で入金や支払いをしてもらうこと
は、収益面、安全面において大きなメリットがあります。

例えば、2,000万円の融資を行ったとしても、預金残高が常に
1,000万円あれば、実質は1,000万円の資金負担で済むため、
大変効率的です。また、日々の入出金から商売の動きを読み取
ることができますので、悪い兆候もいち早く感じ取ることがで
きます。

このようなメリットが銀行側にあるため、新規融資を検討する
際に売上の入金口座を移すよう依頼してくることが多々ありま
す。確かに、売上の入金口座を移すことを確約すれば、融資審
査にプラスに働くのは事実です。ただ、銀行の依頼に応じるか
どうかは戦略的に判断する必要があります。

中小企業の場合、売上金の入金や仕入の支払をメインで使って
いる口座はあまり多くありません。せいぜい1つか2つではな
いでしょうか。この貴重なメイン口座を数ある銀行の中から1
つか2つに絞らなくてはならないため、目先の融資で判断する
のではなく、将来に渡って最も信頼できる銀行にメイン口座
(決済口座)を置くのが良いと思います。

具体的には、最もプロパー融資で応援してくれる銀行です。
銀行にとって殆どリスクのない保証協会のお付き合いしか考え
てくれない銀行にメリットを与えるよりも、プロパー融資でリ
スクを背負ってくれる銀行にメリットを与えた方が、安定した
取引を期待することができます。

融資取引が多くある銀行をメイン口座にすると、いざという時
に差し押さえられたりするので分けた方が良いという意見をお
聞きすることもありますが、少しネガティブな考えのように感
じます。融資取引のない銀行にメイン口座を置きながら、取引
の薄い銀行にプロパー融資でリスクを取ってくれという話は一
般的には通じません。

メイン口座を置くということは、あなたの銀行をメインと考え
ていますよという企業側の意思表示でもあります。企業側の覚
悟をメイン行としてしっかり受け止めてくれる金融機関とお付
き合いしましょう。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

前回号のつづきです。

人が辞める、人が採れない、思うように人が動いてくれない…
経営者の人に対する悩みは尽きないはずです。ただ、自分自身
すら完全にコントロールできない人間が、他人を自分(自社)
の思い通りにすることなどそもそも不可能であることを認識し
なければなりません。

もっと優秀な人が欲しい、もっと頑張って欲しい、無いもの・
できないことを求めるのを止めることで、人に対する悩みは激
減するはずです。悲観論ではなく、現実論として受け入れるこ
とから始めてください。

この前提で、考え方を整理しながら、できることを順番に実施
する事しか他に方法はありません。

以下、人事の指針について24項目を掲げました。
すべてに○が付くように心がけてください。

■第1章:人事の基本!

□すべての従業員に対して公正であるよう努めている。
□従業員に対して愛と鞭を兼ね備えている。
□従業員に対して威張っていない。
□従業員に対して媚びていない。

■第2章:最適化(バランス)の検証!

□【従業員の市場価値】と【会社が支払う給与】はバランスし
ている。
□【会社が従業員に求める業務】と【会社が支払う給与】はバ
ランスしている。
□【従業員の能力】と【その従業員に求める業務】はバランス
している。
□よくできる人材を、薄給を承知で便利に使い続けていない。
□道理を越えた高給を支払って雇用したり、慰留したりしてい
ない。
□薄給で採用して高度な仕事を求めていない。
□ただただ高給を訴求して人を採用しようとしていない。

■第3章:無いもの・できないことを求めない!

□能力の低い人に、(精神論として)高度な仕事を任せようと
していない。
□薄給で優秀な人材を雇用しようとしていない。
□分不相応な従業員を採用しようとしていない。
□グレートカンパニーと普通の会社の違いを認識している。

■第4章:人事制度・業務分掌の整備!

□会社の業務を整理・整頓している。
□その業務に必要なスキルを有する従業員を求めている。
□その業務の市場価値を計り、適正な給与を支払っている。
□業務上必要なルールを整備することに努めている。
□整備したルールは厳守してもらうよう徹底している。
□ルールが守られない時は、注意喚起を徹底し、時に罰を科し
ている。放置していない。

■第5章:教育・訓練の実施!

□新たな地位に対して、十分な訓練を受けさせずに、その者を
昇進させたりしていない。
□現在の仕事に専念している者は昇進させず、代わりに昇給さ
せる、この選択肢を用意している。
□昇進後であっても、不適格と判断すれば戻す措置(再教育を
含む)を講じている。

●最後に…

「人事は公正に」、容易ではありませんが経営者の努力目標で
す。良い会社になった時に、優秀な従業員が入社します。良い
従業員が集まるから良い会社になるのではありません。
「ルールを決めて厳守してもらう」、マネージメントの一丁目
一番地です。
「従業員に好かれようとしない。」(「心に一匹の鬼を忍ばせ
る。〔稲盛和夫氏〕」)
人に対して無いものネダリをしない。

人事制度を整備する時には、人事に対する指針が必要です。指
針無き人事制度は機能しません。自社としてどうしたいのか?
百社百様のオリジナリティーも必要ですが、共通のセオリーも
存在します。

上記のチェック項目も参考にしていただいて、貴社オリジナル
な人事制度を構築してください。貴社の人事制度構築の一助と
なれば幸いです。

資金使途とは、その名の通り「お金の使いみち」です。借りる
側は、あまり意識しないかも知れませんが、銀行側にとっては、
資金の使い道はとても重要なポイントです。

「資金使途」は大きく2つに分けることができます。
「設備資金」と「運転資金」です。

「設備資金」とは、事業のための資産を購入するための資金で
す。店舗、工場、自社ビル、機械、車両などが一般的です。設
備への投資は将来の新たな利益を生み出しますので、新たに発
生する利益で借入の返済を行う事が可能です。また、購入する
土地や建物を担保にすれば、万が一計画通りに行かなくても、
資産の売却代金により借入を返済することもできます。

よって設備資金の審査のポイントは、「本当に計画通りに利益
を出せるのか」と言う点と、「融資金は担保でどれくらいカバ
ーできているのか」の2点です。

「短期運転資金」とは、仕入れ代金の支払い時期と、売上代金
の回収時期にズレが発生した時に必要となる資金です。現金買
付で100万円の仕入を行い、1ヵ月後に150万円で販売出来た
としても、100万円が1ヵ月間在庫として寝てしまうため、そ
の間は次の仕入が出来ません。このズレを埋めるための資金が
短期運転資金です。

設備資金と違って、短期運転資金の返済原資は利益ではなく売
上金の回収金です。仕入資金として100万円を借りて購入した
商品が150万円で売れたときには、粗利の50万円ではなく仕入
代金の100万円を一括で返済するのが本来の形です。
実際には返済してもすぐに次の仕入資金が必要になりますので、
実務上は短期借入として100万円を借りたままにしています。

短期運転資金の融資は高度な審査能力を要します。借りる側も
しっかりとした会計や財務の知識が無ければ、いつの間にか返
せなくなってしまう可能性があります。
100万円で仕入れた商品が売れ残れば返済が出来なくなると言
うのは分かりやすいと思いますが、150万円で販売するつもり
が130万円でしか売れなかった場合はどうでしょうか。
人件費や家賃などの固定費が50万円必要であったとすれば、
粗利は30万円ですので20万円の赤字となります。商品の仕入
れ資金として借りたはずの100万円のうち20万円が、赤字補て
んに使われてしまいましたので、次の仕入は80万円しか出来な
くなってしまいます。

毎月の仕入れ額や売上の額は一定ではありませんので、仕入資
金が赤字の補てん資金となっていてもすぐには気づかないのが
問題です。じわじわと赤字補てんの割合が大きくなっていき、
返せない状態になって初めて気付きます。借りたお金はどこに
行ったのだろうか・・・良く耳にするセリフです。

実は簡単な算式で本当に必要な短期運転資金の額を算出するこ
とができます。
銀行員はこの算式に基づいて融資額の上限を算出しています。
経営者の側も、いつの間にか返済が出来なくなってしまったと
いう事態に陥らないよう、会計や財務の知識を身につけ短期運
転資金として借りたお金が不健全な使われ方をしていないかを
定期的にチェックすることが必要です。

前回号のつづきです。

人は一定比率辞めます。人の価値観や生き方は百人百様なので
仕方ありません。一方、程度を超えて離職率の高い会社があり
ます。この会社には、何らかの重大な問題があります。採用を
上手に行っても、離職が絶えない会社は極めて不効率です。従
業員のスイッチングコストは相当高くついているはずです。離
職の原因と対策について考えてみましょう。

以下、離職率が高い中小企業の特徴と対策を整理させていただ
きました。

■1.給与・報酬が不適切(安い)

中小企業は資金や予算の制約があり、従業員の給与や報酬が市
場水準に比べて低い傾向があります。これにより、従業員は経
済的な安定や成長の機会を求めて他の企業に転職する可能性が
高まります。また、昇進や昇給の機会が限られる場合もありま
す。

■2.キャリア開発の機会が少ない

中小企業では組織規模が小さく、従業員のキャリア開発や成長
の機会が限られる場合があります。従業員は自身のスキルや経
験を活かせる環境やキャリアパスを求め、成長の機会を提供し
てくれる他の企業に魅力を感じる可能性が高いです。キャリア
開発のサポートやトレーニングの不足が離職率の上昇につなが
ることがあります。

■3.人事制度や評価が不透明

中小企業では、人事制度や評価基準が不透明であったり、公正
性や透明性が欠ける場合があります。従業員は自身の成果や貢
献が適切に評価されないと感じ、モチベーションの低下や満足
度の減少に繋がることがあります。公正な評価基準の策定やフ
ィードバックの提供、キャリアプランニングのサポートなどが
不足している場合も離職率が高まります。

■4.労働環境が悪い

中小企業ではリソースの制約や業務の過重な負担があるため、
労働環境が悪化することがあります。従業員は過労やストレス
により心身の健康を損なうことがあり、これが離職の要因とな
る可能性が高まります。柔軟な労働時間や休暇制度の不備、適
切な業務負荷の配分や労働環境改善の取り組みの不足が労働環
境の悪化につながることがあります。

■5.コミュニケーション不足

中小企業では情報の共有やコミュニケーションの活発さが不足
している場合があります。経営者や管理職とのコミュニケーシ
ョンの欠如や情報の非公開化、チームや部門間のコミュニケー
ションの欠如が従業員の関与度やモチベーションを低下させ、
離職率の上昇につながることがあります。適切なコミュニケー
ションチャネルの確立や情報共有の文化を醸成する取り組みが
必要です。

■6.少ない福利厚生制度

中小企業では福利厚生制度や労働条件が充実していない場合が
あります。従業員は労働条件や福利厚生面での不満を抱き、他
の企業への転職を検討することがあります。福利厚生制度の改
善や柔軟な働き方の導入などが従業員の満足度向上や離職率低
下に寄与します。

■7.リーダーシップや組織文化の問題

中小企業の経営者や管理層のリーダーシップや組織文化が問題
となることがあります。経営者のビジョンや価値観の欠如、組
織内のコミュニケーションや協力関係の欠如、意思決定の遅延
や不透明性、従業員へのリーダーシップやサポートの不足など
が離職率の上昇につながることがあります。リーダーシップの
強化や組織文化の改善が求められます。

中小企業における離職率の問題にはこれらの要素が関与してい
ることが多いです。中小企業経営者は、給与・報酬体系の見直
し、キャリア開発の機会提供、評価制度の透明性向上、労働環
境の改善、コミュニケーションの活性化、福利厚生制度の充実、
リーダーシップの強化など、これらの課題に取り組むことで離
職率の低下を図る必要があります。

繰り返しますが、従業員のスイッチングコストは相当高くつい
ているはずです。採用より定着にリソースを投入してください。