小売業において、適切な財務管理は事業の成功と持続可能性の
鍵となります。その中でも、在庫管理は特に重要な要素です。
在庫は小売業の主要な資産であり、適切に管理することで収益
性を高め、キャッシュフローを改善することができます。

■ 在庫管理の重要性
1)資金効率の向上
過剰在庫は資金を固定化し、運転資金を圧迫します。適切な在
庫水準を維持することで、資金効率を高め、他の事業活動に資
金を振り向けることができます。

2)利益率の改善
在庫回転率を上げることで、商品の鮮度を保ち、値下げロスを
減らすことができます。これは直接的に利益率の向上につなが
ります。

3)機会損失の回避
適切な在庫管理は品切れを防ぎ、潜在的な売上機会を逃さない
ようにします。これは顧客満足度の向上にも寄与します。

4)キャッシュフローの改善
在庫を適正水準に保つことで、仕入れにかかる支出を抑え、キ
ャッシュフローを改善することができます。

■ 在庫管理の改善策
1)在庫管理システムの導入
デジタル技術を活用した在庫管理システムを導入することで、
リアルタイムの在庫状況把握や自動発注が可能になります。こ
れにより、人為的ミスを減らし、効率的な在庫管理が実現でき
ます。

2)ABC分析の実施
商品をA(高価値)、B(中価値)、C(低価値)にランク分
けし、それぞれに適した管理方法を適用します。これにより、
限られたリソースを効果的に配分できます。

3)需要予測の精度向上
過去の販売データ、季節変動、市場トレンドなどを分析し、よ
り正確な需要予測を行います。最近では、AIを活用した予測
システム等も開発されています。

4)ジャストインタイム(JIT)方式の導入
必要な商品を、必要な時に、必要な量だけ仕入れるJIT方式
を導入することで、在庫水準を最小限に抑えることができます。

5)サプライチェーンの最適化
サプライヤーとの関係強化や、物流の効率化を図ることで、リ
ードタイムを短縮し、より柔軟な在庫管理が可能になります。

6)定期的な棚卸と分析
実際の在庫数と記録上の在庫数を定期的に照合し、差異があれ
ば原因を究明します。また、滞留在庫や季節商品の分析を行い、
適切な対策を講じます。

7)KPIの設定と監視
在庫回転率、商品回転期間、在庫比率などのKPIを設定し、
定期的にモニタリングします。これにより、在庫管理の効果を
測定し、継続的な改善につなげることができます。

8)クロスドッキングの活用
一部の商品に関しては、在庫を持たずに直接顧客に配送するク
ロスドッキング方式を採用することで、在庫リスクを軽減でき
ます。

適切な在庫管理は、単に在庫水準を下げることではなく、売上
と利益を最大化しつつ、キャッシュフローを改善することを目
指すものです。上記の改善策を参考に、自社の状況に合わせた
最適な在庫管理の仕組みを構築し、定期的な見直しと改善を重
ねることで、財務面での健全性を高め、競争力のある店舗運営
が実現できます。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

…前回号の続きです。

冒頭に申し上げますが、今は値上げが容認されやすい環境にあ
ります。この潮流に乗ってください。この前提で以下をご確認
ください。

■勝ち組と負け組の価格戦略は真逆です。

市場が飽和した日本のマーケットにおいては、モノやサービス
を安く買おうとするエネルギーが蔓延しています。モノやサー
ビスを提供する企業サイドも、その趨勢に迎合することで、自
社の売上を確保しようと考える傾向が強いようです。
一方、十分な利益を確保できる価格設定を行ったうえで、隆々
と経営を続ける企業もたくさんあります。当然、たくさんの顧
客に支えられているはずです。

前者と後者、雑駁に分類するなら負け組と勝ち組です。
前者(負け組)が4割、後者(勝ち組)が2割、中間が4割、
このような分類になりそうです。

◆前者(負け組)企業の価格戦略は…

「価格(安売り)を売るための道具」だと思っています。
「価格は安い方が売れる」と思っています。
「価格は、できるだけ安めに設定するべき」と思っています。
「価格が高すぎて売れない」ことを過度に嫌います。
「売れないより、薄利でも売れた方がよい」と考えています。
※うまく行ってたくさん売れても「繁盛貧乏」に陥ります。儲
からないのに忙しい状態でバランスしてしまいます。後は頑張
って・頑張り続けて…現状維持が関の山です。

◆後者(勝ち組)企業の価格戦略は…

「価格を売るための道具には使わない」との信念を持っていま
す。
「価格が安くても売れるわけではない」と思っています。
「価格は、できるだけ高く設定すべき」と思っています。
「(仮に)高すぎて売れないことが有っても仕方ない」と思っ
ています。
「薄利で売るよりも、売れない方がよい」と考えています。
※うまくいけば、たくさん売れて儲かる「繁盛高収益」の状態
になれます。利益で次の投資ができ、さらなる成長を目指せま
す。うまくいかなければ、「閑散貧乏」の状態です。やり直せ
ます。

■価格に対する二つの潮流…

モノやサービスを安く買おうとする潮流に巻き込まれることは
得策ではありません。もう一つの潮流、「良いモノ・必要なモノ
が欲しい。対価は払う」に乗せましょう。気を付けてください。
前者の潮流の方が目立っています。後者は静かに流れています。
値上げは粛々と実施されます。

■もう一度「価格戦略=値決め」を再考してください。

「値決め」は経営の要諦です。であるにも関わらず、値決めに
掛ける手間暇が少なすぎると思っています。総じて安く付けす
ぎているとも思っています。間違えた「値決め」が経営に与え
るダメージを過小評価してはいけません。

事業は付加価値を求めつづけることでのみ継続できます。値決
めは重要な経営判断です。安売りは悪です。利益を計り、利益
を求めてください。また、コストは自然に膨らみます。意識し
て抑え込んでください。高収益(Profitable)な企業体作りを
強く意識してください。

◎「価格戦略=値決め」は、経営成績に甚大な影響を与えてい
ます。勇気をもって「価格戦略=値決め」をご再考ください。

◎今は値上げが容認されやすい環境にあります。この潮流に乗
ってください。少なくとも、コストの上昇分は必ず値上げして
ください。

多くの飲食店経営者の皆様は、事業拡大と利益増加を目指して
日々奮闘されていることと思います。年間300万円の利益を出
す店舗1店舗経営されている場合、その利益を倍増させるには
どうすればよいでしょうか?多くの方が真っ先に考えるのは、
2号店の出店ではないかと思います。しかし、今回は別の視点
から、より安全で効果的な利益倍増の方法をご提案します。

■ 新規出店のリスクを考える
新規出店は確かに魅力があります。店舗数を増やすことで、ブ
ランドの認知度向上や規模の経済による仕入れコストの削減な
ど、様々なメリットが期待できます。しかし、同時に大きなリ
スクも伴います。

新規出店には多額の初期投資が必要です。家賃、内装費、設備
投資、人材採用・育成など、想像以上の出費が待っています。
さらに、新店舗が軌道に乗るまでには時間がかかり、その間は
赤字覚悟の運営を強いられる可能性が高いです。

■ 既存店舗改善のメリット
では、既存店舗の改善に注力するとどうでしょうか?利益率の
向上と固定費の削減に焦点を当てることで、新たな大きな投資
なしに利益を増やすことができます。このアプローチには、以
下のようなメリットがあります。

1)リスクが低い:新規出店に比べ、既存店舗の改善は比較的
リスクが低く、確実性が高いです。

2)即効性がある:改善の効果が直接利益に反映されるため、
成果が見えやすいです。

3)経営ノウハウの蓄積:1店舗の運営に集中することで、経
営スキルを磨くことができます。

4)ブランド力の向上:1店舗の評判を高めることで、将来の
多店舗展開の基盤を作れます。

5)キャッシュフローの安定:新規出店に伴う資金繰りのリス
クを避けられます。

■ 具体的な改善策
では、具体的にどのような改善を行えばよいでしょうか?以下
に、利益率の改善と固定費の削減のためのアイデアをいくつか
挙げてみます。

1)利益率の改善:
・F/Lコスト(食材費と人件費)の最適化:適切な原価管理と
メニュー設計、効率的な人員配置を行います。

・高付加価値メニューの開発:利益率の高い商品を提供し、客
単価を上げます。

・販売促進の強化:リピーター獲得や新規顧客の開拓に注力し
ます。

2)固定費の削減:
・水道光熱費の節約:省エネ設備の導入や従業員の意識改革を
行います。

・家賃の見直し:可能であれば、家主との交渉や立地の再検討
を行います。

・業務効率化:ITツールの導入やプロセスの見直しで人件費
を抑制します。

■ 長期的な視点も忘れずに
既存店舗の改善に注力することは、短期的には非常に効果的な
戦略です。しかし、長期的な成長を考えると、将来的な多店舗
展開も視野に入れるべきです。既存店舗の改善で得たノウハウ
と安定した収益基盤を元に、慎重に計画を立てて展開していく
ことが、持続可能な成長につながります。

■ まとめ
飲食店経営において、利益倍増は決して夢物語ではありません。
しかし、その道筋は必ずしも新規出店だけではないのです。既
存店舗の改善に注力することで、より安全かつ効果的に利益を
増やすことができます。自店の強みを見極め、地道な改善を積
み重ねることが、長期的な成功への近道となります。

企業経営の成否と、その企業が設定している価格帯や価格戦略
の相関は強いと感じます。勝ち組は総じて安くない価格帯を狙
い、値引きを好まない傾向にあります。一方、負け組は安い価
格帯を狙い、更に値引きを多発します。

『値決めこそ経営』(京セラ名誉会長、稲盛和夫先生)、この
言葉を肝に銘じてください。どんなに良いものを創りだしても、
その値決めを間違えると台無しになります。故に、値決めは大
変難しい最高レベルの経営判断事項です。であるにもかかわら
ず、値決めを安易に、どちらかというと安めにつけてしまう経
営者は少なくありません。松下幸之助先生はその著書の中で、
パナソニック(当時松下電器)は、相当大きくなるまで、松下
幸之助先生自身が値決めの最終決裁をされていた、と語ってお
られます。

「自社の値決めが正しいのか?」この解は誰にもわかりません
が、少なくとも多くの手間暇と知恵を最大限投入して、悩んで、
悩んで、悩み抜いて決める…この習慣を持っていただきたいと
思っています。

過去(この数十年)において、日本の企業の多くが、どちらか
というと安すぎる値決めを繰り返してきたために、今の経済の
停滞(デフレ)を招いたのではないかとの仮説を持っています。
特にこの傾向は中小企業に顕著です。

以下、【安売り症候群】という疾病を整理いたします。自社・
ご自身にあてはめてご確認ください。

■【安売り症候群】という疾病の正体は…(有病率50%)

◆価格を売るための道具に使うと「繁盛貧乏」になります。

「値決め」は経営の要諦です。であるにも関わらず、値決めに
掛ける手間暇が少なすぎると思っています。総じて安く付けす
ぎているとも思っています。間違えた「値決め」が経営に与え
るダメージを過小評価してはいけません。
経営者は閑散な状態を嫌います。故に、安すぎる「値決め」を
して、貧乏しても繁盛したいと考える傾向があります。「繁盛
貧乏」がはびこるのはこのためでしょう。
経営者は楽な道を選びます。苦労して付加価値を積み上げるよ
りも、価格を低く抑えて価値とバランスしようと考えてしまい
ます。価格を売るための道具に使ってしまいます。
安売り戦略の大罪は、良いものを創り出そうとする知恵を奪い
取ることです。この愚策を長年続けている集団から、新たな商
品やサービスを創り出す創造力は生まれません。商品やサービ
スの価値と価格のバランスは、その価格を下げて市場に合わせ
るのではなく、その価値を向上させることで調整してください。
多くの偉人たちが語る経営の王道です。

◆「値決め」が弱気で利益を出せない経営体、さらに、新しい
価値を生み出す創造力を無くしてしまった経営体を『安売り症
候群』と呼びます。

◆『安売り症候群』の経営体には、以下のような症状が現れま
す。

□1.頑張っているのに儲からない。
□2.新しい商品、サービスを創造できていない。
□3.利益は出なくて良い、と思うことがある。
□4.値上げをしたいと思っていてもできない。
□5.ぎりぎりの経営をしていると感じる。
いかがでしょうか?

◆病名:『安売り症候群』を整理します。

値決めに対する姿勢が弱気で、利益管理も曖昧になる病です。

●原因

安くないと売れないとの思い込みが原因です。良いものには相
応の値段を(それなりのものはそれなりの値段を)付けてくだ
さい。良いものを安く売る必要はありません。原価が上がれば
価格を見直す、この当たり前の企業行動を取らなければ、利益
がどんどん減ります。利益が薄くなればなるほど、良いものを
作ろうとする知恵や創造力を失います。最後は、薄利は善、利
益は悪の心境に陥ります。こうなると末期です。

●症状

二つのレベルに分かれます。繁盛貧乏のレベルが第一段階です。
このレベルは頑張っているのに値決めを間違えていて儲からな
い状況です。この段階では価格の見直しを行えば容易に治癒で
きます。第一のレベルを続けていると、頑張っても儲からない
と思い込み、頑張る意欲、より良いものを創造しようとする力
を失くしてしまいます。最後には、儲からない自分を正当化す
るために、儲けは悪、儲からないことが善、ビジネスそのもの
を否定するようになります。

『値決めこそ経営』(京セラ名誉会長、稲盛和夫先生)です。
「値決め」には、多くの手間暇と知恵を最大限投入して、悩ん
で、悩んで、悩み抜いて決める…この習慣を持っていただきた
いと思っています。
「値決め」は現場ではなく、トップが決めるべき事項です。

補助金の採択と融資の関係について、ある企業様の事例を交え
ながらご説明させていただきます。

■ ある企業様の事例
ある企業様から次のようなご相談をいただきました。事業再構
築補助金の採択を受けたものの、メインバンクから融資を断ら
れたというケースです。

■ 経営者様の主張
・銀行の担当者が、採択された時点で融資はできると言った
・そのため、既に工事を発注してしまった
・工事の遅延は損失につながり、新規事業の中止はさらに大き
な損失を招く
・国の認定を受けた事業計画なのに、なぜ融資を断られるのか

経営者様は、「補助金の採択=融資を受けられるのは当然の権
利」とお考えでしたので、融資を断られたことを銀行の意地悪
や嫌がらせではないかとお怒りになっていました。

■ 融資が断られた真の理由
しかしながら、決算書を拝見すると、融資が困難な理由は明確
でした。それは「赤字債務超過」の状態にあったためです。

赤字債務超過とは、簡潔に言うと、負債が資産を上回っている
状態を指します。これは経営上非常に深刻な問題であり、金融
機関にとっても大きな懸念事項となります。

■ 赤字債務超過の影響
赤字債務超過に陥ると、通常、金融機関からの新規融資は極め
て困難になります。まずは、この事実を十分にご理解いただく
必要があります。ただし、日本政策金融公庫の融資やコロナ関
連の特別融資など、政策的な理由で例外的に融資が可能な場合
もあります。しかし、これらは通常のケースではないことをご
認識ください。

■ 補助金採択と融資の関係
事業再構築補助金の採択を受けたからといって、必ずしも金融
機関の融資が保証されるわけではありません。補助金の採択と
金融機関の融資判断は別物であり、やはり企業の財務状況が重
要な判断基準となります。

■ まとめ
赤字債務超過の状態では、基本的に融資を受けることが困難で
あるという認識を持つことが重要です。
経営者の皆様には、赤字債務超過に陥ってから資金調達に奔走
するのではなく、そのような状況に陥らないよう、日頃から財
務管理に十分注意を払っていただくことをお勧めいたします。

…前回号からのつづきです。

■頑張りすぎる経営からの脱却!目指すべきは『ダム経営』
(松下幸之助先生)です。

◎以下は、『ダム経営』(松下幸之助先生)の要点です。

『ダム経営とは、経営に必要な人・モノ・金に余裕を持った経
営をする方法のことです。例えば、工場で機械が100%動い
ていなければ利益が出ないようでは、何かがあればすぐに利益
が出なくなります。そうではなく、80%稼働でも利益が出る
ようにしなければなりません。人に対しても同じです。社員の
80%が働けば利益が出るようにすることを指します。資金に
ついても、例えば、銀行から融資を受ける時にも、返済に余裕
があるようにすることです。ダム経営とは、人・モノ・金に余
裕を持たせることです。』

◎以下、松下幸之助先生のダム経営の講演を聴いた経営者との
有名なやり取りです。

(某経営者)「うちの会社は人も金も汲々としている。松下さ
んのような大企業はダム経営ができるかもしれませんが、我々
のような小さな会社がダム経営をできるようにするにはどうす
ればいいのですか?」

(松下幸之助先生)「どうしたらダム経営ができるようになる
のか、方法論は私にもわからない。しかし、そうなりたいと強
く思うことが重要だ。」

■『ダム経営』(松下幸之助先生)を導入するためには…

◆正解は「そうなりたいと強く思うこと」(松下幸之助先生)
です。これが松下幸之助先生のよく考えられた末のご回答です。

ただし、具体論として敢えて付け加えるならば、

◆その1:余計なものを徹底的に削ぎ取る経営を行うこと、ズ
バリ経営の【単純化(絞り込み)=Simple化】です。な
ぜなら、少なくない中小企業は、過去において長期間『増収と
拡大』を第一義に経営してきました。その過程で、数多の余計
なモノと事に埋もれています。結果として、経営資源が分散さ
れ、社内のありとあらゆるものが複雑になり、動きが悪くなっ
ています。対応が遅くなり、ミスが多発し、全体にコスト高に
なっています。各商品やサービスの磨きこみも十分でなく、総
花的な品揃え、サービスを提供しており、これといった強みも
ない状況に陥っているからです。経営が散らかっているのです。

◆その2:利益を優先する経営を行うこと、ズバリ経営の【高
収益化=Profitable化】です。なぜなら、過去にお
ける長期間の『増収と拡大』一辺倒の経営は、時に利益をない
がしろにしても仕方ないとの考え方を広く社内に浸透させてし
まっているからです。『利益より売上、利益より規模の拡大』
とする無言のスローガンを社内に根付かせてしまっています。

『減収(売上減)と規模の縮小』を一定期間容認し、
【単純化(絞り込み)=Simple化】と
【高収益化=Profitable化】を
具体的な施策として取り組むことで、『ダム経営』(松下幸之
助先生)の実現を目指すことを当面の課題とする経営に舵を切
られることをお薦めしたいと思っています。経営が、会社が大
きく変わるはずです。

人口減少に起因する市場規模の縮小、市場の成熟化、さらには
働き方改革が叫ばれる令和の時代には、過去の我武者羅に頑張
る経営では到底生き延びて行けないように感じます。今こそ、
『余力のある経営』を目指すべきではないでしょうか。

※昭和の高度成長期において、『ダム経営』を提唱された松下幸
之助先生は、まさに『経営の神様』です。改めて敬意を表した
いとの思いで一杯です。

「経営戦略」と「財務指標」という言葉を耳にしたことがある
でしょうか?これらは、会社の目標を達成するために非常に重
要なツールです。今回は、経営戦略と財務指標の関係について
解説します。

■ 経営戦略とは?
経営戦略とは、会社が長期的な目標を達成するための計画や方
針のことです。例えば、新しい商品を開発して売上を増やした
り、コストを削減して利益を増やしたりすることが経営戦略に
あたります。経営者は、この戦略を立てることで、会社の未来
を見据えた行動を計画します。
■ 財務指標とは?
財務指標は、会社の経済状態を数字で表したものです。これに
より、経営戦略がうまくいっているかどうかを判断することが
できます。主な財務指標には以下のようなものがあります。

1.収益性指標:会社がどれだけ効率よく利益を上げているか
を示します。
例:売上高利益率(利益 ÷ 売上高)

2.安全性指標:会社の財務的な安定性を評価します。
例:自己資本比率(自己資本 ÷ 総資産)
3.成長性指標:会社がどれだけ成長しているかを示します。
例:売上高成長率
((今年の売上高 – 去年の売上高)÷ 去年の売上高)

4.効率性指標:会社が資産をどれだけ効率的に使っているか
を示します。
例:総資産回転率(売上高 ÷ 総資産)
■ 経営戦略と財務指標のつながり
経営戦略を立てたら、その成果を測るために適切な財務指標を
選びます。
例えば:

・新商品を開発する戦略:
売上高成長率をチェックします。新商品が売れているかどうか
を確認するためです。

・コスト削減戦略:
売上高利益率の変化を確認します。コスト削減が利益にどれだ
け貢献しているかを見るためです。

・新市場に進出する戦略:
総資産回転率の推移を観察します。新市場での売上が資産の使
い方にどう影響しているかを確認するためです。
■ 財務指標のモニタリング
財務指標は定期的にチェックすることが大切です。多くの会社
では、月次や四半期ごとに財務指標を確認します。これにより、
経営戦略がうまくいっているかを確認し、必要があれば計画を
変更することができます。
■ まとめ
経営戦略と財務指標は、会社をより良くするための重要なツー
ルです。経営戦略で「何をするか」を決め、財務指標で「うま
くいっているか」を確認します。経営戦略と財務指標を理解し、
実践することで、会社の成功に貢献できます。

弊所では、税務だけでなく財務に関するご相談もお受けしてお
ります。ご興味がある方は、是非お問い合わせください。

…前回号からのつづきです。

■拡大発想からの脱皮!

○例えば、従業員数は多い方が良いのか?
力があれば、たくさんの従業員を抱え、その雇用と教育機能を
果たすことには大きな社会的意義があります。100人を雇用
する会社よりも、500人の従業員を抱える会社の方がこの意
味でははるかに立派です。ただし、力があれば、力相応の範囲
で、この条件が付帯します。
力相応を越えた部分の雇用には、会社側も、雇用される側の従
業員にも、様々な問題を内包することになります。

○例えば、店舗数は多い方が良いのか?
10店舗の高収益店舗と、5店舗の採算分岐点ギリギリの店舗
の合計15店舗を経営する飲食企業と、10店舗の高収益店舗
のみを経営する飲食企業、どちらが良い会社か?との意味です。
イメージとしては、前者は年商15億円、営業利益1億円、後
者は年商10億円、営業利益1億円になります。

少なくない中小企業経営者が、従業員が多い方、規模が大きい
方を我武者羅に目指しているように見えます。この考え方は、
時に規模拡大至上主義を招きます。

■縮小を容認する計画を!

貴社が、上記のような考え方を長期間続けていたならば、一度
発想を変えてみることをお薦めします。規模の縮小を容認する
考え方です。

○例えば、どんどん人を増やして売上を作りに行くよりも、仕
事を選別して増員を控える選択肢を用意することです。マネー
ジメントは、その規模が小さいほど容易になります。

○例えば、収益の見込めない分岐点ギリギリの店舗は手放して
しまう選択肢を用意することです。店舗数が減ると、マネージ
メントは容易になります。

規模の拡大には、力相応の拡大と力不相応の拡大があります。
言いかえると、自然に成長した拡大と、無理やり伸ばした拡大
があります。後者には大きなストレスが伴っているケースが多
いです。縮小を容認することで、会社に余力が生まれます。

■以下のような仮説が生まれます。

『日本の企業は規模の拡大にこだわり過ぎています。何が何で
も規模を拡大しようとすると、規模を拡大するために多くの犠
牲を払うことになります。経営上無意味な不採算事業や不採算
顧客を過度に温存することになります。規模拡大至上主義は、
分散症候群や安売り症候群を招く原因のひとつです。脱・規模
拡大至上主義、縮小を容認する経営に移行してください。』

言うまでもなく規模は重要です。規模の縮小を容認する経営を
長期間続けることは困難です。数年に一度、または、数年間に
限定して、敢えて規模の縮小を容認する経営を導入してくださ
い。今まで取り組んでいなかった会社様は、向こう数年間に限
定して、敢えて縮小を容認する事業計画を立案して執行してく
ださい。経営が、会社が大きく変わります。

…次回号に続く

中小企業経営における最優先事項は「営業」や「マネジメント」
ですので、「税務」や「財務」について、深く意識する機会は
少ないと思います。

税務と財務は似て非なるものですが、同一のものと認識してい
る社長様が多いため、様々な勘違いが起きています。

弊所のホームページを見てご相談に来られた社長様の話です。

・ある不動産取引の処理方法について銀行から指摘を受けた。
・顧問税理士さんに処理方法の変更を依頼したが「出来ない」
と断られてしまった。
・納得できなかったため、複数の知人から知恵をもらったとこ
ろ、処理方法の変更は可能であることが分かった。
・税理士さんにその結果をお伝えすると、ようやく変更しても
らえた。
・税理士さんはプロだと思って任せていたが、そもそも、なぜ
金融機関の評価が下がるような処理をするのか?

当事務所に相談に来られる社長様が必ず口にされるセリフは、
「今の税理士さんは少しも〇〇のアドバイスをくれない。」と
いうものです。〇〇に入る内容は概ね財務に関することですが、
当事務所では、「先生は何も間違っていませんよ。」といつも
お答えしています。

税理士さんは、その名の通り税務のプロであり、今回の処理も
税務上は全く問題のない処理です。社長様が、税理士さんに税
務面だけでなく、財務面もコンサルティングして欲しいと依頼
しているならば別ですが、そうでなければ税理士さんはしっか
りと責務を果たしています。問題は、税理士さんに依頼してい
るのは税務面のアドバイスであるにも関わらず、財務面も任せ
ていると社長様が錯覚してしまっていることです。

先述の社長様は、銀行の指摘もあり結果的に財務目線でも評価
される決算書を作成することができましたが、税務目線だけで
作成された、融資判定で不利になる決算書を金融機関に提出し
ている企業様も多くいらっしゃると想像します。

社長様から、「税務と財務の違いは理解できた。ただ、財務の
相談は誰にすればよいのか?」と質問がありました。

中堅企業クラスになると社内に財務部長がいますが、中小企業
で財務に明るい人材を置いている企業は多くありません。まさ
に、このことが中小企業が抱える大きな課題です。

弊所では、税務だけでなく、財務の目線で中小企業経営をサポ
ートする「財務部長の代行サービス」をご用意しています。

是非、ご相談ください。

■増収(売上増)発想からの脱却!

事業計画を作る時には、売上は当然伸びるとする会社様が大半
です。例えば、今後5年間毎年売上を伸ばし、その中で原価と
費用を賄いながらも営業利益を少しは増やす、このような計画
が大半です。増収を前提にした計画です。計画書作成後は、売
上の達成状況を第一義に確認しながら経営を行います。売上目
標の達成のためには、原価や販管費の上昇も仕方ないと考えて
しまうようです。この考え方は、時に売上至上主義を招きます。

■減収(売上減)を容認する計画を!

貴社が、上記のような考え方を長期間続けていたならば、一度
発想を変えてみることをお薦めします。減収(売上減)を容認
する考え方です。

例えば、次年度の計画を作る時に、売上は2%減じても良いと
する一方、粗利益率は2%向上する目標を立てます。この時、
ほとんどの会社様は減収&増益になります。減益にはなりませ
ん。売上を何としても死守する発想を捨てることができれば、
筋の悪い売上を捨てることができます。経営が、会社が大きく
変わります。

売上には筋の良い売上と筋の悪いそれがあります。言いかえる
と、無理なく立てた売上と、無理して立てたそれです。後者は
概ね薄利(赤字)であり、時に大きなトラブルを招きます。減
収を容認することで、後者の売上を捨てることができます。

■以下のような仮説が生まれます。

『日本の企業は売上高確保、増収(売上増)にこだわり過ぎて
います。何が何でも売上高を確保しようとすると、売上高を確
保するために多くの犠牲を払うことになります。利益を犠牲に
した安易な値引きや安い値決めを招きます。利益に見合わない
過大な広告コストを支払う羽目になります。採算を度外視した
幅広い品ぞろえや長時間営業を行うようになります。顧客の過
度な要求を受け入れてしまいます。売上至上主義は、分散症候
群や安売り症候群を招く原因のひとつです。脱・売上至上主義、
減収(売上減)を容認する経営に移行してください。』

■繁盛貧乏からの脱却を!

会社は、忙しければ相応に利益が出るはずです。【繁盛高収益
状態】です。逆に、利益が出ていなければ暇なはずです。【閑
散貧乏状態】です。ところが、少なくない中小企業は忙しいの
に利益も出ていない状況に陥っています。【繁盛貧乏状態】で
す。ここに大きな疑問を持ってください。

筋の良い売上に付加して、筋の悪い売上を無理やり取りに行っ
ていることが原因のひとつです。この不要な売上を排除するた
めに、減収(売上減)を容認する経営を一時的に行うことは有
効です。

言うまでもなく売上は重要です。2%の減収でも5年続けば10
%売上が減じます。減収を容認する経営を長期間続けることは
困難です。数年に一度、または、数年間に限定して、敢えて減
収を容認する経営を導入してください。今まで取り組んでいな
かった会社様は、向こう数年間に限定して、敢えて減収を容認
する事業計画を立案して執行してください。経営が、会社が大
きく変わります。

…次回号に続く