創業時からお付き合いしている企業様の第4期決算が終わりま
した。資本金100万円で会社を設立し、一緒に300万円の
創業融資を借りに行ったのが始まりです。毎期増収増益で推移
し、第4期の売上高は380百万円、経常利益は13百万円と
なりました。4年間の累積利益は27百万円です。

同社が順調に成長できた要因は、社長の経営手腕が高いことは
もちろんですが、他人資本(借入)を上手に活用できたことも
要因のひとつです。4期が終わった時点で70百万円の借入が
ありますので、自己資金100万円では成しえなかった成長を、
借入を活用することで実現できたと感じます。

借入が大きすぎるのではと懸念された方もいらっしゃるかもし
れませんが、同社は、借入が70百万円ある一方で、30百万
円の現預金と40百万円の売掛金を持っています。もし、今事
業をやめるなら、手元現金30百万円と売掛金40万円の回収
で借入を一括完済することが可能です。もちろんこの辺りのバ
ランスも見ながら借入を進めてきました。

ただ、最初から借入が容易にできた訳ではありません。創業融
資は500万円で申し込みましたが300万円しか出ませんで
した。また、保証協会の保証を取りつけるのも最初は苦労しま
した。実績を積み上げながら、少しずつ借入を増やしてきた結
果、70百万円になったという印象です。

利益が出る事業を有しているなら、資金をたくさん集めて取り
組んだ方が、リターンは大きくなります。しかし、一朝一夕に
資金調達ができる訳ではありません。銀行が融資の判断材料と
している「決算書」のあるべき姿をしっかりとイメージし、そ
れに向かって実績を着実に積み上げていく必要があります。

同社も、1期目から税金を払って利益を計上し、不用意な社長
への貸付や、仮払などが発生しないように努めるなど、しっか
りと決算書をデザインしてきました。それでも、この4年間は、
500万円、1,000万円という単位で少しずつしか資金調
達はできませんでした。しかし、これまでの実績の積み重ねで、
ようやく4期目の決算はイメージに近いものになりました。よ
って、第5期は大きく資金調達ができ、これまで以上に事業を
加速できると思います。

資金調達は長期戦です。今現在資金調達に苦労されている企業
様も、まずは自社の決算書のあるべき姿をしっかりとイメージ
して、それに向かって日々着実に実績を積み上げていくことで、
いつか必ず調達ができる時が来ます。ただ、「そもそもどのよ
うな決算書を目指せば良いか分からない。」という経営者様も
多いと思います。是非、ご相談ください。

…前回号からのつづきです。

創業者様からの相談に対するQ&Aを整理します。経営は百社
百様です。故に、これが正解でこれは間違いなどと断定するつ
もりはありませんが、それでもある程度の方向性をお示しする
ことはできます。以下、ご確認ください。

■〔Q&A〕その4:人脈・営業先開発について?

●(創業者D氏)
『2か月前に創業しました。日々、販売する商材と人脈を求め
て駆け回っています。なかなかいいアイデアとご縁が見つかり
ません。』

◎(当事務所担当者)
『アイデアやご縁を外に求めることも重要ですが、まずは、自
分のキャリアを整理してください。何が得意なのか?何ができ
るのか?何をしたいのか?仮説の立案が先です。私はこんなこ
とをしたい、こんなイメージ、この思いを持ったうえで、その
仮説を検証するために動きましょう。やみくもにご縁を求めて
も、自分にとって本当に必要なアイデアやヒントは見つかりま
せん。』

●(創業者D氏)
『名刺はたくさん集まりましたが。』

◎(当事務所担当者)
『本当に必要な名刺の数は、多分十枚から多くて数十枚でしょ
う。量より質です。動き過ぎずに、一人で考える時間を増やし
てください。動く、動く、動くではなく、考える、考える、動
く、考える、考える、動く、こんなイメージで行動してくださ
い。』
…つづく

■〔Q&A〕その5:創業融資をすぐ受けるべきか?

●(創業予定者E氏)
『小さなお店を開業します。貯金と親からの援助を合わせて800
万円あります。とりあえず手持ち資金だけで事業をスタートし
てみようと思っています。』

◎(当事務所担当者)
『半年後に黒字化する計画ですね。黒字化が遅れたら、資金不
足に陥りますね。』

●(創業予定者E氏)
『予定通り立ち上がらなかったら金融機関に融資をお願いしよ
うと考えています。それに、「借り入れはできるだけするな」
と言われています。』

◎(当事務所担当者)
『資金不足に陥った時点で融資を依頼するのと、現時点で融資
を依頼するのとでは、後者の方がはるかに借りやすいですよ。
また、ぎりぎりの資金計画で開業するよりも、今資金を調達し
て、資金に余裕を持って経営した方が楽ではないですか?困っ
た時に借入れができないリスクを取るより、今借り入れを起こ
して金利を払って、使わずに銀行口座に残しておく方法を推奨
します。』
…つづく

※「借入れは絶対しない」この決意なら別ですが、「困ったら
借りよう」この気持ちがあるなら困っていない今のうちに融資
を受けてください。「困った時には借りにくい」この理屈を理
解してください。金融機関にあるのはすべて「日傘」です。
「雨傘」はありません。

■〔Q&A〕その6:大きなチャンス?大きな賭け?力相応か?

●(創業者F氏)
『大きなチャンスがきました。この仕事がうまくいけば、一気
に事業が立ち上がります。』

◎(当事務所担当者)
(創業10ヵ月目、月商200万円(粗利益100%)の工事請負業
様です。)

『少しずつ順調に立ち上がってきましたね。今回受注できそう
な仕事は、8,000万円・工期4か月の元受工事ですね。粗利益率
はどれくらいですか?』

●(創業者F氏)
『20%ぐらいです。』

◎(当事務所担当者)
『売上高8,000万円、粗利益額1,600万円、原価(外注費)6,400
万円になりますね。どこかでつまずいたら致命傷になります。
大丈夫ですか?』

●(創業者F氏)
『どんなリスクがありそうですか?』

◎(当事務所担当者)
『施主さんからの支払いが遅れる、途中で設計変更が入って工
期がずれる、また、当社の下請けさんの都合で工期が遅れて入
金が遅れる等、何かが起きたときに当社に余裕が全くありませ
ん。』

●(創業者F氏)
『経営にはリスクが伴うものではないのですか?』

◎(当事務所担当者)
『これは健全なリスクというより、一か八かに近い不健全なリ
スクに見えますがいかがでしょうか?』『元受は大きな会社に
譲って、有利な工事を部分的に請け負ったらどうですか?』
…つづく

※リスクには、「力相応のリスク」と「力不相応のリスク」が
あります。経営上のリスクは、「力相応のリスク」の範囲に留
めてください。

次回号につづきます。

セーフティネット保証と言えば、業況が悪化した場合に利用す
る5号保証が有名ですが、経営安定関連保証は8号まで、さら
に危機関連保証という制度があります。5号以外の保証制度を
利用する機会は滅多になさそうですが、どのような制度がある
かをひと通り知っておくと、将来役に立つかもしれません。

■ 経営安定関連保証
1号:連鎖倒産防止
指定された倒産事業者に対して、50万円以上の売掛金債権等
を有している、もしくは取引規模が20%以上ある場合に利用
できる制度です。

2号:取引先企業のリストラ等の事業活動の制限
「ロシア水域におけるさけ・ます流し網漁禁止」など、事業活
動の制限を余儀なくされた指定案件に関連する事業者が利用で
きる制度です。

3号:突発的災害(事故等)
指定地域内において、1年以上継続して事業を行っており、災
害等の影響を受けた後の3か月間の売上高等が前年同期比マイ
ナス20%以上の見込みである場合に利用できる制度です。

4号:突発的災害(自然災害等)
指定を受けた災害等が原因で、最近1か月間の売上高が前年同
月比20%以上減少しており、かつ、その後2か月間を含む3
か月間の売上高等が前年同期に比して20%以上減少すること
が見込まれる場合に利用できる制度です。

5号:業況の悪化している業種
指定業種に属する事業を行っており、最近3か月間の売上高等
が前年同期比5%以上減少している場合に利用できる制度です。

6号:取引金融機関の破綻
破綻した金融機関と金融取引を行っており、適正かつ健全に事
業を営んでいるにもかかわらず、金融取引に支障を来している
場合に利用できる制度です。

7号:金融機関の経営の合理化に伴う金融取引の調整
取引依存度が10%以上の金融機関の支店の削減等により、総
借入額が前年同期比で減少しており、かつ、当該金融機関から
の借入残高が前年同期比マイナス10%以上減少している場合
に利用できる制度です。

8号:金融機関の整理回収機構に対する貸付債権の譲渡
RCC(整理回収機構)へ貸付債権が譲渡された中小企業者のう
ち、事業の再生が可能と判断された場合に利用できる制度です。

■ 危機関連保証制度
リーマンショックや東日本大震災のように、景気が急速に悪化
するような事態が発生した場合に発動される措置です。

影響力の大きな企業の倒産、金融機関の破綻、大きな災害や事
故の対策として、様々な措置が用意されています。

創業者様からの相談に対する〔Q&A〕を整理します。経営は
百社百様です。故に、これが正解でこれは間違いなどと断定す
るつもりはありませんが、それでもある程度の方向性をお示し
することはできます。以下、ご確認ください。

■〔Q&A〕その1:個人創業か法人での創業か?資本金は?

●(創業予定者A氏)
『とりあえず、個人事業でスタートしようと考えています。
法人化して事業を始めるのと、個人事業者としてスタートを切
るのと違いはありますか?』

◎(当事務所担当者)
『想定される取引先はどのような先ですか?』

●(創業予定者A氏)
『小規模から中堅の食品メーカー様を想定しています。』

◎(当事務所担当者)
『できるなら法人の方が良いですね。敢えて個人事業でスター
トするメリットも見当たりません。個人事業者より法人の方が
取引しやすい場合があります。逆はありません。』
※コメント:
個人事業者との取引を嫌う取引先はありますが、個人事業者で
なければならないとする取引先はありません。
可能なら法人化して起業してください。

◎(当事務所担当者)
『準備できる自己資金はいくらありますか?』

●(創業予定者A氏)
『600万円ぐらい準備できます。』

◎(当事務所担当者)
『であるなら、500万円の資本金で株式会社を設立してはいか
がですか?資本金は大きい方が良いです。その後の資金調達に
も有利です。無理に膨らます必要はありませんが、準備できる
資金があるなら、活用してください。』

●(創業予定者A氏)
『当面の生活費はどうするのですか?』

◎(当事務所担当者)
『設立した会社から役員報酬として、必要分を常識の範囲内で
もらってください。』
…つづく

■〔Q&A〕その2:共同経営の可否?

●(創業予定者B氏)
『友人と共同で会社を立ち上げようと考えています。100万円
ずつ3人で出し合って資本金300万円の会社を作る予定です。
一方、このような関係が上手くいくのか心配してくれる方もい
ます。どうお考えですか?』

◎(当事務所担当者)
『3人はどんな力関係ですか?3人とも対等なのか?リーダー
的な誰かがおられるのか?』

●(創業予定者B氏)
『3人とも対等の友人です。半年ぐらい前に知り合って、意気
投合しました。対等にやっていこうと話しています。』

◎(当事務所担当者)
『水を差すようで恐縮ですが、一般論として近い将来意見が合
わなくなる可能性が小さくないことをご理解ください。判断が
割れた時に、誰の判断を正とするのか、多数決で行くのか、ま
た、判断は「YES」か「NO」だけではなく、程度加減を伴う
ことが大半です。想像してください。』

●(創業予定者B氏)
『確かにそうですね。どうすればよいですか?』

◎(当事務所担当者)
『何が正解かはわかりません。このような方法でうまくやって
おられる方々もおられます。ただ、上手くいかない確率が低く
ないということです。例えば、3人ともが別々に会社を作って、
協力して進めることから始められたらどうですか?また、3社
間の取引については、できるだけルールを決めておいた方が良
いですね。』
…つづく

■〔Q&A〕その3:どんな事業での創業が良いか?

●(創業予定者C氏)
『創業の準備を始めています。一年後を目安に創業します。事
業構想中です。意見を聞かせてください。』

◎(当事務所担当者)
『経歴を詳しく教えてください。』

●(創業予定者C氏)
『約20年間食品卸に関する業務に取り組んできました。…略』

◎(当事務所担当者)
『これだけのキャリアを積んでおられるのであれば、過去の経
歴の延長で考えることがまず基本です。この分野の中で、自分
自身が得意な分野、市場が伸びている分野に集中して考えてみ
てください。また、この分野での人脈も整理してください。』
※まったく新しい分野で起業して成功される方も少なくありま
せん。ただ、過去の経験の延長線上で起業される方が、より成
功確率は高くなります。
…つづく

次回号につづきます。

創業融資は、事業を軌道に乗せるまでに必要な資金の借入です。
事業が軌道に乗った後は、成長軌道に乗せるための資金調達を
改めて行う必要がありますが、この成長資金を十二分に獲得で
きるかどうかで、その後の成長曲線は大きく変わります。成長
資金の調達に失敗し、せっかく軌道に乗った事業が収縮してし
まったり、思うように成長曲線を描けなかったりする企業を多
く見ていますので、成長資金獲得のポイントをA社の事例で解
説します。

会社名A社
事業内容:インターネット通信販売
営業年数:個人事業2年、法人1年

個人事業にて通信販売を始めたところ、創業2年目で売上高が
1,000万円を超えてきたため、法人成りをしました。法人
成りをするタイミングで、日本政策金融公庫から300万円の
創業融資を受けました。

調達した創業資金を元手に、事務所の整備や人材の雇用を行い、
売上高は順調に拡大していきました。また、法人1年目の期中
に保証付き融資500万円も調達することができたため、その
後の業績は予想以上で推移しました。

しかし、利益や借入金の大部分は、仕入や人件費等の投資に回
していますので、利益は上がる一方で、資金繰りにそれ程の余
裕はありません。そのような状況の中、法人1期目の決算を迎
えることとなりました。

A社の社長様が気にしたのは税金です。周りの先輩経営者から
のアドバイスもあり、保険の加入や車の購入をしたいとの相談
をお受けしました。ここが大きな分かれ道です。

1.初年度の業績が思いのほか良かったため無理な節税を行う。
2.節税によって本来の税額よりも多額のキャッシュが流出す
る。
3.手元資金が苦しくなるが利益を圧縮したため決算内容も悪
く金融機関から相手にされない。
4.常に資金が不足している状況に陥り思うように成長戦略が
描けない。

本当によくお見受けするパターンです。A社の社長は優れた事
業力があり、資金があればもっと事業を伸ばせると思いました
ので、節税より、ファイナンスを活用した拡大戦略の方が、未
来が開けることを粘り強く説明しました。

最終的に社長様も納得いただき、初年度の売上高は8,000
万円、経常利益700万円で決算を行いました。200万円弱
の税金を納めましたが、申告後すぐに2,000万円の資金調
達を行うことが出来、その後倍々で売上高を増やすなど、無事
に事業を成長軌道に乗せることができました。

創業黒字化という局面が事業面で最も難しいところですが、無
事に黒字化を達成した企業でも、財務戦略の失敗により立ち行
かなくなるケースがたくさんあります。1期目、2期目の決算
が大変重要です。

働き方改革は、契約形態や労働形態の多様化を意味します。

■自然人と法人との契約の形態は様々です。大きく四つに区分
できます。

◆1.雇用契約
○労働者は「労働時間」を提供することで、会社から「賃金」
を受け取れます。
○成果物の完成責任は負いません。
○指揮命令権はあります。
○労働力の提供が行われないと、その責任が問われます。

◆2:派遣契約
○労働者は派遣会社に雇用され、派遣会社は提供する「労働時
間」に対して報酬を受け取れます。
○成果物の完成責任は負いません。
○指揮命令権はあります。
○労働力の提供が行われないと、その責任が問われます。

◆3:請負契約
○請負人は「仕事の完成」と引き換えに会社(依頼者)から報
酬を受け取れます。
○成果物の完成責任を負います。
○指揮命令権はありません。
○成果物が納品されない、成果物の不良や不具合(瑕疵担保責
任)に対して責任が問われます。

◆4:委任、準委任契約
○断続的な業務処理(法律行為など)に対し、一定の報酬を受
け取れます。
○成果物の完成責任は負いません。
○指揮命令権はありません。
○約束していた業務が適切に実施されていない(善管注意義務
違反)ことに対して責任が問われます。

正社員・派遣・アルバイトなどの、「労働時間を提供して対価
を得る」働き方だけでなく、「対価を担保して時間を自由にす
る」請負契約的な働き方も増えてくるはずです。

■テレワーク(離れたところで働く)の労働形態も、ますます
増えそうです。大きく三つに区分できます。

◆1:在宅勤務(終日在宅勤務)
終日、所属するオフィスに出勤しないで自宅を就業場所とする
勤務形態です。オフィスに出勤したり、顧客訪問や会議参加な
どによって外出したりすることがなく、1日の業務をすべて自
宅の執務環境の中で行います。通勤負担が軽減され、時間を有
効に活用することができます。

◆2:モバイルワーク
移動中(交通機関の車内など)や顧客先、カフェなどを就業場
所とする働き方です。営業など頻繁に外出する業務の場合、様
々な場所で効率的に業務を行うことにより、生産性向上の効果
があります。テレワークでできる業務が広がれば、わざわざオ
フィスに戻って仕事をする必要がなくなるので、無駄な移動を
削減することができます。

◆3:サテライトオフィス
所属するオフィス以外の他のオフィスや遠隔勤務地の施設を就
業場所とする働き方です。例えば、所属するオフィス以外の他
のオフィスが従業員の自宅の近くにある場合、そのオフィス内
にテレワーク専用の作業スペースを設けることで、職住近接の
環境を確保することができ、通勤時間も削減することができま
す。また、遊休施設や空き家などを活用して行う遠隔勤務には、
組織の活性化や地方創生など、多様な期待が寄せられています。

一昔前とは様変わりした労働に対する考え方が、様々な契約形
態を創出していくはずです。
また、進化したITが、新しい労働形態を可能にしてくれまし
た。10年前には考えられない働き方ができます。
業種や業務によって異なりますが、先入観にとらわれ過ぎず、
新しい契約形態や労働形態に挑戦することも、働き方改革の波
に乗るための重要な要素ではないでしょうか。
50人の社員を抱える会社の事務所には、50人分のスペース
を用意する、この常識が非常識になる日も近そうです。

会社が行う投資の中で最も高額なものは人材投資です。新卒社
員を定年まで雇用すると数億円の投資になります。そして、最
も投資効果を測りにくいのも人材投資です。

機械等への投資は、一定のパフォーマンスが確実に見込めます。
大きくぶれることはありませんので、投資効果の将来予測も簡
単です。人材への投資は、A社員とB社員を同じ条件で雇用し
たとしても、そのパフォーマンスは大きく違う可能性がありま
す。

適正な人件費を測る指標のひとつに労働分配率があります。付
加価値に占める人件費の割合で、人件費が多いか少ないかを判
断するものですが、付加価値額との相対的な指標であり、また、
事業の立ち上げ期なのか円熟期なのかといったライフサイクル
によっても評価が変わりますので、人件費そのものが適正かど
うかは判断できません。

「良い人材」とは会社にとって重要な「資産」です。しかし、
機械の様にバランスシート上に資産として表示されませんので、
財務戦略上は軽んじられる場合があります。「収益力回復のた
めに各人の人件費を10%カットする。」というのは簡単に導
きだせる理屈ですが、10%の人件費カットが優良な資産を大
きく劣化させる危険性もあります。人材の層が厚い大企業より
も中小企業の方がより大きな影響が現れます。

反対に、10%の人件費増加でそれ以上の資産価値上昇をもた
らす可能性もあります。2億円で購入した人材が、やり方次第
で3億円の価値になるかもしれません。3億円の機械は、3億
円の資金が無ければ買えませんが、3億円の価値がある人材は、
2億円で買える可能性があります。人材投資の面白いところで
す。

中小企業の事業がスケールしない理由のひとつは人材不足です。
高額な報酬を払えない中小企業にとって、雇用した人材が投資
額以上のパフォーマンスをあげられなければ、飛躍的な成長は
難しくなります。

まずは人材を確保するための資金調達が必要ですが、調達した
資金を効率よく人材に投資する仕組みやノウハウの構築にも最
大限の努力を払う必要があります。過度に慎重になる必要はあ
りませんが、深く考えずに人材投資を行って失敗すれば、その
後の成長に小さくない打撃を受けます。

■永続できる企業は存在しますが、永続できるビジネスモデル
は存在しません。

○昔・昔、石炭採掘業は全国各地で勃興しました。多くの人々
が、(重労働の対価として)経済的には豊かな生活を送ってい
ました。ある時を境に石炭採掘業の地位は、輸入される原油に
取って代わられました。石炭採掘業の売上は、石油を調達する
商社や、それらを運ぶ大型タンカーの売上等に変わったのでし
ょう。

○『六万五千人のうち、五万人が職を失う』、1979年から1981
年にスイスで機械式時計を作っていた職人の話です。世界の時
計市場を支配していたスイスが、そのリーダーの地位を明け渡
した瞬間の話です。その相手は日本(クオーツ時計)です。こ
の変化は短期間で起こりました。パラダイムシフトと呼びます。

○昔・昔、駅前の商店街は活気にあふれていました。商店主た
ちは、同世代のサラリーマンと比較しても、はるかに多くの報
酬を手にしていました。ある時を境に、その売上の大半が郊外
のショッピングセンターに流れて行きました。都心の一部を除
いて、駅前の商店街は壊滅しました。

○この話は続きます。駅前の商店街から多くの顧客を奪い取っ
たショッピングセンターも、品ぞろえの専門性に特化したカテ
ゴリーキラーや、小商圏に高密度で出店するコンビニエンスス
トアーに劣勢を強いられています。統廃合を経て、一部の強者
のみが生き残っていますが、その利益は減少傾向です。

○この話にはさらに続編があります。『アマゾン・エフェクト』
(※アマゾンに代表されるネット通販の台頭が、既存の小売業
を駆逐する現象)です。今の勝者も近い将来敗者になるかもし
れません。10月15日、米国小売りの名門企業、シアーズが破産
法を申請しました。…等々

■企業を永続させるためには、時流の変化への対応が必要です。

ダーウィンは、『この世に生き残る生き物は、最も強いものか。
そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、
変化に対応できる生き物だ。』と言っています。
(※注記;この言葉を、ダーウィン自身が言葉にしたかどうか
については、見解が分かれているようです。)
また、今年生まれた子供たちが就職する業種の半分は、今は無
い業種だと言われています。
二十年後には、今の業種の半分が無くなり(または、大きく形
を変え)、半分が新たに生まれるとの仮説です。流通業界等の
変遷を見ていると、オーバーな仮説ではないように思えます。
あらゆる業界で、貴社にも、当社にも、同じ事が起きています。
これからも起こります。

■変化への対応とは何か?

何か新しい事、何かすごいものを創り出そう…こう考えてしま
うと行き詰ります。発明家のトーマス・エジソンは『完璧だと
思っても、もうひと押しすれば、おまけが手に入る』との言葉
を残しておられます。この言葉には、大きなヒントがありそう
です。さらに成長しようと考える時、人は新しいものに飛びつ
いてしまいがちです。そうではなく、今あるものをより良くし
なさい、一歩となりを探しなさい、とおっしゃっているように
思います。

■今の商品やサービスを『もうひと押し』してみましょう。

・今ある商品やサービスに改善・改良を加えましょう。改良を
施して完成度を上げましょう。より良い原料を使って、高品質
化を図りましょう。高価格帯に挑戦しましょう。

・今ある商品やサービスに、何か機能を付加しましょう。便利
な機能を付加してみましょう。余分な機能を除いて単純化する
ことも検討してください。

・顧客ターゲットを絞り込んだ、新しい商品やサービスを開発
しましょう。よりニッチなターゲットに限定してみましょう。

・特定の顧客をターゲットにした、新しい商品やサービスを開
発しましょう。新しいニッチマーケットを狙ってみましょう。

■大きな変化は、日々の改善・改良の延長線上にあります。

・毎日毎日『もうひと押し』を考え続けましょう。
・時々小さな改良点が見つかります。改良しましょう。
・これを続けていると、一年単位では相当大きな変化が起きて
いるはずです。
・三年・五年・十年の計でみると、とんでもない大変化になっ
ています。

■変化を実感する企業経営を、意識して実行しましょう。会社
のビフォーアフターを確認してください。

・三年前の経営と、今年の経営を比較してください。
・今年の年初の経営と、今年の年末の経営を比較してください。
何がどう変化していますか?整理してください。

・今年の年末と、来年の年末はどう変える予定ですか?
・今に対して、三年後はどう変える予定ですか?具体的に何を
どう変えますか?整理してください。

繰り返しますが…
◎『この世に生き残る生き物は、最も強いものか。そうではな
い。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応
できる生き物だ。』(ダーウィンの進化論)
◎『完璧だと思っても、もうひと押しすれば、おまけが手に入
る』(発明家のトーマス・エジソン)

偉人の名言を記憶に留め、経営者として会社を変化させる努力
を継続しましょう。

「財務戦略」とは、「資金の調達と運用」を「戦略的」に行う
ことです。利益を最大化するために、いつ、どこから資金を調
達して、どこに資金を費やせば良いかを戦略的に検討します。

中小企業は、さらに積極的な財務戦略が必要です。今月末の支
払が苦しい等、資金ニーズが発生してから資金調達を考えるの
ではなく、資金ニーズが発生することを予測して、もしくは資
金ニーズを自ら作り出して、資金調達を積極的に行うことが
「攻めの財務戦略」です。

◆財務戦略が無い場合・・・
・月末の資金が不足することが直前にならないと分かりません。
・「機械が壊れる」等の突発的な支出の対応に苦慮します。
・余裕資金が無いため、急なビジネスチャンスに対応できませ
ん。
行き当たりばったりの経営で有事への対応力が弱く、安定した
経営が難しい状況です。また、投資に対する効果という概念が
ないため、結果的に無駄遣いが多くなってしまいます。

◆保守的な財務戦略の場合・・・
・「新しいことは何もしない」という硬直化した企業体質に陥
ってしまいます。
・自社の事業の投資効果が薄れていても、気づかないまま事業
を継続してしまいます。
・視野が狭くなり新しいビジネスチャンスを見逃してしまいま
す。
比較的財務内容が良い企業でも、近年、10年安泰な事業はそ
れ程多くはありません。一定のリスクを冒して攻めなければ、
成長することはもちろん、生き残ることすら難しい時代です。

◆攻めの財務戦略の場合・・・
・資金調達を積極的に行い、キャッシュポジションを常に高く
維持しています。
・資金繰りが安定し、落ち着いて経営が出来ます。
・ビジネスチャンスがあれば、スピーディに対応できます。
・機械の買い替えなど、投資計画を立てて、計画的に資金を調
達します。
・自社の事業モデルの進化発展を、常に考えるようになります。
しっかりと計画を立て、先回りをして資金調達に動きます。資
金に余裕を持つことで経営の選択肢が広がります。

大企業でさえ、成長分野を探して資金を投下し、事業モデルを
変化させながら生き残りを図っています。大企業よりも資金調
達力に劣る中小企業は、大企業以上に攻めの財務戦略が必要で
はないでしょうか。

■労働基準法第35条には「使用者は、労働者に対して、毎週少
くとも一回の休日を与えなければならない」と書いてあります。
この法律が制定されたのは1947年で、今も変わりません。週休
二日制は法令の定めるところではありません。
有名な話ですが、週休二日制を始めたのはパナソニック(当時
は松下電器産業)の松下幸之助氏で、そのスタートは1965年で
す。1980年頃には多くの企業に、官公庁に導入されたのは1992
年、さらに、公立小中学校及び高等学校の多くでは、2002年に
毎週土日が休みになっています。
いざなぎ景気の真っただ中の多忙期に、松下電器(当時)の労
働組合は大反対したそうですが、松下幸之助氏は、「1日休養、
1日教養」の精神を説いて導入に踏み切ったそうです。

■松下幸之助氏の「1日休養、1日教養」の精神とは…松下幸
之助自身の著書『社員心得帖』(PHP研究所)から引用させて
いただきます。

『…私どもの会社では、昭和四十年に完全週五日制に踏みきっ
たのですが、それから半年ほどたったころ、私は社員につぎの
ような話をしたことがあります。「わが社が週五日制になって
から半年の月日がたったけれども、皆さんは週二日の休みをど
のような考えで過ごしておられるだろうか。一日教養、一日休
養というように有効に活用できているかどうか。二日間の休み
を無為に過ごすのでなく、心身ともにみずからの向上をはかる
適当な方法を考え、実行していただきたいと思う。ただ、その
みずからを高めるというか、教養を高めたり、仕事の能力を向
上させたり、あるいは健康な体づくりをすることと関連して、
私は一つ皆さんにお尋ねしたい。それはどういうことかという
と、ほかでもない。皆さんが勉強なり運動をするときに“自分
がこのように自己の向上に努めるのは、ただ単に自分のためば
かりではない。それは社会の一員としての自分の義務でもある
のだ”という意識をもってやっておられるかどうか、というこ
とである。そういうことを皆さんは今まで考えたことがあるか
どうか、また現在考えているかどうかをお尋ねしたいと思う」
そのとき、なぜ私がそのようなことを質問したのかといいます
と、そういう義務感というものは、社員一人ひとりが常にもっ
ていなければならない非常に大切なことだと考えていたからで
す。…』

■社会人として二十年近く時間を経て四十歳ぐらいになると、
そのビジネスマンとしての実力の差は歴然とします。時間を経
て、どんどん天文学的に差は広がります。

1.出来る分野・領域の広さに大きな差が付きます。
○良くできる人は、概ねどんな業務もやる気になれば対応でき
ます。
○そうでない人には、極めて限定的な仕事しか与えられません。
できないからです。

2.業務の精度・スピードに雲泥の差が出ます。
○知恵を使う業務であれば、できる人とそうでない人の差はざ
っと数十倍ぐらいでしょうか。
○単純な業務であっても、その差は3倍ぐらいになるように感
じます。

なぜ、これだけの差がついてしまうのでしょうか。以下の話が
参考になりそうです。

■ある著名な大リーガーの専属トレーナーを長年務めた名コー
チに、話を聴く機会がありました。一流選手と二流選手、そし
て、三流選手の違いについて教えてもらいました。

○三流選手は、練習中も練習をやり過ごしています。練習後は、
当然野球のことを忘れて気楽に生きています。
○二流選手は、練習には全力で取り組んでいます。ただ、練習
後は、あまり野球のことを考えずに過ごしています。
○一流選手は、練習後のオフも、ずっと野球のことを考えなが
ら生きています。そして、野球を考えることを楽しんでいます。
○二流選手と三流選手は、オフを本当の休暇だと捉えています。
○一流選手は、オフを次のシーズンに備えるための期間、休み
を次の試合に備えるための時間と捉えています。
○二流選手と三流選手は、(多分)野球を食うための糧、義務
と捉えているように感じました。
○一流選手は、野球が天職であり、自分に与えられた使命だと
考えているように思いました。
○『活躍の度合いは、もちろん持ち合わせた素質の差によると
ころも小さくないですが、上記のような考え方の差でも大きく
変わります。晩成型の選手は、考え方がしっかりしています。
他の分野も同じではないでしょうか?』と締めくくられました。

年間(365日)の約三分の一は休日です。労働時間は全体
(8,760時間)の約20%です。『ワークライフ』バラン
スで減らしたワークの行先は、ライフのみではなくラーンであ
るべきです。『ワーク&ライフ&ラーン』バランスと定義すれ
ばわかりやすいのかも知れません。
働き方改革で生まれる自分自身の自由時間をどのように活用す
るかで、各人の将来が決まります。
「1日休養、1日教養」(松下幸之助氏)の精神で過ごしたい
ものです。