ある金融機関より紹介を受け、金融機関担当者と一緒にご融資
先企業を訪問しました。財務面に不安があるのでサポートして
欲しいというご要望です。

決算書を拝見したところ、直近決算は赤字、今期も赤字で推移
しています。売上や利益の状況、売上債権や在庫、買入債務か
ら判断すると、既に限度一杯の融資を受けており、これ以上の
資金調達余力はなさそうです。

社長様にお話を聞くと、「数字のことは良く分からないが、当
面の資金繰りは問題ない。これから新規事業〇〇と新規事業△△
に取組みたいと考えている。」と意欲的です。

確かに現時点では資金繰りに窮していませんが、このままの業
績で推移した場合、赤字や返済を考えると、1年程度で手元資
金が底をつく計算です。

社長様は1年後の心配はしていられないとおっしゃいますが、
財務や金融の知識がある金融機関担当者は違います。このまま
の状況では資金が枯渇する時に融資が出来ないことが分かって
いるためです。

銀行は基本的に年(決算書)単位で融資を検討します。同社は
5月が決算ですが、このまま決算を迎えると2期連続赤字とな
ります。その場合、新規融資は困難になるため、その次の決算
まで新規融資は検討出来なくなります。最短でも1年7か月先
となりますので、1年後に資金がショートする時に力になるこ
とはできません。

資金に行き詰まり、事業継続を断念された社長様をたくさん見
てきました。口を揃えて、「まさか・・・」「予想ができなか
った・・・」等とおっしゃいますが、金融や財務の知識があれ
ば予想出来たケースも多々あります。

前述の社長様も、このまま突っ走って1年後に資金が調達でき
なかった時、「まさか・・・」とおっしゃるかもしれませんが、
1年前である現時点で十分に予測出来る結果です。

社長様には、新規事業に取り組みたい気持ちは良く分かるが、
銀行融資のメカニズムに合わせて、まず今期の黒字化に注力し、
決算後に新たな資金調達を成功させたうえで、来期、晴れて新
規事業に取り組むことが安全ではないかと提案しました。

社長様は、「何となく資金がたくさんあると思っていたが、資
金が切れるタイミングや、新たな調達が難しいことが明確にな
った途端、急に不安になった。ただ、銀行さんの協力がなけれ
ば、自分の思いだけで事業を進めることができないことに気づ
けたので良かった。」とおっしゃいました。

アクセルの踏み過ぎ、目測の誤りは金融や財務の知識で回避で
きます。弊所の財務部長代行サービスを是非ご検討ください。

前回号の続きです。

■勝ち組と負け組の価格戦略は真逆です。

市場が飽和した日本のマーケットにおいては、モノやサービス
を安く買おうとするエネルギーが蔓延しています。モノやサー
ビスを提供する企業サイドも、その趨勢に迎合することで、自
社の売上を確保しようと考える傾向が強いようです。

一方、十分な利益を確保できる価格設定を行ったうえで、隆々
と経営を続ける企業もたくさんあります。当然、たくさんの顧
客に支えられているはずです。

前者と後者、雑駁に分類するなら負け組と勝ち組です。
前者(負け組)が4割、後者(勝ち組)が2割、中間が4割、
このような分類になりそうです。

◆前者(負け組)企業の価格戦略は…

「価格(安売り)を売るための道具」だと思っています。
「価格は安い方が売れる」と思っています。
「価格は、できるだけ安めに設定するべき」と思っています。
「価格が高すぎて売れない」ことを過度に嫌います。
「売れないより、薄利でも売れた方がよい」と考えています。
※うまく行ってたくさん売れても「繁盛貧乏」に陥ります。儲
からないのに忙しい状態でバランスしてしまいます。後は頑張
って・頑張り続けて…現状維持が関の山です。

◆後者(勝ち組)企業の価格戦略は…

「価格を売るための道具には使わない」との信念を持っていま
す。
「価格が安くても売れるわけではない」と思っています。
「価格は、できるだけ高く設定すべき」と思っています。
「(仮に)高すぎて売れないことが有っても仕方ない」と思っ
ています。
「薄利で売るよりも、売れない方がよい」と考えています。
※うまく行けば、たくさん売れて儲かる「繁盛高収益」の状態
になれます。利益で次の投資ができ、さらなる成長を目指せま
す。うまく行かなければ、「閑散貧乏」の状態です。やり直せ
ます。

■価格に対する二つの潮流…

モノやサービスを安く買おうとする潮流に巻き込まれることは
得策ではありません。もう一つの潮流、「良いモノ・必要なモ
ノが欲しい。対価は払う」に乗せましょう。気を付けてくださ
い。前者の潮流の方が目立っています。後者は静かに流れてい
ます。値上げは粛々と実施されます。

■もう一度「価格戦略=値決め」を再考してください。

「値決め」は経営の要諦です。であるにも関わらず、値決めに
掛ける手間暇が少なすぎると思っています。総じて安く付けす
ぎているとも思っています。間違えた「値決め」が経営に与え
るダメージを過小評価してはいけません。

事業は付加価値を求めつづけることでのみ継続できます。値決
めは重要な経営判断です。安売りは悪です。利益を計り、利益
を求めてください。また、コストは自然に膨らみます。意識し
て抑え込んでください。高収益(Profitable)な企業体作りを
強く意識してください。

◎「価格戦略=値決め」は、経営成績に甚大な影響を与えてい
ます。勇気をもって「価格戦略=値決め」をご再考ください。

借入が必要になりそうだと分かっていても、日々の業務に忙殺
されて後回しになり、いよいよ資金が切れそうなタイミングで
金融機関に駆け込む・・・ご経験のある社長様も多いのではな
いでしょうか。

本来、資金調達業務は、資金が不足した時だけ行う業務ではあ
りません。どれぐらいの資金が、何のために、いつ頃必要なの
かを事前に把握し、どれぐらいの資金を、どこから、どのよう
にして調達するかを中長期的なスパンで戦略的に進めていく業
務です。財務業務を戦略的に進めるためには、財務に関する知
識や経験が必要です。

まずは貴社の財務レベルをチェックしてみましょう。

□今期、どれくらいの資金調達が必要か分かっている。
□公庫、信金、地銀、メガバンク、ベンチャーキャピタル・・・
各金融機関の特性を熟知しており、どの金融機関から調達す
るのが最善か分かっている。
□短期借入、長期借入、社債、リース、出資・・・借入の種類
と特徴を熟知しており、どの方法で調達するのが最善か分か
っている。
□金融機関の考え方を熟知しており、金融機関が評価するポイ
ントを分かっている。
□融資を受けやすくするために必要な資料が何か分かっている。

いかがでしょうか。チェックの数が少ない場合は財務レベルに
改善の余地があります。業績が悪くなれば、途端に資金調達が
難しくなる可能性がありますので、次にご提案する財務戦略を
実践してみてはいかがでしょうか。

■ 小規模企業が実践すべき財務業務

1.調達目標額を決める
業績が悪化した時、金融機関は助けになりません。自分の身は
自分で守らなくてはならないため、有事に備えて、業績が良い
時に「借りられるだけ借りておく」ことを目標にしてはいかが
でしょうか。

2.取引金融機関(調達先)を選定する
小規模企業の調達先の選定基準は、「最も金利の低い金融機関
ではなく、最も多く貸してくれる金融機関」です。銀行の知名
度や、多少の金利差に惑わされず、積極的に融資をしてくれる
金融機関を選びましょう。年商3億円未満の企業の場合は、信
用金庫(組合)→地銀→メガバンクの順であたるのがセオリー
です。

3.金融機関と良好な関係を構築する
最大限の調達を行うためには、金融機関を味方につけることが
必須です。金融機関が好むのは、ディスクローズをしっかりと
行える企業です。試算表や資金繰り表をリアルタイムで作成し、
定期的に提出することで、金融機関からの信頼は大きく高まり
ます。

この程度の財務業務を実践するだけでも金融機関の反応は大き
く変わります。資金調達は一発勝負ではありません。お金を借
りる時だけ対処するのではなく、戦略を持ち、日頃から資金調
達に備えておくことが肝要です。

前回号の続きです。

『値決めこそ経営』(京セラ名誉会長、稲盛和夫先生)、この
言葉を肝に銘じてください。

どんなに良いものを創りだしても、その値決めを間違えると台
無しになります。故に、値決めは大変難しい最高レベルの経営
判断事項です。であるにもかかわらず、値決めを安易に、どち
らかというと安めにつけてしまう経営者は少なくありません。
松下幸之助先生はその著書の中で、パナソニック(当時松下電
器)は、相当大きくなるまで、松下幸之助先生自身が値決めの
最終決裁をされていた、と語っておられます。

「自社の値決めが正しいのか?」この解は誰にもわかりません
が、少なくとも多くの手間暇と知恵を最大限投入して、悩んで、
悩んで、悩み抜いて決める…この習慣を持っていただきたいと
思っています。

過去(この数十年)において、日本の企業の多くが、どちらか
というと安すぎる値決めを繰り返してきたために、今の経済の
停滞(デフレ)を招いたのではないかとの仮説を持っています。
特にこの傾向は中小企業に顕著です。

以下、【安売り症候群】という疾病を整理いたします。

自社・ご自身にあてはめてご確認ください。

■【安売り症候群】という疾病の正体は…(有病率50%)

価格を売るための道具に使うと「繁盛貧乏」になります。

「値決め」は経営の要諦です。であるにも関わらず、値決めに
掛ける手間暇が少なすぎると思っています。総じて安く付けす
ぎているとも思っています。間違えた「値決め」が経営に与え
るダメージを過小評価してはいけません。

経営者は閑散な状態を嫌います。故に、安すぎる「値決め」を
して、貧乏しても繁盛したいと考える傾向があります。「繁盛
貧乏」がはびこるのはこのためでしょう。

経営者は楽な道を選びます。苦労して付加価値を積み上げるよ
りも、価格を低く抑えて価値とバランスしようと考えてしまい
ます。価格を売るための道具に使ってしまいます。

安売り戦略の大罪は、良いものを創り出そうとする知恵を奪い
取ることです。この愚策を長年続けている集団から、新たな商
品やサービスを創り出す創造力は生まれません。商品やサービ
スの価値と価格のバランスは、その価格を下げて市場に合わせ
るのではなく、その価値を向上させることで調整してください。
多くの偉人たちが語る経営の王道です。

「値決め」が弱気で利益を出せない経営体、さらに、新しい価
値を生み出す創造力を無くしてしまった経営体を『安売り症候
群』と呼びます。

『安売り症候群』の経営体には、以下のような症状が現れます。

1.頑張っているのに儲からない〔  〕
2.新しい商品、サービスを創造できていない〔  〕
3.利益は出なくて良い、と思うことがある〔  〕
4.値上げをしたいと思っていてもできない〔  〕
5.ぎりぎりの経営をしていると感じる〔  〕

いかがでしょうか?

『値決めこそ経営』(京セラ名誉会長、稲盛和夫先生)です。
「値決め」には、多くの手間暇と知恵を最大限投入して、悩ん
で、悩んで、悩み抜いて決める…この習慣を持っていただきた
いと思っています。「値決め」は現場ではなく、トップが決め
るべき事項です。

中小企業における財務の強化方法についてシリーズでお伝えし
ております。第1回目は、「試算表」を作成することの重要性
を、続く第2回目は、「資金繰り表」を作成することの重要性
をお伝えしました。3回目となる今回は、「中小企業が実践す
べき財務戦略」について解説致します。

試算表や資金繰り表は、それ自体は単なるデータであり、財務
に関する明確な指針を持って初めて価値あるものに変わります。
弊所では、「手元キャッシュをより多く持つ」ことを、中小企
業の財務指針として推奨しています。

手元キャッシュを厚くする主な理由は、「キャッシュが切れな
い限り倒産することはない。」「キャッシュに余裕があれば不
測の事態が起きても落ち着いて対処できる。」「キャッシュが
あれば千載一遇のビジネスチャンスを逃さない。」ためです。
経営の目的を達成するために、キャッシュは絶対に欠かせない
要素のひとつです。

しかし、「元々潤沢な自己資金を持っている。」もしくは、
「毎月キャッシュが余るほど大きな利益を上げている。」ので
なければ、そう簡単に手元キャッシュを厚くすることはできま
せん。手元キャッシュを増やす最も現実的な方法は、「借入を
最大限活用する。」ことです。

借入を嫌う経営者も多いですが、そこには、困った時だけ金融
機関に頼ればよいという錯覚があります。金融機関はこちらの
都合で融資をしてくれません。不測の事態が起きた時、千載一
遇のビジネスチャンスに出会った時、都合よく融資を受けられ
るとは限らないのです。

中小企業の金融機関との正しいお付き合いの仕方は、自社のタ
イミングで融資を受けにいくのではなく、金融機関側のタイミ
ングで融資を受けて手元にキャッシュを置き、必要な時にその
キャッシュを使うというのが正解です。今すぐ必要でない資金
を借りるデメリットは余分な金利を払うことですが、いざとい
う時に融資を受けられないリスクに比べれば小さな問題です。
借入が増えると財務内容が悪くなると考える方もいらっしゃい
ますが、借入と同時にキャッシュも増えますので、実質的な借
入額が増える訳ではありません。

「借入を活用して手元キャッシュをより多く持つ。」ことの重
要性にご賛同いただけたならば、次は、「どうすれば金融機関
から最大限の融資を受けられるか。」という課題にお気づきに
なるのではないでしょうか。金融機関から最大限の融資を受け
るためには、自社の財務状況を定期的に金融機関に開示し、融
資が可能であれば、いつでも提案を持ってきてもらえる関係を
構築する必要があります。

試算表や資金繰り表は金融機関とのコミュニケーションツール
です。試算表や資金繰り表の提出なしに金融機関と円滑な関係
を構築することは出来ませんので、まずは、毎月しっかりと作
成しましょう。さらに、「キャッシュをより多く持つ。」とい
う財務指針も金融機関と共有出来れば、財務はより強固なもの
になります。

■2021年の10月以降に値上げを行った商品・サービスは以下
です。また、本年度も値上げの発表が続いています。

以下、ITmediaビジネスオンラインより抜粋、引用させていた
だきます。

・外食産業は、吉野家が牛丼並盛を39円値上げした。中盛り・
大盛りなどのサイズ変更も値上げの対象となった。すき家も12
月から並盛を50円、その他のサイズを最大70円値上げ。

・高級食パン専門店の乃が美は、「生」食パンレギュラー(2斤)
を中心にサイズ違いも含め最大108円値上げした。

・テーマパークでは、東京ディズニーランド・シーが価格変動
制により、繁忙期の入園料を最大700円値上げ、閑散期は300
円の値下げとした。繁忙期の入園料は最大で9400円になる。

・11月には化学メーカーのカネカが、塩化ビニル樹脂1キログ
ラム当たり40円以上の値上げに踏み切った。

・最も多く値上げを発表したのは、食品関連だろう。各社、原
材料価格の高騰や政府売渡価格の改定に伴い値上げを発表した。
山崎パン、フジパン、敷島製パン(Pasco)は10月に和洋菓子
の価格を改定した。山崎パンは「まるごとバナナ」などを含む
商品を平均7.0%値上げした。フジパンは平均8.4%、敷島製パ
ンは平均7.4%の値上げを発表した。…等々多数

・22年も食品関連の企業が最も多く値上げを実施する予定だ。

・1月に値上げする企業は山崎パン、日清フーズ、カルビーだ。
山崎パンは21年10月に和洋菓子の値上げを実施し、年明けには
食パン・菓子パンを平均7.3%値上げする。…等々多数

・2月には、冷凍食品、加工肉、食用油、ジャムなどが値上げ
対象となる。冷凍食品は、味の素冷凍食品がタイで製造してい
る鶏肉加工品について家庭用4品・業務用40品種を値上げ、も
しくは内容量を変更する。…等々多数

■価格転嫁してください。

原価が上昇すれば販売価格に転嫁する、これが常道です。価格
に転嫁できるかどうかで悩むのではなく、どのように価格転嫁
するかを考えてください。

原価・仕入れ価格が上昇しても売価に転嫁できない、と結論付
ける経営者も少なくありませんが、これは思考放棄です。価格
に転嫁しても、売上(利益)を落とさない方法を探す、こう考
えるべきではないでしょうか。原価・仕入れ価格の上昇を売価
に転嫁しながらも、売上(利益)を落とさない方法を考える、
このためには相応の努力が必要です。A案、B案、C案、それ
らの組合せなど、創意工夫と知恵が必要です。

■価格転嫁する、この選択をすることで、付加価値アップの必
然性が生まれます。

原材料費・人件費や物流費などのコスト上昇局面において、価
格転嫁を前提に創意工夫を重ねていく会社様と、価格転嫁でき
ないことを前提に創意工夫を怠る会社様に分かれてしまうので
しょう。

価格への転嫁は付加価値アップの試練を与えます。商品やサー
ビスへの創意工夫が求められます。価格の据え置きは、付加価
値アップの意欲を奪います。コストに対する過度の忍耐から、
知恵の創造・付加価値アップは生まれません。

◎5年後・10年後、前者と後者には大きな差が生まれます。

■過去におけるこの考え方の差が、現時点の企業の優劣に表れ
ています。

価格の上昇に消極的な判断を続けてきた会社は、付加価値アッ
プへの挑戦を怠り、結果、価格を上げると売れない実態を余儀
なくされています。一方、価格の上昇に積極的に取り組んでき
た会社は、それに見合う付加価値アップへの挑戦を繰り返して
きました。結果、価格を上げても売上を落とさない企業力を構
築できています。

■自社の過去を振り返り、今後の価格戦略を構築してください。

◎原価や仕入れ価格の上昇分は、確実に価格転嫁してください。
◎価格転嫁するために、様々な創意工夫を行ってください。
この創意工夫こそが経営そのものです。
◎価格を上げることに積極的な経営を行ってください。

今一度、自社の収支構造を確認いただいて、必要なら躊躇なく
値上げを検討してください。

前回のメールマガジンでは、財務管理の強化は試算表の作成か
ら始まることをお伝えしました。しかし、試算表だけ作成すれ
ば十分かと問われると、そうではありません。試算表にはキャ
ッシュベースの収支が分からないというウィークポイントがあ
ります。

赤字になっても即倒産はしませんが、資金が底をつくと黒字で
も倒産します。そういう意味では、利益管理よりも資金繰り管
理の方が重要です。そして、資金繰りの管理を行うツールが
「資金繰り表」になります。資金繰り表は、毎月の入金額と支
出額を項目ごとにまとめた単純な表ですが、財務管理にとても
役立ちます。

殆どの社長様が何らかの資金繰り表を作成していると思います。
実際に表を作成していなくても、頭の中にはおおよその入金額
と支出額が入っているはずです。ただ、残念なことに今月もし
くは来月、といった短い期間の資金繰り状況しか把握できてい
ないのが実態ではないでしょうか。

短期間の資金繰り計画しか立てていないと、「お金が足りない!」
という事態が1か月ほど前にしか分からないということになり
ます。1か月という時間は、資金調達を行うには決して十分な
時間ではありません。経営者としての他の大切な業務を削って
でも資金調達に走り回らなくてはならなくなります。行き当た
りばったりの財務活動です。

計画的に財務活動を行うために実践していただきたいのは、向
こう1年間の「資金繰り計画」の作成です。1年程度先までの
資金繰り計画を立て、資金の流れを予測しながら、資金調達や
設備投資の計画を立てます。1年先の売上など分からないとい
う声もお聞きしますが、向こう1年間の「資金繰り計画」とあ
わせて、過去1年間の「資金繰り実績」も作成してみてくださ
い。過去の売上の動きから未来の売上の動きを何となく予測す
ることができるかもしれません。

財務管理の最大の目的は、「資金を切らさないこと」です。試
算表で利益を管理しながら自社の資金調達力を高め、資金繰り
計画を立てて計画的に資金調達や設備投資を行えば、資金に慌
てることなく落ち着いて経営に専念できます。

年初に当たって、もう一度、経営の基本原則について言及させ
ていただきます。一つの考え方としてご確認ください。

■1:無駄の少ない「Simple」な経営を目指してください。

余計なものをそぎ落とし、密度の濃い「Simple」な経営体に
生まれ変わりましょう。以下の仮説を持っています。

『日本の企業は売上高確保、増収(売上増)にこだわり過ぎて
います。何が何でも売上高を確保しようとすると、売上高を確
保するために多くの犠牲を払うことになります。利益を犠牲に
した安易な値引きや安い値決めを招きます。利益に見合わない
過大な広告コストを支払う羽目になります。採算を度外視した
幅広い品ぞろえや長時間営業を行うようになります。顧客の過
度な要求を受け入れてしまいます。売上至上主義は、分散症候
群や安売り症候群を招く原因のひとつです。脱・売上至上主義、
減収(売上減)を容認する経営に移行してください。』

売上高はいくらか?社員数は何人か?事務所は大きいか?立派
か?…事業体の良し悪しをこのような基準で判断するのではな
く、利益はいくらか?…この単純な尺度で図る発想も重要です。
同じ利益なら、売上は小さい方が、社員数は少ない方が、事務
所は狭い方がよい…こんな考え方もあるはずです。

■2:高収益「Profitable」な企業作りを目指してください。

売れた時には、大きな利益を出せる収益構造を当初から設計し
ましょう。高めの粗利益率の設定、高めの値付けを心掛けてく
ださい。値決めを外すなら高めに外してください。ビジネスと
して完成した時点での営業利益率は20%以上で設計してくだ
さい。安売り戦略は、経営の難易度を高め、事業体の創造力を
奪い去る原因になります。

■3:手持ち資金を潤沢「Ample」に維持してください。

資金余力は企業経営の余裕代、時間を提供してくれます。財務
機能を持ってください。資金は可能な限り潤沢に持ち続けまし
ょう。借入れの金利負担よりも、資金に困るリスクの方がはる
かに深刻であることを認識してください。また、借入れのタイ
ミングは、自社が資金を必要とするタイミング(借り手の都合)
ではなく、金融機関が融資できるタイミング(貸し手の論理)
に沿うことが重要です。総じて貸し手の方が強いからです。
資金余力がもたらす経営者の心の余裕と、増加分の金利負担を、
天秤にかけて比較してください。

※当事務所が提供する【財務部長の代行業務】の導入を検討し
てください。

■4:変化に対応できる柔軟性「Flexible」のある企業体を維
持してください。

計画のずれを想定した経営を行ってください。計画(売上の達
成)が遅れることを想定しながら経営してください。「コント
ロールできない売上を、コントロールできる売上以外の経費の
執行で調整する」、これが経営管理です。経費の執行をワンテ
ンポ遅らせる…これが不透明な時代に、企業体力が十分でない
事業体が選択すべき経営のコツです。また、遅れを許容するた
めの資金余力を持てる財務戦略が重要です。

■5:経営判断を明確「Clearly」にしてください。

感覚に頼らず、数字を基準にした論理的な経営を行ってくださ
い。曖昧な経営判断、お人好しな対応を止めましょう。経営は、
感覚や概念ではなく、数字で管理してください。感覚や概念を
基準に考えると、判断が曖昧になりがちです。数字基準での判
断は、その判断の精度を各段に向上させます。経営が締まります。

◎経営の判断基準は何か?永遠のテーマです。経営の判断基準
は無限にあります。逆にも真あり、敢えて真逆を攻めることで
成功することもあります。それでも、王道をお薦めいたします。

王道とは、多くの偉人が語り続けた経営の道です。上記の方針
は、偉人が語る経営の道に近似しているはずです。当然です、
偉人の言葉を借りているからです。経営者の皆さま方が、理詰
めで考えて、腑に落ちた部分については、今後の指針として、
深く、深く…心に刻んでください。

明けましておめでとうございます。年初にあたり、中小企業の
財務について、改めてご提案させていただきます。

殆どの中小企業が財務管理に改善の余地があると感じます。財
務管理が弱いと、自社の財務状況を金融機関に正確かつタイム
リーに伝えられないため、本来融資を受けられる業績であって
も、融資を断られる場合があります。融資をスムーズに受けら
れなければ、成長の機会を逃したり、資金不足に陥ったりしま
すので、財務管理は強い方が安心です。

財務管理強化の第一歩はどんぶり勘定から脱却することです。
通帳の残高を見ながら感覚的に経営するのではなく、財務数値
に基づいて経営判断を行った方が、より正確な経営判断を下す
ことができます。正確な財務数値を把握するために、まずは月
次試算表の作成から始めましょう。試算表を見れば、キャッシ
ュの動きだけでは分からない「利益」と「資産・負債」の状況
が分かります。

どんぶり勘定が引き起こす代表的な事例は以下となります。

■ 実は赤字だが資金繰りが回っているため気がつかない。
本当は赤字に気づいているのかもしれませんが、赤字を直視し
ないことによって対策が遅れます。赤字を改善する努力を行わ
ず、借入で資金繰りをごまかすことを優先し続けると、必ず最
後に資金が行き詰ります。

■ 無駄な資金繰りに時間を費やしている。
取引条件によっては黒字でも資金繰りが苦しくなります。黒字
ですので融資を容易に受けることができ、資金繰りの苦労から
も簡単に解放されますが、それに気づかず資金繰りに多大な労
力をかけています。

■ 融資を受けられるタイミングを逃している。
本当によくあるケースですが、6か月前なら融資を受けられた
というケースです。融資はいつでも受けられる訳ではありませ
んので、財務状況をタイムリーに管理し、一番借りやすい時に
借りておくのが鉄則です。資金が必要なのに融資を断られて困
っている企業様の半数は、過去に資金調達のタイミングを逃し
ています。

他にもたくさん事例はございますが、お伝えしたいのは、「試
算表」を毎月作成することの重要性です。試算表は、あらゆる
経営判断を下す根拠となるものですので、財務管理を強化する
ための第一歩として、試算表を毎月作成することからスタート
してください。

新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。

今年は令和4年です。昭和97年ではありません。誰もが知って
いるはずですが、昭和の経営・考え方をそのまま踏襲している
方も少なくありません。新年を迎えるに当たって、もう一度令
和の経営について考えていただければ幸いです。

■1:昭和と令和は社会情勢が大きく異なります。

●昭和は、危険・不便・不快等、解決すべきテーマがたくさん
ありました。前回の東京オリンピックが開催された1964年の
冷蔵庫の普及率は10%だったそうです。大変不便な世の中でし
た。このような大きな困りごとを解決するためのプロダクト開
発と大量生産、それを実現するための同質化されたマネージメ
ント体制が構築され、「ジャパンアズNO.1」と世界中の注目
を浴びるまでに成長を遂げました。バブルの崩壊までは…

●令和は、安全・便利・快適を実現し、大きな課題を見つけに
くい時代です。皆が残された小さなテーマの解決に総動員して
取り組むことで、強烈な同質化・価格競争を招いています。低
成長と低収益のスパイラルから抜け出せません。

■2:であるにも関わらず、我々は、昭和文化に縛られた環境
で今日も生きています。

先輩の経営者、仲間、コンサルタント、書籍…ほとんどが昭和
です。結果として、我々は昭和の経営原則を疑いもせず、信じ
込んでいます。

◆新しい経営原則について考え直してみませんか?

・【PL】売上ではなく利益を、規模から質への転換を!
・【BS】所有する経営から持たない経営へ!
・【MG】ボトムアップの経営からトップダウンの経営へ!
雇用から業務委託へ!

■3:さらに、我々は、昭和のビジネスモデルから未だに抜け
出せません。

2世代上の先輩たちが定義した業種・業界に縛られ、はるか昔
に創造されたマネタイズ・ビジネスの型を未だに模倣していま
す。

◆新しいビジネスの型に転換しませんか?

・サブスクリプション1.0⇒2.0
・ソリューション提供企業への転換
・D2C(C2M)、クラウドファンディング
・DX
・業界の壁を破る
・ニューミドルマン(購買代理)⇒プラットフォーム
…等々

■4:これからは、すさまじいスピードでビジネスが変わります。

◆1:真のネット企業がリアル企業を凌駕します。
例)銀行の凋落、すべての分野で同じ事が起こります。

◎OMO(Online Merges with Offline)とは、オンラインとオフ
ラインの融合を意味しますが、その真はネット企業がリアル企
業を飲み込む現象です。

◎さらに、ITの3次元化(メタバース)が始まります。

◆2:カーボンニュートラル(炭素ゼロ)政策が自動車業界を
直撃します。出荷額62兆円、全製造業の19%、GDP比12%
(2018年)を占める自動車業界に激震が走ります。

◎自動車エンジン向けにアルミニウム鋳造設備を開発・製造し
ていた大阪技研(大阪府松原市)の破産が4月、決まった。
(2021年6月16日、日経新聞)、この記事が象徴的です。

■5:様々な分野でルールチェンジが起こっています。

見方を変えることができれば、我々中小企業やこれから事業を
始める若者には大きなチャンスです。100mを早く走る競技で
は勝てないが、100mを20秒ジャストで走る競技を作ることが
できれば、金メダルも夢ではありません。下剋上・激変、チャ
ンスの到来です。

特に、以下の3つは新ルール構築の目玉になるテーマです。

●OMO(Online Merges with Offline)!
⇒デジタルシフトではなくDX(デジタルトランスフォーメー
ション)を!

●メタバース!
⇒ITが2次元から3次元空間の中に移動します。

●SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な
開発目標)」17の目標と、それを達成するための具体的な169
のターゲット!

■6:隆々と生き残り、成長する企業体を作りましょう。作れ
ます。

1.昭和のルールにとらわれず、
2.強烈な同質化・価格競争を回避し、
3.新しい事業立地やビジネスの型を理解して導入し
4.できれば、新しいルールの創造者としての地位を確保する

◎SP経営!=脱・昭和、令和の経営!
令和企業に転身し、前途洋々たる未来に向かって、共に頑張って
いきましょう。

本年もよろしくお願いします。
感謝・合掌