中小企業は、市場環境の変化や資源の限られた状況に迅速に対
応する必要があります。BCGマトリックスは、そのような環境
下でも、事業のポートフォリオを明確にし、効果的な戦略を策
定するための鍵となるツールです。以下は、このマトリックス
を中心にした中小企業の経営診断のための指針です。
◆1. 経営ビジョンと目標の確認
中小企業のリーダーは、企業のビジョンや中長期的な目標を明
確に持っていることが前提です。これが戦略策定の基盤となり
ます。
◆2. 事業ポートフォリオの整理
中小企業も多様な製品やサービス、市場セグメントを持つこと
が多いです。これらを整理し、それぞれの事業の特性や競争状
況を把握します。
◆3. 市場データの収集と分析
●市場シェア
各事業が占める市場シェアを算出します。これは企業の競争力
を示す重要な指標です。
●市場の成長率
各事業が所属する市場の成長率を評価します。これにより、市
場の将来性や潜在的なビジネスチャンスを識別できます。
◆4. BCGマトリックスへのマッピング
上記のデータを用いて、各事業をBCGマトリックス上に配置し
ます。
※BCGマトリックスは、ボストン・コンサルティング・グルー
プ(BCG)によって1970年代初頭に開発された経営戦略のフレー
ムワークで、企業の事業ポートフォリオを効果的に分析・管理
するためのツールとして利用されます。これは、市場の成長率
と市場シェアを基にして、事業の位置を2×2のマトリックス上
にプロットして分析します。
・星(Stars)…成長が早い市場で高いシェアを持つ。投資を
継続して成長を追求する。
・金のなる牛(Cash Cows)…成熟市場で高いシェアを持つ。
安定したキャッシュフローを生むため、利益を最大化する戦略
を取る。
・疑問符(Question Marks)…成長が早い市場でのシェアが
低い。投資の方向や取るべき戦略が不透明。
・犬(Dogs)…低成長市場でのシェアも低い。戦略の見直し
や撤退を検討する。
◆5. 戦略の策定
BCGマトリックスの分類を元に、各事業に対する戦略を策定し
ます。
・星…投資を増やし、市場シェアを拡大。競争力を維持・強化
するためのイノベーションや新市場の開拓を検討。
・金のなる牛…収益性を最大化し、他の事業への資金源とする。
コスト削減や生産効率の向上を追求。
・疑問符…市場での立ち位置を強化するための戦略が必要。新
製品の開発やM&Aを検討することも。
・犬…事業の再評価。事業のリストラクチャリング、または撤
退を検討する。
◆6. 戦略の実行
策定した戦略に基づき、具体的な行動プランを立て、実行に移
します。
◆7. 定期的な見直し
市場環境や技術の進化、消費者のニーズなどは常に変わってい
ます。そのため、定期的にBCGマトリックスの更新と戦略の見
直しを行うことが重要です。
◆結論
中堅企業、大企業においては、事業再構築や事業買収、事業売
却などの経営戦略立案のための分析ツールとして頻繁に活用さ
れています。中小企業においても、BCGマトリックスは事業ポ
ートフォリオの明確化や経営資源の最適な配分を支援する貴重
なフレームワークとして活用できます。