「ご融資の申し込みですね。それでは決算書3期分と直近試算
表、作成していれば資金繰り表と借入残高一覧表、それから受
注明細と税金の納付書・・・」

融資申し込み資料の準備は手間のかかる作業です。出来れば提
出書類を減らしたい気持ちは分かります。しかし、銀行は漫然
と資料を求めている訳ではありません。目的を持って資料を要
求しています。資金調達を成功に導くためには、「なぜ銀行が
その資料を要求しているのか」を理解することが大切です。

■ 税務申告書
税務署に提出した消費税、法人税、住民税、及び事業税の申告
書類一式です。納税額の確認はもちろんのこと、決算書の利益
額が税務署に報告した利益額と違っていないか等、粉飾決算の
糸口や、償却不足、納税の延滞等、基本的な要件を確認してい
ます。

■ 決算報告書
決算日の財務状況や1年間の経営成績を明らかにした資料です。
融資審査をするうえで最も重視されます。利益の状況、返済原
資の有無、実態債務超過の有無、借入過多の有無などを確認し
ています。

■ 試算表
決算日以降の経営状況を明らかにした資料です。決算書とは違
って正式な書類ではありませんので、あくまでも参考資料です。
決算日以降、売上や利益が大幅に減少していないか等、重大な
後発事象の発生を確認します。

■ 資金繰り表
一定期間のお金の流れを明らかにした資料です。過去の実績を
表した資金繰り実績表と未来の予測を表した資金繰り計画表が
あります。決算書や試算表だけでは分からないお金の流れを知
ることで、返済の見込みをより正確に判断出来る他、必要な運
転資金額の根拠や返済原資を確認することが出来ます。

■ 事業計画書
店舗の出店、工場の建設など、設備投資を行う際の投資効果を
検証する計画書です。設備資金を調達する際は必須の資料です。
融資金を返済出来るだけの利益を上げられる計画になっている
か、また、その実現の可能性について検証しています。

漫然と作成した資料を提出するより、銀行が評価するポイント
をしっかりと押さえた資料を提出した方が、資金調達の可能性
は大きく高まります。銀行から求められた資料について、その
意図をお知りになりたい場合は、お気軽にお問い合わせくださ
い。

スタートアップの成功と失敗は、多くの要因によって決まりま
すが、
■1.プレマチュアスケーリング(Premature Scaling)と
■2.PMF(Product-Market Fit)
は特に重要な概念として取り上げられます。以下に、これらの
言葉を使って、スタートアップが破綻する主要な理由を解説し
ます。

■1.プレマチュアスケーリング(Premature Scaling)
●創業時の罠!
プレマチュアスケーリングとは、スタートアップが市場やビジ
ネスモデルの適合性をしっかりと確立する前に、急激に成長を
追求し事業を拡大することを指します。

◆1.人員の急増
初期段階での急激な人員の増加は、コミュニケーションの混乱
や経費の増大を引き起こす可能性があります。新しい従業員の
教育やマネジメントに必要なリソースが増加し、初期段階での
ミッションやビジョンの共有が難しくなることもあります。

◆2.過剰なマーケティング投資
確固たる顧客基盤を築く前に大きなマーケティング投資をする
ことは、ROI(投資対効果)が低く、資金を無駄に消費する結
果となることが多いです。

◆3.オペレーションの拡大
適切なデマンドフォーキャストなしにインフラや設備を大きく
することは、固定費の急増というリスクを伴います。

これらのプレマチュアスケーリングの結果、企業は過度なコス
トやオペレーションの複雑さに直面し、焦点を失いやすくなり
ます。スタートアップ企業が破綻する要因の過半はこれです。

■2.PMF(Product-Market Fit)
●創業時の鍵!
PMFは、製品やサービスが市場の実際のニーズにしっかりと適
合している状態を指します。

◆1.PMF未達成のリスク
PMFを達成していない状態でビジネスを拡大すると、市場の真
のニーズを満たすことができず、継続的な顧客の獲得やリテン
ションが困難になります。

◆2.顧客のフィードバックの無視
PMFを追求する過程では、顧客のフィードバックを収集し、製
品やサービスの改善に取り組むことが非常に重要です。しかし、
このフィードバックを無視すると、市場ニーズとの乖離が生じ
る可能性が高まります。

◆3.市場のサイズと潜在性の見誤り
PMFを追求する中で、対象となる市場のサイズや潜在的な成長
性を適切に評価することが必要です。過小評価や過大評価は、
戦略の誤りに繋がるリスクがあります。

総じて、プレマチュアスケーリングはスタートアップが急速に
拡大する際の罠となり得る一方、PMFはスタートアップの製品
やサービスが市場の実際のニーズに適合しているかを評価する
ための鍵となります。これらの概念を適切に理解し、それに基
づいて行動することで、スタートアップは健全な成長を追求し、
破綻のリスクを軽減することができます。

企業経営は複雑で多岐にわたる課題を含み、成功するためには
幅広い専門性が必要です。そのため、多くの経営者は、専門家
の意見やアドバイスを受け入れることは大切であると認識して
います。しかし、時には経営者が専門家に過度に依存し、経営
判断までを託してしまうことがあります。社長が専門家に経営
判断を過度に委任することの問題点について考えます。

1. 経営者の責任感の低下
経営者が経営判断を専門家に完全に委任すると、経営者自身の
責任感が低下するリスクが生じます。責任を逃れるために「専
門家がそう言ったから」と言い訳をすることが容易になり、結
果的に経営者のリーダーシップや決断力が鈍化します。経営者
は自身の責任を果たし、ビジョンを明確に持つ必要があります。

2. ビジョンのずれ
専門家は特定の分野に精通していますが、その視点はしばしば
専門性に偏りがちです。経営者が経営判断を完全に委任すると、
専門家の視点によってビジョンが歪められる可能性があります。
経営者のビジョンと専門家のアドバイスをバランスよく統合す
ることが重要です。

3. 経営状況への深い理解の欠如
経営者は企業の日常的な運営や状況を深く理解しています。し
かし、経営判断を専門家に委任しすぎると、経営者自身が企業
の状況を把握する機会が減少します。これにより、経営者は企
業の現実に疎くなり、経営状況へのリアルな理解が欠如する可
能性があります。

4. 過度なコストと時間の浪費
専門家に経営判断を委任することは、高額なコンサルティング
料やアドバイザーの費用を伴います。また、専門家の意見を待
つために時間がかかることもあります。経営者が過度に専門家
に依存すると、財政的な浪費や競争力の低下が懸念されます。

5. 経営者の成長の妨げ
経営者は経験を積むことによって成長し、リーダーシップスキ
ルを向上させることができます。しかし、経営判断を専門家に
完全に委任すると、経営者の成長の機会が制限されます。自己
成長と学習は、持続的な成功のために不可欠です。

専門家のアドバイスや専門知識は、経営者にとって非常に価値
のあるものですが、それを過度に依存し、経営判断までを委任
することは慎重に考えましょう。経営者はビジョンを明確に持
ち、経営状況を理解し、専門家のアドバイスを適切に統合する
バランス感覚を持つことが成功への道です。専門家のサポート
はあくまで手段であり、経営者自身が責任を持ち、ビジョンを
実現する使命を果たすことが重要です。

…前回号のつづきです。

ライドシェアの解禁論が政治課題にあがってきました。勿論反
対論が根強く、タクシー業界は猛反対です。ライドシェアはタ
クシーの天敵であり、自らの地位を脅かす最大の敵だからでし
ょう。

一方、タクシー事業者の中にも、ライドシェアを仕掛けてくる
事業者は必ず存在すると推察します。なぜなら、ライドシェア
事業者として、日本で一番成功しやすい会社は国内のタクシー
事業者だからです。

タクシー会社がライドシェアに反対する代わりに積極的に取り
組む方が良い、という考え方は、カニバリゼーションの理論に
よっていくつかの点で裏付けられます。以下にその主要な理由
を挙げます。

■1.カニバリゼーションを活用する理由

◆1.先手必勝の戦略
ライドシェアが急成長しそうな状況になったら、タクシー業界
が反対姿勢を続けているだけで市場シェアを失い、最終的には
業界そのものが縮小する可能性があります。自社でライドシェ
アに取り組むことで、新しい市場環境に適応し、競争力を維持
できます。

◆2.市場ニーズへの対応
ライドシェアは特に若い世代を中心に受け入れられています。
タクシー会社がこの新しいニーズに適応することで、新しい顧
客層を獲得し、収益の多角化が可能です。

◆3.イノベーションと進化
ライドシェアはテクノロジーを駆使して効率的なサービスを提
供しています。タクシー会社がこの新しいビジネスモデルに取
り組むことで、自社もテクノロジーと効率性に注力する文化が
醸成されます。

◆4.リスクの分散
もしタクシーとライドシェアが共存できるビジネスモデルを見
つけられれば、景気の波や規制の変更など外部からのリスクに
対する柔軟性も高まります。

◆5.コスト効率
ライドシェアが提供するようなアプリベースのサービスは、運
行管理においても多くの効率化が可能です。この効率化は長期
的に見てコスト削減につながり、企業の利益率を改善する可能
性があります。

■2.懸念点とリスク

◆1.短期的な収益減
既存のタクシーサービスがライドシェアサービスによって、一
時的に収益減に陥る可能性があります。

◆2.オペレーショナルな複雑性
異なるビジネスモデルを運営する際の複雑性が増すことは確か
です。しかし、この問題は適切なマネジメントで克服可能です。

◆3.レギュレーションと法的問題
タクシーとライドシェアは異なる法的規制を受ける場合が多く、
その遵守には注意が必要です。

上記のように、ライドシェアの台頭はタクシー業界にとって避
けられない現実であり、積極的に新しいビジネスモデルに適応
していくことで、多くの利点と新たな機会を享受できる可能性
が高いはずです。カニバリゼーションは短期的なリスクを伴う
場合もありますが、その対処法をしっかりと考え、長期的なビ
ジョンを持つことが重要です。

◎ライドシェアが解禁の方向に動いた時、皆様がタクシー会社
の経営者であったなら、どのような経営判断をされますか?
◎また、皆様の業界で同じようなことが起こっていたら、その
ような判断を行っていますか?

この題材を参考にご確認ください。

数値計画書というと、売上と利益が分かる損益計画書が一般的
ですが、場合によっては、キャッシュの収支が分かるキャッシ
ュフロー計画書の方が有益な場合があります。

■ 損益計画書の問題点
顧問先さまから「利益目標と言われても実はピンと来ない…」
とお聞きすることがあります。

利益の難しいところは、赤字だからと言ってすぐに倒産はしま
せんが、反対に黒字なのに倒産する場合があります。また、赤
字でも金融機関の融資を受けられる場合もあるなど、その重要
性を真に理解するのは容易ではありません。

よって中小企業にとっての損益計画書とは、(銀行用などに)
形式的に作成するもの、もしくは、作成しても活用していない
というのが実態ではないでしょうか。

■ キャッシュフロー計画書とは
キャッシュフロー計画書とは、売上や利益の計画では無く、売
上金の回収、借入、設備投資等、あらゆる事業活動における資
金の計画です。利益では無く、入金額と出金額の差額の黒字化
や資金の増加額を目標とします。

■ キャッシュフロー計画書の特徴
キャッシュフロー計画書を作成することにより、売上や利益が
どれくらい必要かということはもちろん、取引条件の変更、借
入の要否、設備投資の可否など、やるべきことがより明確にな
ります。

<キャッシュフロー計画書の優位点>
・実際のキャッシュの出入りに基づいているため、事業計画書
よりも分かりやすい。
・利益では無く、毎月のキャッシュの残高を管理するため倒産
しにくくなる。
・事業計画書では把握できない、取引条件の変更、借入の返済、
設備投資等も網羅している。

当事務所が、利益よりもキャッシュフローを重視したコンサル
ティングを行っているのは他にも理由があります。例えば、将
来の結婚や葬式のために積立金を預かる互助会や、チケットを
事前に販売する業態は、売上よりも先にキャッシュが入ってく
るため資金が潤沢になります。資金調達力が弱い中小企業が大
きくビジネス展開をするためには、単なる利益だけではなく、
この様なキャッシュを増やす工夫も必要だと考えるためです。

是非、キャッシュフロー計画書の作成に取り組んでみてはいか
がでしょうか。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

■カニバリゼーション(以下カニバリと呼びます)は、新しい
製品やサービスが自社の既存の製品やサービスの売上を減少さ
せる現象を指します。これは、新製品が既存製品の市場シェア
や顧客ベースを「食いつぶす」形で起こることが多いです。
「共食い」との理解が分かり易いでしょう。

■カニバリは悪なのか?

一社独占でビジネスを行ってはいないので、他社が必ず競合す
る製品やサービスをぶつけてきます。他社に取られるなら自社
同士で競争させようとする、意図的なカニバリ戦略が通常行わ
れています。

以下、◆1.ビジネスモデルとしてのカニバリ戦略と◆2.製品
やサービスに関するカニバリ戦略を紹介します。

◆1.ビジネスモデルのカニバリは、新しいビジネスモデルが企
業の既存のビジネスモデルの売上や利益を圧迫する現象を指し
ます。以下は、このカニバリに関する著名な事例をいくつか挙
げます。

●Apple(iPodとiPhone)
AppleはiPodで音楽プレーヤー市場をリードしていましたが、
2007年にiPhoneを導入したことで、iPodの売上は自然と減少
しました。しかし、この動きはAppleにとって賢明であり、ス
マートフォン市場でのリーダーシップを獲得し、結果的には総
収益の向上に寄与しました。

●Netflix(DVD郵送サービスからストリーミングへ)
NetflixはもともとDVDの郵送レンタルサービスとしてスタート
しましたが、時代の流れとともにストリーミングサービスへシ
フトしました。この変更により、DVD郵送サービスの売上は減
少しましたが、ストリーミングサービスの成功により、企業全
体の成長と価値の向上が実現されました。

●Kodak(フィルムからデジタルカメラへ)
Kodakはかつてフィルムカメラの時代において巨大な市場シェ
アを持っていました。Kodak自体がデジタルカメラの技術を初
めて開発したものの、フィルムビジネスへの影響を恐れてデジ
タル技術の導入を躊躇した結果、他の競合企業に先を越される
形となりました。この事例は、カニバリを過度に恐れることの
リスクを示しています。

●Amazon(書籍販売からKindleへ)
Amazonは、もともとはオンラインの書籍販売からスタートし
ましたが、Kindleの電子書籍リーダーを導入することで、紙の
書籍の売上が影響を受ける可能性がありました。しかし、電子
書籍市場の成長とKindleの成功により、Amazon全体の収益は
向上しました。

これらの事例は、カニバリが必ずしもネガティブな結果をもた
らすわけではないこと、そして新しいビジネスモデルや技術の
導入は、長期的な成長や競争力の維持に不可欠であることを示
しています。

◆2.製品やサービスのカニバリは、新製品や新サービスの導入
により、企業の既存の製品やサービスの売上や利益が圧迫され
る現象を指します。以下に、このカニバリに関する事例をいく
つか挙げます。

● CanonとNikon(デジタル一眼レフとミラーレスカメラ)
デジタル一眼レフカメラの市場をリードしていたCanonやNikon
は、ミラーレスカメラの市場の拡大に対して遅れをとりました。
ミラーレスカメラの導入が一眼レフの売上を圧迫するとの懸念
があったためです。しかし、他のメーカーに市場を奪われるリ
スクも生じました。

●Microsoft(WindowsとSurface)
MicrosoftがSurfaceタブレットをリリースした際、PCメーカー
からの抗議がありました。Surfaceの成功が、Windowsを搭載
する他のPCメーカーの製品の売上を圧迫する可能性があったた
めです。

●Coca-Cola(Coke ZeroとDiet Coke)
Coca-ColaがCoke Zeroを市場に導入した際、Diet Cokeの消
費者がCoke Zeroに移行するのではないかとの懸念がありまし
た。しかし、Coke Zeroは異なるターゲット層に訴求する製品
として位置づけられ、両製品が共存する形となりました。

これらの事例を通じて、新製品やサービスの導入によるカニバ
リのリスクは避けられないものの、市場のニーズや競争状況を
正確に理解し、適切な戦略を採用することで、カニバリをポジ
ティブな成果に変えることが可能であることが示されています。

◎貴社はカニバリ発想を持てていますか?優良な企業ほど、カ
ニバリを恐れて時代から取り残されています。イノベーション
のジレンマです。

経営者は、人員を雇用する、広告を出す、値引き販売をする・
・・等の様々な投資判断を下さなくてはなりません。投資判断
を行う際に最も気になる点は、「採算が取れるかどうか。」で
しょう。もちろん、机上でいろいろと考えたところで、最終結
論は「やってみなければ分からない。」と言うのが本質かも知
れませんが、理屈で成り立たない事を現実に成り立たたせるの
は大変難しいというのも事実です。

投資を行う際に知っておくべき点は「採算ラインとなる売上高」
です。専門的には損益分岐点売上高と言います。損益分岐点売
上高を求める算式は、固定費÷限界利益率です。限界利益率を
求めるのは少し手間がかかりますので、変動費率の代わりに粗
利率を代用することで大まかな採算ラインが分かります。様々
な場面で多用出来る式ですので是非覚えてください。

■ 営業人員を雇用する際の採算ラインの算出

粗利益率が30%の商品を販売する営業マンを雇用する際、こ
の新人営業マンに期待すべき販売目標は下記で求められます。
※固定費(営業マンの平均月収30万円+福利厚生費5万円+営業経費10万円)÷粗利益率30%=損益分岐点売上高150万円
この新人営業マンが月平均150万円の販売を行って収支トン
トンです。(最低販売目標150万円+期待する利益額)の売
上を上げられるかどうかが営業マン採用時の目線になります。

■ 広告費の採算ラインの算出

粗利益率が30%の商品の広告出稿を検討する際、どれぐらい
販売出来れば採算が合うかを知りたいときにも使えます。
※固定費(広告費100万円)÷粗利率30%=損益分岐点売上高333万円
100万円の広告費を使い、333万円の売上高を上げられな
ければ経費倒れになります。

■ 売上高5%オフセールの採算ラインの算出

固定費が50万円、粗利率が30%の商品を5%オフとした場

※5%オフによる粗利率の低下30%→26.3%
※元々の損益分岐点売上高 固定費50万円÷粗利率30%=損益分岐点売上高166万円
※値引き後の損益分岐点売上高 固定費50万円÷26.3%=損益分岐点売上高190万円
売上高が24万円(190万円-166万円)増加した時点か
ら、ようやく値引き販売の効果が得られることが分かります。

営業マンが期待通りの成果を上げられるかどうか、広告で期待
通りの注文があるかどうか、値引き販売で期待通りの売上増加
につながるかどうか、結局のところはやってみなければ分かり
ません。しかし、投資判断を下す前に「損益分岐点売上高が実
現可能なラインかどうか。」を知っておけば、大きな失敗は避
けられます。

経営者の交代手段、事業承継として注目されているM&Aです
が、経営の武器としても極めて有効です。新規事業への参入時
や、成長の鈍化した市場における市場占有率の向上、利益率向
上に有効です。M&Aの難しさを強調されるケースが多いです
が、ストロングバイヤーとして連続的に事業を買収する企業が
増えているのは、案外M&Aのメリットが大きいからだと推察
します。

■1.新規事業への参入におけるM&Aの活用

新規事業への参入は、企業にとって成長と競争力維持のための
重要なステップです。M&Aを活用することで、以下の点で新
規事業への参入戦略を強化できます。

◆1.市場進出のスピードアップ
新しい市場に参入する際、市場理解や顧客ベースの構築には時
間がかかります。M&Aによって既存のプレーヤーを買収する
ことで、迅速に市場進出を実現し、競合他社よりも先に市場に
浸透することが可能です。

◆2.技術・知識の取得
新規事業に必要な技術やノウハウを持つ企業を買収することで、
開発期間や学習コストを削減できます。これによって、新製品
やサービスの提供スピードが向上し、市場での差別化を図るこ
とができます。

◆3.競争力の向上
既存の競合他社と差異化するため、技術や知識、顧客ベースを
獲得することが重要です。M&Aによってこれらを取得するこ
とで、新規事業における競争力を高めることができます。

◆4.リスク分散
新規事業の立ち上げはリスクを伴いますが、既存の事業とのポ
ートフォリオを多様化することでリスクを分散できます。これ
によって、企業全体の安定性を高めることができます。
■2.成熟市場における業界再編におけるM&Aの活用

成熟市場における業界再編は、企業の競争力強化や市場構造の
最適化を目指すための重要な手段です。M&Aを通じて業界再
編を推進する際には、以下の要因が影響を及ぼします。

◆1.経済的スケールメリットの追求
成熟市場においてはコスト削減や効率化が求められます。
M&Aによって企業の経済的スケールメリットを追求し、コス
トの削減や生産性の向上を図ることができます。

◆2.新たな成長機会の創出
成熟市場においては既存の市場での成長が鈍化します。M&A
を通じて新たな市場や技術への進出を図ることで、新たな成長
機会を創出することができます。

◆3.競争力の強化
成熟市場においても競争は激化しています。M&Aによって競
合他社との統合を行い、競争力を強化することで市場での地位
を固めることができます。

◆4.事業ポートフォリオの最適化
成熟市場においては、事業ポートフォリオの最適化が求められ
ます。M&Aを通じて不要な事業を売却し、戦略的な事業領域
に絞ることができます。

◆5.変化する市場ニーズへの適応
成熟市場では市場ニーズが変化しています。M&Aを通じて新
たな技術や顧客ベースを取得し、市場の変化に適応できる体制
を整えることができます。

総括すると、M&Aは新規事業への参入と成熟市場における業
界再編の両方で戦略的な手段として活用されています。それぞ
れの状況に合わせて戦略を練り、成功への道を模索することが
重要です。ただし、M&Aの成功には慎重な計画と実行、適切
なデューディリジェンスが不可欠です。

◎M&Aのスキルを習得して、経営の武器として有効活用され
ることを推奨いたします。