創業融資は受けた方が良いか?それとも出来るだけ自己資金で
頑張る方が良いか?というご質問にお答えします。

「借金をしてまで事業をするつもりはない。自己資金で創業し
てダメだったら潔く事業をたたもう。」と固く誓っているなら
ば、創業融資は受けなくてよいと思います。しかし、「まずは
自己資金で頑張ろう。もしそれでダメなら融資を受けよう。」
と考えているならば、今すぐに創業融資を受けた方が良いです。

■ 創業融資は創業時が一番借りやすい。
創業の殆どは計画通りにいきません。当面は赤字が続くのが一
般的ですので、計画どおりに行っていない実績が露呈する前、
創業直後に融資を申し込んだ方が通りやすくなります。使う使
わないは別として、一番借りやすい創業時に融資を受けて手元
に資金を置いておけば、計画通りに自己資金で立ち上がらなか
った時の選択肢を増やすことができます。

■ 資金力があった方が新規事業は成功しやすい。
創業後に事業の継続を断念せざるを得ない最大の理由は、資金
が切れてしまうことです。多くの創業者は、事業が軌道に乗る
まで悪戦苦闘を強いられます。そのような状況の中で上手く行
きそうな兆しが現れたとしても、その時点で資金が切れてしま
えば終わりです。資金はより長く粘る時間を与えてくれますの
で、資金力があった方が創業は成功しやすくなります。

借入の必要性は理解できたが、どうしても借金のネガティブな
イメージが拭えない方も多いと思います。借金は悪という社会
的な共通認識があると感じますし、借金をしてはいけないと直
接教育を受けた方もいらっしゃると思います。しかし、経営者
になるなら、個人の遊興費と事業のための借入は分けて考えて
いただきたいです。遊ぶためにお金を借りることは当然賛成で
きませんが、新たな需要や雇用を生む可能性のある新規事業に
挑戦するため、他人のお金を活用することは社会的にも大変有
意義なことです。

国にとっても開業率は大変重要な指標であり、創業を後押しす
るため、日本政府も様々な施策を打ち出しています。その中で
最も重要な施策は、日本政策金融公庫の創業融資が無担保無保
証になったことです。

従来の創業融資は、経営者が個人保証を入れていたため、借入
の必要性や経営者のマインドを理解して融資を受けたとしても、
事業に失敗してしまえば個人で大きな負債を負ってしまうとい
う事実がありました。しかし、現在は個人の保証はありません
ので、事業に失敗しても個人が負債を負うことはありません。

無担保無保証制度により創業融資を利用するハードルは大きく
下がりました。上手に活用して創業を成功させましょう。

前回号からの続きです。

■我々の敵はもはや同業者ではありません。

世界標準の経営理論〔早稲田大学ビジネススクール、入山章栄
教授著、ダイヤモンド社〕の中で、レッドクイーン理論と(新)
レッドクイーン理論が紹介されています。

要点は、「同業者が切磋琢磨してそのスペック競争をしてきた
から日本の製造業は世界1の地位を手中に収めることができた。
一方、同質的なスペック競争に明け暮れてしまったがために、
その大局を見失い、世界標準から取り残された。」この主旨の
記述があります。

スペック競争の利点は、切磋琢磨することで磨かれること、こ
れをレッドクイーン理論と呼びます。一方、同質化競争の短所
は、大局を見失いパラダイムの変化に取り残されることで、こ
れを(新)レッドクイーン理論と呼びます。

※レッドクイーン(赤の女王)理論〔スタンフォード大学・ウ
ィリアムバーネット教授〕の語源は、不思議の国のアリスの続
編、鏡の国のアリス(ルイス・キャロル著)にある「今の場所
に踏みとどまりたければ、今の倍の速度で走れ」という言葉で
す。また、入山教授は、キツネとウサギの生存競争、ウサギは
キツネから逃げるためにその走るスピードが速くなる進化を遂
げてきた、一方、キツネはウサギを捕らえるためにより速く走
る、この無限競争を繰り返しているが、空から飛んでくる違う
敵には防戦できない、との例をあげておられます。

●日本のガラケーメーカーは誰を視ていたのか?

同業者間で過度な同質化競争を行っている間にスマートフォン
にそのすべてを奪われ全滅しました。

●書店は誰と戦っているのか?

電子書籍やネット書店に売上を侵食され続けています。

●自動車メーカーの敵は自動車メーカーではない?

シェアエコノミーの仕組みが、自動車運行の効率化を図り、総
台数を減らそうとしています。

●店舗型旅行代理店の敵は誰?

2000年以降に生まれたネット型旅行代理店に売上が大きく移
行しています。JTBの経営危機は、コロナ禍とは違う次元で
も起きていたはずです。

●TV局の敵は他局ではない?

他局との視聴率競争に明け暮れる間に、その時間をネットフリ
ックスやYouTubeに奪われています。その存在感が薄らいでい
ます。

●機械式時計の敵は誰?
(1980年頃、昔の話ですが)スイスの機械式時計メーカーが
日本のクオーツ時計に壊滅的なまでに叩きのめされました。
65,000人の内5万人が数年で失職したと言われています。

●あなた、貴社は誰と戦っていますか?

・・・・・

■我々の選択肢は以下の二つです。

◆1.「今の場所に踏みとどまりたければ、今の倍の速度で走
れ」ルイス・キャロル氏の言葉に沿って、現状を維持するため
に倍の努力を続ける、【管理的機能の強化・改善】を行う

◆2.【事業開発≒イノベーション】を行う

以下をもう一度ご確認ください。

『多くの並みの中小企業のビジネスモデルはありきたりです。
また、成熟期後期から斜陽期を迎えています。事業をマシーン
に例えると、マシーン自体が2世代前の代物で老朽化していま
す。この状況下においても、ほとんどの経営者は【管理的機能
の強化・改善】に終始しています。本当に必要なのは管理機能
の強化ではなく【事業開発≒イノベーション】です。』
(SP経営協会)

【管理的機能の強化・改善】ではなく、【事業開発≒イノベー
ション】を断行しませんか。そのための学びを続けましょう。

中小企業の財務指針は「融資は借りられる時に借りられるだけ
借りておく」そして「キャッシュポジションを高くとる」こと
が最善だと考えています。

融資は借りられる時に借りられるだけ借りておく方が良い理由
は、小さな会社はいつでも銀行から融資を受けられる訳ではな
いからです。今日銀行が借してくれると言っても、半年後も同
様に貸してくれる保証はありません。銀行が貸してくれると言
っているうちに借りておくことが大切です。

次にキャッシュポジションを高くした方が良い理由は、「キャ
ッシュが切れない限り倒産することはない」「キャッシュに余
裕があれば不測の事態が起きても落ち着いて対処できる」「キ
ャッシュがあれば千載一遇のビジネスチャンスを逃さない」た
めです。たとえキャッシュの中身が借入だったとしても、キャ
ッシュをたくさん持っている方が倒産の確率は下がります。

借入を嫌う経営者も多いですが、そこには、困った時だけ銀行
に頼ればよいという錯覚があります。銀行はこちらの都合で融
資をしてくれませんので、ピンチに陥った時に融資を頼みにい
くのではなく、調子が良い時に最大限融資を受けておいて、ピ
ンチに陥ったら返済を待ってもらうのが一番確実な方法です。

借入を活用して手元キャッシュを厚くすることの重要性にご賛
同いただけたならば、次は、どうすれば銀行から最大限の融資
を受けられるかという課題に気づかれたと思います。銀行から
最大限の融資を受ける方法はテクニカルではありません。融資
の提案を積極的に持ってきてもらえる関係を地道に構築するこ
とです。

具体的には、毎月試算表や資金繰り表を作成し、定期的に銀行
に提出することが最低限必要です。多くの中小企業は困った時
(お金を借りたい時)にしか財務諸表を提出しませんので銀行
との関係は深まりません。試算表や資金繰り表は銀行との関係
を深めることができるコミュニケーションツールです。試算表
や資金繰り表を提出したいと言えば銀行は必ず時間を取ってく
れます。日頃から銀行とコミュニケーションをとることを心が
けましょう。

前回号の続きです。

イノベーションは、『技術革新』ではなく『新結合』です。

■イノベーションは誰にでもできます。

イノベーションを『技術革新』と定義してしまうと、多くの中
小企業には敷居が高くなり、自社には無関係の代物に思えてき
ます。一方、イノベーションを『新結合』と定義しなおすと、
イメージが湧いてきます。

イノベーションの父と言われる経済学者、ヨーゼフ・アロイス
・シュンペーターは、1912年に著した『経済発展の理論』の
中で、イノベーションの定義を「これまで組み合わせたことの
ない要素を組み合わせることによって新たな価値を創造するこ
と」=『新結合』と言っています。

イノベーションは、『技術革新』ではなく『新結合』なんです。
まずは、定義を改めましょう。

■イノベーションを起こすとは、『新結合』を起こすこと、す
なわち、結合の相手を探すことが近道です。

前回号で解説した、

◆一つ目は、既存事業を守りながら、経営原則に当てはめて修
正する、令和の経営原則を知り、自社の実態との齟齬を認識し
て修正することです。修正しようとするプロセスでイノベーシ
ョンが生まれます。

◆二つ目は、事業開発を行い、事業を付加(掛け算)する、新
しいビジネスモデル(広義)を知り、自社に導入することです。
導入するプロセスでイノベーションが生まれます。

上記2つの指針に沿って、イノベーションに挑戦してください。

■イノベーションに関するピーター・ドラッカー氏からのメッ
セージ

ドラッカー氏は、マネージメント・エッセンシャル版(ダイヤ
モンド社)の中で、イノベーションに関する示唆に富む言葉を
数多く残されています。初版が発行された1973年当時の言葉
と思うとやはりすごすぎる先生です。以下、ご紹介します。

「現代というイノベーションの時代において、イノベーション
のできない組織は、たとえいま確立された地位を誇っていても、
やがて衰退し、消滅すべく運命づけられる」
「管理的な目標や基準とは別に、イノベーションのための目標
と基準の必要を知れ」
※補足:新規分野の事業に関する計画立案、執行、運営に関す
る指針です。新規事業は先が読み切れないので柔軟に対応しな
さい、と私は解します。

「新しいものの創造と既存のものの面倒は、同時に行えない」
※補足:新規事業は、既存事業と分けて取り組め、と言ってお
られます。

「イノベーションは常に市場に焦点を合わせなければならない。
市場ではなく、製品に焦点を合わせたイノベーションは、新奇
な技術は生むかもしれないが、成果は失望すべきものとなる。」

■多くの中小企業にとって必要なのはイノベーションです。

以下をもう一度ご確認ください。

『多くの並みの中小企業のビジネスモデルはありきたりです。
また、成熟期後期から斜陽期を迎えています。事業をマシーン
に例えると、マシーン自体が2世代前の代物で老朽化していま
す。この状況下においても、ほとんどの経営者は【管理的機能
の強化・改善】に終始しています。本当に必要なのは管理機能
の強化ではなく【事業開発≒イノベーション】です。』
(SP経営協会)

【管理的機能の強化・改善】ではなく、【事業開発≒イノベー
ション】を断行してください。

…次回号に続く

「銀行家というのは、太陽が照っている時に自分の傘を差しだ
し、雨が降り始めるやいなや傘を返せというようなやつだ」と
言う有名な言葉があります。トムソーヤの冒険を書いたマーク・
トウェインの言葉だそうです。ユニークな言い回しで、なるほ
どそうだと納得させられる名言です。

しかし、経営者にとっては銀行の役割を取り違えた少し危険な
考え方です。そもそも銀行が貸している傘は、雨傘ではなく日
傘です。晴れた日には大いに役立ちますが、雨の日に使うもの
ではありません。すぐに使い物にならなくなってしまいます。

銀行が保有しているお金は預金者から預かっているものです。
預金者から見れば、業績が悪化して返済の目処が立たない企業
に融資をするのは許されない行為です。いろいろな考え方があ
るとは思いますが、経営者であれば「銀行の姿勢は事実そうで
ある」ことを受け入れる覚悟が必要です。

債権者、債務者と言う考え方でいけば、もちろん銀行は企業よ
り強い立場にあります。しかし、銀行は預かったお金を運用し
なければ生きていけません。預金者のお金を運用しなくてはな
らない銀行と、そのお金を使って新しい事業を起こす経営者は
パートナーの関係にあり、その点で銀行と企業は対等です。

銀行の役割を正確に捉えることは経営者にとって重要なポイン
トのひとつです。銀行は困った企業を助ける救済機関だと考え
ている経営者は、融資をしてくれない銀行を恨みます。金利を
払って銀行を儲けさせる考えなど毛頭ありません。そのような
経営者は銀行から敬遠されます。

一方、銀行は現在の事業をワンランク拡大するためのパートナ
ー機関だと考えている経営者は銀行を恨みません。そもそも雨
傘は貸してくれないと知っているからです。晴れの日に、さら
に前に進むための日傘を借りにいき、その対価として一定の金
利を払うことを当然だと考えています。そのような経営者には
資金が集まります。

ファイナンスは経営者にとって必須のスキルです。しかし、金
融機関の役割を正しく捉えられていないために、間違った銀行
対応をしている経営者様を多くお見受けします。まずは、銀行
の役割を正確に定義しましょう。

■【管理的機能の強化・改善】ではなく、【事業開発≒イノベ
ーション】を…

「多くの並みの中小企業のビジネスモデルはありきたりです。
また、成熟期後期から斜陽期を迎えています。事業をマシーン
に例えると、マシーン自体が2世代前の代物で老朽化していま
す。この状況下においても、ほとんどの経営者は【管理的機能
の強化・改善】に終始しています。本当に必要なのは管理機能
の強化ではなく【事業開発≒イノベーション】です。」
(SP経営協会)

現場には、老朽化したマシーンをメンテして、フル稼働できる
状態を続けられるように指示してください。一方、経営者の真
の仕事は、新しいマシーンの創造・開発、せめて、大幅なリニ
ューアルです。

■【事業開発≒イノベーション】の現実的な取り組みは…

◆1:一つ目は、既存事業を守りながら、経営原則に当てはめ
て修正する、令和の経営原則を知り、自社の実態との齟齬を認
識して修正することです。

○例えば、過度の売上至上主義は、様々な経営への悪影響を及
ぼしています。

「日本の企業は売上高確保、増収(売上増)にこだわり過ぎて
います。何が何でも売上高を確保しようとすると、売上高を確
保するために多くの犠牲を払うことになります。利益を犠牲に
した安易な値引きや安い値決めを招きます。利益に見合わない
過大な広告コストを支払う羽目になります。採算を度外視した
幅広い品ぞろえや長時間営業を行うようになります。顧客の過
度な要求を受け入れてしまいます。…脱・売上至上主義、減収
(売上減)を容認する経営に移行してください。」
(SP経営協会)

○例えば、所有する経営から持たない経営への転換は、令和時
代の経営の基本思想です。

・売上…厳選した売上に絞る
・商品…高収益商品に厳選して
・顧客…優良顧客に厳選して
・原価…40~60%、外部の力を利用して
・販管費…固定費は極小で
・従業員…厳選して、外注・業務委託を活用して、変動費化する
・事務所…できるだけコンパクトに
・働き方…テレワークを活用して、極力出社しないで
・評価制度…求める(必要な)従業員に厚く分配する

◎打ち手1:減収を容認する事業計画の策定、運用
◎打ち手2:高付加価値化政策の徹底
◎打ち手3:原則持たない、この価値観への転換を図る

◆2:二つ目は、事業開発を行い、事業を付加(掛け算)する、
新しいビジネスモデル(広義)を知り、自社に導入することで
す。

新しいビジネスの型(広義のビジネスモデル)を知り、それを
自社に導入すること、そのプロセスでイノベーションが生まれ
ます。例えば、サービスや商品を提供する企業がソリューショ
ン提供企業に変わろうとすれば、そのサービスや商品の提供方
法、マネタイズを大きく見直す必要が生じます。この過程でイ
ノベーションが生まれます。

事業開発≒イノベーションのヒントは、新しいビジネスの型の
中にたくさんあります。

・サブスクリプション1.0⇒2.0
・受注型⇒プロダクト化
・ソリューション提供企業への転換と継続課金
・D2C(C2M)、クラウドファンディング
・DX ・業界の壁を破る ・同業者支援モデル
・ニューミドルマン(購買代理)⇒プラットフォーム …等々

◎打ち手4:新しいビジネスの型(広義のビジネスモデル)を
自社に導入する

※「事業開発は、既存の事業と切り離し、エースを投入して行
うことが必須です。」50年前のドラッカー氏の言葉(要旨)で
す。

【管理的機能の強化・改善】ではなく、【事業開発≒イノベー
ション】を断行してください。

…次回号に続く

起業してこれから融資を受けようと考えている方はもちろん、
経営経験の長い経営者様であっても、お付き合いする銀行をど
のような観点で選べばよいか分からない方も多いと思います。

金融機関の力を最大限活用するためには、ご自身に合った金融
機関を選んだ方が有利ですので、まずは、金融機関の種類や特
性を見ていきましょう。

■ 金融機関は大きく次の5種類に大別できます。

◆政府系金融機関
最も有名な政府系金融機関は日本政策金融公庫です。預金取引
は行わない融資取引のみの金融機関で、信用力が低い創業時か
らお付き合いできる数少ない金融機関です。企業規模に関わら
ず、事業資金の融資相談に乗ってもらえます。あまり知られて
いませんが、日本政策金融公庫は国民生活事業、中小企業事業、
農林水産事業の3つに分かれており、これにより数百万円の創
業融資から数億円規模の事業融資まで幅広く対応しています。

◆メガバンク
明確な定義はありませんが、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三
井住友銀行の3行を3大メガバンク、りそな銀行を加えた4行
を4大メガバンクと表現することが多いようです。規模が大き
く全国に支店があるため、口座を持っているという方も多いと
は思いますが、事業資金のプロパー融資取引となると、規模の
小さな中小企業にとっては、少し敷居の高い金融機関です。

◆地方銀行
各都道府県に本店があり、地域経済の発展に尽力している金融
機関です。地域経済に大きな影響力を有する企業や地場産業を
営んでいる企業を中心として、主に地域の中小企業向けに融資
取引を行っています。メガバンクとは違った役割を担っていま
すが、「銀行」ですので、審査の傾向はメガバンクと似ていま
す。

◆信用金庫・信用組合
地域経済の発展に尽力している点においては地方銀行と同じで
すが、地方銀行よりも、さらに地域の細部に根付いています。
経営形態も銀行とは違い、企業が出資者となって相互扶助を目
的とする協同組織型の金融機関です。よって、まず出資をして
会員とならなければ融資取引をしてもらえません。小規模の事
業者にとっては身近な存在です。

◆ノンバンク
預金の受け入れは行わず、融資取引のみを行う金融機関をノン
バンクと言います。信販系やリース系の金融機関もノンバンク
に分類されます。金利は高いものの手軽に利用できるメリット
があります。

例えば、貴社が年商3千万円の小規模企業であれば、メガバン
クとお付き合いをしても積極的な提案は受けられないかもしれ
ません。メガバンクの主たる取引先は大企業になりますので、
小さな会社の対応は手薄になりがちです。

あくまでもイメージですが、創業~年商3億円程度までは日本
政策金融公庫国民生活事業及び信金信組をメインとし、年商3
億円を超えたあたりで地方銀行や日本政策金融公庫中小企業事
業にチャレンジ、年商が10億円を超えたあたりでメガバンク
にチャレンジするのが理想だと感じます。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

年初に当たって、もう一度、経営の基本原則について言及させ
ていただきます。一つの考え方としてご確認ください。

■1:無駄の少ない「Simple」な経営を目指してください。

余計なものをそぎ落とし、密度の濃い「Simple」な経営体に生
まれ変わりましょう。以下の仮説を持っています。

『日本の企業は売上高確保、増収(売上増)にこだわり過ぎて
います。何が何でも売上高を確保しようとすると、売上高を確
保するために多くの犠牲を払うことになります。利益を犠牲に
した安易な値引きや安い値決めを招きます。利益に見合わない
過大な広告コストを支払う羽目になります。採算を度外視した
幅広い品ぞろえや長時間営業を行うようになります。顧客の過
度な要求を受け入れてしまいます。売上至上主義は、分散症候
群や安売り症候群を招く原因のひとつです。脱・売上至上主義、
減収(売上減)を容認する経営に移行してください。』

売上高はいくらか?社員数は何人か?事務所は大きいか?立派
か?…事業体の良し悪しをこのような基準で判断するのではな
く、利益はいくらか?…この単純な尺度で図る発想も重要です。
同じ利益なら、売上は小さい方が、社員数は少ない方が、事務
所は狭い方がよい…こんな考え方もあるはずです。

■2:高収益「Profitable」な企業作りを目指してください。

売れた時には、大きな利益を出せる収益構造を当初から設計し
ましょう。高めの粗利益率の設定、高めの値付けを心掛けてく
ださい。値決めを外すなら高めに外してください。ビジネスと
して完成した時点での営業利益率は20%以上で設計してくだ
さい。安売り戦略は、経営の難易度を高め、事業体の創造力を
奪い去る原因になります。

■3:手持ち資金を潤沢「Ample」に維持してください。

資金余力は企業経営の余裕代、時間を提供してくれます。財務
機能を持ってください。資金は可能な限り潤沢に持ち続けまし
ょう。借入れの金利負担よりも、資金に困るリスクの方がはる
かに深刻であることを認識してください。また、借入れのタイ
ミングは、自社が資金を必要とするタイミング(借り手の都合)
ではなく、金融機関が融資できるタイミング(貸し手の論理)
に沿うことが重要です。総じて貸し手の方が強いからです。
資金余力がもたらす経営者の心の余裕と、増加分の金利負担を、
天秤にかけて比較してください。

※当事務所が提供する【財務部長の代行業務】の導入を検討し
てください。

■4:変化に対応できる柔軟性「Flexible」のある企業体を維
持してください。

計画のずれを想定した経営を行ってください。計画(売上の達
成)が遅れることを想定しながら経営してください。「コント
ロールできない売上を、コントロールできる売上以外の経費の
執行で調整する」、これが経営管理です。経費の執行をワンテ
ンポ遅らせる…これが不透明な時代に、企業体力が十分でない
事業体が選択すべき経営のコツです。また、遅れを許容するた
めの資金余力を持てる財務戦略が重要です。

■5:経営判断を明確「Clearly」にしてください。

感覚に頼らず、数字を基準にした論理的な経営を行ってくださ
い。曖昧な経営判断、お人好しな対応を止めましょう。経営は、
感覚や概念ではなく、数字で管理してください。感覚や概念を
基準に考えると、判断が曖昧になりがちです。数字基準での判
断は、その判断の精度を各段に向上させます。経営が締まりま
す。

◎経営の判断基準は何か?永遠のテーマです。経営の判断基準
は無限にあります。逆にも真あり、敢えて真逆を攻めることで
成功することもあります。それでも、王道をお薦めいたします。

王道とは、多くの偉人が語り続けた経営の道です。上記の方針
は、偉人が語る経営の道に近似しているはずです。当然です、
偉人の言葉を借りているからです。経営者の皆さま方が、理詰
めで考えて、腑に落ちた部分については、今後の指針として、
深く、深く…心に刻んでください。

創業・起業時の資金調達手段として最もポピュラーなのは、日
本政策金融公庫の創業融資や信用保証協会の創業保証です。一
定の要件を満たせば誰でも利用できる制度であり、創業・起業
時の資金調達環境は比較的整っていると感じます。

しかし、創業・起業は3年で7割が廃業するとも言われており、
創業融資を受けて無事に開業できても、生き残るのは大変厳し
い世界です。では、3年未満に廃業してしまう事業者と3年以
上生き残れる事業者の違いはどこにあるのでしょうか。長年の
経験から、生き残れるかどうかは、創業融資の次、2回目の融
資を受けられるかどうかが決め手だと感じます。

2回目の融資を受けられる時期は、1期目ないし2期目の決算
が終わった辺りですが、2回目からの融資は、創業融資のよう
に要件の充足ではなく、業績(実績)が重視されます。

2回目の融資で最も重視される業績は売上です。創業して1年
ないし2年が経っても一定の売上が立たない場合は、経営者の
実力が不足している、もしくは提供している商品やサービスが
市場から必要とされていないと考えられます。よって、2回目
の融資を受けるためには売上が必須です。売上が立てば、一般
的には月商の2カ月程度の融資を受けられる可能性が出てきま
す。

売上が立ったけれど赤字の場合はどうでしょうか。赤字の額に
もよりますが、赤字だからといって絶対に融資を受けられない
訳ではありません。損益分岐点に届かなかったため赤字だが、
融資金によって損益分岐点を超える売上を獲得できると判断で
きれば融資をしてくれるはずです。

創業時にありがちなミステイクの一つは、本当は利益が出てい
るのに納税を嫌って意図的に業績の悪い決算にすることです。
決算内容を悪くすることで、2回目の融資を断られる、もしく
は少額に留まってしまうと、攻める経営ができない⇒低成長⇒
さらに融資も出なくなるという悪循環に陥り、事業の拡大どこ
ろか段々と資金が細り遂には廃業ということになりかねません。

一方、納税を受け入れて利益をしっかり出した企業は、2回目
のファインナンスにより事業を成長させることができ、その成
長が更に大きな融資を呼び込みます。1期目もしくは2期目の
決算処理を誤ることで、その後の姿が大きく変わるので気をつ
けてください。

創業・起業された方は、最初の目標を「2回目の融資を受ける
事」に設定することで生き残れる可能性がぐんと高まります。
2回目の融資を受けるために必要なことをひとつひとつ学んで
いきましょう。

新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。

今年は令和5年です。昭和98年ではありません。誰もが知って
いるはずですが、昭和の経営・考え方をそのまま踏襲している
方も少なくありません。新年を迎えるに当たって、もう一度令
和の経営について考えていただければ幸いです。

■1.昭和と令和は社会情勢が大きく異なります。

昭和は、危険・不便・不快等、解決すべきテーマがたくさんあ
りました。前回の東京オリンピックが開催された1964年の冷
蔵庫の普及率は10%だったそうです。大変不便な世の中でした。
このような大きな困りごとを解決するためのプロダクト開発と
大量生産、それを実現するための同質化されたマネージメント
体制が構築され、「ジャパンアズNO.1」と世界中の注目を浴
びるまでに成長を遂げました。バブルの崩壊までは…

令和は、安全・便利・快適を実現し、大きな課題を見つけにく
い時代です。皆が残された小さなテーマの解決に総動員して取
り組むことで、強烈な同質化・価格競争を招いています。低成
長と低収益のスパイラルから抜け出せません。

■2.であるにも関わらず、我々は、昭和文化に縛られた環境
で今日も生きています。

先輩の経営者、仲間、コンサルタント、書籍…ほとんどが昭和
です。結果として、我々は昭和の経営原則を疑いもせず、信じ
込んでいます。

◆新しい経営原則について考え直してみませんか?

【PL】売上ではなく利益を、規模から質への転換を!
【BS】所有する経営から持たない経営へ!
【MG】ボトムアップの経営からトップダウンの経営へ!雇用
から業務委託へ!

■3.さらに、我々は、昭和のビジネスモデルから未だに抜け
出せません。

2世代上の先輩たちが定義した業種・業界に縛られ、はるか昔
に創造されたマネタイズ・ビジネスの型を未だに模倣していま
す。

◆新しいビジネスの型に転換しませんか?

サブスクリプション1.0⇒2.0
ソリューション提供企業への転換
D2C(C2M)、クラウドファンディング、DX
業界の壁を破る
ニューミドルマン(購買代理)⇒プラットフォーム
…等々

■4.これからは、すさまじいスピードでビジネスが変わりま
す。

・真のネット企業がリアル企業を凌駕します。
例)銀行の凋落、すべての分野で同じ事が起こります。

◎OMO(Online Merges with Offline)とは、オンラインとオ
フラインの融合を意味しますが、その真はネット企業がリアル
企業を飲み込む現象です。

◎さらに、ITの3次元化(メタバース)が始まります。

・カーボンニュートラル(炭素ゼロ)政策が自動車業界を直撃
します。出荷額62兆円、全製造業の19%、GDP比12%(2018
年)を占める自動車業界に激震が走ります。

■5.様々な分野でルールチェンジが起こっています。

見方を変えることができれば、我々中小企業やこれから事業を
始める若者には大きなチャンスです。100mを早く走る競技で
は勝てないが、100mを20秒ジャストで走る競技を作ることが
できれば、金メダルも夢ではありません。下剋上・激変、チャ
ンスの到来です。

特に、以下の3つは新ルール構築の目玉になるテーマです。

1.OMO(Online Merges with Offline)!
⇒デジタルシフトではなくDXを!
2.メタバース!
⇒ITが2次元から3次元空間の中に移動します。
3.SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能
な開発目標)」17の目標と、それを達成するための具体的な
169のターゲット!

■6.隆々と生き残り、成長する企業体を作りましょう。

・昭和のルールにとらわれず、
・強烈な同質化・価格競争を回避し、
・新しい事業立地やビジネスの型を理解して導入して、
・新しいルールの創造者としての地位を確保する

◎SP経営!=脱・昭和、令和の経営!
令和企業に転身し、前途洋々たる未来に向かって、共に頑張っ
ていきましょう。

本年もよろしくお願いします。
感謝・合掌