事業資金が潤沢にあれば、新店舗を出店したり、工場を作ったり、優秀な人材を雇用したり・・・経営の選択肢が広がります。
当然、事業の元手となる資金は、借入よりも自己資金の方がリスクは小さくなります。しかし、利益の積み重ねである自己資金の形成には多大な時間を要しますので、時間を短縮する方法として、他人資本(借入)の活用があります。人間の寿命には限界がありますので、経営者として成し遂げたいビジョンが大きければ大きいほど、他人資本(借入)の活用は避けて通れない経営の要素です。

しかし、他人資本(借入)を上手に活用できている中小企業は多くありません。理由は、財務のプロフェッショナルではない経営者自身が、本業の合間に銀行対応を行っているからです。銀行対応を含めた財務活動は、財務に関する専門知識を要求されますので、本来であれば財務の専任を置いた方が上手くいきます。大手企業で言う財務部長です。

中小企業では財務部長という職種はあまり馴染みがありませんので、ウィキペディアでご紹介しますと、「財務部長(CFO)とはキャッシュ・フローや投資の管理、経営計画策定における数値的裏付けの作成と管理など、業務範囲は多岐にわたり、CEO・COOの「片腕」ともいうべき存在である。英国においてはほとんど全員が会計士の資格を有する。米国においても会計士が過半数を占める役職である。また、理事会又は取締役会の構成員である場合が多い。」となっています。

中小企業に財務部長がいない理由は、ひとつが財務部長の報酬です。会計士の資格を持っていない方でも、財務部長の年俸相場は非常に高額です。もうひとつは、中小企業は大企業に比べて財務に関する仕事量が少ないことです。仕事量が少ないところに高額な専任担当者を常時雇用する必然性はありません。

しかし、仕事量が少ないからといって、中小企業に財務が重要でない訳では決してありません。資金調達力に乏しい中小企業にとって、財務の成否は会社の存続や成長に大きな影響を与えます。

中小企業が、「仕事量としては少ないが、重要な財務業務をどのようにカバーすべきか。」という問題は、財務業務を専門家に部分的に委託することで概ね解決できます。企業側は専門家を常時雇用する必要はありませんのでコストを大幅に抑えることができますし、受ける専門家も複数社より財務業務を請け負うことで収益面をクリアできます。

当事務所でご用意している財務支援サービスは、まさにこのような財務部長のシェアリングサービスです。是非、ご活用ください。

■勝ち組と負け組の価格戦略は真逆です。

◆市場が飽和した日本のマーケットにおいては、モノやサービ スを安く買おうとするエネルギーが蔓延しています。モノや サービスを提供する企業サイドも、その趨勢に迎合することで、自社の売上を確保しようと考える傾向が強いようです。

◇一方、十分な利益を確保できる価格設定を行ったうえで、隆々と経営を続ける企業もたくさんあります。当然、たくさんの顧客に支えられているはずです。

◆前者と◇後者、雑駁に分類するなら負け組と勝ち組です。
◆前者(負け組)が4割、◇後者(勝ち組)が2割、中間が4割、このような分類になりそうです。

◆前者(負け組)の企業の価格戦略は…
・「価格(安売り)を売るための道具」だと思っています。
・「価格は安い方が売れる」と思っています。
・「価格は、できるだけ安めに設定するべき」と思っています。
・「価格が高すぎて売れない」ことを過度に嫌います。
・「売れないより、薄利でも売れた方がよい」と考えています。
※うまく行ってたくさん売れても「繁盛貧乏」に陥ります。儲からないのに忙しい状態でバランスしてしまいます。後は頑張って・頑張り続けて…現状維持が関の山です。

◇後者(勝ち組)の企業の価格戦略は…
・「価格を売るための道具には使わない」との信念を持っています。
・「価格が安くても売れるわけではない」と思っています。
・「価格は、できるだけ高く設定すべき」と思っています。
・「(仮に)高すぎて売れないことが有っても仕方ない」と思っています。
・「薄利で売るよりも、売れない方がよい」と考えています。
※うまく行けば、たくさん売れて儲かる「繁盛高収益」の状態になれます。利益で次の投資ができ、さらなる成長を目指せます。うまく行かなければ、「閑散貧乏」の状態です。やり直せます。

■価格に対する二つの潮流…

◆モノやサービスを安く買おうとする潮流に巻き込まれることは得策ではありません。
◇もう一つの潮流、「良いモノ・必要なモノが欲しい。対価は払う」に乗せましょう。
気を付けてください。
◆前者の潮流の方が目立っています。◇後者は静かに流れています。

■もう一度「価格戦略=値決め」を再考してください。

「値決め」は経営の要諦です。であるにも関わらず、値決めに掛ける手間暇が少なすぎると思っています。総じて安く付けすぎているとも思っています。間違えた「値決め」が経営に与えるダメージを過小評価してはいけません。経営者は閑散な状態を嫌います。故に、安すぎる「値決め」をして、貧乏しても繁盛したいと考える傾向があります。「繁盛貧乏」がはびこるのはこのためでしょう。
経営者は楽な道を選びます。苦労して付加価値を積み上げるよりも、価格を低く抑えて価値とバランスしようと考えてしまいます。価格を売るための道具に使ってしまいます。安売り戦略の大罪は、良いものを創り出そうとする知恵を奪い取ることです。この愚策を長年続けている集団から、新たな商品やサービスを創り出す創造力は生まれません。商品やサービスの価値と価格のバランスは、その価格を下げて市場に合わせるのではなく、その価値を向上させることで調整してください。
多くの偉人たちが語る経営の王道です。

事業は付加価値を求めつづけることでのみ継続できます。値決めは重要な経営判断です。安売りは悪です。利益を計り、利益を求めてください。また、コストは自然に膨らみます。意識して抑え込んでください。高収益(Profitable)な企業体作りを強く意識してください。

事業承継時には大きな資金が必要になります。例えば、後継者の場合、相続等で分散した株式等を買い集める資金や、相続や贈与によって株式を取得した場合の納税資金等が想定されます。
他にも、親族ではない役員や従業員が事業を承継する場合、株式や事業を買い取るための資金が必要になります。また、経営者が交代したことにより信用状態が悪化し、銀行の借入条件や取引先の支払条件が厳しくなってしまうこともあるでしょう。

政府は経営者の高齢化に伴い、中小企業が営む事業が次世代にしっかりと引き継がれるよう、様々な制度を整備しています。
せっかく事業を引き継ぐ意欲のある後継者や従業員がいるにも関わらず、資金面で断念することがないよう、日本政策金融公庫や信用保証協会は、事業承継時に利用できる融資・保証制度を用意しています。

これらの制度を利用するためには、まず、経営承継円滑化法に基づく認定を受けなくてはなりません。認定を受けるためには、下記を記載した認定申請書を作成し、窓口を通じて経済産業大臣の認定を受けます。

(認定申請書の主な記載事項)
1.事業承継を行うこととなった原因
・先代経営者の死亡または代表者の退任

2.事業活動の継続に支障を生じさせる主な事由
・申請者が、申請者以外の者が有する株式を取得する必要があること。
・申請者が、申請者以外の者が有する事業用資産を取得する必要があること。
・申請者の売上高が減少することが見込まれること。
・仕入先からの取引条件について申請者の不利益となる設定又は変更が行われたこと。
・取引先金融機関との取引に支障が生じたこと。

認定を受けたら、会社の資金ニーズは信用保証協会へ、代表者個人の資金ニーズは日本政策金融公庫に申し込みます。信用保証協会では、通常の無担保枠とは別枠で保証を受けられる制度を用意しており、日本政策金融公庫では、代表者個人が低利で融資を受けられる制度を用意しています。

事業承継時の資金調達についても弊所までご相談ください。

■忙しいとは?時間がないとは?この言葉にどのような意味があるのかわからなくなる数字です。

◆「144時間」「176時間」この数字が何か考えてください。
○前者は5月の定時間内就業時間です。(土日と5月1日・2日を休みとした時)
○後者は6月の定時間内就業時間です。(土日を休みとした時)※平成29年度カレンダーより。
144時間を100とすると、176時間は122になります。実に22%も就業できる時間が違います。(業務量を同じとした時…)

5月度の残業時間を32時間とするなら、6月度は残業無しです。
5月度の残業時間を0時間とするなら、6月度は32時間時間が余ります。
5月と6月の差をどう埋めているのでしょうか?

◆「10,000時間」「80時間」この数字が何か考えてください。
○前者は勤続4年~5年の社員の累積勤務時間です。
○後者は2週間の勤務時間(定時内)です。
仕事が遅れている社員と、先手を打てている社員の仕事の進捗の時間差は、せいぜい2週間です。4~5年の社員にあてはめると、その差は0.1%以内です。
なぜ0.1%分、2週間仕事を先行してできないのでしょうか?

■労働時間の短縮には、定休日を作ることが最善です。

◆「365日」「12日」この数字が何か考えてください。
○前者は年中無休の営業体制を指します。
○後者は月一回の定休日を指します。
月一回の定休日を設けるだけで、3.3%営業時間(就業時間)を短縮できます。

◆「365日」「52日」この数字が何か考えてください。
○前者は年中無休の営業体制を指します。
○後者は週一回の定休日を指します。
週一回の定休日を設けることができれば、14.2%営業時間(就業時間)を短縮できます。
隔週の定休日を設けるだけでも、7.1%営業時間(就業時間)を短縮できます。

■給料が安いのか?高いのか?相対的に考えるための数字です。

◆「1,500円」「250,000円」この数字が何かを考えてください。
○前者はアルバイトの時給1,500円を指します。
○後者は約167時間(1か月定時就業時間)働いた時の月給です。
月給25万円は払えても、アルバイトに時給1,500円を提示できない中小企業は少なくありません。どうしてでしょうか?

◆「2~3倍」「3倍~無限大」この数字が何かを考えてください。
○前者は同年代の一般社員と部長クラス(最上級管理職)の年収の差(諸説ありますが)です。
○後者は同年代(40~50歳)の能力の差です。比較的単純な業務のスピード差は3倍以上、そのできる業務の範囲の違いは、できるかできないか、無限大の差がついています。
報酬にもっと差をつけるべきなのでしょうか?悩ましい事柄です。

■値上げと値引きについて考えるための数字です。

◆「3%」値上げの時、「3%」売れ個数減でも売上は現状維持、かつ「1.5%」増益です。
◆「3%」値下げの時、「3%」売れ個数増で売上は現状維持、一方「1.5%」減益です。
※共に原価率は50%とし、販管費は固定費と考えた時。
値下げ・安売りの選択肢がいかに利益を圧迫するか?よく考えてください。

■継続がいかに重要か?を示す数字です。

◆「3年」「10,000時間」この数字が何かを考えてください。
○前者は「石の上にも3年」(ことわざ)
○後者は「10,000時間の法則」(マルコム・グラドウェル氏)
共に物事を一定以上習得するために要する時間の目安を指します。貴社は新しいテーマに対して3年間継続して取り組めているでしょうか?中途半端は何一つ身に付かないようです。

選択したビジネスモデルによって、将来が大きく変わるのは当然です。しかし、同じビジネスモデルであっても、選択する取引条件が違えば同様に将来は変わります。

月額3万円程度の利用料を売上高とするA社とB社があります。
A社は普通に契約月から毎月3万円の利用料を徴収していますが、B社は当初6か月分の利用料を一括で徴収しています。

A社は毎月5件程度の新規契約を獲得していますが、損益分岐点売上高に達するまでには長期間を有しますので、資金繰りは非常に厳しい状況です。また、現状の業績では金融機関を頼ることもできません。

一方B社も、A社同様当初は毎月5件程度の新規契約でしたが、初月から100万円程度の収入がありましたので、すぐに営業マンを増員し、今では月商1,000万円に迫る勢いです。A社とB社は類似したビジネスモデルですが、取引条件の違いで結果は大きく違っています。

ソフトウェアの受託開発をしているA社と、ソフトウェアをパッケージ化して販売しているB社があります。A社の開発期間は数か月に及びますが、代金を全額回収できるのは開発が完了した後です。一方のB社はソフトウェアを商品化しているため、販売した翌月には代金を回収することができます。

A社は開発期間の人件費を確保するため、いつも資金繰りに奔走しています。また、売上高を増やそうと思っても、さらに多くの人件費が必要になるため、思うように売上高を増やすこともできません。一方のB社は、パッケージ商品の販売ですので、資金を気にすることなく売上を増やすことができます。そして稼いだ資金を次の開発に投資しています。

潤沢な自己資金を有している中小零細企業は少なく、また、借入にも限度があります。よって自力でキャッシュをどれだけ稼げるかどうかが成否を大きく左右します。もちろん利益も重要ですが、いくら利益率の高いビジネスモデルであっても、売上代金を回収するまでの期間が長ければ、事業の継続は困難です。

・売上代金をもっと早く回収できる方法はないか?
・支払をもっと遅らせる方法はないか?
・在庫の回転期間をもっと短くできる方法はないか?

キャッシュを稼ぐ力を強化するため、今一度考えてみてはいかがでしょうか。

◎コントロールできる事をコントロールしない事を『放漫経営』と呼びます。
◎頑張ればコントロールできる事をコントロールしない事を『怠慢経営』と呼びます。
◎コントロールできない事をコントロールしようとする事を『独り善がり経営』と呼びます。
◎さらに、時流に逆らう経営は『最も愚かな経営』です。

■経営の対象には…

◆1:コントロールできる事
◆2:頑張ればコントロールできる事
◆3:コントロールできない事
の三つがあります。

■経営を安定・成長させるためには…

◆1:コントロールできる事を完全にコントロールする事
◆2:頑張ればコントロールできる事をできるだけコントロールする事
◆3:コントロールできない事には、できるだけ適合する事
※特に、時流には積極的に身を預けるぐらい適合する事が重要です。絶対に逆らってはいけません。
上記の三つが重要です。

◆1:コントロールできる事を完全にコントロールする事とは…

損益計算書の販売管理費の項目は、総じてコントロールできます。社長自身がどのような投資判断をするかで、その後の損益計算書の概要が決まります。その後も、広告費が大き過ぎると思えば、その費用を減額できます。少ないと思えば増額できます。人件費・家賃…同じです。
すべて自分の意志と行動で決まります。コントロールできます。
ただし、短期間ごとに会計上の実績数値を確認しながら、調整を加えながら、最適な数値を探し続けねばなりません。最適な数値自体が刻一刻と変わります。車の運転と同じで、継続的なハンドルとアクセル・ブレーキの操作が必要です。
自分でコントロールできる事をコントロールしない事を「放漫経営」と呼びます。(※放漫経営の定義は諸説ありますが…)

◆2:頑張ればコントロールできる事をできるだけコントロールする事とは…

○例えば…資金調達はこれに当たります。戦略的に金融機関対応と資金調達を継続すれば、これを行わない企業と比較して、はるかに大きな資金を調達できます。大きな資金は、企業経営の安定性と経営判断の選択肢を格段に向上させます。
ただし、財務戦略(金融機関対応含む)は、一過性の対応ではその目的を達成できません。
財務戦略は、資金に余裕がある時から、創業から、コツコツと積み上げて行うことでその成果を見出せます。一方、多くの経営者は、資金需要が発生した時のみに、資金に困った時のみに、それを実施しようとします。
これは間違えです。この発想では、十分なコントロールはできません。
この財務戦略を行わない事、頑張ればコントロールできる事をコントロールしない事を「財務無策」(※銀行融資プランナー協会の定義です。)と呼びます。
※銀行融資プランナー協会の正会員である当事務所は、『新・税理士』として、貴社の財務機能を担います。

◆3:コントロールできない事には、できるだけ適合する事とは…

○例えば…『時短や生産性向上などを目指す働き方改革』、これは時流です。好む好まざるに関わらず適合して行かねばなりません。世の中の『働き方改革』への適合が終了した頃に気付いて、その後ろ髪を追いかけても手遅れです。最優先課題として、チャンスととらえて適合するしかありません。

○例えば…輸入業を営んでおられる企業様は、円高を望まれるでしょう。しかしながら、為替は一企業でどうにかできることではありません。今後の為替の動向に適合する経営を行うしか方法はありません。

○例えば…暖冬(※今年が暖冬であるとの意味ではありません)は、アパレル業を営んでおられる企業様にはマイナス要因でしょう。しかしながら、天候・気温は、どうにかできることではありません。暖冬に適合した経営を行うしか方法はありません。

時流やコントロールできない事に対しては、その事をどうにかしようと考えず、その事実に対してどう適合するかを考えていきましょう。

■経営管理の対象を、

◆1:コントロールできる事
◆2:頑張ればコントロールできる事
◆3:コントロールできない事
この三つに明確に分けて考えましょう。
コントロールできる事、頑張ればコントロールできる事を確実にコントロールする事を徹底しましょう。さらに、時流やコントロールできないことには上手に適合しましょう。

これらを徹底するだけでも、経営の成功確率は大きく向上するはずです。

資金調達のご相談をお受けしていると、「日本政策金融公庫からは、『融資枠がいっぱいなのでこれ以上融資はできません。』と言われました。」というケースがしばしばあります。私の方から、「中小企業事業にもあたりましたか?」とお聞きすると、大抵の方が、「中小企業事業とは何でしょうか?」とおっしゃいます。

一般的に日本政策金融公庫というと、旧国民生活金融公庫、いわゆる国金をイメージされる方が圧倒的に多いようです。しかし、旧中小企業金融公庫、いわゆる中小公庫も、現在は日本政策金融公庫となっております。それぞれ、日本政策金融公庫国民生活事業と日本政策金融公庫中小企業事業です。

この国民生活事業と中小企業事業は、同じ会社ではありますが、窓口は全く別です。国民生活事業が無担保で2,000万円までの小口融資を行うのに対して、中小企業事業は、法人向けに大口の融資を行います。従いまして、創業間もない方や小規模な事業を営む企業様は国民生活事業で間に合いますが、企業が成長し、より大きな資金が必要となれば中小企業事業を利用することをおすすめします。

中小企業事業の利用について、年商規模など明確なルールは特にないようですが、弊所が関与した事例でいうと、最も規模が小さな企業様で年商約1億5,000万円です。海外出店資金として4,000万円を調達しました。こちらのお客さまも、国民生活事業からのお借り入れが既にあり、国民生活事業ではこれ以上融資はできないと言われていました。

昔は、国民生活金融公庫と中小企業金融公庫は別々の会社であったため、窓口も別々であることは一目して分かりました。しかし、現在は日本政策金融公庫に集約されているため、中小企業事業が分かりにくくなってしまったのかもしれません。不思議なことに、国民生活事業の方から、「こちらの枠が一杯なので中小企業事業をご利用されてはどうですか。」と中小企業事業を紹介されることも殆どないようです。

国民生活事業で2,000万円近くの借入が既にあり、これ以上の融資は制度上難しいと言われた企業様は、中小企業事業とお付き合いを始めるステージかもしれません。審査は厳しくなりますが、お手伝いしますのでチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

■「力相応攻める」・「己の今の実力を知る」、経営者が常に心掛けねばならない事柄です。近未来の大きな夢と今日の現実は、明確に区分して考えねばなりません。将来大化けする確信を持っていても、今は今、現実を踏まえた経営判断が必要です。

◆自己資金が100万円しかないのに、3,000万円の資金を必要とする事業を起こそうとする社長様も少なくありません。
「こんなにすごいアイデアがある。お金さえあれば…」との思いは理解できますが、「お金がない」のですから仕方ありません。「お金さえ…」ではなく、「(致命的な)お金がない…」のです。

○100万円の自己資金しかなければ、最大でも1,000万円の事業総予算を組んで創業してください。これでもぎりぎりです。
○3,000万円を必要とする事業を始めたいなら、自己資金を最低でも1,000万円は準備してください。これでもぎりぎりです。
○100万円の自己資金しかないのに、3,000万円の事業総予算の事業は始められません。これが現実です。受け入れてください。

◎大きな山を一度に超えることはできません。力相応の小さなステージを一つ一つ越えた後に、大きな夢を実現できます。

◆自社商品やサービスは、まず小さくても成功実績を作ってから、その後に優良な販路を求めてください。
「こんな商品・サービスを作りました。売ってくれる会社を紹介してください。」、突出してすごいものでない限り、この要望には応えられません。

○自社の商品やサービスは、まずは自分の力で販売実績を作ってください。売れている実績を示しながら、より優良な販路を開拓してください。
○実績のない商品やサービスを、優良企業は導入しません。
○実績のない商品やサービスを、第三者が斡旋することもありません。
※斡旋しても成就しません。

◎まずは自力で小さな販売実績を積み上げる以外に方法はありません。当初は、だれにも頼らず自分の力で小さな実績を積み上げてください。

◆優秀な人材が集まらないと嘆く社長様も少なくありません。
自社や自分の現状を棚にあげて、優秀な人材を求める社長様がいますが、これも無いものねだりです。

○良い会社になった時に、優秀な社員が入社します。
○今の実力相応の社員が入社してきます。鏡の原理です。
○まれに、将来性に賭けて入社してくれる人もいます。

◎優でない企業が優の人材を求めても無駄です。これも達観が必要です。まずは優のレベルになること、そうすれば優の人材が入社してきます。

■本当に何もなければ創業してはいけません。

金・人・モノ・販路…創業は、すべてないところから始まると言われますが、本当はそうではありません。本当に何もなければ創業してはいけません。

◆創業資金、これは絶対に必要です。借入金も含めて(自己資金の方が当然ベターですが)一円でも多い方が成功確率は向上します。間違えありません。
◆人、これは創業者自身を指します。ご自身の知見です。他に頼れる人は当面現れません。自分自身を唯一の人材と定義して、しっかり頑張っていきましょう。
◆モノ、これも創業者が創造できるモノでなければなりません。他には当面見つかりません。自らが創造していきましょう。
◆販路、これも最初はご自身で開拓してください。

創業は何もないところから始めるのではなく、自分以外には何もない、から始めてください。自分も含めて何もなければ始めることすらできません。故に、資金がなく、自分が頼りにならない創業は上手くいきません。

日本政策金融公庫の創業融資要件の本質はここにあるように思います。よくできた要件です。
※日本政策金融公庫の創業融資要件は以下です。
◎自己資金要件
◎経歴要件
○事業計画の蓋然性
○事業総予算の妥当性

創業の第一歩の踏み出し方は極めて重要です。
当事務所にご相談ください。

インターネットを経由して個人から中古品を買い取り、インターネットを経由して個人に販売するというビジネスモデルで起業したA社の1期目が終わりました。日本政策金融公庫からの創業融資の調達をお手伝いしたのがお付き合いの始まりです。

A社は、創業当初、利益率は低くても大量に販売すれば採算は合うという目論見で、他社よりも高い買取価格を設定していました。粗利益率が20%の設定です。しかし、粗利益率20%で向こう1年間の資金繰りシミュレーションを行ったところ、キャッシュフローを黒字化するためには、「資金が少ない」「事務所スペースが狭い」「人員も少ない」、という現在のリソースでは実現が難しい売上高が必須であることが分かりました。

よって、A社の社長様は料金の改定を含めた粗利益率の改善に取り組み、期末時点では粗利益率を30%程度にまで向上させることに成功しました。さらに5%程度は改善できる見込みです。A社の1年目は当然ながら赤字でしたが、自己資金と日本政策金融公庫の資金でつなぎながら、粗利益率30%~35%のビジネスモデルを確立することができました。

2期目に入った先日、今期の年間資金繰り計画をA社の社長様と立てました。一定のビジネスモデルは確立できたものの、現状のままでは、すぐに資金がショートする見込みです。まずは信用保証協会の保証付融資の調達に動き、500万円の資金を調達することができました。創業赤字の状態で資金調達ができるのはこれが最後ですので、この資金を使って何としてもキャッシュフローを黒字にしなくてはなりません。そのためのシミュレーションを行いました。

考え方としては2通りです。事務所の拡張、広告費、人材に資金を投入して一気にキャッシュフローの黒字化を目指す。もしくは、借り入れた500万円を出来るだけ使わないようにして、長く継続しながらチャンスをうかがう。前者の場合は計画どおりに売上が立たなければ、あっという間に資金不足に陥ります。後者の場合は、長く生きたところで今よりもじり貧になる可能性があります。

やはり前に攻めようということになり、その前提でシミュレーションを行ったところ、「現在300万円の月商を半年以内に600万円にしなくては資金がショートする。」という結果になりました。半年以内に売上を倍増させるためには、広告費を大きく増やさないといけませんし、事務所も広いところに移転しなくてはなりません。ただ、それを実行したところで、売上が必ず増えるという保証はありませんので、決断するのは大変難しいところです。

しかし、議論を重ねていくうちに、意外なところにボトルネックがあることが分かりました。A社は既に月商400万円程度の商品を持っているにも関わらず、人員不足でネットへの掲載が300万円程度しかできていないということです。売上が読めない広告費を投入するより、アルバイトを増員して掲載数を増やす方がよほど確実です。早速アルバイト代15万円の増加、売上高100万円の増加でシミュレーションを組み直してみると、資金繰りに余裕ができ、十分に実現可能な計画となりました。

中小企業は限られた資金で経営をしなくてはなりませんので、向こう1年程度の資金繰り計画を持つことをおすすめします。ポイントは、難しいものではなくシンプルな計画にすることです。

弊所では資金繰り計画の立案をお手伝いしております。ご活用ください。

日本電産は、著名なカリスマ経営者・永守重信氏の率いる巨大なモーター関連のメーカーです。赤字のモーター関連メーカーを次々と買収して、短期間で再建させ、グループ全体の売上高・シェアを拡大してこられました。
川勝宣昭氏(元日本電産取締役)の著書『日本電産永守重信・社長からのファクス42枚』(プレジデント社)を引用させていただいて、その成功の要因(のほんの一部)を紹介いたします。

■スピードこそ最大の武器…
「見積もりは24時間以内に出させよ」(永守重信会長)

日本電産の創業者・永守重信会長は、ご自身の著書『情熱・熱意・執念の経営』(PHP研究所)の中で、以下のように述べておられます。
「…最近わが社の傘下に入ったある会社と、日本電産の一番の違いはスピードです。その会社は、経営判断のスピード、そして決断してから実行するまでの時間がわが社の三倍ぐらいかかっていました。これ以外に、ほとんど問題点は見つかりません。高い技術力と優秀な人材、安定したマーケットも持っています。少し意識が低い社員、決断の遅い経営者がいただけで、赤字が百億円まで膨らんでしまったのです。いまの時代は、決断と実行のスピードの差が、そこまで会社の命運を左右します。…」

日本電産グループ企業のスピードを物語るエピソードが、川勝宣昭氏(元日本電産取締役)の著書『日本電産永守重信・社長からのファクス42枚』(プレジデント社)で紹介されています。
「…日本電産では「スピード」は社内スピードではなく、社外スピード、すなわち顧客とのスピードを意味します。…私が最初の任地、N社に着任して程なくして、永守社長から届いたファクスには「見積もりは24時間以内に出させよ」の文言が入っていました。それまでのN社は、営業マンが顧客からもらった見積もり依頼を、早くて1週間、遅ければ2~3週間もかけて届けていました。…開発や工場の見積もり担当者は、社内会議の合間合間に(見積もり作成を)やっているので、延び延びになるのです。
…営業マンがお客様のところに通いつめて、やっと見積り依頼をもらいます。…翌日午後には、(見積もりを持って)お客様を訪問することになります。これにはまず、お客様がびっくりします。そして、すぐに試作のオーダーをもらうことができるわけです。…」

現在は行われていないと川勝氏はおっしゃっていますが、日本電産の入社試験「早食試験」のエピソードは有名です。事前に社員が弁当を試食して、一番遅い社員の完食時間が10分だったので、入社試験では10分以内に完食した学生を無条件に合格させたとするエピソードです。入社試験にもスピードを取り入れていたようです。

■「2割の社員の支持があれば、改革は成功する。」
(永守重信会長)

川勝宣昭氏は同著の中で、以下の内容も紹介されています。
「…永守社長からの数百通におよぶファクスをもらいましたが、その中でこの『2割の社員の支持が、改革が始まる条件だ』という言葉は、時に辛酸、時に成功を味わいながら、何度も会社改革を経験した人でなければ引き出せない真実味がこめられている言葉だと思っています。…組織にはいろいろな人がいます。問題意識が高く、リーダーの改革に積極的に呼応する火ダネ社員、大勢が変わればそちらに引っ張られるが、普段は動かない様子見社員、改革に常に冷ややかな目で見ているシラケ社員ないしは抵抗勢力。この中で火ダネ社員は常に少数で、1割もいればいいほうでしょうか。現実はもっと少なく5%ぐらいかもしれません。改革の情熱に燃えるリーダーは、この混成社員集団に働きかけて、まず火ダネ社員をもっと燃えさせます。すると、火ダネ社員は積極的改革勢力となって周りに働きかけてくれるのです。次にリーダーは、この火ダネ社員と一緒に様子見社員に働きかけて、この動かなかった様子見社員を半燃焼状態からやがて燃焼状態に持っていきます。こうしてようやく2割のリーダーに対する支持勢力、火ダネ勢力を確保した瞬間から改革は動き出します。いままでとは嘘のように組織がスルスルと前向きに前進し出すのです。…」

日本電産の事業再建は、被買収会社の資産の切り売りも行わず、人員リストラも、役員陣もそのまま引き継いで、しかも、大勢の幹部を送り込むでもなく、進められるようです。川勝氏は単身で被買収会社に出向いておられます。資産の切り売りや人員リストラに代って行うのは、日本電産流の「意識改革」、2割を変えることなのでしょう。

※ご興味があればご購読ください。
『日本電産永守重信・社長からのファクス42枚』
〔プレジデント社・川勝宣昭氏(元日本電産取締役)著〕