中小企業経営者にとって、経営の鍵を握るひとつのアプローチ
が「ファイナンス思考」です。ファイナンス思考は、経済評論
家である朝倉祐介氏によって提唱され、中小企業経営者に向け
て幅広い成果をもたらしています。このコラムでは、ファイナ
ンス思考の基本的な要点とその中小企業における適用方法につ
いて解説します。

1.ファイナンス思考とは何か

ファイナンス思考は、従来の経営思考を進化させたものです。
経営者が財務戦略を組む際、単に資金調達や経費削減に留まら
ず、戦略的な視点で経営を捉えることを目指します。朝倉祐介
氏は、経営者がファイナンス思考を取り入れることで、収益の
最大化や持続可能な成長を実現できると考えています。

2.ファイナンス思考の要点

・キャッシュフローの重要性:ファイナンス思考では、キャッ
シュフローの管理が中心となります。キャッシュフローは企
業の生命線であり、資金調達や運転資金の確保に不可欠です。
経営者は、収入、支出、投資、借入、返済を的確に見極める
必要があります。

・リスク管理:ファイナンス思考はリスク管理を重要視します。
リスクは避けるべきではなく、適切に評価し、最小限に抑え
るべきです。ファイナンス思考の下で、リスク評価とヘッジ
戦略の構築が行われ、企業の安定性が向上します。

・効率的な資金調達:適切な資金調達戦略が中小企業の成長に
不可欠です。ファイナンス思考では、銀行融資、投資家調達、
資本市場への参入など、適切な資金調達手段の選択が焦点と
なります。また、返済計画の策定も重要です。

3.中小企業への適用

中小企業においても、ファイナンス思考は大きな成果をもたら
します。具体的なアプローチとして以下の点に注意が必要です。

・予算と予測:収益、費用、キャッシュフローに対する予算と
予測を策定しましょう。これにより、将来の課題を把握し、
適切な戦略を立てる助けになります。

・財務の透明性:財務情報を正確かつ透明に管理しましょう。
決算書や貸借対照表を定期的に確認し、経営の健全性を把握
しましょう。

・効果的なキャッシュフロー管理:キャッシュフローの進行を
リアルタイムで追跡し、資金不足や過剰資金を回避しましょ
う。

4.結論

ファイナンス思考は、経営者が持つべき重要なスキルの一つで
あり、中小企業にとっても適用可能です。このアプローチは、
企業の成長戦略の中で資金調達、リスク管理、収益最大化をバ
ランスよく組み合わせ、持続可能な成功をサポートします。

経済環境は変動的で、競争が激化する中、ファイナンス思考を
駆使することで、中小企業は市場での地位を強化し、持続可能
な成長を達成できます。経営者はファイナンス思考を学び、日
々の意思決定に活かすことで、より強固な経営基盤を築くこと
ができるでしょう。

ファイナンス思考は、単なる財務戦略に留まらず、経営の新し
い次元を切り拓くものです。経営者がこれを理解し、実践する
ことで、中小企業も大きな成功を収め、持続的な成長を果たす
でしょう。ファイナンス思考を武器に、ビジネスの未来を切り
拓いていきましょう。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

…前回号のつづきです。

税務に付加して、金融機関対応と財務に対する強みを有するこ
とを宣言する当事務所には、様々な相談が寄せられます。以下、
一部をご紹介させていただきます。

◆お悩み3:
『新店出店資金として2,000万円の調達を希望する旨を、
保証協会付融資で取引のある某銀行に依頼したが、新店出店の
ための希望調達額2,000万円に対して、保証協会から
1,000万円の保証しか取れない(※事前相談時の非公式な
コメントと推測できます。)、とする某銀行担当者のコメント
が返ってきた。』(相談者様)

◇決算書と足元の業績を確認させていただいたところ、確かに
資金調達はできそう、一方、2,000万円の希望金額は金額
が大きく容易ではないことが想定できました。また、某銀行は
規模の大きい銀行であり、この会社様がプロパー融資を受ける
ことが難しいことも推測できます。

○現状は…
・希望調達額2,000万円、調達候補先は保証協会保証付き
某銀行からの融資…1,000万円

○当事務所で、融資の戦略を練り直します。
・保証協会保証付き某信用金庫からの融資…1,000万円
・同じ某信用金庫プロパー融資…300万円~700万円
・日本政策金融公庫からの融資…700万円~300万円
ポイントは、保証協会付融資に付加してプロパー融資を引き受
けてくれそうな信用金庫(信用組合)を探して、さらに、日本
政策金融公庫にもお願いして、上記の3つの引き出しから合計
2,000万円を調達する協調融資を目論むことです。

◎当事務所にて、決算分析・出店計画書(返済計画書)を作成
し、某信用金庫と日本政策金融公庫に対して、合計2,000
万円の調達に動きました。当事務所が主体的に対応しています。
結果、合計2,000万円の出店資金の調達に成功しました。
希望通りの新店出店が実現しています。新規の借入れができそ
うな状況にあっても、その借入希望額が大き過ぎる?と想定さ
れるとき、この協調融資は大変有効です。当事務所では、多数
の実績をあげています。

※『協調融資』とは、複数の金融機関から、同時に同じ目的の
資金を合算して調達する資金調達手法です。一般的に言われる
『シンジケートローン』とは異なります。

◆お悩み4:
『二期連続赤字ですが、今期期中の足元の業績は急回復してい
ます。返済のみが長期間続いていて、資金繰りが厳しくなって
きました。今期決算は相応の黒字を計上できそうですが、決算
を待たずにこの段階で新規の借り入れは出来ないでしょうか。
金融機関の担当者に相談したら、決算が締まるまで待ってくだ
さい、と言われました。』(ご相談者様)

◇金融機関の貸出しの判断は、原則論として決算書を基準に行
います。期中の試算表で収益の改善を示しても、決算まで待っ
てください、となるケースは少なくありません。ただ、期中で
あっても、その業績の改善が顕著で、その改善状況をはっきり
と説明できれば、日本政策金融公庫や、信用保証協会の保証付
き融資を受けられる可能性があります。

○ご相談者様のケースでは、
・決算後9カ月が経過しており
・その収益改善の方法が明確であったこと
・その簡易キャッシュフローの額が、総借入額と比して大きか
ったこと(債務償還年数は約6年)
・明らかに債務超過でないこと
上記の事実を踏まえて、精度の高い試算表を整備して解説する
ことで、ご相談者様が希望される金額の融資を受けることがで
きました。

◎当事務所にて、決算分析・資金繰り表(実績と見込み)を作
成し、某信用金庫と日本政策金融公庫に対して、運転資金の調
達に動きました。金融機関対応は、当事務所が主体的に行って
います。財務目線で信憑性のある試算表作りと、資金繰りの実
態と予測をできるだけ正確に提供することが、融資成功のポイ
ントです。

※試算表の精度は総じて低い、金融機関はこのように考えてい
ます。作る側も「とりあえず…」と考え、費用や売上の計上漏
れを容認しているケースも少なくありません。金融機関に対し
て、経営の進捗状況を報告する資料であるならば、上記の緩さ
は看過できません。当事務所では、試算表を財務目線でより正
確に作成し、その分析資料を金融機関目線で作成・解説するこ
とで、クライアントの経営品質の高さを金融機関にご理解いた
だきます。上記のことが、二期連続赤字企業様が、期中で新規
融資を受けられた要因の一つです。

…次回号に続く

金融機関は「決算書」を拠り所として融資審査を行います。中
小企業の場合、税理士事務所が税務目線で作ることが多い決算
書ですが、金融機関は税務署ではありませんので、「税金が正
しく計算されているか。」ではなく、「貸したお金が本当に返
ってくるか。」という目線で見ています。よって、税務上は正
しい決算書であっても、提出された決算書をそのまま分析する
のではなく、財務の目線で修正しています。

下記にセルフチェックの手順をご紹介します。すべての金融機
関が必ず下記の手順で診断している訳ではありませんが、基本
的な考え方としてご了承願います。

1.損益計算書の修正および診断

◆減価償却不足を修正します。
減価償却の未計上は税務上問題ありませんが、利益が正しく計
上されないため、財務上は必ず計上します。よって減価償却不
足がある場合、「税引き後利益-償却不足額」で利益修正を行
います。

◆役員報酬を修正します。
役員報酬を減らして利益を大きく計上するなど、役員報酬は利
益の調整弁になりやすい項目です。役員報酬額を実際に必要な
生活費よりも過小に計上している場合は、「実際に必要な生活
費(※360万円程度)-役員報酬額」を税引き後利益から差
し引きます。反対に実際に必要な生活費以上の役員報酬を得て
いる場合は、「役員報酬額-生活に必要な生活費(※800万
円程度)」を税引き後利益に加算します。

​◆修正後の損益計算書を基に返済能力を診断します。
企業の返済能力は、「修正後の税引き後利益+減価償却費」で
求められます。この値がプラスであれば第1段階の診断はクリ
アです。マイナスであればプロパー融資を受けるのは難しくな
ります。

2.貸借対照表の修正および診断

◆不良資産を修正します。
資産の中から、実際は価値の無い資産を減算していきます。例
えば、回収不能な売掛金や貸付金、不良在庫、使途不明な仮払
金などは減算の対象です。販売先が破産を申し立てた場合、税
務上は破産手続きが完了するまで資産に計上しておかなくては
なりませんが、実態は回収見込みが薄いため、財務上は減算し
ます。

◆返済不要な負債を修正します。
社長個人からの借入金など、差し迫って返済が不要なものは負
債から減らすことが出来ます。

◆倒産しにくい会社かどうかを「自己資本」で判断します。
この場合も、修正後の貸借対照表を基に、「修正後の資産-修
正後の負債」で自己資本を算出します。損益計算書の診断結果
が良好で、この値もプラスであれば融資を受けられる可能性は
さらに高くなります。

以上、診断の結果はいかがでしたでしょうか。ひとつでもクリ
アできていない項目があれば財務面に問題を抱えていることに
なりますので、お早めにご相談ください。

税務に付加して、金融機関対応と財務に対する強みを有するこ
とを宣言する当事務所には、様々な相談が寄せられます。以下、
一部をご紹介させていただきます。

◆お悩み1:
すでに借入れのある銀行から追加の融資依頼(「借りませんか。」)
を受けています。資金にはある程度余裕があるようにも思いま
すが、融資依頼をお断りすることになぜか不安も残ります。
「どこまで借りればよいか?」と悩んでいます。どのような基
準で判断すればよいでしょうか?

◇当事務所(銀行融資プランナー協会)では、このような時に
は以下の基準をご提示して助言しています。

○近未来の資金繰り計画に沿って、
・資金繰り計画上十分な余裕資金を持つこと。
・資金繰り計画(売上計画)自体が下振れする可能性を踏まえ
て、それでも資金繰りに困らない資金を確保すること。保険を
掛けておくこと。
・金融機関は経営状態の良い時(晴れの日)だけ、融資依頼
(「借りませんか。」)を行う、この事実を理解すること。
悪くなれば(雨の日)、「貸せません。」の回答が返ってきま
す。

○一方、
・借り入れが膨らめば、その金利負担が膨らむこと。
・手持ち資金が潤沢になれば、余分なお金を使いたくなる趨勢
がある。
上記の様な長所と短所を天秤にかける必要があります。

近未来の経営状況を正確に読み切れるなら、最小限の資金で会
社は回せますが、近未来の経営に不確実性があるならば、余裕
を持つことが必要です。多くの会社様は後者ではないでしょう
か。結果として、当事務所(銀行融資プランナー協会)では、
「借りられる時に、借りられるだけ借りてください。」と助言
する場合が多くなります。

◎当事務所にて、簡易的な近未来の資金繰り表(標準・良い時・
悪い時)を社長様とミーティングしながら作成した結果、今回
銀行から提案された融資を受けることになりました。近未来の
資金繰り表を作成したことで、社長様は大いに安心されたご様
子でした。

※向こう6か月~1年先までの資金繰り計画は常に把握できる
ようにしてください。また、判断に迷うなら、借りてください。

◆お悩み2:
資金繰りが厳しくなってきたので、銀行の担当者にリスケジュ
ールを依頼しましたが、「せめて半分は返済し続けて欲しい。」
と言われています。半分も返済する余裕はありませんが、受け
付けてもらえません。どう対応すればよいのでしょうか?

◇(確認すると、試算表は提出しているものの、経営改善計画
書は作っておられませんでした。)銀行にリスケジュールを依
頼する時は、経営改善計画書が必要です。銀行は、この経営改
善計画書を基準に、リスケジュールの受け入れの可否や、返済
額の妥当性を判断します。一定期間返済猶予を受けることで、
その会社・個人事業者様の経営が健全化することがリスケジュ
ールの条件になります。返済猶予を行っても、経営が改善する
見込みがない時は、金融機関は返済猶予を受け付けません。返
済額を極小(0円)に圧縮することで、一定期間経過後に健全
化する経営改善計画書を作成することが必須でした。

◎当事務所にて、経営改善計画書を作成し、当事務所が主体的
に銀行対応を行った結果、スムーズに返済額0円でリスケジュ
ールを行うことができました。経営改善の期間は5年です。
一年後に再度リスケジュールに応じてもらうためにも(通常リ
スケジュール契約は一年毎に見直しを行います。)、銀行には
継続的な経営状況の報告が必要です。当事務所が継続的に銀行
とのやり取りを行います。

※リスケジュールを依頼する時は、経営改善計画書が必要です。
金融機関が「せめて半分は返済し続けて欲しい。」と言うのは、
返済額0円にすることで、一定期間経過後に、経営改善が出来
るとする経営改善計画書を提出していないからです。
…次回号に続く

企業の成長や変革には資金が欠かせません。その資金調達方法
の一つとして、銀行借入は多くの企業にとって最も身近な選択
肢です。しかし、企業のライフサイクルに応じて、銀行借入の
利用方法や条件は異なります。このコラムでは、企業のライフ
サイクルと銀行借入について考察します。

■ 初期のスタートアップ段階
新たなビジネスを立ち上げるスタートアップ企業にとって、資
金調達は生命線です。この段階では、自己資金、日本政策金融
公庫や保証協会の創業融資が主な資金源です。

■ 成長期の資金調達
スタートアップ企業が成長し、売上が増加する段階に入ると、
資金需要が高まります。ただ、借入や返済の実績はまだ少ない
ため、黒字転換や将来の収益見込みを示すことが、銀行の審査
に通るための鍵となります。また、保証人や担保の提供が求め
られることもあります。

■ 定着期と安定期
企業が市場で確固たる営業基盤を築き、安定的な収益を上げる
段階に入ると、銀行借入の利用が一層増えます。この時点での
銀行借入は、運転資金の補填や設備投資、M&A(合併・買収)
など、戦略的な資金調達として重要な役割を果たします。企業
の信用度が高まるため、より有利な条件で資金調達できること
があります。

■ 成熟期と後退期
企業が成熟期に入ると、新たな成長機会を見つけることが難し
くなることがあります。この段階では、効率化や収益最大化が
求められ、資金調達の必要性は低下する傾向があります。逆に、
後退期に入る企業は、銀行借入を返済することが難しくなる可
能性があるため、資金調達が困難になることがあります。

最適な銀行借入戦略を選択するために、企業は自身のライフサ
イクル段階を正確に評価し、資金ニーズを明確にすることが重
要です。また、銀行との信頼関係を築き、資金調達のプロセス
をスムーズに進めることが成功の鍵となります。企業の成長と
変遷に合わせて、銀行借入を上手に活用し、持続可能なビジネ
スを築きましょう。

少なくない経営者が金融機関対応に間違えた考え方を持ち込ん
でいます。真逆の対応をしておられる社長様も少なくありませ
ん。まず結論ですが、以下の3つを確認してください。

●1.『雨傘理論』ではなく『日傘理論』で考えてください。
●2.『借り手(会社)の論理』ではなく『貸し手(金融機関)
の論理』で考えてください。
●3.『困ったら借りる』ではなく『借りられる時に借りる』
で行動してください。

以下で解説いたします。

●1.×『雨傘理論』⇒ 〇『日傘理論』

金融機関にある傘はすべて『日傘』です。(一部の制度融資を
除く)金融機関は、資金を必要とする会社にお金を貸すのでは
なく、返済してもらえる会社に融資をします。必要だから、な
ければ困るから貸してくれ…この理屈は通りません。このよう
に返済できるから融資をお願いしたい…この論理展開が重要で
す。

金融機関に、困った会社への救済融資という商品『雨傘』は存
在しません。一部(コロナ融資等)の制度融資は特例です。

●2.×『借り手(会社)の論理』⇒ 〇『貸し手(金融機関)
の論理』

・今は資金が必要でないから借りない。金利ももったいない。
・今は資金が必要だから借りたい。
上記は『借り手の論理』です。

・今は経営状況が良いから融資できますよ。
・今は経営状況が悪いから融資できませんよ。
これらは『貸し手の論理』です。

経営状況が良くて、資金が必要な時には、双方の意向がマッチ
して、資金調達ができますが、経営状況が悪ければ、資金が必
要になっても資金調達はできません。

●3.×『困ったら借りる』⇒ 〇『借りられる時に借りる』

資金余力が十分でない会社は、自社の都合ではなく、貸し手の
都合に合わせて資金調達を継続すべきです。少しばかりの金利
は、保険と割り切りましょう。金融機関のお世話にならなくて
いいと思える確証を持てるまでは、金融機関(貸し手)の都合
を優先してお付き合いしましょう。他に方法がないからです。

◆パワーバランスの欠落は経営者にとって致命傷!

金融機関との関係も、他の利害関係者同様本来は対等であるべ
きです。自社がいくら立派になって、金融機関の支援を必要と
しなくても威張らない、逆に、自社の経営が逼迫していても、
金融機関に媚びる必要はありません。この前提で申し上げるの
ですが、それでもパワーバランスは変動します。自社が相対的
に弱ければ、相手の基準に合わせていかねば事が運びません。
創業から中小零細企業の多くは、金融機関に対しては、自社の
都合『借り手の論理』ではなく、相手の都合『貸し手の論理』
で行動するしかありません。このセンスを持ち合わせていない
経営者は、金融機関対応だけでなく、その他すべてのビジネス
シーンでミスを連発しているはずです。

重要な事なので繰り返しますが…

●1.『雨傘理論』ではなく『日傘理論』で考えてください。
●2.『借り手(会社)の論理』ではなく『貸し手(金融機関)
の論理』で考えてください。
●3.『困ったら借りる』ではなく『借りられる時に借りる』
で行動してください。

上記の3つの原則を守ってください。少なくない社長様が間違
えています。真逆の対応をしています。

卸事業を行うA社様の事例です。会社の幹部に経営を引き継ぎ
たいと考えており、そのための対策が求められていました。
事業承継時に最もよくある課題は下記の2点です。

1.事業を譲り受ける方が株式の購入資金を用意できない。
2.会社の借入に対して後継者個人が連帯保証をすることに
抵抗がある。

A社も同様に上記の課題に直面していました。
資本金は1,000万円(1,000株)ですが、幹部の方が
個人的に用意できる資金は100万円程度であり、過半数の議
決権も取れない状況です。

この問題は自己株の買い取りにより解決しました。自己株の買
い取りとは、社長が持っている株式を会社に売却する方法です。
会社が買い取った株式は議決権を持ちませんので、大半を会社
に売却することで、少数の株式でも経営権を後継者に引き継ぐ
ことができます。

まず、社長が保有している株式1,000株のうち900株を
900万円で会社に売却し、残り100株を100万円で後継
者に売却しました。これにより、後継者は100万円の資金で
100%の経営権を取得することができました。また、社長様
も当初出資した1,000万円全額を回収できました。

次に個人保証の問題です。政府は、できるだけ経営者の個人保
証をとらないようにしようと「経営者保証に関するガイドライ
ン」を定めましたが、実務上は銀行も保証協会も簡単には無保
証に応じてくれないのが現状です。この制度に最も積極的に取
り組んでいるのは日本政策金融公庫だと感じます。

A社も個人保証を入れた借入が3,000万円超ありましたが、
日本政策金融公庫より無保証で4,000万円の借入を行うこ
とができたため、既存の金融機関とは交渉しやすくなりました。
もちろん日本政策金融公庫は、既存借入の肩代わり資金として
融資をしてくれた訳ではありませんが、交渉が難航すれば一括
返済という最終手段で対応できます。

これらの事業承継対策は短期間に行った訳ではありません。特
に自己株の買い取りは、株価の問題もあるため、複数年に分け
て行っており、自己株式の買取資金についても、金融機関の協
力があって実現しました。

事業承継時にネックとなる問題は「資金」です。事業承継を考
えておられる経営者様は、是非ご相談ください。

当事務所、銀行融資プランナー協会の『新・税理士』は、その
突出した新サービス『資金繰り円滑化サービス』を開発し運用
しています。クライアント(候補)の様々な財務・金融事案に
対応できます。

今回は、その事例の一部概要を紹介します。

◆事例1.
創業融資の応用編、創業融資要件不足の補完と協調融資で15
百万円満額調達した事例。(飲食業A氏)

「自己資金5百万円で政策金融公庫に創業融資10百万円を申
し込みに行ったが、受け付けはしてくれたものの、ネガティブ
な対応を受けた」(A氏)と暗い表情で訪ねてこられました。
内容を確認すると、政策金融公庫の創業融資要件をいくつも満
たしておらず、このままでは融資が実行されないのは明らかで
す。一旦融資の申し込みを取り下げて、案件の再構築を行いま
した。提出書類の作り直しと申し込み金額の引き下げ、不足分
は他行との協調融資で満額の15百万円を調達しました。

◆事例2.
リスケ実行のための「経営改善計画書」の策定事例。多くの資
産を保有し、直近借入もあり、少々難解な事例です。
(サービス業B社様)

主要取引先との取引条件変更のために、売上が激減して窮地に
立っていた社長様が来所されました。直近に借入れた融資もあ
り、「金融機関はリスケに応じない」とのことでした。直近に
借入れを起こした金融機関との関係の調整等難航しましたが、
経営改善計画書を作り込んで元金返済0円のリスケを実行しま
した。

◆事例3.
約定返済が厳しくなる中で、「リスケやむなし」と来所された
社長様。借入れの一本化・返済期間の変更等で、リスケを行わ
ず、追加の資金調達を行った事例です。(広告企画業C社様)

「リスケしたいので相談に乗って欲しい。」と社長様が来所さ
れました。内容を確認すると、リスケではなく新規の借入れを
起こせる財務状況にありました。新たな借入れの実行と、既存
の借入れの一本化により、手元資金を確保した上で、返済を続
けています。

◆事例4.
リスケ実行中の社長様が相談に来られました。リスケの解消と
同時に追加資金調達を行った事例です。(製造業D社様)

リスケ中にもかかわらず、相当額の返済を続けている社長様が
来所されました。「メインバンクとはコミュニケーションがう
まくいっていない」とのことでした。返済額の減額か?と当初
考えましたが、内容を確認したところ、融資の他行組み換えに
よるリスケの解消と新規融資の実行で解決しました。手元資金
を新たに確保した上、正常先に格上げされました。

◆事例5.
借入れが困難な会社様に対する「資金繰り円滑化サービス」の
実施事例について。(食品加工業E社様)

「新たな借入れを起こしたい」と社長様が来所されました。内
容を確認すると、明らかに新規融資は受けられません。なぜ、
どの辺が無理なのか?どうすれば融資を受けられるようになる
のか?を説明して納得いただきました。「資金繰り円滑化サー
ビス」を受けながら、資金繰り対応を丁寧に行って経営に励ん
でおられます。

◆事例6.
業績が急激に伸びている会社様に対する「資金繰り円滑化サー
ビス」の実施事例について。(広告企画業F社様)

創業2年目でありながら、業績急成長の社長様がおられます。
「資金繰り円滑化サービス」の利用を始めていただきました。
当所が財務部長的な役割を果たします。必要な成長資金の調達
や、金融機関対応の煩わしさを肩代わりしています。
等々

当事務所は、財務・金融に突出した対応力を持っています。
資金は経営の血液です。厳しい時も、余裕がある時も、備える
ことが重要です。貴社のキャッシュフローの番人業務を当事務
所の『新・税理士』にお任せください。財務部長的な役割を担
います。まずは、ご遠慮なく相談ください。