借入には1年以内に返済期日が到来する短期借入と、返済期日
が1年超の長期借入があります。運転資金の借入は短期借入で
行うのが一般的でしたが、近年は運転資金の借入も長期で行う
ことが多くなっています。「長期運転資金」という名目です。

◆短期借入と長期借入の違い
短期借入と長期借入は、返済期間だけでなく、「返済原資」も
違います。返済原資とは、返済に充てられる資金のことです。

短期借入の返済原資は売掛金の回収金です。モノやサービスは
売れたが、代金の回収までに時間を要する場合、その資金ギャ
ップを埋めるために利用するのが短期借入です。よって、返済
は回収した売上代金で行います。赤字の会社でも短期融資を受
けられることがあるのは、返済原資が利益ではなく売上代金の
回収金であるためです。

一方、長期借入の返済原資は利益と減価償却費です。よって、
赤字、かつ将来も利益がでる見込みがない場合は、返済原資が
ありませんので長期借入は困難です。

◆短期借入と長期借入のメリット・デメリット
短期借入の返済方法は期日一括返済であることが多く、期日に
期限を延長してもらえるならば、ずっと返済をしなくても良い
というメリットがあります。しかし、期日に期限を延長しても
らえなかった場合は、まとまった返済資金を用意しなくてはな
らない点がリスクです。

長期運転資金は毎月一定の約定返済があるため、計画的に返済
をしていくことが可能です。しかし、1,000万円の資金ギャッ
プを埋めるために1,000万円の借入をしても、約定返済分は資
金が不足しますので、実際に必要な金額よりも余分に借りなく
てはならないという点がデメリットです。

◆短期と長期どちらで調達を行うべきか
資金繰りの観点から考えると、毎月発生する資金ギャップ(経
常運転資金)は約定返済のない短期借入で調達し、利益は返済
に回さずにキャッシュに積み上げることで資金繰りは安定しま
す。投資回収に長い年月を要する設備投資や、更なる売上拡大
に挑戦するための運転資金(増加運転資金)は、利益が出るま
でに時間を要するため、長期借入で調達した方が資金繰りは安
定します。

■事業体の収益や拡張性は、事業立地(誰に何を売るのか?)
とビジネスモデルで大半が決まります。マネージメントやマー
ケティングの上手下手は、それらの下位の概念です。マネージ
メントやマーケティングを考える前に、事業立地(誰に何を売
るのか?)やビジネスモデルに着眼してください。
時間が経過するほど、事業立地(誰に何を売るのか?)とビジ
ネスモデルの差が顕在化します。
お尋ねします。貴社は1.受注型ですか、2.プロダクト型で
すか、3.ストアー型ですか、4.プラットフォーム型を狙っ
ていますか?

◆1.受注型とは、建設業などの請負業、下請けと呼ばれる製
造業、個別事案ごとに対応するコンサルタント業等、顧客の要
望を受けて個別に製品やサービスを提供するビジネスの型です。
突出した技術やスキル、または対応能力(キャパシティー)を
有している企業は、価格競争に巻き込まれにくく、大きな収益
を上げています。
一方、顧客ごとの対応が必要になり、ビジネスとしての定型化
が難しい、また、売上が発注先の意向に左右されやすいために、
ビジネスとしての拡張性に難があるといわれています。突出し
た技術やスキル、または対応能力(キャパシティー)を有して
いる企業以外は、発注元の意向に沿った納期・価格が設定され
てしまい、価格主導権を握れません。ボリュームの大きい(単
価の高い)建設業等を除いては、BIGカンパニーになりにく
いビジネスモデルです。

◆2.プロダクト型とは、自らのサービスを商品化・定型化し
て、顧客に採用(購入)の可否を選択してもらうビジネス形態
です。もちろん、提供する商品やサービスが選ばれるに値する
価値を有していなければなりません。故に、徹底的に磨き込ま
れた強い商品・サービスでなければなりません。一点特化・絞
り込みが必要です。
徹底的に磨き込まれた強い商品・サービスを自らの意志で開発
し販売するこの型は、経営が効率的で、収益性と拡張性を担保
できます。何より、価格主導権を自社が握ることになります。
(今までの)エクセレント企業の多くは、(配下に多くの受注
型企業を抱えた)このビジネスモデルです。

◎一般論として、事業体は受注型からプロダクト型に進化して
いきます。受注生産から自社ブランドの製品開発・販売への移
行は正統派の戦略です。受注型の建売建設業から自社ブランド
のハウスメーカーへの移行例は多くみられます。個別対応のコ
ンサルタント会社は、ノウハウを商品化してプロダクト型に移
行します。

◆3.ストアー型とは、プロダクト型の横への拡張型を指しま
す。プロダクトで成功した事業体は、規模の拡大のために、総
じて横展開を始めます。力があれば、その業容を拡大できます
が、力が無ければ、あれも、これも…総花的で、弱い商品・サ
ービスの集合体になり下がります。分散症候群を患います。商
品・サービスの品ぞろえは、自社の実力との兼ね合い、力相応
でなければなりません。総じて力以上に幅を広げすぎるケース
が多いように感じます。規模の拡大と共に、収益力の低下が懸
念されるビジネスモデルです。

◎多くの中小企業は、事業の拡大を狙ってプロダクト型からス
トアー型に移行する時に、その商品やサービスの幅を広げます。
しかし、その幅の拡大が売上の増大に比して大きいため、その
生産性を著しく引き下げる結果を招きます。繁盛貧乏に陥りま
す。そして、この状態で停滞しています。『選択と集中』とは、
ストアー型をプロダクト型に戻すことです。プロダクト型の企
業は、ストアー型に移行せず、プラットフォームの構築を狙う
べきとの持論を持っています。

◆4.プラットフォーム型とは、『関連事業者や顧客が集まる
「場」を自社が創る』モデルです。精鋭の経営者は、このプラ
ットフォーム型を狙っています。フェイスブック、楽天、アマ
ゾン、アップル…すべてプラットフォーム型です。
容易ではありませんが、自社が狙う極めてニッチな分野に限定
すれば、実現できる可能性はあります。狙ってみましょう。

◆5.さらに付け加えるなら、プラットフォームを構築できた
精鋭企業は、このプラットフォームを活用して金融事業をはじ
めます。大きな収益を稼ぎ出しています。最後は金融事業です。

◎受注型はプロダクト型へ、ストアー型もプロダクト型へ、プ
ロダクト型はプラットフォームの構築を狙ってください。

■事業立地を見直して、かつ、ビジネスの型を転換する!

事業の立地、立ち位置をよく確認してください。
一歩隣を掘ってみませんか。
(僭越ながら)当事務所は、税務を担う「税理士」事務所に対
して、税務+財務を担う「新・税理士」業務を営んでいます。
「税理士」事務所は星の数ほどありますが、「新・税理士」は
極小です。これが事業立地の見直し、ポジショニングチェンジ
です。貴社にも応用できるはずです。
受注型の企業は、高付加価値、アッパーニッチの自社商品・サ
ービスを開発してプロダクト型企業に転身してください。収益
力と規模の拡大の両方を手中に収めることができるかもしれま
せん。ストアー型の企業は、絞り込んで(Simple化)プロダク
ト型企業に戻してください。分散を是正することで会社が劇的
に変わります。その上で、プラットフォームの構築を目指して
ください。

■経営者の仕事は、事業立地とビジネスモデルの検証・構築以
外にありません。

経営者の仕事は何?あれもこれも…たくさんありますが、重要
度で下位から消去して最後に残るのは、「事業立地とビジネス
モデルの検証・構築」です。であるにも関わらず、大半の経営
者はこれらの仕事をぞんざいにしています。創業時に考えたビ
ジネスモデルや、親から受け継いだビジネスモデルを進化・発
展させることなくただただ継続しています。ビジネスモデルは
時間と共に風化し、当然企業体も寿命を終えることになります。
最後にもう一度申し上げますが、経営にとって最も大切なのは
「事業立地とビジネスモデルの検証・構築」です。是非この機
会に仕事の優先順位を変えてください。「事業立地とビジネス
モデル」を少し変更することで、会社全体の生産性が2倍にな
るかも知れません。

金融機関対応に関して、よく頂戴するご質問と回答事例をまと
めました。回答は、あくまでも金融機関との円滑な関係構築を
目的としたものであり、税務面や経営面から見た場合は、また
違った回答になるかもしれません。ご了承願います。

Q:税務調査で指摘を受け多額の追徴課税を支払った。銀行は
今後も融資をしてくれるのか。
A:税務調査の指摘の多くは利益の過少申告ではないでしょう
か。過去の帳簿が間違っていたという点において、決して
ポジティブな事ではありませんが、実際はもっと利益が出
ていたということですので、その後の融資に影響を与える
ことはあまりありません。

Q:会社の資金でビットコインを購入しても問題はないか。
A:問題があります。事業資金として借りたお金を、事業以外
のことに使用した場合は資金使途違反です。多くの方が、
借りたお金ではなく自己資金を運用しているだけと主張さ
れますが、金融機関は堅実経営を好みますので、よほどの
余剰資金でない限り、投機的な経営姿勢そのものをネガテ
ィブに捉えます。

Q:立派な事業計画書を作成したにも関わらず融資を断られた。
A:融資審査において、最もプライオリティが高いのは、「未
来の計画」ではなく「過去の実績」です。未来は過去の延
長線上にありますので、机上の計画よりも、過去の実績を
しっかりと検証した方が、未来を正しく予測できるという
考え方なのでしょう。よって、過去の実績が当落線上より
も低い場合は、残念ながら、どんなに立派な事業計画書で
あっても効果的ではありません。事業計画書が効果を発揮
するのは、過去の実績が当落線上にある場合、もしくは、
過去の実績に比較して大きな金額を調達しようとしている
場合です。

Q:金利が安い金融機関に借り換えをしても問題ないか。
A:金額にもよりますが、一括返済、他行への乗り換えという
行為は、企業側が考えるよりも大きな影響を金融機関に与
えます。大変難しい判断です。企業として、経済合理性で
判断するのは正しいことですが、多少の金利の違いだけで
コロコロと金融機関を変える企業は好かれません。業績が
好調な間はそれでも金融機関はついてくると思いますが、
業績が落ち込んだ時に頼れる金融機関を失くしてはいけま
せん。金融機関は仕入先と同等と考え、どこかひとつは、
しっかりと信頼関係を築いておくことをおすすめします。

税務に付加して、金融機関対応と財務に対する強みを有するこ
とを宣言する当事務所には、様々な相談が寄せられます。前回
に続いて、一部をご紹介させていただきます。

■Q13:
「売上が安定しない。いつも不安がつきまとう。」

◆A13:
「売上が安定しない。いつも不安がつきまとう。」創業当初か
ら順調に業績を伸ばされ、初年度から2億円近い売上(税引き
前利益は700万円超です。)を計上された社長様からのご相
談です。極めて順調な立ち上がりですが、300万円の資本金
と、創業融資700万円、売上の割には小資本です。

○「再来月の売上が読めない。万が一、売上が急激に減少すれ
ば倒産するのではないか?日々不安だ。」とおっしゃっておら
れます。

・売掛金の回収サイトを、買掛金の支払いサイトよりも早く設
定することで、増加の運転資金を伴わない成長を実現されてい
ます。
・月末の現預金残高は多いように見えますが、月中は極小にな
っています。不安なはずです。

○近未来の資金繰りシミュレーションを当事務所で実施しまし
た。
※この「近未来の資金繰りシミュレーション」については、随
時対応させていただきます。ご相談ください。社長様の安心材
料になります。または、問題点が確認できます。

・最悪な状況、売上高が前年比で通年20%ダウン(社長様コ
メント)した時の近未来の資金繰り状況は?
〈結果〉赤字転落しますが、一年以内に資金繰りが切れること
はない。

・粗利益率が2%上がった(当事務所提示)時の資金繰り状況
は?
〈結果〉社長様の想定以上に資金繰り・利益が増えることの気
付き。

・当事務所より、資金調達計画を提示して、即刻資金調達でき
る(可能性大)旨を伝えて、この資金調達計画を資金繰り計画
に織り込みます。
〈結果〉社長様の不安の払しょくと、成長への確信を持たれる。

・新規の雇用計画、固定費増を織り込んで、近未来の資金繰り
計画を立案しました。
〈結果〉売上10%増、粗利益率2%増、固定費1,000万
円増…、資金調達3,000万円

○資金調達と継続的なフォローが重要です。

・上記計画に対する進捗管理を毎月行います。計画にずれがあ
れば、都度社長様と対応を協議します。
・必要な資金調達に関しては、当事務所が窓口になって適時行
います。
・資金のダムを作って、そのダムの高さを維持し続けています。
常に、月商の数か月分の資金を有しています。
・トラブルで、受注が一定期間滞った期間がありましたが、資
金余力があったために、慌てずに対応することができました。

◎当事務所は、上記の様なサービスをご提供できます。税務に
付加して、金融機関対応を含む財務の機能を提供する「資金繰
り円滑化サービス=財務部長の代行業務」です。貴社も是非導
入してください。

■Q14:
「資金繰りに時間が取られる。いつも気を使っている。」

◆A14:
余裕資金をほとんど持ち合わせていないために、月中の資金繰
りを行っておられます。10日の入金を15日の支払いに…、
日々の資金残高を気にしながらやりくりされておられます。
当所で診断した結果、借入れ余力は十分にあります。

○借入れ余力があるにもかかわらず、手持ち資金を極小にして、
その結果資金繰りに時間と神経を使っておられる社長様は少な
くありません。

・借入れに対する過度の嫌悪感がそうさせているのでしょうか?
・資金繰りを行うことも社長の仕事だと考えておられるのでし
ょうか?
・金利のコストが、社長の手間暇、社長が神経をすり減らすこ
とより高いと考えておられるのでしょうか?
・何かが起これば、最悪倒産の危機を迎えます。このリスクを
どう回避するのでしょうか?

◎月商の2か月分程度の資金を、通年を通して持ち続ける資金
計画を作成し、運転資金の調達、継続管理、借換えの継続実施
を当事務所が行っています。今では、「常に資金繰りを気にし
ながら生きてきた…早くこうすべきだった。」(社長様)とお
っしゃっておられます。
税務に付加して、金融機関対応を含む財務の機能を提供する
「資金繰り円滑化サービス=財務部長の代行業務」です。貴社
も是非導入してください。

政治家を通じて融資の口利きを依頼するという話を、しばしば
耳にしますが、実際のところ効果はあるのでしょうか。先日ご
相談をお受けした事例をご紹介します。

ホームページを見て来所されたA社長のご相談内容は、「資金
調達が上手く行かない・・・」ということでした。決算書を確
認したところ、融資を断られる原因であろう財務内容の問題点
が見つかりました。ただ、事業計画書を作成して説明をすれば、
資金調達の可能性はゼロではないと判断できるものです。

早速、事業計画書を作成して銀行を訪問しました。担当者は
30歳手前の若い方でしたが、要領を得た受け答えができる大
変印象の良い方でした。

まずは、財務分析結果をお見せしながら、銀行がどのように判
断しているかを確認していきます。結果、銀行が懸念している
点は、弊所にて事前に想定していた通りであることが分かりま
した。よって、次に事業計画書をお見せし、財務面の課題を解
決するストーリーを説明しました。

担当者は、「このストーリーなら本部を説得できるかもしれな
い。」と理解を示しましたが、その後、「ただ問題は・・・」
と神妙に話を切り出しました。話の主旨は次のとおりです。

・数か月前に県会議員が訪れてきて、同社に融資をするよう依
頼して帰った。
・その後、本部の方にも金融庁から連絡が入った。
・そのような形で圧力をかけてくるA社長に対して、支店長が
相当立腹しているため、当面は融資の検討すら難しいかもし
れない。

政治家に融資の口利きをしてもらうという事案は、コンプライ
アンスが厳しくなった近年では、かなり減っていると感じます。
また、その効果についても、政府系金融機関であれば少しは影
響力があるかもしれませんが、民間の金融機関に至っては、殆
ど効果はないと思います。

金融機関は、人が審査をするのではなく、仕組みで審査をする
方向に舵を切ってきましたので、仕組みで出した評価から大き
く逸脱する案件を取り上げることは難しくなっています。

無理に押し込もうとするのではなく、仕組みにアジャストでき
るよう、計画書等の説明資料を準備する方が効果的なようです。

税務に付加して、金融機関対応と財務に対する強みを有するこ
とを宣言する当事務所には、様々な相談が寄せられます。
前回に続いて、一部をご紹介させていただきます。

■Q11:
「新しい投資計画書を示しながら新規の融資を打診したが、計
画書の内容を確認するまでもなく、『融資は難しいです。(銀
行担当者)』」と言われた。

◆A11:
精魂込めて作り上げた投資計画書を確認してもらえない段階で、
融資を断られたことに納得がいかない様子の相談者様でしたが
…金融機関は、新規の融資を検討する時、まず、直近の決算書
(及び試算表)を確認します。この決算書と足元の推移が健全
であると判断した時に、新規融資の検討を開始します。健全で
なければ、新規融資の検討自体を行いません。

○直近の決算書(及び試算表)の確認方法は…
1.直近の決算書から簡易キャッシュフロー(税引き後利益+
減価償却費)を確認します。この簡易キャッシュフローの金額
が、現時点の借入総額の10分の1以上であることが最低条件で
す。
2.債務超過でないことが必要です。
※1又は2が突出して優良な時、または、提供できる担保があ
る場合など、上記の限りではありません。上記はあくまでも簡
易的な診断です。実際には、突っ込んだ財務分析を行います。

○1と2を満たす時、現時点においては健全である…と判断さ
れて、新規融資の検討、投資計画書の確認を始めます。直近の
決算書の確認で融資できないとなれば、当然投資計画書の確認
は行いません。

◎当事務所にて、診断を行った結果、新規融資を受けられる可
能性は極めて低いことがわかりました。相談者様に対しては、
融資を受けられない理由、どうなれば融資を受けられるのかを
ご説明して納得いただきました。

■Q12:
「リスケジュールの交渉中だが、直近に借入れた銀行分だけは、
返済額も少ないので返済を続けようと考えていたが、他の金融
機関が強硬に反対してきた。ダメなのか?」

◆A12:
数カ月前に融資を受けたばかりの金融機関にリスケジュールの
相談をしたら、厳しい口調で叱責されたそうです。であるなら
ば、その金融機関に対しては返済を続けて、他の金融機関には
リスケジュールをお願いしようと他の金融機関に相談したら、
他の金融機関に断られた、との相談です。

○融資の借入れを行ってすぐに返済猶予を求めることは、そも
そも返済できないことがわかっていたのに借入れを行ったので
はないか、との疑念を生みます。返済できないことがわかって
いて借入れを起こす行為は、信義に反します。程度加減によっ
ては法律に違反する犯罪行為になります。新規借り入れ直後の
返済猶予は認められないケースがあります。

○金融機関に対して返済猶予などの金融支援を依頼する時は、
衡平でなければならないとするルール「衡平性の原則※」
(=すべての金融機関に対して衡平に金融支援を受ける。)
が適用されます。ある金融機関にのみ返済を続ける、このよう
な例外は原則成立しません。この場合は、返済猶予依頼先の金
融機関の同意が得られません。
このままでは、すべての借入れに対してリスケジュールができ
ません。
※一部例外があります。

◎当事務所にて、状況の確認を行った結果、当該事象は、直近
借入後の予見不可能な緊急事態による急激な業績の悪化が原因
であり、借入れ時においては予見が難しかった旨を、対象金融
機関に丁寧に説明しました。一部担保(実質価値は小さい)を
追加で提供して了解を得ました。(これも厳密に言うと「衡平
性の原則」から外れますが。)
借入先の全金融機関からリスケジュールの承諾を得ることがで
きました。
当事務所が、モニタリングを継続し、会社様のサポートと金融
機関への窓口業務を担っています。

弊所の顧問先様で、創業から順調に業績を伸ばしているA社が
あります。もちろん営業的な面が上手く行っていることが主な
要因ですが、借入れをしなくても資金繰りに困らない取引条件
でビジネスをスタートできたことも大きな要因です。

信用力が低く銀行借入れが困難なスタートアップ企業は、仕入
や人件費等の支払日より、売上金の入金が先にくるよう、販売
先や支払先と交渉しなくてはなりません。もし支払日が1日で
も前になってしまえば、売上金が入金されるまでの立替資金が
必要になるため、銀行等の協力が成長の絶対条件となってしま
います。

A社は、売上は末締めの翌月末回収である一方、仕入は25日締
め翌々月5日払いとしています。毎月末日に回収した資金を5日
の支払資金に充てることができるため、銀行の協力がなくても
大きく売り上げを伸ばすことができました。

他にも、支払日を翌月にずらすメリットはあります。月末時点
の現預金残高が大きくなるというメリットです。たとえ5日後
には現預金残高が半減するとしても、試算表等は末日で作成し
ますので、試算表の上では、現預金の残高が膨らみます。当然
買掛金も膨らむため、安全性分析ではそれほど変わりませんが、
単純に現預金残高を評価する金融機関もあるため、財務面でも
有効です。

もうひとつA社が優れている点は、仕入の平均支払サイトを55
日にできた点です。A社の代表は支払日を5日後ろにずらすだ
けでなく、締日を5日前にする交渉も行いました。結果は同じ
はずですが、支払日を10日伸ばす交渉よりも、支払日を5日伸
ばして締日を5日前倒しする交渉の方が通りやすかったようで
す。

この10日は中小企業にとって大変大きなインパクトがあります。
「支払を先延ばししたところで、いつかは払わなくてはならな
いのだから一緒でしょう?」とおっしゃる方もいらっしゃいま
すが、企業は永遠に生き続けますので、払わなくてはならない
日は訪れません。

月の仕入額が1,000万円であれば10日分の333万円は永遠に買掛
金となります。仕入額1億円になれば3,333万円です。無利子か
つ返済不要の借入と同じ効果です。

取引条件に強く拘っている中小企業様は少ないと感じます。
取引条件がキャッシュフローに与える影響をしっかりと理解し、
もっと強く拘ってみてはいかがでしょうか。

税務に付加して、金融機関対応と財務に対する強みを有するこ
とを宣言する当事務所には、様々な相談が寄せられます。
前回に続いて、一部をご紹介させていただきます。

■Q9:
『融資依頼を行ったら銀行の担当者に「役員報酬が少ない。」
と言われた。役員報酬が少ないと借入れが受けられないのか?』
(相談者様)

◆A9:
融資依頼をするために決算書を提示した時に、出入りの銀行の
担当者が「役員報酬が少ないですね。」と言ったそうです。併
せて、新規の融資に難色を示されたので、相談者様は役員報酬
が少ないと借入れが受けられないのか?との疑問を持たれたよ
うです。

○金融機関が新規の融資を検討する時には、まず現状の財務の
健全性を確認します。
・簡易キャッシュフロー(税引き後利益+減価償却費)を確認
します。
・この簡易キャッシュフローの要素となる税引き後利益を確認
するために、販売管理費も確認します。
・この時、役員報酬が過少であれば、本来はもっと役員報酬が
必要となるため、税引き後利益が少なくなるのではないか?と
考えたと推測できます。
・金融機関が考える役員報酬額に置き換えた時、簡易キャッシ
ュフローが極小であったため、新規融資に難色を示されたよう
です。

○役員報酬の多い・少ないではなく、実態の税引き後利益がポ
イントです。

※融資審査時の財務診断は他にもあります。簡易キャッシュフ
ローの診断はほんの一部です。

◎当事務所にて、診断を行った結果、奥様の所得が給与に計上
されており、社長様の役員報酬は過少であっても、世帯所得は
常識の範囲内である、役員報酬額の是正(税引き後利益の減額
補正)は必要ない旨を、銀行担当者に説明することで、理解を
得ました。誤解を解きました。金融機関との折衝は、当事務所
が行いました。必要な金額の新規融資を調達できています。

■Q10:
「雨が降ってきたから傘(お金)は貸さない、晴れている時は
傘(お金)を貸すと言う」銀行とはどんなところだ?(憤り)

◆A10:
6か月前に融資を受けませんかとの提案をいただいたそうです。
その時は断ったが、その後、主要な取引先との取引がなくなっ
て、業績が悪化して赤字に転落しています。(試算表ベースで
大赤字です。)同じ銀行に融資依頼を行うも、「融資できない
(銀行担当者)」との回答だったそうです。

○金融機関は総じて、「雨が降っている時には傘を貸しません。
晴れたら傘を貸しに来ます。」金融機関にあるのはすべて「日
傘」ですから当然です。金融機関にある傘はすべて「日傘」で
あって「雨傘」ではないことを理解してください。金融機関対
応はこの趨勢を理解して行わないと本事案の様な間違えを起こ
します。

※「雨傘」は、国策としての制度融資や制度保証として時々貸
し出される例外です。

◎当事務所にて財務診断を行いましたが、足元の業績の悪化が
顕著で、新規借り入れの返済原資となるキャッシュフローの見
込みが立ちません。新規の借入れは無理です。

・経営改善計画書を作成して既存借入れのリスケジュール(返
済金額0円)を即座に実行しました。
・資金繰りシミュレーションを継続的に行いながら、資金ショー
トの回避と収支バランスの改善に、財務部長として継続してご
支援させていただいています。
当事務所のサービス「資金繰り円滑化サービス(財務部長の代
行業務)」を導入いただいています。社長様の経営改善を資金
繰り・財務面で継続的にサポートできています。収支改善の目
途が付けばいち早く、資金調達にもチャレンジします。
(この時は、リスケジュールを同時に解消します。)

※本事案においても、6か月前に提案された融資を受けておれ
ば、経営改善のための手持ち資金に余裕が持てたはずです。本
事例については、是非記憶に留めてください。