多くの企業様がコロナ関連融資を利用していますが、そろそろ
返済が始まる時期だと思います。コロナ関連融資は特殊な融資
であり、返済能力をある程度無視して実施されたため、返済に
不安を感じている企業様も多いのではないでしょうか。

ケース別に対処方法を考えてみます。

■念のため借入したが実際には使わずに済んだ企業様
有事に対応するためコロナ融資を受けたものの、実際はコロナ
の影響を受けずに済んだ企業様は、借りた資金がそのまま銀行
口座に残っているはずです。利息が発生する前に一括返済する
のも良いのですが、コロナ融資はおそらく2度と受けられない
融資です。利息を払ってでも手元に置いておき、有事の備えや
新規事業に充てるのも一つの考え方です。

■総借入額の10分の1以上のCFが出ている企業様
決算書上の純利益と減価償却費を合わせた金額をキャッシュフ
ロー(CF)と言います。企業の返済能力を示しています。
コロナ融資を含めた総借入額が3,000万円として、その
10分の1(300万円)以上のCFが出ている場合は、新規
借入や借換を計画的に行い、年間の返済額を調整しながら借入
を減らしていくのが基本線です。

■総借入額の10分の1以上のCFが出ていない企業様
自社の返済能力とくらべて、借入過多に陥っている状態です。
業績の改善によりCFを増やすことが最善ですが、簡単にでき
ることではありません。早い段階でリスケジュールを依頼し、
支出を止めることを検討しましょう。誰しもリスケを行うのは
気が進みませんが、この判断が遅れると取り返しのつかない状
況に陥ります。

自社の収入(キャッシュフロー)、現預金資産と借入残高のバ
ランスを見て、今のうちから対処方法を検討しておきましょう。

対処方法が良く分からないという場合は、是非、早めにご相談
ください。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

我々、銀行融資プランナー協会の『新・税理士』は、その突出
した新サービス『資金繰り円滑化サービス』を開発し運用して
います。クライアント(候補)の様々な財務・金融事案に対応
できます。

今回は、その事例の一部概要を紹介します。

○ 事例1.
創業融資の応用編、創業融資要件不足の補完と協調融資で15百
万円満額調達した事例。(飲食業A氏)

「自己資金5百万円で政策金融公庫に創業融資10百万円を申し
込みに行ったが、受け付けはしてくれたものの、ネガティブな
対応を受けた」(A氏)と暗い表情で訪ねてこられました。
内容を確認すると、政策金融公庫の創業融資要件をいくつも満
たしておらず、このままでは融資が実行されないのは明らかで
す。一旦融資の申し込みを取り下げて、案件の再構築を行いま
した。提出書類の作り直しと申し込み金額の引き下げ、不足分
は他行との協調融資で満額の15百万円を調達しました。

○ 事例2.
リスケ実行のための「経営改善計画書」の策定事例。多くの資
産を保有し、直近借入もあり、少々難解な事例です。(サービ
ス業B社様)

主要取引先との取引条件変更のために、売上が激減して窮地に
立っていた社長様が来所されました。直近に借入れた融資もあ
り、「金融機関はリスケに応じない」とのことでした。直近に
借入れを起こした金融機関との関係の調整等難航しましたが、
経営改善計画書を作り込んで元金返済0円のリスケを実行しま
した。

○ 事例3.
約定返済が厳しくなる中で、「リスケやむなし」と来所された
社長様。借入れの一本化・返済期間の変更等で、リスケを行わ
ず、追加の資金調達を行った事例です。(広告企画業C社様)

「リスケしたいので相談に乗って欲しい。」と社長様が来所さ
れました。内容を確認すると、リスケではなく新規の借入れを
起こせる財務状況にありました。新たな借入れの実行と、既存
の借入れの一本化により、手元資金を確保した上で、返済を続
けています。

○ 事例4.
リスケ実行中の社長様が相談に来られました。リスケの解消と
同時に追加資金調達を行った事例です。(製造業D社様)

リスケ中にもかかわらず、相当額の返済を続けている社長様が
来所されました。「メインバンクとはコミュニケーションがう
まくいっていない」とのことでした。返済額の減額か?と当初
考えましたが、内容を確認したところ、融資の他行組み換えに
よるリスケの解消と新規融資の実行で解決しました。手元資金
を新たに確保した上、正常先に格上げされました。

○ 事例5.
借入れが困難な会社様に対する「資金繰り円滑化サービス」の
実施事例について。(食品加工業E社様)

「新たな借入れを起こしたい」と社長様が来所されました。内
容を確認すると、明らかに新規融資は受けられません。なぜ、
どの辺が無理なのか?どうすれば融資を受けられるようになる
のか?を説明して納得いただきました。「資金繰り円滑化サー
ビス」を受けながら、資金繰り対応を丁寧に行って経営に励ん
でおられます。

○ 事例6.
業績が急激に伸びている会社様に対する「資金繰り円滑化サー
ビス」の実施事例について。(広告企画業F社様)

創業2年目でありながら、業績急成長の社長様がおられます。
「資金繰り円滑化サービス」の利用を始めていただきました。
当所が財務部長的な役割を果たします。必要な成長資金の調達
や、金融機関対応の煩わしさを肩代わりしています。

等々

当事務所は、財務・金融に突出した対応力を持っています。

資金は経営の血液です。厳しい時も、余裕がある時も、備える
ことが重要です。貴社のキャッシュフローの番人業務を当事務
所の『新・税理士』にお任せください。財務部長的な役割を担
います。

まずは、ご遠慮なく相談ください。

ある顧問先様から「実は試算表の見方が良く分かっていないの
ですが・・・」と告白されました。経営の経験が10年近くにな
る社長様でしたが、よく考えると試算表の見方を知識として習
得する機会はそれほど無いことに気づかされます。

試算表からは経営に必要な様々な情報が読み取れます。知れば
知るほど奥行きがありますが、まずは業績管理の資料として損
益計算書を毎月確認することから始めるのが良いと思います。

■ 確認ポイント1「売上高」
売上高の確認が必須です。単純に結果だけを見るのではなく、
前年同月や前月などと比較して見ることが重要です。比較して
見ることで増減の要因やトレンドを把握することができます。

■ 確認ポイント2「粗利率」
売上高から原価を差し引いたものを粗利益と呼び、粗利益が売
上高に占める割合を粗利率と言います。売上だけしか見ていな
いと、利益を度外視した売上至上主義に陥ってしまいますので、
売上高とセットで粗利率も必ずチェックしましょう。頑張って
売上を伸ばしたにも関わらず赤字になったという事態に陥らな
いよう気をつけてください。

試算表を経営に活かしたいと考えているならば、目標数値を売
上高ではなく粗利額とし、売上高と粗利率をコントロールして
粗利額の極大化を目指すことをおすすめします。粗利額を目標
とすることで、営業一辺倒の施策だけでなく、仕入や外注の効
率化による原価低減や、商品やサービスレベルの向上による付
加価値のアップなど、施策の選択肢が広がります。

試算表に頼らず経営をしていらっしゃる経営者もたくさんいら
っしゃいます。しかし、自身の頭の中だけでは把握できないぐ
らいの規模に事業を成長させるためには、試算表を活用できた
方が間違いなく有利です。

税理士さんから受け取った試算表を机の上に置きっぱなしにせ
ず、まずは売上高と粗利率を確認する習慣を身に着けてはいか
がでしょうか。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

■社長にとって一番達成感を感じるのはどんな時でしょうか?

○某社の決算報告会の様子です。増収増益の素晴らしい決算で
す。決算賞与に昇給、懇親会での楽しそうな食事風景、従業員
からの感謝のメッセージ、社長冥利に尽きるはずです。

○自社の提供する商品やサービスに対する、顧客からの感謝の
声をいただいた時、これもうれしいはずです。

○従業員の成長を実感できる時、これもこの上ない喜びです。

■社長にとって一番つらいのはどんな時でしょうか?

○資金繰りに窮する時です。資金繰りという業務は、経営の中
で最も程度の低い仕事です。それでも、厳しくなれば最優先で
行わねばならない業務だからたちが悪いのです。上手くいって
当たり前、上手くいってもプラスではありません。マイナスが
ゼロになるだけです。上手くいかなければ経営破たんです。出
来れば、資金繰りに窮することが一生涯無いように経営したい
はずです。

■資金繰りを気にしない経営を目指しませんか?

○今、資金繰りに全く問題の無い社長様

保険を掛けましょう。資金余力をさらに積み増しましょう。銀
行から借り入れができるなら、さらに借り増ししましょう。金
利は保険です。「(将来)資金繰りに窮することはなかったけ
ど、余分な金利をたくさん払ってきたな。」こう言えたら最高
です。一番つらいことを回避できたからです。

○今、資金繰りに苦労されておられる社長様

秘策はありません。現実を受け止めて、できる対応をアカデミ
ックに実行することです。短期間では無理でも、三年の計で対
策を施せば、資金繰りの苦労から解放される日も来ます。今す
ぐ手だてを始めましょう。

■我々、銀行融資プランナー協会は、税務顧問業務に付加して
「資金繰り円滑化サービス」を提供できます。

○今、資金繰りに全く問題の無い社長様には、未来に向けての
さらなる安心を提供いたします。

・投資やコスト増等、経営判断が資金繰りに与える影響を診断
し、「近未来の資金繰り計画書」を継続的に提供いたします。
・必要な金融機関対応は、我々が主体的に行います。わずらわ
しさが激減します。

○今、資金繰りに苦労されておられる社長様には、最善の方法
を提案いたします。
・「近未来の資金繰り計画」を基準に、最善の行動指針を提案
いたします。
・必要な金融機関対応は、我々が主体的に行います。わずらわ
しさが激減します。

経営の三要素は「人」「もの」「資金」と言われます。何が最
も重要かとする議論はさて置き、「資金」がなければ何も始ま
りません。また、「資金」がなくなればすべてが終わってしま
います。「資金」は、経営の必要条件なのです。

「資金」を気にせずに、「人」と「もの」に集中するためにも、
最初に「資金」を気にしてもらいたいと思っています。我々は、
「キャッシュフローの番人」として、貴社の資金繰りを継続的
にサポートさせていただく用意があります。今、資金繰りに全
く問題の無い社長様も、今、資金繰りに苦労されておられる社
長様も、規模の大小にかかわらずご相談ください。

新規資金調達と既存借入の借り換えにより、リスケジュールを
回避した事例をご紹介します。下記A社は、「資金繰りが厳し
いので借入のリスケジュールを検討している。どのように進め
ればよいか?」というご相談で来所されました。

会社名:A社(仮称)
事業内容:広告デザイン業
営業年数:22年
資本金:2,000万円
直近売上高:約1億円
直近純利益:約▲300万円
有利子負債総額:約3,400万円
自己資本:約200万円

まず直近の決算書を拝見したところ、売上高が急激に落ち込ん
でおり、純利益は2期連続で赤字という状況でした。しかし、
足元の試算表を確認すると、9カ月経過時点で424万円の経
常利益が出ています。人員を減らすなど、固定費削減努力の効
果のようです。

当初はリスケジュールのご相談でしたが、リスケジュールはデ
メリットもあるため、出来れば避けたい手段です。足元の利益
が継続できれば、新たな資金調達と既存借入の返済期間を長期
化することで資金繰りが改善できると考えました。

早速説明資料を作成し、ある信用金庫の担当者に借り換えの相
談をしました。財務状況にいくつか問題点はあるものの、毎月
70万円を返済してきた実績を評価していただき、前向きに取
り組んでいただくことになりました。結果は次のとおりです。

【既存借入の状況】
・K銀行保証付融資残高27,674千円(返済額374千円)
・日本政策金融公庫残高6,300千円(返済額300千円)
・合計借入残高33,974千円(合計返済額674千円)

【借り換え後】
・H信金保証付融資11,202千円(返済額133千円)
・H信金プロパー融資16,472千円(返済額196千円)
・日本政策金融公庫10,000千円(返済額142千円)
・合計借入残高37,674千円(合計返済額471千円)
新規の資金調達が3,700千円できた上で、毎月の返済額を203
千円引き下げることができました。

H信金の担当者によると、「直近の決算が赤字の場合、新規で
取り上げるのは通常難しいが、返済が可能であることを、資料
で丁寧に説明いただいたことが良かった。」と仰っておられま
した。リスケジュールをする前に、借り換えという選択肢も検
討してみてください。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

長引くコロナ禍、原料価格の高騰等々、資金繰りが悪化する企
業様も増えてきました。一方、業績改善の見られない会社様へ
の新規融資は厳しくなっています。新規の借入ができない会社
様は、早めにリスケを検討してください。

■リスケジュールとは…

金融機関への返済を一定期間猶予してもらうことで、経営の改
善・安定化を図る施策、これも財務戦略の一つです。リスケジ
ュール、リスケと呼びます。

リスケジュールとは、予定を変更することです。その大半は、
予定を延ばすこと、金融の分野では債務の返済計画を変更して、
返済を繰り延べることを意味します。すべての金融機関の同意
と、衡平(※)な割合での繰り延べが必要です。

※衡平性の原則…返済猶予を受ける時は、すべての金融機関に
対して原則同じ条件で依頼しなければなりません。A行には返
済しながら、B行には返済しない、これは衡平性の原則に反し
ます。(一部例外もありますが)

■リスケジュールを受けられる条件は…

一定期間返済猶予を受けることで、その会社・個人事業者様の
経営が健全化することが条件になります。返済猶予を行っても、
経営が改善する見込みがない時は、金融機関は返済猶予を受け
付けません。

・「経営がうまく行っていません。返済する資金がありません。
経営が改善する見込みも立ちません。」
このケースは、リスケジュールを受け付けてくれません。
・「短期的に資金繰りが厳しい状況です。中期的にこのように
経営は改善していきます。一時的に返済を猶予いただきたい。
経営改善の計画は、経営改善計画書で提示します。」
リスケジュールが認められるのは、このようなケースです。

■経営改善計画書作成及びその後の対応のポイントは…

金融機関の同意を得るために必要な計画書を経営改善計画書と
呼びます。
※経営改善計画書は、金融機関に提出するためにも必要ですが、
その本質は経営改善の道標です。

1.経営改善計画の期間は最長5年以内が目安です。

・金融機関目線の経営の健全化・健全な財務とは、債務償還年
数が10年以内、かつ、資本正(債務超過でない)であること
です。
・5年以内に、単年度の簡易キャッシュフロー(=減価償却費
+税引き後利益)が、純債務の10分の1以上(債務償還年数
10年以内)に到達しなければなりません。併せて、資本正の
状態に仕上げる必要があります。

●過度に短期間で完了する経営改善計画書はお勧めできません。
結果として、早期の完了は問題ありません。5か年計画をお勧
めします。

2.リスケジュール中には、新たな金融支援は受けられません。

・金融機関からの新たな資金調達を行わずに、手持ち資金のみ
で資金繰りを回し続ける計画が必要です。
・リスケジュールの依頼は、手持ち資金を持ち合わせた状況で
行わないと、その後の資金繰り計画が立ちません。ある程度の
手持ち資金を残した状況で行います。
・同様に、リスケジュール中は、極力返済金額を極小(可能で
あれば0円)に設定します。手持ち資金のみで経営改善を完遂
するためには、一定の資金が必要です。

●リスケジュールは、一定以上の手持ち資金がある状況で行い、
かつ、リスケジュール中の返済金額は極小に設定することをお
勧めします。

3.リスケジュール計画は、原則毎年1回更新されます。2年
以上のリスケジュールを金融機関が受け付けるケースは稀です。

・5か年計画に沿って、その進捗を適時金融機関に報告しなが
ら経営改善を進めます。
・計画に変更があれば適時計画を見直します。
・金融機関は、経営改善計画に沿って、リスケジュールを受け
付けた会社様を、継続的にモニタリングする必要があります。
継続的に経営状況がわかる資料の提出が必要です。

※モニタリング頻度は、状況によって変わりますが、毎月また
は3ヶ月毎が一般的です。

●リスケジュール中の金融機関対応は、特に丁寧に行ってくだ
さい。

金融機関への返済で資金繰りが悪化している局面において、足
元の経営状況を鑑みて新規の借入れが出来ない状況が続きそう
な時は、リスケジュールの検討が必要です。この時は、経営改
善計画書の立案・提出が必須です。

銀行融資プランナー協会の正会員事務所である当事務所は、財
務戦略の一環として、時に最善なリスケジュール戦略のご提案
と経営改善計画書の作成、その後の継続的な金融機関対応を行
います。
まずは、早めにご相談ください。

財務の教科書には、借入は少なく、自己資本を厚くと書かれて
います。借入(負債)が増えると自己資本比率が悪化するため、
できるだけ借入はしないようにというのが財務のセオリーです。

実際に大企業は余分な借入をしないよう資金管理を行っていま
す。しかし、中小企業が大企業の戦略をそのまま見習うのは大
変危険です。信用力に劣る中小企業は、借りたいときにいつで
も借りられるとは限らないためです。

ギリギリの手元資金で資金繰りを回していた場合、ちょっとし
た引っ掛かりで資金ショートが起きてしまいます。大企業であ
れば、事前に設定された信用枠の範囲内で機動的に資金調達が
可能ですが、中小企業の場合は、都度審査が必要になります。

入金が遅れたり回収不能が原因で資金がショートするとなると、
融資審査はより慎重になるため、不測の事態が起きてからの調
達は大変難しいものになります。

中小企業は、自己資本比率を気にせず、借入ができる時に最大
限の借入をしておくことが望ましいです。極端な例ですが、使
うあてのない融資でも借り入れて、別口座でほったらかしにし
ておくだけでも意味があります。

これは有事に対する備えです。経営状態が悪くなった時に銀行
が融資をしてくれないのであれば、経営状態が良い時に借入を
して、キャッシュを手元に置いておくことが備えになります。
借入金に手をつけなければ、借入と同額の預金を有しているだ
けですので何らリスクはありません。デメリットは金利が発生
することですが、いざと言う時に資金を確保できる保険料と考
えれば納得できます。

口座に大金があると気が大きくなり、気前よく使ってしまう経
営者様もたまにいらっしゃいますが、目的はキャッシュポジシ
ョンを高めることですので、その点は注意が必要です。

借りられる時に借りられるだけ借りておく戦略は、教科書通り
の財務戦略ではありませんので、財務を学んだことのある方か
らすれば少し違和感があるかもしれません。銀行の担当者も眉
をひそめるかもしれませんが、中小企業が生き抜くためには、
これもひとつの正しい戦略です。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

…前回号のつづきです。

未来人材ビジョン(経済産業省、令和4年5月)について、ま
とめの章【5.結語】を引用して紹介いたします。

『デジタル化や脱炭素化といったメガトレンドは、必要とされ
る能力やスキルを変え、職種や産業の労働需要を大きく増減さ
せる可能性がある。こうした中、未来を支える人材を育成・確
保するには、雇用・労働から教育まで、社会システム全体の見
直しが必要である。

これから向かうべき2つの方向性を示したい。
◆1.「旧来の日本型雇用システムからの転換」
◆2.「好きなことに夢中になれる教育への転換」

「旧来の日本型雇用システムからの転換」とは、人的資本経営
を推進することで、働き手と組織の関係を、閉鎖的な関係から、
「選び、選ばれる」関係へと、変化させていくことである。多
様で複線化された採用の「入口」を増やしていくことでもある。
これらを通じて、多様な人材がそれぞれの持ち場で活躍でき、
失敗してもまたやり直せる社会へと、変化していく。

「好きなことに夢中になれる教育への転換」とは、一律・一斉
で画一的な知識を詰め込むという考えを改め、具体的なアクシ
ョンを起こすことである。一人ひとりの認知特性・興味関心・
家庭環境の多様性を前提に、時間・空間・教材・コーチの組み
合わせの自由度を高める方向に転換し、子どもたちが好きなこ
とに繰り返し挑戦したくなる機会を増やしていく。

これらの方向性へと向かうための具体策を、以下に示したい。

◆1.旧来の日本型雇用システムからの転換

(1)人を大切にする企業経営へ

●具体策1:人的資本経営に取り組む企業を一同に集め、互い
を高め合いながら、変化を加速させる「場」を創設するべきで
ある。

●具体策2:インターンシップの適正化を図る一方で、学生の
就業観を早期に培い、目的意識を持った学業の修得、有為な若
者の能力発揮にも資するよう、インターンシップを積極的に活
用する仕組みに変えるなど、新卒一括採用だけでなく通年採用
も並列される社会へ変革するべきである。

(2)労働移動が円滑に行われる社会に

●具体策1:“ジョブ型雇用”の導入を検討する企業に向けたガ
イドラインを作成するべきである。

●具体策2:退職所得課税をはじめとする税制・社会保障制度
については、多様な働き方やキャリアを踏まえた中立的な制度
へ見直すべきである。

●具体策3:兼業・副業は、社内兼業も含めて、政府としてよ
り一層推進すべきである。

●具体策4:働き手の学びへの意欲とキャリア自律意識を高め
るための取組として、「学び直し成果を活用したキャリアアッ
プ」を促進する仕組みを創設するべきである。

●具体策5:スタートアップと大企業の間の人材の行き来を、
政府としても支援すべきである。

●具体策6:地域における人材の活躍に向けて、地域の産学官
による人材育成・確保のための機能を強化すべきである。

●具体策7:未来に向けた労働時間制度のあり方について検討
すべきである。

◆2.好きなことに夢中になれる教育への転換

●具体策1:教育課程編成の一層の弾力化や、多様な人材・社
会人が学校教育に参画できる仕組みの整備など、時間・空間・
教材・コーチの組み合わせの自由度を高める教育システムの改
革に向けて更に議論を深めるべきである。

●具体策2:高校においては、全日制や通信制を問わず、必要
に応じて対面とデジタルを組み合わせることができるように転
換すべきである。

●具体策3:公教育の外で才能育成・異能発掘を行おうとする
民間プログラムの全国ネットワークを創設すべきである。

●具体策4:「知識」の獲得に関する企業の研修教材や大学講
義資料等は、デジタルプラットフォーム上で解放を進め、誰で
もアクセスできる形で体系化していくべきである。これにより、
教員の方々のリソースを、「探究力」の鍛錬に集中させること
ができる。

●具体策5:大学・高専等における企業による共同講座の設置
や、自社の人材育成に資するためのコース・学科等の設置を促
進すべきである。

前半で示した雇用推計の結果が、それぞれの産業や職種におい
て、組織内の雇用制度や業界の人材育成の在り方に関する議論
に一石を投じることになれば、幸いである。』(引用)

と締めくくられています。

●未来人材ビジョン!全文
https://onl.bz/bkZQrRM

複数の企業を経営している社長様も多くいらっしゃいます。全
ての会社の業績が良ければ資金調達に苦労しないと思いますが、
業績があまり良くない場合は、資金調達に苦労されているので
はないでしょうか。

3社のグループ会社を持つ関与先の事例です。

グループの概要は下記となります。まだ借入実績がないC社の
資金調達に苦労していました。

A社:設立6期目(本社東京で借入実績あり)
B社:設立4期目(本社福岡で借入実績あり)
C社:設立3期目(本社大阪で借入実績なし)

金融機関の担当者は、一般的にグループ会社のある企業への融
資検討を嫌います。理由は単純に手間がかかるためです。

グループ会社のそれぞれが全く別の事業を営んでおり、かつ、
グループ間で一切の取引も無い場合は、単独の会社として融資
検討をすることが可能です。しかし、大抵の場合、グループ間
で営業上の取引があったり、資金の貸し借りがあったりするた
め、融資対象の会社だけでなく、関連するグループ会社すべて
の財務状況を審査しなくてはならなくなります。通常の会社を
審査するよりも数倍の手間がかかります。

具体的には、グループ間で利益操作を行っている可能性を払拭
するために、グループ合算の貸借対照表や損益計算書を作成し
ます。すべてのグループ会社の決算月が同一であれば簡単です
が、決算月が違う場合は正確な財務状況がつかみにくくなるた
め、さらに作業が複雑になります。

しかし、手間をかけてグループ合算資料を作成したところで、
必ず融資を出せるとは限りません。金融機関の担当者の立場で
考えると、「融資案件が他にもある中で、わざわざ手間のかか
る案件に関わりたくない。」というのが本音だと思います。

それでは、グループ会社のある会社はどのように融資を申し込
めば良いのでしょうか。答えは、金融機関の担当者に出来るだ
け手間をかけさせないよう、会社側が資料を作成するというこ
とです。

金融機関が必ず知りたがるポイントは下記です。
・グループ合算で利益が出ているか?
・グループ合算で債務超過となっていないか?
・グループ間で実態のない取引を計上していないか?
・グループ間で資金の融通がないか?

これらの疑念を払しょくするためには、最低限、下記の資料を
用意する必要があります。
・グループ全体の資産、負債と資本の状況が分かる合算貸借対
照表
・グループ全体の利益状況が分かる合算損益計算書
・グループ間の取引状況が分かる取引関係図

C社も、これらの資料を作成して提出することで、無事に満額
の融資を受けることができました。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

…前回号のつづきです。

未来人材ビジョン(経済産業省、令和4年5月)について、前
回号につづけて要点のみ引用して解説いたします。

■雇用と人材育成について

かつて日本型雇用システムは、大量生産モデルの製造業を中心
に競争力の源泉と言われた。日本型雇用システムは、右肩上が
りの経済成長の下で、長期雇用を前提に長期的な視点に立って
人材育成を行い、組織の一体感の醸成や、企業特殊的な能力の
蓄積に寄与した。また、長期雇用を前提として定着した新卒一
括採用により、一時的な例外期を除けば多くの学生が卒業後に
就職できる傾向があり、若年失業率は低い水準に収まるなど、
社会の安定につながっていた。しかし、我が国の経済成長が鈍
化し、日本企業特有の賃金・人事制度の前提とされていた「成
長の継続」が見込めなくなった結果、1990年代からは、日本型
雇用システムの限界が指摘されてきた。90年代以降、日本型雇
用システムの変革が模索されてきたが、働き手と、組織は、こ
の30年でどうなったか。

・日本企業の従業員エンゲージメントは、世界全体でみて最低
水準にある。
・「現在の勤務先で働き続けたい」と考える人は少ない。
・しかし、「転職や起業」の意向を持つ人も少ない。
・日本は、課長・部長への昇進が遅い。日本企業の部長の年収
は、タイよりも低い。
・「転職が賃金増加につながらない」傾向が強い。
・4割以上の企業は、「技術革新により必要となるスキル」と、
「現在の従業員のスキル」との間のギャップを認識している。
・企業は人に投資せず、個人も学ばない。
・日本の人材の競争力は下がっている。
・日本企業の経営者は、「生え抜き」が多く、同質性が高い。
・役員・管理職に占める女性比率が低い。
・東証一部上場企業の合計時価総額は、GAFAM5社に抜かれた。
・日本の国際競争力は、この30年で1位から31位に落ちた。

この現実を直視するなら、企業にはいま、雇用・人材育成シス
テムの聖域なき見直しが求められているのではないか。具体的
には、終身雇用や年功型賃金に代表される「日本型雇用システ
ム」と社外との接続領域である「採用戦略」をどうするか、で
ある。既に一部の企業では、相当程度変わってきた現実もある
かもしれない。しかしまだ十分ではない。変化を、加速させる
必要がある。

・人的資本経営により、働き手と組織の関係は、「閉鎖的」関
係から「選び、選ばれる」関係へと変化していくべき。
・人的資本経営は、スタートアップの方が既に実践に移せてい
ることも多い。スタートアップから学ぶことが多いのではない
か。
・日本型雇用システムの起源は、公務員の人事制度にあるのだ
から、公務員の人事制度も変わっていくべきであり、むしろ先
に変わっていくべきではないか、との意見もあった。
・人的資本経営という変革を通じて、日本社会で働く個人の能
力が十二分に発揮されるようになれば、日本社会がより一層、
キャリアや人生設計の複線化が当たり前で、多様な人材がそれ
ぞれの持ち場で活躍でき、失敗してもまたやり直せる社会へと、
転換していく。
・大企業の採用手法は、新卒一括採用だけでなく、中途採用、
通年採用、職種別採用、ジョブ型採用など、多様化や複線化が
進みつつある。
・自社が求めるスキルや能力を明確化し、それに見合った処遇
を行う企業が増加している。
・最初は無限定正社員で働き、キャリアを積んだ後、ジョブ型
雇用に転換していくという考え方も出てきている。
・これからの採用シーンでは、新卒一括採用が相対化されてい
く。「何を深く学び、体得してきたのか」が問われる、多様で
複線化された採用の「入口」になるはずである。
・学生の就業観が早期に培われるインターンシップの重要性が
増している。
・外国人は、日本で長く働き続けてくれない。地域社会は、人
手不足を克服しなければならない。

2050年目線では、仮想空間上のアバターや遠隔操作するロボッ
ト、人の身体的能力や知覚能力を拡張する技術が普及する中、
付加価値の源泉や労働形態のあり方が根本から変わるだろう。
それは、身体や脳、空間や時間の制約がなくなっていく過程で
もある。その過程では、「働くこと」の意味や「組織」の意味
付け自体が問い直され、働き方を規律する法体系やセーフティ
ーネットの在り方も根本から見直される可能性がある。
こうした未来への備えとしては、働き手の自律性を高める方向
性がやはり望ましい。

現状の日本の雇用と人材育成について、的確に分析・整理され
ています。

●未来人材ビジョン!全文
https://onl.bz/bkZQrRM

…次回号につづく