財務戦略とは、企業の将来の見通しを立てながら、必要な投資
やコスト、それに対する原資について検討、分析し、計画を立
て実行することを意味します。最も効率良く利益を増やすため
に、いつ、どこから資金を調達し、どこに資金を費やせば良い
かを慎重に検討することが重要です。

中小企業にとって、攻めの財務戦略は特に必要です。資金ニー
ズが発生してから資金調達を考えるのではなく、資金ニーズが
発生することを予測し、または自ら資金ニーズを創出して、資
金調達を積極的に行うことが「攻めの財務戦略」です。

■ 財務戦略が無い場合

・月末の資金不足:直前にならないと分からないことが多く、
財務計画が不十分です。例えば、リアルタイム財務を導入する
ことで、経営に関する数値や情報が直近のもの、かつ正確であ
るため、経営判断や投資判断が容易になります。

・突発的な支出:機械の故障など、予期せぬ支出に対応するの
が難しくなります。具体的には、予備費の設定やリスク管理策
を講じることで、突発的な支出にも対応できるようになります。

・急なビジネスチャンス:余裕資金が無いため、急なビジネス
チャンスに対応できません。例えば、キャッシュフロー管理を
強化することで、突然のビジネスチャンスにも迅速に対応でき
るようになります。

行き当たりばったりの経営では、有事への対応力が弱く、安定
した経営が難しい状況に陥りやすいです。また、投資の効果を
考慮しないため、結果的に無駄遣いが多くなってしまいます。

■ 保守的な財務戦略の場合

・企業体質の硬直化:「新しいことは何もしない」という姿勢
で、企業体質が硬直化してしまいます。例えば、定期的な事業
レビューを実施することで、必要な投資の再考や優先順位の検
討が可能になります。

・投資効果の薄れ:自社の事業の投資効果が薄れても、気づか
ないまま事業を継続してしまいます。具体的には、KPI(主
要業績評価指標)を設定し、定期的にレビューすることで、投
資効果を常に監視できます。

・新しいビジネスチャンスの見逃し:視野が狭くなり、新しい
ビジネスチャンスを見逃してしまいます。例えば、市場調査や
競合他社の動向を常に監視することで、新しいビジネスチャン
スを把握しやすくなります。

近年、10年安泰な事業は少なく、一定のリスクを冒さなければ、
成長することはもちろん、生き残ることすら難しい時代です。

■ 攻めの財務戦略の場合

・積極的な資金調達:資金調達を積極的に行い、キャッシュポ
ジションを常に高く維持しています。例えば、金融機関との関
係を強化し、必要に応じて迅速に資金調達ができるようにしま
す。

・安定した資金繰り:資金繰りが安定し、落ち着いて経営がで
きます。リアルタイム財務の導入や財務ソフトウェアの活用に
より、財務状況を常に把握しやすくなります。

・スピーディな対応:ビジネスチャンスがあれば、迅速に対応
できます。例えば、予備資金を設定し、急な機会にも即座に対
応できる体制を整えることが重要です。

・計画的な投資:機械の買い替えなど、投資計画を立てること
で計画的に資金調達ができます。長期的な投資計画を立て、優
先順位を設定することで、効率的な資金使用が可能になります。

・事業モデルの進化:自社の事業モデルの進化発展を常に考え
るようになります。定期的な戦略会議を実施し、市場の動向や
技術の進化を踏まえた新しいビジネスモデルを検討することが
重要です。

しっかりと計画を立て、先回りして資金調達に動きます。資金
に余裕を持つことで、経営の選択肢が広がります。

大企業でさえ、成長分野を探して資金を投下し、事業モデルを
変化させながら生き残りを図っています。大企業よりも小回り
の利く中小企業にこそ、攻めの財務戦略が必要ではないでしょ
うか。中小企業はその柔軟性を活かし、迅速な財務戦略の変更
が可能であるため、成長に寄与することが多いです。

…前回号のつづきです。

事業計画の要諦は、事業立地を成長分野に転換することです。

■何十年間も同じことを繰り返している会社は少なくありませ
ん。

創業以来、先代以来…ずっと同じことを行っています。事業を
創る、事業立地を見直す、イノベーションを企てる、これらの
発想すらありません。それでも、社長は、従業員も皆まじめに
働いています。この会社は、静かに衰退をたどりながら、時に
急激にその使命を終えることになります。

「今年生まれた子供たちが、二十年後に就職する会社の半分は、
今存在しない会社だ」と言われています。二十年で会社の半分
は入れ替わるとの仮説です。多分そうなるのでしょう。AIに
取って代わられる業種、話題を呼んでいますが、自社がその中
に入っているのかの心配には及びません。すべての会社が時代
に取って代わられるからです。

変化しなければ会社は存在意義を無くします。時代毎のニーズ
に対応することが生き残るための条件です。経営は、連続的な
小さな変化を続けて行かなければなりません。この小さな変化
は、時間を経て大きな変化を遂げます。激変したように見える
会社も、小さな変化の積み重ねです。

■「事業計画を策定する」このテーマについて言及しています。

事業計画は、変化のための種です。何をどう変えて、○○まで
にどのように変化させるか!この仮説こそが事業計画です。過
去の流れを踏襲するだけの数値計画を作って満足してはいけま
せん。

■事業計画作成時の重要度

事業計画作成時には、以下の要素が含まれているか確認してく
ださい。

・事業立地の見直し・イノベーションの付加ができているか?
・収益モデルの創造・見直しができているか?
・現状の認識は十分か?
・(仮)のゴール〔マイルストーン〕の設定はできているか?
・全体を包括する整合性の取れた数値計画ができているか?
・数値計画と資金計画との整合性を確認できているか?
・マネージメント体制は成長についていけそうか?又は、妥当か?
・日々修正しながら現実的に対応できているか?

■経営者の仕事は、事業立地とビジネスモデルの検証・構築、
すなわち事業計画の立案・見直し以外にありません。

経営者の仕事は何?あれもこれも…たくさんありますが、重要
度で下位から消去して最後に残るのは、「事業立地とビジネス
モデルの検証・構築、すなわち事業計画の立案・見直し」です。
であるにも関わらず、大半の経営者はこれらの仕事をぞんざい
にしています。故に、経営者不在の企業体になり下がっていま
す。創業時に考えたビジネスモデルや、親から受け継いだビジ
ネスモデルを進化・発展させることなくただただ継続していま
す。事業計画と称して、過去の事業の時間軸を先に延ばして置
き換えるだけの数値計画を作って自己満足しています。体裁の
良い数値計画は事業計画ではありません。肝に銘じてください。

■経営者には3つの胆力が必要です。

経営にウルトラCは滅多にありません。一つ一つ理詰めで考え
抜く、一つ一つ確実に行動に移す、都度調整しながら継続して
積み上げていく…この行為を粛々と続けていくことこそ王道で
す。

・理詰めで考える知力と、これを継続する知的胆力
・確実に行動し続ける行動力と、これを継続する肉体的胆力
・中々上手く行かないことに耐える耐力、これを継続する精神的胆力

経営者には3つの胆力が必要です。

■また、事業計画とは、江戸時代に中国の奥地の○○を目指す
長い旅の旅程表のようなものです。

存在自体が不確実なゴールに向かって、一歩ずつ歩みを続けて
行かねばなりません。(江戸時代に)日本から中国の奥地を目
指すなら、まずは大陸に渡る手立てを考えます。渡れる航路を
求めて港に向かいます。そのためには、港に向かうための旅費
が必要になります。大陸に渡っても、続く道の存在は不確実で
す。それでも渡ります。ゴールまでの旅費の算段が読めなくて
も、それでも一歩ずつ前に進みます。これらの過程では、様々
なトラブルにも見舞われることでしょう。トラブルをできるだ
け避けながら、遭遇したら解決しながら、不確実なゴールに向
かって歩み続けます。この旅路にゴールは存在しません。

経営とは、ゴールではなく、そのプロセスそのものであるよう
に思います。知的胆力と肉体的胆力、そして精神的胆力を鍛え
ながら、経営という長旅に共に挑んでいきましょう。楽しみな
がら。

新年を迎えるにあたって、経営を考え直すきっかけにしてもら
えれば幸いです。

本年もお世話になりました。
感謝・合掌

中小企業の経営者にとって、法定福利費の増加は避けられない
課題となっています。近年の社会保障制度改革や少子高齢化の
進展に伴い、法定福利費は右肩上がりで上昇を続けており、企
業の財務に大きな影響を与えています。中には税負担よりも重
たいと感じておられる社長様もいらっしゃるのではないでしょ
うか。

■ 適用範囲拡大の動き
厚生労働省は、社会保険の適用範囲を段階的に拡大しています。
2024年10月から、従業員数51人以上の企業にも社会保険の
適用が拡大されました。これにより、より多くのパート・アル
バイト従業員が社会保険の対象となり、社会保険料負担が増加
しています。

■ 負担増加の推移
社会保険料率の推移を見ると、中小企業の法定福利費負担が年
々増加していることが分かります。まず、厚生年金保険料率は
2004年の13.58%から段階的に引き上げられ、2017年以降は
18.30%で固定されています。この約5%の上昇は、企業にとっ
て大きな負担増となっています。

健康保険料率も上昇傾向にあります。2003年3月までは月例給
与の8.5%、賞与の1.4%でしたが、2003年4月以降は総報酬制
に移行し、当初4.2%だった料率は年々上昇しています。さら
に、2025年には約15.92%まで上昇すると推計されており、企
業の負担はさらに重くなることが予想されます。

■ 増加の影響
法定福利費の増加は、中小企業にとって以下のような影響が予
想されます。

1.コストの増加:社会保険料の引き上げにより、企業の資金
負担が年々増加しています。

2.法定外福利厚生費の減少:法定福利費の増加を補うため、
他の福利厚生費が減少することが予想されます。

3.採用競争力の低下:大企業と比較して中小企業の福利厚生
費は低く、法定福利費の増加がこの格差をさらに広げる可能性
があります。

4.利益率の低下:法定福利費の増加は直接的に企業の利益率
を圧迫し、中小企業の財務状況に悪影響を与える可能性があり
ます。

■ 対策
中小企業は、法定福利費の増加に対して以下のような対策を講
じることが重要です。

1.生産性向上:業務の効率化や省力化投資を通じて、人件費
の増加を抑える努力が必要です。

2.人材戦略の見直し:採用や定着率向上のために、限られた
予算内で効果的な福利厚生制度を構築する必要があります。

3.価格転嫁の検討:コスト増加分を適切に価格に反映させる
ことも検討すべきです。

4.政府の支援策の活用:中小企業向けの各種支援制度を積極
的に活用し、負担軽減を図ることが重要です。

5.労働時間や雇用形態の見直し:社会保険の適用基準を考慮
しつつ、効率的な人員配置や業務委託の検討が必要です。

人材の雇用や育成は、中小企業にとって最も大きな投資です。
従来の「人が足りないから採用する」という行動様式を見直し、
人の代わりに機械やAIに投資することや、外注や業務委託を
活用することなど、あらゆる可能性を検討していく必要があり
ます。これにより、法定福利費の増加に伴う負担を軽減し、持
続可能な経営を実現する道が開けると考えます。

新年の計画の指針にしてもらえれば幸いです。

◆1:新しい事業計画を立案する時には、今の事業立地に関す
る検証に時間を割いてください。

事業計画作成の要諦は、事業立地の見直しです。斜陽分野では
なく成長分野への事業立地の変更を検討してください。

○以下、高収益企業研究の第一人者でおられる三品和広教授の
言葉を引用します。

『…事業の根底には立地(誰に何を売るか)があり、その上に
構え(出荷するモノをいかに入手して顧客に届けるか)、製品
(いかに個別製品を魅力的に仕立てるか)、管理(いかに品質・
原価・納期を守るか)が重層構造を成している。…中期経営計
画などで立地や構えに手をつけることなく、製品の刷新や管理
の強化を打ち出している企業は数多くあるが、この次元で動き
だしたところで、高収益への転換に結び付いた事例はほとんど
ない。…』 〔三品和広教授(高収益企業研究の第一人者)〕

◎事業計画を作成することは、事業立地を検証し見直すことで
す。過去の流れをそのまま踏襲することを事業計画と呼び、そ
れを繰り返していると事業の革新は生まれません。何十年も同
じ事業立地にとどまって、ジリ貧に陥るのはこのケースです。
過去の流れに沿った体裁の良い数値計画を事業計画と呼ぶのは
止めましょう。

◆2:事業計画は、過去からの流れをそのまま維持する保守的
な計画でない限り、その予測は難解であって、その多くは計画
通りに進捗しません。

多くのクリエイティブな計画の成功事例は、後に理論武装され
て解説を加えられています。後付けです。保守的な計画でない
限り、事業の正確な予測はできない前提で、事業を執行してく
ださい。クリエイティブな計画を鵜呑みにすることは大変危険
です。

『現実的には、ある程度先を考えておきながら適時対応してい
くことになるだろう。実現された戦略は最初から明確に意図し
たものではなく、行動の一つひとつが集積され、その都度学習
する過程で戦略の一貫性やパターンが形成される。』
※マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院にて1965年
に経営学修士及び1968年に博士を取得された異色の経営学者
と呼ばれるヘンリー・ミンツバーク博士の言葉を引用しました。

◆3:事業計画作成時の注意点!

事業計画は、そのアイデアが斬新で素晴らしいほど予測が難し
い!
事業計画は、起点の認識と終点のイメージ化が重要。プロセス
は都度計りながら進める!
作成した事業計画を鵜呑みにしてはいけない。脱・前のめり!

◆4:事業計画作成の要諦!

事業立地の確認・選定…どんな事業を!
収益モデルの創造(ビジネスの型の確定)…どのような形で!
起点(現状)を認識する!…力相応を知る!
(仮)のゴールのイメージ化…目指すゴールは!
起点からゴールまでの道筋を仮決めする!

上記を踏まえた上で、
全体を包括する整合性の取れた数値計画の立案!
数値計画と資金計画との整合性の確認!
マネージメント体制の整備!
日々修正しながら現実的に対応する!

◆5:事業計画執行時の注意事項(追記)!

コントロールできることを完全にコントロールすること。
頑張ればコントロールできることをできるだけコントロールす
ること。
コントロールできないことには、出来るだけ適合すること。

コントロールできることをコントロールしない、これは放漫経
営です。
頑張ればコントロールできることをコントロールしない、これ
は怠慢経営です。
そして、コントロールできないことまでコントロールしようと
する、これは独りよがり経営です。

自社の明るい未来のために、真の事業計画を作成しましょう。
過去の流れに沿った体裁の良い数値計画を事業計画と呼ぶのは
止めましょう。これは事業計画ではなく、進捗管理計画です。

…次回号に続く

経済産業省関連の補正予算案が11月29日に公開されました。
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2024/hosei/pdf/r6_point.pdf

日本経済・地方経済の成長、物価高の克服、国民の安全・安心
の確保を3本柱とする総額4.4兆円規模の包括的な経済対策で
す。中小企業にとって、この予算案は様々な支援を得られる機
会となりますのでご紹介します。

■ 成長と生産性向上への投資
中小企業の持続的な成長と賃上げ実現のため、「中小企業生産
性革命推進事業」に3,400億円が計上されています。この事業
では、ものづくり補助金、IT導入補助金、小規模事業者持続
化補助金、事業承継・M&A補助金などを通じて、革新的な製
品・サービスの開発、デジタル化、販路開拓、事業承継を支援
します。特に、売上高100億円を目指す成長志向の企業には、
ハード・ソフト両面での支援が用意されています。

■ 賃上げと人材確保の支援
「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資
補助金」には1,400億円が割り当てられ、人手不足対策と持続
的な賃上げの実現を目指しています。また、「事業環境変化対
応型支援事業」(112億円)では、エネルギー価格・物価高騰、
最低賃金引き上げ、インボイス対応等の課題に対し、中小企業
団体等と連携した支援体制が強化されます。

■ 事業承継と取引環境の改善
後継者不在問題に対応するため、「中小企業活性化・事業承継
総合支援事業」(61億円)が設けられています。さらに、「中
小企業取引対策事業」(8.3億円)では、適切な価格転嫁や適
正取引の実現に向けた取り組みが強化されます。

■ エネルギーコスト対策
物価高対策として、「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」
(300億円)が用意され、省エネ性能の高い設備への更新を支
援します。また、「中小企業等エネルギー利用最適化推進事業
費」(34億円)では、省エネ診断を受けやすい環境が整備され
ます。

■ デジタル化とイノベーション支援
「デジタル人材育成エコシステム構築事業」(21億円)を活用
し、従業員のデジタルスキル向上を図ることができます。また、
「地域大学のインキュベーション・産学融合拠点の整備事業」
(30億円)を通じて、産学共同研究やスタートアップ創出の機
会が拡大します。

中小企業が、厳しい経営環境を乗り越え、持続的な成長と競争
力強化を実現できるかどうかは、特に、生産性向上、デジタル
化、人材育成、エネルギーコスト削減などの分野に、しっかり
と投資が行えるかどうかが鍵だと考えます。

行き当たりばったりな投資は止めて、補助金等を活用しながら、
計画的な投資を心がけましょう。

人手やリソースが十分に満たされている中小企業は稀有です。
一方、これらの不足分を補う仕組みが整備されてきました。副
業者やフリーランスの増加、フリーランスプラットフォームの
充実などがそれにあたります。中小企業が業務を外注化する際
の長所、短所、および導入時の注意点について十分理解した上
で、積極的な外注化をすすめましょう。

■外注化の長所

1.コスト削減
専門スタッフを社内で雇用するよりも、必要なときだけ外注す
ることで人件費や教育コストを削減できます。オフィススペー
スや設備の維持費も節約できます。

2.専門性の活用
専門知識やスキルを持つ外部業者に依頼することで、高品質な
業務成果を得ることができます。自社で不足している分野のリ
ソースを迅速に補うことが可能です。

3.時間の有効活用
単純作業や付加価値の低い業務を外注化することで、社内リソ
ースをコア業務に集中させることができます。

4.柔軟性の向上
プロジェクトの繁忙期や短期的なタスクにも対応しやすくなり
ます。必要に応じて外注範囲を調整可能です。

■外注化の短所

1.品質のばらつき
外注先によっては期待した品質が得られない場合があります。
管理不足により納期遅延やミスが発生する可能性もあります。
社員同等に管理を徹底しましょう。

2.コントロールの難しさ
外注先との意思疎通が不十分だと、自社の意図や価値観が伝わ
りにくくなる場合があります。業務内容の詳細を正確に管理す
る必要があります。社員同等に管理を徹底しましょう。

3.情報セキュリティリスク
機密情報や顧客データが外部に漏れるリスクがあります。セキ
ュリティ対策が不十分な業者を利用すると問題が発生する可能
性があります。契約書に謳い、社員同等に管理を徹底しましょ
う。

4.コストの予測が難しい場合も
外注費用が追加オプションや仕様変更で予想以上に高くなるこ
とがあります。注意が必要です。

■外注導入時の注意点

1.業務の明確化
外注する業務範囲を明確に定義し、成果物や品質基準を具体的
に設定します。外注化の目的を明確にし、自社のリソースと比
較して最適な業務を選定しましょう。

2.信頼できる業者の選定
過去の実績や評判を調査し、信頼できる外注先を選びます。必
要に応じて複数の業者を比較し、契約条件を慎重に検討しまし
ょう。

3.契約内容の明確化
納期、費用、品質基準、対応範囲などを契約書に明記します。
不測の事態に備えたリスク分担や責任範囲も取り決めましょう。

4.コミュニケーションの確立
定期的なミーティングや進捗報告を取り入れて、双方の意思疎
通を図りましょう。連絡窓口を明確にし、迅速な対応が可能な
体制を整えましょう。

5.セキュリティ対策
NDA(秘密保持契約)を締結し、情報の保護を徹底しましょ
う。業者のセキュリティポリシーやシステムについて事前に確
認しましょう。

6.費用対効果の確認
外注費用が実際のコスト削減や成果物の価値に見合っているか
定期的に評価しましょう。必要に応じて外注内容や範囲を見直
しましょう。

■外注化の成功のポイント

外注化を効果的に進めるには、「信頼関係の構築」と「明確な
業務設計」が鍵です。最初は小規模な業務から試験的に外注化
を始め、経験を積みながら適切な範囲を広げていく方法がおす
すめです。

私は長年、多くの経営者と向き合ってきました。その中で、あ
る共通の課題に直面することがあります。それは、手元にお金
が入った途端、すぐに限界までお金を使ってしまう経営者の姿
です。

日々の資金繰りに苦労しているにもかかわらず、融資金が入っ
たら、仕入や採用を「マックス」で行う。そして数か月後には、
再びお金が底をつく。この悪循環を繰り返す経営者が、実は少
なくありません。

もし、この状況に心当たりがあれば、このコラムを最後までお
読みください。

■ 借入金の本質とは
銀行からの借入金は、一時的に使える資金ではありますが、決
して「自由に使えるお金」ではありません。これは会社の負債
であり、必ず返済しなければならないものです。借入金をすぐ
に使ってしまうことは、会社の財務基盤を危うくする大きなリ
スクとなります。

■ なぜ借入金をすぐに使ってしまうのか
多くの経営者が借入金をすぐに使ってしまう背景には、以下の
ような要因があると考えます。

1.短期的な視点:目先の問題解決や事業拡大に焦点が当たり
すぎている。

2.過度の楽観主義:将来の売上や利益を過大に見積もってい
る。

3.リスク認識の不足:資金不足のリスクを適切に認識できて
いない。

4.財務管理能力の欠如:適切な資金繰り計画を立てられてい
ない。

■ 借入金の適切な管理方法
借入金を効果的に活用し、会社の成長につなげるためには、以
下のような取り組みが重要です。

1.資金繰り計画の策定:
・最低1年間の資金繰り表を作成し、毎月更新する。
・借入金の返済スケジュールを明確にし、計画に組み込む。

2.借入目的の明確化:
・なぜ借入が必要なのか、具体的な使途を明確にする。
・借入金で得られる将来のリターンを慎重に検討する。

3.返済能力の評価:
・現在の収益状況で返済が可能かどうか冷静に判断する。
・返済に必要な利益を確保できる事業計画を立てる。

4.緊急時の備え:
・借入金の一部を緊急時の資金として確保する。
・予期せぬ事態に備え、常に一定の手元資金を維持する。

5.定期的な財務状況の確認:
・毎月のB/S、P/Lをチェックし、計画と実績の差を把握す
る。
・資金繰りの状況を常に把握し、必要に応じて計画を修正する。

■ 長期的視点の重要性
会社経営は長期戦です。目先の問題解決や事業拡大に焦点を当
てすぎると、将来の安定性を損なう可能性があります。借入金
は、将来の成長のための種まきであり、慎重に扱う必要があり
ます。

経営者には、物事を迅速に進めたい、早く成果を出したいとい
う強い意志があります。この姿勢自体は、決して悪いものでは
ありません。むしろ、ビジネスを前進させる原動力となり得る
ものです。

しかし、同時にこの特性は「せっかち」「我慢できない」とい
った負の側面も持ち合わせています。特に資金管理においては、
この性質が致命的な経営リスクとなる可能性があります。

「分かっているけど、自分をコントロールできない」と感じて
いらっしゃる場合は、外部の専門家を活用することも、一つ選
択肢です。客観的な視点と専門的なアドバイスが、より健全な
資金管理の実現につながります。

■ ご案内
弊所では、中長期的な視点に立った適切な資金管理のコンサル
ティングを行っています。単なる助言にとどまらず、実践的な
支援を通じて、財務基盤強化をサポートいたします。ぜひ、ご
活用ください。

新規事業を開始する際には、自社でゼロからビジネスを構築す
る方法と、M&A(合併・買収)を利用して事業を開始する方
法があります。それぞれにメリットとデメリットがあり、これ
らのアプローチを比較検討することで、自社の資源、市場環境、
目標に最も適した戦略を選択する必要があります。
※昨今M&Aを選択する会社様が増えてきました。

■1.自社でゼロからビジネスを構築する方法

◆長所

1.完全なコントロール下に置ける
自社で事業を立ち上げる場合、製品開発からマーケティング戦
略、営業活動に至るまで、全ての決定において自由に選択でき
ます。これにより、企業のビジョンに沿った製品やサービスを
市場に導入することが可能です。

2.コストが節約できる
既存の事業を買収するよりも、ゼロから新規事業を構築する方
が、初期投資を抑えることができる場合があります。特に、リ
ソースを段階的に投入することが可能です。

3.イノベーションの促進
新しいアイデアや技術を市場に導入する自由度が高く、革新的
なソリューションを開発することで市場に新たな動きを生み出
すことができます。

◆短所

1.リスクが大きい
新規事業は、市場の受け入れが未知数であり、成功するまでに
時間とコストがかかることが多いです。また、失敗のリスクも
高くなります。

2.市場への進出時間が長い
製品開発から市場調査、販売チャネルの構築に至るまで、すべ
てを自分たちで行う必要があるため、市場への導入まで時間が
かかります。

3.資源の制約がある
特に中小企業の場合、必要な資金、技術、人材が限られている
ことが多く、これが事業のスケールアップを妨げることがあり
ます。

■2.M&Aを利用して事業を開始する方法

◆長所

1.即時性がある
M&Aにより、既存の事業を買収することで、製品やサービス
を直ちに市場に提供することができます。これにより、市場進
出の時間を大幅に短縮することが可能です。

2.既存の顧客基盤とリソースを活用できる
買収した事業には、既に確立された顧客基盤、サプライチェー
ン、人材が含まれていることが多いため、これらを活用して迅
速に事業を展開することができます。

3.リスクが低減できる
既に市場での実績がある事業を買収するため、新規事業をゼロ
から立ち上げるよりもリスクが低い場合があります。

◆短所

1.高額な初期投資を要する
M&Aは高額な買収コストを伴うため、大きな初期投資が必要
になります。また、適切な買収対象を見つけるための費用もか
かります。

2.統合に課題がある
異なる企業文化の融合、システムの統合、人員の調整など、買
収後の統合作業には多大な労力とコストがかかります。

3.隠れた問題が存在する可能性がある
買収する事業には表面上見えない問題が潜んでいることがあり、
これが後に大きなコストを発生させる原因となることがありま
す。

■結論

自社で新規事業をゼロから立ち上げる方法とM&Aを用いる方
法は、それぞれにメリットとデメリットがあります。どちらの
アプローチを選択するかは、企業の戦略、資源の可用性、市場
の動向、リスク許容度によって異なります。経営者はこれらの
要因を総合的に考慮し、企業の長期的な目標と合致する最適な
選択をする必要があります。