借入が必要になりそうだと分かっていても、日々の業務に忙殺
されて後回しになり、いよいよ資金が切れそうなタイミングで
金融機関に駆け込む・・・ご経験のある社長様も多いのではな
いでしょうか。

本来、資金調達業務は、資金が不足した時だけ行う業務ではあ
りません。どれぐらいの資金が、何のために、いつ頃必要なの
かを事前に把握し、どれぐらいの資金を、どこから、どのよう
にして調達するかを戦略的に進めていく業務です。財務業務を
戦略的に進めるためには、財務に関する知識や経験が必要です。
まずは貴社の財務レベルをチェックしてみましょう。

□今期、どれくらいの資金調達が必要か分かっている。
□公庫、信金、地銀、メガバンク、ベンチャーキャピタル・・・
各金融機関の特性を熟知しており、どの金融機関から調達す
るのが最善か分かっている。
□短期借入、長期借入、社債、リース、出資・・・借入の種類
と特徴を熟知しており、どの方法で調達するのが最善か分か
っている。
□金融機関の考え方を熟知しており、金融機関が評価するポイ
ントを分かっている。
□融資を受けやすくするために必要な資料が何か分かっている。

いかがでしょうか。チェックの数が少ない場合は財務レベルに
改善の余地があります。業績が落ち込めば、途端に資金調達が
難しくなる可能性がありますので、次にご提案する財務戦略を
実践してみてはどうでしょうか。

■小規模企業が実践すべき財務業務

1.調達目標額を決める
仮に業績が落ち込んだ時、金融機関は助けになりません。自分
の身は自分で守らなくてはならないため、有事に備えて、「借
りられる時に借りられるだけ借りておく」ことを指針としては
いかがでしょうか。

2.取引金融機関(調達先)を選定する
小規模企業の調達先の選定基準は、「最も安い金利の金融機関
ではなく、最も多く貸してくれる金融機関」です。銀行の知名
度や、多少の金利差に惑わされず、積極的に融資をしてくれる
金融機関を選びましょう。年商3億円未満の企業の場合は、信
用金庫(組合)→地銀→メガバンクの順であたるのがセオリー
です。

3.金融機関と良好な関係を構築する
最大限の調達を行うためには、金融機関を味方につけることが
必須です。金融機関が好むのは、ディスクローズをしっかりと
行える企業です。試算表や資金繰り表をリアルタイムで作成し、
定期的に提出することで、金融機関からの信頼は大きく高まり
ます。

この程度の財務業務を実践するだけでも金融機関の反応は大き
く変わるはずです。資金調達は一発勝負ではありません。お金
を借りる時だけ対処するのではなく、戦略を持ち、日頃から資
金調達に備えておくと安心です。

※自社の事業を広く世に問う、このような状況の事業(数値)
計画ではなく、金融機関向けの計画書を想定しています。

創業融資や設備投資、新店出店時の融資を受けるためには、金
融機関に提出する数値計画の作成が必要です。どのような計画
を作成するのか、コツをお伝えします。

■創業融資や設備投資、新店出店時に融資を受けるための数値
計画の作り方にはコツがあります。

銀行融資プランナー協会の推奨する財務部長として当事務所が
作成する数値計画は、【融資金額を返済するために必要な(返
済後)損益分岐点売上高を基準にした資金繰り計画書】です。
資金が適切に回るように逆算して作ります。これが最善です。

◎金融機関に提出する(融資のための)数値計画には、必要な
2つの要件があります。

◆その1:返済が可能であることです。
例えば、新店出店のために融資を受けて、出店後の売上で返済
ができなければ、そもそも計画自体が成立しません。返済金が
賄える計画を作ることは絶対条件です。

◆その2:想定する売上を実現できる蓋然性が高いことです。
大きな売上計画を立てれば、十分な返済原資を確保できます。
一方、本当にその売上が実現できるのか?との疑念が生まれま
す。想定する売上が大きければ大きいほど、その疑念は大きく
なります。その疑念を払しょくするための理論武装が必要にな
ります。
返済するために必要な売上以上の大きな売上を想定して、その
売上を実現するための蓋然性の説明に苦慮する、このような無
意味な結果を招かないように気を付けてください。

※返済可能な最低売上高(粗利益額)を合理的に説明できない
場合、その計画自体を見直すことになります。

繰り返しますが、銀行融資プランナー協会の推奨する財務部長
として当事務所が作成する数値計画は、【融資金額を返済する
ために必要な(返済後)損益分岐点売上高を基準にした資金繰
り計画書】です。資金が適切に回るように逆算して作ります。
これが最善で、極めて合理的です。

社長様には、「この数字は実現できますか?」とお尋ねします。
社長様に「もっと売れるよ、こんな小さな数字では困る。」と
言われても、「これ以上売っていただくことに問題はありませ
ん。」とご説明します。

※単に融資のためだけの計画にはなり下がりません。
社長様に対して、最低限必要な売上高を示唆する目標計画とし
ての役目を果たしています。

■大きな売上計画を、金融機関は総じて歓迎しません。保守的
な計画が有益です。

心持としては大きな売上の実現を目指してください。当然です。
一方、当初計画を大きく想定して、それに応じた大きな経費の
計上を予定することは、経営リスクを当初から高めます。まず
は、最小限の費用を算出して資金繰り損益分岐点売上高を逆算
します。このバランスするポイントを当初目標に設定してくだ
さい。その後、進捗を確認しながら、経費と売上の上乗せを企
てる…この経営感覚が重要です。

■融資を受けるための数値計画作成にはコツがあります。

売上目標が大きすぎると、その蓋然性の説明に苦慮します。一
方、売上目標が小さすぎると、その借入の返済ができません。

先日、日本政策金融公庫の資本性ローン2,000万円の調達
をお手伝いしました。資本性ローンとは、日本政策金融公庫が
取り扱う5年から15年の期日一括返済型の借入ですが、金融
機関が融資審査を行う際には資本と見做してもらえます。財務
内容の改善に取り組む企業や、売上がすぐには立たない新規事
業に取り組む企業に適した借入です。

S社の事例をご紹介します。

【S社の概要】
直近売上高 約2億5,000万円
直近簡易CF(税引後利益+減価償却費) 約1,500万円
直近純資産 ▲500万円
直近有利子負債 約1億6,500万円

数年前に大口顧客から契約を解除されて売上が半減し、大幅赤
字、債務超過に陥ってしまいました。

その後、経費の見直しを中心としたコストカットに取り組み、
直近決算では黒字化を果たしたものの、依然として債務超過の
状況にあります。

資金繰り面においても、約1,500万円のキャッシュフロー
がありますが、毎月160万円の返済を継続しているため、決
して楽ではありません。これまでも、社長自身で資金調達に動
いてきたようですが、やはり債務超過を理由に断られてしまっ
たとのことです。

S社のように、足元の業績が回復しているにも関わらず、債務
超過が原因で新規資金調達に苦慮している場合は、再生型資本
性ローンの活用がおすすめです。S社は500万円の債務超過
に陥っていますが、仮に2,000万円の資本性ローンを借り
入れできれば、債務超過は解消し1,500万円の資本正と見
做されることになります。

早速、経営改善計画書を作成し、日本政策金融公庫に打診しま
した。計画の内容を前向きに捉えていただき、「資本性ローン
が入れば、積極的に支援してくれる取引金融機関があった方が
審査を進めやすい。」とのアドバイスをもらいました。

アドバイスのとおり、メインの金融機関に出向き、資本性ロー
ンを活用した経営改善計画を説明したところ、「確約はできな
いが、債務超過という障害がなくなれば、新たな融資も検討可
能である。」との見解を頂戴し、さらに、公庫の担当者に電話
を入れて支援の意思表明をしてくださいました。

結果、2,000万円の資本性ローンを無事に受けることがで
きましたが、公庫の担当者は、「民間金融機関の支援姿勢を確
認できたことが大きかった。」とおっしゃっていました。

その後、メインの金融機関からも1,000万円の追加融資を
受けることができ、資金繰りは十分に安定しました。

足元の業績は回復しているが、債務超過により資金調達に苦慮
している企業様は、資本性ローンの利用を検討してはいかがで
しょうか。ご相談ください。

売上・利益を積み上げるためには、容易ではありませんが、同
時並行で以下の5つの仕組みをバランスよく構築していかねば
なりません。

◆1.顧客候補に種をまき続ける仕組み
次の顧客、顧客候補に対する継続的なアクションが必要です。
顧客が1.0とするならば、まったく縁のない0から始まって0.2、
0.3…0.9と格上げしていく仕組みが必要です。顧客は、0から
いきなり1.0にはなりません。段階を経て1.0に近づきます。

◆2.上記の仕組みで、顧客が増える仕組み
商品やサービスは、軽いものから順番に構成することが常道で
す。買いやすい商品やサービスで満足頂きながら、徐々に高額
なものへと移行してもらいます。今の商品やサービスの敷居が
高いなら、敷居の低いそれを追加してください。

◆3.顧客をグリップして離さない仕組み
1.0の顧客を1.1、1.2へと引き上げる仕組みが必要です。
顧客になっていただいてからが正念場です。満足度の向上を目
指しましょう。すべての場面において、顧客候補よりも(既存)
顧客を優先してください。逆転は愚です。(既存)顧客が離れま
す。

◆4.顧客に新しいサービスや商品を継続して提供できる仕組

(既存)顧客からは直接声を聴いて、商品・サービスの充実を図
りましょう。顧客満足度が高ければ、高い確率で第2・第3の
商品・サービスを購入してもらえます。プロモーションコスト
極小の販売になります。結果として高収益が狙えます。

◆5.顧客が顧客を紹介してくれる仕組み
上記の◆3.と◆4.ができておれば、自ずと(既存)顧客が新
しい顧客を紹介してくれます。

ビジネスの好循環サイクルとは『自社(自分)の意図する所に顧
客を呼び込む、このためには最初の商品やサービスが必要にな
ります。呼び込んだ顧客に対して、次々とより付加価値の高い
商品やサービスを提供し続ける、一方で、新規顧客を呼び込み
続ける、このサイクルでビジネスを拡大する、これが、ビジネ
スの好循環サイクルです。』

◇1.『顧客候補に種をまき続ける仕組み』を構築できないと
ビジネスは広がりません。
(既存)顧客の対応で手一杯になってしまうケースでは、新規顧
客の開拓ができないので、ビジネスが広がりません。
(既存)顧客が切れた時に次の顧客を求めて埋める、何年経って
も同じレベルを推移します。
顧客候補に種をまき続ける仕組みが必要です。

◇2.『顧客候補に種をまき続ける仕組み』が弱いと新規顧客
を獲得できません。
顧客候補への、継続的な高品質の情報配信が最適です。また、
敷居の高い商品・サービスは新規顧客の獲得には不向きです。
成果が不十分と判断すれば、より敷居の低いそれを投入してく
ださい。

◇3.『顧客をグリップして離さない仕組み』はビジネスの要
諦です。
顧客が満足する商品・サービスを提供し続けることは、ビジネ
スの要諦です。(既存)顧客のグリップ率は、経営における最も
重要な指標です。限りなく百%を目指しましょう。

◇4.『顧客に新しいサービスや商品を継続して提供できる仕
組み』が高収益の源泉になります。
このステージでは、高付加価値でプロモーションコスト極小の
商品・サービスを提供できます。本当の利益はここから生まれ
ます。顧客の声に耳を澄ませて、確実なそれを提供しましょう。

◇5.『顧客が顧客を紹介してくれる仕組み』ができれば本物
です。
これは仕掛けではなく結果です。(既存)顧客の満足度向上が原
因、その結果が紹介です。

成長企業は、5つの仕組みをバランスよく構築することで、
『ビジネスの好循環サイクル』を築き上げています。貴社も、
意識して取り組んでください。

平成31年1月~3月のセーフティネット保証5号の指定業種
が発表されました。セーフティネット保証5号とは、業況の悪
化している中小企業が利用できる保証制度です。指定業種に含
まれていなければ利用できない制度ですので、まずはご自身の
業種が指定業種に含まれているか、下記中小企業庁のホームペ
ージにてご確認ください。

◆指定業種一覧
http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2018/1812205gou.pdf

ご自身の業種が指定業種に含まれていたら、次に、直近3ヶ月
間の売上高を前年同期間の売上高と比較します。もし、売上高
が5%以上減少していれば対象となりますので、セーフティネ
ット保証制度に申し込むことが可能です。(指定業種かつ売上
減少が要件です。)

具体的な申し込みの流れは、まず市区町村長の認定を受け、そ
の後、銀行等金融機関に認定書を持ち込みます。認定の受け方
については中小企業庁のホームページでご確認ください。

◆認定の受け方(中小企業庁HPより引用)
対象となる中小企業の方は、法人の場合は登記上の住所地又は
事業実体のある事業所の所在地、個人事業主の方は事業実体の
ある事業所の所在地の市町村(または特別区)の商工担当課等
の窓口に認定申請書2通を提出(その事実を証明する書面等が
あれば添付)し、認定を受け、希望の金融機関または所在地の
信用保証協会に認定書を持参のうえ、保証付き融資を申し込む
ことが必要です。(引用終わり)

信用保証協会は、中小企業が無担保で利用できる保証限度額が
8,000万円と定められています。あくまでも利用可能な枠のこ
とであり、必ず8,000万円の保証を受けられるということでは
ありませんが、セーフティネット保証制度は、さらに別枠で
8,000万円の保証枠が設けられます。

通常の融資審査は業績が悪いと通りませんが、本制度は業績が
悪くなければ利用することができません。また通常の金利は、
業績が悪くなればなるほど高くなりますが、本制度は低い金利
で利用することができます。業績が悪くなることを歓迎したく
はありませんが、そうなった場合には利用したい制度です。

「足元の売上高が一時的に減少しているだけでも利用できるか?」
「売上高は落ちているが利益が出ている場合は?」「売上高が
伸びている事業と落ちている事業がある場合は?」等、本制度
の利用についてご質問やご相談があれば、お気軽にお問合せください。

…前回号の続きです。日本の生産性は先進国で最下位レベル、
また、低生産性の原因は、現場の問題ではなく、概ね経営の問
題であることに前回号で言及しました。繰り返します、低生産
性の原因は概ね経営者の責任です。

以下、低生産性の改善のための重要な仮説と対策を提唱します。

■仮説1:

「…日本の企業は顧客の声を聞きすぎる。顧客の過度な要望へ
の対応は、企業を疲弊させ、低生産性の元凶になっている。顧
客を神さまと勘違いして、過剰な対応を行うということは、一
方で、自社の経営と従業員を疲弊させることになる。顧客に提
供するサービスの内容と、負担いただく価格のバランスが、国
全体として崩れてしまっていることが、日本の生産性を著しく
低くしてしまった。…」

◆対策1:「顧客はだれか?」顧客の定義・選別が重要です。

◎顧客をないがしろにしても良いとの意味ではありません。お
客様第一、この発想こそビジネスの礎です。問題なのは、顧客
の定義が曖昧なことです。全員が顧客だ、との間違えた思い込
みです。

〔わかり易いので飲食店の例で…〕
○高級なフレンチレストランではミネラルウォーターも高価で
す。「水がなぜこんなに高い?」との疑問を呈する人は顧客で
はありません。ただし、この高価なミネラルウォーターは、立
派なグラスで丁寧に提供されなければなりません。
○一方、大衆店で、おいしい水を立派なグラスで提供してもら
おうと考える人も、この大衆店の顧客ではありません。

◎顧客を定義するためには、提供するサービスを明確に定義す
る必要があります。

〔わかり易いので飲食店の例で…〕
○当社は高級なフレンチレストランを経営するので料金は高い、
お水はミネラルウォーターを立派なグラスで(有料で)提供す
る。ミネラルウォーターが高いという人は当社の顧客ではない。
○当社は大衆店を経営するので価格はリーズナブル、その分顧
客の細かい要望にはお応えできない。

上記を明確にしないまま、お客様第一主義を突き詰めると、そ
のツケはすべて自社に、自社の従業員に跳ね返ってきます。

◎営業時間の問題も、個別対応の問題も同じです。
顧客が望むから(推測も含めて)営業時間を延長する、顧客が
要望するから(推測も含めて)個別対応を行う…これらを収益
上の検証も行わず、その多くを顧客満足度の向上との安直な発
想で取り入れ続けた結果が、生産性の低下を招いています。

◎もはや精神論と根性論だけでは解決できません。
成熟著しい日本の市場においては、すべての事業体が、自社が
定義した顧客(のみ)に対して、自社が定義したサービスや商
品(のみ)を、生産性の整合性を担保した上で提供していく方
針に舵を切らねばならないようです。
1.自社の顧客に対してのみ顧客第一主義を貫く。
2.自社が定義したサービスや商品のみを提供する。
さらに、これらの収益上の整合性を確保することも必要です。

■『時短と生産性の向上』のためには…

1.顧客の選別(絞り込み・単純化)
2.商品・サービスの明確化(絞り込み・単純化)
3.価格の改定(値上げ)
4.営業時間の見直し(短縮)
今の日本は、好むか好まない、できるかできないではなく、こ
れらの選択肢を排除できない、切羽詰まった岐路に立たされて
いるように思います。

繰り返しますが…
「…日本の企業は顧客の声を聞きすぎる。顧客の過度な要望へ
の対応は、企業を疲弊させ、低生産性の元凶になっている。顧
客を神さまと勘違いして、過剰な対応を行うということは、一
方で、自社の経営と従業員を疲弊させることになる。顧客に提
供するサービスの内容と、負担いただく価格のバランスが、国
全体として崩れてしまっていることが、日本の生産性を著しく
低くしてしまった。…」
この機会にご一考いただければ幸いです。

中小企業における財務の強化方法についてシリーズでお伝えし
ております。第1回目は、「試算表」を作成することの重要性
を、続く第2回目は、「資金繰り表」を作成することの重要性
をお伝えしました。3回目となる今回は、「中小企業が実践す
べき財務戦略」について解説致します。

試算表や資金繰り表は、それ自体は単なるデータであり、財務
に関する明確な指針を持って初めて価値あるものに変わります。
弊所では、「手元キャッシュをより多く持つ」ことを、中小企
業の財務指針として推奨しています。

手元キャッシュを厚くする主な理由は、「キャッシュが切れな
い限り倒産することはない。」、「キャッシュに余裕があれば
不測の事態が起きても落ち着いて対処できる。」「キャッシュ
があれば千載一遇のビジネスチャンスを逃さない。」ためです。
経営の目的を達成するために、キャッシュは絶対に欠かせない
要素のひとつです。

しかし、「元々潤沢な自己資金を持っている。」もしくは、
「毎月キャッシュが余るほどの大きな利益を上げている。」の
でなければ、そう簡単に手元キャッシュを厚くすることはでき
ません。手元キャッシュを増やす最も現実的な方法は、「借入
を最大限活用する。」ことです。

借入を嫌う経営者も多いですが、そこには、困った時だけ金融
機関に頼れば良いという錯覚があります。金融機関はこちらの
都合で融資をしてくれません。不測の事態が起きた時、千載一
遇のビジネスチャンスに出会った時に、都合よく融資を受けら
れるとは限らないのです。

中小企業の金融機関との正しいお付き合いの仕方は、自社のタ
イミングで融資を受けにいくのではなく、金融機関側のタイミ
ングで融資を受けて手元にキャッシュを置いておき、必要な時
にそのキャッシュを使うというのが正解です。今すぐ必要でな
い資金を借りるデメリットは余分な金利を払うことですが、い
ざという時に融資を受けられないリスクに比べれば小さな問題
です。借入が増えると財務内容が悪くなると考える方もいらっ
しゃいますが、借入と同時にキャッシュも増えますので、実質
的な借入額が増える訳ではありません。

「借入を活用してでも手元キャッシュをより多く持つ。」こと
の重要性にご賛同いただけたならば、次は、「どうすれば金融
機関から最大限の融資を受けられるか。」という課題にお気づ
きになるのではないでしょうか。金融機関から最大限の融資を
受けるためには、自社の財務状況を定期的に金融機関に開示し、
融資が可能であれば、いつでも提案を持ってきてもらえる関係
を構築する必要があります。

試算表や資金繰り表は金融機関とのコミュニケーションツール
です。試算表や資金繰り表の提出なしに金融機関と円滑な関係
を構築することは出来ませんので、まずは、毎月しっかりと作
成しましょう。さらに、「キャッシュをより多く持つ。」とい
う財務指針も金融機関と共有出来れば、財務はより強固なもの
になります。

■日本の生産性は著しく低く、先進国の中では最下位レベルで
す。

◆2017年、日本の生産性に関する主要なデータは以下です。
1.日本の時間当たり労働生産性はOECD加盟36カ国中20位。
2.日本の1人当たり労働生産性(就業者1人当たり付加価値)は
OECD加盟36カ国中21位。
3.同年の日本の時間当たり実質労働生産性上昇率は+0.5%。

※公益財団法人日本生産性本部『日本の労働生産性の動向2018』
からの引用です。
○「2017年度の日本の時間当たり労働生産性は47.5ドルで、
OECD加盟36カ国中20位。OECDデータに基づく2017年の日
本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、
47.5ドル (4,733円/購買力平価(PPP)換算)。米国(72.0ドル
/7,169円) の3分の2程度の水準に相当し、順位はOECD加盟
36カ国中20位だった。名目ベースでみると、前年から1.4%
上昇したものの、順位に変動はなかった。主要先進7カ国でみ
ると、データが取得可能な1970年以降、最下位の状況が続い
ている。」
○2017年度の時間当たり実質労働生産性上昇率は+0.5%。
上昇率は2015年度から3年連続でプラスとなったものの、前
年(+1.0%)より0.5%ポイント落ち込んでいる。実質経済成
長率(+1.6%)がプラスであったことや労働時間の短縮(-0.2
%)が労働生産性を引き上げたものの、生産性低下要因となる
就業者の増加 (+1.4%)が1995年以降で最も高い水準となっ
たことが影響した。
○2017年の日本の1人当たり労働生産性(就業者1人当たり付加
価値)は、84,027ドル(837万円)。ニュージーランド(76,105
ドル/758万円)を上回るものの、英国(89,674ドル/893万
円)やカナダ(93,093ドル/927万円)といった国をやや下回る
水準で、順位でみるとOECD加盟36カ国中21位となっている。」

■低生産性の原因と対策は…

◆低生産性は現場の問題ではなく、マネージメント(経営)の
問題です。
低生産性の解決策を、個人の仕事のスピードアップや業務効率
の改善に求めるのではなく、会社全体のシステムの問題として
とらえるべきでしょう。低生産性の原因は、現場ではなくマネ
ージメントの問題です。この認識が必要です。

◆生産性向上のための対策は…

1.ビジネスモデルを転換する、効果は◎です。
容易ではありませんが、より単純(Simple)で高収益(Profi
table)なビジネスモデルに転換出来れば、その生産性は格段
に向上します。これこそ社長の仕事です。惜しみない勉強が
必要です。

2.業務を減らす、効果は○です。
仕事を棚卸してください。思い切って業務を20%やめましょう。
業務を減らせば仕事は減ります。業務を減らすためには、業務
そのものを棚卸するだけでなく、過剰な品質になっていないか
どうか、業務内容も検討してください。業務が過剰品質になっ
ているケースも少なくありません。
※やめることを探してください。上手にやろうとするのではな
く、思い切ってやめる、この決断が必要です。

3.その他、あらゆるものを減らす、効果は○です。
提供するサービスや商品、不採算顧客等、あらゆるものを棚卸
する必要があります。聖域を設けずにあらゆるものを対象にし
て、選別して減らすことを考えてみましょう。
※不要なモノがたくさん混在しています。悪の根源はこれらの
不要なモノです。

4.値上げする、効果は○です。
単価を5%上げることができれば、生産性は5%向上します。
一律の値上げは乱暴ですが、不採算商品や不採算顧客に対する
値上げは有効です。減収の覚悟も必要ですが、案外値上げが通
ることもあります。重い判断になりますが、選択肢として排除
すべきではありません。

5.過度なサービスをやめる、効果は○です。
メニュー表にない+αのサービスを、しかも無償で担当者が提
供し続けているケースは少なくありません。これも棚卸して顕
在化させてください。サービスの必要性を担当者個人の裁量に
委ねるのではなく、経営として判断してください。必要なら正
式に行う、不要なら会社としてやめる…判断してください。
※無償サービスを会社として容認し続けるロスは、担当者個人
の負担として、その担当者を直撃します。退職につながるケー
スが多いです。

6.生産性を管理する、効果は○です。
部門ごと、出来れば担当者ごとに、その生産性を把握できる指
標を設けて管理してください。部門、出来れば担当者ごとの実
績を把握し、目標を決めて、継続的に管理することは大変有効
です。
※担当者個人を責めるための管理ではありません。生産性を改
善させるため・個人の負担を軽減させるための管理です。

7.業務のスピードを上げる、効果は△です。
同じことを10%早くやれば、確かに生産性は10%向上します。
確かに重要ですが、精神論・根性論に終焉しがちです。マネー
ジメントとしての対策(上記の1~6)を進めながら、並行し
て取り組んでください。

◎1~6はすべてマネージメント(経営)の問題です。低生産
性の原因は、現場の問題ではなく、すべて経営の問題なのです。

前回のメールマガジンでは、財務管理の強化は試算表の作成か
ら始まることをお伝えしました。しかし、試算表だけ作成すれ
ば十分かと問われると、そうではありません。試算表にはキャ
ッシュベースの収支が分からないというウィークポイントがあ
ります。

赤字になっても即倒産はしませんが、資金が底をつくと黒字で
も倒産します。そういう意味では、利益管理よりも資金繰り管
理の方が重要です。そして、資金繰りの管理を行うツールが
「資金繰り表」になります。資金繰り表は、毎月の入金額と支
出額を項目ごとにまとめた単純な表ですが、財務管理にとても
役立ちます。

殆どの社長様が何らかの資金繰り表を作成していると思います。
実際に表を作成していなくても、頭の中にはおおよその入金額
と支出額が入っているはずです。ただ、残念なことに、今月も
しくは来月、といった短い期間の資金繰り状況しか把握できて
いないのが実態ではないでしょうか。

短期間の資金繰り計画しか立てていないと、「お金が足りない
!」という事態が1か月ほど前にしか分からないということに
なります。1か月という時間は、資金調達を行うにあたり決し
て十分な時間ではありません。経営者としての他の大切な業務
を削ってでも資金調達に走り回らなくてはならなくなります。
行き当たりばったりの財務活動です。

計画的に財務活動を行うために実践していただきたいのは、向
こう1年間の「資金繰り計画」の作成です。1年程度先までの
資金繰り計画を立て、資金の流れを予測しながら、資金調達や
設備投資の計画を立てます。1年先の売上など分からないとい
う声もお聞きしますが、向こう1年間の「資金繰り計画」とあ
わせて、過去1年間の「資金繰り実績」も作成してみてくださ
い。過去の売上の動きから未来の売上の動きを何となく予測す
ることができるかもしれません。

財務管理の最大の目的は、「資金を切らさないこと」です。試
算表で利益を管理しながら、自社の資金調達力を高め、資金繰
り計画を立てて計画的に資金調達や設備投資を行えば、資金に
慌てることなく落ち着いて経営に専念できます。

本年度の経営指針を確認してください。

大変不透明な時代が続きます。
経済や政治動向などを正確に予測できる人はいません。それだ
け世の中が複雑で難解な時代になってしまったのでしょうか。
一方、それらの動きに一喜一憂するよりも、自社の経営につい
て、しっかりと考え続けましょう。本年も、皆さま方のお役に
立てそうな情報を提供させていただきます。少しでも、貴社の
経営に役立てば幸いです。

年初に当たって、もう一度、経営の基本指針について言及させ
ていただきます。一つの考え方としてご確認ください。

◆1.単純(Simple)な経営を目指してください。
…分散してはいけません。複雑にしてはいけません。絞り込ん
で単純に仕上げてください。

ビジネスモデルはできるだけ単純にしましょう。事業体の仕組
み自体も単純になります。集中できて強くなります。業務が効
率的になり、ミスも減ります。高品質のサービス・商品を生み
出し、高い収益力を持つことができます。分散と複雑化は、経
営における諸悪の根源です。

◆2.高収益(Profitable)な企業作りを目指してください。
…安売りは絶対にNGです。経営の難易度を著しく高め、かつ、
創造力を奪います。

売れた時には、大きな利益を出せる収益構造を当初から設計し
ましょう。高めの粗利益率の設定、高めの値付けを心掛けてく
ださい。値決めを外すなら高めに外してください。ビジネスと
して完成した時点での営業利益率は20%以上で設計してくだ
さい。安売り戦略は、経営の難易度を高め、事業体の創造力を
奪い去る原因になります。

◆3.手持ち資金を潤沢(Ample)に維持してください。
…資金余力は企業経営の余裕代、時間を提供してくれます。
財務機能を持ってください。

資金は可能な限り潤沢に持ち続けましょう。借入れの金利負担
よりも、資金に困るリスクの方がはるかに深刻であることを認
識してください。また、借入れのタイミングは、自社が資金を
必要とするタイミング(借り手の都合)ではなく、金融機関が
融資できるタイミング(貸し手の論理)に沿うことが重要です。
総じて貸し手の方が強いからです。資金余力がもたらす経営者
の心の余裕と、増加分の金利負担を、天秤にかけて比較してく
ださい。

◆4.変化に対応できる柔軟性(Flexible)のある企業体を維
持してください。
…計画のずれを想定した経営を行ってください。

計画(売上の達成)が遅れることを想定しながら経営してくだ
さい。「コントロールできない売上を、コントロールできる売
上以外の経費の執行で調整する」、これが経営管理です。経費
の執行をワンテンポ遅らせる…これが不透明な時代に、企業体
力が十分でない事業体が選択すべき経営のコツです。また、遅
れを許容するための資金余力を持てる財務戦略が重要です。

◆5.経営判断を明確(Clearly)にしてください。
…感覚に頼らず、数字を基準にした論理的な経営を行ってくだ
さい。

曖昧な経営判断、お人好しな対応を止めましょう。経営は、感
覚や概念ではなく、数字で管理してください。感覚や概念を基
準に考えると、判断が曖昧になりがちです。数字基準での判断
は、その判断の精度を各段に向上させます。経営が締まります。

経営の判断基準は何か?永遠のテーマです。経営の判断基準は
無限にあります。逆にも真あり、敢えて真逆を攻めることで成
功することもあります。それでも、王道をお薦めいたします。
王道とは、多くの偉人が語り続けた経営の道です。上記の方針
は、偉人が語る経営の道に近似しているはずです。当然です、
偉人の言葉を借りているからです。経営者の皆さま方が、理詰
めで考えて、腑に落ちた部分については、今後の指針として、
深く、深く…心に刻んでください。

上記の5つの指針【SP経営5大指針】を前提にして、以下の
事柄に取り組んでください。

◆6.事業立地の確認・見直しを行ってください。

事業の収益性を決める要素はたくさんありますが、最も重要な
のは、事業立地(ポジショニング)を含むビジネスモデルであ
って、マネージメントやマーケティングではありません。
「STARの法則」(ダイレクト出版)の著者であるリチャード・
コッチ氏は、その著書の中で『覚えておきたいのは、「一にも、
二にも、三にも人」ではない。一貫してうまくいく有効な解答は、
「一にも、二にも、三にもポジショニング」だ。』と明言され
ています。

◆7.ビジネスの型の確認・見直しを行ってください。

多くの中小企業は、事業の拡大を狙ってプロダクト型からスト
ア型に移行する時に、その商品やサービスの幅を広げます。
しかし、その幅の拡大が売上の増大に比して大きいため、その
生産性を著しく引き下げる結果を招きます。繁盛貧乏に陥りま
す。そして、この状態で停滞しています。『選択と集中』とは、
ストア型をプロダクト型に戻すことです。プロダクト型の企業
は、ストア型に移行せず、プラットフォームの構築を狙うべき
との持論を持っています。受注型はプロダクト型へ、ストア型
もプロダクト型へ、プロダクト型はプラットフォームの構築を
狙ってください。プラットフォームを構築できたら金融事業に
参入しましょう。これが王道です。