事業資金が潤沢にあれば、新店舗を出店したり、工場を作ったり、優秀な人材を雇用したり・・・経営の選択肢が広がります。
当然、事業の元手となる資金は、借入よりも自己資金の方がリスクは小さくなります。しかし、利益の積み重ねである自己資金の形成には多大な時間を要しますので、時間を短縮する方法として、他人資本(借入)の活用があります。人間の寿命には限界がありますので、経営者として成し遂げたいビジョンが大きければ大きいほど、他人資本(借入)の活用は避けて通れない経営の要素です。

しかし、他人資本(借入)を上手に活用できている中小企業は多くありません。理由は、財務のプロフェッショナルではない経営者自身が、本業の合間に銀行対応を行っているからです。銀行対応を含めた財務活動は、財務に関する専門知識を要求されますので、本来であれば財務の専任を置いた方が上手くいきます。大手企業で言う財務部長です。

中小企業では財務部長という職種はあまり馴染みがありませんので、ウィキペディアでご紹介しますと、「財務部長(CFO)とはキャッシュ・フローや投資の管理、経営計画策定における数値的裏付けの作成と管理など、業務範囲は多岐にわたり、CEO・COOの「片腕」ともいうべき存在である。英国においてはほとんど全員が会計士の資格を有する。米国においても会計士が過半数を占める役職である。また、理事会又は取締役会の構成員である場合が多い。」となっています。

中小企業に財務部長がいない理由は、ひとつが財務部長の報酬です。会計士の資格を持っていない方でも、財務部長の年俸相場は非常に高額です。もうひとつは、中小企業は大企業に比べて財務に関する仕事量が少ないことです。仕事量が少ないところに高額な専任担当者を常時雇用する必然性はありません。

しかし、仕事量が少ないからといって、中小企業に財務が重要でない訳では決してありません。資金調達力に乏しい中小企業にとって、財務の成否は会社の存続や成長に大きな影響を与えます。

中小企業が、「仕事量としては少ないが、重要な財務業務をどのようにカバーすべきか。」という問題は、財務業務を専門家に部分的に委託することで概ね解決できます。企業側は専門家を常時雇用する必要はありませんのでコストを大幅に抑えることができますし、受ける専門家も複数社より財務業務を請け負うことで収益面をクリアできます。

当事務所でご用意している財務支援サービスは、まさにこのような財務部長のシェアリングサービスです。是非、ご活用ください。

■勝ち組と負け組の価格戦略は真逆です。

◆市場が飽和した日本のマーケットにおいては、モノやサービ スを安く買おうとするエネルギーが蔓延しています。モノや サービスを提供する企業サイドも、その趨勢に迎合することで、自社の売上を確保しようと考える傾向が強いようです。

◇一方、十分な利益を確保できる価格設定を行ったうえで、隆々と経営を続ける企業もたくさんあります。当然、たくさんの顧客に支えられているはずです。

◆前者と◇後者、雑駁に分類するなら負け組と勝ち組です。
◆前者(負け組)が4割、◇後者(勝ち組)が2割、中間が4割、このような分類になりそうです。

◆前者(負け組)の企業の価格戦略は…
・「価格(安売り)を売るための道具」だと思っています。
・「価格は安い方が売れる」と思っています。
・「価格は、できるだけ安めに設定するべき」と思っています。
・「価格が高すぎて売れない」ことを過度に嫌います。
・「売れないより、薄利でも売れた方がよい」と考えています。
※うまく行ってたくさん売れても「繁盛貧乏」に陥ります。儲からないのに忙しい状態でバランスしてしまいます。後は頑張って・頑張り続けて…現状維持が関の山です。

◇後者(勝ち組)の企業の価格戦略は…
・「価格を売るための道具には使わない」との信念を持っています。
・「価格が安くても売れるわけではない」と思っています。
・「価格は、できるだけ高く設定すべき」と思っています。
・「(仮に)高すぎて売れないことが有っても仕方ない」と思っています。
・「薄利で売るよりも、売れない方がよい」と考えています。
※うまく行けば、たくさん売れて儲かる「繁盛高収益」の状態になれます。利益で次の投資ができ、さらなる成長を目指せます。うまく行かなければ、「閑散貧乏」の状態です。やり直せます。

■価格に対する二つの潮流…

◆モノやサービスを安く買おうとする潮流に巻き込まれることは得策ではありません。
◇もう一つの潮流、「良いモノ・必要なモノが欲しい。対価は払う」に乗せましょう。
気を付けてください。
◆前者の潮流の方が目立っています。◇後者は静かに流れています。

■もう一度「価格戦略=値決め」を再考してください。

「値決め」は経営の要諦です。であるにも関わらず、値決めに掛ける手間暇が少なすぎると思っています。総じて安く付けすぎているとも思っています。間違えた「値決め」が経営に与えるダメージを過小評価してはいけません。経営者は閑散な状態を嫌います。故に、安すぎる「値決め」をして、貧乏しても繁盛したいと考える傾向があります。「繁盛貧乏」がはびこるのはこのためでしょう。
経営者は楽な道を選びます。苦労して付加価値を積み上げるよりも、価格を低く抑えて価値とバランスしようと考えてしまいます。価格を売るための道具に使ってしまいます。安売り戦略の大罪は、良いものを創り出そうとする知恵を奪い取ることです。この愚策を長年続けている集団から、新たな商品やサービスを創り出す創造力は生まれません。商品やサービスの価値と価格のバランスは、その価格を下げて市場に合わせるのではなく、その価値を向上させることで調整してください。
多くの偉人たちが語る経営の王道です。

事業は付加価値を求めつづけることでのみ継続できます。値決めは重要な経営判断です。安売りは悪です。利益を計り、利益を求めてください。また、コストは自然に膨らみます。意識して抑え込んでください。高収益(Profitable)な企業体作りを強く意識してください。

事業承継時には大きな資金が必要になります。例えば、後継者の場合、相続等で分散した株式等を買い集める資金や、相続や贈与によって株式を取得した場合の納税資金等が想定されます。
他にも、親族ではない役員や従業員が事業を承継する場合、株式や事業を買い取るための資金が必要になります。また、経営者が交代したことにより信用状態が悪化し、銀行の借入条件や取引先の支払条件が厳しくなってしまうこともあるでしょう。

政府は経営者の高齢化に伴い、中小企業が営む事業が次世代にしっかりと引き継がれるよう、様々な制度を整備しています。
せっかく事業を引き継ぐ意欲のある後継者や従業員がいるにも関わらず、資金面で断念することがないよう、日本政策金融公庫や信用保証協会は、事業承継時に利用できる融資・保証制度を用意しています。

これらの制度を利用するためには、まず、経営承継円滑化法に基づく認定を受けなくてはなりません。認定を受けるためには、下記を記載した認定申請書を作成し、窓口を通じて経済産業大臣の認定を受けます。

(認定申請書の主な記載事項)
1.事業承継を行うこととなった原因
・先代経営者の死亡または代表者の退任

2.事業活動の継続に支障を生じさせる主な事由
・申請者が、申請者以外の者が有する株式を取得する必要があること。
・申請者が、申請者以外の者が有する事業用資産を取得する必要があること。
・申請者の売上高が減少することが見込まれること。
・仕入先からの取引条件について申請者の不利益となる設定又は変更が行われたこと。
・取引先金融機関との取引に支障が生じたこと。

認定を受けたら、会社の資金ニーズは信用保証協会へ、代表者個人の資金ニーズは日本政策金融公庫に申し込みます。信用保証協会では、通常の無担保枠とは別枠で保証を受けられる制度を用意しており、日本政策金融公庫では、代表者個人が低利で融資を受けられる制度を用意しています。

事業承継時の資金調達についても弊所までご相談ください。

■忙しいとは?時間がないとは?この言葉にどのような意味があるのかわからなくなる数字です。

◆「144時間」「176時間」この数字が何か考えてください。
○前者は5月の定時間内就業時間です。(土日と5月1日・2日を休みとした時)
○後者は6月の定時間内就業時間です。(土日を休みとした時)※平成29年度カレンダーより。
144時間を100とすると、176時間は122になります。実に22%も就業できる時間が違います。(業務量を同じとした時…)

5月度の残業時間を32時間とするなら、6月度は残業無しです。
5月度の残業時間を0時間とするなら、6月度は32時間時間が余ります。
5月と6月の差をどう埋めているのでしょうか?

◆「10,000時間」「80時間」この数字が何か考えてください。
○前者は勤続4年~5年の社員の累積勤務時間です。
○後者は2週間の勤務時間(定時内)です。
仕事が遅れている社員と、先手を打てている社員の仕事の進捗の時間差は、せいぜい2週間です。4~5年の社員にあてはめると、その差は0.1%以内です。
なぜ0.1%分、2週間仕事を先行してできないのでしょうか?

■労働時間の短縮には、定休日を作ることが最善です。

◆「365日」「12日」この数字が何か考えてください。
○前者は年中無休の営業体制を指します。
○後者は月一回の定休日を指します。
月一回の定休日を設けるだけで、3.3%営業時間(就業時間)を短縮できます。

◆「365日」「52日」この数字が何か考えてください。
○前者は年中無休の営業体制を指します。
○後者は週一回の定休日を指します。
週一回の定休日を設けることができれば、14.2%営業時間(就業時間)を短縮できます。
隔週の定休日を設けるだけでも、7.1%営業時間(就業時間)を短縮できます。

■給料が安いのか?高いのか?相対的に考えるための数字です。

◆「1,500円」「250,000円」この数字が何かを考えてください。
○前者はアルバイトの時給1,500円を指します。
○後者は約167時間(1か月定時就業時間)働いた時の月給です。
月給25万円は払えても、アルバイトに時給1,500円を提示できない中小企業は少なくありません。どうしてでしょうか?

◆「2~3倍」「3倍~無限大」この数字が何かを考えてください。
○前者は同年代の一般社員と部長クラス(最上級管理職)の年収の差(諸説ありますが)です。
○後者は同年代(40~50歳)の能力の差です。比較的単純な業務のスピード差は3倍以上、そのできる業務の範囲の違いは、できるかできないか、無限大の差がついています。
報酬にもっと差をつけるべきなのでしょうか?悩ましい事柄です。

■値上げと値引きについて考えるための数字です。

◆「3%」値上げの時、「3%」売れ個数減でも売上は現状維持、かつ「1.5%」増益です。
◆「3%」値下げの時、「3%」売れ個数増で売上は現状維持、一方「1.5%」減益です。
※共に原価率は50%とし、販管費は固定費と考えた時。
値下げ・安売りの選択肢がいかに利益を圧迫するか?よく考えてください。

■継続がいかに重要か?を示す数字です。

◆「3年」「10,000時間」この数字が何かを考えてください。
○前者は「石の上にも3年」(ことわざ)
○後者は「10,000時間の法則」(マルコム・グラドウェル氏)
共に物事を一定以上習得するために要する時間の目安を指します。貴社は新しいテーマに対して3年間継続して取り組めているでしょうか?中途半端は何一つ身に付かないようです。

選択したビジネスモデルによって、将来が大きく変わるのは当然です。しかし、同じビジネスモデルであっても、選択する取引条件が違えば同様に将来は変わります。

月額3万円程度の利用料を売上高とするA社とB社があります。
A社は普通に契約月から毎月3万円の利用料を徴収していますが、B社は当初6か月分の利用料を一括で徴収しています。

A社は毎月5件程度の新規契約を獲得していますが、損益分岐点売上高に達するまでには長期間を有しますので、資金繰りは非常に厳しい状況です。また、現状の業績では金融機関を頼ることもできません。

一方B社も、A社同様当初は毎月5件程度の新規契約でしたが、初月から100万円程度の収入がありましたので、すぐに営業マンを増員し、今では月商1,000万円に迫る勢いです。A社とB社は類似したビジネスモデルですが、取引条件の違いで結果は大きく違っています。

ソフトウェアの受託開発をしているA社と、ソフトウェアをパッケージ化して販売しているB社があります。A社の開発期間は数か月に及びますが、代金を全額回収できるのは開発が完了した後です。一方のB社はソフトウェアを商品化しているため、販売した翌月には代金を回収することができます。

A社は開発期間の人件費を確保するため、いつも資金繰りに奔走しています。また、売上高を増やそうと思っても、さらに多くの人件費が必要になるため、思うように売上高を増やすこともできません。一方のB社は、パッケージ商品の販売ですので、資金を気にすることなく売上を増やすことができます。そして稼いだ資金を次の開発に投資しています。

潤沢な自己資金を有している中小零細企業は少なく、また、借入にも限度があります。よって自力でキャッシュをどれだけ稼げるかどうかが成否を大きく左右します。もちろん利益も重要ですが、いくら利益率の高いビジネスモデルであっても、売上代金を回収するまでの期間が長ければ、事業の継続は困難です。

・売上代金をもっと早く回収できる方法はないか?
・支払をもっと遅らせる方法はないか?
・在庫の回転期間をもっと短くできる方法はないか?

キャッシュを稼ぐ力を強化するため、今一度考えてみてはいかがでしょうか。

◎コントロールできる事をコントロールしない事を『放漫経営』と呼びます。
◎頑張ればコントロールできる事をコントロールしない事を『怠慢経営』と呼びます。
◎コントロールできない事をコントロールしようとする事を『独り善がり経営』と呼びます。
◎さらに、時流に逆らう経営は『最も愚かな経営』です。

■経営の対象には…

◆1:コントロールできる事
◆2:頑張ればコントロールできる事
◆3:コントロールできない事
の三つがあります。

■経営を安定・成長させるためには…

◆1:コントロールできる事を完全にコントロールする事
◆2:頑張ればコントロールできる事をできるだけコントロールする事
◆3:コントロールできない事には、できるだけ適合する事
※特に、時流には積極的に身を預けるぐらい適合する事が重要です。絶対に逆らってはいけません。
上記の三つが重要です。

◆1:コントロールできる事を完全にコントロールする事とは…

損益計算書の販売管理費の項目は、総じてコントロールできます。社長自身がどのような投資判断をするかで、その後の損益計算書の概要が決まります。その後も、広告費が大き過ぎると思えば、その費用を減額できます。少ないと思えば増額できます。人件費・家賃…同じです。
すべて自分の意志と行動で決まります。コントロールできます。
ただし、短期間ごとに会計上の実績数値を確認しながら、調整を加えながら、最適な数値を探し続けねばなりません。最適な数値自体が刻一刻と変わります。車の運転と同じで、継続的なハンドルとアクセル・ブレーキの操作が必要です。
自分でコントロールできる事をコントロールしない事を「放漫経営」と呼びます。(※放漫経営の定義は諸説ありますが…)

◆2:頑張ればコントロールできる事をできるだけコントロールする事とは…

○例えば…資金調達はこれに当たります。戦略的に金融機関対応と資金調達を継続すれば、これを行わない企業と比較して、はるかに大きな資金を調達できます。大きな資金は、企業経営の安定性と経営判断の選択肢を格段に向上させます。
ただし、財務戦略(金融機関対応含む)は、一過性の対応ではその目的を達成できません。
財務戦略は、資金に余裕がある時から、創業から、コツコツと積み上げて行うことでその成果を見出せます。一方、多くの経営者は、資金需要が発生した時のみに、資金に困った時のみに、それを実施しようとします。
これは間違えです。この発想では、十分なコントロールはできません。
この財務戦略を行わない事、頑張ればコントロールできる事をコントロールしない事を「財務無策」(※銀行融資プランナー協会の定義です。)と呼びます。
※銀行融資プランナー協会の正会員である当事務所は、『新・税理士』として、貴社の財務機能を担います。

◆3:コントロールできない事には、できるだけ適合する事とは…

○例えば…『時短や生産性向上などを目指す働き方改革』、これは時流です。好む好まざるに関わらず適合して行かねばなりません。世の中の『働き方改革』への適合が終了した頃に気付いて、その後ろ髪を追いかけても手遅れです。最優先課題として、チャンスととらえて適合するしかありません。

○例えば…輸入業を営んでおられる企業様は、円高を望まれるでしょう。しかしながら、為替は一企業でどうにかできることではありません。今後の為替の動向に適合する経営を行うしか方法はありません。

○例えば…暖冬(※今年が暖冬であるとの意味ではありません)は、アパレル業を営んでおられる企業様にはマイナス要因でしょう。しかしながら、天候・気温は、どうにかできることではありません。暖冬に適合した経営を行うしか方法はありません。

時流やコントロールできない事に対しては、その事をどうにかしようと考えず、その事実に対してどう適合するかを考えていきましょう。

■経営管理の対象を、

◆1:コントロールできる事
◆2:頑張ればコントロールできる事
◆3:コントロールできない事
この三つに明確に分けて考えましょう。
コントロールできる事、頑張ればコントロールできる事を確実にコントロールする事を徹底しましょう。さらに、時流やコントロールできないことには上手に適合しましょう。

これらを徹底するだけでも、経営の成功確率は大きく向上するはずです。