事業拡大や新規事業立ち上げの際、3〜5年先を見据えた事業計
画の策定は重要です。しかし、計画の立て方を誤ると、深刻な
経営リスクを招く可能性があります。本コラムでは、効果的な
事業計画の立案方法について解説します。
■ 売上計画を最初に立てる落とし穴
多くの経営者が陥りがちな誤りは、売上計画から始めることで
す。しかし、売上は最も予測が困難な要素であり、不確実な売
上予測を基に計画を立てることは危険です。
例えば、初年度の売上高を5,000万円と見込み、それに基づい
て原価や人件費、広告宣伝費を計画したとします。しかし、実
際の売上が計画を下回った場合、たちまち資金繰りが悪化する
可能性があります。
■ 投資とリターンの関係を理解する
売上は結果であり、適切な投資が原因となって生まれます。損
益計算書では売上が先に来ますが、実際のビジネスでは費用が
先行し、その後に売上が発生します。
計画立案時には、「リターンがこれくらい見込めるから、これ
だけ投資しよう」ではなく、「現実的に投資できる金額はこれ
くらいだから、どのくらいのリターンが見込めるか」と考える
ことが重要です。
■ 投資可能額と投資先の検討
事業計画の出発点は、自社の投資能力を正確に把握することで
す。借入も含めた投資可能額を明確にし、その資金をどこに投
じれば最も効果的に利益を生み出せるかを検討します。
■ 具体的な計画立案のステップ
1. 投資可能額の把握
2. 投資先の優先順位付け(「何に」「誰に」投資するか)
3. 設備投資と運転資金(6ヶ月程度)への資金配分
4. 損益分岐点売上高の達成可能性検証
5. 必要に応じて投資規模の調整と再検証
■ 現実的な投資計画から始める
「理想の売上高」から始めるのではなく、「現実的な投資可能
額」から計画を立てることで、より堅実で実現可能な事業計画
を策定できます。これにより、経営リスクを軽減し、持続可能
な成長を実現する可能性が高まります。
事業計画は、夢を描くだけでなく、現実的な資源配分と段階的
な成長戦略を組み合わせることで、真に価値ある羅針盤となり
ます。投資とリターンのバランスを慎重に検討し、着実に実行
可能な計画を立てることが、中小企業の成功への近道となりま
す。
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