…前回号からのつづきです。

■創業者~中小企業まで、その大半は小資本、過小資本で経営しています。

少しのミスが致命傷になります。この実態を謙虚に受け止めて、(資本を積み

上げるまでは)出来るだけリスクを取らない経営を行うしか他に方法はありません。

過少資本である現実を無視して、大きく攻め込んでしまう経営者は危険です。

少しばかりうまく行ったから・うまく行きそうだと考えて、安易に人を増やす、

事業所を拡大する、事業領域を広げる等々、この判断とタイミングを間違えると

命取りになります。

このステージでは、行き過ぎるデメリットは、遅れるデメリットよりもはるかに大きく

なります。小資本、過小資本の会社は、少し遅れながら攻めてください。

※攻めるためには余力が必要です。自己資本の充実や財務戦略が重要です。

 

■この様に、実力以上に攻め込む経営体を『前のめり症候群』と呼びます。

『前のめり症候群』の経営体には、以下のような症状が現れます。

1.ぎりぎりの経営をしていると感じる。〔  〕

2.毎日が緊張の連続で疲れる。〔  〕

3.少し売上が落ちるとすぐに経営が厳しくなる。〔  〕

4.資金繰りに追われている。〔  〕

5.攻めすぎているかも、と感じることがある。〔  〕

6.攻めすぎたと反省している。〔  〕

いかがでしょうか?

 

■病名:『前のめり症候群』を整理します。

○会社の実力以上に事業を攻めすぎる、組織を大きくし過ぎる病です。

○原因

攻めるタイミングが、攻める規模が、自社の資本力・体力に比べて早すぎる、

大きすぎることが原因です。また、財務無策や緩慢な経営管理が気付きを

遅らせています。

○症状

持ち合わせた経営資源のすべてを出し切って、ぎりぎりの経営を行っています。

ひとつ判断が狂うと、一挙に経営の根幹が揺らぎかねない状況に陥ります。

企業経営においては、どうしてもこのステージを避けられないこともありますが、

可能な限り回避すべきです。それを恒常的につづけていると、会社も社長も

疲れ果ててしまいます。極めて危険な状況です。早期の治療が必要です。

 

■『前のめり症候群』への対応は、事業の速度を落とすこと、

後退させることで、前のめりの角度を緩やかにすることです。一方、財務戦略を

確立することで補うことができます。また、自己資本の充実や財務戦略をしっかり

確立するまでは、出来るだけリスクを取らない経営を行うしか他に方法がありません。

○対策

変化に対応できる柔軟性(Flexible)のある企業体を維持してください。

・事業を攻め過ぎないでください。

・ビジネスモデルを早期に固め過ぎないでください。

・経営の推移を小まめに把握してください。

■経営体は大きく4つの疾病を患っていると思っています。

◆病名1:分散症候群  …有病率50%

◆病名2:安売り症候群 …有病率50%

◆病名3:前のめり症候群…有病率30%

◆病名4:お人好し症候群…有病率60%

◎これらの疾病に対する処方箋が以下です。

【SP(Simple&Profitable)経営 基本方針】

◆第1条:すべてを単純(Simple)にすること。

◆第2条:高収益(Profitable)な企業作りを目指すこと。

◆第3条:変化に対応できる柔軟性(Flexible)のある企業体を維持すること。

◆第4条:経営判断を明確に(Clearly)にすること。

…次回号につづきます。

金融機関、特にメガバンクは決算書から導き出される様々な財務指標を重視しています。

その中で、最も重要視している指標は、自己資本比率です。自己資本比率とは、

総資本に対する自己資本の割合で、比率が高い方が良いとされています。

自己資本は、資本金と累積利益の合計ですので、増資をして資本金を増やしたり、

利益を積み上げたりすることで増加します。しかし、自己資本比率は、総資本に対する

自己資本の割合ですので、自己資本が増えても、それ以上に負債が増加すれば、

相対的に自己資本比率は低くなってしまいます。

 

金融機関やコンサルタントの目線から見れば、自己資本比率が高い会社の方が

良い会社ですので、「自己資本比率を上げましょう。」という指導になります。

しかし、実際に経営を実践している経営者様は、自己資本比率を気にしていては、

会社を成長させることができないことを本能的に知っているはずです。

自己資本比率は「結果」であって経営の「目標」にするものではありません。

自己資本比率を上げることを目標として経営するならば、非常に消極的な経営を

強いられます。「他人の資金を活用して新しい事業を創造する。」といった

事業家として当たり前の行為が、自己資本比率を下げる要因になるためです。

自己資本比率を高く維持したければ、自己資本の範囲内で小さな商売に徹するか、

そもそも会社を作って何もしなければ、自己資本比率は100%のまま維持できます。

 

政府は盛んに投資の拡大を推進しています。自己資本の小さな中小企業が投資を

行うためには、借入が必須のはずですが、一方で、金融庁や中小企業庁から出てくる

施策には、残念ながら、自己資本比率を重視したものが多く見られます。

自己資本の小さな中小企業を自己資本比率で縛ってしまっては、投資の拡大など

期待できないと個人的には考えますが、評論家ではありませんので、このような

環境の中で、どのような経営を実践すべきかを考えたいと思います。

事業と自己資本比率の関係は、借入と投資を実行して一旦自己資本比率を

悪化させることから始まり、やがて投資が実ることによって自己資本が充実する。

というサイクルで成り立っています。経営者として最も注意すべきポイントは、

投資をして自己資本比率が下がっている段階においては、資金調達が非常に

難しいという現実です。自社の事業規模と調達力を見極め、資金が途切れない

ようにしなくてはなりません。

しばしば見かける間違った企業様の例です。

自己資金が1,000万円、調達力が2,000万円であるにも関わらず、黒字化までに

5,000万円必要なビジネスに取り組んでいます。自己資本比率が悪化している

真っ只中に資金が切れますので、追加の資金調達ができずに苦労してしまいます。

「最初に3,000万円で黒字化できるビジネスをデザインすべきだった。」というのが

正解ですが、自社のビジネスがどの程度の資金を要するのか、また、自社の調達力が

どの程度なのかが分からなくては、そもそも正解を導き出すことはできません。

自社のビジネスに要する資金の見積もり、自社の資金調達力の把握は、一定の経験と

知識が必要になります。

 

是非、貴社のビジネスモデルをお聞かせください。

…前回号からのつづきです。

■「値決め」は経営の要諦です。であるにも関わらず、値決めに掛ける手間暇が少なすぎると

思っています。総じて安く付けすぎているとも思っています。間違えた「値決め」が経営に

与えるダメージを過小評価してはいけません。経営者は閑散な状態を嫌います。

故に、安すぎる「値決め」をして、貧乏しても繁盛したいと考える傾向があります。

「繁盛貧乏」がはびこるのはこのためでしょう。

経営者は楽な道を選びます。苦労して付加価値を積み上げるよりも、価格を低く抑えて価値と

バランスしようと考えてしまいます。価格を売るための道具に使ってしまいます。

安売り戦略の大罪は、良いものを創り出そうとする知恵を奪い取ることです。

この愚策を長年続けている集団から、新たな商品やサービスを創り出す創造力は生まれません。

商品やサービスの価値と価格のバランスは、その価格を下げて市場に合わせるのではなく、

その価値を向上させることで調整してください。

多くの偉人たちが語る経営の王道です。

 

■この様に、「値決め」が弱気で利益を出せない経営体、さらに、新しい価値を生み出す創造力を

無くしてしまった経営体を『安売り症候群』と呼びます。

『安売り症候群』の経営体には、以下のような症状が現れます。

1.頑張っているのに儲からない。〔  〕

2.新しい商品、サービスを創造できていない。〔  〕

3.利益は出なくて良い、と思うことがある。〔  〕

4.値上げをしたいと思っていてもできない。〔  〕

5.ぎりぎりの経営をしていると感じる。〔  〕

いかがでしょうか?

 

■病名:『安売り症候群』を整理します。

○値決めに対する姿勢が弱気で、利益管理も曖昧になる病です。

○原因

安くないと売れないとの思い込みが原因です。良いものには相応の値段を(それなりのものは

それなりの値段を)付けてください。良いものを安く売る必要はありません。原価が上がれば

価格を見直す、この当たり前の企業行動を取らなければ、利益がどんどん減ります。

利益が薄くなればなるほど、良いものを作ろうとする知恵や創造力を失います。

最後は、薄利は善、利益は悪の心境に陥ります。

こうなると末期です。

○症状

二つのレベルに分かれます。繁盛貧乏のレベルが第一段階です。このレベルは頑張っているのに

値決めを間違えていて儲からない状況です。この段階では価格の見直しを行えば容易に治癒

できます。第一のレベルを続けていると、頑張っても儲からないと思い込み、頑張る意欲、

より良いものを創造しようとする力を失くしてしまいます。最後には、儲からない自分を正当化する

ために、儲けは悪、儲からないことが善、ビジネスそのものを否定するようになります。

 

■『安売り症候群』への対応は…「繁盛貧乏」から抜け出すことです。『高収益化(Profitable化)』

と定義します。

○対策は…高収益(Profitable)を目指す、ここから始めてください。

・値決めを再考ください。値上げを検討してください。

・付加価値の向上を目指してください。

・利益管理を徹底してください。

・コストを抑えてください。

 

■経営体は大きく4つの疾病を患っていると思っています。

◆病名1:分散症候群  …有病率50%

◆病名2:安売り症候群 …有病率50%

◆病名3:前のめり症候群…有病率30%

◆病名4:お人好し症候群…有病率60%

 

◎これらの疾病に対する処方箋が以下です。

【SP(Simple&Profitable)経営 基本方針】

◆第1条:すべてを単純(Simple)にすること。

◆第2条:高収益(Profitable)な企業作りを目指すこと。

◆第3条:変化に対応できる柔軟性(Flexible)のある企業体を維持すること。

◆第4条:経営判断を明確に(Clearly)にすること。

…次回号につづきます。

前回のお役立ち情報でご案内させていただいた「中小企業等経営強化法」について、

「結局どうすれば良いの?」というお声がありましたので、メリットや手続き方法について、

企業側の視点で解説致します。

■経営力強化法の概要について

経営力強化法の概要を簡単に説明すると、

1.中小企業が「経営力向上計画」を策定し、

2.主務大臣あてに「申請」を行って「認定」されると、

3.様々な「支援措置」を受けられる制度。となります。

■様々な支援措置(企業のメリット)とは

最も魅力のある支援措置は、「生産性を高めるための機械装置を取得した場合、3年間、

固定資産税が半分になる。」というものではないでしょうか。

他にも、「商工中金による低利融資を受けられる。」「信用保証協会の保証枠が拡大される。」等の

措置が用意されていますが、必ず借りられるという訳ではない点に注意が必要です。

■申請の仕方は

下記中小企業庁のホームページから申請書(A4用紙2枚)をダウンロードして作成し、各地方の

経済産業局に提出するだけです。

http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/

 

計画書は、政府が推奨する「財務分析手法」や「事業分野別の指針」を用いて策定しなくては

なりませんが、「事業分野別の指針」とは、各事業分野における業界の課題や改善策をまとめた

ものです。現在指針が出ている事業分野は、製造業、卸・小売業、外食・中食、旅館業、医療、

保育、介護、障害福祉、貨物自動車運送業、船舶、自動車整備になります。

申請をする予定はなくても、ご自身が属する業界の指針に目を通してみてはいかがでしょうか。

こちらも先ほどのHPから確認することができます。

 

中小企業等経営強化法の認定は、ものづくり補助金の加点要素にもなるなど、今後、政府が行う

中小企業向けの支援措置を受ける際には、必須のものになるかもしれません。

(もちろん企画倒れに終わる可能性もあります。)

設備投資を要しない事業形態の企業様にとっては、ややインパクトに欠ける内容ではありますが、

認定を受けるデメリットはなさそうですので、「経営を強化する。」という本質的な目的のために

認定を受けてみてはいかがでしょうか。

 

計画書、申請書の作成が困難な場合は、税理士など経営革新等認定支援機関のサポートを

受けながら作成することが可能です。

お問い合わせください。

■経営体(そもそも世の中)の諸々はすべて、時間の経過とともに複雑な方向に、増える方向に

動きます。世の中のベクトルは複雑化・増加であって、単純化・減少ではありません。

従って、自然に物が増え、書類が増え、手続きが複雑になり…高コストになります。

品揃えが増え、在庫が増え…総花的になります。弱くなります。人は仕事が増え(自らが増やし)…

多忙になります。故に、強烈に意識しない限り、時間が経過するごとに会社はややこしくなります。

弱くなります。長時間労働や生産性・収益性の低さの主たる原因の一つはこれが原因だと

思っています。

 

■この様に、複雑化・増加のベクトルに巻き込まれ、対応できていないがゆえに生産性・収益性の

低さを招いている状況の経営体を『分散症候群』と呼びます。

『分散症候群』の経営体には、以下のような症状が現れます。

1.社内の動きが遅く(悪く)なる。〔  〕

2.オペレーションのミスが多くなる。〔  〕

3.経営コストが割高になる。〔  〕

4.商品、サービスが総花的で特徴がない。〔  〕

5.頑張っているのに儲からない。〔  〕

6.新しい商品、サービスを創造できない。〔  〕

いかがでしょうか?

 

■『分散症候群』という疾病を整理します。

○商品やサービスの幅を広げ過ぎて、マーケティングが曖昧になる病です。誰に・何を売るかが

ぼやけてしまっています。

○原因

商品の品揃えやサービスの幅を持たないと売れないとの思い込みが原因です。企業は何もない

ところから始まります。このステージでは品揃えの強化や幅が必要です。しかし、一定のレベルを

越えたあたりから、商品の品揃え、サービスの幅、事業領域を絞りながら成長を遂げるべきです。

拡大は面を広げることではなく、面を狭めて深堀することです。このあたりが誤解されています。

だからこの病気が蔓延するのでしょう。

○症状

経営資源が分散され、社内のありとあらゆるものが複雑になるため、動きが悪くなります。

対応が遅くなり、ミスが多発し、全体にコスト高になります。各商品やサービスの磨きこみも

十分でなく、総花的な品揃え、サービスを提供しており、これといった強みもありません。

 

■『分散症候群』への対応は…止めて・減らして・集中して・尖ることです。

これを『単純化(Simple化)』と定義します。

○対策は…

すべてを単純化(Simple化)することです。

1.減らすことです。絞り込むことです。

2.自社の強み(ツキ)を探して特化することです。

 

■経営体は大きく4つの疾病を患っていると思っています。その有病率は決して低くありません。

◆病名1:分散症候群  …有病率50%

◆病名2:安売り症候群 …有病率50%

◆病名3:前のめり症候群…有病率30%

◆病名4:お人好し症候群…有病率60%

 

◎これらの疾病に対する処方箋が以下です。

【SP(Simple&Profitable)経営 基本方針】

◆第1条:すべてを単純(Simple)にすること。

◆第2条:高収益(Profitable)な企業作りを目指すこと。

◆第3条:変化に対応できる柔軟性(Flexible)のある企業体を維持すること。

◆第4条:経営判断を明確に(Clearly)にすること。

…次回号につづきます。

「税金を払いたくないので利益を減らした。」という話を良く耳にします。しかし実際は、

「税金を払いたくても払えないので、やむを得ず利益を減らした。」というケースも多い

ようです。せっかく利益が出ているにも関わらず、お金が理由で利益を圧縮せざるを

得ないのは大変もったいないことです。

 

法人税等の実効税率は利益の約30~40%です。仮に利益が100万円だったとすると、

税額は30万円~40万円になります。税額よりも利益の方が大きいので、税金が払えない

はずはありません。しかし、いざ税金を払おうとすると、「手元に現金がない!」ということが

良くあります。なぜでしょうか。

 

利益が出ているのに税金が払えない理由は、利益が現金化されるより前に、税金の支払い

期限が到来するためです。税金は利益額を基準に計算しますので、たとえ利益が売掛金の

状態であっても、税金を支払わなくてはなりません。この時間的なズレに対処するためには、

財務を強化するのが最良です。

 

税金が払えないからと言って利益を圧縮すると、確かに税金は少なくなりますが、様々な

問題が発生します。まず、無理な利益圧縮が脱税と認定されるリスクがあります。もう一つは、

決算数値にひずみが生じるため、金融機関から相手にされなくなるリスクがあります。

よって、正しい対処方法は、事前にファイナンスを行って、税金を払えるだけの資金を

プールしておくことです。

 

事前に資金を調達するためには、毎月の利益状況を把握して、あらかじめ税金の額を予測

しておく必要があります。また、毎月のキャッシュの状況も把握して、どれぐらい資金が不足

するかも予測しておく必要があります。

 

試算表と資金繰表を毎月作成する。やはり基本的な財務活動が安定した資金運営の

第一歩です。決算の時に慌てて利益を圧縮することがないよう、資金管理を徹底してください。

■社長は日々多くの判断をくだしています。

過去の経営判断の集積が現状であり、これからの判断の結果が未来の経営成績に

反映されます。判断の精度が原因、経営成績が結果、タイムラグを経て明確な

因果関係が生まれます。

■社長は、何を基準に経営判断を行っているのでしょうか?

理詰めで考えて判断する以外に方法はありません。
常に自身の頭の中で考えを突き詰めて、論理に沿って判断すべきです。それ以外に

方法が見当たりません。絶対にやってはいけないことは、曖昧な形で伝わってくる、

無責任な世間の間違え常識を鵜呑みにすることです。

■曖昧な形で伝わってくる、無責任な世間の間違え常識とは…

◎間違え常識1:経営の生産性向上のためには、改善することだ。

⇒違います。止めることです。

◎間違え常識2:従業員が忙しい。

⇒違います。マネージメントが雑なだけです。

◎間違え常識3:社長が忙しい。

⇒違います。余計なことをし、コントロールできないことを考えているからです。

◎間違え常識4:社長は、急ぎで重要なことに専念すべきだ。

⇒違います。社長の仕事は、急ぎでない重要なことへの対処です。

◎間違え常識5:人間は色々なことに同時に対処できる。

⇒違います。人間はマルチタスキングが出来ないようにできています。

◎間違え常識6:お金は、お金が必要な時に借りる。

⇒違います。お金は、借りられる時に借りられるだけ借りることです。

◎間違え常識7:借入れは少ない方が良い。

⇒違います。そうでないことも多いです。

◎間違え常識8.取引する銀行は大きな銀行が良い。

⇒違います。取引する銀行は分相応が良いはずです。

◎間違え常識9:

創業時、自己資金が底をついて資金が逼迫するタイミングで資金調達する。

⇒違います。デスバレーに突入する前の創業初期か、デスバレーを抜け切った

黒字転換後しか調達できません。

◎間違え常識10:

現状の厳しさを強調して、金融機関に融資を依頼する。

⇒違います。返済できる根拠を書面で示して依頼するべきです。

◎間違え常識11:マーケットインこそすべてだ。

⇒違います。プロダクトアウトこそ重要です。

◎間違え常識12:

収益性の良し悪しは、マネージメントやマーケティングで決まる。

⇒違います。その前に事業立地・ビジネスモデルの良し悪しが重要です。

◎間違え常識13:売れないので価格を下げる。

⇒違います。価格を売る道具に使ってはいけません。

◎間違え常識14:売上こそ経営の肝だ。

⇒違います。利益の方が重要です。

◎間違え常識15:協業先を早く作りたい。

⇒違います。その前に自立することです。

◎間違え常識16:

十分な費用を費やして最高の管理を行うことが重要だ。

⇒違います。最適な管理を最小のコストで行うべきです。

◎間違え常識17:従業員に好かれたい。

⇒違います。好かれる社長のいる会社は総じてうまく行っていません。

◎間違え常識18:衆知の経営を行いたい。

⇒違います。小さな会社は独断こそ正です。

◎間違え常識19:能力の限界まで出世させてあげたい。

⇒違います。能力の限界の手前に留めるべきです。

 

経営判断は、とことん理詰めで行ってください。絶対にやってはいけないことは、

曖昧な形で伝わってくる、無責任な世間の間違え常識を鵜呑みにすることです。

上記の間違え常識に対するコメントも、本当は間違えかも知れません…

とことん理詰めで考えてください。

毎月の経営状況を正確に把握できる資料は「試算表」です。多くの経営者様が試算表を見て、

「売上が上がっている。」とか、「利益が減っている。」などの状況を確認し、日々の経営判断に

役立てておられます。しかし、もし試算表そのものが間違っていれば、そこから下される判断も

間違ってしまう可能性が高くなります。自社の状況を鑑みて、正確な試算表を作成するのが

難しいと考えるならば、思い切って、もっと簡素な管理方法に切り替えるのもひとつの解決

方法です。試算表ではなく資金繰表です。

 

財務体質の強化に取り組んでおられる企業様の事例です。数か月前から関与をスタートし、

オブザーバーとして月1回のミーティングに参加してきました。ミーティングの参加者は社長、

取締役、経理担当者です。毎月、経理担当者が作成した試算表をベースに議論を行います。

 

(経理担当者)

「先月の売上高は昨年対比伸びましたが利益は減っています。」

(社長)

「A社さんで値引したからじゃないかな。」

(取締役)

「いや、工場の人件費が増えたからではないでしょうか。」

(全員)

「うーん・・・」

 

昨年対比、売上高が伸びたにも関わらず、減益となった要因について、1時間程議論が

なされて会議は終わりました。会議の結論は、毎回「もっと売上を伸ばそう。」で締め

くくられます。しかし、そもそも減益ではなく増益だった可能性があります。

実際は減益ではなかったと考える理由は、試算表に在庫が反映されていないためです。

仕入額がそのまま原価となっており、先月68%だった原価率が今月は77%になっています。

明らかに異常な増加です。同社の平均原価率は70%ですので、今月は単純に仕入が

多かっただけで、在庫を考慮すれば実際は増益だった可能性が十分にあります。

 

年商3億円未満の中小企業においては、正確に試算表を作成する機能が備わっていない

ことが多いため、実は、同社のように不正確な試算表で経営判断がなされているケースも

多いのではないかと感じます。しかし、正確な試算表を作成するためには、財務に精通した

人材を雇用したり、毎月棚卸を行ったりしなくてはならないため、負担が大きくなります。

よって、正確な試算表を作成することに固執せず、思い切って、キャッシュの動きだけを

まとめた「資金繰表」を、経営管理ツールにすることを提案します。

 

企業が最も注意を払わなくてはならないのは、赤字になることよりも資金を切らすことです。

この点において、資金繰表の方が試算表よりも資金の動きが良く分かります。また、在庫額、

売掛金、買掛金、減価償却費など、実態を把握しにくい項目は最初から考える必要は

ありませんので、作成も簡単です。不正確な試算表を管理ツールとするより、正確な

資金繰表を管理ツールとした方が、効率的かつ効果的かもしれません。

■粗利益率の低いビジネス、高いビジネスは…

 

○最も粗利益率の低いビジネスは金融業です。

※金利を粗利益率と並列で表現することは少々乱暴ですが、ここではあえてそうさせて

いただきます。数%、住宅ローンには1%を割り込む金利の商品があります。

大きな資金を極めて低コストで調達できて、長期間寝かせることができる事業背景があって、

はじめて金融業は成立します。

 

○次に粗利益率の低い業態は商社です。

その与信力や保有する商圏を背景に、大きな取引の間に入って、10%以下のマージンを

収入源にします。安定した資本力・資金力があって、はじめて商社ビジネスができます。

※商社のビジネスモデルは大きく変化しています。現時点では、事業への直接投資を行って、

より多くのリスクとリターンをとる形態が主流です。

 

○次に粗利益率が低いのは流通業でしょうか。

商品を作るメーカーがあって、そのメーカーから商品を仕入れて売ります。製造に関する

利益はメーカーがシェアします。販売に関する利益が流通業態の利益になります。

粗利益率は、30%~50%弱でしょうか。

(…中略)

 

○最も粗利益率の高いビジネスは、コンテンツやノウハウを提供するビジネスです。

仕入れはありません。自分たちの知恵で価値を創造して、それを販売します。

■粗利益率は外部との関わり度合いで決まります。

粗利益率20%、これはエンドユーザーに届くまでの役務・価値の内の、80%は自社以外が

担っている・生み出していることを意味します。

同様に、粗利益率50%はその関わり度合いが50%、粗利益率100%はそれが100%である

ことを意味します。

■粗利益率100%が必ずしも優ではありません。

粗利益率100%とは、ユーザーに商品やサービスを届けるまでに、他人の力を借りないことを

意味します。良く言えば自前主義、悪く言えば協業ができない、故に、一般論として粗利益率

100%のビジネスは大きくなりません。

■低粗利益率のビジネスは、小資本企業には不向きです。

低粗利益率のビジネスは、大資本家向けです。他人の知恵と、自身の資本力・資金力をうまく

活用して利益を上げます。金融業や商社がこれに該当します。

一方、小さな資本しか持ち合わせていない中小・零細企業や独立開業者は、「金は無いけど

知恵を使う」ビジネスを行っていかねばなりません。その多くを他人の力に頼る低粗利益率

ビジネスで成功することはできません。極めて難解です。

■小資本企業にとっての適正な粗利益率とは…

 

○感覚論で恐縮ですが…40%以上を目指してもらいたいと思っています。

◆(相談者様)

ネット通販で商品を仕入れて売ります。自己資金300万円と借入れ600万円で事業を始め

ます。想定する粗利益率は20%ぐらいです。これ以上の粗利益率をとると、売れないように

思います。

◇(当方)

事業資金総額900万円(内自己資金300万円)、粗利益率20%で資金繰り計画・利益計画を

作るとこうなります。

◆(相談者様)

そんなに厳しくなりますか。

◇(当方)

そうです。粗利益率を20%以上設定できないと考える前に、粗利益率40%を設定しても

売れる商品開発(商品発掘)に力を入れませんか?

 

○仕入れの支払いサイトや資金の回収サイトにもよりますが、総じて低粗利益率のビジネスは

資金の動きが忙しくなります。

また、20の粗利益を得るために、100の回収リスクを背負うことにもなります。経営が複雑で

難解になります。

小資本企業が始める低粗利益率ビジネスは、成功の確率を最初から大きく引き下げてしまって

いることをご認識ください。

この機会にご一考ください。