成長過程にある企業の資金調達方針は、金利よりも金額を重視すべきです。
安定期に入った企業は、投下資本に対する業績面の反応が鈍くなるため、
調達額を増やして積極的に投資するより、調達コストを抑えて利益の拡大を
図ることも必要です。しかし、スタートアップ、成長期の企業は、正しく投資を
すれば即座に業績に跳ね返ってくるため、金利よりも、調達額を重視することを
おすすめします。(ここでは銀行筋からの調達を想定しています。ノンバンクなど、
銀行筋よりも高い金利の場合は、良く検討する必要があります。)
仮にA行より金額1,000万円、金利2.0%の提案があったとします。
一方、B行の提案は、借入金額が1,500万円で金利は2.5%です。
A行の方が1,000万円あたりの金利は年間約5万円少なくなりますが、
貴社が年間10%の利益を残せる事業をお持ちならば、B行から1,500万円を
借り入れて事業に費やした方が、年間約32万円も資金を多く残すことができます。
よって成長過程にある企業の場合は、金利を下げる方法よりも、より多くの資金を
調達する方法を知っておくと役に立ちます。
より多くの資金を調達する方法を、お客様の事例でご説明します。X社は、2期目が
終わった時点で、メガバンクのプロパービジネスローン1,000万円の融資を受けて
います。3期目の期中に、飛び込みで来たある地方銀行の担当者より、保証付き
融資の提案を受けました。しかし、社長様は、既に取引のあるメガバンクに依頼する
のが筋だと考え、地方銀行の提案を断って、メガバンクで1,000万円の保証付き
融資を受けました。丁度この頃、弊所に財務部長のご依頼をいただきました。
金融機関との取引が増えてきたため、財務を強化したいとの申し出です。
弊所はより多くの資金を調達する方針を提案し、社長様にも賛同いただきました。
■ より多くの資金を調達する方法
X社は大変利益率の高いビジネスを行っており、3期目の業績はすこぶる好調です。
次の資金調達のタイミングである3期目の決算後は、保証協会で5,000万円以上の
調達も期待できます。問題はどこの金融機関で調達するかです。
金利を重視するならばメガバンクに申し込みます。しかし、メガバンクの場合は、
保証協会が承認した金額を融資して終わりです。新規取引のキャンペーンで
プロパービジネスローンを出してくれましたが、X社は、まだまだメガバンクが本格的に
プロパー融資を検討する規模には至っていません。
より多くの金額を調達するならば、プロパー融資を検討してもらえる地方銀行、
信用金庫に申し込みます。3期目の決算は好決算になる見込みであることを説明し、
保証協会の枠を与える代わりにプロパー融資を検討してもらうよう依頼します。保証
協会の調達額はどこの金融機関を経由しても基本的には同じですので、そうすることで
プロパー融資の分だけ調達額は多くなります。
X社の場合も、前回お断りした地方銀行にお声掛けしたところ、決算後に保証付き融資を
申し込むことを前提として、プロパー融資1,000万円を決算前に出してくれました。