『…雨が降れば傘をさすというようなことはだれでも知っています。傘もささずに
ぬれ放題というものは、よほど奇稿な人でもなければやりません。ところが、
商売や経営のこととなりますと、これがなかなか当たり前にはいかなくなります。
私心にとらわれて判断を誤り、傘もささずに歩きだすようなことを、しばしば
しがちです。…』
〔「経営のコツここなりと気づいた価値は百万両」PHP文庫・松下幸之助氏著)
■利益が出ない見込みのお店を出店しようとするご相談を前回号で紹介しました。
…以下、前回号から引用…
●年商約5億円、営業利益約1,000万円(減価償却費約1,500万円)の飲食業を
経営しておられる社長様からご相談いただきました。
◎〔社長様〕
「テナント出店の依頼を受けているので出店したいが、家賃が少々高めで損益
分岐点ギリギリかも?」、相談を名目に来所されておられますが、真意は
「出店したいので背中を押してくれ」と言わんばかりです。
○〔当事務所〕
「来年は、上手く行って年商5億7,000万円、営業利益1,000万円(現状維持)に
なりますね?」少し意地の悪い質問をさせていただきました。
○〔当事務所〕
「なぜ、利益が出そうもない出店(社長自身がそのようにおっしゃっています。)を
目論むのですか?」さらに、意地悪な質問をぶつけさせていただきました。
…中略…
◎〔社長様〕
「売上を積み上げること、店数を増やすことのみに長年邁進してきました。この新店に
ついても、何とか出店したいとの想いのみで、冷静な判断を欠いていました。」
後日このような言葉をいただきました。
…引用終わり…
※飲食業として相応の成功を収めておられる立派な社長様です。それでも時に
『当たり前』でないことを良しとしようと考えてしまいます。
■本業不振で大きな赤字に転落して、返済猶予を受けながらも、余剰人員の削減も
行わずに、長期間粘り続ける社長様がおられます。長年かけて蓄えた資産の底も
見えてきました。
※何か?何かが『当たり前』の判断を妨げているのでしょう。
■門外漢の新規事業に大きな投資をして、上手く行かずに途方に暮れる社長様も
おられます。当然考えがあったのでしょうが。
※よほどのことがない限り、10メートルの川を幅跳びで超えることはできません。
飛び越えられるとする何か?何かが働いたのでしょう。
■経営者は、時に『傘もささずに歩きだす。』こんな判断をくだします。『商売や経営の
こととなりますと、これがなかなか当たり前にはいかなくなります。』ということでしょうか。
『…もし社長がちょっと見積もりを誤ったら、パーッと百億円ぐらいは簡単に損してしまう。
だから、会社にとっていちばん危険なのは、社長だということになる。…』
〔松下幸之助氏・経営語録〕
『いちばん危険なのは社長』社長の判断ミスは命取り、とおっしゃっています。
■普通に理詰めで考えて判断する…
中小企業における唯一の決裁権者である社長が、『私心にとらわれて判断を誤り、
傘もささずに歩きだすようなことを、しばしばしがち…』であるならば、これほど危険な
ことはありません。
故に、社長は自己の判断の正当性を、時に第三者に確認することも必要です。
あれ?と思ったら、第三者にも意見を求める…この習慣が必要かもしれません。
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