ある企業様の資金調達交渉の場面に同席させていただきました。
その際の体験を通じて、金融機関対応の重要なポイントを共有
したいと思います。

該当企業は、ウェブサービスを開発・販売する会社で、以下の
ような財務状況です。

・売上高:約2億円
・経常利益:約700万円
・減価償却費:250万円
・簡易キャッシュフロー:900万円
・借入残高:約80000万円
・資金調達目標:1億円(主に広告宣伝費用途)

金融機関は返済能力、具体的には「簡易キャッシュフロー」に
最も重きを置きます。売上高が増収基調で資本超過という前提
ですが、もし同社の簡易キャッシュフローが2,000万円以
上あれば、決算書をお渡しするだけで交渉は終わりです。理由
は、簡易キャッシュフローが2,000万円あれば、既存借入
8,000万円と新規借入1億円の返済が十分に可能であると
判断できるラインだからです。

しかし、この会社の簡易キャッシュフローは900万円と、こ
の基準を満たしていません。そのため、計画書の詳細な説明が
必要になりました。

計画の内容は、資金を広告に投じることで売上を大幅に増加さ
せる一方で、広告費用の増加により、翌期と翌々期は大幅な赤
字になるというものでした。この計画書を見た金融機関の担当
者は明らかにネガティブな反応を示しました。

金融機関の担当者が確認したいのは、極論を言えば、借入の返
済が出来るかどうか、資本超過の状態を保てるかどうかの2点
です。大幅赤字の計画書では、返済が出来ないということ、債
務超過に陥ることを表明されたのと同じです。

金融機関の考え方に配慮するならば下記の追加補足が必要です。

■ 売上の質が良質であること。
同社の売上高は、一度顧客になれば毎月継続して収入を得るこ
とができる継続課金型の売上です。解約率も数%であることか
ら一度獲得した売上高は向こう数年に渡って継続する可能性が
高いです。最初に広告費で赤字になっても、一度顧客になれば、
それ以降は広告費を0円にしても継続する良質な売上であるこ
とを理解してもらう必要があります。

■ 広告費はコントローラブルであること。
現在でも新規顧客獲得のための広告を止めれば、利益は倍増す
る状態です。よって、1億円を広告費に投入する計画ですが、
目標としている広告効果が得られない場合は、直ちに広告を止
める考えも一方で持ち合わせており、黒字化はある程度コント
ロール可能な状態であることを理解してもらう必要があります。

■ 赤字の先に簡易キャッシュフローの増加が見込まれること。
2年間先行投資を続けた後には、返済が十分に可能なキャッシ
ュフローが見込まれることを説明する必要があります。

■ 赤字の間の返済原資を示すこと
現預金の全部を先行投資に使う訳ではもちろんありませんので、
資金繰り表を作成し、現在の手元資金により赤字の間でも返済
が可能であることを示す必要があります。

■ 資本超過を維持できること
事業計画書に純資産の推移も追加し、財務の健全性を意識した
経営を行っており、自己資本の範囲内での投資を考えているこ
とを説明する必要があります。

事業計画は、計画通りに進められる資金があって初めて計画と
なり得ます。そのためには、自身がやりたいと思う計画だけで
なく、資金面でのパートナーである金融機関にも同意を得られ
る計画である必要があります。

金融機関の同意が得られる計画書を作成するには、金融機関の
考え方を理解している必要があります。金融機関を巻き込んで
積極的に事業を拡大したいとお考えの経営者様は、是非、弊所
にお声がけください。

■『スタートアップ育成5か年計画』とは…

2022年11月に日本政府が発表したスタートアップ育成5か年
計画は、スタートアップの新たな成長を支援し、イノベーショ
ンを加速させることを目的としています。日本の近未来の盛衰
を左右するぐらいの重要な施策であり、岸田政権も本件に関し
ては本気です。

この計画が掲げる目標は、以下です。
・5年後の2027年にスタートアップへの投資額を10倍に
・スタートアップへの投資額8,000億円規模を10兆円規模に
・スタートアップを10万社創出する、ユニコーンを100社創
出する
・日本がアジア最大のスタートアップハブとして世界有数のス
タートアップの集積地になる

上記の目標を達成するために政府は、人・モノ・金・税制等々、
可能な限りの施策を打っています。発表から一年数か月が経過
しましたが、その施策が具現化されてきました。

■そもそもスタートアップとは何か?大きな飛躍を目指す起業
家様には、選択肢とし理解を深めてください。

スタートアップ型のビジネスとスモールビジネス型のビジネス
は、運営の目的、成長の速度、資金調達の方法、リスクの取り
方など、多くの点で異なります。これらの違いを理解すること
は、起業家が自分のビジネスモデルを選択し、戦略を計画する
上で重要です。

●目的とビジョン

スタートアップは、通常、革新的なアイデアや技術を市場に導
入することを目指しています。これらの企業は、従来の問題に
対して独自の解決策を提供するか、まったく新しい市場を創出
することを目標としています。スタートアップの目的は、急速
な成長と規模の拡大にあります。一方、スモールビジネスは、
安定した収入を生み出し、地域社会にサービスや製品を提供す
ることを目指しています。これらのビジネスは、より伝統的な
ビジネスモデルを採用し、地域社会内で長期的な関係を築くこ
とに重点を置いています。

●成長と拡大

スタートアップは急速な成長を目指し、短期間で大規模な顧客
基盤を確立し、高い収益を生み出すことを目指します。これに
対し、スモールビジネスは、比較的遅い成長率を示し、主に地
元市場や特定の地域に焦点を当てています。スモールビジネス
は、持続可能な運営と徐々に成長することを重視します。

●資金調達

資金調達の方法も両者の間で大きく異なります。スタートアッ
プは、その革新的なアイデアや成長の可能性を魅力として、ベ
ンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの資金調達を目指
します。これにより、急速な成長とスケールアップを実現する
ための大きな資金を確保することができます。一方、スモール
ビジネスは、銀行借入、個人資産、または家族や友人からの支
援に頼ることが多いです。これらのビジネスは、外部投資家か
らの圧力が少なく、自己資本による運営が一般的です。

●リスクと安定性

スタートアップは、高いリスクと高いリターンを追求します。
市場に新しいアイデアを導入することは、不確実性が高く、成
功するまでの道のりは困難が伴います。しかし、成功した場合
のリターンは非常に大きくなります。対照的に、スモールビジ
ネスは、より予測可能なビジネスモデルと安定した収入を求め
ます。これらのビジネスは、リスクを最小限に抑えつつ、長期
にわたって安定した経営を目指します。

スタートアップ型とスモールビジネス型の主な違いは、成長の
速度、目指す市場、資金調達の方法、そして取るリスクの大き
さです。スタートアップは、革新的なアイデアを持ち、急速な
成長と大規模な市場の獲得を目指しています。これに対し、ス
モールビジネスは、地域社会に根ざした安定した収益と持続可
能な成長を目標としています。起業家は、自分のビジネスアイ
デア、成長の目標、リスク許容度を考慮して、これらのモデル
のどちらが最適かを決定する必要があります。

大きな飛躍を目指したい起業家様は、スモールビジネス型では
なく、スタートアップ型起業も選択肢に組み込んでください。
起業家にとって、今の日本は相当恵まれた環境であり好機です。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/su-portal/index.html

顧問先様の中には、正社員の雇用を最小限に抑え、外注などの
外部リソースの活用で安定した売上と潤沢な利益を出し続けて
いる企業様がいらっしゃいます。

中小企業にとって、資本やリソースが限られる中で、どのよう
にして競争力を確保し、市場での地位を築くかは永遠の課題で
す。新しい概念ではありませんが、「持たざる経営」という経
営戦略が中小企業にとっても有効なのか考えてみます。

■ 持たざる経営の魅力
持たざる経営は、企業が物理的な資産や固定費用を最小限に抑
え、必要なリソースやサービスを外部から柔軟に調達する経営
手法です。このアプローチの最大の魅力は、固定費用の削減と
経営の柔軟性にあります。市場の変化に迅速に対応できるだけ
でなく、リスクの分散も可能になります。

■ 中小企業における有効性
中小企業は、資本の規模や運用可能なリソースが限られている
ため、持たざる経営は特に有効とされています。以下にその理
由を挙げます。

・固定費用の削減:
資産を保有しないことで、固定費用を大幅に削減でき、財務の
健全性を保つことができます。
・柔軟性の確保:
外部リソースを活用することで、市場の変動や需要の変化に迅
速に対応することが可能になります。
・新しいビジネスモデルへの適応:
持たざる経営を取り入れることで、新しいビジネスモデルへの
適応が容易になり、イノベーションの創出につながります。

■ 実践する際の留意点
しかし、持たざる経営を実践する際には、いくつかの留意点が
あります。外部リソースの質と関係性の構築、自社の存在価値
の明確化が重要になります。また、市場や顧客ニーズの変化を
敏感に察知し、それに応じたビジネスモデルの柔軟な修正が求
められます。

■ 結論
持たざる経営は、中小企業にとって大きな可能性を秘めた経営
戦略です。資本やリソースの制約がある中小企業でも、この手
法を通じて、より大きな市場での競争力を確保し、持続可能な
成長を遂げることが可能になります。しかし、持たざる経営を
成功させるには、外部リソースの効果的な活用と、変化への柔
軟な対応が必要不可欠です。中小企業の経営者は、この新しい
経営手法をどのように自社に取り入れ、活用するかを真剣に考
える必要があります。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

これまで数多くの創業の相談を受けてきました。創業時には創
業融資の獲得をお手伝いし、その後も事業の成長を見守りなが
ら、適切なタイミングで成長資金を確保することが、順調な創
業のパターンと言えます。

しかし、創業融資を受けて事業を開始した後、売上が伸び悩む
ケースもあります。主な原因は、単純に商品やサービスが売れ
ないことですが、中には、社長が慎重になりすぎて、プロダク
トやサービスが完璧になるまで販売を開始しないこともありま
す。確かに、不完全なプロダクトやサービスを市場に投入する
ことにはリスクが伴いますが、早期に市場に投入して改善を進
めることが成功の鍵となる場合が多いのも事実です。

創業者が心掛けるべきポイントはいくつかあります。まず、積
極的な市場投入と同時に、継続的な改善を行うことが重要です。
完璧なプロダクトやサービスを待っていては競争力を失い、市
場での存在感を確立することが難しくなります。リリース後も
フィードバックを受けながら、製品やサービスの改善を進める
ことが必要です。

次に、スピード感を持って行動することが重要です。市場は常
に変化しており、競合他社も動き続けています。迅速な行動が
求められます。アイデアや計画を練り上げることも大切ですが、
行動を起こすことが成功の近道です。スピード感を持って行動
し、柔軟に対応することが重要です。

さらに、失敗を恐れずにチャレンジすることも大切です。失敗
は避けられないものですが、失敗から学ぶことが成長につなが
ります。チャレンジ精神を持って取り組むことが成功への近道
です。

最後に、周囲との協力やネットワークを活用することも重要で
す。成功には周囲の支援が不可欠です。助言や支援を受けなが
ら、自らのビジョンを実現していくことが重要です。

創業者は、完璧を待つのではなく、早期に市場に投入し、継続
的な改善を行いながら成長していく姿勢が求められます。柔軟
性やチャレンジ精神を持ち、周囲の支援を活用しながら、ビジ
ョンを実現していくことが成功への鍵となるのではないでしょ
うか。

創業や新規事業に関する資金調達等のご相談もお受けしており
ます。是非、ご相談ください。

■52枚のトランプを無作為に観客に並べ替えてもらった後に、
『種も仕掛けもありません。』と一通り(数秒間)観客にカー
ドの表を見せます。この時に52枚のトランプの並びをすべて
暗記してしまうそうです。後は、自分でトランプを繰り返し並
べ替えますが、どう並べ替えたかはすべて手の感覚で頭に入っ
ているそうです。何枚目に何があるのか、すべてです。観客が
『ストップ』と言って止まった場所のカードは、把握できてい
ます。さらに並べ替えながら、一枚ずつめくるカードを言い当
てます。トランプを使ったプロマジシャンの、種も仕掛けもな
いマジック?です。暗記力と正確な手さばき、まさに訓練の賜
物です。資質の問題もあるでしょうが、とんでもない努力を長
期間続けてこられたのでしょう。3年、5年、いや、10年以
上でしょうか。

■マラソンの世界記録ホルダーは、42.195キロメートル
を2時間1分強、時速20キロメートルを超えるスピードで2
時間走り続けています。資質の問題もあるでしょうが、とんで
もない努力を長期間続けてこられたのでしょう。3年、5年、
いや、10年以上でしょう。

■1万時間の法則があります。The New Yorkerの
スタッフライターであるマルコム・グラドウェル氏が提唱し始
めた、『集中して1万時間努力を継続できれば、その分野では
ある程度以上のレベルに到達できる』とする法則です。ダラダ
ラではなく集中して、これが条件です。
小学校1年生から野球を始めて、365日毎日3時間ずつ集中
して練習を継続できれば、高校1年生の夏に1万時間の壁を越
えられます。夏の甲子園で注目されるような選手は、皆1万時
間を越えているはずです。

■ビジネスマンにとって、1万時間の対象は何でしょうか?
その対象は、今の仕事そのもの、または、関連性の強い分野に
絞るべきです。勤務時間をすべてカウントするならば、1日8
時間、250日で2,000時間、5年で1万時間に到達しま
す。確かに、5年も社会人を経験すれば、殆どの人はそれなり
に仕事を覚えます。自宅での週末学習や、勤務後の自己学習に
時間をつぎ込める人は、1日10時間、330日で3,300
時間、3年で1万時間に到達します。期間を集中している分、
習得レベルも格段に向上するはずです。年長者は、さらに、勤
務時間を積み上げているわけですから、いずれにしても1万時
間の壁は越えているはずです。

■仕事に対しては、プロ(を目指す)意識が重要です。
プロのマジシャンは52枚のカードを瞬時に暗記して自在に扱
えます。一流のマラソン選手は、時速20キロメートル前後で
二時間強走り続けることができます。プロの野球選手は、時速
150キロメートルの白球を打ち返すことができます。…等々

■ビジネスマンである貴方は、何ができますか?何ができるこ
とを目指しますか?
今取り組んでいる業務分野において、徹底的にプロ化を図るべ
きではないでしょうか?営業職であるならば、日常の業務に百
%のエネルギーを投入しながら、併せて、営業に関する様々な
自己研鑽に励むことでしょう。関連書籍を読み漁ったり、動画
で学んだりしながら、日々の業務で仮説と検証を繰り返しなが
ら、予算の達成に邁進するのでしょう。この様な姿勢で1万時
間超の時間を過ごすことができたなら、営業のプロとして立派
に人生を送れるはずです。

経理職であるならば…
技術職であるならば…
等々、すべて同じです。

■プロとセミプロの間には、大きな壁があります。プロは、道
を究めた専門家です。セミプロは、良く知っている便利な人で
す。プロとセミプロの間には大きな壁があります。貴方がプロ
であるならば、貴方の食い扶持は生涯確保されるはずです。職
を求めて苦労することはありません。貴方がセミプロであるな
らば、運が悪ければ職を失います。

希望したのか?または、必然なのか?は別にして、今の仕事で
プロになりましょう。会社のためだけではありません。自分の
ためにです。

…次回号につづく

信用保証協会の「スタートアップ創出促進保証」制度が開始さ
れてから、約1年が経過しようとしています。この制度は日本
政策金融公庫の「新創業融資」と並び、経営者保証を不要とし
ている点が大きな特徴です。

経営者保証が不要というメリットは、起業家や中小企業経営者
が個人の財産をリスクに晒すことなく資金調達が可能となる点
です。新しいビジネスを立ち上げる際には不確定な要素が多く、
失敗するリスクもありますが、経営者保証がないことが大きな
安心感につながります。そのため、起業家や中小企業経営者は、
より大胆な資金調達の計画を立て、成長の可能性を追求するこ
とができるようになりました。

それでもなお、借入に抵抗感のある創業者の方もいらっしゃい
ますが、創業時に資金調達を行うことは、ビジネスの成功に不
可欠です。十分な資金があれば、製品やサービスの開発、マー
ケティング活動、人材の採用など、成長に必要なあらゆる面に
投資することができます。特に、競争が激しい業界では、創業
時の資金調達が成功の鍵となることがあります。資金調達を行
うことで、競合他社との差別化や市場シェアの拡大など、ビジ
ネスの成長に直結する取り組みが可能となります。

もちろん、借入をすることには、返済に関する不安、財務内容
の悪化や利子負担などのリスクがあります。また、借入に伴う
債務の増加は、経営上の負担となり、資金繰りの悪化や経営不
安を招く可能性もあります。しかし、適切な計画と戦略を立て
ることで、そのリスクを軽減することは可能です。

信用保証協会のスタートアップ創出促進保証制度、日本政策金
融公庫の新創業融資は、利用限度額、具体的な条件や手続きな
どに違いがありますので、利用を検討する際には、それぞれの
制度の特徴や運用面を詳しく把握することが重要です。

当事務所は、創業時の事業計画策定や資金調達支援に豊富な経
験があります。是非、ご相談ください。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

未来を背負ってもらえる若者たちの成長と活躍を願いながら、
前向きなメッセージを発信させてもらいます。新入社員、若手
社員に伝えてあげてください。

社会人として二十年近く時間を経て四十歳ぐらいになると、そ
のビジネスマンとしての実力の差は歴然とします。雲泥の差で
す。

○出来る分野・領域の広さに大きな差が付きます。太平洋とプ
ールの差です。

良くできる人は、概ねどんな業務もやる気になれば対応できま
す。そうでない人には、極めて限定的な作業しか与えられませ
ん。できないからです。

○業務の精度・スピードに雲泥の差が出ます。

知恵を使う業務であれば、できる人とそうでない人の差はざっ
と10倍ぐらいでしょうか。単純な業務であっても、その差は
3倍ぐらいになるように感じます。

社会人として、上記の事実を早い時期に知っておくべきです。
なぜ、これだけの差がついてしまうのかを、論理的に考えてみ
ましょう。

高校時代の運動部のことを思い出してください。

○放課後真面目に練習を継続している野球部のメンバーと、野
球部でないメンバーが、三年生の時に試合をしたら、この差は
歴然です。たった二年強の期間、一日当たり数時間の練習を継
続するかしないかの違いが、この雲泥の実力の差を生みます。

○スポーツより複雑でわかりにくいので自覚しにくいですが、
二十年という年月は、上記の何十倍もの差を生んでいます。そ
して、見る人が見れば、その差は歴然です。四十歳のビジネス
マンの実力に、想像を絶するぐらいのかい離があることを想像
いただけるはずです。

仕事は上手になってください。好む好まざるにかかわらず、社
会人として長期間生きて行かねばなりません。会社のためだけ
ではありません。何より自分自身のためです。

そのために…
目先の仕事に徹底的に真摯に取り組んでください。
どんな仕事に対しても、「誰にも負けない」との思いを込めて、
全身全霊で取り組んでください。机を拭く、こんな仕事でも、
「誰にも負けない、私の机の拭き方は、誰よりきれいで効率的
だ」と自負できるようにあたってください。一つ一つのこの真
摯な取り組みの集積が、自分自身の仕事への精度と執着を養っ
てくれます。

1.正確な実務能力を身につけてください。

書類を正確に早く作成する、文章を正確に早く書く、過密なス
ケジュールを効率的に乗り切る、これらを実務能力と呼びます。
この実務能力がその人のポテンシャルになります。若い間は、
可能な限り多くの業務をやりきる訓練を積んでください。

2.仕事の予習と復習をしてください。

アフターファイブや休日にも、仕事の予習と復習を欠かさず行
いましょう。この差がビジネス力の差を生みます。また、自分
自身の勉強の時間を確保してください。生涯勉強です。すべて
自分の財産になります。できるビジネスマンは習慣になってい
ます。

3.読書や音声で勉強してください。

できるビジネスマンの多くは読書家です。逆に、できないビジ
ネスマンの多くは本を読んでいません。週一冊本を読めば、
(四十歳を迎える)二十年で千冊強の本と出会えます。この千
冊の引き出しの有無が、ビジネスマンとして、人としての実力
の差の原因の一つです。また、オンラインの動画講座での学び
は効率的です。読書と併用してください。

4.良い仲間を見つけてください。

仕事に真摯に取り組む仲間、向上心のある仲間を見つけて親交
を深めましょう。類は友を呼びます。自分の仲間の属性は、そ
のまま自分自身の姿です。「明るく・朗らかで、前向きで、向
上心の強い勉強好きな」仲間たちと、お互いの成長を確かめ合
いながら生きていきましょう。

人は公平ではありません。これは紛れもない事実です。何故な
ら、過去(の努力)が違うからです。このことを肝に銘じてく
ださい。二十年後に後悔しないために、自分自身ができるだけ
主導権を握れる人生を送るために、長期目線でしっかり力を付
けましょう。(※新入社員に伝えてあげてください。)

◎参考データ:
(株)リクルートマネージメントソリューションズ(2014年データ)

自主的な学習に費やす時間は1週間にどれぐらいですか?

○新人
平均4.96時間(43分/1日)、1時間29.3%、8時間以上17.9%
○若手
平均3.32時間(29分/1日)、1時間37.5%、8時間以上9.5%
○中堅
平均3.94時間(34分/1日)、1時間35.9%、8時間以上11.5%

一週間に1時間と回答した人の未来は統計的に知れています。
自らの意思で負け組に向かって歩んでいます。8時間以上の人
には高い確率で勝てません。貴方は、1週間に何時間勉強しま
すか?決意を持って社会人のスタートを切ってください。

…次回号につづく

2022年12月に中小企業庁が策定した「収益力改善支援に
関する実務指針」をご存知でしょうか。中小企業の収益力向上
は、経済活動の活性化や地域の発展に直結する重要な課題です。
この指針はその課題に対処するための具体的な手法やアプロー
チについてまとめられています。

※収益力改善支援に関する実務指針
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/shuuekiryokukaizen/shishin.pdf

以下は、中小企業庁HPから抜粋した指針の概要です。

■実務指針の狙いと運用方針

・中小企業を取り巻く環境が激変する中、本源的な収益力の改
善に向けた取組や、思い切った事業展開を行うためのガバナン
ス体制の整備が必要。

・収益力改善やガバナンス体制整備の際に、経営者と支援者の
対話に活用し、互いの目線合わせや信頼関係の構築につなげる
ことを目的としている。

・経営改善計画策定支援事業(405事業・ポスコロ事業)に
ついては、認定経営革新等支援機関が本実務指針に沿った支援
を行うことを求める。

■収益力改善支援の実務と着眼点

1.支援ニーズの掘り起こし:
経営者向けと支援者向けの経営状況チェックリストを活用し、
経営者と支援者が互いの視点から、収益力改善のニーズを早期
に把握します。

2.支援者による相談対応:
対話と傾聴を基本姿勢に、ローカルベンチマークや経営デザイ
ンシートなどを活用しながら、経営者が納得できる取り組みを
共に模索します。
経営課題の多様化や高度化に対応するため、よろず支援拠点な
ども活用しつつ、幅広い支援者と早い段階で連携します。

3.計画策定支援:
1)現状分析:ローカルベンチマークなどを活用して、財務、
商流、業務フロー、内外の経営環境などを分析します。
2)経営課題の明確化:現状分析を踏まえて、課題を明確化し、
経営者の理想の姿を実現するための動機付けを行います。
3)課題解決策の検討:効率的で実行可能な解決策を検討しま
す。
4)アクションプランの策定:具体的な行動計画を策定します。
5)数値計画の策定:アクションプランの効果を踏まえて、数
値化した見通しを立てます。
6)資金繰りの検討:資金収支の予測と過不足への対策を検討
します。
7)金融支援内容の検討:金融機関と情報共有を行いながら、
金融支援の必要性や返済計画などを理解し、検討します。

■伴走支援の実務と着眼点

1.進捗確認:
数値計画と実績の差異を多角的に確認(財務指標を活用しつつ、
背景や要因等を含めて確認)

2.取組状況の確認:
アクションプラン等の取組状況を確認(内部統制や人員体制等、
数値以外の変化にも着目)

3.対応策の検討と事業者へのアドバイス:
計画の進捗状況の原因を分析し対応策を検討(経営者が、計画
に固執せず柔軟に取り組めるよう後押し)

4.報告支援:
計画進捗状況等を整理し、金融機関等のステークホルダーと報
告(共有)

5.計画の見直しとPDCAサイクルの構築:
取組を一過性のものとせず、課題設定→計画策定→実行→
検証・見直しのPDCAサイクルの構築を支援

この指針は中小企業の経営者や経営支援機関が具体的なアクシ
ョンを起こす際の参考となるだけでなく、政府や地方自治体が
中小企業を支援するための政策や施策の策定にも活用されます。
これにより、中小企業が収益力を向上させるための支援が強化
され、地域経済や産業の発展に貢献することが期待されていま
す。

新しい社員を迎え入れる時節です。人事についてもう一度考え
るきっかけにしてください。

■大企業と中小零細企業では背景が違います。

大企業は、従業員や就職希望者に対して、自社に対する愛社精
神、忠誠心、帰属意識等のブランドロイヤリティーを提供でき
ます。相応のBIGカンパニーや著名なベンチャー企業は、社
長個人の魅力ではなく、このブランドロイヤリティーが、継続
的な就業や就職動機として機能します。
一方、中小企業、まして零細企業にブランドロイヤリティーは
存在しません。社長個人がこの役目を果たさねばなりません。
言いかえると、「社長自身の器量やポテンシャルを越える人材
は採用できない、仮に採用できても辞めてしまう」、というこ
とです。故に、より優秀な人材を採用したいのなら、社長自身
が自らの器量やポテンシャルを高めていく努力を続けていくし
か方法がありません。悲観論ではなく、事実として認識してく
ださい。人事はこの認識から始めなくてはなりません。この前
提条件を踏まえて、以下のテクニカルな話に言及します。

■雇用の安定のための人事における3つの最適化とは…

◆人事業務で一番大切なことは、最適化です。
すべてにおいて最適化のポイントを求め続けることこそ人事担
当者の仕事です。中小零細企業では社長の仕事です。最適化が
なされておれば、人は概ね辞めません。採用もできます。離職
率が極端に高いのは、人が採用できないのは、最適化できてい
ないからです。
離職率が高いからレクリエーションを充実させる…間違えでは
ありませんが、本筋ではありません。採用できないから上手な
キャッチコピーを考える、採用媒体を見直す…間違えではあり
ませんが、本筋ではありません。

◆最適化とは…
1.【従業員の市場価値】と【会社が支払う給与】
2.【会社が従業員に求める業務】と【会社が支払う給与】
3.【従業員の能力】と【その従業員に求める業務】
の3つをバランスさせることです。

1.給与はその従業員の市場価値に適合させることが重要です。
給与はその人の市場価値に対して、安すぎても、高すぎてもい
けません。

○優秀な従業員を安く使えている、これは長続きしません。ど
こかで辞表がでます。
○割高な給与を支払っている、これも長続きしません。どこか
で社長のストレスが爆発します。辞めさせる羽目になります。

2.求める業務に応じた給与を支払ってください。
給与は求める業務に対して、安すぎても、高すぎてもいけませ
ん。

○難解な業務を、薄給の人に求めてはいけません。どこかで辞
表がでます。
○安易な業務を、高給の人に割り当ててはいけません。どこか
で社長のストレスが爆発します。辞めさせる羽目になります。

3.従業員の能力に合わせて業務を割り当ててください。
割り当てる業務は、従業員の能力に対して、難しすぎても容易
過ぎてもいけません。

○能力の低い人に、難解な業務を背負わせてはいけません。ど
こかで辞表がでます。
○能力の高い人には、それ相応の業務を担ってもらいましょう。
有効に活用しましょう。

言うは易く行うは難し…ですが、人事の肝は上記です。
(程度加減の)正解はだれにもわかりませんが、そのゴールの
無い道をきわめることが人事です。社長にとって大切なことは、
上記の理屈を理解して、程度加減を是正しながら判断・行動す
ることです。

◆絶対にやってはいけないこと…
○よくできる人材を、薄給を承知で便利に使い続けること
ある日突然辞表がでます。適正な給与(地位)の是正を実施し
なかったことが原因です。

○道理を越えた高給を支払って雇用する、慰留すること
長続きしません。社長の、組織内のアンバランスが限度を超え
た時、辞めさせる羽目になります。そして、大きな罪を作りま
す。その人の人生を歪めてしまいます。

○能力の低い人に、(精神論として)高度な仕事を任せること
訓練の機会・期間を設けずに、業務を何段階もステップアップ
させること、これに耐え得るのはほんの少数です。大半の人は
挫折します。訓練の機会・期間を経ずにやってはいけません。

同様の理屈で…
○薄給で優秀な人材を求めること
○薄給で採用して高度な仕事を求めること
○ただただ高給を訴求して人を採用すること

■最後に2つ…

1.人事をある程度適正に行えば、人はそれ程辞めません。
小さな会社で人が次々に入れ替わるのであれば、それは人事が
なされていないからです。是正が必要です。一方、それでも一
定の比率で人は辞めます。会社への不満とか?ではありません。
人それぞれです。可能な限り円満に送り出してあげることが得
策です。

2.力不相応の人材を求めてもうまくいきません。
これも達観が必要です。まずは(今の)力相応の従業員を求め
ましょう。優秀な人材が集まらないと嘆く社長様も少なくあり
ません。自社や自分の現状を棚にあげて、優秀な人材を求める
社長様がいますが、これも無いものネダリです。

◎良い会社になった時に、優秀な従業員が入社します。良い従
業員が集まるから良い会社になるのではありません。
◎今の実力相応の従業員が入社してきます。鏡の原理です。
◎まれに、将来性に賭けて入社してくれる人もいます。(今の)
力不相応な従業員の雇用は、社長自身が一本釣りするしかあり
ません。これをやってください。できなければあきらめましょ
う。

貴社の人事に対する考え方を、この機会にご一考ください。

2024年4月から予定されているM&A(合併・買収)優遇
税制の拡充は、中小企業にとって注目すべきポイントとなりま
す。この制度を活用することで、企業の成長を促進し、税金を
節約するチャンスが広がります。以下では、この制度の拡充内
容、利用すべき企業、そして注意点について掘り下げてみます。

■M&A優遇税制の拡充とは?

日本の中小企業において、後継者不足は深刻な問題です。多く
の企業が事業承継に悩む中、政府はこの問題に対処するため、
2024年税制改正大綱においてM&A優遇税制の拡充を計画
しています。

主な変更点は以下の通りです:

1. 損金算入率の引き上げ
中小企業において、初めてM&Aで譲り受けを行う場合、70
%が損金に計上できるようになります。
2回目のM&Aでは90%、3回目以降は100%が損金に算
入可能です。

2. 従業員2000人以下の中堅企業への拡充
従業員2000人以下の中堅企業も、2回目のM&Aから90
%、3回目以降は100%が損金に算入できるようになります。

3. 過去5年間までの遡及規定
過去5年間までさかのぼってM&Aで1億円以上の株式取得を
行っている場合は1社とカウントされ、損金算入率の適用があ
ります。

■ どのような企業が利用すべきか?

この拡充されたM&A優遇税制は、特に以下のケースで利用す
べきです

1.後継者問題を抱える企業:後継者不足で事業承継に悩んで
いる企業は、他の企業との合併や買収を通じて、事業を継続し
やすくなります。

2.成長戦略を模索中の企業:成長戦略の一環として、他の企
業を買収して市場拡大を図る企業は、税制優遇を活かすことで
資金を効率的に活用できます。

3.競争力向上を図りたい企業:他社の技術やノウハウを取り
入れ、競争力を高めたい企業は、M&Aを通じて戦略的な強化
を図ることができます。

■ 制度を利用する際の注意点

利用する際には以下の点に留意しましょう:

1.戦略性を重視:単なる節税手段ではなく、ビジネス戦略に
組み込むことが重要です。合併・買収がビジョンや成長戦略と
一致しているか確認しましょう。

2.リスク評価:M&Aにはリスクが伴います。買収先企業の
デューデリジェンスを徹底的に行い、リスクを最小限に抑える
戦略を策定しましょう。

3.税務アドバイザーの活用:税制は複雑で変動するため、税
務アドバイザーと協力し、最適な税務戦略を検討しましょう。

2024年M&A優遇税制の拡充は、中小企業にとって成長と
節税の両面で大きなメリットをもたらします。ただし、慎重な
計画と戦略が必要です。ビジネスの将来を見据え、適切なM&
A戦略を検討し、成功への道を切り拓きましょう。是非、ご相
談ください。