金融機関に融資を申し込んだが、中々回答がもらえず、じれったい思いをした経験のある方も

多いのではないでしょうか。金融機関に融資を申し込んだ後、金融機関の内部ではどのような

作業が行われているのでしょうか?

◆ 融資申し込みから決裁までの一般的な流れ

・新規融資の申し込みを受けたら、決算情報や基本情報等をシステムに登録します。決算書

情報の登録などはセンターで集中的に行っている場合が多く、この場合、決算書を社内郵便で

やり取りしますので、登録するだけで3日ぐらいかかってしまいます。

・決算書情報の登録が完了したら、財務分析資料をシステムから打ち出して決算分析を行います。

決算分析は実作業だけで半日以上かかります。また、決算内容について、必ず不明な点が出ます

ので、社長様に質問をしますが、「税理士に聞かないと分からない。」といった内容のものが多い

ため、回答を得られるのに数日、長い場合は数週間を要します。

・財務分析の結果が良ければ、いよいよ稟議書の作成に取り掛かります。案件のボリュームにも

よりますが、稟議書作成の実作業も半日以上はかかります。

・担当者が作成した稟議書は、代理→次長→副支店長→支店長といった順番で決裁されて

いきます。本部審査案件の場合は、支店長からさらに本部の審査役に回ります。物理的には、

1日2日あれば決裁できそうですが、大抵の場合、誰かが外出していたり、他にも優先すべき

事項があったりしますので、実際は数日かかります。もちろん途中で差し戻されることもあり、

そうなれば修正する時間と再度回覧する時間がさらにかかります。

 

登録に3日、財務分析に3日、稟議書作成に3日、回覧に3日かかったとして12日です。

金融機関の営業日数は1か月で約22日程度しかありませんので、担当者が複数の案件を

抱えていたり、質問のやり取りに手間取った場合、簡単に1か月が過ぎてしまいます。

 

融資の申し込みから決裁までに、それなりの時間を要することを見越して、申し込みは

余裕を持って行いましょう。また、質問に対する回答は、少しでも早く行うことが、案件を

スムーズに進めるコツになります。

■ナンバーワンよりオンリーワンを目指しましょう。

ナンバーワンは、競争に勝って一番になることです。

オンリーワンは、競争せずに一番(?)になることです。

競争しないためには、他人・他社と違うこと、世の中にないことを行うことです。

お金・人・モノ、これらの経営資源の乏しい会社こそ、競争しない経営を心掛けるべきでは

ないでしょうか?

小規模零細企業、または、これから独立開業される方こそ、この発想が重要です。

■ほんの少し目先を変えて考えてください。

誰もが腰を抜かすような、画期的な商品やサービスを開発するに越したことはありませんが、

容易ではありません。いきなりこのようなことができる会社・社長は稀有です。そうではなく、

今取り組んでいる事業の、ほんの少し目先を変えて、どこにもないモノ・コトを開発しましょう。

■オンリーワンの実現こそ成功のカギです。

◎高額商品でオンリーワンになる。

一本(3斤)3,000円を超える食パンをネット通販で販売しておられる会社様があります。

こんなに尖った食パンを求める顧客は多くありませんが、ネットを使って全国に展開すれば、

年商5億円~10億円(推測)ぐらいのパンメーカーが生まれます。多分高収益なはずです。

まさに、『新・食パン』メーカーです。ネット通販は、大きな商圏に対して、尖った商品を限定した

顧客を対象に販売するのに最適です。とんでもない高額商品・サービスを開発してみては

いかがですか?

※ネット通販環境の進化は、大商圏に向けて小資本でビジネスを展開することを可能にしました。

◎限定して特化した専門業態でオンリーワンになる。

○「サバ」に特化した飲食業態

○「抱っこひものカバー」の衣料品メーカー今ないモノ、あっても注目されていないモノ、

マーケットが小さすぎて大手が参入しにくいモノを狙い、それに全勢力を集中させることで、

小規模零細企業、これから独立開業される方には十分な成功を謳歌できるはずです。

「鮮魚」専門店や、「抱っこひも」のメーカーは乱立しています。レッドオーシャンです。

ブルーオーシャンには成り得ません。

◎基本機能に、新たな機能を付加した新業態でオンリーワンになる。

当事務所はオンリーワンを目指して新たな機能を追加して、それを謳っています。

僭越ですが、紹介させていただきます。

◆『新・税理士宣言』

…我々『新・税理士』は、税務+財務・金融のプロです。

○税理士は税務のプロです。

◎我々『新・税理士』は、税務+財務・金融のプロです。

○税理士は、税務申告のために経営数字を預かります。

◎我々『新・税理士』は、税務顧問業務にプラスして、『資金繰り円滑化支援業務(キャッシュ

フローの番人業務)』を引き受けます。継続的にお預かりするクライアントの経営数字を税務

申告のためだけではなく、資金繰りの円滑化のためにも活用します。

○「金融機関を紹介して欲しい。」と税理士に依頼すれば、紹介してくれます。

◎「金融機関を紹介して欲しい。」と我々『新・税理士』に頼めば、融資の可否・金額の妥当性を

勘案したうえで、多数の金融機関との事前調整を行います。さらに、資金繰りの状況を勘案しな

がら、資金調達の必要性を都度事前に提案いたします。

…続きます。

他にもあるサービスやモノでビジネスを成功させるためには、高度な経営力やたくさんの資金が

必要になります。一方、今ないモノ、あっても注目されていないモノ、マーケットが小さすぎて

大手が参入しにくいモノを対象とするビジネスは前途洋洋です。

前者はいばらの道、大手企業の選択する道であり、小規模零細企業、これから独立開業される

方が選択する道ではありません。

画期的な商品やサービスでなくても、今取り組んでいる事業の、ほんの少し目先を変えて、

どこにもないモノ・コトを開発して取り組みましょう。

成熟した日本においても、その小さな隙間は無数に残っていると確信しています。

先日のご相談事例です。日本政策金融公庫より創業融資を受けている創業2期目の企業様より、

「後3か月ほどで資金が枯渇するため新たな融資を受けたい。」というご相談をお受けしました。

話を良くお聞きすると、創業融資を受けたときから事業内容が進化しており、当初は国内だけの

販売を想定していたが、海外での需要も見込まれることが判明し、海外展開も視野に入れて

活動を開始しているとのことです。具体的に営業が進捗している案件もあり、数か月内に

1,000万円程度の海外売上も見込んでいます。しかし、足元の試算表を確認したところ、

売上高はそれなりに上がっていますが、まだ創業赤字からは脱却できていない状況です。

私からは、「足元の業績が赤字であるため新規融資は簡単ではないが、具体的な売上も

見込まれていることから、日本政策金融公庫の海外展開融資を申し込んではどうか。」と

提案しました。しかし、社長様によると、既に日本政策金融公庫には事前打診済みであり、

現在回答を待っている段階とのことでした。

日本政策金融公庫に提出した資料について聞いてみると、公庫の担当者より「決算書は

いただいているので試算表だけ送ってください。」と言われたため、試算表のみを提出した

との回答が返ってきました。

日本政策金融公庫から依頼された資料は確かに試算表だけですので何も間違ってはいませんが、

既に提出済みの赤字の決算書と、今回提出した赤字の試算表で事前審査を依頼しても、良い回答が

もらえるはずはありません。絶対に補足説明が必要です。

金融機関が過去の実績を重視するのは間違いありませんが、決して未来を見ていない訳では

ありません。具体的な売上の見込み等がある場合は好意的に受け止めてもらえます。しかし、

過去の実績は財務諸表で分かりますが、未来のことはこちらから説明しなければ金融機関は

知る由もありません。

過去の財務内容で評価できる点がないならば、それ以外の評価できるポイントがなければ

審査に通る可能性は殆どありません。試算表を送ってくれという指示に素直に従うのではなく、

直接お会いして未来の説明を行いましょう。

■消防士は火に対する知見を有しています。

故に、大丈夫、危険だ…これらを正しく判断できます。危険な火災現場に遭遇しても、

最小限のリスクで最大限の対応ができるのはこのためです。仮に、無知な消防士(?)が

消火活動を行ったとすると、過度に恐れて適切な消化活動ができない、または、蛮勇で

無茶なそれを行うことになるはずです。いずれも正しい消火活動とは程遠い結果になります。

消防士は、日々欠かさず、火に対する勉強と訓練を積んでくれています。

■社長も経営を「知る」ことが重要です。

経営には不安がつきまといます。具体的な不安、漠然とした不安…無限の不安が心に降り注いで

きます。ある種の必然で仕方ありませんが、これらの不安を軽くする方法はあります。

◎人は、わからないことに多くの不安を感じるようです。

・「知る」ことで多くの不安が解消されます。

・「知る」ためには勉強が必要です。

故に、賢明な社長は日々勉強に励みます。

◎「知る」ことで、程度加減がわかります。

・「知る」ことで、ここまでは大丈夫、これ以上はダメ、この境界が見えます。

・「知る」ことで、経営判断の精度が向上します。

故に、賢明な社長は日々勉強に励みます。

◎「知る」ことで、「自分の知らないこと」を認識できます。

・知らないことを認識すること(=「無知の知」)は重要です。

・「知る」ことに重点的に取り組むことができます。

・「自分の知らないこと」には取り組まない、または、他人の智恵を借りる癖が付きます。

故に、賢明な社長は日々勉強に励みます。

 

■過度の心配は払しょくしましょう。チャンスを逃してしまいます。逆に、蛮勇もご法度です。

会社をつぶしてしまいます。

 

「無知」な社長は二つのパターンに分かれます。

◆1.過度に恐れて攻めることができない社長。

リスクを過大評価して、一歩も前に進めません。前に向かってアクセルを踏めない原因の一つは

「知らない・わからない」からではないでしょうか?

◆2.蛮勇を背景に突っ走る社長。

リスクや実力を省みることなく、とにかくアクセルを踏み続けます。過度に邁進できる理由の一つは

「知らない・わからない」からではないでしょうか?

いずれも正しい経営とは程遠い結果になります。

 

■「知る」ことは大変大きな収穫をもたらします。

社長が経営の勉強をすることには大変大きな意味を持ちます。その経営成績、収穫に直結します。

ただ、社長が勉強すべきテーマは極めて広範囲で、何からどのようにすればよいかわからない、と

おっしゃる方も少なくありません。

まさにその通りですが、これにもヒントはあります。

◎不安なことから勉強してください。不安を解消しましょう。

■何が不安なのでしょうか?人・モノ・金…?

人の問題は、人的投資を続ければ改善します。モノの問題も、開発投資を続ければ改善します。

経営上の問題は、結局お金の問題に終結します。

少し乱暴な論理を展開するならば、(中小零細企業)経営の問題はほぼすべてお金の問題に

置き換えることができます。結局お金の心配が一番大きな問題ではないでしょうか?

まずはお金の不安を完全に払しょくしませんか?

お金の不安を払しょくするためには「お金について知る」ことです。「財務とは何?」多分

このあたりから始める必要がありそうです。

 

・「無知」は大きな損失を招きます。損をします。

・「無知」は不安の大きな原因の一つです。病みます。「知る」ことで多くの事を解決できます。

故に、賢明な社長は日々勉強に励みます。

おかげさまで、「財務面を強化したい。」という新規のお問い合わせが増えて参りました。

中小企業の財務面を強化するための当協会の活動が、少しずつ認知され始めたような気がします。

しかし、お問い合わせをいただいたお客様と話をしてみると、「財務」という業務に対して、

「漠然としたイメージは持っているが、実は具体的な業務内容については理解できていない。」

というお声を良く耳にします。

ウィキペディアによると、財務とは、

・資産、負債、損益、キャッシュフローの管理

・資金の調達、および調達した資金の運用となっています。

「資産、負債、損益、キャッシュフローの管理」とは、具体的には、試算表と資金繰り表を

作成することです。試算表を作成することによって、資産、負債、損益の状況を知ることができ、

資金繰り表を作成することによって、資金の状況を知ることができます。

しかし、財務の本当の価値は、次の「資金の調達、および調達した資金の運用」にあります。

金融機関等から資金を調達する活動、そして、調達した資金をどの分野に投下するのが最良かを

シミュレーションすることです。

■ 財務の具体的な業務内容を以下にまとめます。

1.試算表と資金繰り表を作成します。試算表と資金繰り表は、あらゆる財務的な判断を行うための

基礎資料となります。

2.資金を調達します。倒産しないため、事業を拡大するために資金は必要です。十分な資金を

確保し続けられるよう、定期的に資金調達を行う必要があります。

3.資金の運用方法について検証します。どの中小企業も潤沢な資金がある訳ではありません。

人を新たに雇うべきか?外注にするべきか?など、資金をどのように使うのが一番効果的かどうか、

しっかりと検証して使いみちを決定する必要があります。

試算表や資金繰り表を作成することが財務ではありません。作成した資料と実際の経営状況を

考慮して、最良の判断を行うことが財務の本当の価値です。

いくら大企業の財務部で活躍した人材でも、中小企業の事情が分かっていなければ適切な

判断はできません。

ここに中小企業の財務の難しさがあります。

■収益と忙しさの状態で会社を4つに分類すると以下になります。

1.繁盛高収益企業…

「当社は忙しいです。故に大変儲かっています。」

2.閑散貧乏企業…

「当社は暇です。故に儲かっていません。」

 

上記の二つは納得できます。また、

 

3.閑散高収益企業…

「当社は多忙ではありませんが、それでもしっかり利益を出しています。」

一方、

4.繁盛貧乏企業…

「当社は超多忙ですが、利益はありません。」

 

■繁盛貧乏企業にならないように、また、そうであるならば抜け出すための方法を

考えてみましょう。

繁盛貧乏に陥る会社には概ね共通点があります。

◆理由1:

価格(安売り)を売るための道具として安易に利用する。

事業は、その商品やサービス内容、ブランドで競合と戦っていかねばなりません。

そのサービス内容やブランドを磨かずに、その不足分を価格で補おうとする行為は

命取りです。価格は売るための道具ではありません。この認識と決意が必要です。

売るための道具として安易に低価格を訴求していると、繁盛貧乏に陥ります。

⇒価格(安売り)を売るための道具として安易に利用しないでください。

◆理由2:

閑散であることに耐えられない。売上至上主義に陥る。

とにかく売上が欲しい、間違えではありませんが、売上の総額だけを追いかけると、

利益の概念が希薄になります。売上だけを求めずに、利益を同時に追いかけてください。

⇒売上至上主義に陥らないでください。

◆理由3:心から利益を求めていない。

節税指向を過度に持ち合わせている社長も少なくありません。

税金は、利益に係数を乗じた金額です。節税の行きつくところは利益を出さないことです。

心から利益を求めない事業体が高収益を上げることはありません。

※できる節税は当然しっかり行いましょう。

⇒利益を心の底から求めてください。

◆理由4:ビジネスモデルが疲弊している。事業領域が悪い。

「貴社は、類似の他社と何が違いますか?」この質問に対して、明確な解を提供できない会社は

絶対に儲かりません。この顧客に提供し続けること、そのために商品やサービス内容、ブランド等を

徹底的に磨きましょう。

⇒どこにでもある事業は通用しない時代です。上手く行っても繁盛貧乏です。

他にない何かを創り上げましょう。

◆理由5:客層が悪い。(生きる世界が悪い。)

世の中は原因と結果、因果の関係が明確に成立しています。良い会社には良い顧客が、

そうでない会社にはそうでない顧客が、逆に、良い顧客は良い会社を、そうでない顧客は

そうでない会社を選びます。

鶏と卵…どっちが先かの議論に終着しますが、価格(安売り)を売るための道具として安易に

利用すると、それに乗っかって、他者の価値を認めない顧客が訪れるようになります。

いかがでしょうか?

⇒良い会社(事業)を作って良い顧客とお付合いしましょう。

忙しいのに儲からない「繁盛貧乏」の状態は、会社を根底から疲弊させてしまいます。

この状態を継続すると、知恵を生む気力を奪い去ってしまいます。

最終的に市場から退場する会社の多くはこのパターンです。

1.価格(安売り)を売るための道具として安易に利用しないでください。

2.売上至上主義に陥らないでください。

3.利益を心の底から求めてください。

4.他にない何かを創り上げましょう。

5.良い会社(事業)を作って良い顧客とお付合いしましょう。

 

この機会にご再考いただければ幸いです。

資金調達を成功させるためには、資金使途、事業計画、返済原資等のポイントを

明確にしたうえで、一貫したストーリーに仕上げておく必要があります。

これを案件構築といいます。

以下、一般的なストーリーの流れをご紹介します。

 

■ 第1章:自己紹介

ストーリーの始まりは自己紹介です。どのような思いや目標を持って取り組んでいるのか。

今までの実績はどうなのか。現状はどうなのか。といった点を説明します。

 

■ 第2章:資金の使い道

第1章で説明したこんな私が、次に何をしようとしているのか。そして、その取り組みには

どれぐらいのお金が必要になるのか。といった点を説明します。具体的には、

「新店舗を出店したい。」「仕入を増やしたい。」「人員を増加したい。」といった内容です。

 

■ 第3章:事業計画

第2章で説明した取り組みを行った結果、今後はどのような姿になるのかをまとめます。

具体的には、売上、利益、資金繰り等が、現状と比較してどのように変化するのかを

明確にします。

 

■ 第4章:どうやって返済をするのか

返済が可能な理由を、第3章で示した売上増加額、利益増加額を用いて明確に説明します。

 

小説ではありませんので、融資申し込み時のストーリーに奇想天外な展開は必要ありません。

誰が聞いても違和感のないストーリーが求められます。

良く見られる奇想天外なストーリーとは、私は建築屋ですと自己紹介しておきながら、

第2章でラーメン店を出店したいとなっていたり、ラーメン店を出店したいと言いながら、

融資申し込み金額が一般のラーメン店の投資額よりはるかに大きかったりします。

建築屋さんがラーメン店をやってはいけないと言っているのではありません。

建築屋さんがラーメン店をやろうと考えるに至ったストーリー、普通のラーメン店よりも

大きな投資をしようと考えるに至ったストーリーをしっかりと構築しなくてはならない、

という意味です。

 

これから融資の申し込みをしようと考えている経営者様、上記の流れに沿って案件説明を

した場合、聞き手が違和感なく聞くことができるストーリーに仕上がっているかを

ご確認ください。

■経営の最終目標は、売上高・粗利益率・販管費のすべての項目を確実にコントロールする

ことです。これができれば、結果として望む利益も創出できます。

◆ただ、これらの指標は、それらが複雑に絡み合っているので厄介です。

例えば…

・売上を上げようとすると、販促費(販管費)が膨らむ。

・一方、販促費(販管費)を投入しても、予定通り売上が増えるわけではない。

・割引をして粗利益率を落とすと売上が増えることがある。

・ただ、売上が増えても、粗利益の総額(売上×粗利益率)が増えないこともある。

・逆に、値上げをすることで、売上が増えることもある。

・営業人員(販管費)を増やせば売上が増えるはずである。

・ただ、人件費(販管費)の増加分を賄えないこともある。

・旅費交通費(販管費)を減らせば、売上が落ちることがある。

・開発費(販管費)を増やせば、将来の売上は増えるはずだ。

・ただ、将来とはいつなのか、また、どれぐらいなのか予見しにくい。

 

◆また、投資と成果には時間差が出ることも問題を厄介にしています。

例えば…

・販促費(販管費)の投入と売上の増加には、タイムラグが発生する。

・営業人員(販管費)の投入と売上の増加には、さらに大きなタイムラグが発生する。

・開発費(販管費)の投入と売上の増加には、相当長期のタイムラグが発生する。

◆本来コントロールできるはずの、単独の販管費項目ですら見込み違いが発生します。

例えば…

・人件費(販管費)に想定外の時間外手当が発生して止まらない。

・採用がうまく進まず、採用コスト(販管費)が膨らんだ。

・投資(販管費)が計画を大きく上回ってしまった。

・原価の高騰で粗利益率が下がってしまった。

だから経営とは面白くもあり辛くもありますが、社長という道を選んだのなら、楽しみながら取り

組みたいものです。

■長い時間を経て、経営管理体制を構築して、安定した業績を出せている会社は、様々な指標が、

結果として適正にコントロールされています。

・既存の業容のまま、少しの成長を付加しようとするとき、結果に大きな狂いは生じないはずです。

販管費に新規採用分の人件費や追加の開発費・販促費等を追加して、それらの売上に対する

貢献分を売上に足しこんで利益を予見します。

・ただ、大きな投資や新しい事業に挑戦する時は、上記の様に容易ではありません。

現業の指標に対して、動く費用の割合が大きくなるので、その精度は著しく低下します。

 

■創業時や新規事業の立ち上げ時に、計画通りコントロールすることはほぼ無理です。

・第10期目に立てた第11期目の計画は、総じて正しく終結するはずです。

・一方、創業時に立てた第1期目の計画は、概ね当たりません。

故に新規事業の立ち上げ、創業は、少なくない比率でうまくいきません。また、「創業事業計画を

鵜呑みにしてはいけません。」とお伝えするのはこのためです。

 

■それでも、経営を安定・成長させるためには…

◆1:コントロールできることを完全にコントロールすること

◆2:頑張ればコントロールできることをできるだけコントロールすること

◆3:コントロールできないことには、出来るだけ適合すること

この三つを意識して経営していかねばなりません。極めて難解なコントロール業務も、意思を持って

継続すれば、何とかなるものです。

 

経営の最終目標は、売上高・粗利益率・販管費のすべての項目を確実にコントロールすることです。

これができれば、結果として望む利益も創出できます。

まずは、月次の資金繰り管理から始めてください。

経営を管理する、この発想は極めて重要です。管理は出来るようになります。

良くあるご相談のひとつに、「創業融資を受けて創業したけれど、追加融資が必要になった。」と

いうものがあります。創業前の創業融資は、要件を満たせば比較的容易に借入できますが、

実際に事業を始めてからの創業融資、追加融資は、少し難しくなります。実際の事例に沿って

ご説明します。

 

◆お客様の概要

・会社名:A株式会社

・事業内容:ホームページ制作業、インターネット通販事業

・1期目業績:売上高約3,000万円、経常利益トントン

資本金300万円で創業し、創業融資600万円を受けて事業を開始しました。しかし、当初予定

していたホームページ制作業では思ったように売上が立たず、途中でインターネット通販事業を

開始しました。結果、初年度売上高3,000万円のうち、2,500万円が通販売上高と

なりました。利益はトントンです。1期目の決算直後、日本政策金融公庫に追加融資を

電話で打診したところ、「据え置き期間があり、返済開始から1年経過していないので追加融資は

難しいと思いますが・・・」という反応でした。しかし、とりあえず説明だけでも聞いて欲しいと

お願いをしてアポイントを取りました。

数日後、初年度の決算書、創業融資申し込み時に提出した計画書、過去1年間の資金繰り表、

向こう1年間の資金繰り計画表、を持って訪問しました。そして下記の流れで説明を行いました。

・創業融資を申し込んだ際は、ホームページ制作を主事業と考えていたが、服飾品を取り扱う

取引先より商品を売って欲しいと依頼があったため、ネット通販事業を開始した。

・当初計画ではホームページ制作により売上高2,000万円を見込んでいたが、ネット通販に

主事業が変わったため、売上高は3,000万円に増加して着地した。

・利益面では仕入が発生したため当初計画を大幅に下回った。

・しかし、いま仕入資金を300万円増やせば、今期の売上高は5,000万円を見込むことが

でき、これに伴って200万円の経常利益を確保できる。

・よって、仕入資金と事業拡大に伴う人員の増加資金として、合計500万円の追加融資を

お願いしたい。公庫さんの追加融資に関する基本的な考え方は、「本来は創業融資で事業を

軌道に乗せなくてはならない。追加融資が必要になるということは、当初の計画どおりに進捗して

いないと考えられる。」とのことでした。しかし本件については、「事業内容の変化により、当初は

予定していなかった仕入資金が必要になったもの。ネガティブな理由で追加資金が

必要になった訳ではない。また、初年度で約3,000万円の売上実績を作ったことはポジティブに

評価できる。」として500万円の追加融資を承認してくださいました。

 

創業時に提出する計画書は、追加融資を受けることなく軌道に乗る計画になっているケースが

多いと思います。よって、追加融資を受ける場合は、今回の説明だけでなく、前回提出した

計画書から説明し、状況がどのように変化したかを説明する必要があります。

 

創業融資サポートの詳細についてはこちら>>

http://www.kagawa-keiri.com/230/

■仮に、同じ能力を備えた5人の従業員が2チーム(赤組と白組)あったとして、また、

スタート時の資金力などの経営資源を同じにして、この同じ能力のチームを2人の

社長(A社長が率いるA社と、B社長が率いるB社とします。)がそれぞれ雇用して

経営を行ったとき、A社とB社の3年・5年・7年後の経営成績は同じではありません。

それどころか、全く違うものになっているでしょう。A社とB社で社長が違うからです。

 

■例えば…

◆ポケモンGOの例で解説します。

○レベル1

・ポケモンGOって何?関係ないと考える社長

・ポケモンGOで遊びほうける社長

○レベル2

・早々にルアーモジュール(使用した場所周辺に30分間ポケモンが出現する。)等を活用して、

自店に集客を図ろうとする社長

・充電器をいち早く販売しようとする社長

○レベル3

・ポケモンGO(任天堂)と業務提携する社長

○レベル4

・ポケモンGOの開発・販売に当初からかかわる社長

○レベル5

・そもそもポケモンGOを開発・販売する社長

 

◆不動産業の例で解説します。

○レベル1

・値上がりしそうな土地を従業員総出で我武者羅に探して仕入れる社長

○レベル2

・大規模な開発情報を探して、それを見込んで近隣の土地を仕入れる社長

○レベル3

・安い土地を仕入れて、自社で大規模な開発を仕掛ける社長

 

◆製造小売業の例で解説します。

○レベル1

・何処にでもあるものを値切られながら従業員総出で販売する社長

○レベル2

・薄利ではあるが、営業が上手でたくさん売れる社長

○レベル3

・レアな商品、高くてもどんどん売れる商品を作れる社長

 

■自社の事業に置き換えて考えてみましょう。

少しでも高いレベルに立ち位置を取った方が事業はうまく行きます。どの立ち位置の会社なのか、

より上位の立ち位置を模索する社長なのか?この違いが会社の将来の業績を決めます。

裏を返せば、この立ち位置を考える仕事、(広義の)ビジネスモデルを考える仕事こそ社長の

仕事です。ポケモンGOを見て、もちろん諸々問題も残りますが、これほどの仕組みを創り出した

ことには驚きを感じます。ただ、すごいな…で終わらずに、自社にとっての発明・創造に置き換えて

みましょう。何も創造せずに、ただただ日常を過ごすのか?

せめて他人の創造に謙虚に相乗りして、精一杯果実を得ましょう。最後は、仕組み自体を自らが

創造する立ち位置を目指しましょう。

 

■経営成績の差は、従業員のクオリティーの差ではありません。

経営成績の差は、社長が創り出すビジネスモデル、立ち位置の差に依るところが大半です。

良い従業員が良い事業を生み出すのではなく、良い事業が良い従業員を作ります。もちろん、

良い事業は良い社長から生まれます。「良い社長⇒良い事業⇒良い従業員」が正解です。

 

社長にはビジネスモデルの構築責任があります。社長の仕事は、ビジネスの立ち位置を考える

ことです。

そして、事業の行く末は、すべて社長次第です。