多くの事業体にとって、デジタルシフトは共通のテーマです。
以下の4つについて整理いたします。

◆1:デジタルとリアル、その選別を!
◆2:売り方と業務のデジタルシフト!
◆3:働き方・雇い方のデジタルシフト!
◆4:デジタルシフト、このルールチェンジに乗り遅れないた
めに!

◆1:デジタルとリアル、その選別を!

最大限デジタルにシフトして、残りのリアルは高付加価値化を
図る、リアルはVIP&VVIPに限定して高付加価値化を図りましょ
う。平等主義から脱却しましょう。この選択肢が主流になりそ
うです。

(例)コンサート
廉価でオンライン配信、リアルは人数限定で高価で最高の環境
を提供する。

(例)プロ野球
廉価でオンライン配信(TVは無料)、リアルは人数限定で高
価で最高の環境を提供する。

(例)アパレル
オンラインで販売、リアルでは最大のおもてなしを行う。

(例)セミナー
廉価でオンライン配信、リアルは人数限定で高価で最高のサポ
ートを行う。

◆2:売り方と業務のデジタルシフト!

自社媒体による直販体制(D2Cモデル)を構築しましょう。

〇デジタルの販売比率の向上を図る!
〇紙媒体からテキスト媒体、さらに音声・動画媒体への転換を
図る!
〇対面業務・営業からオンライン業務・営業への転換を図る!
(オンライン業務・営業が許容される環境が整いました。)

◆3:働き方・雇い方のデジタルシフト!

紙情報、決済(印鑑)等のボトルネックを無くしましょう。

〇紙情報をクラウド上のデータへ移す!(アクセス可能な環
境整備)
〇出社しての勤務からテレワークへ転換を図る!
〇総合型業務からジョブ型業務への転換を図る!
〇人事制度(雇用形態や評価制度)を大きく見直す!

◆4:デジタルシフト、このルールチェンジに乗り遅れないた
めに!

デジタルシフトを大きな経営目標に掲げてください!

〇元に戻そうとする敗者の行動パターンを模倣しない!
〇できない理由ではなく、やり切る決意を持つ!
〇同業種上位20%以内のデジタルシフトを実現する!

近い将来、あの時(コロナショック、令和2年春)が自社の転
換点であったことに気づかれるはずです。多くの事業体にとっ
て、デジタルシフトは喫緊の重要な経営課題です。元に戻そう
とする敗者の行動パターンを模倣することなく、信念を持って
取り組んでください。

好む好まざるにかかわらず、この時流は止まりません。

物の本によると、倒産とは、「企業が債務の支払不能に陥った
り、経済活動を続けることが困難になった状態を指す。法的倒
産と私的倒産の2つに大別され、法的倒産では再建型の会社更
生法と民事再生法、清算型の破産と特別清算に4分類される。
私的倒産は、銀行取引停止と内整理に分けられる。」と定義さ
れています。

しかし、厳しい状況に追い込まれながらも倒産を選択せずに事
業を継続している社長様もいらっしゃいます。家賃や人件費が
払えない、返済ができないからと言って倒産するとは限りませ
ん。基本的には、経営者の意思で法的整理や私的整理等の行動
を起こしてはじめて倒産となります。倒産するかどうかは経営
者次第です。

ある社長様の事例です。第三者から資金支援を受けて事業拡大
に挑戦しましたが、出店した新店舗が軌道に乗らず、会社全体
の資金繰りが悪化してしまいました。やむを得ず新店舗の撤退
を決断したところ、スポンサーから支援の打ち切りだけでなく、
これまで受けた支援資金の返済を執拗に迫られるようになりま
した。

ご相談に来られた時は、倒産しか選択肢はないと思い込んでお
られましたが、倒産するかどうかは社長様次第であることをご
説明したところ、「債務免除を受けて今が楽になっても、就職
はすぐに出来ないだろうし収入がなくなるのは困る。止める事
はいつでも出来るので、もう少し頑張ってみよう。」という結
論に至りました。

継続を前提として資金繰り予測を立てたところ、銀行と大家さ
んの協力があれば、何とか資金が回ることを確認できたため、
計画書類を作成して銀行と大家さんのところへ出向きました。
大家さんは延滞分の分割払い、銀行は返済猶予に快く応じてく
ださいました。

それから約1年後、売上は大きく落ちましたが、僅かながら黒
字決算となりました。スポンサーからの嫌がらせも徐々に収ま
っているようです。社長様は、「この調子でいけば債務の返済
も少しずつできそうだ。1年前は現状から逃げることばかり考
えていたが逃げなくて良かった。おそろしい程メンタルが強く
なっただけかもしれないが、今考えると何てことはない。」と
笑っておられました。

この選択が正しかったかどうかは分かりませんが、倒産しない
というのも一つの選択肢です。

容易ではありませんが、適正な価格設定を目指したいものです。
「値決め」は、安すぎても、高すぎても経営の足を引っ張りま
す。それぞれ弊害をもたらします。

また、客層を含む生きる世界観、経営観は「値決め」で決まり
ます。経営の起点は「値決め」です。

以下の4つについて言及します。
◆1.真の適正価格を探求する!
◆2.安すぎる「値決め」の弊害!
◆3.高すぎる「値決め」の弊害!
◆4.値決め力を養うためには!

◆1.真の適正価格を探求する!

◎『値決めこそ経営』(稲盛和夫先生)
◎『松下電器は相当大きくなるまで私が値決めをしていた』
(松下幸之助先生)

多くの偉人が「値決め」の重要性について強く語っておられま
す。多分、我々凡人が想像する以上に「値決め」の経営に与え
るインパクトは大きいのでしょう。

◆2.安すぎる「値決め」の弊害!

●弊害1:安いのでたくさん売れる。

繁盛貧乏に陥り身動きが取れなくなっている事業者様は少なく
ありません。頑張っていて、評価されている?(繁盛している)
のに利益が出ない、この状況は経営者や従業員を疲弊させます。
安すぎる「値決め」が招く弊害の一つ目です。

●弊害2:安すぎて信頼されない。

「安くてよいものは存在しない」と考える人は安さを疑います。
安すぎる「値決め」は、一定の割合で存在する安さを嫌う優良
客を排除してしまいます。これは致命的な弊害です。

◆3.高すぎる「値決め」の弊害!

●弊害1:高いので売れない。

売れないので閑散貧乏状態になります。ただ、売れない時は暇
なので見直しの方向に是正されます。この点が繁盛貧乏状態と
の違いです。高い価格に向かって価値を積み上げるのか、価格
を下げて適正化を図るのか、どちらかの方向に向かいます。

●弊害2:高すぎるが上手に売る。

高すぎるモノやサービスを営業力で売り切る、一見良さそうで
すが本当は間違えです。売る側は、高すぎるモノを売り続ける
ことに疲弊します。買った側には時間とともに不満が蓄積しま
す。長期間の安定した経営は望めません。上手すぎる営業の弊
害です。営業は少し下手位がちょうど良いようです。

◆4.値決め力を養うためには!

経営者には、様々なモノやサービスを購入する体験を積み上げ
ることで、幅広い価値観を理解できる知見を磨くことが求めら
れます。例えば、客単価3千円の飲食店オーナーも、客単価数
万円までの会食を定期的に体験することで、自店の相対的・絶
対的価値を確認することができます。できているのでしょうか?
値決め力を磨き養う継続的な投資は重要です。

客層を含む生きる世界観、経営観は値決めで決まります。起点
は値決めです。安くしようとすると、生きる世界が落ちて行く、
客層も悪くなります。高くしようとすると、生きる世界が上が
る、客層も良くなります。ただし、高く上手に売りすぎると客
離れを起こします。自分の畑が枯れる、自分が疲弊します。

だから…
◎『値決めこそ経営』(稲盛和夫先生)
◎『松下電器は相当大きくなるまで私が値決めをしていた』
(松下幸之助先生)でしょうか。

アフターコロナは利益にこだわる経営を行いましょう。
今すぐ、値決めの検討を始めませんか!

新型コロナウィルス感染拡大の影響が長引いており、幅広い業
種で悪い影響が着実に進行している印象です。直接的に影響を
受ける業種は防ぎようがない場合もありますが、間接的な影響
で経営悪化に陥る企業は、人間と同じく、元々何らかの疾患が
あったのではないでしょうか。

企業の疾患はいくつかありますが、最も多いのは「高コスト体
質」です。業歴の長い企業様によく見られますが、まずまず売
上があるにも関わらず、赤字体質となっている企業です。

このような企業様に共通して見られるのは、まず管理部門の人
件費負担が大きい点です。売上高はピーク時の半分になってい
るにも関わらず、管理部門の人員は半分になっていない、業務
オペレーションも昔から変わっていない、などが原因として挙
げられます。

新興企業の管理部門はコンパクトです。管理する項目が元々少
ないというのもありますが、ITツールを活用し、最低限の人員、
オペレーションで業務を回しています。一例ですが、記帳業務
は経理が会計ソフトにダイレクトに入力し、上司や社長は会計
ソフトに自身でアクセスして業績やお金の動きを見ています。
一方、高コスト体質の企業は、まず紙の振替伝票を作成し、そ
れを上司がチェックして、ようやく会計ソフトに入力するなど、
作業が重複している部分があります。より正確性を求めるとい
う点においては正解ですが、利益とのバランスをとるべきです。

次に、相場より高い費用を払っているケースもお見受けします。
例えば、自社開発した管理ソフトのメンテナンス費用が高額で
ある場合等です。販売管理ソフトや会計ソフト等は高性能かつ
安価なものがたくさん出ています。業務オペレーションを変え
るのは負担だという理由だけで、高額なうえに性能が劣る自社
開発ソフトを使い続けるのは問題です。

また、購買先が硬直化しており、相場よりも高い料金を支払っ
ているケースもよく見られます。例えば印刷費です。毎年作成
しているチラシやパンフレットの類を昔からのお付き合い先に
任せています。何の疑問も持たず、前年に倣って発注していま
すが、印刷費は近年大幅に価格が下がっています。もちろん企
画やデザイン料は下がりませんが、印刷費自体は大規模な設備
投資により価格の引き下げに成功した業者が複数あります。取
引先を大切にすることは賛成ですが、馴れ合いの関係が経営を
圧迫することがあってはいけません。

個別の事例をいくつか挙げましたが、問題は意識の硬直化、ル
ーティン化にあります。厳しい事態を生き抜くため、定期的に
コスト構造を見直すようにしましょう。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

日本の企業は規模の拡大にこだわり過ぎています。何が何で
も規模を拡大しようとすると、規模を拡大するために多くの犠
牲を払うことになります。経営上無意味な不採算事業や不採算
顧客を過度に温存することになります。規模拡大至上主義は、
分散症候群や安売り症候群を招く原因のひとつです。脱・規模
拡大至上主義、縮小を容認する経営に移行してください。』

言うまでもなく規模は重要です。規模の縮小を容認する経営を
長期間続けることは困難です。数年に一度、または、数年間に
限定して、敢えて規模の縮小を容認する経営を導入してくださ
い。今まで取り組んでいなかった会社様は、この機会に、敢え
て縮小を容認する事業計画を立案して執行してください。経営
が、会社が大きく変わります。強くなるはずです。

この前提で以下を確認してください。

■拡大発想からの脱皮!

○例えば、従業員数は多い方が良いのか?

力があれば、たくさんの従業員を抱え、その雇用と教育機能を
果たすことには大きな社会的意義があります。100人を雇用
する会社よりも、500人の従業員を抱える会社の方がこの意
味でははるかに立派です。ただし、力があれば、力相応の範囲
で、この条件が付帯します。

力相応を越えた部分の雇用には、会社側も、雇用される側の従
業員にも、様々な問題を内包することになります。

○例えば、店舗数は多い方が良いのか?

10店舗の高収益店舗と、5店舗の採算分岐点ギリギリの店舗
の合計15店舗を経営する飲食企業と、10店舗の高収益店舗
のみを経営する飲食企業、どちらが良い会社か?との意味です。

イメージとしては、前者は年商15億円、営業利益1億円、後
者は年商10億円、営業利益1億円になります。

少なくない中小企業経営者が、従業員が多い方、規模が大きい
方を我武者羅に目指しているように見えます。この考え方は、
時に規模拡大至上主義を招きます。

■縮小を容認する計画を!

貴社が、上記のような考え方を長期間続けていたならば、一度
発想を変えてみることをお薦めします。規模の縮小を容認する
考え方です。今が好機、と言うよりは今必要です。

○例えば、どんどん人を増やして売上を作りに行くよりも、仕
事を選別して増員を控える選択肢を用意することです。マネー
ジメントは、その規模が小さいほど容易になります。

○例えば、収益の見込めない分岐点ギリギリの店舗は手放して
しまう選択肢を用意することです。店舗数が減ると、マネージ
メントは容易になります。

規模の拡大には、力相応の拡大と力不相応の拡大があります。
言いかえると、自然に成長した拡大と、無理やり伸ばした拡大
があります。後者には大きなストレスが伴っているケースが多
いです。縮小を容認することで、会社に余力が生まれます。

感染症対策関連の国の施策は徐々になくなります。平時に戻り
ます。コロナ融資で膨らんだ債務や痛んだBSを立て直してい
かねばなりません。そのためには、PLを立て直す、利益を出
す、これしか他に方法はありません。

思考停止せず、学び・考え、動きましょう。
ご遠慮なく当事務所にもご相談ください。

お客様の新規事業計画書の作成をお手伝いしました。ある商品
を仕入れてインターネットで販売する事業です。以下、お客様
とのやり取りです。

私:どれぐらい売れば黒字化する見込みですか?

お客様:売上によって原価や経費が変わりますので計算に苦労
しています。300万円の売上高でも経費を抑えれば利益は出
ますし、500万円の売上高だと経費も増えるので逆に赤字に
なる場合も・・・・

私:売上を基準に考えるより、経費を基準に考えてはいかがで
しょうか?まずは、いくら売れそうかではなく、現実的にいく
ら原価や経費をかけられるかを検討してみましょう。家賃や正
社員の人件費など、売上がゼロでも必ずかかる費用はどれぐら
いでしょうか?

お客様:月100万円ぐらいでしょうか。

私:では次に、商品の粗利率はどれぐらいでしょうか?

お客様:20%は取れると思います。ただ、モールの手数料が
5%、広告費が5%ぐらいかかります。

私:では粗利率10%で計算しますね。固定費100万円÷粗
利率10%が損益分岐点となります。1,000万円の売上で
利益トントンとなりますが、固定費100万円の陣容で1,000
万円の販売は可能でしょうか?

お客様:いえ、今の人数だと500万円ぐらいが精一杯です。

私:そうですか。では、固定費をもっと下げることは可能でし
ょうか?

お客様:人件費が大きな割合を占めますが、人員を減らすのは
嫌ですね。

私:それでは粗利率を上げるしかないですね。仮に粗利率を15
%で計算すると、売上高が667万円で利益トントン、20%
だと500万円で利益トントンです。

お客様:なるほど。粗利率が10%上がれば半分の売上で黒字
を確保できるのですね。仕入先を見直すなどして何とか粗利率
を上げる策を講じてみます。

私:承知しました。次に資金繰りを見てみましょう。今回の事
業に投資できる資金は700万円ですね。固定費が月100万
円ですので、仮に売上が全く無かったら、7か月で資金が底を
つきます。ですので、何とか半年程度で損益分岐点売上高500
万円を確保したいですね。

お客様:それぐらいの時間があれば大丈夫だと思います。確か
に売上高から原価や経費を予測するより、実際に投資可能な原
価や経費から売上高を予測する方が現実的で分かりやすいです
ね。ありがとうございます。

よくある売上計画の作成方法として、市場規模の何%を獲得で
きるかを予測する方法があります。もちろん一つの手法ですが、
売上を立てるためには、先に原価や経費の支出が必要であるこ
とを忘れてはいけません。

資金力に乏しい小規模企業の場合、支出可能な原価や経費を先
に算出し、それを賄うにはどれぐらいの売上が必要か、そして、
その売上は実現可能性があるのか。という視点で組み立ててい
くのがコツです。

前回号のつづきです。

言い古された言葉ですが、時代は大きく変わっています。特に
1995年以降のIT革命は、ビジネスのルールそのものを変えて
しまいました。であるにもかかわらず、多くの中小企業は昭和
中期の考え方で、ビジネスモデルで経営を続けています。

日本の一人当たり労働生産性がOECD加盟38カ国中28位(IMF
は、2022年は30位に下がると予測)にまで落ちてしまった大
きな原因の一つには、これが挙げられるはずです。

新しいビジネスのルールに適合させること、時流・トレンドを
捉えること、言い換えると、そのためのイノベーションに励む
ことが急務です。

以下、時流・トレンドに適合して、イノベーションを起こすた
めの8つのヒントについて言及します。

◆1.デジタルシフト!

〇デジタルが主、リアルが補完する、パワーバランスが変化す
る!
※試着(現物確認)・リサーチ専門店の出現!
※基本はデジタル、リアルは限定的に!

◆2.中間流通、小売業の衰退!

〇中間事業者はニューミドル(販売代理⇒購買代理)の立ち位
置を確保!
〇メーカー(サプライヤー)はD2C(C2M)マイチャンネ
ルの構築!
〇プラットフォーマーと共存!

◆3.マネタイズ、投資思想、顧客との関係性の変化!

〇売り切りからサブスク(継続課金)への転換を図る!
〇フリービジネスの更なる台頭!マネタイズポイントの変化!

◆4.商品・サービス提供からソリューションの提供へ!

〇もの・こと提供者からソリューション提供企業への転換!
※ブリヂストンはタイヤメーカーからソリューション提供企業
へ!

◆5.業界分類の崩壊!

〇現業界にこだわらない事業展開!業界の壁の破壊!事業立地
の変更!
※アマゾンは、物販⇒クラウド⇒金融⇒…

◆6.持たざる経営、保有のデメリットが顕在化!

〇日本のBIGカンパニーは保有のデメリットと戦う!
※人・ハード…余剰整理との戦い!

◆7.経済の効率化が進む!

〇本格的な人余りの時代が到来する!
〇大企業は余剰人員・余剰設備の削減と戦う!
〇ベーシックインカムの検討・導入?

◆8.格差が拡大する!

〇中小企業はアッパーニッチで自社領域の確保を目指す!
※ロアマスに生きる余地は少ない!

絶対に逆らってはいけない相手は時流・トレンドです。時流と
いう強烈なうねりに適合しながら、自社の経営をより良いもの
に作り込んで行きましょう。

店舗型の事業を営む方から、新規出店資金の調達が上手くいか
ないというご相談がありました。既に施設を3店舗有しており、
今回は4店舗目の出店を計画しているそうです。

財務内容を拝見すると、確かに借入水準はやや高い状態ですが、
一定のキャッシュフローは出ており、また、見合いの固定資産
も有しているため、全く話を聞いてもらえないレベルではない
と感じました。

今回、社長様と経理の担当者で来社されたのですが、社長様は
とにかく新しい店舗を矢継ぎ早に出店したい、経理担当者は社
長に振り回されて資金調達に奔走しているという印象を受けま
した。

経理担当者に、融資申し込み時に提出した資料を見せて欲しい
と依頼すると、決算書と試算表だけだとおっしゃいます。金融
機関に、4店舗目を出店する話もしていないそうです。

これまでの資金調達についても、実際には店舗の出店資金であ
ったが、計画書類を提出したことがなく、全て運転資金として
融資を受けてきたとおっしゃいます。借入の中身を見たところ、
確かにコロナ融資が過半数を占めています。

業種・業態によって、運転資金の融資上限額はある程度決まっ
ています。一方、設備資金は個別の計画を検証したうえで、総
合的に判断されますので、上限額が最初から決まっている訳で
はありません。

よって、今回も運転資金として融資を申し込んだ場合、過去の
融資が実際は設備資金にあてられたとしても、「運転資金は十
分に貸しているでしょ。」となるのは当然です。

経理担当者は、「元々財務の知識がある訳ではないし、資金繰
りも厳しいので、運転資金でお金が必要なのか、設備資金でお
金が必要なのか区別が出来ていなかった。」とおっしゃってい
ました。

運転資金の方が提出書類も少なく、申込が簡単ではありますが、
借入額に上限があります。使い道が設備であれば、設備資金と
して個別に調達をすることで、運転資金の枠を残すことが出来
ます。

設備資金は見積書や計画書等の提出が必要になりますが、丁寧
にひも付きにすることで、調達の総額を増やすことができます。
○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

前回号のつづきです。

■低生産性の原因と対策は…

◆低生産性は現場の問題ではなく、マネージメント(経営)の
問題です。

低生産性の解決策を、個人の仕事のスピードアップや業務効率
の改善に求めるのではなく、会社全体のシステムの問題として
とらえるべきでしょう。低生産性の原因は、現場ではなくマネ
ージメントの問題です。この認識が必要です。

◆生産性向上のための対策は…

1.ビジネスモデルを転換する、効果は◎です。

容易ではありませんが、より単純(Simple)で高収益(Profitable)
なビジネスモデルに転換出来れば、その生産性は格段に向上し
ます。これこそ社長の仕事です。惜しみない勉強が必要です。

2.業務を減らす、効果は○です。

仕事を棚卸してください。思い切って業務を20%やめましょう。
業務を減らせば仕事は減ります。業務を減らすためには、業務
そのものを棚卸するだけでなく、過剰な品質になっていないか
どうか、業務内容も検討してください。業務が過剰品質になっ
ているケースも少なくありません。
※やめることを探してください。上手にやろうとするのではな
く、思い切ってやめる、この決断が必要です。

3.その他、あらゆるものを減らす、効果は○です。

提供するサービスや商品、不採算顧客等、あらゆるものを棚卸
する必要があります。聖域を設けずにあらゆるものを対象にし
て、選別して減らすことを考えてみましょう。
※不要なモノがたくさん混在しています。悪の根源はこれらの
不要なモノです。

4.値上げする、効果は○です。

単価を5%上げることができれば、生産性は5%向上します。
一律の値上げは乱暴ですが、不採算商品や不採算顧客に対する
値上げは有効です。減収の覚悟も必要ですが、案外値上げが通
ることもあります。重い判断になりますが、選択肢として排除
すべきではありません。

5.過度なサービスをやめる、効果は○です。

メニュー表にない+αのサービスを、しかも無償で担当者が提
供し続けているケースは少なくありません。これも棚卸して顕
在化させてください。サービスの必要性を担当者個人の裁量に
委ねるのではなく、経営として判断してください。必要なら正
式に行う、不要なら会社としてやめる…判断してください。
※無償サービスを会社として容認し続けるロスは、担当者個人
の負担として、その担当者を直撃します。退職につながるケー
スが多いです。

6.生産性を管理する、効果は○です。

部門ごと、出来れば担当者ごとに、その生産性を把握できる指
標を設けて管理してください。部門、出来れば担当者ごとの実
績を把握し、目標を決めて、継続的に管理することは大変有効
です。
※担当者個人を責めるための管理ではありません。生産性を改
善させるため・個人の負担を軽減させるための管理です。

7.業務のスピードを上げる、効果は△です。

同じことを10%早くやれば、確かに生産性は10%向上します。
確かに重要ですが、精神論・根性論に終焉しがちです。マネー
ジメントとしての対策(上記の1~6)を進めながら、並行し
て取り組んでください。

◎1~6はすべてマネージメント(経営)の問題です。低生産
性の原因は、現場の問題ではなく、すべて経営、言い換えると
(中小企業では)社長一人の問題なのです。

日本政策金融公庫及び商工中金で取り扱っている新型コロナウ
イルス感染症特別貸付(コロナ実質無利子・無担保融資)の申
込期限が6月末まで継続延長されています。

この借入制度は、既存借入の借換も可能であるため、現在の借
入を無利子化するという目的で利用できます。日本政策金融公
庫や商工中金で既に借入があり、要件を満たす方はご確認くだ
さい。

■ 実質無利子化について

個人小規模企業者・・・要件なし
個人中小企業者・・・売上高▲20%以上
法人小規模企業者・・・売上高▲15%以上
法人中小企業者・・・売上高▲20%以上

※小規模企業者とは
卸・小売業、サービス業は常時使用する従業員の数が5名以下、
それ以外の業種は20名以下の企業をいう。

※売上高要件
(1)最近1カ月の売上高または過去6カ月の平均売上高を、
前4年のいずれかの年の同期と比較
(2)業歴が3カ月以上、1年1カ月未満の場合等は、最近1
カ月の売上高または過去6カ月の平均売上高を、次のい
ずれかと比較
・過去3カ月(最近1カ月含む)の平均売上高
・令和元年12月の売上高
・令和元年10~12月の平均売上高

■ 金利引き下げ・実質無利子化の限度額
日本政策金融公庫中小事業 3億円
日本政策金融公庫国民事業 6,000万円
商工中金 3億円

■ 借換限度額
日本政策金融公庫中小事業 6億円
日本政策金融公庫国民事業 8,000万円
商工中金 6億円
※限度額は新規融資と公庫等の既往債務借換の合計額

新たな資金需要がなくても、金利負担を減らすことを目的と
して、利用を検討されてはいかがでしょうか。