経営者の『胆力』についてお話しします。少し哲学的な内容に
なりますがご容赦ください。

■多くの偉人が、経営者に必要な資質の一つに『胆力』を挙げ
ています。『胆力』とは何か?考察してみましょう。

・新しい事業を創造する
・高付加価値の商品やサービスを開発する。
・新しい販売方法を考える。
・効率的な業務の運営方法を考える。
・有事に対応する。…等々

何かを考えるという行為は、大きな力を必要とします。なかな
か思いつかないことを頭の中から絞り出す、小さなひらめきに
論理的な積み上げや検証を繰り返す、来る日も来る日も、そし
て行き詰っては元に戻り、そして前進する…相応の何かを創造
しようとすれば、わからないことを考え続ける力が必要です。
このプロセスに耐え得る力を『胆力』と定義すればわかり易い
はずです。

「知力は論理を要求する。しかし、論理的に考えるからといっ
て、『最後の結論は論理的には不明確です』だけでは行動はと
れない。わからないことはわからないなりに認めて、しかし一
定の方向が正しいであろうと自分なりに納得する結論に至る論
理を構築できるための知力。それが、行動のバイタリティーを
生み出すのに、もっとも重要なのである。では、知力を生み出
す知のエネルギーとは何だろうか。それは、わからないなりに
考え抜くための『考える』プロセスを耐えるエネルギーであり、
そのプロセスでの論理の積み上をきちんとできる脳と心のエネ
ルギーである。」(「よき経営者の姿」日本経済新聞社、伊丹
敬之氏著より引用)

上記は、もっともわかりやすく『胆力』を解説しています。
※本誌は名著です。ご購読をお勧めします。

■よく考える…この意味をよく考えてください。

企画やアイデアは偶然思いつくようなものではないはずです。
自分の頭に考えさせて、思いつかせるものです。漠然と求める
ものがあって、求めるもの自体も明瞭でない状況から、雲をつ
かむようにアイデアのかけらを寄せ集める、寄せ集めてみても
形にならない、再度バラス。また、寄せ集めてみる、少し形が
見えてくる、使い物にならないので一部を残してバラス。何か
が足りないので、仮説を立てて外部からも情報を集める。時に
何千回・何万回も繰り返しながら創り上げる…これが企画やア
イデアの正体です。この過程で、脳細胞が何度も音を立てて破
裂し、知恵熱を出すぐらいの勢いで考えることが必要でしょう。

■よく考えるために必要な能力こそが『胆力』です。

経営者には、胆力が必要です。そして、胆力を持ち続けるため
には、常に高いレベルのエネルギーを維持しておかねばなりま
せん。伊丹敬之氏のお言葉を借りるなら「…わからないなりに
考え抜くための『考える』プロセスを耐えるエネルギーであり、
そのプロセスでの論理の積み上をきちんとできる脳と心のエネ
ルギー…」です。

故に、『胆力』は経営者にとって極めて重要な資質であって、
かつ、その欠落は致命傷であると言われるゆえんです。

本田技研工業の第二の創業者と言われる名経営者の藤沢武夫氏
は、以下の言葉を残して引退されました。

「三日間くらい、寝不足続きに考えたとしても間違いのない結
論を出せるようでなければ、経営者とはいえない。平常のとき
には問題がないが、経営者の決断場の異常事態発生のとき、年
齢からくる粘りのない体での『判断の間違い』が企業を破滅さ
せた例を多く知っている。…」(「藤沢武夫の研究」かのう書
房、山本祐輔氏著より引用)

『胆力』『よく考える』について、自分自身の生き方と照らし
合わせて再考してください。

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