中小企業にとって、金融機関との適切な関係構築は資金調達や
経営安定の鍵となります。その中でも「バンクフォーメーショ
ン」という概念は、経営者が意識すべき重要な財務戦略です。
本コラムでは、規模に応じた金融機関の選び方と、担保や保証
の扱い方について解説します。

■ 規模に応じた金融機関の選定
企業の規模によって適切な金融機関を選ぶことが重要です。例
えば、売上規模が3億円以下の企業であれば信用金庫や信用組
合との取引が適しています。これらの金融機関は地域密着型で
あり、小規模事業者へのきめ細やかな対応が期待できます。

一方、売上が3億円を超えると地方銀行との取引を検討するべ
きです。地方銀行は中小企業に対しても積極的な融資を行いま
す。さらに、売上10億円以上となるとメガバンクとの取引も視
野に入りますが、メガバンクは大企業向けのサービスが中心で
あるため、中小企業にはハードルが高い場合があります。

規模に合わない金融機関と付き合うと、十分な対応を得られず、
必要な融資を受けられない可能性があります。そのため、自社
の売上規模やニーズに応じた金融機関を選ぶことが不可欠です。

■ 担保と信用保証協会の慎重な活用
担保や信用保証協会の保証は、中小企業にとって重要な資金調
達手段ですが、その活用には注意が必要です。特に、メインバ
ンクに担保や保証付き融資を集中させすぎると問題が生じる可
能性があります。メインバンクがリスクを取らない姿勢を見せ
ると、他の金融機関が「なぜサブバンク以下の立場で無担保融
資をしなければならないのか」と考え、結果的に融資が滞るこ
とがあります。

■ 複数銀行との取引でリスク分散
1つの金融機関だけに依存することはリスクが伴います。メイ
ンバンクから希望額の融資を断られた場合、他行との取引実績
がないと代替策が難しくなります。よって、複数の金融機関と
取引し競争環境を作ることで、有利な条件で融資交渉ができる
可能性が高まります。

特にサブバンクとの関係も維持することで、有事の際にメイン
バンクだけでは補えない資金調達力を確保できます。このよう
な戦略的な銀行取引は、中小企業経営者にとって不可欠です。

中小企業経営者は、自社の規模に応じた金融機関を選びつつ、
担保や保証制度を慎重に活用しながら複数銀行との取引を構築
するべきです。これにより、有事の際にも安定した資金調達力
を確保できる可能性が高まります。「バンクフォーメーション」
を意識した戦略的な銀行取引を行ってはいかがでしょうか。

副業解禁が叫ばれて久しい今、働き方の多様化は不可逆な流れ
となりつつあります。政府も企業も副業・兼業を容認しはじめ、
大企業では制度化が進み、中小企業でも無視できない課題とな
っています。しかしながら、「人材流出」「勤怠管理の複雑化」
などの懸念から、副業解禁を敬遠する中小企業経営者も少なく
ありません。だが実際には、副業をうまく取り入れれば、自社
の競争力強化やイノベーション創出に資する可能性を大いに秘
めています。
以下では、中小企業が副業をどのようにとらえ、どう活用すべ
きか、業種別の具体例を交えながら考察いたします。

■1.副業解禁の恩恵を最大化する視点

副業経験は、社員の視野を広げ、スキルアップを促進します。
他業界や異なる職種に触れることで得られる知識や人脈は、本
人の成長だけでなく、本業への波及効果も期待できます。副業
を認めることで従業員のキャリア自律性を支援し、モチベーシ
ョン向上にもつながります。さらに、自社が副業人材を受け入
れる立場に立つことで、外部の知見や人材リソースを柔軟に取
り込むことも可能です。

■2.業種別導入例にみる副業の活かし方

【製造業】
工場現場における技能伝承が課題となる中、副業で技術講師や
専門学校の非常勤講師を務める社員が、教育手法やマニュアル
整備の知見を持ち帰り、社内研修に反映する事例があります。
逆に、副業人材としてCAD設計やIoT導入に詳しい技術者
を週数時間だけ雇い、製造現場の省人化を実現した中小企業も
存在します。

【サービス業(飲食・宿泊)】
副業として観光ガイドやフードコーディネーターを行う社員が、
接客スキルの向上や新たなメニュー開発に貢献する例がありま
す。ある地方の旅館では、都会でマーケティング職として副業
をしている社員がSNS集客を自社に応用し、予約件数が倍増
したという成果も出ています。

【IT・クリエイティブ業界】
ITやデザイン分野では、副業はすでに一般化しつつあります。
自社社員がスタートアップの副業プロジェクトに関わることで、
アジャイル開発や最新のデザイン手法を学び、本業の業務改善
に寄与しています。逆に、自社が副業エンジニアを迎え入れ、
新規サービス開発のスピードアップを図る事例も多数あります。

【建設・土木業】
専門的な資格や技能が求められる業界においても、副業の柔軟
な活用は可能です。たとえば、空いた時間に他社の現場監督を
行う副業を認めることで、地域をまたいだネットワークが形成
され、人材不足時の応援体制を構築できます。副業による横の
つながりが、地域連携の新たなかたちとして注目されています。

■3.導入にあたってのポイント

副業のメリットを享受するには、就業規則の整備と社内ルール
の明確化が不可欠です。副業の申告制や、競業禁止の明文化、
労働時間の管理といった基本的な枠組みは整える必要がありま
す。さらに、「何を良しとし、何を懸念するか」という企業と
しての考え方を社員と共有し、対話を通じた運用が成功の鍵を
握ります。

■4.副業を通じた企業文化の転換

副業を認めることは、単なる制度設計ではなく、「開かれた組
織」であることの表明でもあります。従業員の多様性を尊重し、
変化を受け入れる企業文化は、若い人材や意欲ある求職者にと
って魅力的に映ります。実際、「副業OK」を掲げることで応
募者の質が高まり、企業イメージの向上にもつながったという
報告も少なくありません。

■5.副業解禁は“攻め”の経営戦略である

副業解禁は、もはや一部の先進企業だけの取り組みではありま
せん。中小企業こそ、柔軟な発想と迅速な意思決定で、この潮
流を自社の成長に転換できる余地が大きいです。副業は単なる
“働き方”の選択肢ではなく、“人材育成”“外部知見の導入”
“地域連携”など、多方面にわたる経営資源として機能し始め
ています。
今こそ、中小企業経営者には「副業=敵」という発想から脱却
し、「副業=企業の未来を切り拓く鍵」として前向きに向き合
う姿勢が求められています。

副業を“敵”とせず“味方”に変える発想転換が必要な時期が到来
したようです。

最近、銀行担当者から「リスケジュールを行うと倒産確率が上
がる」といった意見を聞かれることがありますが、実際はそう
ではありません。むしろ、早めにリスケジュールを行うことで、
企業は将来のキャッシュフローを回復させるための時間的猶予
を得ることができます。

多くの社長様は、「リスケジュールは後ろ向きな話なので相談
しにくい」と感じているようですが、実際にはリスケジュール
は前向きな対応策です。後ろ向きだと考えていると、以下のよ
うな過ちを犯してしまいます。

■ 資金が枯渇する寸前までアクションを起こさない
数か月後には銀行の口座が空になることが分かっているにも関
わらず、リスケジュールは避けたいという安易な気持ちでギリ
ギリまで我慢してしまいます。本当に手元資金が無くなってか
らリスケをするよりも、ある程度の余裕を持ってリスケをする
方が、その後の効果は高くなります。

手元資金に一定の余裕がある段階で金融機関がリスケジュール
に応じてくれるのか?という疑問もあるでしょう。しかし、手
元資金に一切の余裕を持たずに企業経営を行うことはできませ
ん。当然、金融機関も理解していますので、一定の資金を保有
することは認めてくれます。

当事務所が財務部長の代行を務めている工事業のお客様は、年
商3億8,000万円で約2,500万円程度の資金を保有していますが、
継続してリスケジュールをお願いしています。大きな受注を取
った時には材料代や外注費の先払いが発生する可能性がありま
すので、最低でも手元資金が月商の1か月分、3,000万円強にな
るまではリスケジュールの継続をお願いするつもりです。

■ 無理して返済をしようとする
リスケジュールは後ろ向きなので、出来る限りの金額を返済し
たいと考えます。仮に毎月100万円の返済をしていた場合、せ
めて30万円だけでも返済します。といった具合です。会社にと
って、この30万円を返済することに合理的なメリットはありま
せん。30万円を1年間、360万円の資金を返済に充てるよりも、
商品の仕入とか、営業マンの雇用とか、前向きな資金に使う方
が、よほど将来性が高まります。中途半端な金額を返しながら
ズルズルとリスケジュールを継続するより、返済の全てを一旦
止めてしまい、一気に業績回復を狙った方が金融機関にとって
も良いと思います。

繰り返しますが、リスケジュールは「返済を一時的に止めるこ
とで将来のキャッシュフローが回復する。」という前向きな対
応策です。逆に「返済を一時的に止めても将来のキャッシュフ
ローが回復する見込みはない。」という後ろ向きの話であれば、
リスケジュールには応じてもらえません。

当事務所では、リスケジュール後の返済額を0円で経営改善計
画を立案し、金融機関にもご理解いただいた実績が多数ござい
ます。また、当初はリスケジュールの相談で来所されたけれど
も、借り換えで対応してリスケジュールを回避した事例もござ
います。資金面に少しでも不安があれば今すぐご相談ください。
早ければ早い方が良い結果を出せます。

AI(人工知能)はもはや一部の大企業だけの専有物ではあり
ません。現在では中小企業でも手軽に導入・活用できる環境が
整いつつあります。AIは正しく使えば、業務効率化、売上拡
大、人手不足の解消など、様々な課題の解決に直結します。以
下に、AI活用の具体的な利点や導入のポイントをご紹介しま
す。

■1.なぜ中小企業にAIが必要なのか?

●慢性的な人手不足の解消
AIは単純作業を代替でき、人材リソースをより価値ある業務
に振り分けられます。
●経営の「勘と経験」から「データ主導」への転換
売上データや顧客情報をAIが解析し、客観的な経営判断を支
援します。
●競争力強化
同業他社との差別化に繋がり、顧客満足度や生産性の向上が期
待できます。

■2.AIが活躍する具体的な業務領域

●業務の自動化(RPAやAIツール)
経理、受発注、スケジュール管理などの定型業務を自動化。
ミスの削減と業務スピードの向上が実現。
●カスタマーサポートの強化
AIチャットボットにより、24時間対応が可能に。
顧客の満足度と信頼感を高められます。
●販売・需要予測
売上データや天候、季節などをAIが分析し、商品の仕入れや
在庫最適化を支援。
●マーケティング施策の最適化
SNS分析や顧客の行動データから、ターゲット層に合わせた
広告やキャンペーンを提案。

■3.AI導入のメリット

●業務の効率化
少人数でも高い成果を上げられる組織に変革。
●コスト削減
長期的に見ると人件費・教育費の削減にも繋がります。
●人材の活用最適化
単純作業から解放された社員が創造的な業務に注力可能。
●経営の可視化とスピードアップ
分析・レポート機能により、意思決定のスピードが向上。

■4.導入のハードルとその乗り越え方

●初期費用が心配?
無料または低価格で使えるAIサービスも多く存在。まずは小
規模導入から。
●専門知識がない?
ノーコードで使えるAIツールや外部のサポート会社を活用し
ましょう。
●社内のITリテラシーに不安?
社員教育や外部講習を通じて、段階的にスキルを底上げ。
●導入効果が見えにくい?
効果を「見える化」するKPI(指標)を設定し、定期的に振
り返りましょう。

■5.今すぐ始めるための第一歩

●小さな業務(請求書処理、問い合わせ対応など)からAI導
入を始めてみる。
●ITやDXに詳しい外部パートナーに相談する。
●補助金・助成金制度を活用して、費用負担を軽減する。
●社内に「AI推進担当者」を置き、継続的な運用体制を整備
する。

AIは、人の「代わり」ではなく「相棒」です。恐れるのでは
なく、試してみることが大切です。中小企業こそ、機動力を活
かして先行的に活用することで、大きな成果を上げられます。
ぜひ今から、AIを味方にする経営をスタートしましょう。

中小企業の経営者にとって、財務分析は非常に重要なツールで
す。財務分析を通じて、企業の財務状況を把握し、正しい情報
に基づいた決定を下すことができます。このコラムでは、中小
企業の経営者が直面する財務上の課題と、財務分析がどのよう
にして企業の成長を支えるかを説明します。

■ 財務上の課題
多くの中小企業は、資金繰りやコスト管理に苦労しています。
急な支払いが必要になったり、予期せぬコストが発生したりす
ることがあります。そのような中で、経営者はどのようにして
企業を安定的に運営し、成長させることができるでしょうか。

■ 財務分析の重要性
財務分析は、企業の財務状況を明確にし、将来の計画を立てる
ための重要な情報を提供します。まずは、以下の3つの財務諸
表を理解することが重要です。

1.損益計算書:企業の収益や費用、利益を示します。部門別
に管理すれば、どの部門が最も利益を生み出しているか、また
どの部門に改善が必要かを把握できます。

2.貸借対照表:企業の資産、負債、資本を示します。短期的
な資金繰りや長期的な資金調達の計画に役立ちます。

3.キャッシュフロー計算書:企業の現金の流れを示します。
現金がどのように増減しているかを把握し、資金繰りの改善策
を講じることができます。

■ 実践的なアプローチ
1.資金繰りの改善
資金管理が企業の生命線です。財務分析を通じて、現金の流れ
を把握し、予測を立てることで、資金繰りのリスクを軽減でき
ます。具体的には、以下の方法が有効です。

例)
・予算管理:毎月の支出を予算化し、予算内で運営する。
・在庫管理:在庫を最適化し、不要な在庫を削減することで、
現金の流れを改善します。

2.コスト削減と効率化
財務分析により、どの部門でコストがかかっているかを特定し、
無駄を省くことができます。例えば、以下のような改善策があ
ります。

例)
・業務プロセスの最適化:不要な手続きを削減し、業務効率を
向上させる。
・リソースの再配分:利益率が低い部門から、成長が期待され
る部門へリソースを再配分する。

3.リスク管理
財務分析はリスク管理にも役立ちます。財務状況を定期的に確
認することで、潜在的なリスクを早期に発見し、対策を講じる
ことができます。例えば、借入比率が高まっていることをリア
ルタイムで察知できれば、負債のコントロールが可能になりま
す。

財務分析は、中小企業の成長を支える重要なツールです。資金
繰り管理やコスト削減、リスク管理など、具体的なアプローチ
を通じて、経営者は企業の財務状況を把握し、正しい情報に基
づいた決定を下すことができます。財務分析を活用することで、
中小企業は安定的に成長し、将来に向けて強力な基盤を築くこ
とができると考えます。

■1.「部分最適」ではなく「ストーリーとしての競争戦略」
が必要

中小企業の経営では、「売上を伸ばす」「コストを削減する」
といった個別施策に注力しがちです。しかし、それぞれの施策
がバラバラでは、競争優位性を築くことはできません。

一橋ビジネススクールの楠木建教授が著書『ストーリーとして
の競争戦略』で示しておられるように、成功する企業はすべて
の経営施策が「つながり」、一貫したストーリーを持っている
ことが特徴です。

例えば、価格競争に巻き込まれない企業は、単に「良い商品」
を作るだけではなく、顧客に伝わる独自の価値を持っています。
これは「安いから選ばれる」のではなく、「この会社だから選
ばれる」という状況を作ることにほかなりません。

■2.「ストーリー型戦略」を持つ企業の成功事例

●IKEA:「セルフサービス型家具販売」の徹底

IKEAは、安さを追求するだけではなく、以下のような一貫
した戦略を持っています。
・自分で組み立てる前提の家具 → 輸送コスト削減
・巨大店舗でワンストップショッピング → 効率的な在庫管理
・低価格だがデザイン性の高い商品 → ブランドイメージの統一

これにより、「安くておしゃれな家具を、自分で選び、持ち帰
る」という独自のストーリーを確立し、他社が簡単に模倣でき
ない競争力を築きました。

●スターバックス:「体験」を売る戦略

スターバックスは、単にコーヒーを売るのではなく、「第三の
場所(サードプレイス)」としての価値を提供することで成功
しています。
・高級感のある内装とBGM → リラックスできる空間を演出
・パーソナライズされた接客 → 顧客とのつながりを強化
・高価格帯の設定 → 「安さ」ではなく「体験」に価値を持た
せる

もし、価格競争に巻き込まれて「安いコーヒー」を売る方向に
シフトすれば、このストーリーは崩れ、競争力を失うでしょう。

■3.中小企業が実践すべき「ストーリー型競争戦略」

◆1.「価格競争からの脱却」を意識する

多くの中小企業は、競合と差別化するために価格を下げがちで
すが、これは持続的な競争戦略ではありません。むしろ、「な
ぜこの会社なのか?」を明確にすることが重要です。

例:地域密着型の飲食店の場合
「競争に勝つために安売りをする」
「でも高級食材を使って差別化もしたい」
どっちつかずになり、ブランドがぼやける

「地域の常連客を大切にする」というストーリーを明確にして、
価格ではなく、「特別なサービス」や「地元のつながり」を強
みにするべきです。

◆2.「競争しない競争」を目指す

楠木教授は、「競争戦略とは、他社と違う価値を作ること」だ
と述べています。つまり、同じ土俵で戦うのではなく、自社独
自の価値を打ち出すことが必要です。

例:町工場の成功例
「安い下請け業務で仕事を増やす」
「世界で唯一の技術を持つ職人集団としてブランディング」
大手メーカーの下請けではなく、自社ブランド製品を開発

競争が激しい市場で「少しだけ良い」企業を目指すのではなく、
「この会社だからこそ提供できる価値」を追求すべきです。

◆3.すべての施策を「一貫性のあるストーリー」にする

競争優位性を築くには、経営のあらゆる要素が統一されている
必要があります。

例:「高品質な商品」を売る会社の場合
価格設定 → 高品質だからこそ安売りはしない
接客スタイル → 丁寧な説明とアフターサービスを徹底
広告・マーケティング → ターゲット層に適したブランディン
グを行う

単なる「高品質な商品」というだけではなく、それを支えるス
トーリー全体の整合性を確保することが重要です。

■4. 提言:「ストーリーのある経営」で競争力を高めよ

中小企業経営者への提言…
◎競争は「他社より少し良い」ではなく、「独自の価値を作る」
こと
◎部分最適(売上拡大・コスト削減)ではなく、全体の一貫性
を重視する
◎成功企業の真似ではなく、自社独自のストーリーを確立する

価格競争に巻き込まれないためには、「この会社だから選ばれ
る」という独自の価値を持つことが不可欠です。そのために、
自社の経営をストーリーとして捉え、施策の一貫性を確保し、
競争に「勝たない」競争を実現することが求められます。

「安いから選ばれる」のではなく、「この会社だから選ばれる」
会社を目指したいものです。

引用:『ストーリーとしての競争戦略』東洋経済新報社、一橋
ビジネススクール教授楠木建氏著

中小企業経営者として、自社の資金調達力がどれぐらいあるの
か、正確に把握している人は少ないと思います。実際、以下の
ような疑問を抱いている経営者は多いでしょう。

・当社は融資を受けられるのだろうか?
・融資を受けられない理由は何だろうか?
・最大どれぐらい借りることができるのだろうか?
・どうすれば融資を受けられるようになるのだろうか?
・次はいつごろ融資を受けられるのだろうか?

周囲を見渡しても、これらの質問に具体的な根拠を示して答え
てくれる人は少ないです。最も正確に答えられるのは、金融機
関の決裁担当者ですが、彼らは原則としてこの手の質問には答
えません。結果として、憶測や不確かな情報が広がることがあ
ります。

■ 融資審査の基本的な考え方
実際には、金融機関の決裁担当者は、特定の基本的な考え方に
基づいて与信判断を行っています。個別の事情やタイミングに
よって結果が異なることもありますが、「融資審査の基本とな
る考え方」を知れば、第三者でもある程度質問に答えることが
可能になります。

ただし、残念ながらこの基本的な考え方を親切丁寧に教えてく
れる場所は、金融機関の社内研修に限られます。企業側がこの
知識を持つことは非常に有益です。資金があっての事業計画で
あるにも関わらず、自社の資金調達力に見合わない計画を立て
てしまい、資金難に陥っている企業も少なくありません。

■ 銀行融資プランナーの役割
自社の資金調達力が分かれば、適切な新規設備投資額が分かり
ますし、次のファイナンスのタイミングが分かれば、手元資金
を新規事業にどのようなペースで投資していけば良いかが分か
ります。

このため、当銀行融資プランナー協会では「当社は最大どれぐ
らいの借入が可能ですか?」という質問にお答えできる銀行融
資プランナーの育成及び認定を行っています。銀行融資プラン
ナーは、融資審査の基本的な考え方を習得するため、事例を交
えた数十時間の研究会を受講した方だけが受けられる認定です。
企業側の立場に立って、この分野を体系的・網羅的に学習した
方は少ないと思います。

■ 中小企業経営者様へのご提案
中小企業の財務部長の仕事は銀行対応が大半です。銀行の考え
方を知らない財務部長では役目を務めることはできません。是
非、銀行融資プランナーを活用して、自社の資金調達力を正確
に把握し、適切な事業計画を立てていただければと思います。

銀行融資プランナーは、企業が自社の資金調達力を理解し、適
切な資金計画を立てるための重要な役割を果たします。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

近年、物価の上昇に伴う原材料価格の高騰や、人手不足に起因
する人件費の上昇が企業経営に深刻な影響を及ぼしています。
特に中小企業にとって、価格転嫁を行わずにコスト増を吸収し
続けることは、利益の圧迫につながり、最終的には事業の存続
を危うくする可能性があります。しかし、値上げを実施するこ
とで顧客離れが起こることを懸念し、踏み切れない経営者も少
なくありません。

本稿では、中小企業が値上げを積極的に進めるための具体的な
方法と、実際に成功した事例を3つ紹介しながら、適正な価格
設定の重要性について提言します。

●1.価値を伝えることで顧客の納得を得る
(老舗和菓子店の成功事例)

値上げを行う際に最も重要なのは、「なぜ価格を上げるのか」を
顧客に納得してもらうことです。ただ単に「原材料が高騰した
から」という理由ではなく、自社の商品やサービスの価値をし
っかり伝えることが大切です。

例えば、ある老舗の和菓子店では、原材料の質を落とさずに伝
統の味を守るために価格を10%引き上げました。しかし、単に
値上げを発表するのではなく、店頭やホームページ、SNSを
活用して「厳選した国産素材を使用し続けるための決断」であ
ることを伝えました。さらに、商品の製造工程を公開し、職人
の手仕事の大切さを強調することで、顧客の理解を得ることに
成功しました。その結果、売上の減少を抑えながらも利益率を
改善することができました。

このように、値上げを単なる「コスト増への対応」ではなく、
「価値を維持・向上するための施策」として伝えることで、顧
客の理解を得やすくなります。

●2.小幅な段階的値上げで顧客の抵抗を和らげる
(カフェチェーンの取り組み)

一度に大幅な値上げを行うと、顧客が価格の変化を強く意識し、
利用頻度が下がる可能性があります。そのため、段階的な値上
げを行うことも一つの有効な手段です。

全国展開するあるカフェチェーンでは、原材料価格と人件費の
上昇を受けて、主要メニューのコーヒーを一気に30円値上げす
るのではなく、半年ごとに10円ずつ上げる方法を採用しました。
また、値上げに合わせて「より香り高い豆の使用」や「バリス
タの技術向上」といった付加価値も同時に提供することで、顧
客の満足度を維持しました。

その結果、顧客は値上げに対する抵抗感を持ちにくくなり、売
上の減少を最小限に抑えることができました。このように、段
階的な値上げを採用することで、顧客の心理的負担を和らげる
ことが可能です。

●3.価格競争から脱却し、付加価値を高める
(町工場のブランディング戦略)

価格競争に巻き込まれないためには、「安さ」ではなく「品質」
や「独自性」で勝負することが重要です。

ある町工場では、従来は低価格を売りにした製品を製造してい
ましたが、大手メーカーとの競争が激化し、利益率が低下して
いました。そこで、単なる安価な製品ではなく、高い精度が求
められる高付加価値製品の開発にシフトしました。同時に、工
場の技術力を前面に押し出したブランディングを行い、「高品
質な日本製」としての価値を訴求しました。結果として、価格
を引き上げても取引先は離れず、むしろ新規顧客が増加しまし
た。

このように、他社との差別化を図り、付加価値を高めることで、
単なる価格競争に巻き込まれずに適正な価格を維持することが
できます。

値上げは、単にコスト増を補填するための手段ではなく、企業
が持続的に成長するための戦略の一環として捉えるべきです。

●1.顧客に対して価値を明確に伝える
●2.小幅な段階的値上げを行い、抵抗を和らげる
●3.価格競争から脱却し、付加価値を高める

これらの施策を適切に組み合わせることで、売上の減少を最小
限に抑えながら利益を確保し、安定した経営を続けることが可
能になります。中小企業経営者の皆様には、単なる「値上げ」
ではなく、「適正価格の確立」として前向きに取り組んでいた
だきたいと思います。

財務管理の強化には試算表の作成が不可欠ですが、財務管理は
試算表だけでは不十分です。なぜなら、試算表にはキャッシュ
ベースの収支が反映されないという弱点があるためです。

■ 利益管理と資金繰り管理の重要性
企業経営において、赤字であっても即座に倒産するわけではあ
りません。しかし、黒字企業であっても資金が底をつけば倒産
のリスクに直面します。この観点から、利益管理以上に資金繰
り管理が重要であると言えます。

■ 資金繰り表の重要性
資金繰り管理の要となるのが「資金繰り表」です。これは、毎
月の入金額と支出額を項目ごとにまとめた表で、一見単純です
が財務管理に極めて有用です。

多くの経営者の方々は、何らかの形で資金繰り表を作成されて
いるでしょう。しかし、多くの場合、今月や来月といった短期
間の資金繰りしか把握できていないのが実情ではないでしょう
か。

■ 短期的な資金繰り計画の限界
短期的な資金繰り計画しか立てていないと、資金不足に気づく
のが遅れ、十分な対応時間を確保できません。これでは、経営
者として重要な業務を後回しにしてまで資金調達に奔走せざる
を得なくなり、場当たり的な財務活動に陥ってしまいます。

■ 年間の資金繰り計画の重要性
計画的な財務活動を行うために、向こう1年間の「資金繰り計
画」を作成することをお勧めします。これにより、資金の流れ
を予測し、資金調達や設備投資の計画を立てることができます。

確かに、1年先の売上を正確に予測することは困難です。しか
し、過去1年間の「資金繰り実績」も併せて作成することで、
過去の売上動向から将来の傾向を推測することもできます。

■ 財務管理の最終目標
財務管理の最大の目的は「資金を切らさないこと」です。試算
表で利益を管理しつつ自社の資金調達力を高め、同時に資金繰
り計画を立てて計画的に資金調達や設備投資を行うことで、資
金面での不安を解消し、経営に専念できる環境を整えることが
できます。

■1.お客様の声を聴くだけでは不十分な時代へ
「お客様の声を聴くことが重要」とよく言われますが、令和の
時代においてはそれだけでは十分ではありません。現代のお客
様は自分の困りごとをすでに解決できる手段を持っていること
が多く、本当に必要なものを明確に認識していない場合が多い
からです。

例えば、スマートフォンが登場する前、多くの人は「持ち運び
できる高性能なPCが欲しい」と考えていました。しかし、
Appleは「人々はPCではなく、もっと直感的で便利なデバイ
スを求めている」と考え、iPhoneを開発しました。このように、
成功する企業は市場のニーズを先回りし、お客様自身が気づい
ていない価値を提案しているのです。

■2.マーケットイン vs. プロダクトアウト、時代に合うのは
どちらか
従来、多くの企業は「マーケットイン」型の考え方を重視して
きました。つまり、お客様のニーズを調査し、それに応じた商
品やサービスを提供するという手法です。これは一見合理的に
思えますが、問題点もあります。

●マーケットインの課題
お客様の声に頼りすぎると、すでにある製品の改良にとどまり、
大きなイノベーションが生まれません。競合他社も同じように
市場調査を行うため、同質化します。お客様の意見は「今ほし
いもの」に基づいており、「将来必要になるもの」には気づい
ていないことが多いからです。

一方で、「プロダクトアウト」型の考え方は、企業側が先に仮
説を立て、世の中に新しい価値を提案する手法です。Appleや
Teslaのような企業はこの考え方を採用しており、「お客様の声
を聞く」のではなく、「お客様がまだ知らない価値を提示する」
ことで市場を創り出しています。

■3.中小企業こそ「仮説提案型」の経営が必要
「プロダクトアウト」と聞くと、大企業だからできることだと
思われがちですが、むしろ中小企業こそこの考え方を取り入れ
るべきです。なぜなら、大企業と同じ市場調査をして競争して
も勝てる見込みは薄く、独自の強みを活かした提案力が求めら
れるからです。

●成功事例1:町工場の技術を活かした新商品開発
ある中小企業の町工場では、長年にわたり精密加工技術を活か
して大手メーカーの下請けをしていました。しかし、取引先の
コスト削減が進む中、このままでは厳しいと考え、自社ブラン
ドの商品開発を決意しました。そこで、社内の技術を活かして
「極薄のステンレス製コーヒーフィルター」を開発。市場には
まだなかった商品でしたが、「ペーパーフィルター不要」「環
境に優しい」という価値を訴求し、大ヒットしました。このよ
うに、「お客様が求めるもの」ではなく、「自社の技術を活か
せる新しい価値」を提案したことで成功を収めたのです。

●成功事例2:飲食店のメニュー開発における提案型アプロー

ある地方の和食店では、観光客の減少により売上が落ちていま
した。通常であれば「お客様の声を聴いて、人気メニューを増
やす」といった対応をするかもしれません。しかし、この店は
「お客様が気づいていない魅力を提案する」ことに注力しまし
た。具体的には、地元の食材を活かした創作料理を開発し、
「ここでしか食べられない特別な体験」としてSNSで発信。結
果的に、観光客だけでなく地元客のリピーターも増え、売上が
回復しました。

■4.どうやって「仮説提案型」の経営を実践するか
では、実際にどのようにして「仮説提案型」の経営を進めれば
よいのでしょうか? 以下のステップが有効です。

●1.自社の強みを再確認する
まずは、自社が持っている技術・ノウハウ・リソースを棚卸し
し、「何が他社と違うのか」を明確にします。

●2.お客様の未来の課題を考える
現在のニーズではなく、「この先お客様がどんな困りごとを抱
える可能性があるか」を想像します。

●3.小さく試して反応を見る(MVP戦略)
いきなり大きく投資せず、試作品や試験的なサービスを提供し、
反応を確認しながら調整していきます。

●4.ストーリーを持たせて発信する
単なる商品・サービスとしてではなく、「なぜこれを作ったの
か」「どんな価値があるのか」というストーリーを発信するこ
とで、共感を得られやすくなります。

■5.まとめ
お客様の声を聴くことは大切ですが、それだけに依存すると競
争の中で埋もれてしまいます。成功する企業は、マーケットイ
ンではなくプロダクトアウトの発想で、お客様がまだ気づいて
いない価値を提案しています。特に中小企業は、独自の技術や
強みを活かしながら、未来のニーズを予測し、積極的に仮説を
立てて提案する姿勢が求められます。成功事例に学びながら、
自社ならではの新しい価値を創り出すことで、大企業にはない
独自のポジションを築くことができるでしょう。