…前回号のつづきです。

税務に付加して、金融機関対応と財務に対する強みを有するこ
とを宣言する当事務所には、様々な相談が寄せられます。前回
に続いて、一部をご紹介させていただきます。

◆お悩み11:「新しい投資計画書を示しながら新規の融資を
打診したが、計画書の内容を確認するまでもなく、『融資は難
しいです。(銀行担当者)』」と言われた。

◇精魂込めて作り上げた投資計画書を確認してもらえない段階
で、融資を断られたことに納得がいかない様子の相談者様でし
たが…金融機関は、新規の融資を検討する時、まず、直近の決
算書(及び試算表)を確認します。この決算書と足元の推移が
健全であると判断した時に、新規融資の検討を開始します。健
全でなければ、新規融資の検討自体を行いません。

○直近の決算書(及び試算表)の確認方法は…

1.直近の決算書から簡易キャッシュフロー(税引き後利益+
減価償却費)を確認します。この簡易キャッシュフローの金額
が、現時点の実質借入総額の10分の1以上であることが最低
条件です。

2.債務超過でないことが必要です。

※1又は2が突出して優良な時、または、提供できる担保があ
る場合など、上記の限りではありません。上記はあくまでも簡
易的な診断です。実際には、突っ込んだ財務分析を行います。

○1と2を満たす時、現時点においては健全である…と判断さ
れて、新規融資の検討、投資計画書の確認を始めます。直近の
決算書の確認で融資できないとなれば、当然投資計画書の確認
は行いません。

◎当事務所にて、診断を行った結果、新規融資を受けられる可
能性は極めて低いことがわかりました。相談者様に対しては、
融資を受けられない理由、どうなれば融資を受けられるのかを
ご説明して納得いただきました。
◆お悩み12:「リスケジュールの交渉中だが、直近に借入れ
た銀行分だけは、返済額も少ないので返済を続けようと考えて
いたが、他の金融機関が強硬に反対してきた。ダメなのか?」

◇数カ月前に融資を受けたばかりの金融機関にリスケジュール
の相談をしたら、厳しい口調で叱責されたそうです。であるな
らば、その金融機関に対しては返済を続けて、他の金融機関に
はリスケジュールをお願いしようと他の金融機関に相談したら、
他の金融機関に断られた、との相談です。

○融資の借入れを行ってすぐに返済猶予を求めることは、そも
そも返済できないことがわかっていたのに借入れを行ったので
はないか、との疑念を生みます。返済できないことがわかって
いて借入れを起こす行為は、信義に反します。程度加減によっ
ては法律に違反する犯罪行為になります。新規借り入れ直後の
返済猶予は認められないケースがあります。

○金融機関に対して返済猶予などの金融支援を依頼する時は、
衡平でなければならないとするルール「衡平性の原則※」(=
すべての金融機関に対して衡平に金融支援を受ける。)が適用
されます。ある金融機関にのみ返済を続ける、このような例外
は原則成立しません。この場合は、返済猶予依頼先の金融機関
の同意が得られません。このままでは、すべての借入れに対し
てリスケジュールができません。※一部例外があります。

◎当事務所にて、状況の確認を行った結果、当該事象は、直近
借入後の予見不可能な緊急事態による急激な業績の悪化が原因
であり、借入れ時においては予見が難しかった旨を、対象金融
機関に丁寧に説明しました。一部担保(実質価値は小さい)を
追加で提供して了解を得ました。(これも厳密に言うと「衡平
性の原則」から外れますが。)借入先の全金融機関からリスケ
ジュールの承諾を得ることができました。
当事務所が、モニタリングを継続し、会社様のサポートと金融
機関への窓口業務を担っています。

…次回号に続く

中小企業が成長を遂げるためには、資金が必要です。やはり銀
行融資が一番目の選択肢であることは変わりませんが、最近で
は資金調達の方法が多様化しています。このコラムでは、中小
企業の資金調達の新たなトレンドとその利点について考察しま
す。

■ 銀行融資
多くの中小企業は、設立当初から銀行と取引が始まり、融資を
受けています。銀行融資は安定感があり、低金利での借り入れ
が可能です。しかし、審査が厳しいという難点もあります。

■ クラウドファンディング
近年、クラウドファンディングが中小企業にとって注目の資金
調達手段となっています。クラウドファンディングは、多くの
投資家から少額ずつ資金を調達する仕組みです。この方法の利
点は、多くの人々がプロジェクトやビジネスに投資しやすく、
資金を調達しやすい点にあります。また、プロジェクトへの資
金提供者とのコミュニケーションも容易で、市場での製品やサ
ービスの評判を築く機会を得ることができます。

■ ベンチャーキャピタル
ベンチャーキャピタル(VC)は、急成長を遂げる新興企業向
けの資金調達方法として知られています。VCは、リスクを冒
し、成長が見込まれる企業に資金を提供します。中小企業がV
Cを活用する際には、成長戦略やビジョンを魅力的に提示する
ことが重要です。VCからの資金調達は、急速な拡大を実現す
るために利用されますが、出資に伴う株式の一部を譲渡する必
要があることに留意する必要があります。

■ アクセラレータ・プログラム
アクセラレータ・プログラムは、中小企業の成長を支援するた
めに提供される資金と専門知識の組み合わせです。これらのプ
ログラムは、特定の業界や市場に特化し、参加企業に対してビ
ジネスモデルの改善や市場進出の支援を行います。一般的には
一定の期間(通常3〜6か月)にわたり、参加企業には資金の
提供やメンターシップが提供されます。アクセラレータ・プロ
グラムは、成長段階の中小企業にとって新たな機会を開く手段
として注目されています。

■ 自己資金の活用
最後に、自己資金の活用について言及します。中小企業は、外
部からの調達も大切ですが、自己資金を最大限に活用すること
が最も重要です。利益を再投資することで、成長に必要な資金
を自己資金から得ることができます。これにより、負債を抑え
た経営を行うことができ、将来的な安定性が向上します。

中小企業の成長には資金が不可欠ですが、その資金調達方法は
銀行融資だけではありません。自社の状況やビジョンに合った
方法を選び、計画的に資金調達を進めることで、持続可能な成
長が実現できます。多様な資金調達オプションを検討し、ビジ
ネスの可能性を最大限に引き出しましょう。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

…前回号のつづきです。

税務に付加して、金融機関対応と財務に対する強みを有するこ
とを宣言する当事務所には、様々な相談が寄せられます。前回
に続いて、一部をご紹介させていただきます。

◆お悩み9:
融資依頼を行ったら銀行の担当者に「役員報酬が少ない。」と
言われた。役員報酬が少ないと借入れが受けられないのか?
(相談者様)

◇融資依頼をするために決算書を提示した時に、出入りの銀行
の担当者が「役員報酬が少ないですね。」と言ったそうです。
併せて、新規の融資に難色を示されたので、相談者様は役員報
酬が少ないと借入れが受けられないのか?との疑問を持たれた
ようです。

○金融機関が新規の融資を検討する時には、まず現状の財務の
健全性を確認します。

簡易キャッシュフロー(税引き後利益+減価償却費)を確認し
ます。この簡易キャッシュフローの要素となる税引き後利益を
確認するために、販売管理費も確認します。この時、役員報酬
が過少であれば、本来はもっと役員報酬が必要となるため、税
引き後利益が少なくなるのではないか?と考えたと推測できま
す。金融機関が考える役員報酬額に置き換えた時、簡易キャッ
シュフローが極小であったため、新規融資に難色を示されたよ
うです。

○役員報酬の多い・少ないではなく、実態の税引き後利益がポ
イントです。

※融資審査時の財務診断は他にもあります。簡易キャッシュフ
ローの診断はほんの一部です。

◎当事務所にて、診断を行った結果、奥様の所得が給与に計上
されており、社長様の役員報酬は過少であっても、世帯所得は
常識の範囲内である、役員報酬額の是正(税引き後利益の減額
補正)は必要ない旨を、銀行担当者に説明することで、理解を
得ました。誤解を解きました。金融機関との折衝は、当事務所
が行いました。必要な金額の新規融資を調達できています。

◆お悩み10:
「雨が降ってきたから傘(お金)は貸さない、晴れている時は
傘(お金)を貸す」と言う。銀行とはどんなところだ?(憤り)

◇6か月前に融資を受けませんかとの提案をいただいたそうで
す。その時は断ったが、その後、主要な取引先との取引がなく
なって、業績が悪化して赤字に転落しています。(試算表ベー
スで大赤字です。)同じ銀行に融資依頼を行うも、「融資でき
ない(銀行担当者)」との回答だったそうです。

○金融機関は総じて、「雨が降っている時には傘を貸しません。
晴れたら傘を貸しに来ます。」金融機関にあるのはすべて「日
傘」ですから当然です。金融機関にある傘はすべて「日傘」で
あって「雨傘」ではないことを理解してください。金融機関対
応はこの趨勢を理解して行わないと本事案の様な間違えを起こ
します。

※「雨傘」は、国策としての制度融資や制度保証として時々貸
し出される例外です。

◎当事務所にて財務診断を行いましたが、足元の業績の悪化が
顕著で、新規借り入れの返済原資となるキャッシュフローの見
込みが立ちません。新規の借入れは無理です。

経営改善計画書を作成して既存借入れのリスケジュール(返済
金額0円)を即座に実行しました。資金繰りシミュレーション
を継続的に行いながら、資金ショートの回避と収支バランスの
改善に、財務部長として継続してご支援させていただいていま
す。

当事務所のサービス「資金繰り円滑化サービス(財務部長の代
行業務)」を導入いただいています。社長様の経営改善を資金
繰り・財務面で継続的にサポートできています。収支改善の目
途が付けばいち早く、資金調達にもチャレンジします。(この
時は、リスケジュールを同時に解消します。)

※本事案においても、6か月前に提案された融資を受けておれ
ば、経営改善のための手持ち資金に余裕が持てたはずです。本
事例については、是非記憶に留めてください。

…次回号に続く

中小企業においては、筆頭株主と代表者が同一であるケースが
大多数です。そのため、役員報酬について株主から異議を申し
立てられることは殆どありません。しかし、役員報酬の決定プ
ロセスは、中小企業においても公正さと透明性を持たせる必要
があります。なぜなら、金融機関や従業員等、重要なステーク
ホルダーの評価に晒されているからです。

■ 役員報酬決定の重要性

役員報酬は、以下の点において、中小企業においても非常に重
要な要素です。

1.モチベーションの維持:
役員報酬は、経営陣のモチベーションに直結します。適切な報
酬を提供することで、経営陣は会社の成功に向けて全力を尽く
すことが出来ます。

2.外部評価の向上:
役員報酬は外部からの評価にも影響します。金融機関や投資家
は、役員報酬の適正さを評価の指標として利用します。公正で
透明性のある報酬体系は信頼を築く要素となります。

■ 役員報酬の決定プロセス

公正で透明性のある役員報酬決定のプロセスには、以下の要素
が関与します。

1.業績評価:
役員の業績と貢献度は、役員報酬の決定において基本的な要素
です。会社の業績向上や個々の貢献度が高い場合、それに見合
った報酬が提供されます。

2.競争状況:
中小企業も競争が激しい環境にあります。魅力的な役員報酬を
提供しないと、トップの人材を引き付けることが難しくなりま
す。競合他社との比較も考慮されます。

3.業界標準:
同業他社や同規模の企業と比較して、業界の平均に合わせるこ
とが求められます。業界内で役員報酬が著しく低いと、優秀な
役員を維持するのが難しくなります。

中小企業においても、役員報酬の適正な決定は、経営者や役員
のモチベーションを維持し、会社の成長を促進します。筆頭株
主が経営者と同じである場合でも、透明性、公正性、リスク管
理を考慮しながら、バランスの取れた役員報酬体系を構築する
ことが大切です。

貴社の役員報酬はバランスの取れたものになっていますでしょ
うか。弊所では、税務目線に偏らないアドバイスに努めていま
す。ご相談ください。

…前回号のつづきです。

税務に付加して、金融機関対応と財務に対する強みを有するこ
とを宣言する当事務所には、様々な相談が寄せられます。前回
に続いて、一部をご紹介させていただきます。

◆お悩み7:『創業融資依頼時点ですでに支払いを済ませた店
舗保証金分の領収書を提示したが、これでは自己資金の証明に
ならないと、公庫担当者に言われた。』(相談者様)

◇日本政策金融公庫の創業融資の要件の中に、自己資金を有す
ること「…創業時において創業資金総額の10分の1以上の自
己資金を確認できる方。」とする項目があります。

○ポイントは自己資金の出所の証明です。
・この資金は、確実に当該事業の資金として利用されること
・短期的な返済等を必要とする資金でないこと
・創業者が自分自身で蓄積した資金が好ましい
とされています。
※長期間に渡る計画的な貯蓄等は、創業者の堅実性の証明にも
なります。

○短期的に資金を借入れなどで調達し、それを自己資金と称し、
日本政策金融公庫から融資を受けた資金で返済する、このよう
なことにならないために確認されます。
・領収書は支払いの証明書であり、その資金の出所の証明には
なりません。
・求められているのは、出所の証明です。支払いの証明ではあ
りません。

◎当事務所にて、当該資金の出所のエビデンス、本案件の自己
資金は、親御さんからの支援が大半を占めており、その親御さ
んの銀行口座の残高の確認、その残高蓄積の経緯、その資金が
相談者様に移行したエビデンスを準備して公庫の融資依頼資料
として提示し、その詳細を説明することで、理解を得ました。
金融機関との折衝は、当事務所が行いました。必要な金額の創
業融資を調達できました。
※親御さんからの援助資金を自己資金とするとき、その資金の
エビデンスに当たる親御さんの預金通帳等の開示も求められま
す。

◆お悩み8:『信用保証協会の保証付き融資、新たな借入れを
依頼したら、「前回の借入れが資金使途違反に当たるので、新
たな保証は出来ないと保証協会に指摘された。前回融資分の完
済も依頼された。(銀行担当者)」』(相談者)

該当する融資の詳細を確認したところ、
・当該融資は設備投資資金
・借入金額と投資資金の金額は同額、問題なし
・借入れ日の前に当該資金を支払い済み、これが資金使途違
反に当たります。
※大変厳しいように感じますが、信用保証協会の保証付き設備
投資資金は、当該資金の入金後に、当該設備投資費用を支払う
必要があります。この順番が逆転した領収書で指摘を受けてい
ます。

○信用保証協会の保証付き設備投資資金は、その保証金額と投
資金額の整合性だけでなく、その支払い時期についても、厳格
なルールがあります。

○(参考)日本政策金融公庫の設備投資資金は、
・その金額が1,000万円以下の時は、決算書提出時に結果
をトレースされます。
・その金額が1,000万円超の時は、投資実行後にその結果
をトレースされます。
・支払日については、その期間の幅を認めてくれます。
※設備投資資金として調達した資金を、他の用途に利用するこ
とは出来ません。少なくとも、次回以降の融資が受けられませ
ん。本来は完済を求められます。

◎当事務所にて、支払い時期ずれについてその悪意がない旨を、
銀行を通じて信用保証協会にお伝えすると同時に、当該銀行の
協力を得られたので一旦完済した後に、再度必要資金の調達を
行うことができました。信用保証協会の寛容な判断、銀行の協
力、何よりも会社様の業績が極めて良好であったことが、解決
できた理由です。その後、資金繰りシミュレーションの継続と、
タイムリーな資金調達を行う当事務所のサービス「資金繰り円
滑化サービス(財務部長の代行業務)」を導入いただいていま
す。社長様の営業戦略を資金繰り・財務面で継続的にサポート
しながら、この様な金融事故を未然に防ぐこともできています。

…次回号に続く

資金調達のご相談の中には、「もう少し早くご相談して頂けれ
ば…」というものが多くあります。適切な対処をしていれば、
そもそも問題すら起きなかったかもしれない事案です。今回は、
財務無策が招いた資金繰り悪化の実例をご紹介します。

■ 財務無策とは

財務活動には「キャッシュフロー管理(資金繰り管理)」
「ファイナンス(資金調達)」「資産運用」の3つの要素が含
まれます。中小企業にとって特に重要なのは「キャッシュフロ
ー管理」と「ファイナンス活動」です。しかし、中小企業の多
くはこれらの分野において必要な知識やスキルが不足しており、
財務活動に無策の状態と言えます。

■ 財務無策が招いた資金繰り悪化の事例

事例1:余裕資金を持たずに経営を行っているケース

商売がそれなりに順調で、毎月の資金繰りも何とか回っている
ため、資金の調達を怠っている企業様がいらっしゃいます。
「不測の事態により売上が減少し、慌てて銀行に融資を依頼し
たが断られてしまった…」と言うご相談です。お聞きすると、
過去には銀行の方から借りて欲しいとの依頼があったとのこと。
「銀行を儲けさせるだけなので断っていた。」とのことですが、
中小企業の信用力は決して高くありません。不測の事態を想定
し、資金に余裕を持たせておくことは、財務戦略の基本です。

事例2:キャッシュフローの管理ができていないケース

「売上が急激に伸びたため、社員をどんどん増やしていたら、
突然資金繰りが厳しくなってしまった。慌てて資金調達に動い
たが銀行から良い返事が得られない・・・」と言うご相談です。
突然資金繰りが厳しくなるような、資金管理がまともにできて
いない企業への融資は不安ですので、銀行の対応は当然ネガテ
ィブになります。売上が伸びて忙しくなる事は本来良いことで
すので、計画的に資金調達に動いていれば、スムーズに調達出
来ていたはずです。わずかな事で資金不足に陥りがちな中小企
業にとって、キャッシュフローをしっかり管理することは、必
須の財務活動です。

事例3:実力以上の返済を行っているケース

本業の稼ぎ以上の返済を行っている企業様も多く見られます。
手元資金が減少していきますので、当然資金繰りが厳しくなり
ます。問題は「自社の返済能力の限界を知らないこと。」「借
入を早く返したいという意識が強すぎること。」「返済のピッ
チをなだらかにする方法を知らないこと。」などが挙げられま
す。手元資金が不足してからアクションを起こすのではなく、
自社の返済能力を知り、事前に借入金をコントロールしておけ
ば、何ら問題は起きなかった事案と言えます。

中小企業は資金力が限られており、わずかなことで資金繰りが
悪化するリスクを抱えています。しかし、財務活動を適切に行
うことで、多くのリスクを回避できます。財務無策からの脱却
を目指しましょう。お手伝いしますので、お気軽にご相談くだ
さい。

…前回号のつづきです。

税務に付加して、金融機関対応と財務に対する強みを有するこ
とを宣言する当事務所には、様々な相談が寄せられます。以下、
一部をご紹介させていただきます。

◆お悩み5:『新しい設備投資を検討しているが、その投資規
模を決めるために、当社が借入可能な金額を知りたい。いくら
まで借りられるか教えて欲しい。』(相談者様)

◇金融機関から新しい借入れを行う時には、まず現状の確認が
必要です。

1.直近の決算書から簡易キャッシュフロー(税引き後利益+
減価償却費)を確認します。この簡易キャッシュフローの金額
が、現時点の借入総額の10分の1以上であることが最低条件
です。

2.債務超過でないことが必要です。
※1又は2が突出して優良な時、または、提供できる担保があ
る場合など、上記の限りではありません。上記はあくまでも簡
易的な診断です。実際には、突っ込んだ財務分析を行います。
1と2を満たす時、現時点においては健全である…と判断され
て、新規の借入れを受けられる可能性が高くなります。

○次に、検討中の設備投資を行った時の収益を見積もります。

3.新しい借入れの返済を、新しい設備投資を行った収益で賄
えること。

4.現存の収益と新しい収益で、既存の借入れと新しい借入れ
の返済を賄えること。
3または4の時、理論的には借入れが可能です。
※新しい設備投資から生まれる収益を、過度に大きく見積もる
と、その蓋然性の説明が難しくなります。注意が必要です。

○上記の検証を行いながら、最適な投資額を決めます。金融機
関には、最適な計画書を作成して、新規の融資を依頼します。

◎当事務所にて、決算分析・設備投資計画書(返済計画書)を
作成し、金融機関に対して借入れの申し込みを行いました。金
融機関との折衝は、当事務所が行いました。必要で最適な新規
の投資資金を調達できました。

◆お悩み6:『ネット通販会社から300万円の広告の提案を
もらった。この投資を行うべきか悩んでいる。相談に乗って欲
しい。』(相談者様)

◇「今回の広告を行うことで、短期的に大きな売上をあげたい、
また、その後の売上の底上げも目論みたい。」相談者様のご意
向です。この会社様は、前金で仕入れてネットで販売する業態
です。売上を伸ばすためには、先んじて仕入れ資金が必要にな
ります。

○現時点から今回の広告を実施した後、さらに、その半年後ま
での資金繰り計画を立案します。
・売上予測が最大の時、仕入れ額も最大とします。
・売上予測が最小の時、仕入れ額を最大とします。
・売上予測が最小の時、仕入れ額を最小とします。
…等々
社長様と共に、様々な資金繰りシミュレーションを行います。
資金繰りが逼迫することがはっきりわかりました。当所で資金
調達の可能性についても検証します。

○結果、最初に仕入れ資金の調達を行い、成功後に300万円
の広告を実施、仕入れ額の増額を行うことになりました。

◎当事務所にて、決算分析・資金繰り計画書を作成し、金融機
関に対して借入れの申し込みを行いました。金融機関との折衝
は、当事務所が行いました。必要な新規の仕入れ資金(運転資
金)を調達できました。また、資金繰りシミュレーションの継
続と、タイムリーな資金調達を行う当事務所のサービス「資金
繰り円滑化サービス(=財務部長の代行業務)」を導入いただ
いています。社長様の営業戦略を資金繰り・財務面で継続的に
サポートできています。

…次回号に続く

中小企業経営者にとって、経営の鍵を握るひとつのアプローチ
が「ファイナンス思考」です。ファイナンス思考は、経済評論
家である朝倉祐介氏によって提唱され、中小企業経営者に向け
て幅広い成果をもたらしています。このコラムでは、ファイナ
ンス思考の基本的な要点とその中小企業における適用方法につ
いて解説します。

1.ファイナンス思考とは何か

ファイナンス思考は、従来の経営思考を進化させたものです。
経営者が財務戦略を組む際、単に資金調達や経費削減に留まら
ず、戦略的な視点で経営を捉えることを目指します。朝倉祐介
氏は、経営者がファイナンス思考を取り入れることで、収益の
最大化や持続可能な成長を実現できると考えています。

2.ファイナンス思考の要点

・キャッシュフローの重要性:ファイナンス思考では、キャッ
シュフローの管理が中心となります。キャッシュフローは企
業の生命線であり、資金調達や運転資金の確保に不可欠です。
経営者は、収入、支出、投資、借入、返済を的確に見極める
必要があります。

・リスク管理:ファイナンス思考はリスク管理を重要視します。
リスクは避けるべきではなく、適切に評価し、最小限に抑え
るべきです。ファイナンス思考の下で、リスク評価とヘッジ
戦略の構築が行われ、企業の安定性が向上します。

・効率的な資金調達:適切な資金調達戦略が中小企業の成長に
不可欠です。ファイナンス思考では、銀行融資、投資家調達、
資本市場への参入など、適切な資金調達手段の選択が焦点と
なります。また、返済計画の策定も重要です。

3.中小企業への適用

中小企業においても、ファイナンス思考は大きな成果をもたら
します。具体的なアプローチとして以下の点に注意が必要です。

・予算と予測:収益、費用、キャッシュフローに対する予算と
予測を策定しましょう。これにより、将来の課題を把握し、
適切な戦略を立てる助けになります。

・財務の透明性:財務情報を正確かつ透明に管理しましょう。
決算書や貸借対照表を定期的に確認し、経営の健全性を把握
しましょう。

・効果的なキャッシュフロー管理:キャッシュフローの進行を
リアルタイムで追跡し、資金不足や過剰資金を回避しましょ
う。

4.結論

ファイナンス思考は、経営者が持つべき重要なスキルの一つで
あり、中小企業にとっても適用可能です。このアプローチは、
企業の成長戦略の中で資金調達、リスク管理、収益最大化をバ
ランスよく組み合わせ、持続可能な成功をサポートします。

経済環境は変動的で、競争が激化する中、ファイナンス思考を
駆使することで、中小企業は市場での地位を強化し、持続可能
な成長を達成できます。経営者はファイナンス思考を学び、日
々の意思決定に活かすことで、より強固な経営基盤を築くこと
ができるでしょう。

ファイナンス思考は、単なる財務戦略に留まらず、経営の新し
い次元を切り拓くものです。経営者がこれを理解し、実践する
ことで、中小企業も大きな成功を収め、持続的な成長を果たす
でしょう。ファイナンス思考を武器に、ビジネスの未来を切り
拓いていきましょう。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

…前回号のつづきです。

税務に付加して、金融機関対応と財務に対する強みを有するこ
とを宣言する当事務所には、様々な相談が寄せられます。以下、
一部をご紹介させていただきます。

◆お悩み3:
『新店出店資金として2,000万円の調達を希望する旨を、
保証協会付融資で取引のある某銀行に依頼したが、新店出店の
ための希望調達額2,000万円に対して、保証協会から
1,000万円の保証しか取れない(※事前相談時の非公式な
コメントと推測できます。)、とする某銀行担当者のコメント
が返ってきた。』(相談者様)

◇決算書と足元の業績を確認させていただいたところ、確かに
資金調達はできそう、一方、2,000万円の希望金額は金額
が大きく容易ではないことが想定できました。また、某銀行は
規模の大きい銀行であり、この会社様がプロパー融資を受ける
ことが難しいことも推測できます。

○現状は…
・希望調達額2,000万円、調達候補先は保証協会保証付き
某銀行からの融資…1,000万円

○当事務所で、融資の戦略を練り直します。
・保証協会保証付き某信用金庫からの融資…1,000万円
・同じ某信用金庫プロパー融資…300万円~700万円
・日本政策金融公庫からの融資…700万円~300万円
ポイントは、保証協会付融資に付加してプロパー融資を引き受
けてくれそうな信用金庫(信用組合)を探して、さらに、日本
政策金融公庫にもお願いして、上記の3つの引き出しから合計
2,000万円を調達する協調融資を目論むことです。

◎当事務所にて、決算分析・出店計画書(返済計画書)を作成
し、某信用金庫と日本政策金融公庫に対して、合計2,000
万円の調達に動きました。当事務所が主体的に対応しています。
結果、合計2,000万円の出店資金の調達に成功しました。
希望通りの新店出店が実現しています。新規の借入れができそ
うな状況にあっても、その借入希望額が大き過ぎる?と想定さ
れるとき、この協調融資は大変有効です。当事務所では、多数
の実績をあげています。

※『協調融資』とは、複数の金融機関から、同時に同じ目的の
資金を合算して調達する資金調達手法です。一般的に言われる
『シンジケートローン』とは異なります。

◆お悩み4:
『二期連続赤字ですが、今期期中の足元の業績は急回復してい
ます。返済のみが長期間続いていて、資金繰りが厳しくなって
きました。今期決算は相応の黒字を計上できそうですが、決算
を待たずにこの段階で新規の借り入れは出来ないでしょうか。
金融機関の担当者に相談したら、決算が締まるまで待ってくだ
さい、と言われました。』(ご相談者様)

◇金融機関の貸出しの判断は、原則論として決算書を基準に行
います。期中の試算表で収益の改善を示しても、決算まで待っ
てください、となるケースは少なくありません。ただ、期中で
あっても、その業績の改善が顕著で、その改善状況をはっきり
と説明できれば、日本政策金融公庫や、信用保証協会の保証付
き融資を受けられる可能性があります。

○ご相談者様のケースでは、
・決算後9カ月が経過しており
・その収益改善の方法が明確であったこと
・その簡易キャッシュフローの額が、総借入額と比して大きか
ったこと(債務償還年数は約6年)
・明らかに債務超過でないこと
上記の事実を踏まえて、精度の高い試算表を整備して解説する
ことで、ご相談者様が希望される金額の融資を受けることがで
きました。

◎当事務所にて、決算分析・資金繰り表(実績と見込み)を作
成し、某信用金庫と日本政策金融公庫に対して、運転資金の調
達に動きました。金融機関対応は、当事務所が主体的に行って
います。財務目線で信憑性のある試算表作りと、資金繰りの実
態と予測をできるだけ正確に提供することが、融資成功のポイ
ントです。

※試算表の精度は総じて低い、金融機関はこのように考えてい
ます。作る側も「とりあえず…」と考え、費用や売上の計上漏
れを容認しているケースも少なくありません。金融機関に対し
て、経営の進捗状況を報告する資料であるならば、上記の緩さ
は看過できません。当事務所では、試算表を財務目線でより正
確に作成し、その分析資料を金融機関目線で作成・解説するこ
とで、クライアントの経営品質の高さを金融機関にご理解いた
だきます。上記のことが、二期連続赤字企業様が、期中で新規
融資を受けられた要因の一つです。

…次回号に続く

金融機関は「決算書」を拠り所として融資審査を行います。中
小企業の場合、税理士事務所が税務目線で作ることが多い決算
書ですが、金融機関は税務署ではありませんので、「税金が正
しく計算されているか。」ではなく、「貸したお金が本当に返
ってくるか。」という目線で見ています。よって、税務上は正
しい決算書であっても、提出された決算書をそのまま分析する
のではなく、財務の目線で修正しています。

下記にセルフチェックの手順をご紹介します。すべての金融機
関が必ず下記の手順で診断している訳ではありませんが、基本
的な考え方としてご了承願います。

1.損益計算書の修正および診断

◆減価償却不足を修正します。
減価償却の未計上は税務上問題ありませんが、利益が正しく計
上されないため、財務上は必ず計上します。よって減価償却不
足がある場合、「税引き後利益-償却不足額」で利益修正を行
います。

◆役員報酬を修正します。
役員報酬を減らして利益を大きく計上するなど、役員報酬は利
益の調整弁になりやすい項目です。役員報酬額を実際に必要な
生活費よりも過小に計上している場合は、「実際に必要な生活
費(※360万円程度)-役員報酬額」を税引き後利益から差
し引きます。反対に実際に必要な生活費以上の役員報酬を得て
いる場合は、「役員報酬額-生活に必要な生活費(※800万
円程度)」を税引き後利益に加算します。

​◆修正後の損益計算書を基に返済能力を診断します。
企業の返済能力は、「修正後の税引き後利益+減価償却費」で
求められます。この値がプラスであれば第1段階の診断はクリ
アです。マイナスであればプロパー融資を受けるのは難しくな
ります。

2.貸借対照表の修正および診断

◆不良資産を修正します。
資産の中から、実際は価値の無い資産を減算していきます。例
えば、回収不能な売掛金や貸付金、不良在庫、使途不明な仮払
金などは減算の対象です。販売先が破産を申し立てた場合、税
務上は破産手続きが完了するまで資産に計上しておかなくては
なりませんが、実態は回収見込みが薄いため、財務上は減算し
ます。

◆返済不要な負債を修正します。
社長個人からの借入金など、差し迫って返済が不要なものは負
債から減らすことが出来ます。

◆倒産しにくい会社かどうかを「自己資本」で判断します。
この場合も、修正後の貸借対照表を基に、「修正後の資産-修
正後の負債」で自己資本を算出します。損益計算書の診断結果
が良好で、この値もプラスであれば融資を受けられる可能性は
さらに高くなります。

以上、診断の結果はいかがでしたでしょうか。ひとつでもクリ
アできていない項目があれば財務面に問題を抱えていることに
なりますので、お早めにご相談ください。