経済産業省(国)は、日本の中小企業に大きな変化を促したい
ようです。大きな変化とは、「新分野展開や業態転換、事業・
業種転換等の取組、事業再編」などを挙げています。これらを
目指す企業体に対して、総額1兆1,485億円、通常枠100万円~
6,000万円、補助率2/3の補助金を付けてきました。また、認
定支援機関(や金融機関)と共同で事業計画を策定し、両者が
一体となって取り組むことを条件としています。

■受注型(下請け含む)経営からプロダクト型経営を目指す企
業様への「新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、
事業再編」事例!

◆現状(ヒヤリング)

(某社長様)「大手メーカーに対する工場管理システムの受託
開発で業績を伸ばしてきた。引き続き中堅メーカーに対する受
託開発業務の強化を図っている。受託先が増えれば事業は成長
する。」

(当事務所)「この数年、年商5億円、営業利益5千万円、この
あたりで推移しておられますね。今後の利益・売上の見込みは
どうですか?」

(某社長様)「このモデルで長期間横展開を進めてきたが、成
長の限界を感じる。時に、大きな取引先が切れて、一方、新し
い取引先を開拓することを繰り返している。利益についても厳
しい先が増えてきた。正直限界も感じる。」

◆提示した仮説

(当事務所)「大手メーカーからの受託で開発してきた工場管
理システムを自社プロダクトに仕上げて、中小~中堅メーカー
に販売するモデルへの転換を提案します。その時、サブスクリ
プションモデル、できればソリューション提供モデルを想定し
ながら事業の座組を作っていきましょう。数年~5年後、当該
売上を数億円程度、営業利益率は30%以上を目論みましょう。
足元は減収しているので、事業再構築補助金も利用できそうで
す。(推測)可能なら最大限利用して取り組みましょう。」

受注型(下請け含む)経営からプロダクト型経営を目指す企業
様への「新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事
業再編」=中小企業等事業再構築促進事業の提案は、標準的な
導入事例です。
中小製造業を中心に、受託型企業≒下請け企業は多数現存しま
す。この機会に、脱下請け、自社プロダクト(製品)開発をテ
ーマに掲げ、事業の再構築を目論みませんか。
脱下請けを目標に掲げる事業再構築は、中小企業等事業再構築
促進事業の主旨と合致します。当該補助金を活用した新事業に
最適です。

金融機関には原則雨傘はありません。業績が厳しい企業への融
資は、回収ができない可能性が高いためです。裏を返すと、業
績が厳しい企業は、返済ができない可能性が高いことを意味し
ています。

しかし、コロナ禍に対処するため、現在は国策として雨傘であ
るコロナ融資が大々的に行われています。「コロナ融資で今は
助かったけれど、3年後から本当に返済できるか不安だ。」と
感じていらっしゃる社長様も多いのではないでしょうか。

いざという時のためにコロナ融資を受けたが、その殆どが預金
に残っているという企業様は問題ありませんが、足元の業績が
厳しく、融資金を赤字補填に使ってしまっている場合は、大変
厳しい未来が待っています。

コロナ融資の返済については、何らかの救済策が出るのではな
いかと噂されていますが、自力で返済する前提で目標を立てて
おいた方が健全です。ただ、今ある借入を返済するには、どれ
ぐらいの利益が必要か検討もつかないという社長様のために、
返済に必要な利益をざっくりと把握する方法をお伝えします。

まずは実質的な借入額を算出します。実質的な借入額は、借入
額から預金と平均月商を差し引いて求めます。5,000万円の借
入があり、預金が1,000万円、月商が1,000万円であれば、実
質的な借入額は、5,000万円-1,000万円-1,000万円=3,000
万円となります。

一般的に、借入は最大10年程度で返済できればよいとされて
いますので、実質的な借入額が3,000万円の場合、1年あたり
300万円の利益を出せれば、借入の返済は十分に可能と判断で
きます。ただ、実際は年間の約定返済額が500万円であったり
するため、借り換えなどを行い、返済額を利益の範囲内に収め
なくてはなりません。

足元は厳しい状況が続いていますが、返済が始まる頃には、実
質的な借入額の10分の1の利益を出すという目線で、業績回復
の事業計画を立ててください。

現在の事業の延長線上では、とてもそれだけの利益を出せそう
にない場合は、中小企業等事業再構築促進事業制度等を活用し、
新たなビジネスモデルの構築に果敢にチャレンジするという選
択肢もあります。

「新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編」
などを目指す企業体に対して、総額1兆1,485億円、通常枠100
万円~6,000万円、補助率2/3の補助金が予算化されました。
以下、新規事業を立ち上げる時の考え方について記述します。

同じ努力を続けても、その成果の大小は、その選択する事業、
ビジネスモデルや事業立地によって大きく変わります。努力が
よりたくさんの成果を生み出せるような事業を選択してくださ
い。(中小零細企業にとっての)新規事業の選定について検証
してみます。

◆1.社長(会社)が得意で好きな事業を狙う!

社長が不得手な事業や好きでない事業に手を出すべきではあり
ません。IT音痴な社長が、高度なITリテラシーを求められ
る事業を行うべきではありません。また、ラーメンが嫌いな社
長が、ラーメン屋さんを開業してもうまくいきません。

◎得意なこと、好きなことを事業にする、これは最初に確認す
べきことでしょう。

◆2.最適な(できるだけ小さい)マーケットサイズ(MS)
の市場を狙う!

BIGマーケットへの参入は、中小零細企業が行うことではあ
りません。今想定しているマーケットが大き過ぎるなら、対象
とするマーケットを敢えて絞り込んでください。BIGマーケ
ットは、多くのBIGカンパニーが、その資本力とブランド力
を駆使して戦う厳しい戦場(レッドオーシャン)です。中小零
細企業が入り込める市場ではありません。

◎狙うマーケットサイズの大きさが適切か、これも確認してく
ださい。

◆3.多大な資金を必要としない事業を狙う!

自身で調達できる資金内(自己資金+可能な借入れ+今回は補
助金)で、一旦立ちあげられる事業を選択してください。力不
相応な資金計画を立てて、資金さえあれば…このないものネダ
リは止めましょう。ステージを一つずつ超えて行きましょう。
また、事業拡大時に多大な事業資金を必要とする事業、金融事
業・投資事業や粗利益率の低い事業は、中小零細企業が取組む
事業ではありません。

◎必要な資金総額が力相応か、これも確認してください。

◆4.付加価値の高い(高価格帯)事業を狙う!

大雑把に分類すると、低価格帯ゾーンのBIGマーケット(ロ
アマス)はBIGカンパニー向け、一方、高価格帯のニッチマ
ーケット(アッパーニッチ)は中小零細企業向けです。ミドル
ゾーンやロアゾーンではなく、アッパーゾーンの価格帯を狙っ
てください。1斤200円の食パンマーケットは大手メーカーで寡
占状態ですが、1斤800円の食パンマーケットには、空きがあり
ました。(現時点では、すでに飽和しかけていますが。)

◎アッパーニッチ(高価格帯の隙間)を狙ってください。

◆5.事業立地を間違えない!

最後に、高収益企業研究の第一人者、三品和広氏〔神戸大学大
学院・経営学研究科教授〕の言葉を引用して紹介させていただ
きます。
『…(高収益企業の研究を通じて)成功例に共通している点は
一目瞭然だった。「事業立地」がよいということだ。仕事の仕
方の工夫や製品開発ではなく、そもそも「何屋さんをやるか」
の選び方が優れている。事業立地の考え方では、ある市場の中
でどこにポジションするかよりもむしろ、そもそもどの市場を
選ぶかが重要になってくる。…』

◎何より大切なのは、事業立地の選定です。

一生懸命頑張ること、これは中小零細企業経営者にとって重要
なことです。ただ、これは成功のための必要条件であって、十
分条件ではありません。十分条件は、頑張ることで、社長自身
も会社も、従業員も報われる事業を選定・設計することです。
社長には、この十分条件を検証し続ける責務があります。これ
こそが、経営者に求められる経営力です。この経営力を磨くた
めに費やす勉強時間とお金をしっかり確保してください。努力
がよりたくさんの成果を生み出せるような事業を選択してくだ
さい。

入社した時、または、先代の跡を継いだ時、その会社にはすで
にビジネスモデルが存在し、ある程度円滑に機能しています。
新入社員は、後継者は、このビジネスモデルに沿って事業に関
与します。その地位が上がっても、その関与する範囲を拡大さ
せるだけで、過去のビジネスモデルを踏襲するケースがほとん
どです。結果として、ほとんどの人が、新規事業を真に創造し
たことがありません。過去のビジネスを踏襲しながら改善する
ことと、ゼロから創造することには雲泥の差があります。新規
事業をはじめる時には、肝に銘じてください。

経済産業省は、2021年1月12日、緊急事態宣言の再発令で営業
時間を短縮した飲食店の取引先に対して、給付金を支給すると
発表しました。中小企業の場合は最大40万円、個人事業主の
場合は最大20万円が支給される予定です。

■ 対象事業者
緊急事態宣言の再発令に伴う飲食店の時短営業により、売上が
減少した飲食店取引事業者

■ 要件
下記(1)または(2)に該当し、本年1月または2月の売上
高が対前年比▲50%以上減少していること

(1)緊急事態宣言発令地域の飲食店と直接・間接の取引があ
ること
※農業者・漁業者、飲食料品・割り箸・おしぼりなど飲食業に
提供される財・サービスの供給者を想定

(2)緊急事態宣言発令地域における不要不急の外出・移動の
自粛による直接的な影響を受けたこと
※旅館、土産物屋、観光施設、タクシー事業者等の人流減少の
影響を受けた者を想定

■ 支給額
法人は40万円以内、個人事業者等は20万円以内の額を支給
※算出方法:前年1月及び2月の事業収入-
(前年同月比▲50%以上の月の事業収入×2)

■ 申請方法(調整中)
前年の確定申告、対象月の売上台帳の写しとともに、緊急事態
宣言によりどのような影響を受けたかを選択肢から選んで自己
申告。なお、一次取引先の納品書、顧客の居住地を示す宿帳、
顧客名簿、入込観光客の統計等の保存を義務付け。

中小企業庁 該当URL
https://www.meti.go.jp/covid-19/kinkyu_shien/pdf/chusho.pdf?0118

給付金額が小さいため、あまり評判が良くないようですが、受
給できるものはしっかりと受給しておきましょう。

■経済産業省(国)は、日本の中小企業に大きな変化を促した
いようです。大きな変化とは、「新分野展開や業態転換、事業・
業種転換等の取組、事業再編」などを挙げています。これらを
目指す企業体に対して、総額1兆1,485億円、通常枠100万円~
6,000万円、補助率2/3の補助金を予算化しました。また、認定
支援機関(や金融機関)と共同で事業計画を策定し、両者が一
体となって取り組むことを条件としています。
この補助金だけではなく、日本政策金融公庫や保証協会を後ろ
盾にした有事の資金供給も併せて、大きな変化「新分野展開や
業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編」を遂げて欲し
いとの国の願いです。

■経済産業省に言われるまでもなく、中小企業の経営課題は
「新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編」
などであって、目先の売上アップなどの対症療法ではありませ
ん。コロナ禍をきっかけに、より大きな変化を目指すことを経
営課題に取り組む好機です。

■「新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再
編」とは何か?様々なテーマが候補に挙がりますが、それらを
以下に列記しました。容易ではありませんが、経営課題として
考えてみてください。

◆1:事業立地変更への挑戦

◆2:現業界の壁を破ることへの挑戦

◆3:脱・規模至上主義への挑戦
1.絞り込みへの挑戦
2.持たざる経営への挑戦

◆4:生きる世界の変更への挑戦
1.顧客属性変更への挑戦
2.商品・サービス高付加価値化への挑戦

◆5:新・ビジネスモデルへの挑戦
1.サブスク1.0⇒2.0への挑戦
2.D2C(C2M)への挑戦
3.ソリューション提供への挑戦
4.プロダクト化への挑戦
5.プラットフォーマーへの挑戦
6.デジタルシフトへの挑戦
7.ニューミドルマンへの挑戦
8.コンテンツビジネスへの挑戦
9.同業者支援・FCの本部化への挑戦
10.その他

◆6:イグジット&承継の実施

◆7:その他

過去数十年間以上、少なくない中小零細事業者は、目先の売上
アップなどの対症療法を唯一の経営活性化策と捉えて経営のか
じ取りを行ってきました。結果として、斜陽化したレッドオー
シャン市場で、オワコン化したビジネスモデルで、低い生産性・
収入で、長時間働かざるを得ない状況に陥っています。
コロナ禍からの脱却を大儀に供給される補助金や融資制度を、
真の事業再構築に活用することが求められます。

新型コロナウイルス感染症が再拡大しており、緊急事態宣言が
発出されたことに伴い、実質無利子となる融資限度額が、従来
の4,000万円から6,000万円に引き上げられる予定です。
(2021年1月20日現在)

改めて日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付
の内容を確認しておきましょう。

■ 利用要件

【業歴が1年1か月以上の場合】
最近1ヵ月の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)
の平均売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減
少している方

【業歴が3か月以上1年1か月未満の場合】
最近1ヵ月の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)
の平均売上高(業歴6ヵ月未満の場合は、開業から最近1ヵ月
までの平均売上高)が次のいずれかと比較して5%以上減少し
ている方
(1)過去3ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高
(2)令和元年12月の売上高
(3)令和元年10月から12月の平均売上高

■ 実質無利子となる要件
小規模事業法人は15%以上の売上減少、中小企業法人は20
%以上の売上減少がある場合は、利子補給を3年間受けること
ができるため、当初3年間は実質無利息となります。この無利
子となる融資上限額が、これまでの4,000万円から6,000万円
に引き上げられる見込みです。

実質無利子化概要
https://www.jfc.go.jp/n/finance/saftynet/pdf/covid_19_faq_jisshitsumurishika.pdf

■ 返済期間
設備資金であれば最長20年、運転資金であれば最長15年と
なっており、通常の借入よりも長期間の返済期間が設定されて
います。

新型コロナウイルスの影響拡大が続いています。追加の制度を
積極的に活用し、非常事態に備えましょう。

「もっとうまく経営したい」、経営者なら誰しもが持つ願望で
しょう。「もっとうまく仕事を進めたい」、ビジネスマンなら
誰しもが持つ願望でしょう。「もっとうまく…」これらは結果
です。
結果の変化を求めるためには、その原因を変えねばなりません
が、多くの人たちは、原因を変えることに消極的です。結果の
変化はその原因の変化の延長にあるはずですが。

◆1:人は、総じて限られた人達とのみ付き合っています。

「師」と「友」は、自身の力に応じて構成されます。自身の成
長に応じて、その構成が変わることもあります。異次元の「師」
と「友」を作ることはできません。「師」と「友」は、ある意
味自分自身を投影する鏡です。

・自分の成長が著しく、「師」と「友」の成長が緩やかであれ
ば、新しい「師」と「友」を求めることになります。
・自分の成長が「師」と「友」の成長に追いつかなければ、こ
の「師」と「友」とは疎遠になります。
・「師」と「友」と同じスピードで成長することもあります。
・「師」と「友」共々停滞しているケースもあります。
「師」と「友」が自分に与える影響は計り知れません。

さらなる成長を求めるならば、「付き合う人を変えろ。」ある
偉人の言葉です。「居心地の良さ」や「緩さ」のみに甘んじる
ことなく、より厳しい環境を求めることも、時には必要です。
自身に対して、敢えて厳しく、より成長スピードの速い「師」
と「友」を求めてみるのも一つの方法ではないでしょうか。
「厳しく、より成長スピードの速い」「師」と「友」との出会
いにより、その「結果」が変わることはよくあります。

◆2:人は、総じてルーチン(習慣)に生きています。

朝起きてから就寝するまで、月曜日から週末まで、月初から月
末まで、年初から年末まで…勤勉な人も怠惰な人も、総じてル
ーチンを繰り返しています。時間配分は総じて変わりません。

○ルーチンの一部を壊してみましょう。
ルーチンを全面否定するつもりはありませんが、過度なルーチ
ンは自らを束縛することになります。時にはルーチンを大きく
変えてみることで、変化のきっかけを探ってみてはいかがでし
ょうか?守るべきルーチンと、壊すべきルーチンに分けて、後
者を止めてください。新たな生き方・考え方が生まれるかもし
れません。

○時間の棚卸が必要です。
・1週間、狭義で40時間、広義で168時間の時間配分を練
り直してみましょう。
・1か月、狭義で176時間、広義で720時間の時間配分を
練り直してみましょう。
・1か年、狭義で2,000時間、広義で8,760時間の時
間配分を練り直してみましょう。

我々は、いったい何にどれくらい時間を費やしているのでしょ
うか?優先順位の低い不要な時間もたくさんあるはずです。こ
れらの時間を、違う何かに振り分ける…この時間配分の変更が
必要です。『時間配分を変える』という「原因」に対して、
『もっとうまくいく』という「結果」が伴います。

人は変化を嫌い、ルーチン(習慣)に安住しがちです。「明日
から変わろう。」と決意しても簡単には変われません。それは、
過去から積み上げてきた習慣や時間配分や、自分を取り巻く人
間関係に縛られてしまうからでしょう。変化という結果を求め
るためには、変化できない原因である習慣や時間配分や人間関
係を変えることが必要です。

◎付き合う人たちを変えてみましょう。
◎ルーチン(習慣)を変えてみましょう。
◎時間配分を変えてみましょう。

変化することで価値を向上させる、チェンジ&バリューアップ
を目指してみませんか。

民間金融機関である銀行に何を期待するかはそれぞれです。し
かし、銀行の役割を誤って認識してしまうと、一方的に期待が
膨らんでしまい、余分な軋轢が生まれます。銀行の位置づけを
明確にし、正しい銀行対応を心がけましょう。

◆銀行は救済機関ではありません。
「銀行は業績が悪化した時にお金を借りる相手だ。」と位置付
けている経営者様も少なくありません。しかし、銀行は行政機
関ではありませんので、資金繰りが悪化した企業を助ける義務
はありません。銀行は救済機関ではないと位置付けて、資金繰
りが悪化する前に相談するようにしましょう。

◆銀行は新規事業のパートナーとしては不十分です。
「銀行は新しい事業を始める時にお金を借りる相手だ。」と位
置付けている経営者様もいらっしゃいます。しかし、銀行はリ
スクを取れませんので、ゼロから立ち上げる新規事業には積極
的に資金を出しません。実績のない新規事業に取り組む場合は、
アイデア段階での事業パートナーにはなりえないと位置付け、
一定の実績を積んだ後に相談するようにしましょう。

◆銀行は事業拡大のパートナーです。
「銀行は実績ばかり求めるが、実績があったら最初から融資な
ど必要ないのに。」とおっしゃる経営者様もいらっしゃいます。
経営者様の多くは、「銀行は資金繰りが苦しい時や新規事業に
取り組む際に仕方なく利用するもので、事業が軌道に乗ったら
返済するもの。」という基本認識があるようです。一方、銀行
は「一定の実績がある事業に対して、それをさらにスケールさ
せるために資金を提供したい。」と考えています。悪いものを
良くする資金ではなく、良いものをさらに良くする資金です。

資金繰りの悪化や新規事業は、自己資金、行政機関である日本
政策金融公庫、もしくは保証付き融資などで対処し、実績の出
た事業をさらに拡大する際は、銀行を事業パートナーとして位
置づけましょう。

商品やサービスそのものを提供する企業が、それに付帯する周
辺サービスを併せて提供することで、提供先企業が抱える問題
点を解決する「ソリューション提供企業に転身する」…TVCM
等で大手企業がよく掲げるセリフです。

※ソリューションとは、一般的には「回答」や「解決すること」
などの意味を持つ英語です。IT用語としては、企業がビジネス
やサービスについて抱えている問題や不便を解消すること、お
よび、そのために提供される情報システムなどを指します。

◆メーカー(1)

(現)タイヤメーカー
(新)車両の足回りサービス企業
バス会社・運送会社向けに、車両の足回りのメンテナンス業務
をすべて担うサービスをサブスクで行います。商品の単独供給
からソリューション提供に移行する段階で、サブスクモデルに
転換します。

⇒バス会社・運送会社はタイヤそのものを求めているのではあ
りません。快適・安全に走行できる機能が必要なのです。

◆メーカー(2)

(現)製麺事業者
(新)うどん店店舗サポート事業
(コンサルティング事業⇒FC本部)
うどん店向けに、麺を販売していた事業者が、うどん店の運営
支援に乗り出します。さらに、うどん店の成功モデルを見出し
FC本部として事業を展開します。

⇒うどん店は、麺だけでなくおいしい食事、より良い顧客サー
ビス、総合的なお店の成功を求めているのです。

ソリューション提供企業への転身とは上記のような事例を指し
ます。

メーカーが商品だけを売る時代は終わっています。1980年代の
ジャパンアズNo.1の時代に、優れた製品を追求し続けた日本の
メーカーは、世界でもトップレベルの会社に成長しました。し
かしながら、その後のソリューション追及の時代の波に乗り遅
れたようです。

・顧客は、ドリルが欲しいのではなく、穴が欲しい。
・顧客は、土木用重機が欲しいのではなく、整地された土地が
欲しい。
・顧客は、エアコンが欲しいのではなく、快適な空気(環境)
が欲しい。

日本の大手メーカーもこれらのことに対応し始めました。「ソ
リューション提供企業に転身する」、この言葉の意味するとこ
ろです。

メーカー以外にもこの発想転換は重要です。
◆小売店

(現)アパレル店舗
(新)コーディネート機能の充実した試着専用店舗

コーディネート機能を充実させた試着用の実店舗を出店してネ
ット販売との融合で経営の安定化を図ります。

⇒顧客は、服が欲しいのではなく、かわいい、かっこいい身な
り・着こなしを維持したいのです。

■ソリューション提供企業への転身には発想の転換が必要です。

・タイヤではなく、安全・快適な足回りが欲しい。
・ドリルではなく、穴が欲しい。
・土木用重機ではなく、整地された土地が欲しい。
・エアコンではなく、快適な空気(環境)が欲しい。
・衣料(アウター)ではなく、身なりが欲しい。

◎貴社が今提供しているのは…
◎顧客が本当に求めているのは…

上記のギャップを埋めることがソリューションの追加です。
ご検討ください。

中小企業における財務の強化方法についてシリーズでお伝えし
ております。第1回目は、「試算表」を作成することの重要性
を、続く第2回目は、「資金繰り表」を作成することの重要性
をお伝えしました。3回目となる今回は、「中小企業が実践す
べき財務戦略」について解説致します。

試算表や資金繰り表は、それ自体は単なるデータであり、財務
に関する明確な指針を持って初めて価値あるものに変わります。
弊所では、「手元キャッシュをより多く持つ」ことを、中小企
業の財務指針として推奨しています。

手元キャッシュを厚くする主な理由は、「キャッシュが切れな
い限り倒産することはない。」「キャッシュに余裕があれば不
測の事態が起きても落ち着いて対処できる。」「キャッシュが
あれば千載一遇のビジネスチャンスを逃さない。」ためです。
経営の目的を達成するために、キャッシュは絶対に欠かせない
要素のひとつです。

しかし、「元々潤沢な自己資金を持っている。」もしくは、
「毎月キャッシュが余るほど大きな利益を上げている。」ので
なければ、そう簡単に手元キャッシュを厚くすることはできま
せん。手元キャッシュを増やす最も現実的な方法は、「借入を
最大限活用する。」ことです。

借入を嫌う経営者も多いですが、そこには、困った時だけ金融
機関に頼ればよいという錯覚があります。金融機関はこちらの
都合で融資をしてくれません。不測の事態が起きた時、千載一
遇のビジネスチャンスに出会った時、都合よく融資を受けられ
るとは限らないのです。

中小企業の金融機関との正しいお付き合いの仕方は、自社のタ
イミングで融資を受けにいくのではなく、金融機関側のタイミ
ングで融資を受けて手元にキャッシュを置き、必要な時にその
キャッシュを使うというのが正解です。今すぐ必要でない資金
を借りるデメリットは余分な金利を払うことですが、いざとい
う時に融資を受けられないリスクに比べれば小さな問題です。
借入が増えると財務内容が悪くなると考える方もいらっしゃい
ますが、借入と同時にキャッシュも増えますので、実質的な借
入額が増える訳ではありません。

「借入を活用して手元キャッシュをより多く持つ。」ことの重
要性にご賛同いただけたならば、次は、「どうすれば金融機関
から最大限の融資を受けられるか。」という課題にお気づきに
なるのではないでしょうか。金融機関から最大限の融資を受け
るためには、自社の財務状況を定期的に金融機関に開示し、融
資が可能であれば、いつでも提案を持ってきてもらえる関係を
構築する必要があります。

試算表や資金繰り表は金融機関とのコミュニケーションツール
です。試算表や資金繰り表の提出なしに金融機関と円滑な関係
を構築することは出来ませんので、まずは、毎月しっかりと作
成しましょう。さらに、「キャッシュをより多く持つ。」とい
う財務指針も金融機関と共有出来れば、財務はより強固なもの
になります。