…前回号のつづきです。

ライドシェアの解禁論が政治課題にあがってきました。勿論反
対論が根強く、タクシー業界は猛反対です。ライドシェアはタ
クシーの天敵であり、自らの地位を脅かす最大の敵だからでし
ょう。

一方、タクシー事業者の中にも、ライドシェアを仕掛けてくる
事業者は必ず存在すると推察します。なぜなら、ライドシェア
事業者として、日本で一番成功しやすい会社は国内のタクシー
事業者だからです。

タクシー会社がライドシェアに反対する代わりに積極的に取り
組む方が良い、という考え方は、カニバリゼーションの理論に
よっていくつかの点で裏付けられます。以下にその主要な理由
を挙げます。

■1.カニバリゼーションを活用する理由

◆1.先手必勝の戦略
ライドシェアが急成長しそうな状況になったら、タクシー業界
が反対姿勢を続けているだけで市場シェアを失い、最終的には
業界そのものが縮小する可能性があります。自社でライドシェ
アに取り組むことで、新しい市場環境に適応し、競争力を維持
できます。

◆2.市場ニーズへの対応
ライドシェアは特に若い世代を中心に受け入れられています。
タクシー会社がこの新しいニーズに適応することで、新しい顧
客層を獲得し、収益の多角化が可能です。

◆3.イノベーションと進化
ライドシェアはテクノロジーを駆使して効率的なサービスを提
供しています。タクシー会社がこの新しいビジネスモデルに取
り組むことで、自社もテクノロジーと効率性に注力する文化が
醸成されます。

◆4.リスクの分散
もしタクシーとライドシェアが共存できるビジネスモデルを見
つけられれば、景気の波や規制の変更など外部からのリスクに
対する柔軟性も高まります。

◆5.コスト効率
ライドシェアが提供するようなアプリベースのサービスは、運
行管理においても多くの効率化が可能です。この効率化は長期
的に見てコスト削減につながり、企業の利益率を改善する可能
性があります。

■2.懸念点とリスク

◆1.短期的な収益減
既存のタクシーサービスがライドシェアサービスによって、一
時的に収益減に陥る可能性があります。

◆2.オペレーショナルな複雑性
異なるビジネスモデルを運営する際の複雑性が増すことは確か
です。しかし、この問題は適切なマネジメントで克服可能です。

◆3.レギュレーションと法的問題
タクシーとライドシェアは異なる法的規制を受ける場合が多く、
その遵守には注意が必要です。

上記のように、ライドシェアの台頭はタクシー業界にとって避
けられない現実であり、積極的に新しいビジネスモデルに適応
していくことで、多くの利点と新たな機会を享受できる可能性
が高いはずです。カニバリゼーションは短期的なリスクを伴う
場合もありますが、その対処法をしっかりと考え、長期的なビ
ジョンを持つことが重要です。

◎ライドシェアが解禁の方向に動いた時、皆様がタクシー会社
の経営者であったなら、どのような経営判断をされますか?
◎また、皆様の業界で同じようなことが起こっていたら、その
ような判断を行っていますか?

この題材を参考にご確認ください。

数値計画書というと、売上と利益が分かる損益計画書が一般的
ですが、場合によっては、キャッシュの収支が分かるキャッシ
ュフロー計画書の方が有益な場合があります。

■ 損益計画書の問題点
顧問先さまから「利益目標と言われても実はピンと来ない…」
とお聞きすることがあります。

利益の難しいところは、赤字だからと言ってすぐに倒産はしま
せんが、反対に黒字なのに倒産する場合があります。また、赤
字でも金融機関の融資を受けられる場合もあるなど、その重要
性を真に理解するのは容易ではありません。

よって中小企業にとっての損益計画書とは、(銀行用などに)
形式的に作成するもの、もしくは、作成しても活用していない
というのが実態ではないでしょうか。

■ キャッシュフロー計画書とは
キャッシュフロー計画書とは、売上や利益の計画では無く、売
上金の回収、借入、設備投資等、あらゆる事業活動における資
金の計画です。利益では無く、入金額と出金額の差額の黒字化
や資金の増加額を目標とします。

■ キャッシュフロー計画書の特徴
キャッシュフロー計画書を作成することにより、売上や利益が
どれくらい必要かということはもちろん、取引条件の変更、借
入の要否、設備投資の可否など、やるべきことがより明確にな
ります。

<キャッシュフロー計画書の優位点>
・実際のキャッシュの出入りに基づいているため、事業計画書
よりも分かりやすい。
・利益では無く、毎月のキャッシュの残高を管理するため倒産
しにくくなる。
・事業計画書では把握できない、取引条件の変更、借入の返済、
設備投資等も網羅している。

当事務所が、利益よりもキャッシュフローを重視したコンサル
ティングを行っているのは他にも理由があります。例えば、将
来の結婚や葬式のために積立金を預かる互助会や、チケットを
事前に販売する業態は、売上よりも先にキャッシュが入ってく
るため資金が潤沢になります。資金調達力が弱い中小企業が大
きくビジネス展開をするためには、単なる利益だけではなく、
この様なキャッシュを増やす工夫も必要だと考えるためです。

是非、キャッシュフロー計画書の作成に取り組んでみてはいか
がでしょうか。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

■カニバリゼーション(以下カニバリと呼びます)は、新しい
製品やサービスが自社の既存の製品やサービスの売上を減少さ
せる現象を指します。これは、新製品が既存製品の市場シェア
や顧客ベースを「食いつぶす」形で起こることが多いです。
「共食い」との理解が分かり易いでしょう。

■カニバリは悪なのか?

一社独占でビジネスを行ってはいないので、他社が必ず競合す
る製品やサービスをぶつけてきます。他社に取られるなら自社
同士で競争させようとする、意図的なカニバリ戦略が通常行わ
れています。

以下、◆1.ビジネスモデルとしてのカニバリ戦略と◆2.製品
やサービスに関するカニバリ戦略を紹介します。

◆1.ビジネスモデルのカニバリは、新しいビジネスモデルが企
業の既存のビジネスモデルの売上や利益を圧迫する現象を指し
ます。以下は、このカニバリに関する著名な事例をいくつか挙
げます。

●Apple(iPodとiPhone)
AppleはiPodで音楽プレーヤー市場をリードしていましたが、
2007年にiPhoneを導入したことで、iPodの売上は自然と減少
しました。しかし、この動きはAppleにとって賢明であり、ス
マートフォン市場でのリーダーシップを獲得し、結果的には総
収益の向上に寄与しました。

●Netflix(DVD郵送サービスからストリーミングへ)
NetflixはもともとDVDの郵送レンタルサービスとしてスタート
しましたが、時代の流れとともにストリーミングサービスへシ
フトしました。この変更により、DVD郵送サービスの売上は減
少しましたが、ストリーミングサービスの成功により、企業全
体の成長と価値の向上が実現されました。

●Kodak(フィルムからデジタルカメラへ)
Kodakはかつてフィルムカメラの時代において巨大な市場シェ
アを持っていました。Kodak自体がデジタルカメラの技術を初
めて開発したものの、フィルムビジネスへの影響を恐れてデジ
タル技術の導入を躊躇した結果、他の競合企業に先を越される
形となりました。この事例は、カニバリを過度に恐れることの
リスクを示しています。

●Amazon(書籍販売からKindleへ)
Amazonは、もともとはオンラインの書籍販売からスタートし
ましたが、Kindleの電子書籍リーダーを導入することで、紙の
書籍の売上が影響を受ける可能性がありました。しかし、電子
書籍市場の成長とKindleの成功により、Amazon全体の収益は
向上しました。

これらの事例は、カニバリが必ずしもネガティブな結果をもた
らすわけではないこと、そして新しいビジネスモデルや技術の
導入は、長期的な成長や競争力の維持に不可欠であることを示
しています。

◆2.製品やサービスのカニバリは、新製品や新サービスの導入
により、企業の既存の製品やサービスの売上や利益が圧迫され
る現象を指します。以下に、このカニバリに関する事例をいく
つか挙げます。

● CanonとNikon(デジタル一眼レフとミラーレスカメラ)
デジタル一眼レフカメラの市場をリードしていたCanonやNikon
は、ミラーレスカメラの市場の拡大に対して遅れをとりました。
ミラーレスカメラの導入が一眼レフの売上を圧迫するとの懸念
があったためです。しかし、他のメーカーに市場を奪われるリ
スクも生じました。

●Microsoft(WindowsとSurface)
MicrosoftがSurfaceタブレットをリリースした際、PCメーカー
からの抗議がありました。Surfaceの成功が、Windowsを搭載
する他のPCメーカーの製品の売上を圧迫する可能性があったた
めです。

●Coca-Cola(Coke ZeroとDiet Coke)
Coca-ColaがCoke Zeroを市場に導入した際、Diet Cokeの消
費者がCoke Zeroに移行するのではないかとの懸念がありまし
た。しかし、Coke Zeroは異なるターゲット層に訴求する製品
として位置づけられ、両製品が共存する形となりました。

これらの事例を通じて、新製品やサービスの導入によるカニバ
リのリスクは避けられないものの、市場のニーズや競争状況を
正確に理解し、適切な戦略を採用することで、カニバリをポジ
ティブな成果に変えることが可能であることが示されています。

◎貴社はカニバリ発想を持てていますか?優良な企業ほど、カ
ニバリを恐れて時代から取り残されています。イノベーション
のジレンマです。

経営者は、人員を雇用する、広告を出す、値引き販売をする・
・・等の様々な投資判断を下さなくてはなりません。投資判断
を行う際に最も気になる点は、「採算が取れるかどうか。」で
しょう。もちろん、机上でいろいろと考えたところで、最終結
論は「やってみなければ分からない。」と言うのが本質かも知
れませんが、理屈で成り立たない事を現実に成り立たたせるの
は大変難しいというのも事実です。

投資を行う際に知っておくべき点は「採算ラインとなる売上高」
です。専門的には損益分岐点売上高と言います。損益分岐点売
上高を求める算式は、固定費÷限界利益率です。限界利益率を
求めるのは少し手間がかかりますので、変動費率の代わりに粗
利率を代用することで大まかな採算ラインが分かります。様々
な場面で多用出来る式ですので是非覚えてください。

■ 営業人員を雇用する際の採算ラインの算出

粗利益率が30%の商品を販売する営業マンを雇用する際、こ
の新人営業マンに期待すべき販売目標は下記で求められます。
※固定費(営業マンの平均月収30万円+福利厚生費5万円+営業経費10万円)÷粗利益率30%=損益分岐点売上高150万円
この新人営業マンが月平均150万円の販売を行って収支トン
トンです。(最低販売目標150万円+期待する利益額)の売
上を上げられるかどうかが営業マン採用時の目線になります。

■ 広告費の採算ラインの算出

粗利益率が30%の商品の広告出稿を検討する際、どれぐらい
販売出来れば採算が合うかを知りたいときにも使えます。
※固定費(広告費100万円)÷粗利率30%=損益分岐点売上高333万円
100万円の広告費を使い、333万円の売上高を上げられな
ければ経費倒れになります。

■ 売上高5%オフセールの採算ラインの算出

固定費が50万円、粗利率が30%の商品を5%オフとした場

※5%オフによる粗利率の低下30%→26.3%
※元々の損益分岐点売上高 固定費50万円÷粗利率30%=損益分岐点売上高166万円
※値引き後の損益分岐点売上高 固定費50万円÷26.3%=損益分岐点売上高190万円
売上高が24万円(190万円-166万円)増加した時点か
ら、ようやく値引き販売の効果が得られることが分かります。

営業マンが期待通りの成果を上げられるかどうか、広告で期待
通りの注文があるかどうか、値引き販売で期待通りの売上増加
につながるかどうか、結局のところはやってみなければ分かり
ません。しかし、投資判断を下す前に「損益分岐点売上高が実
現可能なラインかどうか。」を知っておけば、大きな失敗は避
けられます。

経営者の交代手段、事業承継として注目されているM&Aです
が、経営の武器としても極めて有効です。新規事業への参入時
や、成長の鈍化した市場における市場占有率の向上、利益率向
上に有効です。M&Aの難しさを強調されるケースが多いです
が、ストロングバイヤーとして連続的に事業を買収する企業が
増えているのは、案外M&Aのメリットが大きいからだと推察
します。

■1.新規事業への参入におけるM&Aの活用

新規事業への参入は、企業にとって成長と競争力維持のための
重要なステップです。M&Aを活用することで、以下の点で新
規事業への参入戦略を強化できます。

◆1.市場進出のスピードアップ
新しい市場に参入する際、市場理解や顧客ベースの構築には時
間がかかります。M&Aによって既存のプレーヤーを買収する
ことで、迅速に市場進出を実現し、競合他社よりも先に市場に
浸透することが可能です。

◆2.技術・知識の取得
新規事業に必要な技術やノウハウを持つ企業を買収することで、
開発期間や学習コストを削減できます。これによって、新製品
やサービスの提供スピードが向上し、市場での差別化を図るこ
とができます。

◆3.競争力の向上
既存の競合他社と差異化するため、技術や知識、顧客ベースを
獲得することが重要です。M&Aによってこれらを取得するこ
とで、新規事業における競争力を高めることができます。

◆4.リスク分散
新規事業の立ち上げはリスクを伴いますが、既存の事業とのポ
ートフォリオを多様化することでリスクを分散できます。これ
によって、企業全体の安定性を高めることができます。
■2.成熟市場における業界再編におけるM&Aの活用

成熟市場における業界再編は、企業の競争力強化や市場構造の
最適化を目指すための重要な手段です。M&Aを通じて業界再
編を推進する際には、以下の要因が影響を及ぼします。

◆1.経済的スケールメリットの追求
成熟市場においてはコスト削減や効率化が求められます。
M&Aによって企業の経済的スケールメリットを追求し、コス
トの削減や生産性の向上を図ることができます。

◆2.新たな成長機会の創出
成熟市場においては既存の市場での成長が鈍化します。M&A
を通じて新たな市場や技術への進出を図ることで、新たな成長
機会を創出することができます。

◆3.競争力の強化
成熟市場においても競争は激化しています。M&Aによって競
合他社との統合を行い、競争力を強化することで市場での地位
を固めることができます。

◆4.事業ポートフォリオの最適化
成熟市場においては、事業ポートフォリオの最適化が求められ
ます。M&Aを通じて不要な事業を売却し、戦略的な事業領域
に絞ることができます。

◆5.変化する市場ニーズへの適応
成熟市場では市場ニーズが変化しています。M&Aを通じて新
たな技術や顧客ベースを取得し、市場の変化に適応できる体制
を整えることができます。

総括すると、M&Aは新規事業への参入と成熟市場における業
界再編の両方で戦略的な手段として活用されています。それぞ
れの状況に合わせて戦略を練り、成功への道を模索することが
重要です。ただし、M&Aの成功には慎重な計画と実行、適切
なデューディリジェンスが不可欠です。

◎M&Aのスキルを習得して、経営の武器として有効活用され
ることを推奨いたします。

「勘定合って銭足らず」という言葉があります。これは、利益
は出ているのに、手元のお金が足りないという状態を指します。
その原因とは何でしょうか。まず、運転資金のメカニズムにつ
いて解説します。

◆運転資金のメカニズム
下記収益構造の企業を例にして考えます。

月商100万円-仕入高70万円-経費20万円=利益10万円

この企業の取引条件は以下のとおりです。
・売上金100万円の回収は翌月末
・経費20万円の支払いは翌月10日
・仕入70万円の支払いは翌月20日

売上金100万円の回収より先に経費20万円と仕入70万円の支払
がありますので、90万円の資金を一時的に先出しする必要があ
ります。これが運転資金です。

売上が倍になったケースを考えます。
月商200万円-仕入高140万円-経費40万円=利益20万円

売上が倍増すると、必要な支払いも180万円に増加します。十
分な自己資金があれば問題ないのですが、計画的な資金調整を
せずに営業を拡大すると、支払いができなくなるリスクが生じ
ます。これが「黒字倒産」と言われる現象です。

運転資金のメカニズムを理解せず、「資金繰りが苦しい。だか
らもっと営業を頑張ろう。」と考える経営者様は少なくありま
せん。利益が出ているのに手元資金が不足している場合はファ
イナンスで解決できます。是非、弊所までご相談ください。

…前回号のつづきです。

前回ご紹介したBCGマトリックスよりはその分析が複雑(分類
が4つから9つに増えます)になりますが、その分GEマッキン
ゼーマトリックスは精度が向上するといわれています。
以下、解説いたします。

GEマッキンゼーマトリックスは、企業の事業ポートフォリオを
評価し、経営資源を最適に配分するためのフレームワークです。
中小企業でもこのマトリックスは有効であり、事業の現状や将
来性を整理するための手助けとなります。以下は、このマトリ
ックスを中心にした中小企業の経営診断のための指針を示しま
す。

◆1. 事業ポートフォリオの確認
まずは、企業が保有するすべての事業や製品ラインを明確にリ
ストアップします。各事業の競争力や所属する市場の魅力を正
確に評価するための前準備となります。

◆2. 事業の競争力の評価
・シェア…各事業が保有する市場シェアは、その競争力の指標
として有効です。
・ブランド認知…中小企業特有のブランドやサービスの特徴、
顧客からの評価なども競争力の指標として取り入れます。
・収益性…各事業の収益率や利益率をもとに、競争力を数値化
します。

◆3. 市場の魅力の評価
・市場成長率…事業が所属する市場の成長率は、その市場の魅
力を示す基本的な指標となります。
・顧客のバーゲニングパワー…顧客が持つ交渉力や価格感受性
は、市場の魅力を評価する要因となります。
・競合の激しさ…競争相手の数や競合企業の戦略によって、市
場の魅力は変動します。

◆4. GEマッキンゼーマトリックス上へのマッピング
事業の競争力と市場の魅力を基に、各事業をマトリックス上に
配置します。マトリックスは以下の3×3のグリッドから成り立
っています。

・強い競争力×高い市場魅力…これらの事業は、成長の機会が
あり、積極的に投資を行うべきエリアです。
・中程度の競争力×中程度の市場魅力…これらの事業は、選択
的な投資や事業の再構築を検討するエリアとなります。
・低い競争力×低い市場魅力…これらの事業は、撤退や資源の
再配分を考えるべきエリアです。

◆5. 戦略の策定
マトリックスの位置に基づき、各事業に対する中長期的な戦略
を策定します。これには、投資の増加・減少、新市場の開拓、
新製品の開発など、具体的な行動プランを含むことが必要です。

◆6. 実行とモニタリング
策定した戦略を実行に移す際、具体的なKPIs(Key Performance
Indicators)を設定し、その達成度を定期的にモニタリングし
ます。このフィードバックループを通じて、戦略の効果を評価
し、必要に応じて微調整を行います。

◆7. 定期的な見直し
市場環境や技術の進化、消費者のニーズなどは常に変化してい
ます。そのため、定期的にGEマッキンゼーマトリックスを更新
し、事業の位置付けや戦略を見直すことが必要です。

◆結論
中小企業においても、GEマッキンゼーマトリックスは戦略的な
意思決定のための有効なフレームワークとして活用できます。
市場の変化や競争の激化が進む中で、経営資源を最適に配分す
るための明確なガイダンスを提供してくれます。マトリックス
を効果的に使用することで、中小企業も競争優位性の維持や成
長機会の最大化を目指すことができます。

BCGマトリックスやGEマッキンゼーマトリックスの、詳細で正
確な分析を行うためには相応の労力が必要になりますが、考え
方は、決して難解なものではありません。この考え方は、起業
や新規事業、事業再構築を行う時などには特に重要です。考え
方だけでも理解いただくことをお勧めします。

資金調達の相談をお受けしたある企業様の事例です。義理の父
親から会社を引き継いで約1年が経過しましたが、資金調達が
できず困っているという相談でした。

決算書を拝見すると、銀行借入が相応にあり、自己資本は債務
超過の状態にありました。金融機関が融資しづらい財務状況で
す。債務超過に陥った要因を探るため、過去の決算書を確認し
たところ、前年、前々年と2年に渡って総額約5,000万円の退職
金が出ていました。そこに、コロナウィルス感染拡大の影響で
業績が悪化し、現在の状況に陥ったようです。

話をお聞きすると、前社長が特に退職金を欲しがった訳ではあ
りませんが、会社の株を引き継ぐためには株価を引き下げる必
要があり、敢えて赤字を出したと説明がありました。

会社をご子息や従業員に引き継ぐ場合、代表取締役は株主総会
等を開催して決議すれば変更できます。しかし、株主が前社長
のままであれば、新社長は雇われ社長となり、本当の意味で事
業承継が完了したとは言えません。よって、株式もあわせて新
社長に引き継がなくてはなりませんが、株式は客観的な評価額
で譲渡しなくてはならないため簡単ではありません。

前述の会社様についても、元々株式の評価額が5,000万円程度
あったそうです。新社長が個人的に5,000万円で株式を購入し
たり、贈与を受けたりすれば会社の価値は下がらなかったので
すが、株式譲渡所得税や贈与税を発生させないため、税理士さ
んと相談したうえで、株価をゼロにして無償で譲渡するという
方法を取ったそうです。

これにより、税金を出来るだけ払わないという目的は達成でき
ましたが、新社長は、銀行借入もままならないボロボロの会社
を引き継ぐことになりました。

株価を引き下げて後継者に株式譲渡を行う方法は、中小企業の
事業承継においてポピュラーな承継方法のひとつです。しかし、
株価を引き下げるという行為は会社の価値そのものを引き下げ
る行為にあたります。当然、金融機関から見ても魅力のない会
社になってしまいます。

中小企業にとって金融機関との関係は大変重要です。事業承継
後も金融機関と円滑な関係を継続することが会社にとって最優
先だと判断すれば、譲渡所得税や贈与税を支払ってでも会社の
価値は下げないという視点も必要です。

事業承継は税務目線だけでなく、財務の目線でもよく検討して
ください。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

中小企業は、市場環境の変化や資源の限られた状況に迅速に対
応する必要があります。BCGマトリックスは、そのような環境
下でも、事業のポートフォリオを明確にし、効果的な戦略を策
定するための鍵となるツールです。以下は、このマトリックス
を中心にした中小企業の経営診断のための指針です。

◆1. 経営ビジョンと目標の確認
中小企業のリーダーは、企業のビジョンや中長期的な目標を明
確に持っていることが前提です。これが戦略策定の基盤となり
ます。

◆2. 事業ポートフォリオの整理
中小企業も多様な製品やサービス、市場セグメントを持つこと
が多いです。これらを整理し、それぞれの事業の特性や競争状
況を把握します。

◆3. 市場データの収集と分析

●市場シェア
各事業が占める市場シェアを算出します。これは企業の競争力
を示す重要な指標です。

●市場の成長率
各事業が所属する市場の成長率を評価します。これにより、市
場の将来性や潜在的なビジネスチャンスを識別できます。

◆4. BCGマトリックスへのマッピング
上記のデータを用いて、各事業をBCGマトリックス上に配置し
ます。

※BCGマトリックスは、ボストン・コンサルティング・グルー
プ(BCG)によって1970年代初頭に開発された経営戦略のフレー
ムワークで、企業の事業ポートフォリオを効果的に分析・管理
するためのツールとして利用されます。これは、市場の成長率
と市場シェアを基にして、事業の位置を2×2のマトリックス上
にプロットして分析します。

・星(Stars)…成長が早い市場で高いシェアを持つ。投資を
継続して成長を追求する。

・金のなる牛(Cash Cows)…成熟市場で高いシェアを持つ。
安定したキャッシュフローを生むため、利益を最大化する戦略
を取る。

・疑問符(Question Marks)…成長が早い市場でのシェアが
低い。投資の方向や取るべき戦略が不透明。

・犬(Dogs)…低成長市場でのシェアも低い。戦略の見直し
や撤退を検討する。

◆5. 戦略の策定
BCGマトリックスの分類を元に、各事業に対する戦略を策定し
ます。

・星…投資を増やし、市場シェアを拡大。競争力を維持・強化
するためのイノベーションや新市場の開拓を検討。

・金のなる牛…収益性を最大化し、他の事業への資金源とする。
コスト削減や生産効率の向上を追求。

・疑問符…市場での立ち位置を強化するための戦略が必要。新
製品の開発やM&Aを検討することも。

・犬…事業の再評価。事業のリストラクチャリング、または撤
退を検討する。

◆6. 戦略の実行
策定した戦略に基づき、具体的な行動プランを立て、実行に移
します。

◆7. 定期的な見直し
市場環境や技術の進化、消費者のニーズなどは常に変わってい
ます。そのため、定期的にBCGマトリックスの更新と戦略の見
直しを行うことが重要です。

◆結論
中堅企業、大企業においては、事業再構築や事業買収、事業売
却などの経営戦略立案のための分析ツールとして頻繁に活用さ
れています。中小企業においても、BCGマトリックスは事業ポ
ートフォリオの明確化や経営資源の最適な配分を支援する貴重
なフレームワークとして活用できます。

中小企業経営者にとって、経営において大きな支出となるのが
銀行借入の返済です。数年にわたり借入をしている場合、時折
借入を見直すことで無駄を減らし、経営改善に繋げることがで
きます。

銀行借入の見直しを行うためには、まず借入残高一覧表の作成
が便利です。借入残高一覧表は、銀行名、借入額、金利、借入
時期、返済年数、毎月の返済額と借入残高が一目で分かるよう
にまとめられた資料です。この表を活用して、借入の現状を把
握しましょう。

例えば、返済期間が残り2年を切った下記の借入が2本あると
します。

A:借入残高300万円 毎月返済額10万円
B:借入残高250万円 毎月返済額10万円

ここで、AとBの借入を返済する前提で、新たに1,000万
円の借入を返済期間5年で行うと、手元資金が450万円増加
したうえで、毎月の返済額が約3万円下がります。このように、
借り換えは、返済額を増やさずに手元資金を増やすことができ
るというメリットがあります。

もちろん、Aだけ、Bだけでも、借り換えにより返済額を増や
さずに手元資金を増やすことができます。ポイントは、5年返
済の3年目、10年返済の5年目など、返済期間の半分を経過
している借入に着目することです。

また、保証付き借入をプロパーにまとめることができれば、保
証協会の枠が空くとともに、既存借入の保証料が戻ってくる可
能性もあります。これは簡単な作業ではありませんが、見直し
の際に考慮するべき点です。

借入残高一覧表は、自身で使うだけでなく、金融機関との金利
交渉にも役立ちます。他金融機関よりも飛び抜けて金利が高い
金融機関がある場合は、一覧表で他行の金利水準を示して交渉
するのがスマートです。

複数本の借入があり、定期的な借入の見直しを行っていない企
業様は、是非ご相談ください。借入見直しによる経営改善の成
功事例も多数ありますので、貴社の課題に合わせた最適な解決
策を提供いたします。