一月は、資金繰りをテーマにお話ししてきました。
年初に資金の流れを整理し、資金繰り表を作り、確認すべきポ
イントを押さえる。
そのうえで、資金繰りが悪化しやすい考え方についても整理し
ました。

最後に確認しておきたいのは、社長自身がどの水準を下回った
ら動くのかという基準です。

資金繰りが不安定になる会社の多くは、明確な基準を持たない
まま経営判断をしています。
預金が減ってきたと感じた段階で不安になり、増えていれば問
題ないと判断する。
このような感覚的な判断が続くと、対応のタイミングはどうし
ても遅れます。

そこで意識したいのが、キャッシュポジションの基準です。
一つの目安として、最低でも月商一か月分以上のキャッシュを
確保しておく。
この水準を下回りそうになった段階で、対策を検討する。
こうした基準を数字で持っておくことが、判断を早めます。

月商一か月分という水準は、過度に保守的な数字ではありませ
ん。
売上の入金がずれ込むこともあれば、想定していなかった支出
が発生することもあります。
売上が一時的に落ちる局面も珍しくありません。
最低限の時間を確保するためのラインとして、現実的な水準で
す。

基準が明確になると、経営判断の質が変わります。
まだ余裕がある段階で、資金繰り表を見直すことができます。
借入の検討や銀行への相談も、落ち着いた状態で進められます。

反対に、基準を持たないまま経営を続けていると、
・もう少し様子を見る
・来月になったら考える
といった判断が積み重なります。
この積み重ねが、資金繰りを一気に苦しくします。

資金繰りの管理は、特別なテクニックではありません。
数字を確認し、決めておいた基準と照らし合わせ、必要な行動
を取る。
この繰り返しです。

年初のこの時期に、
・自社のキャッシュポジションは月商一か月分を下回っていな
いか。
・今後の動きで下回る可能性はないか。
一度、資金繰り表と預金残高を並べて確認してみてください。

2026年、日本政府は中小企業の自立的成長を後押しするため、
大規模かつ戦略的な支援施策を打ち出しています。今後の経営
環境は、価格転嫁の実現や人材不足、デジタル化の加速といっ
た複雑な課題に直面しますが、国の施策を上手く活用できれば、
それらを突破口に変えることができます。

ここでは、中小企業経営者が注目すべき7つの視点を整理し、
政策活用の具体的な戦略をご提案します。

◆【1】公正な取引ルールを味方に、適正な価格交渉を

2026年1月に「中小受託取引適正化法」が施行され、政府は価
格交渉の適正化を強力に支援します。取引Gメンによる監視強
化や支援体制の整備により、価格転嫁の実現可能性が大きく広
がっています。
経営者は、納入単価の見直しや見積根拠の明確化に取り組み、
公的支援を活用して取引条件をより有利に改善するべきです。

◆【2】「生産性革命補助金」で、成長を実現する投資を

政府は約3,400億円規模の「中小企業生産性革命推進事業」を
継続・強化しています。これにはAI導入、省力化設備、業務
デジタル化など、現場の課題解決に直結する支援が多く含まれ
ています。
企業は単なるコスト削減にとどまらず、「売上を生む生産性向
上」を目的とした設備投資を行い、国の補助制度と組み合わせ
て自社の成長戦略を加速させるべきです。

◆【3】「100億円企業」支援枠の活用で、中堅企業へジャン
プアップ

成長意欲の高い企業には、「大規模成長投資補助金」として約
1,000億円規模の支援が用意されています。これにより、地方
の中堅企業が一気にスケールアップを図ることが可能となりま
す。
設備投資、グローバル展開、研究開発のいずれも対象となって
おり、中長期的な成長ビジョンを描ける企業には最適なタイミ
ングです。

◆【4】人への投資が、企業の持続可能性を左右する

政府は2026年度、賃上げやリスキリング(再教育)を軸とした
人材支援策を拡充しています。業務改善や人事制度改革に取り
組む企業には、各種助成金が用意されています。
「人材不足=成長制約」とならないためには、給与水準の見直
しや柔軟な働き方の導入を含め、職場の魅力を高める施策が必
要不可欠です。

◆【5】事業承継・M&Aを「守り」ではなく「攻め」の選択
肢に

後継者難が進む中で、政府はM&Aや事業承継に関する補助金
・専門家支援を強化しています。廃業回避だけでなく、他社と
の連携や統合により成長スピードを加速させることも視野に入
れるべきです。
今後は、「事業を引き継ぐ・引き継がせる」ことが、重要な経
営戦略の一環となります。

◆【6】資金調達を「守り」から「攻め」のツールへ

低利融資や信用保証制度の整備により、資金繰りに悩む中小企
業への支援が強化されています。加えて、事業再構築や設備投
資といった「攻めの資金需要」に対応した制度も充実していま
す。
補助金と併用することで資金の効率的活用が可能となり、成長
へのレバレッジ効果が高まります。

◆【7】地域発・世界市場への挑戦を現実のものに

地域経済の活性化を目的とした地方創生関連施策も、引き続き
重点が置かれています。さらに、中小企業による海外展開支援
も強化されており、ASEAN諸国など成長市場へのアクセス
が容易になっています。
「地域で勝つ」「世界で勝つ」ことを同時に目指す戦略が、今
後の中小企業には求められています。

2026年は、中小企業にとって「変革を促す年」となるでしょう。
単なる経済対策ではなく、「未来への投資」と捉え、政策を自
社の戦略に組み込むことが何よりも重要です。制度を正しく理
解し、タイミングを逃さずに活用することで、貴社の持続的成
長と競争優位の確立が現実のものになるはずです。

資金繰り表の見方について、ここまで三週続けてお話ししてき
ました。
今回は、資金繰りが悪化しやすい会社に共通して見られる考え
方を整理します。

資金繰りが苦しくなる原因は、突発的な事故のように語られる
ことがあります。

・取引先の倒産
・急な売上減少
・想定外の支出etc

もちろん、外部要因が引き金になることはあります。
ただ、実務の現場で見ていると、資金繰りが崩れる会社には、
事前に共通した考え方が存在しています。

最も多いのは、黒字であれば問題ないという認識です。
損益計算書が黒字であれば安心できる。
この考え方が、資金繰りの確認を後回しにします。

黒字と資金の余裕は別物です。
売上が伸びる局面では、売掛金や在庫が増え、資金は外に出て
いきます。
決算書上は良く見えても、預金残高は静かに減っていきます。

次に多いのは、資金が減ってから対策を考える姿勢です。
資金繰りが厳しくなった段階で、銀行に相談する。
経費削減を検討する。
こうした対応は、選択肢がかなり限られた状態での判断になり
ます。

資金に余裕があるうちであれば、
・借入条件の調整
・投資時期の見直し
・支出の分散
といった柔軟な手を打つことができます。
余裕がなくなってからでは、選べる道は大きく狭まります。

もう一つ注意したいのは、感覚による判断です。
・今月は大丈夫そう
・しばらくは問題なさそう
こうした感覚は、資金繰りが安定している時期ほど当たりにく
くなります。

売上が順調なときほど、判断は楽観的になります。
その結果、資金の減少に気づくタイミングが遅れます。

資金繰りが安定している会社は、特別なことをしているわけで
はありません。
資金の動きを定期的に確認し、先の数字を見たうえで判断して
います。
良いときほど慎重に、悪くなる前に手を打つ。
この積み重ねが、結果として会社を守ります。

資金繰りは、管理能力の差よりも考え方の差が表れやすい分野
です。
考え方が変われば、行動も自然に変わります。

…前回号の続きです。

事業計画の要諦は、事業立地を成長分野に転換することです。

創業以来、先代の代から…ただ同じ事業を継続しています。事
業を創る、事業立地を再定義する、イノベーションを仕掛ける、
こうした発想自体が存在しません。それでも、社長も従業員も
皆、真面目に日々の仕事に取り組んでいます。結果として、そ
の会社は静かに衰退し、ある時突然、その役割を終えることに
なります。

「今年生まれた子どもが二十年後に就職する頃、存在している
会社の半分は、今はまだ存在していない」と言われます。二十
年で企業の半分が入れ替わるという仮説です。おそらく現実に
近いでしょう。AIに代替される業種が話題になりますが、自
社が該当するかを過度に心配する必要はありません。結局、す
べての企業は時代に取って代わられる存在だからです。

変化しなければ、企業は存在意義を失います。時代ごとのニー
ズに応え続けることが、生き残るための条件です。経営とは、
連続した小さな変化を積み重ねる営みです。その小さな変化が、
やがて大きな変革へとつながります。急激に変わったように見
える企業も、実態は小さな変化の積み重ねに過ぎません。

■本稿では「事業計画を策定する」というテーマについて述べ
ています。

事業計画とは、変化を生み出すための“種”です。何を、どの
ように変え、いつまでにどの姿を目指すのか、この仮説こそが
事業計画です。過去の延長線上にある数値計画を作って満足し
てはいけません。

■事業計画作成時の重要ポイント

策定にあたって、次の要素が含まれているか確認してください。

・事業立地の見直しやイノベーションが織り込まれているか
・収益モデルの創造・再構築ができているか
・現状認識は十分か
・(仮)のゴール〔マイルストーン〕を設定できているか
・全体として整合性の取れた数値計画になっているか
・数値計画と資金計画の整合性を確認しているか
・マネジメント体制は成長に耐えうるか、また妥当か
・日々修正しながら現実的に対応できる設計か

■経営者の仕事は、事業立地とビジネスモデルの検証・構築、
すなわち事業計画の立案と見直しに尽きます。

経営者の仕事は多岐にわたります。しかし重要度の低いものか
ら削ぎ落としていくと、最後に残るのは「事業立地とビジネス
モデルの検証・構築」、つまり事業計画の立案と見直しです。
それにもかかわらず、多くの経営者はこの最重要業務を疎かに
しています。その結果、経営者不在の企業体になっています。
創業時や先代から受け継いだビジネスモデルを進化させること
なく、惰性で継続しているのです。過去の事業を時間軸で延ば
しただけの数値計画を事業計画と呼び、自己満足に陥っていま
す。体裁の良い数値計画は、決して事業計画ではありません。
肝に銘じてください。

■経営者には三つの「胆力」が求められます。

経営にウルトラCはほとんどありません。一つひとつ理詰めで
考え、確実に行動し、都度修正しながら積み上げていく。この
地道な営みを淡々と続けることが、王道です。

・理詰めで考え続ける知力と、それを持続する知的胆力
・行動し続ける実行力と、それを支える肉体的胆力
・思うように進まない状況に耐える精神力と、その精神的胆力

■事業計画とは、江戸時代に中国奥地を目指す長旅の旅程表の
ようなものです。

存在が定かでないゴールに向かい、一歩ずつ進まねばなりませ
ん。日本から中国奥地を目指すなら、まず大陸へ渡る方法を考
え、航路を探し、港へ向かうための資金を用意します。大陸に
渡っても、先の道が見えるとは限りません。それでも前に進み
ます。ゴールまでの費用が読めなくても、一歩ずつ進みます。
その過程では、数多くのトラブルにも遭遇するでしょう。それ
らを回避し、あるいは解決しながら、不確実なゴールに向かっ
て歩み続けるのです。この旅に、明確な終点はありません。

経営とは、ゴールではなく、そのプロセスそのものなのかもし
れません。知的胆力、肉体的胆力、精神的胆力を鍛えながら、
経営という長い旅に挑み続けましょう。楽しみながら。

新年を迎えるにあたり、経営を見つめ直す一つの契機となれば
幸いです。

前回は、資金繰り表は年初に作るから意味がある、という話を
しました。
今回は、資金繰り表を作成したあと、社長がどこを確認すれば
よいのかを整理します。

資金繰り表を見る際に、細かい数字をすべて追いかける必要は
ありません。
社長が押さえるべきポイントは多くなく、視点を絞ることで判
断がしやすくなります。

最初に確認したいのは、預金残高が最も少なくなる月です。
一年分を並べたときに、資金が一番薄くなるタイミングはいつ
なのか。
その金額を見て、精神的に余裕を持てる状態かどうかを確認し
ます。

・利益が出ている
・売上が伸びている
こうした状況でも、預金残高の底を見ると不安を感じるケース
は珍しくありません。
資金繰り表は、数字と感覚のズレを早い段階で掴むことができ
ます。

次に確認したいのは、売上が計画より下振れした場合の資金の
動きです。
一年が当初の想定どおりに進むことはほとんどありません。
売上を少し保守的に置き直すだけでも、資金の余裕度は大きく
変わります。

ここで重要なのは、悲観的な結論を出すことではありません。
売上が落ちた場合でも、対策を検討できる時間が確保されてい
るか。
資金繰り表は、その余地を確認するための資料です。

三つ目は、大きな支出が集中する時期です。
設備投資、賞与、借入金の返済などは、それぞれ単体では問題
がなく見えても、重なることで資金繰りを一気に圧迫します。

月ごとに並べて確認することで、資金が一時的に詰まるタイミ
ングが明確になります。事前に把握できていれば、手を打つ選
択肢も広がります。

この三点を確認するだけで、資金繰り表は十分に経営判断に使
えます。
必要なのは、数字を完璧に理解することではありません。
最も厳しい状況において、会社がどのような状態にあるかを把
握することです。

資金繰り表は安心するための資料ではなく、考えるための資料
です。
判断を先送りしないための時間を生み出す道具でもあります。

本稿が、新年の計画策定における一つの指針となれば幸いです。

◆1:新たに事業計画を立案する際は、まず現在の事業立地を
検証することに十分な時間を割いてください。

事業計画作成の核心は、事業立地の見直しにあります。斜陽分
野にとどまるのではなく、成長分野への転換を真剣に検討すべ
きです。

○以下、高収益企業研究の第一人者である三品和広教授の言葉
を引用します。

『…事業の根底には立地(誰に何を売るか)があり、その上に
構え(出荷するモノをいかに入手し顧客に届けるか)、製品
(いかに個別製品を魅力的に仕立てるか)、管理(いかに品質・
原価・納期を守るか)が重層的に積み上がっている。…中期経
営計画などで立地や構えに手を付けず、製品刷新や管理強化だ
けを掲げる企業は多いが、この次元の取り組みだけで高収益化
を実現した例はほとんどない。…』

◎事業計画を策定するとは、事業立地を検証し、必要に応じて
見直すことに他なりません。過去の流れを無批判に踏襲するこ
とを事業計画と呼び、それを繰り返していては、事業革新は生
まれません。何十年も同じ立地に固執し、徐々に衰退していく
企業は、この典型です。
過去の延長線にある見栄えの良い数値計画を、事業計画と呼ぶ
のはやめましょう。

◆2:事業計画は、過去踏襲型の保守的な内容でない限り、正
確な予測が極めて困難であり、多くは計画通りに進みません。

創造的な計画の成功事例の多くは、事後的に理論化され、説明
が加えられています。いわば後付けです。保守的な計画でない
限り、事業を正確に予測できないという前提に立ち、計画を執
行してください。クリエイティブな計画をそのまま信じ込むこ
とは、非常に危険です。

『現実には、ある程度先を見据えつつ、状況に応じて対応して
いくことになる。実現された戦略は、当初から明確に意図され
たものではなく、個々の行動が積み重なり、その都度学習する
中で、一貫性やパターンが形成されていく。』
※マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院で学位を取得
した、異色の経営学者ヘンリー・ミンツバーク博士の言葉です。

◆3:事業計画作成時の留意点

・斬新で優れたアイデアほど、将来予測は難しい。
・重要なのは、起点の正確な認識と終点のイメージ化。プロセ
スは進行しながら調整する。
・作成した事業計画を鵜呑みにしないこと。前のめりは禁物。

◆4:事業計画作成の要諦

・事業立地の確認・選定……どの事業を行うのか
・収益モデルの創造(ビジネスの型の確立)……どのように
稼ぐのか
・起点(現状)の認識……自社の実力を知る
・(仮)のゴール設定……目指す到達点はどこか
・起点からゴールまでの道筋を仮置きする

そのうえで、
・全体として整合性の取れた数値計画の策定
・数値計画と資金計画の整合確認
・マネジメント体制の整備
・日々修正しながら現実的に対応する姿勢

◆5:事業計画執行時の注意事項(追記)

・コントロール可能なことは、確実にコントロールする。
・努力次第でコントロールできることは、可能な限り管理する。
・コントロール不能なことには、柔軟に適応する。

コントロールできることを放置するのは、放漫経営です。
努力すれば管理できることを怠るのは、怠慢経営です。
そして、コントロール不能なことまで支配しようとするのは、
独りよがりの経営です。

自社の明るい未来のために、真に意味のある事業計画を作成し
ましょう。過去の延長にある体裁の良い数値計画を、事業計画
と呼ぶのはやめましょう。それは事業計画ではなく、単なる進
捗管理計画に過ぎません。

…次回号に続く

前回は、年初にまず考えるべきはいくら儲けるかではなく、い
くら耐えられるかというお話をしました。

では、その耐える力をどのように把握するか。
それは資金繰り表になります。

資金繰り表というと、銀行に出すための資料、資金が苦しくな
った会社が作るものというイメージを持たれがちです。

しかし、実務の現場では、資金繰り表は会社が元気なときほど
役に立つ資料だと感じています。

理由はシンプルです。
資金繰り表は、未来の話だからです。

決算書は過去の成績表です。
どれだけ細かく見ても、もう起きてしまったことは変えられま
せん。

一方で資金繰り表は、このまま進むとどうなるか、売上が落ち
たらどうなるか、投資をした場合に資金は足りるのか、そうし
たことを事前に考えるための道具です。

特に年初は、まだ一年が始まったばかりです。
売上も、支出も、投資も、まだ調整が効きます。この時点で資
金の流れを一度整理しておくだけで、無理な判断を避けられる
確率は大きく上がります。

よくある誤解についても触れておきます。
「資金繰り表は完璧でなければ意味がない」という考え方です。

実際には、数字が多少ずれていても構いません。予測が外れる
のは当たり前です。
大切なのは、何もしなければこうなるという見通しを持つこと
です。

年初に一度作っておくと、売上が想定より伸びた、経費が増え
た、投資をしたくなった、そうした場面で判断の基準が生まれ
ます。

逆に、資金繰り表がないまま一年を走ると、判断はすべて感覚
になります。
今月はなんとなく大丈夫そう、まだ預金がある気がする、この
感覚的な経営が後から効いてきます。

資金繰りは、苦しくなってから考えるものではありません。
苦しくならないために、先に予測を立てましょう。

○銀行融資プランナー協会の正会員である当事務所は、
『貴社の財務部長代行』を廉価でお引き受けいたします。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所である当事務所にて承っております。
お気軽にご相談ください。

令和8年の幕開けにあたり、日本の中小企業はかつてない構造
的な変化に直面しています。原材料費やエネルギーコストの高
騰による物価上昇、少子高齢化がもたらす人手不足、そして市
場環境の急速な変化に対応するための事業再構築。これらの課
題は一企業の努力だけでは解決が難しく、同時に“変化にどう
適応するか”が企業存続のカギとなります。

以下では、これら三大課題に対する具体的な視点と行動指針を
示します。今こそ、守りから攻めへの意識転換が求められてい
ます。

■【1】物価上昇:価格転嫁は「説得」から「納得」へ

物価上昇は経営体力を確実に削ります。原価高騰を吸収するだ
けの余力がない中小企業にとって、価格転嫁の技術が問われる
年になるでしょう。

単なる「値上げ」では顧客の理解は得られません。大切なのは、
“なぜその価格が必要なのか”を丁寧に伝えること。製品・サー
ビスの背景、品質、持続可能性への取り組みなど、価格に見合
った価値を伝えるストーリーテリングが不可欠です。

あわせて、業務効率化によるコスト構造の見直しも重要です。
クラウドツールやAIの導入で人件費や間接費を削減し、価格転
嫁の必要性そのものを低減させる取り組みが求められます。

■【2】人手不足:採るより育て、繋ぎ、活かす

中小企業の多くが「人が足りない」と嘆く一方、雇ってもすぐ
辞めてしまう現実も深刻です。もはや採用に頼るだけでは立ち
行かず、「定着」と「戦力化」こそが競争力の源泉となります。

具体的には、柔軟な勤務体系の整備(時短勤務、在宅ワーク、
副業容認など)や、成長を実感できるキャリア設計が効果的で
す。働きやすさと働きがいの両立を意識した職場環境が、人材
の流出を防ぎます。

また、シニアや外国人、育児・介護と両立する層など、多様な
人材の受け入れ体制の構築が必要です。業務マニュアルや研修
体制を整え、誰もが早期に活躍できる仕組みを作りましょう。
AIを活用した教育やサポートツールの導入も視野に入れるべき
です。

■【3】事業再構築:「縮小均衡」から「成長戦略」へ

停滞からの脱却には、今こそ大胆な事業見直しと再構築が必要
です。顧客ニーズは変化しており、従来の延長線上では成長は
望めません。

ここで大切なのは、“自社が本当に提供すべき価値は何か”を見
極め、限られた経営資源を集中させることです。小規模でも新
規事業や新市場へのチャレンジを始める企業は増えています。
既存顧客との関係を活かしたサービスの横展開や、ニッチ市場
への特化は有効な戦略です。

補助金制度や支援機関の活用も積極的に行いましょう。また、
AIやデジタルツールを活用したマーケティングや業務改善は、
再構築のスピードと確度を高める武器になります。

変化に強い組織こそ、未来を拓きます。
令和8年は、「変化に順応する企業」が「選ばれる企業」とな
る年です。先の読めない時代においても、正しい情報をもとに
迅速に意思決定し、小さく試し、大きく育てる。その柔軟性と
スピードこそが、これからの中小企業に求められる資質です。

経営者の皆様には、今年を“守り”ではなく“変革の始まり”と捉
えていただき、社内外に新たな価値を生み出す礎としていただ
きたいと願います。

あけましておめでとうございます。
本年も中小企業経営に役立つ財務の話をお届けしていきます。

年始に多くの経営者の方と話をすると、
・今年は売上を伸ばしたい
・今年こそ利益を残したい
そんな言葉をよく聞きます。

一方で、
財務の視点から見ると、年初にまず考えていただきたいのは
今年いくらお金が増えるかではなく、いくらお金が減る可能性
があるかという点です。

会社は利益が出ても倒れます。
逆に言えば、利益が少なくても資金が回っていれば生き残れま
す。
この違いを分けるのが資金繰りです。

資金繰りというと、苦しくなったときに考えるもの、銀行に求
められて作るもの、そのような印象を持たれがちですが、本来
は逆です。

余裕があるときにこそ、資金繰りを考える。
何も起きていない年初こそ、資金の流れを整理する。
これをしておけば多少の環境変化があっても大きく崩れません。

年初におすすめしたいのは、難しい資料を作ることではありま
せん。
・今ある預金はいくらか。
・毎月必ず出ていくお金はいくらか。
・売上が少し落ちたら何か月耐えられるか。

この三つを把握するだけでも、経営の見え方は大きく変わりま
す。

一年は長いようで、資金繰りの視点ではあっという間です。
売上が伸びているときほど、お金は静かに減っていきます。
その変化は、決算書が出来上がる頃には手遅れになっているこ
とも少なくありません。

ですので、今年一年をどう戦うかを考える前に、今年一年をど
うやって生き残るかを考える。それが財務の出発点です。

今年も一緒に、数字で会社を守る一年にしていきましょう。

来年は令和8年です。もちろん、昭和101年ではありません。
誰もが分かっているはずのこの事実ですが、今なお昭和の経営
観に基づいた判断や行動が、現場のあちこちに根強く残ってい
ます。

時代は変わりました。変化に気づいていながらも、経営スタイ
ルを見直すことなく、昭和の延長線上に立ち続けているとした
ら、この年の瀬にこそ、令和の時代にふさわしい「経営のあり
方」について、改めて考えてみてはいかがでしょうか。

■1.昭和と令和は、前提がまったく違います

昭和の時代は、「危険・不便・不快」といった社会課題が明確
でした。たとえば、1964年の東京オリンピック当時、冷蔵庫の
普及率はわずか10%。人々の暮らしはまだまだ不便で、解決す
べきテーマが山積していたのです。
企業は、こうした大きなニーズに応えるために商品開発を進め、
大量生産と均質化を武器に経済成長を支えました。「Japan as
No.1」と称された時代、同質性とスピードが成果を生んだので
す。

ところが、令和の日本はすでに「安全・便利・快適」が当たり
前となりました。大きな課題が見つかりにくい時代においては、
皆が同じ小さなテーマに群がる結果、差別化が難しくなり、激
しい価格競争へと突入。多くの企業が低成長・低収益のスパイ
ラルに悩まされています。

■2.昭和の「正解」が、今もあなたを縛っていませんか?

私たちの思考や判断は、無意識のうちに昭和の影響を受けてい
ます。先輩経営者や業界の常識、書籍、コンサルタントの提言、
その多くが、昭和の成功体験をベースに語られています。だか
らこそ、今こそ疑ってみるべきです。「本当にそのやり方は、
今の時代に合っているのか?」

◆ 新たな経営原則へのシフトが必要です

・【PL(損益計算書)】売上よりも利益。量より質へ。
・【BS(貸借対照表)】「持つ経営」から「持たない経営」へ。
・【MG(マネジメント)】ボトムアップからトップダウンへ。
雇用から業務委託へ。

■3.昭和の「型」から抜け出せていますか?

業界の枠組みや収益モデルも、昭和時代に定義されたものをそ
のまま使い続けていませんか?「この業界はこういうもの」
「このビジネスモデルが定番」、そんな固定観念こそ、変化の
足かせです。

◆ 新たなビジネスの「型」へ

・サブスクリプション1.0 ⇒ 2.0(継続価値の再設計)
・ソリューション提供企業への転換
・D2C(Direct to Consumer)、クラウドファンディング
・DX(デジタル変革)の推進
・業界の垣根を超える展開
・ニューミドルマン(購買代理)⇒ プラットフォーマーへ

■4.これからの変化は「破壊的」に進みます

今後のビジネス環境は、変化ではなく「激変」が常態となりま
す。真にオンラインを武器とする企業が、リアルな世界を飲み
込む「OMO(Online Merges with Offline)」の時代が加速
しています。たとえば、銀行業界の縮小はその一例に過ぎませ
ん。同様の構造変化は、あらゆる分野で起こるでしょう。
・AI(例:ChatGPT)による知的労働の代替
・カーボンニュートラルによる産業構造の変革(特に自動車業
界)
こうした環境変化の波に、旧来型の組織では対応しきれません。

■5.ルールが変わるとき、中小企業には最大のチャンスが訪
れます

競技のルールが変われば、強者が変わります。100mを最速で
走れなくても、「100mを20秒ジャストで走る」競技が新たに
生まれれば、あなたにも金メダルの可能性がある。今はまさに、
その「ルールが書き換わる時代」です。しがらみに縛られない
中小企業や起業家こそが、新たな主役となり得るタイミングで
す。

■6.令和時代を生き抜く企業体へ

同質化・価格競争に巻き込まれず、独自のポジショニングを確
立し、新たな市場や仕組みを自ら生み出していく、そのような
企業こそが、これからの時代に求められます。

「与えられたルールで戦う」から「自らルールを創る」企業へ。
あなたの会社も、令和のリーダー企業となれるかもしれません。

※お世話になりました。来年もよい年でありますように。
感謝・合掌