前回のお役立ち情報でご案内させていただいた「中小企業等経営強化法」について、

「結局どうすれば良いの?」というお声がありましたので、メリットや手続き方法について、

企業側の視点で解説致します。

■経営力強化法の概要について

経営力強化法の概要を簡単に説明すると、

1.中小企業が「経営力向上計画」を策定し、

2.主務大臣あてに「申請」を行って「認定」されると、

3.様々な「支援措置」を受けられる制度。となります。

■様々な支援措置(企業のメリット)とは

最も魅力のある支援措置は、「生産性を高めるための機械装置を取得した場合、3年間、

固定資産税が半分になる。」というものではないでしょうか。

他にも、「商工中金による低利融資を受けられる。」「信用保証協会の保証枠が拡大される。」等の

措置が用意されていますが、必ず借りられるという訳ではない点に注意が必要です。

■申請の仕方は

下記中小企業庁のホームページから申請書(A4用紙2枚)をダウンロードして作成し、各地方の

経済産業局に提出するだけです。

http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/

 

計画書は、政府が推奨する「財務分析手法」や「事業分野別の指針」を用いて策定しなくては

なりませんが、「事業分野別の指針」とは、各事業分野における業界の課題や改善策をまとめた

ものです。現在指針が出ている事業分野は、製造業、卸・小売業、外食・中食、旅館業、医療、

保育、介護、障害福祉、貨物自動車運送業、船舶、自動車整備になります。

申請をする予定はなくても、ご自身が属する業界の指針に目を通してみてはいかがでしょうか。

こちらも先ほどのHPから確認することができます。

 

中小企業等経営強化法の認定は、ものづくり補助金の加点要素にもなるなど、今後、政府が行う

中小企業向けの支援措置を受ける際には、必須のものになるかもしれません。

(もちろん企画倒れに終わる可能性もあります。)

設備投資を要しない事業形態の企業様にとっては、ややインパクトに欠ける内容ではありますが、

認定を受けるデメリットはなさそうですので、「経営を強化する。」という本質的な目的のために

認定を受けてみてはいかがでしょうか。

 

計画書、申請書の作成が困難な場合は、税理士など経営革新等認定支援機関のサポートを

受けながら作成することが可能です。

お問い合わせください。

■経営体(そもそも世の中)の諸々はすべて、時間の経過とともに複雑な方向に、増える方向に

動きます。世の中のベクトルは複雑化・増加であって、単純化・減少ではありません。

従って、自然に物が増え、書類が増え、手続きが複雑になり…高コストになります。

品揃えが増え、在庫が増え…総花的になります。弱くなります。人は仕事が増え(自らが増やし)…

多忙になります。故に、強烈に意識しない限り、時間が経過するごとに会社はややこしくなります。

弱くなります。長時間労働や生産性・収益性の低さの主たる原因の一つはこれが原因だと

思っています。

 

■この様に、複雑化・増加のベクトルに巻き込まれ、対応できていないがゆえに生産性・収益性の

低さを招いている状況の経営体を『分散症候群』と呼びます。

『分散症候群』の経営体には、以下のような症状が現れます。

1.社内の動きが遅く(悪く)なる。〔  〕

2.オペレーションのミスが多くなる。〔  〕

3.経営コストが割高になる。〔  〕

4.商品、サービスが総花的で特徴がない。〔  〕

5.頑張っているのに儲からない。〔  〕

6.新しい商品、サービスを創造できない。〔  〕

いかがでしょうか?

 

■『分散症候群』という疾病を整理します。

○商品やサービスの幅を広げ過ぎて、マーケティングが曖昧になる病です。誰に・何を売るかが

ぼやけてしまっています。

○原因

商品の品揃えやサービスの幅を持たないと売れないとの思い込みが原因です。企業は何もない

ところから始まります。このステージでは品揃えの強化や幅が必要です。しかし、一定のレベルを

越えたあたりから、商品の品揃え、サービスの幅、事業領域を絞りながら成長を遂げるべきです。

拡大は面を広げることではなく、面を狭めて深堀することです。このあたりが誤解されています。

だからこの病気が蔓延するのでしょう。

○症状

経営資源が分散され、社内のありとあらゆるものが複雑になるため、動きが悪くなります。

対応が遅くなり、ミスが多発し、全体にコスト高になります。各商品やサービスの磨きこみも

十分でなく、総花的な品揃え、サービスを提供しており、これといった強みもありません。

 

■『分散症候群』への対応は…止めて・減らして・集中して・尖ることです。

これを『単純化(Simple化)』と定義します。

○対策は…

すべてを単純化(Simple化)することです。

1.減らすことです。絞り込むことです。

2.自社の強み(ツキ)を探して特化することです。

 

■経営体は大きく4つの疾病を患っていると思っています。その有病率は決して低くありません。

◆病名1:分散症候群  …有病率50%

◆病名2:安売り症候群 …有病率50%

◆病名3:前のめり症候群…有病率30%

◆病名4:お人好し症候群…有病率60%

 

◎これらの疾病に対する処方箋が以下です。

【SP(Simple&Profitable)経営 基本方針】

◆第1条:すべてを単純(Simple)にすること。

◆第2条:高収益(Profitable)な企業作りを目指すこと。

◆第3条:変化に対応できる柔軟性(Flexible)のある企業体を維持すること。

◆第4条:経営判断を明確に(Clearly)にすること。

…次回号につづきます。

「税金を払いたくないので利益を減らした。」という話を良く耳にします。しかし実際は、

「税金を払いたくても払えないので、やむを得ず利益を減らした。」というケースも多い

ようです。せっかく利益が出ているにも関わらず、お金が理由で利益を圧縮せざるを

得ないのは大変もったいないことです。

 

法人税等の実効税率は利益の約30~40%です。仮に利益が100万円だったとすると、

税額は30万円~40万円になります。税額よりも利益の方が大きいので、税金が払えない

はずはありません。しかし、いざ税金を払おうとすると、「手元に現金がない!」ということが

良くあります。なぜでしょうか。

 

利益が出ているのに税金が払えない理由は、利益が現金化されるより前に、税金の支払い

期限が到来するためです。税金は利益額を基準に計算しますので、たとえ利益が売掛金の

状態であっても、税金を支払わなくてはなりません。この時間的なズレに対処するためには、

財務を強化するのが最良です。

 

税金が払えないからと言って利益を圧縮すると、確かに税金は少なくなりますが、様々な

問題が発生します。まず、無理な利益圧縮が脱税と認定されるリスクがあります。もう一つは、

決算数値にひずみが生じるため、金融機関から相手にされなくなるリスクがあります。

よって、正しい対処方法は、事前にファイナンスを行って、税金を払えるだけの資金を

プールしておくことです。

 

事前に資金を調達するためには、毎月の利益状況を把握して、あらかじめ税金の額を予測

しておく必要があります。また、毎月のキャッシュの状況も把握して、どれぐらい資金が不足

するかも予測しておく必要があります。

 

試算表と資金繰表を毎月作成する。やはり基本的な財務活動が安定した資金運営の

第一歩です。決算の時に慌てて利益を圧縮することがないよう、資金管理を徹底してください。

■社長は日々多くの判断をくだしています。

過去の経営判断の集積が現状であり、これからの判断の結果が未来の経営成績に

反映されます。判断の精度が原因、経営成績が結果、タイムラグを経て明確な

因果関係が生まれます。

■社長は、何を基準に経営判断を行っているのでしょうか?

理詰めで考えて判断する以外に方法はありません。
常に自身の頭の中で考えを突き詰めて、論理に沿って判断すべきです。それ以外に

方法が見当たりません。絶対にやってはいけないことは、曖昧な形で伝わってくる、

無責任な世間の間違え常識を鵜呑みにすることです。

■曖昧な形で伝わってくる、無責任な世間の間違え常識とは…

◎間違え常識1:経営の生産性向上のためには、改善することだ。

⇒違います。止めることです。

◎間違え常識2:従業員が忙しい。

⇒違います。マネージメントが雑なだけです。

◎間違え常識3:社長が忙しい。

⇒違います。余計なことをし、コントロールできないことを考えているからです。

◎間違え常識4:社長は、急ぎで重要なことに専念すべきだ。

⇒違います。社長の仕事は、急ぎでない重要なことへの対処です。

◎間違え常識5:人間は色々なことに同時に対処できる。

⇒違います。人間はマルチタスキングが出来ないようにできています。

◎間違え常識6:お金は、お金が必要な時に借りる。

⇒違います。お金は、借りられる時に借りられるだけ借りることです。

◎間違え常識7:借入れは少ない方が良い。

⇒違います。そうでないことも多いです。

◎間違え常識8.取引する銀行は大きな銀行が良い。

⇒違います。取引する銀行は分相応が良いはずです。

◎間違え常識9:

創業時、自己資金が底をついて資金が逼迫するタイミングで資金調達する。

⇒違います。デスバレーに突入する前の創業初期か、デスバレーを抜け切った

黒字転換後しか調達できません。

◎間違え常識10:

現状の厳しさを強調して、金融機関に融資を依頼する。

⇒違います。返済できる根拠を書面で示して依頼するべきです。

◎間違え常識11:マーケットインこそすべてだ。

⇒違います。プロダクトアウトこそ重要です。

◎間違え常識12:

収益性の良し悪しは、マネージメントやマーケティングで決まる。

⇒違います。その前に事業立地・ビジネスモデルの良し悪しが重要です。

◎間違え常識13:売れないので価格を下げる。

⇒違います。価格を売る道具に使ってはいけません。

◎間違え常識14:売上こそ経営の肝だ。

⇒違います。利益の方が重要です。

◎間違え常識15:協業先を早く作りたい。

⇒違います。その前に自立することです。

◎間違え常識16:

十分な費用を費やして最高の管理を行うことが重要だ。

⇒違います。最適な管理を最小のコストで行うべきです。

◎間違え常識17:従業員に好かれたい。

⇒違います。好かれる社長のいる会社は総じてうまく行っていません。

◎間違え常識18:衆知の経営を行いたい。

⇒違います。小さな会社は独断こそ正です。

◎間違え常識19:能力の限界まで出世させてあげたい。

⇒違います。能力の限界の手前に留めるべきです。

 

経営判断は、とことん理詰めで行ってください。絶対にやってはいけないことは、

曖昧な形で伝わってくる、無責任な世間の間違え常識を鵜呑みにすることです。

上記の間違え常識に対するコメントも、本当は間違えかも知れません…

とことん理詰めで考えてください。

毎月の経営状況を正確に把握できる資料は「試算表」です。多くの経営者様が試算表を見て、

「売上が上がっている。」とか、「利益が減っている。」などの状況を確認し、日々の経営判断に

役立てておられます。しかし、もし試算表そのものが間違っていれば、そこから下される判断も

間違ってしまう可能性が高くなります。自社の状況を鑑みて、正確な試算表を作成するのが

難しいと考えるならば、思い切って、もっと簡素な管理方法に切り替えるのもひとつの解決

方法です。試算表ではなく資金繰表です。

 

財務体質の強化に取り組んでおられる企業様の事例です。数か月前から関与をスタートし、

オブザーバーとして月1回のミーティングに参加してきました。ミーティングの参加者は社長、

取締役、経理担当者です。毎月、経理担当者が作成した試算表をベースに議論を行います。

 

(経理担当者)

「先月の売上高は昨年対比伸びましたが利益は減っています。」

(社長)

「A社さんで値引したからじゃないかな。」

(取締役)

「いや、工場の人件費が増えたからではないでしょうか。」

(全員)

「うーん・・・」

 

昨年対比、売上高が伸びたにも関わらず、減益となった要因について、1時間程議論が

なされて会議は終わりました。会議の結論は、毎回「もっと売上を伸ばそう。」で締め

くくられます。しかし、そもそも減益ではなく増益だった可能性があります。

実際は減益ではなかったと考える理由は、試算表に在庫が反映されていないためです。

仕入額がそのまま原価となっており、先月68%だった原価率が今月は77%になっています。

明らかに異常な増加です。同社の平均原価率は70%ですので、今月は単純に仕入が

多かっただけで、在庫を考慮すれば実際は増益だった可能性が十分にあります。

 

年商3億円未満の中小企業においては、正確に試算表を作成する機能が備わっていない

ことが多いため、実は、同社のように不正確な試算表で経営判断がなされているケースも

多いのではないかと感じます。しかし、正確な試算表を作成するためには、財務に精通した

人材を雇用したり、毎月棚卸を行ったりしなくてはならないため、負担が大きくなります。

よって、正確な試算表を作成することに固執せず、思い切って、キャッシュの動きだけを

まとめた「資金繰表」を、経営管理ツールにすることを提案します。

 

企業が最も注意を払わなくてはならないのは、赤字になることよりも資金を切らすことです。

この点において、資金繰表の方が試算表よりも資金の動きが良く分かります。また、在庫額、

売掛金、買掛金、減価償却費など、実態を把握しにくい項目は最初から考える必要は

ありませんので、作成も簡単です。不正確な試算表を管理ツールとするより、正確な

資金繰表を管理ツールとした方が、効率的かつ効果的かもしれません。

■粗利益率の低いビジネス、高いビジネスは…

 

○最も粗利益率の低いビジネスは金融業です。

※金利を粗利益率と並列で表現することは少々乱暴ですが、ここではあえてそうさせて

いただきます。数%、住宅ローンには1%を割り込む金利の商品があります。

大きな資金を極めて低コストで調達できて、長期間寝かせることができる事業背景があって、

はじめて金融業は成立します。

 

○次に粗利益率の低い業態は商社です。

その与信力や保有する商圏を背景に、大きな取引の間に入って、10%以下のマージンを

収入源にします。安定した資本力・資金力があって、はじめて商社ビジネスができます。

※商社のビジネスモデルは大きく変化しています。現時点では、事業への直接投資を行って、

より多くのリスクとリターンをとる形態が主流です。

 

○次に粗利益率が低いのは流通業でしょうか。

商品を作るメーカーがあって、そのメーカーから商品を仕入れて売ります。製造に関する

利益はメーカーがシェアします。販売に関する利益が流通業態の利益になります。

粗利益率は、30%~50%弱でしょうか。

(…中略)

 

○最も粗利益率の高いビジネスは、コンテンツやノウハウを提供するビジネスです。

仕入れはありません。自分たちの知恵で価値を創造して、それを販売します。

■粗利益率は外部との関わり度合いで決まります。

粗利益率20%、これはエンドユーザーに届くまでの役務・価値の内の、80%は自社以外が

担っている・生み出していることを意味します。

同様に、粗利益率50%はその関わり度合いが50%、粗利益率100%はそれが100%である

ことを意味します。

■粗利益率100%が必ずしも優ではありません。

粗利益率100%とは、ユーザーに商品やサービスを届けるまでに、他人の力を借りないことを

意味します。良く言えば自前主義、悪く言えば協業ができない、故に、一般論として粗利益率

100%のビジネスは大きくなりません。

■低粗利益率のビジネスは、小資本企業には不向きです。

低粗利益率のビジネスは、大資本家向けです。他人の知恵と、自身の資本力・資金力をうまく

活用して利益を上げます。金融業や商社がこれに該当します。

一方、小さな資本しか持ち合わせていない中小・零細企業や独立開業者は、「金は無いけど

知恵を使う」ビジネスを行っていかねばなりません。その多くを他人の力に頼る低粗利益率

ビジネスで成功することはできません。極めて難解です。

■小資本企業にとっての適正な粗利益率とは…

 

○感覚論で恐縮ですが…40%以上を目指してもらいたいと思っています。

◆(相談者様)

ネット通販で商品を仕入れて売ります。自己資金300万円と借入れ600万円で事業を始め

ます。想定する粗利益率は20%ぐらいです。これ以上の粗利益率をとると、売れないように

思います。

◇(当方)

事業資金総額900万円(内自己資金300万円)、粗利益率20%で資金繰り計画・利益計画を

作るとこうなります。

◆(相談者様)

そんなに厳しくなりますか。

◇(当方)

そうです。粗利益率を20%以上設定できないと考える前に、粗利益率40%を設定しても

売れる商品開発(商品発掘)に力を入れませんか?

 

○仕入れの支払いサイトや資金の回収サイトにもよりますが、総じて低粗利益率のビジネスは

資金の動きが忙しくなります。

また、20の粗利益を得るために、100の回収リスクを背負うことにもなります。経営が複雑で

難解になります。

小資本企業が始める低粗利益率ビジネスは、成功の確率を最初から大きく引き下げてしまって

いることをご認識ください。

この機会にご一考ください。

成長過程にある企業の資金調達方針は、金利よりも金額を重視すべきです。

安定期に入った企業は、投下資本に対する業績面の反応が鈍くなるため、

調達額を増やして積極的に投資するより、調達コストを抑えて利益の拡大を

図ることも必要です。しかし、スタートアップ、成長期の企業は、正しく投資を

すれば即座に業績に跳ね返ってくるため、金利よりも、調達額を重視することを

おすすめします。(ここでは銀行筋からの調達を想定しています。ノンバンクなど、

銀行筋よりも高い金利の場合は、良く検討する必要があります。)

 

仮にA行より金額1,000万円、金利2.0%の提案があったとします。

一方、B行の提案は、借入金額が1,500万円で金利は2.5%です。

A行の方が1,000万円あたりの金利は年間約5万円少なくなりますが、

貴社が年間10%の利益を残せる事業をお持ちならば、B行から1,500万円を

借り入れて事業に費やした方が、年間約32万円も資金を多く残すことができます。

よって成長過程にある企業の場合は、金利を下げる方法よりも、より多くの資金を

調達する方法を知っておくと役に立ちます。

より多くの資金を調達する方法を、お客様の事例でご説明します。X社は、2期目が

終わった時点で、メガバンクのプロパービジネスローン1,000万円の融資を受けて

います。3期目の期中に、飛び込みで来たある地方銀行の担当者より、保証付き

融資の提案を受けました。しかし、社長様は、既に取引のあるメガバンクに依頼する

のが筋だと考え、地方銀行の提案を断って、メガバンクで1,000万円の保証付き

融資を受けました。丁度この頃、弊所に財務部長のご依頼をいただきました。

金融機関との取引が増えてきたため、財務を強化したいとの申し出です。

弊所はより多くの資金を調達する方針を提案し、社長様にも賛同いただきました。

 

■ より多くの資金を調達する方法

X社は大変利益率の高いビジネスを行っており、3期目の業績はすこぶる好調です。

次の資金調達のタイミングである3期目の決算後は、保証協会で5,000万円以上の

調達も期待できます。問題はどこの金融機関で調達するかです。

金利を重視するならばメガバンクに申し込みます。しかし、メガバンクの場合は、

保証協会が承認した金額を融資して終わりです。新規取引のキャンペーンで

プロパービジネスローンを出してくれましたが、X社は、まだまだメガバンクが本格的に

プロパー融資を検討する規模には至っていません。

より多くの金額を調達するならば、プロパー融資を検討してもらえる地方銀行、

信用金庫に申し込みます。3期目の決算は好決算になる見込みであることを説明し、

保証協会の枠を与える代わりにプロパー融資を検討してもらうよう依頼します。保証

協会の調達額はどこの金融機関を経由しても基本的には同じですので、そうすることで

プロパー融資の分だけ調達額は多くなります。

 

X社の場合も、前回お断りした地方銀行にお声掛けしたところ、決算後に保証付き融資を

申し込むことを前提として、プロパー融資1,000万円を決算前に出してくれました。

『…雨が降れば傘をさすというようなことはだれでも知っています。傘もささずに

ぬれ放題というものは、よほど奇稿な人でもなければやりません。ところが、

商売や経営のこととなりますと、これがなかなか当たり前にはいかなくなります。

私心にとらわれて判断を誤り、傘もささずに歩きだすようなことを、しばしば

しがちです。…』

〔「経営のコツここなりと気づいた価値は百万両」PHP文庫・松下幸之助氏著)

■利益が出ない見込みのお店を出店しようとするご相談を前回号で紹介しました。

…以下、前回号から引用…

●年商約5億円、営業利益約1,000万円(減価償却費約1,500万円)の飲食業を

経営しておられる社長様からご相談いただきました。

◎〔社長様〕

「テナント出店の依頼を受けているので出店したいが、家賃が少々高めで損益

分岐点ギリギリかも?」、相談を名目に来所されておられますが、真意は

「出店したいので背中を押してくれ」と言わんばかりです。

○〔当事務所〕

「来年は、上手く行って年商5億7,000万円、営業利益1,000万円(現状維持)に

なりますね?」少し意地の悪い質問をさせていただきました。

○〔当事務所〕

「なぜ、利益が出そうもない出店(社長自身がそのようにおっしゃっています。)を

目論むのですか?」さらに、意地悪な質問をぶつけさせていただきました。

…中略…

◎〔社長様〕

「売上を積み上げること、店数を増やすことのみに長年邁進してきました。この新店に

ついても、何とか出店したいとの想いのみで、冷静な判断を欠いていました。」

後日このような言葉をいただきました。

…引用終わり…

※飲食業として相応の成功を収めておられる立派な社長様です。それでも時に

『当たり前』でないことを良しとしようと考えてしまいます。

■本業不振で大きな赤字に転落して、返済猶予を受けながらも、余剰人員の削減も

行わずに、長期間粘り続ける社長様がおられます。長年かけて蓄えた資産の底も

見えてきました。

※何か?何かが『当たり前』の判断を妨げているのでしょう。

■門外漢の新規事業に大きな投資をして、上手く行かずに途方に暮れる社長様も

おられます。当然考えがあったのでしょうが。

※よほどのことがない限り、10メートルの川を幅跳びで超えることはできません。

飛び越えられるとする何か?何かが働いたのでしょう。

■経営者は、時に『傘もささずに歩きだす。』こんな判断をくだします。『商売や経営の

こととなりますと、これがなかなか当たり前にはいかなくなります。』ということでしょうか。

『…もし社長がちょっと見積もりを誤ったら、パーッと百億円ぐらいは簡単に損してしまう。

だから、会社にとっていちばん危険なのは、社長だということになる。…』

〔松下幸之助氏・経営語録〕

『いちばん危険なのは社長』社長の判断ミスは命取り、とおっしゃっています。

■普通に理詰めで考えて判断する…

中小企業における唯一の決裁権者である社長が、『私心にとらわれて判断を誤り、

傘もささずに歩きだすようなことを、しばしばしがち…』であるならば、これほど危険な

ことはありません。

故に、社長は自己の判断の正当性を、時に第三者に確認することも必要です。

あれ?と思ったら、第三者にも意見を求める…この習慣が必要かもしれません。

お金のこと、経営のこと、当然税務のこと…相談者として頼りになる事務所を

目指しています。

お気軽にご相談ください。

先日、あるお客様の新規事業計画書の作成をお手伝いしました。

ある商品を仕入れてインターネットで販売する事業です。以下、お客様とのやり取りです。

私:

どれぐらい売れば黒字化する見込みですか?

お客様:

売上によって経費も変わりますので計算に苦労しています。

300万円の売上高でも経費を抑えれば利益は出ますし、500万円の売上高だと経費も

増えますので逆に赤字になる可能性も・・・

私:

売上を基準に考えるよりも経費を基準に考えてはいかがでしょうか?まずは、いくら売れそうか

ではなく、現実的にいくら経費を必要とするかを検討してみましょう。家賃や正社員の人件費など、

売上がゼロでも必ずかかる費用はどれぐらいでしょうか?

お客様:

月100万円ぐらいでしょうか。

私:

今回の事業に投資できる資金は、自己資金と借入金を合わせて700万円ですよね。

仮に全然売れなくても7か月は持ちますね。ただ、初期仕入れなども必要でしょうから、

概ね6か月以内に黒字化しないといけません。

お客様:

6か月以内ですね。どれぐらい売れば黒字化するのでしょうか?

私:

目標売上高は商品の粗利益率によって変わります。粗利益率はどれぐらい取れそうですか?

お客様:

20%は取れると思います。ただ、モールの手数料が5%かかります。

私:

では粗利益率15%で計算しますね。

【固定費100万円÷粗利益率0.15=666.6万円。】

おおよそ666万円の売上高でトントンです。実際に達成できそうな数字でしょうか。

また、そもそも固定費100万円の陣容で666万円の販売は可能でしょうか?

お客様:

いえ、今の人数だと500万円ぐらいが精一杯です。

私:

そうですか。では、固定費をもっと下げませんか?

お客様:

いえ、できれば固定費は下げたくないですね。

私:

それでは粗利益率を上げるしか方法はありませんね。仮に粗利益率を20%で計算すると、

丁度売上高が500万円で収支トントンになります。25%だと400万円でトントンです。

お客様:

それぐらいの売上高なら当初考えていた通りです。ただ、粗利益率が20%以上必要なのですね。

私:

はい、100万円の固定費で物理的に660万円の売上高を上げることができない、また、固定費は

下げない方針とのことですので、粗利益率を上げるしか方法は残っていません。

お客様:

分かりました。売上高を基準に考えるより、自分が必要とする経費から売上高を予測する方が、

現実的で分かりやすいですね。

新規事業などの読みにくい売上計画を作る時は、「いくら売れそうだ」と考えるよりも、

「いくら売らねばならない=損益分岐点」を基準に試算する方が現実的です。

このように算出した損益分岐点売上高を実現できる蓋然性を確認しましょう。

机上で論理を組み立てることはもちろん重要です。しかし、実践できなければ意味が

ありませんので、計画は売上予測からではなく、自身が投資可能な経費から作成して

みてはいかがでしょうか。

■年商約5億円、営業利益約1,000万円(減価償却費約1,500万円)の飲食業を

経営しておられる社長様からご相談いただきました。

◎〔社長様〕

「テナント出店の依頼を受けているので出店したいが、家賃が少々高めで損益分岐点

ギリギリかも?」、相談を名目に来所されておられますが、真意は「出店したいので背中を

押してくれ」と言わんばかりです。

○〔当事務所〕

「来年は、上手く行って年商5億7,000万円、営業利益1,000万円(現状維持)になり

ますね?」少し意地の悪い質問をさせていただきました。

○〔当事務所〕

「なぜ、利益が出そうもない出店(社長自身がそのようにおっしゃっています。)を目論むの

ですか?」さらに、意地悪な質問をぶつけさせていただきました。

…中略…

●〔結論〕

空きテナントへの出店、SC(ショッピングセンター)からの持ち込み案件であるにもかかわらず、

当方の意向よりも家賃が高いため、大幅な条件変更をダメもとで提示して、先方からの回答を

待つ。提示条件以外であれば出店を止める、以後の条件交渉はしない…結論に落ち着きました。

※自分自身で条件を決めて、家賃が■■万円以下なら出店する。

1円オーバーしても出店しない。この様に条件を決めて相手に判断を任せる方法もあります。

…中略…

◎〔社長様〕

「集中して使う食材▲▲を自前で調達できる仕組みを考えている。上手く行けば、新鮮な▲▲を

安く調達できるようになる。」

○〔当事務所〕

「コストダウンは金額換算でいくらぐらいになりそうですか?」

◎〔社長様〕

「500万円~700万円ぐらいにはなりそうだ。」

○〔当事務所〕

「相応な利益を積めますね。」

…中略…

○〔当事務所〕

「営業利益率は現在2%ですね。赤字店舗もありますね。」

◎〔社長様〕

「そうですね。」

○〔当事務所〕

「赤字店舗、黒字化を目指すか、退店してはどうですか?いずれにしても目処付けしませんか?」

◎〔社長様〕

「一店舗毎の見極めと対応が必要ですね。」

…中略…

●〔結論〕

魅力の無い新店舗の出店に経営資源を投入するよりも、品質向上とコストダウンが実現できそうな

▲▲の内製化に注力する。

また、一店舗毎の店舗再構築を実施する。…この結論に至りました。

※もちろん、やってみないとわかりませんが、これに注力する方がより前向きです。

◎〔社長様〕

「売上を積み上げること、店数を増やすことのみに長年邁進してきました。この新店についても、

何とか出店したいとの想いのみで、冷静な判断を欠いていました。」

後日このような言葉をいただきました。

■時には、増収をあきらめて、増益狙いに舵を取ることも必要です。

売上高は確かに重要です。否定するつもりはありません。ただ、それにも程度加減があります。

長期間、とにかく売上至上主義で、我武者羅に売上高のみを追いかけ続けることは間違えです。

この様な状況の会社様は少なくありません。

一度立ち止まってもらいたいと思っています。一旦、売上高を増やすことを止めて、売上の中身の

見直しを行ってください。

増収を長年続けてきた会社様の場合、大幅な増益に転じることもあります。