■創業者~中小企業まで、その過半は財務機能を有していません。また、間違えた考え方を鵜呑みにしておられる経営者も少なくありません。

○資金調達のための与信力が低いにもかかわらず、資金のダムを作って備えようとしません。
○(日傘しかない)金融機関に、資金が不足した時に融資を受けに(雨傘を借りに)行こうと考えています。
○利益は納税額だけではなく、今後の資金調達力を決めることになる、これを理解せず、目先の過度な節税を目指します。

※借入れ(融資)可能額は、簡易キャッシュフロー(税引き後利益+減価償却費)を基準にその概算が判定されます。これらの財務無知から来る財務無策は、『お金に苦労する経営』という結果を招くことになります。

■この様に、財務に対する備えが希薄、または、間違えた考えを持っている経営体を【財務無策症候群】と呼びます。【財務無策症候群】の経営体には、以下のような症状が現れます。

□1.金融機関との継続的な関係を築けていない。必要な時のみ頼る。
□2.資金繰りに苦労をしても、借入れは少ない方がよいと考えている。
□3.資金繰りの余裕が少ない。
□4.支払金利に(過度に)敏感である。
□5.継続的に資金繰りを管理する仕組みを持ち合わせていない。
□6.そもそも『財務』の概念を知らない。

いかがでしょうか?

■病名:【財務無策症候群】を整理します。

○財務戦略がないために、お金に苦労する経営体に甘んじる病です。
○原因
財務無知、または、財務無策が原因です。
○症状
手持ち資金が極小であっても、資金繰りに苦労しても、とにかく借入れを減らして(行わずに)経営を続けようとします。また、貸し手である金融機関の都合を理解できず、自社の都合、必要な時に必要な金額だけ貸して欲しいとの借り手の都合で行動します。少しでも歯車が狂えば、途端に危機的な状況に陥ってしまいます。早期の治療が必要です。

■『財務無策症候群』への対応は、財務の機能を持つことです。
中堅以上の企業には、必ずこの機能があります。

○対策
・金利を気にせずに『借りられる時に借りられるだけ借りる。』
・『貸し手の論理』(借り手の論理ではなく)に沿って資金調達を継続する。
・納税を恐れずに利益をだす。自己資本の充実と簡易キャッシュフローの最大化を図る。
・精度の高い6カ月~1年先までの資金繰り計画を持ち続ける。
・金融機関との継続的な関係を構築する。

■経営体は大きく5つの疾病を患っていると思っています。

◆病名1:分散症候群  …有病率50%
◆病名2:安売り症候群 …有病率50%
◆病名3:前のめり症候群…有病率30%
◆病名4:お人好し症候群…有病率60%
◆病名5:財務無策症候群…有病率70%

◎これらの疾病に対する処方箋が以下です。

【SP(Simple&Profitable)経営 基本方針】
◆第1条:すべてを単純(Simple)にすること。
◆第2条:高収益(Profitable)な企業作りを目指すこと。
◆第3条:変化に対応できる柔軟性(Flexible)のある企業体を維持すること。
◆第4条:経営判断を明確に(Clearly)にすること。
◆第5条:手持ち資金を潤沢に(Ample)に維持すること。

 

現状よりも業績を拡大しようとする時や、何か新しい事業を始めようとする時、3年から5年先までの事業計画を立てることをおすすめします。但し、事業計画の立て方を間違えると、致命的なダメージを受ける可能性があります。本日は、正しい事業計画の立て方について解説します。

◆売上計画を最初に立ててはいけません。
計画を立てるとき、まずは売上の計画から立てる方が圧倒的に多いのではないでしょうか。しかし、計画の中で最も思い通りにいかないのが売上高です。思い通りにいかない売上高を基準にした計画に取り組むのは大変危険です。

例えば、初年度で5,000万円の売上高が見込めると計画したとします。5,000万円売れれば、原価を2,500万円、人件費を1,000万円、広告宣伝費を500万円かけても、計画上は1,000万円残ります。よって、計画通りに5,000万円の売上高を見込んだ仕入、人材雇用や広告宣伝を行うと…
費用は計画通りだが、売上高が計画通りにいかず、たちまち資金繰りが逼迫する、という事態に陥ります。

◆投資をするからリターンがあります。
売上高は結果です。仕入、営業マンの雇用、設備の投入などが原因となって、売上高という結果が生まれます。損益計算書は、結果である売上高が先に来ていますので勘違いしがちですが、実際は費用が先行し、後から売上が立ってきます。計画を立てる際に、「リターンがこれぐらい見込めるから、これだけ投資をしよう。」と考えるのではなく、「現実的に投資できる金額はこれぐらいだから、リターンはこれぐらい見込めるのではないか。」と考える方が現実的です。「投資をするからそれに見合ったリターンがある。」というシンプルな原理原則を忘れてはなりません。

◆いくら投資できるか?どこに投資すべきか?を考える。
計画を立てる時に最初に考えるべきことは、「自社はどれぐらいの金額を投資に回すことができるのか?」ということです。
たとえ、3年目の売上高が10億円、費用が8億円で利益が2億円となる計画を立てても、8億円の費用を費やす実力が自社に備わっていなければ単なる空想です。資金調達力も含めて、自社の投資能力を正確に把握する必要があります。次に、その資金をどこに投資すれば一番効率よく利益をあげられるか、について考えましょう。

◆具体的な計画の立て方。
1.自社が投資可能な金額を把握する。
2.1の金額を、「何に」「誰に」使えば最も有効かを考える。
3.1の金額を設備投資と6か月程度の費用に振り分ける。
4.3の金額を費やした時、6か月以内に損益分岐点売上高を達成できるかどうかを検証する。
5.自信がなければ投資金額を小さくして損益分岐点を下げ、再度検証する。(繰り返し。)

妄想の売上計画から計画を立て始めるのではなく、現実的な投資可能額から計画を立て始めてください。致命的なダメージを受けるリスクが小さくなります。

事業体の収益や拡張性は、事業立地(誰に何を売るのか?)とビジネスモデルで大半が決まります。マネージメントやマーケティングの上手下手は、それらの下位の概念です。
マネージメントやマーケティングを考える前に、事業立地(誰に何を売るのか?)やビジネスモデルに着眼してください。
※時間が経過するほど、事業立地(誰に何を売るのか?)とビジネスモデルの差が顕在化します。

●貴社は…
1.受注型ですか?…
2.プロダクト型ですか?…
3.ストアー型ですか?…
4.プラットフォーム型を狙っていますか?…

◆受注型とは…
建設業などの請負業、下請けと呼ばれる製造業、個別事案ごとに対応するコンサルタント業等、顧客の要望を受けて個別に製品やサービスを提供するビジネスの型です。

○突出した技術やスキル、または対応能力(キャパシティー)を有している企業は、価格競争に巻き込まれにくく、大きな収益を上げています。

△一方、顧客ごとの対応が必要になり、ビジネスとしての定型化が難しい、また、売上が発注先の意向に左右されやすいために、ビジネスとしての拡張性に難があると言われています。

△突出した技術やスキル、または対応能力(キャパシティー)を有している企業以外は、発注元の意向に沿った納期・価格が設定されてしまい、価格主導権を握れません。

◎ボリュームの大きい(単価の高い)建設業等を除いては、BIGカンパニーになりにくいビジネスモデルです。

◆プロダクト型とは…
自らのサービスを商品化・定型化して、顧客に採用(購入)の可否を選択してもらうビジネス形態をプロダクト型と言います。
もちろん、提供する商品やサービスが選ばれるに値する価値を有していなくてはなりません。故に、徹底的に磨き込まれた強い商品・サービスでなければなりません。一点特化・絞り込みが必要です。

○徹底的に磨き込まれた強い商品・サービスを自らの意志で開発し販売するこの型は、経営が効率的で、収益性と拡張性を担保できます。何より、価格主導権を自社が握ることになります。

◎エクセレント企業の多くは、(配下に多くの受注型企業を抱えた)このビジネスモデルです。

●一般論として、事業体は受注型からプロダクト型に進化していきます。
・受注生産から自社ブランドの製品開発・販売への移行は正統派の戦略です。受注型の建売建設業から自社ブランドのハウスメーカーへの移行例は多くみられます。
・個別対応のコンサルタント会社は、ノウハウを商品化してプロダクト型に移行します。

◆ストアー型とは…
プロダクト型の横への拡張型をストアー型と呼びます。プロダクトで成功した事業体は、規模の拡大のために、総じて横展開を始めます。
力があれば、その業容を拡大できますが、力が無ければ、あれも、これも…総花的で、弱い商品・サービスの集合体になり下がります。商品・サービスの品ぞろえは、自社の実力との兼ね合い、力相応でなければなりません。総じて力以上に幅を広げすぎるケースが多いように感じます。

◎規模の拡大と共に、収益力の低下が懸念されるビジネスモデルです。

●私見ですが、『選択と集中』とは、ストアー型をプロダクト型に戻すと解釈しています。

◆プラットフォーム型とは…
『関連事業者や顧客が集まる「場」を自社が創る』(※神田昌典氏:「あなたの会社が最速で変わる7つの戦略」フォレスト出版から引用)モデルをプラットフォーム型と呼びます。
精鋭の経営者は、このプラットフォーム型を狙っています。
フェイスブック、楽天、アマゾン、アップル…すべてプラットフォーム型です。
容易ではありませんが、自社の極めてニッチな分野に限定すれば、実現できる可能性はあります。狙ってみましょう。

事業体の収益や拡張性は、事業立地(誰に何を売るのか?)とビジネスモデルで大半が決まります。マネージメントやマーケティングの上手下手は、それらの下位の概念です。
マネージメントやマーケティングを考える前に、自社の事業立地(誰に何を売るのか?)やビジネスモデルを検証してください。

金融機関から初めてプロパー融資の提案を受けるときにありがちなのは、返済期間10か月など超短期の融資です。金融機関の担当者は、「取り敢えず実績を作ってもらわないと・・・」というセリフとともに提案を持ってきます。

先日もある社長様から、「1,000万円の10回払いの融資を提案されたが、使いようがないので断ったほうが良いですよね?」というご相談をお受けしました。そこで、本当に使いようがないのか、シミュレーションをしてみました。

同社の取引条件は、即金で仕入れ、在庫として滞留している期間が最長1か月、売上債権を回収するまでの期間が約1か月となっています。粗利益率は約50%のビジネスです。

◆借入月の収支は以下となります。
入:借入金1,000万円
出:仕入500万円
差引:+500万円

◆翌月の収支は以下となります。
入:0万円
出:仕入500万円
出:借入金返済100万円
差引:-600万円

◆3か月から11か月後までの収支は以下となります。
入:売上回収金1,000万円
出:仕入500万円
出:営業経費支払い400万円
出:借入金返済100万円
差引:±0円

◆12か月後からの収支は以下となります。
入:売上金回収1,000万円
出:仕入500万円
出:営業経費支払い400万円
差引:+100万円

1,000万円10回払いの融資を受けて、毎月500万円の仕入を行い、営業経費を400万円かけて月商1,000万円の売上高を確保することができれば、毎月100万円を返済しながら、1年後には、年商ベースで1億2,000万円の売上増加、1,200万円の営業利益増加を実現できます。(概算のシミュレーションですので金利は考慮していません。)

もちろん思い通りに売上高が上がるとは限りませんので、慎重な判断が求められますが、無下にお断りする話でもなさそうです。直観的に結論を下すより、資金シミュレーションを実際にやってみてから判断した方が、正しい結論が導き出せそうです。

■A氏、B氏…Z氏に、これから飲食店を出店するとして、そのお店作りについて(イメージを)聞いてみました。
※他の業種でも同じです。読み替えて考えてください。

◆出店するお店の規模をイメージして教えてください。
A氏:「路地裏にあるカウンター席が5席と、4人掛けのテーブル席が二つの小料理屋さんです。」
B氏:「…」
Z氏:「繁華街の路面に面した100坪120席のレストランです。」

◆出店にいくら必要ですか?
A氏:「運転資金を入れて300万円ぐらいでしょうか。」
B氏:「…」
Z氏:「保証金等も含めると1億円強でしょうか。」

◆いくら位売れますか?
A氏:「月商150万円位売りたい。」
B氏:「…」
Z氏:「月商2,000万円は超えたい。」

◆利益はどれ位出ますか。
A氏:「生活費として月に30万円位は残ります。」
B氏:「…」
Z氏:「営業利益で月に200万円位は出したい。」

同じ飲食店でも、人によってイメージは百人百様です。このイメージは何から形成されているのでしょうか?

■ベンチマークとは…
人は無意識にベンチマークしています。無意識にベンチマークされたイメージを基準に、自分の将来を決めています。
A氏は、自身がイメージしたお店を作り、イメージ通りの売上と利益を目指します。
Z氏も、自身がイメージしたお店作りを目指します。イメージした売上と利益を求めます。
「人間にはイメージを実現する能力が備わっている。」偉人の名言です。その通りだと思います。

※ベンチマーク (英: benchmark) は、本来は測量において利用する水準点を示す語。転じて金融、資産運用などや株式投資における指標銘柄など、比較のために用いる指標を意味する。また、広く社会の物事のシステムのあり方や規範としての水準や基準などを意味する。(ウィキペディアより引用)

■ベンチマークする対象が重要です。
月商150万円の飲食店のオーナーが、月商500万円の新店舗を出店したいとするならば、ご自身のイメージを大きく変えねばなりません。
店作り、立地、投資、メニュー構成、オペレーション、売上、利益…すべてが既存店とは異なります。自分のイメージに頼って新店舗を開発してしまうと、限りなく月商150万円の既存店に近づいてしまいます。
ご自身を、既存店をベンチマークしてしまっているからです。

■今の自社を、今日の自分をベンチマークしてはいけません。
月商150万円の飲食店のオーナーが、月商500万円の新店舗を出店したいとするならば、今の自店、今の自分をベンチマークしてはいけません。月商500万円の店舗を見つけて、それを確実にベンチ―マークしなければなりません。

■ベンチマークすべき対象を見つけて研究を続けること、経営者の勉強すべきテーマの一つはこれです。

1.ベンチマークすべき対象を探し続けてください。見つけてください。

2.出来る限りの情報を集めてください。
・信用情報を取り寄せて、モデル企業の収益構造を理解してください。
・上場企業なら事業内容が詳しく適時開示されています。
・コンシューマー向けの企業なら、顧客になって使ってみてください。
・できれば成長のプロセスを時系列に調べてください。
等々、
ビジネスモデルと成長のプロセスを理解することが重要です。

3.良いところを探して真似てください。
・ビジネスモデルを研究してください。
・成長のプロセスを研究してください。
・長所と弱点を自分なりに理解してください。
・良いところを取り入れてください。
※モデル企業をベンチマークする方法は、ごく一般的に行われる手法です。コンサル会社がクライアント企業の経営戦略を練るときにも活用します。

今の自社を、今日の自分をベンチマークしてはいけません。停滞してしまう大きな原因の一つはこれです。

日本の金融機関は、長らく「金融庁マニュアル」に縛られてきました。金融庁マニュアルの本来の目的は、金融機関が保有している不良債権をあぶりだすことでしたが、融資審査に多くの弊害も生み出すこととなりました。「決算書至上主義」、「どこの銀行に行っても答えは同じ」という弊害です。

各金融機関は、金融庁マニュアルに則り、一斉に「格付」を導入しました。格付とは、融資先を決算内容に基づいてランク付けする仕組みですが、決算数値に基づいて機械的に判定されますので、決算書の数値が悪ければ、例え将来性があると分かっていても、融資を行うのが大変難しくなってしまいました。

また、全ての金融機関が同じマニュアルを基にしていますので、どこの金融機関に融資を依頼しても結果は同じという傾向も見られました。金融機関の裁量が小さくなり、極端に言えば、決算書を見て機械的に融資の可否を判断している状況です。

しかし、最近の金融庁の動向を見ていますと、融資の審査基準として、「事業性の評価」を取り入れようとするレポートが多く出されています。決算数値だけではなく、事業も評価しようという動きです。現場レベルに落とし込まれるのはまだ先だと思いますが、企業にとっては、「決算数値が悪くても、事業性を評価して融資をしてくれる金融機関が現れるかもしれない。」という可能性を秘めています。

それでは、「事業性の評価」はどのようにして行うつもりでしょうか?各種レポートから読み取ると、「労働生産性」や「従業員数の増減」などから、事業性の良し悪しを見極めようとしているように感じます。しかし、「企業の事業性を評価する。」ことは、それ程簡単ではありません。やはり企業側からの補足が必要になります。

もちろん今までも自社の事業内容や将来性について理解してもらうことは重要でした。しかし、決算書一辺倒だった今までに比べて、事業性の評価が加味されることになれば、自社の事業内容や将来性を説明することが、ますます重要になります。

金融機関は察してはくれません。また、口頭での伝達も十分ではありません。金融機関の評価ポイントを押さえた説明資料の作成等、自社の事業内容や将来性をしっかりと伝える力が求められます。

■創業して最初の壁、デスバレー※を越えられない理由は大きく二つです。

1.事業自体が本質的に的外れであるケース。
実はこのケースは案外少ないように感じます。それなりに考えて、それなりの経験を踏まえた創業であるならば、その成功度合いは別にして、何とかやって行けるはずです。

2.事業の立ち上げに想定以上の時間を費やしてしまい、立ち上がるまで資金が続かないために途中で頓挫するケース。
多いのはこのケースです。事業の立ち上げに対する想定が甘すぎる、楽観主義が原因です。

※デスバレー(死の谷)とは…
起業から一定期間、赤字が続く時期があります。そして、ある段階でその赤字幅が縮小しながら黒字化に向かいます。黒字転換して安定できたら起業はひとまず成功です。起業から黒字転換するまでの期間をデスバレー(死の谷)と呼びます。

■4つの楽観主義…

◆1.『計画通りに進む』との楽観主義!
◆2.『少ない費用で立ち上がる』との楽観主義!
◆3.『資金が必要になればお金は借りられる』との楽観主義!
◆4.『安くしても売れればやって行ける』との楽観主義!

◆1.『計画通りに進む』との楽観主義!
・10期目の会社が立てた11期目の計画、概ね計画通りに進捗するでしょう。
・3期目の会社が立てた4期目の計画、計画の見積もりには不安が残ります。
・創業時に立案した1期目の計画、過度に保守的に見積もらない限り当たりません。
計画通りに事業は進まないのです。これが実態です。それでも計画は目安として必要です。目安を立てて、ずれを確認しながら事業を運営するために必要です。

◆2.『少ない費用で立ち上がる』との楽観主義!
計画通りに進捗しなかったとき、それを解決するのは時間です。
当初立てた仮説を修正しながら試行錯誤を繰り返します。事業自体が的外れでなければ、時間を要しながらも着地します。計画に対して余分に費やした時間を埋められるのは資金・お金しかありません。資金不足で頓挫する、これは時間を稼ぐ資金を確保できないとの意味です。

◆3.『資金が必要になればお金は借りられる』との楽観主義!
計画通りに進まずに、時間が必要、時間を確保するための資金が必要になった折に、金融機関に駆け込んで、資金を求めようとします。これは原則間違えです。難解です。計画が遅れた、時間を掛ければ軌道に乗る、この蓋然性の説明は容易ではありません。金融機関は原則、足元の進捗・実績を基準に、将来生み出すキャッシュフローを勘案して融資の可否を判断します。(金融機関が有するのは「日傘」であって「雨傘」ではありません。)

◎どうすればよいか…計画をしっかり立案します。一方で、その計画を鵜呑みにせずに計画が遅れることを想定して資金を最大限調達し続けること、これが正解です。

◆4.『安くしても売れればやって行ける』との楽観主義!
「とにかく売れさえすれば何とかなる」、このように考える社長様も少なくありません。
「売れなければ何ともならない・始まらない」は正解ですが、「とにかく売れさえすれば何とかなる」は正しくありません。
一定額以上売れた時には一定以上の利益を捻出できる値決め・価格設定は経営上極めて重要です。手間暇をしっかり掛けて、よくよく考えて、シミュレーションをしっかり行って、腫物に触るように慎重に決めてください。とにかく値決めに対しては全身全霊を注いでください。

◎どうすればよいか…安売りは絶対にしない、価格を売るための道具に使わない、安売りでしか勝負できない事業なら、事業自体を再考してください。

■4つの楽観主義を改めてください。

◆1.『計画通りに進む』との楽観主義!
◎回答…計画通りには進捗しません。ほぼ遅れます。

◆2.『少ない費用で立ち上がる』との楽観主義!
◎回答…計画の遅れは資金で埋めるしか方法がありません。

◆3.『資金が必要になればお金は借りられる』との楽観主義!
◎回答…資金は必要なときに借りるのではなく、借りられるときに借りてください。

◆4.『安くしても売れればやって行ける』との楽観主義!
◎回答…売上至上主義ではなく、利益至上主義で経営してください。

知識を役立てる機会はないかもしれませんが、もし、現在利用している信用保証協会の保証付き融資が返済できなくなった場合、その後の手続きがどのように進められるかをご説明します。

先日あったご相談内容です。「信用保証協会の保証付き融資を銀行から受けているが、業績が良くないためリスケをしており、さらに、金利すら延滞している。銀行の担当者から保証協会に事故報告を上げると言われたが、何か良い調達方法はないか?」

正直この段階でご相談に来ていただいても手の施しようがありません。新たな調達は難しい旨を丁寧にご説明しました。すると、社長様は吹っ切れた様子になり、今度は、「このまま支払えなかった場合はどうなるのか?」ということについて、熱心
にご質問を始められました。

Q1.このまま支払えない場合はどうなるのか?
A1.延滞が続くと最終的には代位弁済となります。

Q2.代位弁済とは何か?
A2.貴社の借入については、信用保証協会が保証をしていますので、貴社が返済できなくなった時点で、信用保証協会が貴社の代わりに銀行に残債を支払います。これを代位弁済といいます。

Q3.代位弁済の手続きは自分でするのか?
A3.代位弁済は、銀行から信用保証協会に請求するものですので、貴社が手続きをすることはありません。

Q4.代位弁済の後はどうなるのか?
A4.銀行の借入がそのまま信用保証協会に移る形になりますので、代位弁済後は銀行ではなく、信用保証協会に対して返済を行っていきます。

Q5.返済金額はいくらか?
A5.担保を差し入れている場合は、担保を処分して借入金の返済に充てる方向で手続きが進められます。担保を処分してもなお残った残債や、そもそも無担保で借り入れている場合は、利益の状況にあわせて返済額が決まります。

Q6.代位弁済というのは倒産のことか?
A6.倒産ではありません。代位弁済となっても、その後信用保証協会に少しずつ返済をしながら、事業を継続している企業様は多くいらっしゃいます。

最後は、「事業は継続できるのですね。」と少し安心されたご様子でした。

業績が悪化し、支払いに追われている状態では、平静を保つのも難しくなります。しかし、今後起きることが分かっていれば、多少なりとも不安をやわらげることができます。事業の失敗は誰にでも起こりうることです。感情ではなく知識に頼ってください。

■経営がうまく行っている会社様には特徴があります。

1.『競合しない』ビジネスを構築できています。
2.『利益を確保できる』利益率が設定されています。
3.『安売りをしない』との決意が固いです。
4.『売上至上主義』ではありません。
また、これらの基本ルールを死守するための勉強に熱心に取り組んでおられます。勉強熱心です。

◆競合しない!
競合を出来るだけ回避する、ビジネスを設計する時に最初に考慮すべき事柄です。
同じような商品・サービスを同じように売っていても、上手く行かないのは当然です。
違う商品・サービスを、違う売り方で、店舗ビジネスでは違う場所で売る、この原理原則をしっかり確認しましょう。
競合の真ん中で戦う、どんなに頑張り続けても上手く行かない(売れない)のはこのためかもしれません。

◆利益を確保する!
利益を確保する、ビジネスを設計する時に極めて重要な視点です。
同じ投資をして、同じ経費で、同じ売り上げを上げても、その粗利益率が30%か40%か50%か、この違いは利益に格段の差をもたらします。その後の経営が大きく変わります。
儲からない利益率を設定したがために、どんなに頑張り続けても上手く行かない(利益がでない)のはこのためかもしれません。

◆安売りをしない!
安売りをしない、販売戦略から安売りの発想を捨ててください。
売上をいくら伸ばしても、その価格を割り引いてしまっては何の意味もありません。10%の値引きは、最初から利益を10%放棄することと同義です。
忙しいのに儲からない状況「繁盛貧乏」に陥るのは、安売りをするから、または、そもそも値決めが安すぎる(※当初から安売り状態)からかもしれません。

◆売上至上主義に陥らない!
売上ではなく、利益を優先して求めて(管理)ください。
「いくら売れそうか?」「いくら売れた?」ではなく、「いくら利益が出そうか?」「いくら利益が出た?」で管理してください。
社長は「売上」ではなく「利益」を求めてください。赤字に陥るのは、そもそも「利益」を最初から求めて(管理)いないからかもしれません。

○上手く行かない経営を行っている会社は、案外単純です。上記の様な基本を外しているからです。軌道を修正してください。
○そもそも上記の基本を外したプラン?で創業を企てる創業者様も少なくありません。見直してください。

■『経営の方針』、その要諦は『繁盛貧乏に陥らない』ことです。再度ご確認ください。

◆力相応オンリーワンを目指す。
→どこにでもあるネタをビジネスにしない。一工夫、二工夫…
◆低粗利益率のビジネスは行わない。
→粗利益率30%未満はおすすめしない。
小資本企業には難解です。
◆価格を売るための道具に使わない。
→安売りはしない。
◆売上至上主義に陥らない。
→売上よりも利益を優先する。

この機会にご自身のビジネスモデルを点検してください。
特に、有店舗型のビジネスは、その立地(競合状況)によって業績が大きく変わります。また、立地の置き換えは容易ではありません。立地の選定には多くのエネルギーを費やしてくださ
い。

「経営者の仕事とは・・・」多くの場面で語られる大変重要なテーマです。その中で、概ね支持

されている意見は、「現場仕事で忙しくするのは経営者の仕事ではない。」というものではない

でしょうか。私も全く異論はありません。ただ、経営資源が不足する中小企業にとって、考え方は

正しくても実践するのは容易ではありません。

 

新しい事業の構築は簡単ではありませんので、殆どの経営者様は、他人任せにせず自ら現場に

入って事業をスタートさせるはずです。その後、現場で陣頭指揮を取りながら事業の構築に取り組み

ますが、多くの中小企業経営者様は、この状態から脱却できずに苦しんでいるように感じます。

この状態の時に経営者が現場から離れると、たちまち業績が悪化します。思い切って従業員に任せ

ない限り、いつまでたっても従業員は育ちませんが、その間の業績悪化を容認できるほど、資金的な

余裕はありません。

中小企業の経営者様が現場から離れられないのは、「資金的な余裕がないこと。」もひとつの要因

ではないでしょうか。

 

先日、飲食店を2店舗経営している顧問先様の資金調達を行いました。社長様は、調達した資金で

3店舗目を出店したいと考えていましたが、私は、財務部長として、「現場を離れるために既存

店舗に力を入れてはどうか。」と提案しました。無理に拡大をするよりも、じっくりと事業を作り

込んだ方が良いと考えたためです。同社の社長様は、1号店の店長として今でも現場で

頑張っています。将来的には経営に専念して、多店舗化を目指したいと考えていますが、

従業員に任せている2店舗目の業績があまり良くないため、2号店の業績をカバーするために、

やむを得ず1号店で頑張っている状態です。

このような状態で3店舗目を出してしまうと、ますます現場から離れなくなります。

最終的には、3号店の店長として考えていた人材を1号店の店長に据え、社長は両店舗の店長

教育に専念することになりました。1号店の業績が悪化する可能性もありますが、資金的には

当面耐えられる状況です。

 

経営者が現場から離れるためには、従業員の成長を含めた事業の作りこみが必須です。

事業を作りこむためには時間が必要です。その解決方法の一つとして、資金を多く持つことが、

時間的猶予を得ることになるのではないでしょうか。