当事務所、『新・税理士』事務所が取組む財務支援業務について解説いたします。ご理解の上、存分にご活用ください。

■当事務所、『新・税理士』が取組む財務支援業務は…

1.スポット業務として行う資金調達支援(だけ)ではありません。
⇒(正)継続的な財務機能の充足、財務部長の代行業務です。
2.資金に困った企業様の救済支援(が本質)ではありません。
⇒(正)成長企業の財務部長としての伴走です。
3.資金調達時に、社長様金融機関訪問時の同行を行うことではありません。
⇒(正)財務部長の代行者として、主体的に金融機関と関わります。

◆クライアントには、財務支援の指針をはっきりとお示ししています。

『新・税理士宣言(クライアント向け)』…
○税理士は税務のプロです。
◎我々『新・税理士』は、税務+財務・金融のプロです。
○税理士は、税務申告のために経営数字を預かります。
◎我々『新・税理士』は、税務顧問業務にプラスして…つづく
※詳細はお問合せください。

■クライアントに提示する財務の指針も明確です。

1.「必要な時に必要な資金を調達する」(借り手の論理)ではありません。
⇒(正)「借りられる時に借りられるだけ借りる」(貸し手の論理)の推奨です。
※借り手の論理が通用しにくいからです。

◆クライアントに提示すべき『財務の方針』、その要諦は『お金に困らない経営を目指していただく』ことです。

○手持ち資金の最大化を図る。
→金利を気にせずに『借りられる時に借りられるだけ借りる。』
○適時・継続的に借入れを行う。
→『貸し手の論理』(借り手の論理ではなく)に沿って資金
調達を継続する。
○利益を最大限だす。
→納税を恐れずに利益をだす。自己資本の充実と簡易キャッシュフローの最大化を図る。
○継続的な資金管理を行う。
→精度の高い6カ月~1年先までの資金繰り計画を持ち続ける。
○金融機関へ財務情報を適時提供する。
→金融機関との窓口になって、モニタリング機能を充足する。

■金融機関との関係を構築するために…

1.金融機関とのご縁を求めて訪問することではありません。
⇒(正)クライアントの財務部長として、金融機関との継続的な関係を構築することです。
⇒(正)資金調達時には財務部長として、資料作りも含めて主体的に関わることです。

◆金融機関には、当事務所のスタンスをはっきりとお示ししています。

『新・税理士宣言(金融機関様向け)』…
◎我々『新・税理士』は【ミッション】
・クライアント企業の金融支援をミッションに掲げています。
・金融機関様との良好な関係構築を目指しています。
◎我々『新・税理士』は【新しい機能】
税務顧問業務にプラスして、『資金繰り円滑化支援業務(キャッシュフローの番人業務)』を引き受けています。継続的にお預かりするクライアントの経営数字を税務申告のためだけではなく、資金繰りの円滑化のためにも活用しています。…つづく
※詳細はお問合せください。

■当事務所、『新・税理士』が行う財務支援業務は、クライアントが『お金に困らない経営を目指す』ための継続的な機能、財務部長の代行業務です。

●スポット業務として行う資金調達支援(だけ)ではありません。
●資金に困った会社様の救済支援(が本質)ではありません。
●社長様金融機関訪問時の同行を行うことではありません。

税理士(税務の専門家)としてだけではなく、『新・税理士』(税務+財務の専門家)としてのご用命もお待ちしております。
皆様方の、金融機関対応を含む財務支援業務についても、深い知見と経験を有しております。
当事務所は『税理士』ではなく、『新・税理士』です。

2008年に起きたリーマン・ショックを受け、中小企業の倒産や破産を防ぐ目的として、2009年に中小企業金融円滑化法が実施されました。同法に基づいて、多くの中小企業様が借入返済のリスケジュールを実施することとなりましたが、現在までリスケジュールを継続している企業様も多くいらっしゃいます。

リスケジュールは、返済負担が軽減されるというメリットがある一方で、リスケジュールを継続している間は、新規融資を受けられないという大きなデメリットがあります。一度リスケジュールを行うと、中々正常化できない要因はここにあると思います。

経営状況が悪化した際に、取り敢えず止血をするという処置は全く間違っていません。しかし、弱った体を回復させるためには、エネルギーの注入が必要不可欠です。事実、リスケジュールを実施した企業様は、売上高が毎期じりじりと下がっていく傾向が見受けられます。新たな資金が入らないため、思い切った投資ができないことが要因のひとつです。

もし、貴社が、「一定の割合で業績は回復したが、元の金額を返済できるほどではないため、リスケジュールを現在も継続している。」という状態ならば、リスケジュールからの脱却に挑戦できるかもしれません。

リスケジュールから脱却する方法は、「返済を元の金額に戻す」だけではありません。元の返済額より少ない金額でも、長期の返済に借換えすることができれば、脱却することができます。元の返済額が100万円で、現在は30万円の返済しかできていないとしても、仮に3,000万円の借入残高があった場合、30万円×100回払いの借入に借換えできれば正常先となります。

ただ、「リスケジュールが継続できれば、現状の資金繰りは問題ない。」という企業様からは、「もうこれ以上借入は増やしたくない。」「借りることができても返済ができるか不安。」「現状維持(リスケ状態)で構わない。」という声もございます。確かに、借入で苦労されたので慎重になるのは当然のことと思います。しかし、最も気にしていただきたいのは、何の投資もせずに数年後も今と同じキャッシュフローを確保できるか
という点です。過去数年の決算書を並べて見て、わずかでも売上が減少傾向にあるならば、今のうちに手を打っておくべきだと思います。

信用保証協会も、リスケジュールから脱却するための保証制度を用意して、正常化を支援しようとしています。勇気を持って、正常化にチャレンジしましょう。

■営業時間・営業日の短縮…

○店舗ビジネスの経営者は、その店舗を最大限効率的に活用しようと考えます。当然です。では、効率的とはどのように運用することでしょうか?多くの経営者が考える効率的とは…できるだけ長時間店舗を営業すること、家賃は同じだから、お客様が来店されるから等々が理由です。長時間営業しても、家賃が固定費で同じだから、本当でしょうか?営業すれば人件費という大きな経費が必要になりますが、営業しなければ人件費は発生しません。(休日に充当できます。)店舗を最大限効率的に活用することは、イコール、できるだけ長時間営業することではありません。この視点を重視してください。

○店舗ビジネスにおいて営業時間をいかに短縮するか?これが大きなテーマです。
居酒屋を経営しているとします。給料日前の月曜日を休みにしたらどうなりますか?時間帯別売上高、曜日別、時期別(給料日前等)の売上高を確認してください。ランクを付けてください。繁忙期の繁忙日をSランクとするなら、閑散期の閑散日はCかDランクになるはずです。Sランク~Dランクまで、すべて営業することが、本当に有効活用なのでしょうか。

◎できるだけ営業時間・営業日を短縮する、この『絞り込む』経営が必要になってきました。
経営に必要なのは、その売上高ではなく、その利益です。3万円を売り上げるために、それを上回る経費を投入している営業を止めましょう。減収になっても、増益になる経営を目指してください。

■アイテムを絞り込む…

○取り扱いアイテム数をいかにして絞り込むか?これが大きなテーマです。
居酒屋を経営しているとします。居酒屋が10アイテムで経営できるはずありません。50アイテム、100アイテム…でしょうか。
ここで重要なのは以下の2点です。
◆1.101アイテムよりも、100アイテムの方が効率的で美味しくなるということです。一つでも少ない方が、生産性と品質が向上します。100アイテムと101アイテムでは誤差の範囲でしょうが、この差が大きくなればなるほど、顕在化します。
◆2.時間の経過とともに、アイテム数は増える傾向にあるということです。メニューを絞り込む・止めることは難しく、温存すること、増やすことは容易だからです。商品別の売上高を確認してください。ランクを付けてください。Sランク~Dランクまで、すべて本当に必要でしょうか。3つカットして1つ追加する、全体で数十%減らすぐらいの思い切った目標を立てて取り組んでください。

◎できるだけアイテム数を減らす、この『絞り込む』経営が必要になってきました。
100アイテムの生産性と品質を維持しながら提供するオペレーションと、80アイテムのそれでは、その収益性等すべてに雲泥の差が生まれます。少ない方がよい、この原理・原則を忘れないでください。

■価格を見直す、値上げする…

○価格への弱腰姿勢を是正する、経営の大きなテーマです。
集客商品だから、目玉商品だから、原価率は高いが価格が高いので粗利益額は確保できるから、これらをフック商品にして…等々、安売りを正当化する理由はいくらでも見つかります。
安くするための理由ではなく、高くするための工夫に知恵を絞ってください。

◎価格をすべて見直してください。
値決めが経営に与えるインパクトを過小評価してはいけません。
一品一品丁寧に、材料原価と手間原価(生産性)を勘案しながら、1円単位で値決めを再考してください。アイテムの絞り込みと同時に行うと効率的かもしれません。また、深夜の営業時間帯には特別料金を加算することも重要です。

必要な原価・コストを織り込んだ上で、必要な売上高を確保できないビジネスは確実に淘汰されます。サービス残業も近未来には確実になくなるはずです。法で規制されます。従業員がいなくなります。そのためには、売上至上主義、頑張りすぎる経営からの脱却が必要なようです。残された時間は限られています。
『営業時間・営業日の短縮』・『アイテムを絞り込む』・『価格を見直す、値上げする』この3つのテーマを実行に移してください。

コラムをよく読んでいただいているお客様から次のようなお話がありました。

「先日融資を申し込みに行った際、資金の使い道を聞かれたので、『手元資金を増やすため。』と答えた。すると担当者から、『そのような目的での融資はできない。』と言われた。このコラムではいつも、借入を活用して手元資金を増やすようにと言っているが・・」

おっしゃる通り、実は、「手元資金を増やすため」という融資目的は銀行にはありません。借入をする企業側から見ると、なぜ「運転資金」なのに借してもらえないのかと不思議に感じるかもしれませんが、銀行側では、「運転資金」の定義が明確に決められており、「手元資金を増やす」というのは、この運転資金の定義から外れています。

なぜ銀行は運転資金を定義して、それ以上の融資をしないようにしているのでしょうか。理由のひとつは、もし、「手元キャッシュが潤沢にあり、設備投資も全く行う予定がない。」という企業に融資をした場合、余った資金が株式や不動産などの投機に流れ、バブル景気を誘発する可能性が高まります。また、見方によっては、銀行は強い立場を利用して、お金のいらない企業に無理やり融資を受けさせていると捉えられる可能性もあります。

よって、銀行がプロパーで運転資金を融資する場合は、その企業が本当に必要な経常運転資金の額を算出し、この金額を大きく超えないようにします。以下はプロパーで運転資金の融資を検討する場合の稟議書の記入例です。

【資金使途】
(2017年1月期 貸借対照表より)
所要運転資金6,000万円=営業上の売上債権5,000万円+棚卸資産3,000万円-営業上の買入債務2,000万円

【調達方法】
所要運転資金の調達6,000万円=既存貸出3,000万円+本件貸出3,000万円

このように、本当に必要な経常運転資金の額を算出するため、実需の範囲内でしか融資を受けられません。よって、プロパー融資で手元資金を増やすことは理論上困難です。

しかし、日本政策金融公庫や保証協会の運転資金の考え方は全く違います。こちらの運転資金の考え方は、「月商の〇か月分」というものです。業種や経営成績にもよりますが、概ね2か月程度です。保証付き融資で運転資金の融資を検討する場合の稟議書の記入例は以下となります。

【資金使途】
仕入、人件費などの諸払いに充当

【調達方法】
本件により全額

プロパーに比べると大変アバウトです。月商の2か月をベースにしているため、実際に必要な経常運転資金の額より多くの融資を受けられる可能性があります。

以上のことから、借入を活用して手元資金を増やす最良の方策は、実際に必要な運転資金はプロパー融資で調達することです。
そうすれば、日本政策金融公庫や保証協会の借入は、理論上、その分が全額手元資金に上積みされます。

■資金余力がほとんど無い計画を立てて、その計画通りに執行すると、短期間で破たんする可能性が高くなります。

○例)
自己資金数百万円、創業融資600万円~800万円(自己資金を勘案すると、通常はこれが創業融資の限度額です。)、総事業予算約1,000万円の事業体が、この総予算をすべてつぎ込んでデスバレーを越える計画を立案した時、その売上が計画を下回れば途端に経営危機に陥ります。自己資金数百万円、創業融資600万円~800万円、総事業予算約1,000万円の事業体は、数百万円以上の余力を残して立ち上がる計画を立案すべきです。売上の進捗が計画に対して遅れた時に、この余力資金でリカバーすることができます。

○そもそも、創業1期目に、計画通りの売上を作れるケースは稀です。極端に保守的な計画を立てれば別ですが。成功者の大半は「紆余曲折を経て、何とか事業が立ち上がった」と言っています。当初に想定した「仮説」通りに事業は立ち上がらない、この達観が必要です。

◆創業事業計画に対する誤解とは…

第20期目の会社が第21期目の計画を立案した時、その計画はよほどの冒険でもしない限り、  10%も狂わないはずです。第3期目の会社が第4期目の計画を立案した時、その実現の蓋然性には、まだまだ多くの疑問が残っています。創業時に作成する創業1期目の創業事業計画書の精度は?大きな疑問が残ります。当然です。創業事業計画とはそのようなものです。それでも、大きな指針・目安として必要です。この目
安とのかい離を確認しながら事業を進めるために必要です。
創業事業計画書は、絶対に必要ですが、鵜呑みにしてはいけません。

■大きな自己資本を有していない創業者が大きな事業をやりたいなら、二段階、三段階で事業を成長させてください。

○例)
自己資金が数百万円の創業者は、総事業予算1,000万円程度の事業しか立ち上げることができません。まずは、この範囲で事業を軌道に乗せる計画を作って実現してください。第一ステージが軌道に乗った時、次の資金調達を行って第二ステージをクリアしましょう。このステージアップを経て、あるレベルを超えた時、エクイティー資金(社長が望むなら)の調達も視野に入ってきます。飛躍を狙うのはこのステージです。

○小資本しか持ち合わせていないが、大きな資金調達ができれば短期間で成長できる、故に資金調達を行いたい…このような考えは稀有な幸運と実力を持ち合わせたほんの一握りの人たちのみに通用する論理です。一般的ではありません。
※ベンチャーキャピタルは、将来性も当然ですが、一定以上の実績を待ち合わせた事業体に出資します。実績の無い計画書に出資するケースはほぼ無いと考えてください。

◆エクイティー資金(ベンチャーキャピタルからの投資)に関する誤解とは…

ベンチャーキャピタルは…
1.
計画書には原則出資しません。小さな成功実績に出資します。この小さな成功に、大きな資金をつぎ込むことで、時間と規模、競合との差別化を買うための出資です。
※計画書に出資する事例は、あくまでも推測ですが、日本国内で年間数例以下でしょう。
2.
短期間に大きく成長できる蓋然性が出資の条件です。イメージは、最長5年ぐらいで、純利益が数億円以上、この純利益がその後さらに大きく伸び続ける事業に出資します。

■今の力相応に創業しましょう。

大きな野望を捨てる必要はありません。望むのなら、十年後・二十年後に成し遂げればよいのです。
ただし、今は、今の力相応の事業に取り組みましょう。

○自己資金(自分の力や縁で調達できる資金)が数百万円なら、創業融資を最大限行って、総事業予算1,000万円位の事業を立ち上げましょう。まずは、このステージをクリアすることです。

○自己資金(自分の力や縁で調達できる資金)が5千万円準備できるなら、それ相応にスタートすればよいでしょう。

◆今の力に不相応な創業は総じて失敗します。

今、力がないのに大きなことをやりたい、これは間違えです。無いものねだりです。経営者としては失格です。大きなことをやりたいが、今はお金がないので、力相応の小さな成功を積み上げて、最終的には大きなことを成し遂げる、これが正解であるはずです。
大きな、大き過ぎると思われる夢を捨てる必要はありません。ただ、未来の大きな夢と現実を、はっきりと区分けして創業してください。

もし、銀行の担当者から、「融資を引き揚げる。」と言われたら、平常心でいられるでしょうか。残念ながら、相手に知識がないと見れば、このような事を平気で口走る銀行員がいることも事実です。

先日あったA社様の事例です。業績は大変良好ですが、急激に売上が伸びたため資金繰りが苦しくなり、あるメガバンクから10回払いのプロパー融資1,000万円と保証協会の保証付き融資2,000万円を受けました。しかし、それだけでは資金が足りないため、「もっと資金を調達したい。」とのことでご相談に来られました。

進行期の業績が伸びていたため、決算を締めた後の方が大きく資金調達を行えると判断し、ある地銀にアプローチして、決算後に、保証協会とプロパーの合算で、最大限の融資を検討してもらうよう段取りを進めていました。

決算が出てから数日後、A社の社長様より、「メガバンクから6,000万円の保証付き融資の提案を受けた。」との連絡がありました。業績面から見て、それぐらいの保証は出るだろうと考えており、地銀とは、そこからさらにプロパーをどれぐらい積めるかを検討してもらっていましたので、社長様には、メガバンクへの回答は一旦ペンディング、もしくは追加でプロパーを検討してもらえるかを聞いていただくよう依頼しました。

翌日社長様から連絡があり、メガバンクに話したところ、「まずは保証付き融資を借りて欲しい。それからプロパー融資は検討する。また、最初に融資をしたことを評価して欲しいと考えており、当行で借りてもらえないなら、今貸している融資を引き揚げる可能性もある。」と言われたとのことでした。

A社の社長様は、創業以来数年間、自己資金だけで経営をしてこられ、昨年の公庫とメガバンクの借入が初めての借入でした。金融機関対応には慣れていませんので、このようなことを言われれば、当然驚いてしまいます。

このような話は、お客様経由でしばしばお聞きします。本件に限らずですが、延滞もなく契約通り履行している融資を引き揚げられる可能性はありません。本当につまらない脅しですが、金融機関取引に慣れていない社長様であれば従ってしまいます。金融機関取引に慣れた社長様でも、業績が悪化した局面でこのような事を言われれば必ず動揺します。

もちろん、このような銀行員はほんの一握りです。銀行員全員を毛嫌いして、いたずらに敵対意識を持って応対することは得策ではありません。このような銀行員に出会った時の対処方法は、やはり、金融財務の知識を身につけるか、知識を有した相談相手を持ち、知識で対抗するしかありません。

…前回のつづきです。

我々日本人は、生産性の向上と時短・労働力の確保を経営的に解決していかねばなりません。そのためには、生産性の向上を図る、何よりもこれが必要です。

■生産性の向上のために、本来最も必要なことはビジネスモデルの転換・事業立地の変更です。

以前にもご紹介しましたが、「週刊東洋経済、2015年9月12日、特集経営学の教科書」(東洋経済新報社)に寄稿された、「高収益企業の創り方」(東洋経済新報社、三品和広氏〔神戸大学大学院・経営学研究科教授〕)の著者である、三品和広教授の記事を引用して解説いたします。

『…(高収益企業の研究を通じて)成功例に共通している点は一目瞭然だった。「事業立地」がよいということだ。仕事の仕方の工夫や製品開発ではなく、そもそも「何屋さんをやるか」の選び方が優れている。事業立地の考え方では、ある市場の中でどこにポジションするかよりもむしろ、そもそもどの市場を選ぶかが重要になってくる。…』

『…事業の根底には立地(誰に何を売るか)があり、その上に構え(出荷するモノをいかに入手して顧客に届けるか)、製品(いかに個別製品を魅力的に仕立てるか)、管理(いかに品質・原価・納期を守るか)が重層構造を成している。…中期経営計画などで立地や構えに手をつけることなく、製品の刷新や管理の強化を打ち出している企業は数多くあるが、この次元で動きだしたところで、高収益への転換に結び付いた事例はほとんどない。…』

三品教授のおっしゃるように、事業立地を(間違えずに)転換できれば最高でしょう。高収益・高生産性を手にすることができます。ただ、これは容易ではありません。それでも、上記の指摘は、重要な指針として認識しておくべきでしょう。

■ビジネスモデルの転換を図るためのもう一つの指針をご紹介します。
『古代から現代まで2時間で学ぶ・戦略の教科書』(鈴木博毅氏著、ダイヤモンド社)から引用しながら解説いたします。

◆パラダイムの呪縛…
人や企業は、過去の経験に無意識に縛られてしまうようです。
無意識の思い込みは、自分自身にある種の境界やルール(無意識の自主規制)のタガをはめてしまいます。これがパラダイムです。
・飲食業とは…であるべきとの思い込み。
・小売業とは…であるべきとの思い込み。
・建設業とは…であるべきとの思い込み。
・税理士とは…であるべきとの思い込み。
・時計とは …であるべきとの思い込み。

このパラダイムこそ、新しい発想を阻害する大きな要因です。
多くの人々は、このパラダイムの中でのみ事業を営みます。故に突出した成功を収めることができないのではないでしょうか。

◆パラダイム・シフトとは…
『…将来を予見する能力を高めたいと思うなら、トレンドが目にみえて変わってくるまで待ってはいけない。ルールをいじりはじめた人に注意しなければならない。それが、大きな変化の兆候だからである。…』

◆同著のなかでは、こんな事例が紹介されています。
『「六万二千人のうち、五万人が職を失う」1979年から1981年にスイスで時計をつくっていた職人の話です。世界の時計市場を支配していたスイスが、そのリーダーの座を明け渡した瞬間でした。日本に、です。…シンプルで正確なクォーツ時計の普及で、機械式全盛の時代が終わりを告げたのです。…』

◆経営者として取り組むべきは…
『…パーカーが指摘する戦略とは、将来にうまく対処するためパラダイムの柔軟性を常に最大限高めておくことです。誰かがルールを変えて、新たな成功事例が生まれたとき、そこに意を決して飛び込むことができるようにです。…』

あらゆる業界や分野で、パラダイム・シフトが起きています。
または、起きつつあります。
上記の提言を肝に銘じておきましょう。

生産性の向上と時短・労働力の確保、経営者が取組むべき喫緊
の課題です。今こそ待ったなしに大ナタを振るうタイミングか
も知れません。

中小企業における財務の強化方法についてシリーズでお伝えしております。第1回目は、「試算表」を毎月作成することの重要性を、続く第2回目は、「資金繰り表」を作成することの重要性をお伝えしました。3回目となる今回は、「中小企業が実践すべき財務戦略」をお伝えします。

前回までの内容に反するようですが、試算表や資金繰り表を作成すること自体に大した価値はありません。財務に関する明確な指針を持って初めて、試算表や資金繰り表が価値あるものに変わります。そして、当協会では、「手元キャッシュをより多く持つ」ことを、中小企業の財務指針として推奨しています。

手元キャッシュを厚くする主な理由は、「キャッシュが切れない限り、倒産することはない。」、「キャッシュに余裕があれば不測の事態が起きても落ち着いて対処できる。」「キャッシュがあれば千載一遇のビジネスチャンスを逃さない。」ためです。経営の目的を達成するために、キャッシュは絶対に欠かせない要素のひとつです。

しかし、「元々潤沢な自己資金を持っている。」もしくは、「毎月キャッシュが余るほどの大きな利益を上げている。」のでなければ、そう簡単に手元キャッシュを厚くすることはできません。手元キャッシュを増やす最も現実的な方法は、「借入を最大限活用する。」ことです。

借入を嫌う経営者様は多いですが、そこには、困った時には金融機関が融資をしてくれるだろうという錯覚があります。実際は、金融機関はこちらの都合で融資をしてくれません。不測の事態が起きた時、千載一遇のビジネスチャンスに出会った時、都合よく融資を受けられる保証はないのです。中小企業における金融機関とのお付き合いは、自社のタイミングで融資を受けにいくのではなく、金融機関側のタイミングで融資を受けて手元にキャッシュを置いておき、必要な時に使うというのが正解です。

今すぐ必要でない資金を借りた場合、余分な金利を払うというデメリットはありますが、いざという時に融資を受けられないリスクに比べれば小さな問題です。また、借入が増えると財務内容が悪くなると考える方もいらっしゃいますが、借入と同時に預金も増えますので、実質的な借入額は増えません。

「借入を活用してでも手元キャッシュを厚くしておく。」ことの重要性にご賛同いただけたならば、次は、「どうすれば金融機関から最大限の融資を受けられるか。」という課題にお気づきになると思います。金融機関から最大限の融資を受けるために必要なのは、自社の財務状況を定期的に金融機関に開示し、融資が可能であれば、いつでも提案を持ってきてもらえる関係を構築することです。

試算表や資金繰り表は金融機関とコミュニケーションを取る必須アイテムです。まずは、試算表と資金繰り表を毎月しっかりと作成し、さらに、「キャッシュをより多く持つ。」という財務指針も金融機関と共有することで、強固な財務体制を構築することができます。

…前回のつづきです。

我々日本人は、生産性の向上と時短・労働力の確保を経営的に解決していかねばなりません。そのためには、生産性の向上を図る、何よりもこれが必要です。

■前回号でご紹介した仮説を検証してみましょう。
「…日本の企業は顧客の声を聞きすぎる。顧客の過度な要望への対応は、企業を疲弊させ、低生産性の元凶になっている。顧客を神さまと勘違いして、過剰な対応を行うということは、一方で、自社の経営と従業員を疲弊させることになる。顧客に提供するサービスの内容と、負担いただく価格のバランスが、国全体として崩れてしまっていることが、日本の生産性を著しく低くしてしまった。…」

◆「顧客はだれか?」顧客の定義・選別が重要です。
顧客をないがしろにしても良いとの意味ではありません。お客様第一、この発想こそビジネスの礎です。問題なのは、顧客の定義が曖昧なことです。全員が顧客だ、との間違えた思い込みです。

〔わかり易いので飲食店の例で…〕
○高級なフレンチレストランではミネラルウォーターも高価です。「水がなぜこんなに高い?」との疑問を呈する人は顧客ではありません。ただし、この高価なミネラルウォーターは、立派なグラスで丁寧に提供されなければなりません。
○一方、大衆店で、おいしい水を立派なグラスで提供してもらおうと考える人も、この大衆店の顧客ではありません。

◆顧客を定義するためには、提供するサービスを明確に定義する必要があります。

〔わかり易いので飲食店の例で…〕
○当社は高級なフレンチレストランを経営するので料金は高い、お水はミネラルウォーターを立派なグラスで(有料で)提供する。ミネラルウォーターが高いという人は当社の顧客ではない。
○当社は大衆店を経営するので価格はリーズナブル、その分顧客の細かい要望にはお応えできない。

上記を明確にしないまま、お客様第一主義を突き詰めると、そのツケはすべて自社に、自社の従業員に跳ね返ってきます。

◆営業時間の問題も、個別対応の問題も同じです。
顧客が望むから(推測も含めて)営業時間を延長する、顧客が要望するから(推測も含めて)個別対応を行う…これらを収益上の検証も行わず、その多くを顧客満足度の向上との安直な発想で取り入れ続けた結果が、生産性の低下を招いています。

◆もはや精神論と根性論だけでは解決できません。
成熟著しい日本の市場においては、すべての事業体が、自社が定義した顧客(のみ)に対して、自社が定義したサービスや商品(のみ)を、生産性の整合性を担保した上で提供していく方針に舵を切らねばならないようです。
1.自社の顧客に対してのみ顧客第一主義を貫く。
2.自社が定義したサービスや商品のみを提供する。
さらに、これらの収益上の整合性を確保することも必要です。

■『時短と生産性の向上』のためには…
1.顧客の選別(絞り込み・単純化)
2.商品・サービスの明確化(絞り込み・単純化)
3.価格の改定(値上げ)
4.営業時間の見直し(短縮)
今の日本は、好むか好まない、できるかできないではなく、これらの選択肢を排除できない、切羽詰まった岐路に立たされているように思います。

繰り返しますが…
「…日本の企業は顧客の声を聞きすぎる。顧客の過度な要望への対応は、企業を疲弊させ、低生産性の元凶になっている。顧客を神さまと勘違いして、過剰な対応を行うということは、一方で、自社の経営と従業員を疲弊させることになる。顧客に提供するサービスの内容と、負担いただく価格のバランスが、国全体として崩れてしまっていることが、日本の生産性を著しく低くしてしまった。…」

この機会にご一考いただければ幸いです。

前回のメールマガジンでは、財務管理の強化は試算表の作成から始まることをお伝えしました。しかし、試算表だけ作成すれば十分かと問われると、そうではありません。試算表にはキャッシュベースの収支が分からないというウィークポイントがあります。

赤字になっても即倒産はしませんが、資金が底をつくと黒字でも倒産します。そういう意味では、利益管理よりも資金繰り管理の方が重要です。そして、資金繰りの管理を行うツールが「資金繰り表」になります。資金繰り表は、毎月の入金額と支出額を項目ごとにまとめた単純な表ですが、財務管理にとても役立ちます。

殆どの社長様が何らかの資金繰り表を作成していると思います。実際に表を作成していなくても、頭の中にはおおよその入金額と支出額が入っているはずです。ただ、残念なことに、今月、もしくは来月、といった短い期間の資金繰り状況しか把握できていない方が大多数です。

短期間の資金繰り計画しか立てていないと、「お金が足りない!」という事態が直前に迫るまで分かりません。資金調達は、短期間で行おうとすると余計に難しくなりますので、経営者としての他の大切な業務を削ってでも資金調達に走り回らなくてはならなくなります。行き当たりばったりの財務活動です。

計画的に財務活動を行うために実践していただきたいのは、向こう1年間の「資金繰り計画」の作成です。1年程度先までの資金繰り計画を立て、資金の流れを予測しながら、資金調達や設備投資の計画を立てます。1年先の売上など分からないという声もあるかもしれませんが、向こう1年間の「資金繰り計画」とあわせて、過去1年間の「資金繰り実績」も作成してみてください。過去の売上の動きから、未来の売上の動きが何となく予測できます。

財務管理の最大の目的は、「資金を切らさないこと」です。試算表で利益を管理しながら、自社の資金調達力を高め、資金繰り計画を立てて計画的に資金調達や設備投資を行えば、資金に慌てることなく落ち着いて経営に専念できます。