■52枚のトランプを無作為に観客に並べ替えてもらった後に、
『種も仕掛けもありません。』と一通り(数秒間)観客にカー
ドの表を見せます。この時に52枚のトランプの並びをすべて
暗記してしまうそうです。後は、自分でトランプを繰り返し並
べ替えますが、どう並べ替えたかはすべて手の感覚で頭に入っ
ているそうです。何枚目に何があるのか、すべてです。観客が
『ストップ』と言って止まった場所のカードは、把握できてい
ます。さらに並べ替えながら、一枚ずつめくるカードを言い当
てます。トランプを使ったプロマジシャンの、種も仕掛けもな
いマジック?です。暗記力と正確な手さばき、まさに訓練の賜
物です。資質の問題もあるでしょうが、とんでもない努力を長
期間続けてこられたのでしょう。3年、5年、いや、10年以
上でしょうか。

■マラソンの世界記録ホルダーは、42.195キロメートル
を2時間1分強、時速20キロメートルを超えるスピードで2
時間走り続けています。資質の問題もあるでしょうが、とんで
もない努力を長期間続けてこられたのでしょう。3年、5年、
いや、10年以上でしょう。

■1万時間の法則があります。

The New Yorkerのスタッフライターであるマルコ
ム・グラドウェル氏が提唱し始めた、『集中して1万時間努力
を継続できれば、その分野ではある程度以上のレベルに到達で
きる』とする法則です。ダラダラではなく集中して、これが条
件です。

○小学校1年生から野球を始めて、365日毎日3時間ずつ集
中して練習を継続できれば、高校1年生の夏に1万時間の壁を
越えられます。夏の甲子園で注目されるような選手は、皆1万
時間を越えているはずです。

■ビジネスマンにとって、1万時間の対象は何でしょうか?そ
の対象は、今の仕事そのもの、または、関連性の強い分野に絞
るべきです。

○勤務時間をすべてカウントするならば、1日8時間、250
日で2,000時間、5年で1万時間に到達します。確かに、
5年も社会人を経験すれば、殆どの人はそれなりに仕事を覚え
ます。

○自宅での週末学習や、勤務後の自己学習に時間をつぎ込める
人は、1日10時間、330日で3,300時間、3年で1万
時間に到達します。期間を集中している分、習得レベルも格段
に向上するはずです。年長者は、さらに、勤務時間を積み上げ
ているわけですから、いずれにしても1万時間の壁は越えてい
るはずです。

■仕事に対しては、プロ(を目指す)意識が重要です。

○プロのマジシャンは52枚のカードを瞬時に暗記して自在に
扱えます。
○一流のマラソン選手は、時速20キロメートル前後で二時間
強走り続けることができます。
○プロの野球選手は、時速150キロメートルの白球を打ち返
すことができます。
…等々

■ビジネスマンである貴方は、何ができますか?何ができるこ
とを目指しますか?今取り組んでいる業務分野において、徹底
的にプロ化を図るべきではないでしょうか?

○営業職であるならば、日常の業務に百%のエネルギーを投入
しながら、併せて、営業に関する様々な自己研鑽に励むことで
しょう。関連書籍を読み漁ったりしながら、日々の業務で仮説
と検証を繰り返しながら、予算の達成に邁進するのでしょう。
この様な姿勢で1万時間超の時間を過ごすことができたなら、
営業のプロとして立派に人生を送れるはずです。
○経理職であるならば…
○技術職であるならば…
等々、すべて同じです。

■プロとセミプロの間には、大きな壁があります。

プロは、道を究めた専門家です。セミプロは、良く知っている
便利な人です。プロとセミプロの間には大きな壁があります。
貴方がプロであるならば、貴方の食い扶持は生涯確保されるは
ずです。職を求めて苦労することはありません。貴方がセミプ
ロであるならば、運が悪ければ職を失います。

希望したのか?または、必然なのか?は別にして、今の仕事で
プロになりましょう。会社のためだけではありません。自分の
ためにです。

先日資金調達のお手伝いをさせていただいたAさんの事例です。
勤めている会社を退職し、株式会社を設立して、店舗を作りた
いというご相談でした。

■ 創業プランは以下のとおりです。
事業内容:一般消費者向けの小売業態
総投資額:6,800万円(設備6,000万円+運転800万円)
調達内容:自己資金800万円、勤務していたメーカーからの借
入3,000万円、金融機関からの借入3,000万円

勤務していたメーカーから3,000万円の資金支援を受けられる
予定ですが、総投資額が大きいため、金融機関からも3,000万
円の調達が必要です。創業資金の最も有力な調達先は日本政策
金融公庫ですので、今回も日本政策金融公庫からの調達を主と
して調達の計画を立てました。公庫の創業融資のポイントは以
下のとおりです。

【自己資金】
創業融資審査における最も重要なポイントは自己資金です。
自己資金は多ければ多いほど良いのですが、日本政策金融公庫
は最低でも総投資額の10分の1以上の自己資金を求めています。
投資総額6,800万円に対し、自己資金は800万円ですので、自
己資金の要件はクリアしています。また、事業に費やす800万
円以外に、別途500万円程度の貯蓄も有していましたので自己
資金は十分でした。

【キャリア】
次に重要なポイントはキャリアです。創業する事業に対する経
験や実績が重視されます。Aさんはメーカーに勤務していまし
たが、小売店の販売を指導する職務に従事していました。
数多くの店舗を見てきた経験があり、儲けのポイントを理解し
たうえで独立を決意したためキャリアは十分です。

【総投資額】
今回最も大きな懸念点となったのは総投資額です。申し込み要
件には明確には記されていませんが、最初は小さな投資から始
めることを良しとする価値観がありますので、6,800万円とい
う初期投資が問題となりました。

調達金額が大きい場合の対処法は次が有効です。
・公庫の単独ではなく、民間の金融機関からも調達をする協調
融資で案件を組み立てる。
・認定支援機関の助言を受けて事業計画書を作成し、経営力強
化資金を利用する。
本件も、公庫2,000万円、保証付き融資1,000万円で案件を構
築し、最終的には満額の資金調達ができました。金融機関の担
当者にお話を聞くと、「金額が大きく難しい案件だったが、自
己資金とキャリアがしっかりしていたことに加え、計画書類が
充実していたこと、個人資産の開示等に協力的であったことが
決め手となった。」とおっしゃっていました。

未来を背負ってもらえる若者たちの成長と活躍を願いながら、
前向きなメッセージを発信させてもらいます。新入社員に伝え
てあげてください。

■社会人として二十年近く時間を経て四十歳ぐらいになると、
そのビジネスマンとしての実力の差は歴然とします。雲泥の差
です。

○出来る分野・領域の広さに大きな差が付きます。太平洋とプ
ールの差です。
・良くできる人は、概ねどんな業務もやる気になれば対応でき
ます。
・そうでない人には、極めて限定的な作業しか与えられません。
できないからです。

○業務の精度・スピードに雲泥の差が出ます。
・知恵を使う業務であれば、できる人とそうでない人の差はざ
っと10倍ぐらいでしょうか。
・単純な業務であっても、その差は3倍ぐらいになるように感
じます。

社会人として、上記の事実を早い時期に知っておくべきです。
なぜ、これだけの差がついてしまうのかを、論理的に考えてみ
ましょう。

■高校時代の運動部のことを思い出してください。

○放課後真面目に練習を継続している野球部のメンバーと、野
球部でないメンバーが、三年生の時に試合をしたら、この差は
歴然です。たった二年強の期間、一日当たり数時間の練習を継
続するかしないかの違いが、この雲泥の実力の差を生みます。

○スポーツより複雑でわかりにくいので自覚しにくいですが、
二十年という年月は、上記の何十倍もの差を生んでいます。
そして、見る人が見れば、その差は歴然です。四十歳のビジネ
スマンの実力に、想像を絶するぐらいのかい離があることを想
像いただけるはずです。

■仕事は上手になってください。好む好まざるにかかわらず、
社会人として長期間生きて行かねばなりません。会社のためだ
けではありません。何より自分自身のためです。

そのために…

◆1.目先の仕事に徹底的に真摯に取り組んでください。

どんな仕事に対しても、「だれにも負けない」との思いを込め
て、全身全霊で取り組んでください。机を拭く、こんな仕事で
も、「だれにも負けない、私の机の拭き方は、誰よりきれいで
効率的だ」と自負できるようにあたってください。一つ一つの
この真摯な取り組みの集積が、自分自身の仕事への精度と執着
を養ってくれます。

◆2.正確な実務能力を身に着けてください。

書類を正確に早く作成する、文章を正確に早く書く、過密なス
ケジュールを効率的に乗り切る…これらを実務能力と呼びます。
この実務能力がその人のポテンシャルになります。若い間は、
可能な限り多くの業務をやりきる訓練を積んでください。

◆3.仕事の予習と復習をしてください。

アフターファイブや休日にも、仕事の予習と復習を欠かさず行
いましょう。この差がビジネス力の差を生みます。また、自分
自身の勉強の時間を確保してください。生涯勉強です。すべて
自分の財産になります。できるビジネスマンは習慣になってい
ます。

◆4.本を読んでください。

できるビジネスマンの多くは読書家です。逆に、できないビジ
ネスマンの多くは本を読んでいません。週一冊本を読めば、
(四十歳を迎える)二十年で千冊強の本と出会えます。この千
冊の引き出しの有無が、ビジネスマンとして、人としての実力
の差の原因の一つです。
※最近はオンライン講座なども良いかも知れません。

◆5.良い仲間を見つけてください。

仕事に真摯に取り組む仲間、向上心のある仲間を見つけて親交
を深めましょう。類は友を呼びます。自分の仲間の属性は、そ
のまま自分自身の姿です。「明るく・朗らかで、前向きで、向
上心の強い勉強好きな」仲間たちと、お互いの成長を確かめ合
いながら生きていきましょう。

人は公平ではありません。これは紛れもない事実です。何故な
ら、過去(の努力)が違うからです。このことを肝に銘じてく
ださい。二十年後に後悔しないために、自分自身ができるだけ
主導権を握れる人生を送るために、長期目線でしっかり力を付
けましょう。(※新入社員に伝えてあげてください。)

◎参考データ:
〔(株)リクルートマネージメントソリューションズ(2014年
データ)〕

■自主的な学習に費やす時間は1週間にどれぐらいですか?

○新人
平均4.96時間(43分/1日)、1時間29.3%、8時間以上17.9%
○若手
平均3.32時間(29分/1日)、1時間37.5%、8時間以上9.5%
○中堅
平均3.94時間(34分/1日)、1時間35.9%、8時間以上11.5%

一週間に1時間と回答した人の未来は統計的に知れています。
自らの意思で負け組に向かって歩んでいます。8時間以上の人
には高い確率で勝てません。貴方は、1週間に何時間勉強しま
すか?決意を持って社会人のスタートを切ってください。

中小企業経営承継円滑化法とは、中小企業の経営承継を円滑に
することを目的とした法律です。都道府県知事の認定を受ける
ことで、相続税・贈与税の納税猶予の特例、代表者交代による
信用不安を補完する金融支援、遺留分に関する民法の特例、を
受けることができます。

■ 事業承継税制(特例措置)の概要
後継者が相続又は遺贈により取得した株式等に係る相続税の
100%が猶予されます。本制度の適用を受けるためには、経
営承継円滑化法に基づく都道府県知事の「認定」を受け、報告期
間中(原則として相続税の申告期限から5年間)は代表者とし
て経営を行う等の要件を満たす必要があり、その後は、後継者
が対象株式等を継続保有すること等が求められます。また、後
継者が死亡した等の一定の場合には、猶予された相続税が免除
されます。

■ 金融支援の概要
事業承継の際に、会社や後継者である個人事業主あるいは代表
者個人が資金を必要とする場合に、日本政策金融公庫あるいは
沖縄振興開発金融公庫の低利融資制度による支援を受けること
ができます。また、事業承継に関する資金を金融機関から借り
入れる場合には、信用保証協会の通常の保証枠とは別枠が用意
されます。

■ 遺留分に関する民法の特例
推定相続人が複数いる場合、後継者に自社株式を集中して承継
させようとしても、遺留分を侵害された相続人から遺留分に相
当する財産の返還を求められた結果、自社株式が分散してしま
うなど、事業承継にとっては大きなマイナスとなる場合があり
ます。このような問題に対処するため、経営承継円滑化法は、
推定相続人全員の合意の上で、現経営者から後継者に贈与等さ
れた自社株式について、遺留分算定基礎財産から除外できたり、
又は遺留分算定基礎財産に算入する価額を合意時の時価に固定
することができます。

上記のとおり、様々な制度が用意されていますが、事業を引き
継ぐ意欲のある後継者や従業員がいたとしても、やはり、負債
や資金面で断念するケースが現実的には多いように感じます。
このようなケースにおいては、日本政策金融公庫や保証協会の
金融支援が大いに役立ちます。事業承継を考えていらっしゃる
経営者様は、是非、ご相談ください。

前々回号のつづきです。

すべてが大きく変化しています。過去のビジネスモデルが大き
な音を立てて崩れています。はるか昔のルールの呪縛に縛られ
たままの事業体は、新しいビジネスモデルを創造した新興勢力
に置き換わります。人口は減少し、市場規模は小さくなります。
競争はさらに激化し、弱者は最後の価格競争を挑みながら消耗
戦を続けていくのでしょうか。人口が減少しても労働力は近々
余ります。労働力はAIやロボットに置き換えられます。雇用
の形態も変わり、企業側は雇用しない経営、働く側は雇用され
ない働き方に移行します。大企業は黒字リストラを大規模に実
施しています。終身雇用の終焉に備え始めました。弱者に働く
場所は残りません。
我々は、『生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的
なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである。』
(チャールズ・ダーウィン)の言葉を肝に銘じて行動に移さな
ければなりません。もう残された時間はほとんどありません。

過去のルールをすべて疑い、新しい発想で新しいルールに適合
していくしか他に方法はありません。繰り返しますが、時間切
れ寸前です。ビジネスのフローを、ビジネスの事業立地や型
(モデル)を、その根底から見直す努力を始めませんか。商品
開発においては、思い切った高付加価値化を図りませんか。

『ビジネスモデル俯瞰図の検証!』のまとめとして、26の着
眼点を整理して以下に記載します。詳細は本コラムのバックナ
ンバーを含めて再度ご確認ください。

◆売り方・プロモーションに関する着眼点

1.売り切りからサブスクリプション(月額課金)への変更が
できないか!
2.ファイナンス機能(クレジット、決済代行)を追加できな
いか!
3.自社ノウハウを教えて代理店を作ることはできないか!
4.自社広報媒体(D2C)を構築できないか!
5.画像や紙の媒体から動画(音声)媒体へ変更できないか!
6.お客様を細分化して、特定のお客様への個別対応を充実で
きないか!

◆商品開発に関する着眼点

1.自社の商品やサービスを業種やテーマに絞り込むことはで
きないか!
2.アッパーニッチな商品やサービスを開発できないか!
3.新しい機能を付加できないか!
4.不要な機能を取り除けないか!

◆マネージメントに関する着眼点

1.社員雇用を行わず、フリーランス(個人及びチーム)を活
用できないか!
2.社員を減らすことはできないか!
3.事務所を縮小できないか!
4.在宅勤務で対応できないか!

◆事業計画に関する着眼点

1.中期経営計画を疑ってみる!
2.敢えて減収を狙えないか(余計な売上を捨てる)!
3.計画を鵜呑みにしていないか(執行を先行させすぎていな
いか)!

◆営業時間・品揃えに関する着眼点

1.営業時間・営業日を減らせないか!
2.品ぞろえを減らせないか!

◆飲食店の開業に関する着眼点

1.出店せずに開業できないか!
2.日時限定(フル営業しない)から開業できないか!
3.数量限定で営業できないか!

◆新規事業・事業立地の見直しに関する着眼点

1.事業立地は優か!事業立地を見直せないか!
2.ビジネスの業務フローを抜本的に組み替えられないか!
3.受注型からプロダクト型に変更できないか!
4.プラットフォームを作れないか!

◎事業全体の活性化や事業立地の付加・転換など、事業自体を
その本質から見直そうとするときは、ビジネスの全体像を現し
たビジネスモデル俯瞰図を作ってみるとわかりやすいです。
ビジネスモデル俯瞰図を使って、事業の活性化を図りたいとき
の着眼点を上記に整理しました。

借入には1年以内に返済期日が到来する短期借入と、返済期日
が1年を超える長期借入があります。売上金の回収期間が仕入
の支払期間より長い場合に発生する経常運転資金は、回収サイ
トに合わせて短期借入で調達するのが一般的でしたが、近年は
長期運転資金として調達するのが一般的になっています。

◆短期借入と長期借入の違い
短期借入と長期借入は、融資審査において、評価ポイントが変
わってきます。短期借入の場合、返済できるかどうかは売掛金
で判断し、長期借入の場合、返済できるかどうかは利益と減価
償却費で判断しています。

モノやサービスは売れたが、代金の回収までに時間を要する場
合、その間の収支ギャップを埋めるために利用するのが短期借
入です。短期借入の返済は、回収した売上代金で行いますので、
たとえ赤字であっても、回収確実な売掛金があれば、短期借入
で調達出来る可能性は十分に考えられます。

一方、長期借入の返済原資は利益と減価償却費です。たとえ回
収確実な売掛金があっても、赤字、かつ将来も利益が出る見込
みがない場合は、返済原資がないため長期借入は原則困難です。

◆短期借入と長期借入のメリット・デメリット
期日一括返済の短期借入は、業況が安定していれば基本的に期
日は延長されます。借りっぱなしで返済をしなくてよいため、
資金繰りが安定しやすいというメリットがあります。しかし、
期日に期限を延長してもらえなかった場合は、まとまった返済
資金を一括で用意しなくてはならないリスクもあります。

長期運転資金は毎月一定の返済を行うため、計画的に返済をし
ていくことが可能です。しかし、1,000万円の収支ギャップを
埋めるために1,000万円の借入をしても、約定返済分は資金が
不足しますので、実際に必要な金額よりも余分に借りなくては
ならないというデメリットがあります。

◆短期と長期どちらで調達を行うべきか
資金繰りの観点から考えると、経常運転資金は、約定返済のな
い短期借入で調達した方が利益を返済に回さずに済むため資金
繰りは安定します。投資回収に長い年月を要する設備資金や、
更なる売上拡大に挑戦するための増加運転資金は、投資効果に
合わせて少しずつ返済を進めた方が資金繰りは安定します。

短期借入と長期借入は単に返済期間が違うというだけでなく、
融資審査のポイントも違うことをご理解いただいたと思います。
そうであれば、短期借入を申し込む場合と、長期借入を申し込
む場合で、金融機関に提出する計画書の訴求ポイントも変えな
くてはなりません。

金融機関の考え方を理解し、金融機関が評価するポイントをし
っかり押さえた書面を作成することが、資金調達をより確実に
します。

●1.×『雨傘理論』⇒〇『日傘理論』

金融機関にある傘はすべて『日傘』です。(一部の制度融資を
除く)金融機関は、資金を必要とする会社にお金を貸すのでは
なく、返済してもらえる会社に融資をします。必要だから、な
ければ困るから貸してくれ…この理屈は通りません。このよう
に返済できるから融資をお願いしたい…この論理武装が重要で
す。
金融機関に、困った会社への救済融資という商品『雨傘』は存
在しません。一部の制度融資は特例です。

●2.×『借り手(会社)の論理』
⇒〇『貸し手(金融機関)の論理』

・今は資金が必要でないから借りない。金利ももったいない。
・今は資金が必要だから借りたい。
上記は『借り手の論理』です。

・今は経営状況が良いから融資できますよ。
・今は経営状況が悪いから融資できませんよ。
これらは『貸し手の論理』です。

経営状況が良くて、資金が必要な時には、双方の意向がマッチ
して、資金調達ができます。経営状況が悪ければ、資金が必要
になっても資金調達はできません。

●3.×『困ったら借りる』⇒〇『借りられる時に借りる』

資金余力が十分でない会社は、自社の都合ではなく、貸し手の
都合に合わせて資金調達を継続すべきです。少しばかりの金利
は、保険と割り切りましょう。金融機関のお世話にならなくて
いいと思える確証を持てるまでは、金融機関(貸し手)の都合
を優先してお付き合いしましょう。他に方法がないからです。

●4.パワーバランスの欠落は経営者にとって致命傷!

金融機関との関係も、他の利害関係者同様本来は対等であるべ
きです。自社がいくら立派になって、金融機関の支援を必要と
しなくても威張らない、逆に、自社の経営が逼迫していても、
金融機関に媚びる必要はありません。この前提で申し上げるの
ですが、それでもパワーバランスは変動します。自社が相対的
に弱ければ、相手の基準に合わせていかねば事が運びません。
創業から中小零細企業の多くは、対金融機関に対しては、自社
の都合『借り手の論理』ではなく、相手の都合『貸し手の論理』
で行動するしかありません。このセンスを持ち合わせていない
経営者は、金融機関対応だけでなく、その他すべてのビジネス
シーンでミスを連発しているはずです。

◆『雨傘理論』ではなく『日傘理論』で。
◆『借り手(会社)の論理』ではなく『貸し手(金融機関)の
論理』で。
◆『困ったら借りる』ではなく『借りられる時に借りる』で。
上記の3つの原則を守ってください。

借入が必要になりそうだと分かっていても、日々の業務に忙殺
されて後回しになり、いよいよ資金が切れそうなタイミングで
金融機関に駆け込む・・・ご経験のある社長様も多いのではな
いでしょうか。

本来、資金調達業務は、資金が不足した時だけ行う業務ではあ
りません。どれぐらいの資金が、何のために、いつ頃必要なの
かを事前に把握し、どれぐらいの資金を、どこから、どのよう
にして調達するかを戦略的に進めていく業務です。財務業務を
戦略的に進めるためには、財務に関する知識や経験が必要です。
まずは貴社の財務レベルをチェックしてみましょう。

□今期、どれくらいの資金調達が必要か分かっている。
□公庫、信金、地銀、メガバンク、ベンチャーキャピタル・・・
各金融機関の特性を熟知しており、どの金融機関から調達す
るのが最善か分かっている。
□短期借入、長期借入、社債、リース、出資・・・借入の種類
と特徴を熟知しており、どの方法で調達するのが最善か分か
っている。
□金融機関の考え方を熟知しており、金融機関が評価するポイ
ントを分かっている。
□融資を受けやすくするために必要な資料が何か分かっている。

いかがでしょうか。チェックの数が少ない場合は財務レベルに
改善の余地があります。業績が落ち込めば、途端に資金調達が
難しくなる可能性がありますので、次にご提案する財務戦略を
実践してみてはどうでしょうか。

■ 小規模企業が実践すべき財務業務

1.調達目標額を決める
仮に業績が落ち込んだ時、金融機関は助けになりません。自分
の身は自分で守らなくてはならないため、有事に備えて、「借
りられるだけ借りておく」ことを目標にしてはいかがでしょう
か。

2.取引金融機関(調達先)を選定する
小規模企業の調達先の選定基準は、「最も金利の低い金融機関
ではなく、最も多く貸してくれる金融機関」です。銀行の知名
度や、多少の金利差に惑わされず、積極的に融資をしてくれる
金融機関を選びましょう。年商3億円未満の企業の場合は、信
用金庫(組合)→地銀→メガバンクの順であたるのがセオリー
です。

3.金融機関と良好な関係を構築する
最大限の調達を行うためには、金融機関を味方につけることが
必須です。金融機関が好むのは、ディスクローズをしっかりと
行える企業です。試算表や資金繰り表をリアルタイムで作成し、
定期的に提出することで、金融機関からの信頼は大きく高まり
ます。

この程度の財務業務を実践するだけでも金融機関の反応は大き
く変わるはずです。資金調達は一発勝負ではありません。お金
を借りる時だけ対処するのではなく、戦略を持ち、日頃から資
金調達に備えておくと安心です。

前回号の続きです。
〔※ビジネスモデル俯瞰図とは、ビジネス全体の構造や流れを
把握し、事業の構造や事業の特徴、損益構造などをわかりやす
く整理した図表のことを指します。〕

事業全体の活性化や事業立地の付加・転換など、事業自体をそ
の本質から見直そうとするときは、ビジネスの全体像を現した
ビジネスモデル俯瞰図を作ってみるとわかりやすいです。
ビジネスモデル俯瞰図を使って、事業の活性化を図りたいとき
の着眼点を整理いたします。

■着眼点23:中期経営計画を疑ってみる!

●未来は予見できない、これは紛れもない事実です。自社の具
体的な未来予想図は描けません。それでいいのです。

であるにも関わらず、現時点を基準にした高精度な将来計画を
作り、その計画に過度に執着することは、これから起こり得る
イノベーションの芽を摘んでしまいかねません。
事業全体の活性化や事業立地の付加・転換など、事業自体をそ
の本質から見直そうとするときは、今手元にある中期経営計画
を疑ってみることも重要です。

●多くの成功者が語る過去からの成功談はすべて後付けです。

1.人は、その未来を予見することはできません。変数が多す
ぎるからです。
2.人は、過去を整理することは得意です。寄り道部分を除い
て単純化して話します。
3.故に、(多くの成功者は)あたかも計画通り進んで来たか
のように見えます。
4.事実はそうではなく、あまたの寄り道・失敗を経て今があ
ります。

高精度に未来を予見しようとする行為は百害あって一利なしで
す。未来につながるレールは存在しません。

●中期経営計画を鵜呑みにしてはいけません。

3年後、5年後、10年後の自社の姿なんて『わかるはずない!
わからなくていい!いや、決めつけてはいけない!』と考えて
みてはいかがですか。
5か年経営計画の意味は、『今の延長線上ならこうなるとのシ
ミュレーションに過ぎない』との認識が必要です。
これを経営計画と錯覚してしまうとイノベーションは起きませ
ん。5か年経営計画と呼ばず、【現状の延長時の5か年シミュ
レーション】と呼ぶべきではないでしょうか。

※【現状の延長時の5か年シミュレーション】には相応の存在
意義があります。

●中期経営計画の位置付けは…

◆既存事業の部分は『現状の延長時の5か年シミュレーション』
と定義して、正確な執行を心掛けましょう。

◆新規事業の部分は『想像力を働かせながら、加減しながら取
り組むこと』と定義して、柔軟に進捗させましょう。
新規事業の部分を計画に落とし込んで・決め込んでその計画通
りに執行すると、投資が先行(経費が先行)して危機を招くこ
とになりかねません。

◎以下の決意で経営してください。
未来は予見できない!未来を決め込まず、想像力を働かせなが
ら今を必死に生きる!

・高校生の進路指導で、『あなたは将来何になりたい?』
・新卒の入社試験で、『あなたは当社でどんなことを実現したい?』
こんな愚問を投げるのは止めましょう。当時自分が何を考えて
いたかを思い起こして考えてみましょう。

先日、日本政策金融公庫の資本性ローン2,000万円の調達
をお手伝いしました。資本性ローンとは、日本政策金融公庫が
取り扱う5年から15年の期日一括返済型の借入ですが、負債
ではなく資本と見做してもらえる特別な借入です。財務内容の
改善に取り組む企業や、売上がすぐには立たない新規事業に取
り組む企業に適した借入です。

S社の事例をご紹介します。

【S社の概要】
直近売上高 約2億5,000万円
直近簡易CF(税引後利益+減価償却費) 約1,500万円
直近純資産 ▲500万円
直近有利子負債 約1億6,500万円

数年前に大口顧客から契約を解除されたため売上が半減し、大
幅赤字、債務超過に陥ってしまいました。

その後、経費の見直しを中心としたコストカットに取り組み、
直近決算では約1,500万円のキャッシュフローを確保でき
るまでに回復したものの、毎月160万円の返済を継続してい
るため、依然として資金繰りは厳しい状況です。

よって、社長自身で資金調達に動いていたようですが、やはり
債務超過を理由に新規融資は全て断られたとのことでした。

S社のように、足元の業績が回復しているにも関わらず、債務
超過が原因で新規資金調達に苦慮している場合は、再生型資本
性ローンの活用がおすすめです。S社は500万円の債務超過
に陥っていますが、仮に2,000万円を資本性ローンで調達
できれば、債務超過ではなく1,500万円の資本正とみなす
ことができます。

早速、経営改善計画書を作成し、日本政策金融公庫に打診をし
たところ、「資本性ローンが入った後、追加で支援をしてくれ
る金融機関があった方が審査を進めやすい。」とのアドバイス
をもらいました。

アドバイスのとおり、メインの金融機関に出向き、資本性ロー
ンを活用した経営改善計画を説明すると、「確約はできないが、
債務超過を解消すれば、新たな融資も検討可能である。」との
見解をいただき、さらに、公庫の担当者に電話を入れて支援の
意思を表明してくださいました。

結果、満額2,000万円を資本性ローンで調達でき、その後、
メインの金融機関からも1,000万円の追加融資を受けるこ
とができました。公庫の担当者は、「やはり民間金融機関の支
援姿勢を確認できたことが良かった。」とおっしゃっていまし
た。

足元の業績が回復しているにも関わらず、債務超過により資金
調達に苦慮している企業様は、資本性ローンの活用をおすすめ
します。是非、ご相談ください。