■1:ナンバーワンよりオンリーワン、アッパーニッチ戦略を!
(SP経営協会)

今ないモノ、あっても注目されていないモノ、マーケットが小
さすぎて大手が参入しにくいモノを対象とするビジネスは前途
洋洋です。

◆ナンバーワンよりオンリーワンを目指しましょう。
ナンバーワンは、競争に勝って一番になることです。オンリー
ワンは、競争せずに一番(?)になることです。競争しないた
めには、他人・他社と違うこと、世の中にないことを行うこと
です。お金・人・モノ、これらの経営資源の乏しい会社こそ、
競争しない経営を心掛けるべきではないでしょうか?小規模零
細企業、または、これから独立開業される方こそ、この発想が
重要です。

◆ほんの少し目先を変えて考えてください。
誰もが腰を抜かすような、画期的な商品やサービスを開発する
に越したことはありませんが、容易ではありません。いきなり
このようなことができる会社・社長は稀有です。そうではなく、
今取り組んでいる事業の、ほんの少し目先を変えて、どこにも
ないモノ・コトを開発しましょう。

◎高額商品でオンリーワンになる、アッパーニッチ戦略は現実
的です。
一本(3斤)3,000円を超える食パンをネット通販で販売
しておられる会社様があります。こんなに尖った食パンを求め
る顧客は多くありませんが、ネットを使って全国に展開すれば、
年商5億円~10億円(推測)ぐらいのパンメーカーが生まれ
ます。多分高収益なはずです。まさに、『新・食パン』メーカー
です。ネット通販は、大きな商圏に対して、尖った商品を限定
した顧客を対象に販売するのに最適です。とんでもない高額品・
サービスを開発してみてはいかがですか?
※ネット通販環境の進化は、大商圏に向けて小資本でビジネス
を展開することを可能にしました。

■2:脱・マーケットイン、プロダクトアウトの法則
(SP経営協会)

「消費者がより必要とするものを、適切な価格で提供する」
マーケットインの発想が正しいとされてきました。もちろんマ
スマーケットに打って出るなら、この発想は大変重要でしょう。
一方、中小零細企業は、限られたコア技術しか有しておらず、
また、大量販売する広告力も持ち合わせないため、コア技術を
活用した、ある種の「プロダクトアウト」の発想で商品開発を
行うしかありません。さらに、低コスト生産ができるはずもな
く、価格競争の土俵にも立てません。であるならば、コア技術
を突出させて、とんでもない味や機能を、原価を無視してでも
提供できる高額商品へのチャレンジが現実的です。

中小零細企業が必要とする売上はほんの数億円から十億円程度
です。数百億円も、数千億円もの売上をいきなり狙う必要はあ
りません。であるならば、得意な分野(コア技術)で、最高品
質のとんでもない商品を作り、ほんの一部の人に高く買っても
らう商売(=アッパーニッチ戦略)を狙ってみたらいかがでし
ょうか。
販売価格(原価)の呪縛を外した時に、とんでもない商品が出
来上がるかもしれません。

■3:イノベーションは、生産者からの提案が起点!
(シュンペーター)

「経済における革新は、新しい欲望がまず消費者の間に自発的
に現われ、その圧力によって生産機構の方向が変えられるとい
うふうに行われるのではなく…(略)…、むしろ新しい欲望が
生産の側から教え込まれ、したがってイニシアティブは生産の
側にあるというふうにおこなわれるのが常である」(シュンペ
ーター)

○日常的に高頻度で消費する食品や雑貨、様々なサービスを、
消費者の近隣に高密度で配置したコンビニチェーン、この業態
を消費者は自ら望んだでしょうか?これらを利用してその恩恵
を知り、結果としてなくてはならないそれになったはずです。

○スマートフォンを手元に置いているはずです。この様な機能
を備えたIT端末を消費者は自ら望んだでしょうか?こんなこ
とができるから、便利で楽しいから、…ぜひ使ってください、
といわれて使い始めたら手放せなくなったはずです。

マーケットインではなく、プロダクトアウトする力、この創造
力こそ起業力(企業力)です。

 

ある関与先様の事例ですが、銀行に融資を申し込んだところ、
売上が急激に伸びていることを懸念され、融資を断られそうに
なりました。通常、売上が伸びることは良いことですので意外
に思われるかもしれませんが、金融機関は急成長企業を敬遠す
ることもしばしばあります。

「急成長企業が突然倒産した。」といったニュースを耳にされ
たことがあるかもしれませんが、急激な売上の増加は、場合に
よっては倒産確率も高めます。倒産確率が高まる要因は、急な
成長に、「人がついていけない。」「商品サービスのクオリテ
ィが維持できない。」など様々ありますが、結果として資金が
底をついてしまうことが直接的な要因です。

■ 急成長企業が陥りやすいパターン
1.売上を伸ばすためには、設備投資、仕入の増加、人材雇用
等が必須です。すべてにおいて資金が必要ですので、急成
長を目論む企業は、銀行から最大限の資金調達を行って、
他の企業よりも多くの資金を事業に投資します。
2.投資に比例して売上や利益が伸びると、銀行がさらに融資
をしてきます。その融資金を事業に投資して、さらに売上
と利益を伸ばします。売上や利益が伸びると、銀行がさら
に融資をしてきます・・・繰り返します。
3.やがて投資をしても売上や利益に反映されない踊り場が訪
れます。しかし、銀行から融資を止められないようにする
ため、踊り場でも無理をします。無理な経営が何らかのト
ラブルを招き、利益が大きく損なわれます。
4.赤字に転落することで銀行からの融資が止まり、たちまち
資金が回らなくなってしまいます。

弊所は、「資金は借りられる時に借りられるだけ借りましょう。」
というメッセージを平素から発信していますが、その目的は、
いざという時のために手元資金にゆとりを持ちましょうという
ことであり、限界まで事業に投資をすることを勧めている訳で
はありません。手元資金をしっかりと確保して倒産リスクを回
避しながら、自社に合った無理のないスピードで成長を目指す
ことを指針としています。

早く会社を大きくしたいという思いは経営者として当然のこと
と思いますが、踊り場に来たと感じたら、一休みしてはいかが
でしょうか。一旦売上の成長を止めることで、増加運転資金が
不要になるため、キャッシュフローが改善されます。踊り場で
少し体力をつけてから再度成長を目指すのが、無理のない財務
戦略だと考えます。

冒頭の関与先様ですが、創業から現在までの4年間の資金繰り
実績表を銀行に提示し、やみくもに成長を目指してきた訳では
なく、安全性を確保できる範囲で資金を事業に投資してきたこ
とを理解してもらいました。結果、無事に満額の融資を受ける
ことができています。

■1:(雨傘ではなく)日傘理論!

『金融機関が貸し出す傘はすべて「日傘」(○)です。「雨傘」
(×)ではありません。貸し出す資金が預金者から預かった預金
だからです。損失を出すわけにはいきません。故に金融機関は、
企業に対して健全かつ前向きな資金しか貸し出せません。』
※雨傘は、一部の制度融資・制度保証のみです。

「借りられる時に借りられるだけ借りておく」ことこそ最善の
策です。健全な時に、近未来に遭遇するかもしれない「谷」や
「まさか」に備えて資金調達を継続して行い続けること、これ
以外に方法が見当たりません。これこそが、金融機関対応の大
原則です。

■2:年商対比で、今より10%多くの運転資金を持ち続ける
こと!
※有り余るほどの現預金がある会社様・社長様は除きます。

○年商5億円の社長様、追加で5,000万円の運転資金を持
ち続けませんか?
○年商2億円の社長様、追加で2,000万円の運転資金を持
ち続けませんか?
○年商5,000円の社長様、追加で500万円の運転資金を
持ち続けませんか?

◆年商対比で、今より10%多くの運転資金を持ち続けること
の長短を考えてみましょう。

○短所は…
・借入金利を2%とすると、経常利益が0.2%ダウンします。
・その他の短所は見つかりません。
借入れと合わせて現預金も増えます。実質の借入金額は増えま
せん。また、返済の原資はこの借入金です。借入れ前の資金か
ら返済するわけではありません。返済しながら現預金も減少し
ますが、その分借入残高も減少します。

○長所は…
・余裕資金を持つことで、資金繰りの苦労から解放されます。
・経営上の安全率が向上します。万が一に備えられます。
・投資などの必要な資金需要に素早く対応できます。
(投資に使ったら別途資金調達が必要になりますが、一刻を争
う時はこの資金を利用できるとの意味です。)
慢性的に資金繰り業務に追われておられる社長様は少なくあり
ません。この資金繰り業務を極小にして、本来の社長業務に専
念できます。

◆どうすれば、年商対比で今より10%多い現預金を持ち続け
ることができるのか?
業績の良い時に運転資金の借入れを最大限行ってください。
約定返済付きの運転資金は、返済が伴います。時間の経過に伴
って、現預金残高=借入金残高も自然に減少します。一定間隔
で、借り換え、巻き直しを継続して行います。

○『借りられる時に借りられるだけ借りる。』
○『返済分を一定期間ごとに借り替え・巻き直しで補い続ける。』

長期間に渡り、戦略的に資金調達と巻き直しを、さらには金融
機関対応を丁寧に行うことで、ある程度の業績が伴えば実現で
きます。

■3:融資を受けるための数値計画作成のコツ!

売上目標が大きすぎると、その蓋然性の説明に苦慮します。
売上目標が小さすぎると、その借入の返済ができません。
※自社の事業を広く世に問う、このような状況の事業(数値)
計画ではなく、金融機関向けの計画書を想定しています。

創業融資や設備投資、新店出店時の融資を受けるためには、
金融機関に提出する数値計画の作成が必要です。どのような計
画を作成するのか、コツをお伝えします。
売上目標が大きすぎると、その蓋然性の説明に苦慮します。一
方、売上目標が小さすぎると、その借入の返済ができません。
銀行融資プランナー協会の推奨する財務部長として当事務所が
作成する数値計画は、融資金額を返済するために必要な(返済
後)損益分岐点売上を基準にした資金繰り計画書です。資金が
適切に回るように逆算して作ります。単に融資のためだけの計
画にはなり下がりません。社長様に対して、最低限必要な売上
を示唆する目標計画としての役目を果たしています。

中小零細企業経営者が忘れておられる(または知らない)
【金融機関対応に関する3つのルール!】を紹介しました。
行間の真理も含めてご理解いただければ幸いです。

銀行対応をスムーズに行うためには、銀行員が考えていること
を理解することが大切です。本日は、銀行員が重要視するポイ
ントのひとつである「債務償還年数」について解説いたします。

債務償還年数とは、融資先の返済能力を判断するための指標で
す。債務償還年数が長い程、新たな融資は出しにくくなります。

債務償還年数を理解するためには、まず簡易キャッシュフロー
を知らなくてはなりません。簡易キャッシュフローとは、企業
の年間返済可能額を表します。計算式は「純利益+減価償却費」
です。純利益とは、税金を支払った後の会社が自由に使えるお
金です。減価償却費とは、帳簿上の経費であり、実際にお金が
出て行った訳ではありませんので、手元に残っていると考えら
れるお金です。

例えば、減価償却を500万円したうえで、純利益が300万
円残れば、500万円+300万円の計800万円が手元に残
るため、年間800万円の返済が可能な企業という見方をしま
す。

次は借入の考え方です。債務償還年数を考える場合、実際の借
入額をそのまま借入額とする訳ではありません。次の算式で導
きだした額を借入額とします。「有利子負債残高-現預金-所
要運転資金」です。有利子負債とは役員借入金等は除いた、金
融機関からの借入を指します。割引手形も含みます。しかし、
一方で保有している預金を差し引かなければ、純粋な借入残高
は出ませんので、例えば、5,000万円の借入と2,000
万円の預金がある場合、実質的な借入額は、3,000万円と
考えます。

借入に関する考え方はこれで終わりではありません。さらに、
いつも必要になる運転資金は借入から差し引くことができます。
例えば、決算書から、常に1,000万円の運転資金が必要な
企業と読み取れれば、3,000万円から、さらに1,000
万円を差し引いた2,000万円を借入額とみなします。

債務償還年数とは、借入を何年で返済できるかという指標です。
今回のケースは、借入額が2,000万円で、年間の返済可能
額は800万円ですので、2,000万円÷800万円=2.5
年となります。

一般的に債務償還年数が10年を超えると新たな借入はしにく
くなります。銀行員が必ず見ているポイントですので、自社の
債務償還年数を頭に入れて交渉してください。

前回のつづきです。
事業性評価を行うアプローチは企業価値を評価するアプローチ
と似ています。多くの投資家から自社株の売買という洗礼を受
け続ける上場企業の例で解説します。
上場企業の企業価値(時価総額=株数×株価)は、その企業に
対する事業性評価の結果です。

■例えば、以下の2社の企業価値は概ね同じです。

◆A社(マザーズ市場)
売上高(連結) 約20億円
営業利益 ▲12百万円

◆B社(東証1部市場)
売上高(連結) 約280億円
営業利益 770百万円(純利益215百万円)
時価総額=企業価値=約200億円です。
(平成30年6月初旬直近決算値概算)

上場企業の最終到達点企業価値は、概ね純利益の14~15倍※で
す。株式市場(投資家)は、この「A社B社の近未来の純利益
が13~14億円までは届く」とみているようです。故に、現時点
における企業価値約200億円を総意として容認しています。
〔※上場企業はその信頼性とリスク分散・流動性の担保により、
14~15倍の将来利益が企業価値に織り込まれています。一方、
未上場企業は、概ね3~5倍の将来価値を見込むのが一般的です。〕
「A社B社の近未来の純利益が13~14億円までは届く」、この
見立てが変われば、株価は上にも下にも動きだします。
現に日々動いています。これが上場企業の株価です。
(※株価を構成する要素はたくさんあります。一つの考え方と
してご理解ください。)

なぜ、売上高も利益も大きく異なるA社とB社の企業価値が近
似しているのか?ここに事業性評価の考え方が組み込まれます。
「A社は、足元は悪いが、その事業立地やビジネスモデルが相
当おもしろいので、近い将来相当利益を上げてくれるはずだ。
また、経営陣も信頼できる。」このような評価が存在するはず
です。
A社ほどではありませんが、B社に対しても、その安定性と成
長性から高い評価を与えています。B社に対しても、市場は純
利益の90倍以上の企業価値を容認しています。
足元の経営数値だけでなく、その事業の立地やビジネスモデル、
成長性の実績を評価して、将来に対して総合的な企業価値を与
える、これが上場企業に対する投資家の評価です。

■事業性評価の良い事業、企業価値の高い事業とは何か?

この疑問に対する解は多数ありますが、一つのアプローチとし
て以下の4つが挙げられます。
1.市場規模が適切で、(力相応)一番を狙える事業に取り組
んでいる。
2.急成長市場に着眼して、(力相応)一番を狙える事業に取
り組んでいる。
3.市場は縮小しているが、残り福(居残り一番)を狙える事
業に取り組んでいる。
4.(大き過ぎない)市場を自らが創造できそうな事業に取り
組んでいる。

「一番と二番の違いは、二番と百番の違いよりも大きい。」
船井総合研究所創業者、船井幸雄先生のお言葉です。一番にな
ると利益が期待できます。また、それが成長市場であるなら、
長期間にわたって続きます。故に、一番は偉大です。
一方、創業事業者や中小事業者が一番になるためにはどうすれ
ばよいか?これが事業立地の選定です。具体的には、『提供す
る商品やサービス、さらに受け手の顧客層の両方を絞り込む
(Simple化)ことで、自社が一番になれる市場を創るこ
と』を指します。創業事業者や中小事業者でも一番になる道は
あります。

A社(マザーズ市場)は、AIを使って、巨人たちの隙間をつ
くある分野での一番を模索しています。故に、市場は高い評価
を与えているようです。

一番になれる市場を創造してください。創業事業者や中小事業
者でも一番になる道は必ずあります。そして、これこそが経営
者に課せられた最大のミッションです。どこにでもある、誰で
もやっている、何番目かわからないような事業からは脱却しま
しょう。そのためには、提供する商品やサービス、さらに受け
手の顧客層の両方を絞り込むこと(Simple化)が重要で
す。

「よろず支援拠点」とは、その名前のとおり、中小規模事業経
営者の、経営上のあらゆる相談に乗ってもらえる無料の経営相
談所です。

よろず支援拠点は、平成26年6月に改正された小規模企業基
本法に基づき、地域経済や雇用の重要な担い手である小規模事
業者のために設置された相談窓口です。

以前から小規模事業者の相談対応を担う支援機関はありました
が、機関や地域ごとに、支援のレベル・質・専門分野、活動内
容等にバラツキが見られました。よろず支援拠点を各都道府県
に整備し、地域の支援機関と連携することで、相談体制の質や
幅の向上を図ることが狙いのようです。

よろず支援拠点は、中小企業・小規模事業者の起業から安定ま
での各段階のニーズに応じて①既存の支援機関では十分に解決
できない経営相談に対する総合的・先進的な経営のアドバイス、
②事業者の相談に応じた「適切なチームの編成」、③案件に応
じた「的確な支援機関等の紹介」といったきめ細かな対応を行
うことができます。

中小企業庁が発表した少し古いデータですが、よろず支援拠点
には、平成26年6月から平成28年9月までで約42万件の
相談があり、各都道府県とも増加傾向にあるようです。相談内
容は、売上拡大が56.8%で最も多く、次に経営改善・事業
再生が12.5%、続いて創業相談が11.4%、事業承継
1.9%、廃業0.3%となっています。具体的には補助金等
の施策活用から、事業計画策定、販路提案、IT活用、知的財産
等、多岐に渡っています。

中小企業の経営者は、営業、財務、人事、経営企画等の役割を
一人で担っているケースが多く、求められる知識が多岐に渡り
ます。また、日々の悩みもつきませんが、気軽に相談できる相
手も多くありません。もちろん、専門家に有料で経営相談をす
るのも選択肢のひとつですが、費用を捻出できない、そもそも
誰に依頼してよいかもわからないという場合はよろず支援拠点
を活用してみてはいかがでしょうか。

■よろず支援拠点の一覧
https://yorozu.smrj.go.jp/base/

前回のつづきです。
「事業の内容や成長可能性等を適正に評価(事業性評価)して
…」、様々な人が行う様々な事業の、その事業内容や成長可能
性を正しく評価できる方法は存在するのでしょうか?
答えは、NOではないがYESとも言い難い、と言ったところ
でしょうか。この前提で話を進めます。

前回とは少し違う視点で整理します。

1.過去から現在までがうまくいっておれば、さらに、そのう
まくいくレベルが向上しておれば、概ね当面はうまく行きそう
と推定できるため、事業性評価は○になるはずです。
具体的には、過去の決算書を数期並べて、右肩上がり(又は横
ばい)の増収・増益(又は安定収益)、直近の資産状況(BS)
に不備がなく、さらに、この成長曲線(横這い)の延長線上の
事業計画を持っておれば事業性評価は○でしょう。

2.事業体としての過去が無い新設事業者の評価(創業融資)
時には、経営者の経歴と自己資金を勘案します。これは、事業
体の過去を経営者の経歴に、足元のBSを自己資金に置き換え
た考え方です。さらに、創業事業計画の妥当性は、その計画の
蓋然性が適用されます。これぐらいの売上は立ちそう、経費は
これぐらいあれば足りそう、このような一般常識をあてはめて
判断します。経歴と自己資金、計画の蓋然性が整えば、創業者
の事業性評価は○になるはずです。
※自己資金要件については、政策的に審査が緩くなる趨勢です。

3.事業の将来性を評価する時は、その事業の事業立地が勘案
されます。これは1.を前提にした上での、加点又は減点の要
素です。
例えば、尖った個性の有る事業は、事業立地として加点要素で
しょうが、どこにでもある○○屋さんでは加点されません。
逆に、不況業種は減点でしょう。何屋さんをやるか、事業立地
も事業性評価には重要な要素です。事業立地は、1.の条件が
整った上での要素ですが、1.の悪さを覆せる事業立地の優位
性があればこの限りではありません。ただし、この判断は極め
て難解です。

4.知的所有権の有無も事業性評価のひとつになるはずですが、
3.と同じく、1.の条件を補完する要素と考えた方が良さそ
うです。もちろん、1.の悪さを覆せるぐらいの知的所有権で
あれば別ですが。

事業性評価(融資)、この発想は決して目新しいものではあり
ません。金融機関は従前より、金融庁の検査マニュアルの有無、
内容に関わらず、事業性評価を行ってきました。金融機関が求
める取引先は、あくまでも返済してくれる会社・安定した会社・
伸びる会社であるため、事業性評価は必要でした。

◆金融検査マニュアルが整備される前は…
1.を軸に、3.や4.その他あらゆる要素を加点・減点要因
に組み込んで、金融機関独自の融資判断基準を有していました。
結果、時に大胆な企業支援が実施され、後のBIGカンパニー
を創出してきました。

◆金融検査マニュアルが整備された後は…
1.を判断基準にしなさいとする厳しいルールが課されたため、
3.や4.の要素を融資判断に組み込むことが難しくなったた
めに、画一的な融資審査が行われるようになりました。この背
景には、バブルの崩壊で傷ついた金融機関自身のBSを是正す
る狙いがあったためです。また、この期間に金融機関は3.4.
その他の判断力=目利き力を無くしてしまったようです。

◆今後は…
金融検査マニュアルが整備される前に戻るはずです。1.を軸
に、3.や4.その他あらゆる要素を加点・減点要因に組み込
んで、金融機関独自の融資判断基準が構築されることでしょう。

ただし、
◎あくまでも1.が判断基準の肝であることに変わりはありま
せん。
◎3.や4.その他は、企業側が、積極的に情報発信していか
ないと、金融機関には気付いてもらえません。

事業性評価融資の導入で、金融機関の融資は変化するはずです。
ただし、その変化は突拍子もないものではありません。事業体
として至極当然のことを突き詰めていくことこそが、金融機関
が行う事業性評価融資の基準に適合することになります。ただ
し、今まで以上に金融機関にわかってもらう努力、とりわけて
情報提供を継続的に行うことが重要になってきます。このこと
は、肝に銘じてください。
※金融機関はモニタリング機能を充実させるはずです。

新規資金調達と既存借入の借り換えにより、リスケジュールを
回避した事例をご紹介します。

下記A社は、「資金繰りが厳しいので借入のリスケジュールを
検討している。どのように進めればよいか?」というご相談で
来所されました。

会社名:A社(仮称)
事業内容:広告デザイン業
営業年数:22年
資本金:2,000万円
直近売上高:約1億円
直近純利益:約▲300万円
有利子負債総額:約3,400万円
自己資本:約200万円

まず直近の決算書を拝見したところ、売上高が急激に落ち込ん
でおり、純利益は2期連続で赤字という状況でした。しかし、
足元の試算表を確認すると、9カ月経過時点で424万円の経
常利益が出ています。人員を減らすなど、固定費削減努力の効
果のようです。

当初はリスケジュールのご相談でしたが、リスケジュールはデ
メリットもあるため、出来れば避けたい手段です。足元の利益
が継続できれば、新たな資金の調達と、既存借入の返済期間を
長期化することで資金繰りが改善できると考えました。

早速説明資料を作成し、ある信用金庫の担当者に借り換えの相
談をしました。財務状況にいくつか問題点はあるものの、毎月
68万円を返済してきた実績を評価していただき、前向きに取
り組んでいただくことになりました。結果は次のとおりです。

【既存借入の状況】
・K銀行保証付融資残高27,674千円(返済額374千円)
・日本政策金融公庫残高6,300千円(返済額300千円)
・合計借入残高33,974千円(合計返済額674千円)

【借り換え後】
・H信金保証付融資11,202千円(返済額133千円)
・H信金プロパー融資16,472千円(返済額196千円)
・日本政策金融公庫10,000千円(返済額142千円)
・合計借入残高37,674千円(合計返済額471千円)

新規の資金調達が3,700千円できた上で、毎月の返済額を203
千円引き下げることができました。

H信金の担当者によると、「直近の決算が赤字の場合、新規で
取り上げるのは通常難しいが、返済が可能であることを、資料
で丁寧に説明いただいたことが良かった。」と仰っておられま
した。

リスケジュールをする前に、借り換えという選択肢も検討して
みてください。

平成27年度金融行政方針(15年9月)では、事業性評価につい
て、「…担保・保証に依存する融資姿勢を改め、取引先企業の
事業の内容や成長可能性等を適正に評価(事業性評価)し、融
資や本業支援等を通じて、地域産業・企業の生産性向上や円滑
な新陳代謝の促進を図り、地方創生に貢献していくことが期待
される。…」と解説されています。

金融行政の転換期です。少しずつ、中小企業金融の現場にも動
きが出てきました。事業性評価融資の導入で変わること、変わ
らないことを整理いたします。

■以下の1と2は、今後とも変わりません。

◆1.金融機関が保有する傘はすべて「日傘」です。変わりま
せん。

良い会社(返済してくれる会社)に対して融資を行おうとする
基本姿勢は変わりません。経営が、現状もうまく行っていない
会社、将来もうまく行きそうでない会社に対する融資は実行さ
れません。金融機関が有する傘は「雨傘」ではなく「日傘」※
である点は変わりません。
〔※一部の制度融資・制度保証は除きます。〕

◆2.資本の充足状況(BS)と生み出すキャッシュフロー
(PL)の金額、この二つの判断基準は、今後とも融資審査の
礎です。

現行の評価方法は存続します。資本が充足していること、生み
出すキャッシュフローが多いこと、これらの(現時点における)
良い会社の条件は変わりようがありません。この二つは、これ
からも財務上の良し悪しの判断基準であるはずです。ただし、
少額の資本正と資本負(債務超過)の差異で大きく結果が変わ
ることはなくなるかもしれません。また、債務償還年数10年未
満が正常先、このような画一的な判断も減るはずです。

◎上記の1と2は、融資可否判断の原理・原則です。これから
も不変です。

■以下の3は、少しずつ変わってきました。

◆3.担保・保証依存からの脱却が徐々に進みます。

担保と保証に依存する融資姿勢は徐々に改められるはずです。
逆に、優良な担保や保証が有っても、事業の評価が悪ければ融
資を受けられないことになります。この傾向は現時点でも顕在
化してきました。

■以下4の変化が、事業性評価融資の浸透で起きてくるはずで
す。今までの基準+◆4とご理解ください。

◆4.事業の将来性を見極めるための評価、事業性評価が導入
されます。

「現状の財務状況は良くないが、将来を見越して融資を実行す
る」または、「現状の財務状況の程度を越えて、将来を見越し
て多額の融資を実行する」、この将来を見越しての部分が事業
性評価です。
経営の現時点における結果を財務(資本の充足状況とキャッシ
ュフロー)から判断して、良ければ融資可、悪ければ融資不可
とする現行フローの変更が金融機関に求められます。現行フロ
ーに付加して、将来良くなる見込み、良くならない見込み、こ
の判断を行う基準の構築が必要になります。
当該企業体の経営が将来どうなるか?これを見込むのは、現時
点の財務を分析して判断するのとは比べ物にならないぐらい難
解です。ただ、この新しいソリューションを開発・構築するこ
とを、地域金融機関は求められています。構築できなければ淘
汰されるはずです。

■地域金融機関が事業性評価を導入する方向性は、どの金融機
関も概ね同じです。

(1)過去から現在までの流れ、将来の計画を踏まえて判断す
ることになります。

○現時点の財務の良し悪しではなく、将来の経営全般を予測す
るために、過去から現在までの流れの把握・分析が必要になり
ます。事業性評価結果の進捗確認や見直しのための継続的なモ
ニタリングがますます重要になります。

(2)財務以外の企業情報を収集して判断することになります。

○会社の将来展望・ビジョン
○経営者の情報、経歴や強み、人となり、後継者の有無
○市場における優位性や競合状況
○商品・サービスの個性・特徴
○会社の課題と強み・弱み
等々、財務以外の情報の収集・分析が必要です。
金融機関は、これらを総合的に勘案して事業性評価を行います。
今までよりも、より深く対象企業を理解する必要性が生まれま
す。

(1)(2)を突き詰めて行く過程において、独自の事業性評
価を開発することを地域金融機関は期待されています。この独
自の事業性評価が、そのまま金融機関の個性となって、より広
範な企業支援を行える金融業界が近い将来生まれることでしょ
う。一方、この過程で、多くの地域金融機関の淘汰・統合も進
むようです。

■まとめ…

現時点の財務状況及び担保・保証の有無で融資の可否を判断し、
その可となる企業に集中して融資を行った結果、金融機関同士
の(金利)過当競争が生じています。今後は、現時点の財務状
況や担保・保証の有無のみに依存せず、それに付加して新たな
融資基準(事業性評価)が構築されるはずです。容易ではあり
ませんが、この取り組みは、融資規模を拡大する動きであるこ
とに間違えありません。歓迎すべき動きです。
一方、情報をより正確に提供できる企業が、事業性評価の対象
になりやすくなるはずです。情報提供力・説明力が資金調達力
とより相関するようになります。融資を受ける側の力量も問わ
れます。

金融マンは融資をするのが仕事です。一般的な営業職と同じ、
営業マンでもありますが、「借りてください」と自分から営業
をしておきながら、審査の結果、「融資はできません」とお断
りしなくてはならない点において特殊です。金融マンの心情を
考えてみます。

■ 金融マンは深刻な案件に手を出したくありません。
企業がお金を必要とする理由は様々ですが、時には社命がかか
っている場合もあります。何とかしたいと思っても、頑張れば
頑張るほど蟻地獄にはまることがあります。金融マンにとって、
お金を必要とする社長様の期待に応えられないことは、大きな
精神的ダメージとなります。深刻な案件は出来るだけ避けたい
と考える心情は理解できます。

■ 金融マンは断る可能性を想定して話を聞いています。
上述のとおり、深く入り込んだ後にお断りすると、トラブルに
なる可能性が高くなります。トラブルにならなくても、大多数
の社長様は不快感を示します。金融マンはとにかくトラブルを
嫌います。融資ができないのであれば、早いタイミングで断ら
なくてはと考えているため、ネガティブな情報を早めに聞き出
そうとします。金融マンに対して、前向きな話よりも後ろ向き
な話をするイメージを持っている方が多いと思いますが、この
ような思考が根にあるからだと感じます。

■ 金融マンは実績を上げたいと考えています。
金融マンは基本的には融資をしたいと考えています。営業目標
も課せられています。しかし、幅広く融資をすればするほど、
トラブルにあう確率も高くなるため、その狭間でジレンマを抱
えています。

金融マンに求められる最も難しいスキルは、「断る」というス
キルです。融資を断るタイミングは、遅すぎても早すぎてもい
けませんが、早い方がましです。よって、少しでもネガティブ
な面が見えると、早々に断ろうとする金融マンが多くいます。
もしくは、こちらの説明の都度、ネガティブな見解を述べて、
防御線を張ろうとする金融マンもよくお見かけします。

金融マンは実績を上げたいと考えているにも関わらず、このよ
うな行動に出るのは、融資が出せなかった時に、強く責められ
ることを警戒しているためです。信頼関係がしっかりと構築で
きていて、最終的にNGであったとしても、理解を示してもら
えるという確信があれば、じっくりと話を聞いてくれます。も
しくは、信頼している人からの紹介の場合も、トラブルには発
展しにくいと考えるでしょう。金融マンの心情を察して、まず
は安心させてあげることが大切です。