経営の現場では、税理士、社労士、コンサルタントなど、さま
ざまな専門家の力を借りる機会があります。経営の課題は広く、
専門知識のサポートはとても心強いものです。
ただ、最近少し気になるのは、専門家に頼りすぎてしまう経営
者が増えていることです。専門家に意見を求めるのは良いこと
ですが、経営判断そのものまで任せてしまうと、思わぬリスク
を生むことがあります。
1.判断を委ねすぎると責任がぼやける
「専門家がそう言ったから」と判断の理由を外に置いてしまう
と、社長自身の責任感が薄れます。どんなアドバイスも、最終
的な判断と責任は社長にしか取れません。意見は“材料”であり、
“結論”ではない、という感覚を持つことが大切です。
2.専門家の視点は限定的
専門家はそれぞれの分野に詳しい一方で、視野がその分野に偏
ることもあります。たとえば税務の専門家は節税を、労務の専
門家は法令順守を優先します。しかし経営は全体のバランスで
成り立つものです。専門家の提案を「経営の全体設計」にどう
取り込むかは社長の役割です。
3.現場感覚を失わない
外部の専門家に任せきりになると、社内で数字や状況を把握す
る力が弱まります。会計や人事の判断を外注しているうちに、
経営者自身が現場の変化を感じ取れなくなることもあります。
専門家にお願いする部分と、自社で見るべき部分をしっかり線
引きしておきましょう。
4.依存にはコストもついてくる
専門家に頼るほど費用は増えます。相談のたびに時間もかかり
ます。アドバイスを求めること自体は良い投資ですが、“何を
決めるための相談か”を明確にして依頼することで、ムダを減ら
すことができます。
5.「使う力」を身につける
大切なのは、専門家をどう“使いこなすか”です。意見をもらっ
たら、自社の状況に照らして整理し、判断の軸を自分の中に持
つこと。専門家は社長の代わりに判断する人ではなく、考える
ための材料を提供してくれるパートナーです。
経営者に必要なのは、「専門家に頼らないこと」ではなく、
「専門家をうまく使う力」です。
専門家の助言を取り入れながらも、最終的な判断は自分の言葉
で行う。この距離感を保てる経営者こそが、ブレない経営を続
けられます。
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