ビジネスの環境は常に変化しています。先進的な企業は新しい
事業立地で新しいビジネスモデルを創造し続けています。新し
いビジネスモデルを一部ご紹介します。貴社に置き換えて考え
てみてください。

■トレンドのビジネスモデル

◆1.サブスクリプション(定額)サービスモデル
サービスやモノを、定額で使い放題で利用できるビジネスの型
です。映画や書籍・マンガ・音楽などのデジタルコンテンツの
定額サービスは良く知られていますが、スーツやワイシャツな
どを定額で一定数定期的に届けてくれるサービスもあります。
売上の安定と、継続による新規顧客開拓コストの削減を狙うモ
デルですが、モノや物流の伴う事業では、物流費などのコスト
を賄えず、撤退する事業者も目立ってきました。

◎貴社の事業にあてはめて考えてください。定額制にして囲い
込んだ顧客に対して、サービスやモノを使用量のキャップを掛
けずに販売する方法はありませんか。

◆2.シェアリングビジネスモデル
物品を多くの人と共有したり、個人間で貸し借りをしたりする
際の仲介ビジネスの型です。消費者が所有に対するこだわりを
捨てた、または、あきらめた背景があるようです。乗り物、住
居、家具、服など、ありとあらゆるものが対象になりつつあり
ます。シェアリングビジネスを牽引する代表的な企業群が、ど
んどん生まれています。「民泊」や「ライドシェアリング(自
動車を相乗りする)」等は、様々な問題点も内包していますが、
その市場はできあがりつつあります。

◎貴社の事業にあてはめて考えてください。今まで販売して売
り切ってきたモノやサービスを、期間を決めて貸し出すことは
できませんか。稼働率・単価設定・資金余力がポイントです。

◆3.プラットフォームビジネスモデル
GAFA〔グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン〕
など、世界の時価総額上位企業の大半はプラットフォーム企業
です。プラットフォームとは、自社が構築した場に、多くのサ
ービス提供者を引き込んで、その場で取引を製造するメーカー
のことです。(定義は諸説ありますが。)
自前のプラットフォーム上での取引に対して金融ビジネスを付
加することも定番です。

◎貴社の事業にあてはめて考えてください。自社の提供する
サービスや商品を軸にして、他社も引き込んだ販売体制を整備
して、全体で集客効果が上がればこれも一種のプラットフォー
ムです。場代(定額又は売上歩合)がプラットフォームの収益
です。

■トレンドの言葉

◆1.リカレント教育
リカレント教育とは、基礎教育を終えて社会人になったあと、
あらためて就労に活かすための学び直しを意味します。趣味で
はなく、社会で働き続けるために役立つ学びとの意味合いが強
いように思います。本来は当たり前のことですが、社会人にな
ってから学び続ける習慣のない社会人には必要な概念なのでし
ょう。
『…自己啓発を実施した人と実施しなかった人の年収変化の差
額は、1年後には有意な差はみられないが、2年後では約10万円、
3年後では約16万円でそれぞれ有意な差がみられている。…就
職できる確率が、10~14%ポイント程度増加…』
(内閣府データより引用)
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je18/pdf/p02023.pdf#search=%27%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%88%E6%95%99%E8%82%B2%27

ジョギングをしている人が、していない人より早く走れるのは
当たり前の論理です。多くの社会人が理解すべきことですが。

◎貴社にあてはめて考えてください。従業員に勉強する機会を
提供できていますか。経営者から従業員への啓蒙と、その環境
整備が必要です。デジタルコンテンツなどを活用すれば廉価で
対応できます。

◆2.デジタルコンテンツ
学びをテーマにデジタルコンテンツの一例を紹介します。eラ
ーニング、オンライン講座…呼び方は多様ですが、スマホ・パ
ソコンにアクセスするだけで、様々なテーマの講座が手元で聴
講できます。繰り返して受講することも可能です。受講するた
めのコストや時間を削減できます。講師を招聘する必要もあり
ません。講師も、講座をデジタル化して配信する、一度収録す
ればどこでも・いつでも・だれでも・何度でも視てもらえます。
聴講に関する条件設定は自由です。これがデジタルコンテンツ
です。

◎貴社の事業にあてはめて考えてください。貴社の商品やサー
ビスをデジタル化して販売できませんか。また、デジタル化し
て広告できませんか。廉価でデジタル化するソリューシンはす
でに整備されています。

◎参考:銀行融資プランナー協会は、【リカレント教育・従業
員教育用eラーニング教材】を廉価でご提供できます。
お問合せください。

卸事業を行うA社様の事例です。会社の幹部に経営を引き継ぎ
たいと考えており、そのための対策が求められていました。事
業承継時に最もよくある課題は下記の2点です。

1.事業を譲り受ける方が株式の購入資金を用意できない。
2.会社の借入に対して連帯保証をすることに抵抗がある。

A社も同様に上記の課題に直面していました。資本金は
1,000万円(1,000株)ですが、幹部の方が個人的に
用意できる資金は100万円程度であり、議決権の過半数も取
れない状況です。

この問題は自己株の買い取りにより解決しました。自己株の買
い取りとは、社長が持っている株式を、会社が自ら買い取る方
法です。会社が買い取った株式は議決権を持ちませんので、社
長が保有している株式1,000株のうち、900株を会社に
900万円で売却しました。これにより、社長は900万円の
売却代金を手にしたうえで、残りの株式だけで100%の議決
権を維持できます。残った100株を幹部の方に100万円で
売却すれば、議決権の100%を引き継ぐことができます。

次に個人保証の問題です。国は、できるだけ経営者から個人保
証をとらないようにしようと「経営者保証に関するガイドライ
ン」を定めましたが、実務上は銀行も保証協会も簡単には無保
証に応じてくれません。最もこの制度に積極的に取り組んでい
るのは日本政策金融公庫です。

A社も個人保証のついた借入が3,000万円超ありましたが、
日本政策金融公庫より4,000万円の無保証借入を行うこと
ができたため、既存の金融機関とは交渉がしやすくなりました。
もちろん日本政策金融公庫は既存借入の肩代わり資金として融
資をしてくれた訳ではありませんが、交渉が難航すれば一括返
済という最終手段で対応できます。

これらの事業承継対策は短期間に行った訳ではありません。特
に自己株の買い取りは、株価の問題もあるため、複数年に分け
て行っており、自己株式の買取についても、金融機関の資金協
力があって実現しました。

事業承継時にネックとなる問題は、「資金」です。事業承継を
考えておられる経営者様は、是非ご相談ください。

 

(少し古いデータですが)『経済産業省経済産業政策局新規産
業室は、平成19年度創業・起業支援事業において、ベンチャー
企業を対象に、失敗、トラブル、ヒヤリとした経験についての
インタビュー調査を実施し、調査結果を事例として取りまとめ
ました。当該調査をもとにベンチャー企業の経営危機データベ
ースを作成いたしました。調査結果の概要は以下のとおりです。』
(経産省ホームページより)
相当手間暇をかけて調査されたデータがあります。ご確認くだ
さい。

■萌芽期(ほうがき)~成長初期の失敗の原因について以下記
載します。

1.経営管理能力の欠如 16件
2.商品・マーケティング 戦略ミス 13件
3.営業力の弱さ 8件
4.資金繰りの悪化 5件
5.市場環境の悪化 5件
6.組織の機能不全 5件
7.研究開発・技術開発の遅れ 5件
8.コスト意識の低さ 高コスト体質 3件
9.社長の人的問題 2件
○総計  72

※詳細は以下を確認してください。
http://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/kikidatabase/index.html

■併せて、創業時に陥りがちな楽観主義について整理いたしま
す。ご確認ください。

◆1.『計画通りに進む』との楽観主義!

○10期目の会社が立てた11期目の計画、概ね計画通りに進
捗するでしょう。
○3期目の会社が立てた4期目の計画、計画の見積もりには不
安が残ります。
○創業時に立案した1期目の計画、過度に保守的に見積もらな
い限り当たりません。

計画通りに事業は進まないのです。これが実態です。それでも
計画は目安として必要です。目安を立てて、ずれを確認しなが
ら事業を運営するために必要です。

◆2.『少ない費用で立ち上がる』との楽観主義!

計画通りに進捗しなかったとき、それを解決するのは時間です。
当初立てた仮説を修正しながら試行錯誤を繰り返します。事業
自体が的外れでなければ、時間を要しながらも着地します。
計画に対して余分に費やした時間を埋められるのは資金・お金
しかありません。資金不足で頓挫する、これは時間を稼ぐ資金
を確保できないとの意味です。

◆3.『資金が必要になればお金は借りられる』との楽観主義!

計画通りに進まずに、時間が必要、時間を確保するための資金
が必要になった折に、金融機関に駆け込んで、資金を求めよう
とします。これは原則間違えです。難解です。
計画が遅れた、時間を掛ければ軌道に乗る、この蓋然性の説明
は容易ではありません。金融機関は原則、足元の進捗・実績を
基準に、将来生み出すキャッシュフローを勘案して融資の可否
を判断します。
(金融機関が有するのは「日傘」であって「雨傘」ではありま
せん。)

◎どうすればよいか…計画をしっかり立案します。一方で、
その計画を鵜呑みにせずに計画が遅れることを想定して資金を
最大限調達し続けること、これが正解です。

◆4.『安くしても売れればやって行ける』との楽観主義!

「とにかく売れさえすれば何とかなる」、このように考える社
長様も少なくありません。「売れなければ何ともならない・始
まらない」は正解ですが、「とにかく売れさえすれば何とかな
る」は正しくありません。
一定額以上売れた時には一定以上の利益を捻出できる値決め・
価格設定は経営上極めて重要です。手間暇をしっかり掛けて、
よくよく考えて、シミュレーションをしっかり行って、腫物に
触るように慎重に決めてください。とにかく値決めに対しては
全身全霊を注いでください。

◎どうすればよいか…安売りは絶対にしない、価格を売るため
の道具に使わない、安売りでしか勝負できない事業なら、事業
自体を再考してください。

知って、学んで備えてください。創業に関する手続き・資金調
達・計画立案についても、当事務所にご相談ください。

融資を受ける際の金利が決まるメカニズムは、企業側には良く
分かりません。金利に無頓着すぎると相場よりも高い金利を支
払わされる可能性がありますし、金利にこだわりすぎると金融
機関から融資取引そのものを敬遠される可能性があります。

◆制度融資の金利
日本政策金融公庫や保証協会の制度融資の中には、あらかじめ
金利が決められているものがあります。「不況業種の救済」
「独立開業者の支援」といった政府の施策に連動しているため、
金利は元々低めに設定されており、誰が利用しても同じ金利で
す。

◆貸し手の収益構造
信用金庫は、都市銀行に比べて一般的に0.5%から1.0%
程度、貸出金利が高く設定されています。これは収益構造の違
いが理由です。都市銀行は市場から大ロットで資金を調達し、
大企業向けに大ロットで融資を行うため、効率良く資金を調達
・運用ができます。一方、信用金庫は、職員が小ロットの定期
預金を数多く集め、中小零細企業向けに小ロットの融資を数多
く行うため、都市銀行に比べてコストがかかります。取扱高が
大きいほど安くなるというのは一般的な商売と同じです。

◆借り手の信用リスク
借り手の信用リスクによっても金利は変わります。金融機関は、
借り手の信用リスクに応じて引当金を積んでいますので、引当
金以上の金利設定をしなければ取引採算を確保することができ
ません。当然ながら、各融資先の取引採算も見ていますので、
採算が取れていない融資先に対しては、採算が合うよう金利を
上げてもらう、もしくは取引を解消する、などの対応策を検討
しています。

◆金融機関との交渉
貸出金利は、貸し手の調達コストと借り手の信用リスクで決ま
ることが分かりましたが、企業側にとって最も重要なことは、
「まず借りる事」です。「金利が○%以下だったら借りても良
い。金利が○%超だったら借りない。」というぐらい強い立場
であれば話は別ですが、ほとんどの会社は貸してもらえなけれ
ば困る立場だと思います。貸し手に収益メリットが無くなるほ
どの行き過ぎた金利交渉を行った結果、調達そのものが出来な
くなっては本末転倒です。1,000万円(返済期間5年)の
借入れで金利を0.1%引き下げたとして、5年間で約
25,000円、月416円程度の負担軽減にしかなりません。
相手の利を確保することが商売の大原則であることを考えると、
最大の事業パートナーである金融機関との金利交渉は慎重に行
うことをおすすめします。

…前回号からのつづきです。

創業者様からの相談に対するQ&Aを整理します。経営は百社
百様です。故に、これが正解でこれは間違いなどと断定するつ
もりはありませんが、それでもある程度の方向性をお示しする
ことはできます。以下、ご確認ください。
■〔Q&A〕その7:安売り経営は極めて難解です?

●(創業予定者G氏)
『ラーメン屋さんの開業準備中です。注意すべき点をアドバイ
スしてください。』
◎(当事務所担当者)
『貴店の特徴・差別化のポイントを教えてください。』
●(創業予定者G氏)
『おいしいラーメン屋さんはたくさんありますが、けっこう値
段が高いように思います。安い値段、できればワンコイン
(500円)以下で、おいしいラーメンをおなか一杯食べられる
店にしたいです。』
◎(当事務所担当者)
『他店より安いのにおいしいラーメンを作れる理由を教えてく
ださい。』
●(創業予定者G氏)
『…沈黙…』
…つづく

※「良いものを安く」これは概念であって実体ではありません。
論拠なく「良いものを安く」提供したら、うまくいかなければ
売れない、うまくいっても繁盛貧乏、いずれも成功ではありま
せん。中小企業が低価格を狙う時、商売はほぼ失敗します。
やめましょう。

■〔Q&A〕その8:創業時の事業計画書の注意点!絞り込みと
地上戦から!

45歳の創業予定者様からのご相談です。自己資金200万円、創
業融資希望額400万円、創業資金の主な使途はWEB開発とWEB
プロモーションです。WEB開発とプロモーション投資で300万
円を予定しています。事業計画書も持参されました。
・WEB受注で初年度年商1,500万円、利益100万円。
・人を増やしながら3年後には年商6,000万円、利益500万円。
細かい与件もびっしり書かれた緻密な計画書です。

●(創業予定者H氏)
『社員教育のコンサルタントを始めます。私は、某大企業で教
育担当をしていました。新入社員から幹部候補生まで、幅広く
対応できます。実績をあげてきました。コンテンツもたくさん
持っています。ホームページを立ち上げて受注します。』
◎(当事務所担当者)
『前職ルートでの受注は期待できますか?』
●(創業予定者H氏)
『前職のルートは使いたくないので、自前(WEB)で受注しま
す。』
◎(当事務所担当者)
『教育と言うテーマは広いですが、教育の中では何が得意です
か?』
●(創業予定者H氏)
『特に限定したくありません。教育全般に自信があります。』
◎(当事務所担当者)
『営業対象はどんな先を想定していますか?』
●(創業予定者H氏)
『すべての業種が対象です。』
※実績も実力もありそうなH氏ですが、成功確率を更に高くす
るための施策について議論しました。成功確率を更に高めるた
めには…

◆1.サービスを限定するべきです。
◎(当事務所担当者)
『教育と言うテーマは広いですが、教育の中では何が得意です
か?』
●(創業予定者H氏)
『特に限定したくありません。教育全般に自信があります。』
※テーマ・分野の絞り込みが必要です。

◆2.営業対象を限定するべきです。
◎(当事務所担当者)
『営業対象はどんな先を想定していますか?』
●(創業予定者H氏)
『すべての業種が対象です。』
※営業対象の絞り込みが必要です。

◆3.空中戦の営業に打って出る前に、地上戦で勝負しませんか。
◎(当事務所担当者)
『前職ルートでの受注は期待できますか?』
●(創業予定者H氏)
『前職のルートは使いたくないので、自前(WEB)で受注しま
す。』
※まずは、前職ルートをうまく活用した営業、縁故の営業から
始めるべきです。

◆4.投資のバランスに注意
◎(当事務所担当者)
『WEB開発もWEBプロモーションも悪くありませんが、資本金
200万円の会社が、このタイミングで300万円の投資を行います
か?確信はありますか?』
●(創業予定者H氏)『そうかもしれません。』
…つづく

事業計画書を作り直してもらっています。
1.教育分野の中の、本当に強いテーマに絞って、商品化して
もらいます。
2.上記のテーマに合いそうな営業先に絞り込んだリストをま
ず100社探してもらいます。
3.縁故先企業を、30社探してもらいます。
4.1のテーマで、2を対象にしたWEBを低コストで開発します。
同時に足で受注に走ってもらいます。対象を限定したDM等も検討
してもらいます。

新しい指針の事業計画でも、数値計画は当初と同程度狙えます。
足元から地道に攻めることは、決して遠回りではありません。
むしろ近道です。また、創業融資申請時には、新しい指針の方
がはるかに高い評価を得られます。

『大きくなるためには、大きなマーケットを幅広い商品・サー
ビスで攻めることが良い』と勘違いしている人は少なくありま
せん。
これは、明らかな間違えです。

◎『大きくなりたいなら、敢えて絞り込んだマーケットを特化
した商品・サービスで攻めるべき』と理解してください。

貴社は大丈夫ですか?再度確認してください。

創業時からお付き合いしている企業様の第4期決算が終わりま
した。資本金100万円で会社を設立し、一緒に300万円の
創業融資を借りに行ったのが始まりです。毎期増収増益で推移
し、第4期の売上高は380百万円、経常利益は13百万円と
なりました。4年間の累積利益は27百万円です。

同社が順調に成長できた要因は、社長の経営手腕が高いことは
もちろんですが、他人資本(借入)を上手に活用できたことも
要因のひとつです。4期が終わった時点で70百万円の借入が
ありますので、自己資金100万円では成しえなかった成長を、
借入を活用することで実現できたと感じます。

借入が大きすぎるのではと懸念された方もいらっしゃるかもし
れませんが、同社は、借入が70百万円ある一方で、30百万
円の現預金と40百万円の売掛金を持っています。もし、今事
業をやめるなら、手元現金30百万円と売掛金40万円の回収
で借入を一括完済することが可能です。もちろんこの辺りのバ
ランスも見ながら借入を進めてきました。

ただ、最初から借入が容易にできた訳ではありません。創業融
資は500万円で申し込みましたが300万円しか出ませんで
した。また、保証協会の保証を取りつけるのも最初は苦労しま
した。実績を積み上げながら、少しずつ借入を増やしてきた結
果、70百万円になったという印象です。

利益が出る事業を有しているなら、資金をたくさん集めて取り
組んだ方が、リターンは大きくなります。しかし、一朝一夕に
資金調達ができる訳ではありません。銀行が融資の判断材料と
している「決算書」のあるべき姿をしっかりとイメージし、そ
れに向かって実績を着実に積み上げていく必要があります。

同社も、1期目から税金を払って利益を計上し、不用意な社長
への貸付や、仮払などが発生しないように努めるなど、しっか
りと決算書をデザインしてきました。それでも、この4年間は、
500万円、1,000万円という単位で少しずつしか資金調
達はできませんでした。しかし、これまでの実績の積み重ねで、
ようやく4期目の決算はイメージに近いものになりました。よ
って、第5期は大きく資金調達ができ、これまで以上に事業を
加速できると思います。

資金調達は長期戦です。今現在資金調達に苦労されている企業
様も、まずは自社の決算書のあるべき姿をしっかりとイメージ
して、それに向かって日々着実に実績を積み上げていくことで、
いつか必ず調達ができる時が来ます。ただ、「そもそもどのよ
うな決算書を目指せば良いか分からない。」という経営者様も
多いと思います。是非、ご相談ください。

…前回号からのつづきです。

創業者様からの相談に対するQ&Aを整理します。経営は百社
百様です。故に、これが正解でこれは間違いなどと断定するつ
もりはありませんが、それでもある程度の方向性をお示しする
ことはできます。以下、ご確認ください。

■〔Q&A〕その4:人脈・営業先開発について?

●(創業者D氏)
『2か月前に創業しました。日々、販売する商材と人脈を求め
て駆け回っています。なかなかいいアイデアとご縁が見つかり
ません。』

◎(当事務所担当者)
『アイデアやご縁を外に求めることも重要ですが、まずは、自
分のキャリアを整理してください。何が得意なのか?何ができ
るのか?何をしたいのか?仮説の立案が先です。私はこんなこ
とをしたい、こんなイメージ、この思いを持ったうえで、その
仮説を検証するために動きましょう。やみくもにご縁を求めて
も、自分にとって本当に必要なアイデアやヒントは見つかりま
せん。』

●(創業者D氏)
『名刺はたくさん集まりましたが。』

◎(当事務所担当者)
『本当に必要な名刺の数は、多分十枚から多くて数十枚でしょ
う。量より質です。動き過ぎずに、一人で考える時間を増やし
てください。動く、動く、動くではなく、考える、考える、動
く、考える、考える、動く、こんなイメージで行動してくださ
い。』
…つづく

■〔Q&A〕その5:創業融資をすぐ受けるべきか?

●(創業予定者E氏)
『小さなお店を開業します。貯金と親からの援助を合わせて800
万円あります。とりあえず手持ち資金だけで事業をスタートし
てみようと思っています。』

◎(当事務所担当者)
『半年後に黒字化する計画ですね。黒字化が遅れたら、資金不
足に陥りますね。』

●(創業予定者E氏)
『予定通り立ち上がらなかったら金融機関に融資をお願いしよ
うと考えています。それに、「借り入れはできるだけするな」
と言われています。』

◎(当事務所担当者)
『資金不足に陥った時点で融資を依頼するのと、現時点で融資
を依頼するのとでは、後者の方がはるかに借りやすいですよ。
また、ぎりぎりの資金計画で開業するよりも、今資金を調達し
て、資金に余裕を持って経営した方が楽ではないですか?困っ
た時に借入れができないリスクを取るより、今借り入れを起こ
して金利を払って、使わずに銀行口座に残しておく方法を推奨
します。』
…つづく

※「借入れは絶対しない」この決意なら別ですが、「困ったら
借りよう」この気持ちがあるなら困っていない今のうちに融資
を受けてください。「困った時には借りにくい」この理屈を理
解してください。金融機関にあるのはすべて「日傘」です。
「雨傘」はありません。

■〔Q&A〕その6:大きなチャンス?大きな賭け?力相応か?

●(創業者F氏)
『大きなチャンスがきました。この仕事がうまくいけば、一気
に事業が立ち上がります。』

◎(当事務所担当者)
(創業10ヵ月目、月商200万円(粗利益100%)の工事請負業
様です。)

『少しずつ順調に立ち上がってきましたね。今回受注できそう
な仕事は、8,000万円・工期4か月の元受工事ですね。粗利益率
はどれくらいですか?』

●(創業者F氏)
『20%ぐらいです。』

◎(当事務所担当者)
『売上高8,000万円、粗利益額1,600万円、原価(外注費)6,400
万円になりますね。どこかでつまずいたら致命傷になります。
大丈夫ですか?』

●(創業者F氏)
『どんなリスクがありそうですか?』

◎(当事務所担当者)
『施主さんからの支払いが遅れる、途中で設計変更が入って工
期がずれる、また、当社の下請けさんの都合で工期が遅れて入
金が遅れる等、何かが起きたときに当社に余裕が全くありませ
ん。』

●(創業者F氏)
『経営にはリスクが伴うものではないのですか?』

◎(当事務所担当者)
『これは健全なリスクというより、一か八かに近い不健全なリ
スクに見えますがいかがでしょうか?』『元受は大きな会社に
譲って、有利な工事を部分的に請け負ったらどうですか?』
…つづく

※リスクには、「力相応のリスク」と「力不相応のリスク」が
あります。経営上のリスクは、「力相応のリスク」の範囲に留
めてください。

次回号につづきます。

セーフティネット保証と言えば、業況が悪化した場合に利用す
る5号保証が有名ですが、経営安定関連保証は8号まで、さら
に危機関連保証という制度があります。5号以外の保証制度を
利用する機会は滅多になさそうですが、どのような制度がある
かをひと通り知っておくと、将来役に立つかもしれません。

■ 経営安定関連保証
1号:連鎖倒産防止
指定された倒産事業者に対して、50万円以上の売掛金債権等
を有している、もしくは取引規模が20%以上ある場合に利用
できる制度です。

2号:取引先企業のリストラ等の事業活動の制限
「ロシア水域におけるさけ・ます流し網漁禁止」など、事業活
動の制限を余儀なくされた指定案件に関連する事業者が利用で
きる制度です。

3号:突発的災害(事故等)
指定地域内において、1年以上継続して事業を行っており、災
害等の影響を受けた後の3か月間の売上高等が前年同期比マイ
ナス20%以上の見込みである場合に利用できる制度です。

4号:突発的災害(自然災害等)
指定を受けた災害等が原因で、最近1か月間の売上高が前年同
月比20%以上減少しており、かつ、その後2か月間を含む3
か月間の売上高等が前年同期に比して20%以上減少すること
が見込まれる場合に利用できる制度です。

5号:業況の悪化している業種
指定業種に属する事業を行っており、最近3か月間の売上高等
が前年同期比5%以上減少している場合に利用できる制度です。

6号:取引金融機関の破綻
破綻した金融機関と金融取引を行っており、適正かつ健全に事
業を営んでいるにもかかわらず、金融取引に支障を来している
場合に利用できる制度です。

7号:金融機関の経営の合理化に伴う金融取引の調整
取引依存度が10%以上の金融機関の支店の削減等により、総
借入額が前年同期比で減少しており、かつ、当該金融機関から
の借入残高が前年同期比マイナス10%以上減少している場合
に利用できる制度です。

8号:金融機関の整理回収機構に対する貸付債権の譲渡
RCC(整理回収機構)へ貸付債権が譲渡された中小企業者のう
ち、事業の再生が可能と判断された場合に利用できる制度です。

■ 危機関連保証制度
リーマンショックや東日本大震災のように、景気が急速に悪化
するような事態が発生した場合に発動される措置です。

影響力の大きな企業の倒産、金融機関の破綻、大きな災害や事
故の対策として、様々な措置が用意されています。

創業者様からの相談に対する〔Q&A〕を整理します。経営は
百社百様です。故に、これが正解でこれは間違いなどと断定す
るつもりはありませんが、それでもある程度の方向性をお示し
することはできます。以下、ご確認ください。

■〔Q&A〕その1:個人創業か法人での創業か?資本金は?

●(創業予定者A氏)
『とりあえず、個人事業でスタートしようと考えています。
法人化して事業を始めるのと、個人事業者としてスタートを切
るのと違いはありますか?』

◎(当事務所担当者)
『想定される取引先はどのような先ですか?』

●(創業予定者A氏)
『小規模から中堅の食品メーカー様を想定しています。』

◎(当事務所担当者)
『できるなら法人の方が良いですね。敢えて個人事業でスター
トするメリットも見当たりません。個人事業者より法人の方が
取引しやすい場合があります。逆はありません。』
※コメント:
個人事業者との取引を嫌う取引先はありますが、個人事業者で
なければならないとする取引先はありません。
可能なら法人化して起業してください。

◎(当事務所担当者)
『準備できる自己資金はいくらありますか?』

●(創業予定者A氏)
『600万円ぐらい準備できます。』

◎(当事務所担当者)
『であるなら、500万円の資本金で株式会社を設立してはいか
がですか?資本金は大きい方が良いです。その後の資金調達に
も有利です。無理に膨らます必要はありませんが、準備できる
資金があるなら、活用してください。』

●(創業予定者A氏)
『当面の生活費はどうするのですか?』

◎(当事務所担当者)
『設立した会社から役員報酬として、必要分を常識の範囲内で
もらってください。』
…つづく

■〔Q&A〕その2:共同経営の可否?

●(創業予定者B氏)
『友人と共同で会社を立ち上げようと考えています。100万円
ずつ3人で出し合って資本金300万円の会社を作る予定です。
一方、このような関係が上手くいくのか心配してくれる方もい
ます。どうお考えですか?』

◎(当事務所担当者)
『3人はどんな力関係ですか?3人とも対等なのか?リーダー
的な誰かがおられるのか?』

●(創業予定者B氏)
『3人とも対等の友人です。半年ぐらい前に知り合って、意気
投合しました。対等にやっていこうと話しています。』

◎(当事務所担当者)
『水を差すようで恐縮ですが、一般論として近い将来意見が合
わなくなる可能性が小さくないことをご理解ください。判断が
割れた時に、誰の判断を正とするのか、多数決で行くのか、ま
た、判断は「YES」か「NO」だけではなく、程度加減を伴う
ことが大半です。想像してください。』

●(創業予定者B氏)
『確かにそうですね。どうすればよいですか?』

◎(当事務所担当者)
『何が正解かはわかりません。このような方法でうまくやって
おられる方々もおられます。ただ、上手くいかない確率が低く
ないということです。例えば、3人ともが別々に会社を作って、
協力して進めることから始められたらどうですか?また、3社
間の取引については、できるだけルールを決めておいた方が良
いですね。』
…つづく

■〔Q&A〕その3:どんな事業での創業が良いか?

●(創業予定者C氏)
『創業の準備を始めています。一年後を目安に創業します。事
業構想中です。意見を聞かせてください。』

◎(当事務所担当者)
『経歴を詳しく教えてください。』

●(創業予定者C氏)
『約20年間食品卸に関する業務に取り組んできました。…略』

◎(当事務所担当者)
『これだけのキャリアを積んでおられるのであれば、過去の経
歴の延長で考えることがまず基本です。この分野の中で、自分
自身が得意な分野、市場が伸びている分野に集中して考えてみ
てください。また、この分野での人脈も整理してください。』
※まったく新しい分野で起業して成功される方も少なくありま
せん。ただ、過去の経験の延長線上で起業される方が、より成
功確率は高くなります。
…つづく

次回号につづきます。

創業融資は、事業を軌道に乗せるまでに必要な資金の借入です。
事業が軌道に乗った後は、成長軌道に乗せるための資金調達を
改めて行う必要がありますが、この成長資金を十二分に獲得で
きるかどうかで、その後の成長曲線は大きく変わります。成長
資金の調達に失敗し、せっかく軌道に乗った事業が収縮してし
まったり、思うように成長曲線を描けなかったりする企業を多
く見ていますので、成長資金獲得のポイントをA社の事例で解
説します。

会社名A社
事業内容:インターネット通信販売
営業年数:個人事業2年、法人1年

個人事業にて通信販売を始めたところ、創業2年目で売上高が
1,000万円を超えてきたため、法人成りをしました。法人
成りをするタイミングで、日本政策金融公庫から300万円の
創業融資を受けました。

調達した創業資金を元手に、事務所の整備や人材の雇用を行い、
売上高は順調に拡大していきました。また、法人1年目の期中
に保証付き融資500万円も調達することができたため、その
後の業績は予想以上で推移しました。

しかし、利益や借入金の大部分は、仕入や人件費等の投資に回
していますので、利益は上がる一方で、資金繰りにそれ程の余
裕はありません。そのような状況の中、法人1期目の決算を迎
えることとなりました。

A社の社長様が気にしたのは税金です。周りの先輩経営者から
のアドバイスもあり、保険の加入や車の購入をしたいとの相談
をお受けしました。ここが大きな分かれ道です。

1.初年度の業績が思いのほか良かったため無理な節税を行う。
2.節税によって本来の税額よりも多額のキャッシュが流出す
る。
3.手元資金が苦しくなるが利益を圧縮したため決算内容も悪
く金融機関から相手にされない。
4.常に資金が不足している状況に陥り思うように成長戦略が
描けない。

本当によくお見受けするパターンです。A社の社長は優れた事
業力があり、資金があればもっと事業を伸ばせると思いました
ので、節税より、ファイナンスを活用した拡大戦略の方が、未
来が開けることを粘り強く説明しました。

最終的に社長様も納得いただき、初年度の売上高は8,000
万円、経常利益700万円で決算を行いました。200万円弱
の税金を納めましたが、申告後すぐに2,000万円の資金調
達を行うことが出来、その後倍々で売上高を増やすなど、無事
に事業を成長軌道に乗せることができました。

創業黒字化という局面が事業面で最も難しいところですが、無
事に黒字化を達成した企業でも、財務戦略の失敗により立ち行
かなくなるケースがたくさんあります。1期目、2期目の決算
が大変重要です。