会計は、人類が作り出した偉大な発明の一つです。会社の財産
や収益の状況を、詳細にわかり易く表現してくれる英知の結集
です。数期の決算書を並べて確認することで、会社の経営状況
は概ね把握できます。簿外の有無も想像が付きます。
自社の経営の場面においては、その状況を継続的に把握するこ
とで、経営の成果の確認や、次の判断の礎になります。
また、金融機関や株主などのステークホルダー(利害関係者)
に対しては、経営の進捗を示す指標になります。会計とは、た
いへん有益で興味深いものです。

経営者は、少しずつでも、会計への理解を深める必要がありま
す。理解した方が得です。また、会社には、会計を行う機能、
財務機能が必要です。中堅規模以上の会社には必ずあって、創
業から小規模企業・個人事業者様にない機能がこの財務機能で
す。
財務機能は、会社の規模が小さいから不要、というわけではあ
りません。この機能の欠落、財務無策は、創業から小規模企業・
個人事業者様が破たんする主因の一つです。

◆Q1:利益が出ているのに現預金がない。
大変不思議に感じられる方も多いようですが、これはよくある
事象です。

◇A1:「利益は、現金以外に形を変えている。」のが原因で
す。
・今月売れた商品のお金の回収が来月である時、決算期末が今
月なら、決算書には未回収のお金が売掛金として計上されます。
今月売れて来月回収できるなら、それは今月の売上です。お金
の回収は来月であっても、売上は今月上がります。
故にお金には変わっていませんが、利益には加算されます。こ
の売掛金が大きく、お金に変わる期間が長い時など、利益は出
ているがお金はありません。
・来月以降売れる商品を事前にたくさん作って(または、仕入
れて)持っている場合など、同様の結果になりがちです。
・資産を購入した場合なども、同様の結果になりがちです。黒
字倒産は、上記に対する財務無策が原因です。会計を理解して
おれば、絶対に起こりえない悲劇が黒字倒産です。

◆Q2:利益は出ていないのに、現預金は潤沢だ。

◇A2:多くはありませんが、上記の逆のケースで起こります。
ただし、次の売上が止まった瞬間に急激に資金繰りも悪化しま
す。お金があるから油断していますが、まさかが起きれば途端
に破たんします。会計を理解しておれば、事前に打てる手もあ
ります。

◆Q3:借入れは最小限にとどめたい。

◇A3:心情的にはわかりますが、正解ではありません。
借入れは適正に行う、さらに、経営基盤が弱く、金融機関の評
価が高くない時は、多めに現預金残高を確保することをお薦め
しています。経営基盤が強くなるにつれて、徐々に多めから適
正に近づけて行く方法が現実的です。総じて経営基盤の強くな
い、創業から小規模企業・個人事業者様には、「借りられる時
に借りられるだけ借りる。」と申し上げているのはこのためで
す。

◆Q4:今月・来月末までに資金が必要だ。

◇A4:「遅い」のです。間に合わないケースも少なくありま
せん。
「遅い」とは二つの意味があります。
1.手続き的に間に合わないケースが一つ目です。資金調達は
できそうですが、時間的に厳しいケースです。
2.手続きの時間ではなく、今は調達できない、この意味で遅
いケースが二つ目です。
過去の適正なタイミングで資金調達すべきでした。または、も
っと早い段階で返済猶予を受けるべきでした。この様なケース
は少なくありません。とにかくお金に関する備えが遅い、備え
を怠る、創業から小規模企業・個人事業者様に多く見られる財
務無策の典型です。

財務に対する施策は、会計を理解した上で、適時・継続的に行
うべき事柄です。資金が必要な時に、お金に困った時に、スポ
ットで行う事柄ではありません。

創業から小規模企業・個人事業者様に対して、継続的な財務機
能を廉価でご提供する用意があります。税務顧問業務と併せて
行うことで、また、必要なスペックのみに限定することで、極
めて廉価にご提供できます。お金に困っていない社長様も、お
金に困りそうな予感がする社長様も、「遅い」とならない内に、
ご相談ください。少なくない小規模企業~中小企業様が、財務
無策による破たんに陥っている事実を重く受け止め備えてくだ
さい。

関与先様のご紹介で来所されたA社の事例です。資金繰りが厳
しいとのご相談で来所されましたが、決算から11カ月が経過
しているにも関わらず、試算表を作成していないため、明確な
状況を把握することが出来ませんでした。ヒアリングによると、
「今月末の資金が足りない。一応B銀行に融資を依頼している
が・・・」という状況です。

資金がいくらあれば大丈夫なのかを把握しなくては、果たして
新規の融資を受けるべきか、リスケジュールをするべきかが分
かりません。大急ぎで大まかな利益状況を調べることにしまし
た。

利益状況を調べている最中、社長から連絡があり、「B銀行か
ら2,000万円の保証付融資がおりたので借入をする。」と
伝えられました。確かに前年度の決算は僅かに黒字だったもの
の、調べていくうちに、足元の赤字は1,000万円以上であ
ることが想像できました。毎月の約定返済も300万円ありま
すので、本当に2,000万円の資金で足りるか疑問でしたが、
B銀行の融資は数日後に実行されました。

その後、完成した資金繰り計画表を確認すると、2,000万
円の融資を受けたうえで、翌々月には資金ショートすることが
分かりました。これ以上の新規融資は難しいため、リスケを依
頼するしかない状況です。

社長は、「B銀行だけ返済して、その他の銀行をリスケすれば
良いのでは?」とおっしゃいますが、リスケジュールは、すべ
ての債権者に平等に対応しなくてはならず、特定の借入だけを
返済することはできません。足元の状況を調べなかったB銀行
にも落ち度はありますが、返済できないことを分かっていて融
資を受けたと取られると、心証面でこじれてしまい、リスケジ
ュール全体に影響を与える懸念が生じます。

そのような状況で、メイン銀行、サブ銀行、日本政策金融公庫
の順にリスケの依頼を行いました。どちらの金融機関も、「他
行も同様の条件であればリスケジュールにご協力します。」と
いう返事でした。協力的な姿勢ではありましたが、「他行も同
様であれば」という条件付きです。もし、B銀行がリスケに応
じない場合は法的整理も視野に入れなくてはなりません。

最後にB銀行と面談しリスケの意向を伝えたところ、担当者は
感情をあらわにして、「たった1回しか返済せずにリスケなん
ておかしい。不動産を売却して一括返済をしてください。」と
迫ってきました。不動産の売却代金は今後の資金繰りに充てよ
うと考えていたため、「返済はもちろん担保にもできない。」
とお断りすると、最後は「何とかしてもらわないと困る。」と
泣きついてきました。上司からも相当責められているようです。

B銀行の承諾を得られなければ全て金融機関のリスケが実現し
ませんので、粘り強く協議をした結果、担保余力のない不動産
にB銀行が2番抵当をつけることで決着がつきました。

最終的には無事に決着し資金繰りを改善できましたが、リスケ
は全金融機関の足並みを揃えなくてはなりませんので、リスケ
の可能性がある状況での新規借入は慎重に行ってください。

■年商対比で、今より10%多くの運転資金を持ち続けること
をご提案します。
※有り余るほどの現預金がある会社様・社長様は除きます。

・年商5億円の社長様、追加で5,000万円の運転資金を持
ち続けませんか?
・年商2億円の社長様、追加で2,000万円の運転資金を持
ち続けませんか?
・年商5,000円の社長様、追加で500万円の運転資金を
持ち続けませんか?

■年商対比で、今より10%多くの運転資金を持ち続けること
の長短を考えてみましょう。

○短所は…
・借入金利を2%とすると、経常利益が0.2%ダウンします。
・その他の短所は見つかりません。
借入れと合わせて現預金も増えます。実質の借入金額は増えま
せん。また、返済の原資はこの借入金です。借入れ前の資金か
ら返済するわけではありません。返済しながら現預金も減少し
ますが、その分借入残高も減少します。

○長所は…
・余裕資金を持つことで、資金繰りの苦労から解放されます。
・経営上の安全率が向上します。万が一に備えられます。
・投資などの必要な資金需要に素早く対応できます。
(投資に使ったら別途資金調達が必要になりますが、一刻を争
う時はこの資金を利用できるとの意味です。)

慢性的に資金繰り業務に追われておられる社長様は少なくあり
ません。この資金繰り業務を極小にして、本来の社長業務に専
念できます。
借入れに対する非論理的な嫌悪感から、ご自身の大切な時間を、
資金繰りという非建設的な活動に費やしていないでしょうか?
・社長様の大切な時間、気苦労が、少しばかりの借入れ金利に
劣るとは思えません。
・経営上のまさかに対処できる経営資源の一つ目は資金です。
資金によって時間がかせげます。時間をかせぐことで、経営上
の対応が可能になります。

■どうすれば、年商対比で今より10%多い現預金を持ち続け
ることができるのか?

業績の良い時に運転資金の借入れを最大限行ってください。約
定返済付きの運転資金は、返済が伴います。時間の経過に伴っ
て、現預金残高=借入金残高も自然に減少します。一定間隔で、
借り換え、巻き直しを継続して行います。

◆『借りられる時に借りられるだけ借りる。』
◆『返済分を一定期間ごとに借り替え・巻き直しで補い続ける。』

長期間に渡り、戦略的に資金調達と巻き直しを、さらには金融
機関対応を丁寧に行うことで、ある程度の業績が伴えば実現で
きます。

■中小・零細、小規模企業、個人事業者様が行う財務戦略は上
記です。

与信力の小さな会社様が、手持ち資金を極小にして、金利負担
を低減しようとする行為は高いリスクを伴います。また、極小
の資金で、日々資金繰りに気を使いながら貴重な社長の時間を
浪費することも正しくありません。

■世の中には、間違えた常識がはびこっています。

1.『借り入れは出来るだけ行わない方がよい。』
…財務基盤の弱い会社様には、真逆の指針です。明らかに間
違えです。

2.『無借金経営を目指そう。借入れは止めよう』
…正しくは、『無借金経営を目指そう。それが実現できるま
では、借入れで備えよう。』です。

3.『資金が必要になったら金融機関に融資を申し込もう。』
…金融機関は、返済原資を有する会社にのみ融資を実行しま
す。金融機関が貸し出す基準は、その会社の資金需要の有
無ではなく、返済原資の有無です。会社側のニーズとは一
致しません。金融機関は『日傘』しか有していません。
『雨傘』はありません。
※一部の制度保証・制度融資のみ例外です。

■お金の心配ではなく、経営の心配をしませんか。

・社長は、売上・利益を作ることに集中しましょう。
・社長は、マネージメントに集中しましょう。
・資金繰りは、非建設的な業務です。出来るだけ心配しないよ
うに備えましょう。

■『お金の心配をしない経営』を目指してください。

金融機関対応を含む財務は、資金需要のある時にのみ行うスポ
ット業務ではありません。長期目線で戦略的に行う継続業務で
す。中小・零細、小規模企業、個人事業者様の多くは、この財
務機能が欠落しています。故に、
・資金繰りが厳しくなってあわてて資金調達に走る
・日々、資金繰り業務に追われる
事になっています。

年商対比で、今より10%多くの運転資金を持ち続けることを
ご提案します。 社長の毎日が、経営が…大きく変わるはずです。

令和元年7月~9月のセーフティネット保証5号の指定業種が
発表されました。セーフティネット保証5号とは、業況の悪化
している中小企業が利用できる保証制度です。指定業種に含ま
れていなければ利用できない制度ですので、まずはご自身の業
種が指定業種に含まれているか、下記中小企業庁のホームペー
ジにてご確認ください。

◆指定業種一覧
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2019/1906255gou.pdf

ご自身の業種が指定業種に含まれていたら、直近3ヶ月間の売
上高を前年同期間の売上高と比較します。もし、売上高が5%
以上減少していれば対象となりますので、セーフティネット保
証制度に申し込むことが可能です。(指定業種かつ売上減少が
要件です。)

具体的な申し込みの流れは、まず市区町村長の認定を受け、そ
の後、銀行等金融機関に認定書を持ち込みます。認定の受け方
については中小企業庁のホームページでご確認ください。

◆認定の受け方(中小企業庁HPより引用)
対象となる中小企業の方は、法人の場合は登記上の住所地又は
事業実体のある事業所の所在地、個人事業主の方は事業実体の
ある事業所の所在地の市町村(または特別区)の商工担当課等
の窓口に認定申請書2通を提出(その事実を証明する書面等が
あれば添付)し、認定を受け、希望の金融機関または所在地の
信用保証協会に認定書を持参のうえ、保証付き融資を申し込む
ことが必要です。(引用終わり)

信用保証協会では、中小企業が利用できる保証限度額が無担保
で8,000万円と定められています。あくまでも利用可能な枠の
ことであり、必ず8,000万円の保証を受けられるということで
はありませんが、セーフティネット保証制度は、さらに別枠で
8,000万円の保証枠が設けられます。

通常の融資審査は業績が悪いと通りませんが、本制度は業績が
悪くなければ利用することができません。また、通常の金利は、
業績が悪くなればなるほど高くなりますが、本制度は低い金利
で利用することができます。業績が悪くなることを歓迎したく
はありませんが、そうなった場合には利用したい制度です。

「足元の売上高が一時的に減少しているだけでも利用できるか
?」「売上高は落ちているが利益が出ている場合は?」「売上
高が伸びている事業と落ちている事業がある場合は?」等、本
制度の利用についてご質問やご相談があれば、お気軽にお問合
せください。

■創業者~中小企業まで、その過半は財務機能を有していませ
ん。また、間違えた考え方を鵜呑みにしておられる経営者も少
なくありません。

○資金調達のための与信力が低いにもかかわらず、資金のダム
を作って備えようとしません。
○(日傘しかない)金融機関に、資金が不足した時に融資を受
けに(雨傘を借りに)行こうと考えています。
○利益は納税額だけではなく、今後の資金調達力を決めること
になる、これを理解せず、目先の過度な節税を目指します。
※借入れ(融資)可能額は、簡易キャッシュフロー(税引き後
利益+減価償却費)を基準にその概算が判定されます。これら
の財務無知から来る財務無策は、『お金に苦労する経営』とい
う結果を招くことになります。

■この様に、財務に対する備えが希薄、または、間違えた考え
を持っている経営体を『財務無策症候群』と呼びます。

『財務無策症候群』の経営体には、以下のような症状が現れま
す。
1.金融機関との継続的な関係を築けていない。必要な時のみ
頼る。
2.資金繰りに苦労をしても、借入れは少ない方がよいと考え
ている。
3.資金繰りの余裕が少ない。
4.支払金利に(過度に)敏感である。
5.継続的に資金繰りを管理する仕組みを持ち合わせていない。
6.そもそも『財務』の概念を知らない。
いかがでしょうか?

■病名:『財務無策症候群』(推定有病率70%)を整理します。

○財務戦略がないために、お金に苦労する経営体に甘んじる病
です。
○原因は、財務無知、または、財務無策です。
○症状は、手持ち資金が極小であっても、資金繰りに苦労して
も、とにかく借入れを減らして(行わずに)経営を続けよう
とします。また、貸し手である金融機関の都合を理解できず、
自社の都合、必要な時に必要な金額だけ貸して欲しいとの借
り手の都合で行動します。少しでも歯車が狂えば、途端に危
機的な状況に陥ってしまいます。早期の治療が必要です。

■『財務無策症候群』への対応は、財務の機能を持つことです。
中堅以上の企業には、必ずこの機能があります。

○対策は、資金を可能な限り潤沢(=Ample)に維持すること
です。
・金利を気にせずに『借りられる時に借りられるだけ借りる。』
・『貸し手の論理』(借り手の論理ではなく)に沿って資金調
達を継続する。
・納税を恐れずに利益をだす。自己資本の充実と簡易キャッシ
ュフローの最大化を図る。
・精度の高い6カ月~1年先までの資金繰り計画を持ち続ける。
・金融機関との継続的な関係を構築する。

■当事務所の『新・税理士』は、上記【財務無策症候群】の専
門医です。その予防と対策に尽力いたします。当事務所が取組
む財務支援業務は…

1.スポット業務として行う資金調達支援(だけ)ではありま
せん。
⇒(正)継続的な財務機能の充足、財務部長の代行業務です。

2.資金に困った企業様の救済支援(が本質)ではありません。
⇒(正)成長企業の財務部長としての伴走です。

3.資金調達などの金融機関対応を必要とする時にのみ、クラ
イアントに同行して説明補助を行うことではありません。
⇒(正)財務部長の代行者として、主体的に金融機関と関わり
ます。

これらの業務が『資金繰り円滑化サービス(財務部長の代行業
務)』です。また、この業務の目的は「お金に困らない経営を
目指すこと」です。
早めの導入をご検討ください。社長様のお金に関する心配と煩
わしさの多くを取り除くことができます。

経営者が借入に消極的になる理由のひとつに個人保証がありま
す。多額の借入をして事業に失敗すると、連帯保証人となって
いる経営者は多くの場合で法的整理を免れません。

金融庁は、中小企業経営者の思い切った事業展開を後押しする
ため、「経営者保証に関するガイドライン」を策定し、金融機
関が個人保証に頼らずに融資を行うことを推奨しています。

金融庁が公表している当ガイドラインの活用に関する参考事例
集の中から、事例をひとつご紹介します。

■ ある地域銀行の事例
経営管理の強化に取り組んでいる取引先に対して経営者保証を
求めなかった事例

1.主債務者及び保証人の状況、事案の背景等
・当社は、建設工事及び建材卸売業を営んでおり、建材卸売部
門では大手メーカーや商社等と代理店・特約店契約を結んで
おり、多種多様な商品(内外装タイル、ユニットバス、耐火
壁、エレベーター等)を取り扱っている。
・震災復興関連工事の受注の増加により増収基調が続いており、
内部留保も厚く堅固な財務内容を維持している。
・当行は、メイン行ではないものの、増加する震災復興関連工
事に伴う資金需要に対応してきたところ、当社から短期資金
の借入の相談があった。
・また、借入の相談の際に、当行本部から送付されたガイドラ
インのパンフレットを見た経営者から、経営者保証を求めな
い融資の相談を受けたことから、ガイドラインの内容を改め
て説明するとともに、当社から提出のあった直近の試算表や
工事概況調等を勘案しつつ、ガイドラインの適用要件等の確
認を行った上で回答することとした。

2.経営者保証に依存しない融資の具体的内容
・当行の営業店では、案件受付票の作成に合わせ、今回新設し
た「経営者保証に関するガイドラインチェックシート」を活
用し、適用要件の確認を実施している。当該手続による確認
の結果、以下のような点を勘案し、経営者保証を求めないで
新規融資に応じることとした。

-1.決算書類について「中小企業の会計に関する基本要領」に則
った計算書類を作成し、地元の大手会計事務所が検証等を行
っているなど、法人と経営者の関係の明確な区分・分離がな
されていること
-2.内部留保も厚く堅固な財務内容を維持しており、償還面に問
題がないこと
-3.四半期毎に試算表等の提出を行うなど、当社の業況等が継続
的に確認可能なこと

・当社とは、長年の取引を通じてリレーションシップは十分に
構築されている。震災復興関連工事の増加による業況の拡大
が、ガイドラインで求められている返済能力の向上に寄与し
ている面は否めないが、当社が、外部専門家による検証等を
含め、経営管理の強化に従来以上に取り組むことを表明して
いることから、当行としても、業況の把握に留まらず、当社
の経営管理体制の構築について引き続き積極的にアドバイス
を行っていく方針である。

ご覧いただいた通り、個人保証を入れずに済むためには要件が
あります。当該案件の場合、下記の要件を満たしていることが、
個人保証を求めない要因となっています。

(1)決算書に信憑性があること。
(2)財務内容が良好であること。
(3)経営状況を継続的にディスクローズする体制が整っていること。

業況や財務内容だけでは不十分で、高い経営品質を求められて
いることが分かります。毎月の試算表はもちろん、資金繰り表
等を用いて金融機関と円滑なコミュニケーションを取れる体制
の構築が必要です。

高収益を上げている中小企業は、自社が意識していないケース
もありますが、何らかの『マイニッチ・ファインニッチ』を有
しています。ニッチビジネスを体系的・網羅的・論理的に整理
された良書と出合いました。ご紹介しながら解説いたします。
※以下、『競争しない競争戦略』(発行所:日本経済新聞社、
著者:山田英夫氏)を中心に引用させていただきます。

ニッチには様々な種類があります。自社の事業が何らかの、ま
たは複数のニッチの領域からはみ出さないように経営を続ける
ことで、外洋の荒波から身を守る経営ができます。永遠にこの
領域内で経営を続ける知恵があれば、極めて高収益な経営を持
続できるはずです。中小企業や創業の経営者には、この発想が
必要です。自社のニッチを強く意識しましょう。

■10のニッチ戦略とは…貴社の『マイニッチはどれですか?』
※引用:『競争しない競争戦略』

○質限定のニッチ戦略
1.技術ニッチ…夜光塗料事業の「根本特殊化学社」
2.チャネル・ニッチ…バレイ・ダンス用品メーカー「チャコット社」
3.特殊ニーズニッチ…理美容椅子のトップメーカー「タカラベルモント社」

○量限定のニッチ戦略
4.空間ニッチ…北海道に特化したコンビニ「セイコーマート社」
5.時間ニッチ…棚卸の専門会社「エイジス社」※業務が短期間に集中。
6.ボリューム・ニッチ…卓球用品専門メーカー「タマス社」
7.残存ニッチ…レコード製造会社「東洋化成社」
8.限定量ニッチ…Be-1「日産自動車」※意図的に生産量を絞る。

○質・量限定ニッチ戦略
9.カスタマイズ・ニッチ…フルオーダースーツ「銀座山形屋」
10.切り替えコストニッチ…事務用ファイルメーカー「キングジム社」

ニッチ企業だからと言って、小さな規模に留まる必要はありま
せん。ニッチ企業にも当然更なる成長戦略があります。

■ニッチ企業のさらなる成長戦略は…
※引用:『競争しない競争戦略』

1.マルチ・ニッチ戦略…「競争を避ける棲み分け市場を複数
有し、トータルな売上、シェア、利潤、名声を狙う方法があり
ます。」
2.チャレンジャーへの転換…「ニッチ戦略によって利益を蓄
積した後に、その経営資源をもとに、差別化戦略に移行し、
リーダー企業と戦っていく戦略です。」

■ニッチ戦略の留意点

◎「ニッチ戦略」は当初から狙って始めるべきです。意図して
取り組んだ方がはるかに成功確率は高くなります。そのために
は、自社にとっての「ニッチ」を探し求める努力が必要です。
簡単ではありませんが、社長の仕事です。

◎「ニッチ戦略」を継続するためには強い意志が必要です。少
し成功し始めると、ニッチの領域を超えて事業領域を拡大して
しまいます。結果、元も子もなくなります。
「ニッチの領域」に意図的に留まり続ける、深追いしない、忘
れないでください。

孫子の有名な言葉に、「百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。
戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり」があります。
「戦わずして勝つ」との意味です。

「マイニッチ」「ファインニッチ」の探求を、読者の皆様にも
引き続き推奨いたします。

大きな事業を目指せば目指すほど資金は必要になります。経営
者にとって、資金の供給面で最大の事業パートナーとなるのは
金融機関です。パートナー選びを間違わないようにしましょう。
より多くの資金調達を目指す場合の正しい金融機関選びをご紹
介します。

地域により目安となる年商規模が変わる可能性はありますが、
年商に応じて金融機関を選ぶことをおすすめします。

■ 創業から年商3億円程度までのステージ
・日本政策金融公庫
・保証協会保証付き信用金庫、信用組合からの融資
・信用金庫、信用組合からのプロパー融資

■ 年商3億円程度から年商10億円程度までのステージ
・日本政策金融公庫
・保証協会保証付き信用金庫、信用組合、地方銀行からの融資
・信用金庫、信用組合、地方銀行からのプロパー融資

■ 年商10億円超のステージ
・日本政策金融公庫
・保証協会保証付き信用金庫、信用組合、地方銀行、メガバン
クからの融資
・信用金庫、信用組合、地方銀行、メガバンクからのプロパー
融資

審査の厳しい順で並べると、最も融資を受けやすいのは日本政
策金融公庫で、次に保証協会保証付き融資、続いて信金信組プ
ロパー融資、地方銀行プロパー融資、メガバンクのプロパー融
資となります。

資金戦略上最も重要なポイントは「保証協会保証付き融資をど
この金融機関で利用するか。」です。保証協会とは、その名の
とおり保証をする機関であり、直接融資をすることはありませ
ん。しかし、保証協会の保証があれば、たとえ創業したばかり
の企業でもメガバンクから融資を受けることができます。金融
機関にとって保証付き融資は安全性の高い魅力的な融資であり、
利用者はどこの金融機関でも保証協会の制度を利用できます。

メガバンクからプロパー融資を受けられる基準にない企業が、
保証付き融資をメガバンクで利用したケースを考えてみます。
メガバンクとの関係は、あくまでも保証付きが前提ですので、
いざと言う時にプロパー融資をお願いしても門前払いです。そ
の時に慌てて信金信組に駆け込んでも、初めてお付き合いする
相手にいきなりプロパー融資を出す可能性は低くなります。ま
た、信金信組の立場からすると、「メガバンクが安全性の高い
保証付き融資なのに、なぜうちだけがリスクの高いプロパー融
資を出さなくてはならないのか?」となります。

違った見方で検証します。貴社は年商3億円の企業と仮定しま
す。超大手企業をメインの取引先としているメガバンクからす
ると、貴社はあまり重要ではない顧客となります。形式上の担
当、もしくは担当すらつかないこともあります。一方、地域密
着型で比較的小規模の事業者を取引先としている信金信組では、
貴社は重要な顧客として迎え入れられる可能性があります。エ
ース級の担当がつきプロパー融資も含めて資金面を支えてもら
える確率が高まります。

資金戦略のポイントは、いかに早いステージでプロパー融資を
調達できるかどうかです。いきなりプロパー融資を受けられる
ケースは少なく、一般的には保証付き融資からスタートして信
用を積んだ後、少しずつプロパー融資を受けられるようになり
ます。保証協会の保証枠には上限がありますので、プロパー融
資を念頭において、その枠をどこの金融機関に割り当てるかが
重要です。

…前回号のつづきです。
■『ルールメーカー』になることを経営目標においてください。

◆1:新しいルールを作り上げた企業は、『ルールメーカー』
として隆々と生きています。
◆2:誰かが作ったルールにいち早く適合した企業は、
『準ルールメーカー』としてうまく経営できています。
◆3:その他の企業は、昔から存在するルールに従う『ルール
の適合者』です。『ルールの適合者』は、そのマネージ
メントやマーケティングが相対的に優れている時にのみ、
一定の規模と利益を享受できます。

優良企業や、特に新規上場を果たすような企業群は、そのほと
んどが『ルールメーカー』又は『準ルールメーカー』です。
ルールの適応範囲の大小にかかわらず、新しいルールを構築で
きた企業群に対して、世間は高い評価を与えます。それが高い
利益率であり、高額な企業価値(時価総額)です。

※ここで言うルールとは、消費者に提供する新しい価値のこと
を指します。企業側から考えると、新しい事業立地を創造する
ことです。今まで世の中に存在しなかった製品やサービスのこ
とです。

■『ルールメーカー』とはだれか?

○機械式時計をクオーツに置き換えた日本の時計メーカーは典
型的な『ルールメーカー』です。精工で高価な時計を、廉価で
大量生産できる時計に置き換えたのです。この変化が起きた
1980年頃に、スイスの時計職人六万二千人のうち、五万人
が職を失ったと言われています。すさまじいスピードのルール
変更(パラダイムシフト)だったようです。

○ネット通販を浸透させたネット通販大手も典型的な『ルール
メーカー』です。ネット通販での売上の多くは、間違えなくリ
アル店舗から奪い取ったそれです。モノは店で買うというルー
ルから、モノはネットで買うというルールに変わったのです。

○数十年前、自動車の動力はガソリンエンジンでした。今後は、
電気、ハイブリッド…自動車の動力が変わりました。これもル
ール変更です。

すべてのルール変更には、勝者と敗者が存在します。変更前の
勝者が変更後も勝者になったケースはほとんどありません。勝
者は、現存するルールや過去の経験や知識に縛られてしまって
いるからです。

シュンペーターは、変革(ルール変更)を妨げる三つのハード
ルとして以下を挙げています。
1.経験よりも洞察を必要とするが、経験に頼りがちであること。
2.実証されていない新しいことを始める難しさ。
3.新しいことを始めることで受ける、社会からの抵抗と批判。
シュンペーターは、新結合(ルール変更)を狙う企業家は、
(当初は)潮の流れに逆らって泳ぐようなものだ、とも述べて
います。

■中小企業も『ルールメーカー』になれます。

○「卵を一切使わないのに、ちぎってそのまま食べられるほど
柔らかくて、ほんのり甘い。目指したのはそんな究極の食パン
でした。」〔乃が美さんのHPより引用〕、1斤400円(税別)
の食パンです。食パンの定義を見直し成功された『ルールメー
カー』です。
http://nogaminopan.com/goods_list/

○「金仏壇から現代仏壇へ」、住まいの洋風化、コンパクト化
に対応した新しい仏壇を創造した企業様があります。仏壇業界
で初めてのGOODデザイン賞を受賞されています。仏壇・仏
具に関する『ルールメーカー』として、業界のけん引役を担わ
れるはずです。
https://yagiken.co.jp/movie/

○僭越ですが、当事務所が提唱する『新・税理士』宣言も、皆
様に対して新しいルールを提唱しています。税務の専門家であ
る『税理士』業務に付加して、金融機関対応を含む財務業務を
プロとして担う『新・税理士』としての役割の提案です。当事
務所は『税理士』ではなく、『新・税理士』と宣誓しています。

◎自社が、その力相応に創造できる新しいルールは必ず存在し
ます。容易ではありませんが、この新しいルール、新しい事業
立地を求め続けてください。併せて、『ルールメーカー』が創
る新しいルールには敏感に対応してください。

数百万円の資金を元手に行うビジネスより、数千万円の資金を
元手に行うビジネスの方が、より大きなリターンを得ることが
できます。思い切った資金調達を行い、事業を拡大できた飲食
店様の事例を紹介します。下記A社は、「もっと大きな店舗を
経営したい。当社は最大どれぐらいの資金調達が可能なのか?」
というご相談で来所されました。

会社名:A社(仮称)
事業内容:飲食店3店舗経営
営業年数:9年
資本金:300万円
直近売上高:6,400万円
経常利益:14万円
長期借入金:1,600万円
純資産:339万円

年商1,000万円のBARを2店舗、年商4,400万円の
レストランを1店舗運営していましたが、経常利益は14万円
と低い利益状況に苦しんでいました。社長様は、1,000万
円規模の小規模店舗では利益が稼げないため、BAR2店舗を
閉めて、出来るだけ大きな店舗を新たに1店舗出店したいと考
えていました。

決算状況を分析した結果、返済原資となる簡易キャッシュフロ
ーは102万円と弱含み、また、売上高の25%の借り入れが
既にあり、新規で調達を行うためには、事業計画書を丁寧に作
りこむ必要がありました。

早速事業計画書の作成に取り掛かった結果、社長様がイメージ
している年商5,000万円の店舗を出店するためには、
2,000万円の借入が必須であると判明しました。目標調達
額は2,000万円です。

A社の利益状況、財務状況から判断すると、2,000万円と
いう目標額は簡単な金額ではありません。1つの金融機関に相
談しても、「金額が大きすぎる。」と断られる可能性がありま
したので、各金融機関の負担が軽くなる協調融資で調達するこ
とにしました。日本政策金融公庫と地域の信金に声をかけ、3
者で協議を行った結果、下記のとおり、満額の資金を獲得する
ことができました。

【資金調達内訳】
・日本政策金融公庫 1,000万円
・信金保証付融資 500万円
・信金プロパー融資 500万円

A社は、調達した資金で立地の良い場所に出店を行い、計画ど
おり事業を軌道に乗せることができました。翌期の決算では、
2店舗を閉めたにもかかわらず、売上高が1億円を超え、約
700万円の経常利益を計上しています。

借入を活用して、より大きなビジネスに挑戦したいとお考えの
経営者様は、是非当事務所にご相談ください。