税務に付加して、金融機関対応と財務に対する強みを有するこ
とを宣言する当事務所には、様々な相談が寄せられます。
以下、一部をご紹介させていただきます。

■Q1:
すでに借入れのある銀行から追加の融資依頼(「借りませんか。」)
を受けています。資金にはある程度余裕があるようにも思いま
すが、融資依頼をお断りすることになぜか不安も残ります。
「どこまで借りればよいか?」と悩んでいます。どのような基
準で判断すればよいでしょうか?

◆A1:
当事務所(銀行融資プランナー協会)では、このような時には
以下の基準をご提示して助言しています。

○近未来の資金繰り計画に沿って、
・資金繰り計画上十分な余裕資金を持つこと。
・資金繰り計画(売上計画)自体が下振れする可能性を踏まえ
て、それでも資金繰りに困らない資金を確保すること。保険
を掛けておくこと。
・金融機関は経営状態の良い時(晴れの日)だけ、融資依頼
(「借りませんか。」)を行う、この事実を理解すること。
悪くなれば(雨の日)、「貸せません。」の回答が返ってき
ます。
○一方、
・借り入れが膨らめば、その金利負担が膨らむこと。
・手持ち資金が潤沢になれば、余分なお金を使いたくなる趨勢
がある。
上記の様な長所と短所を天秤にかける必要があります。

近未来の経営状況を正確に読み切れるなら、最小限の資金で会
社は回せますが、近未来の経営に不確実性があるならば、余裕
を持つことが必要です。多くの会社様は後者ではないでしょう
か。結果として、当事務所(銀行融資プランナー協会)では、
「借りられる時に、借りられるだけ借りてください。」と助言
する場合が多くなります。

◎当事務所にて、簡易的な近未来の資金繰り表(標準・良い時・
悪い時)を社長様とミーティングしながら作成した結果、今回
銀行から提案された融資を受けることになりました。近未来の
資金繰り表を作成したことで、社長様は大いに安心されたご様
子でした。

※向こう6か月~1年先までの資金繰り計画は常に把握できる
ようにしてください。また、判断に迷うなら、借りてください。

■Q2:
資金繰りが厳しくなってきたので、銀行の担当者にリスケジュ
ールを依頼しましたが、「せめて半分は返済し続けて欲しい。」
と言われています。半分も返済する余裕はありませんが、受け
付けてもらえません。どう対応すればよいのでしょうか?

◆A2:
(確認すると、試算表は提出しているものの、経営改善計画書
は作っておられませんでした。)銀行にリスケジュールを依頼
する時は、経営改善計画書が必要です。銀行は、この経営改善
計画書を基準に、リスケジュールの受け入れの可否や、返済額
の妥当性を判断します。一定期間返済猶予を受けることで、そ
の会社・個人事業者様の経営が健全化することがリスケジュー
ルの条件になります。返済猶予を行っても、経営が改善する見
込みがない時は、金融機関は返済猶予を受け付けません。返済
額を極小(0円)に圧縮することで、一定期間経過後に健全化
する経営改善計画書を作成することが必須でした。

◎当事務所にて、経営改善計画書を作成し、当事務所が主体的
に銀行と折衝を行った結果、スムーズに返済額0円でリスケジ
ュールを行うことができました。経営改善の期間は5年です。
一年後に再度リスケジュールに応じてもらうためにも(通常リ
スケジュール契約は一年毎に見直しを行います。)、銀行には
継続的な経営状況の報告が必要です。当事務所が継続的に銀行
とのやり取りを行います。

※リスケジュールを依頼する時は、経営改善計画書が必要です。
金融機関が「せめて半分は返済し続けて欲しい。」と言うのは、
返済額0円にすることで、一定期間経過後に、経営改善が出来
るとする経営改善計画書を提出していないからです。

前回のメールマガジンでは、財務管理の強化は試算表の作成か
ら始まることをお伝えしました。しかし、試算表だけ作成すれ
ば十分かと問われると、そうではありません。試算表だけでは、
お金の流れが分からないためです。

赤字になってもすぐには倒産はしませんが、資金が底をつけば、
黒字でも倒産します。そういう意味では、利益管理よりも資金
繰り管理の方が重要です。

資金繰りの管理は、「資金繰り表」で行います。資金繰り表は、
毎月の入金額と支出額を項目ごとにまとめた単純な表ですが、
財務管理にとても役立ちます。

殆どの社長様は、何らかの資金繰り表を既に作成していると思
います。書面では作成していなくても、頭の中にはおおよその
入金額と支出額は入っているはずです。ただ、問題なのは、今
月もしくは来月といった、短期間の資金繰り状況しか把握でき
ていない方が多いという点です。

短期間の資金繰り計画しか立てていないと、「お金が足りない
!」という事態が1か月ほど前にしか分かりません。1か月と
いう時間は、資金調達を行うには決して十分な時間ではありま
せんので、他の大切な業務を差し置いて、優先的に資金調達に
走り回らなくてはならなくなります。

行き当たりばったりの財務活動から脱却するためには、短期で
はなく、向こう1年程度の「資金繰り計画」が必要です。粗々
でも、1年程度先までの資金繰り計画を立て、資金の流れを予
測しながら、資金調達や設備投資の計画を立てます。1年先の
売上など分からないという声もお聞きしますが、過去1年間の
「資金繰り実績」も作成することで、未来の売上の動きを何と
なく予測することはできるはずです。

財務管理の最大の目的は「資金を切らさないこと」です。試算
表で利益の状況を管理するのと同時に、資金繰り表でお金の流
れも管理しておけば、適切なタイミングで資金調達や設備投資
ができるようになります。

好む好まざるに関わらず、時流・トレンドは短時間労働に傾注
しています。具体的には年間労働時間1,600時間(正社員)あ
たりに終焉していくはずです。
一方、日本は先進国の中でも生産性の低い国に甘んじています。
「2015年度の時間当たり労働生産性は、OECD35カ国中20
位で42.1ドルです。米国68.3ドル、ドイツ65.5ドル、イタリア
51.9ドル…」〔公益財団法人日本生産性本部労働生産性の国際
比較2016年度版から引用〕

我々日本人は、生産性の向上と時短・労働力の確保を経営的に
解決していかねばなりません。そのためには、生産性の向上を
図る、何よりもこれが必要です。

■生産性の向上策を検証してみましょう。

1.業務のスピードを上げる、効果は△です。

同じことを10%早くやれば、確かに生産性は10%向上します。
まじめな人ほどこのテーマに邁進します。確かに重要ですが、
精神論・根性論に終焉しがちです。他にも方法はあります。

2.業務を減らす、効果は◎です。

仕事を棚卸してください。思い切って業務を20%止めましょう。
業務を減らせば仕事は減ります。業務を減らすためには、業務
そのものを棚卸するだけでなく、過剰な品質になっていないか
どうか、業務内容も検討してください。業務が過剰品質になっ
ているケースも少なくありません。
※やめることを探してください。上手にやろうとするのではな
く、思い切ってやめる、この決断が必要です。

3.その他、あらゆるものを減らす、効果は◎です。

提供するサービスや商品、不採算顧客等、あらゆるものを棚卸
する必要があります。聖域を設けずにあらゆるものを対象にし
て、選別して減らすことを考えてみましょう。
※不要なモノがたくさん混在しています。悪の根源はこれらの
不要なモノです。

4.値上げする、効果は◎です。

単価を5%上げることができれば、生産性は5%向上します。一
律の値上げは乱暴ですが、不採算商品や不採算顧客に対する値
上げは有効です。減収の覚悟も必要ですが、案外値上げが通る
こともあります。重い判断になりますが、積極的に検討すべき
です。

5.過度なサービスを止める、効果は◎です。

メニュー表にない+αのサービスを、しかも無償で担当者が提
供し続けているケースは少なくありません。これも棚卸して顕
在化させてください。サービスの必要性を担当者個人の裁量に
委ねるのではなく、経営として判断してください。必要なら正
式に行う、不要なら会社としてやめる…判断してください。
※無償サービスを会社として容認し続けるロスは、担当者個人
の負担として、その担当者を直撃します。退職につながるケー
スが多いです。

6.生産性を管理する、効果は○です。

部門ごと、出来れば担当者ごとに、その生産性を把握できる指
標を設けて管理してください。部門、出来れば担当者ごとの実
績を把握し、目標を決めて、継続的に管理することは大変有効
です。
※担当者個人を責めるための管理ではありません。生産性を改
善させるため・個人の負担を軽減させるための管理です。

7.ビジネスモデルを転換する、効果は◎です。

容易ではありませんが、より単純(Simple)で高収益(Profitable)
なビジネスモデルに転換出来れば、その生産性は格段に向上し
ます。
これこそ社長の仕事です。惜しみない勉強が必要です。

■『効率を上げろ』この声は精神論・根性論に終焉しがちです。
そうではなく、まずは『やめること・減らすこと』『価格を見
直すこと』を主眼に置いた生産性向上策に、経営として取り組
んでください。

◎諸説ありますが…
「…日本の企業は顧客の声を聞きすぎる。顧客の過度な要望へ
の対応は、企業を疲弊させ、低生産性の元凶になっている。顧
客を神さまと勘違いして、過剰な対応を行うということは、一
方で、自社の経営と社員を疲弊させることになる。顧客に提供
するサービスの内容と、負担いただく価格のバランスが、国全
体として崩れてしまっていることが、日本の生産性を著しく低
くしてしまった。…」
この機会にご一考ください。

殆どの中小企業が財務管理に改善の余地があると感じます。財
務管理が弱いと、自社の財務状況を金融機関に正確かつタイム
リーに伝えられないため、本来融資を受けられる業績であって
も、融資を断られる場合があります。融資をスムーズに受けら
れなければ、成長の機会を逃したり、資金が詰まるという危機
に瀕したりしますので、財務管理は強い方が安心です。

財務管理強化の第一歩はどんぶり勘定から脱却することです。
通帳の残高を見ながら感覚的に経営するのではなく、財務数値
に基づいて経営判断を下した方が、より正確な経営判断を下す
ことができます。正確な財務数値を把握するために、まずは月
次試算表の作成から始めましょう。試算表を見れば、キャッシ
ュの動きだけでは分からない「利益」と「資産・負債」の状況
が分かります。

どんぶり勘定が引き起こす代表的な事例は以下となります。

■ 実は赤字だが資金繰りが回っているため気づかない。
本当は赤字に気づいているのかもしれませんが、赤字を直視し
ないことによって対策が遅れます。赤字を改善する努力よりも、
借入で資金繰りをごまかすことを優先し続けると、必ず最後に
資金が行き詰ります。

■ 無駄な資金繰りに時間を費やしている。
取引条件によっては黒字でも資金繰りが苦しくなります。黒字
ですので融資を容易に受けることができ、資金繰りの苦労から
も簡単に解放されますが、それに気づかず資金繰りに多大な労
力をかけています。

■ 融資を受けられるタイミングを逃している。
本当によくあるケースですが、6か月前なら融資を受けられた
というケースです。融資はいつでも受けられる訳でありません
ので、財務状況をタイムリーに管理し、一番借りやすい時に借
りておくのが鉄則です。資金が必要なのに融資を断られて困っ
ている企業様の半数は、過去に資金調達のタイミングを逃して
います。

他にもたくさん事例はございますが、お伝えしたいのは、「試
算表」を毎月作成することの重要性です。試算表は、あらゆる
財務的な判断を下す根拠となるものですので、財務管理を強化
するための第一歩として、試算表を毎月作成することからスタ
ートしてください。

新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

大変不透明な時代が続きます。首都圏を中心に緩やかな成長が
持続しているようですが、経済や外交などを正確に予測できる
人はいません。それだけ世の中が複雑で難解な時代になってし
まったのでしょうか。一方、それらの動きに一喜一憂するより
も、自社の経営について、しっかりと考え続けましょう。
本年も、皆さま方のお役に立てそうな情報を配信させていただ
きます。少しでも、貴社の経営に役立てれば幸いです。

年初に当たって、もう一度、経営の基本指針について言及させ
ていただきます。一つの考え方としてご確認ください。

■単純(Simple)な経営を目指してください。
…分散してはいけません。複雑にしてはいけません。絞り込ん
で単純に仕上げてください。

ビジネスモデルはできるだけ単純にしましょう。事業体の仕組
み自体も単純になります。集中できて強くなります。業務が効
率的になり、ミスも減ります。高品質のサービス・商品を生み
出し、高い収益力を持つことができます。
分散と複雑化は、経営における諸悪の根源です。

■高収益(Profitable)な企業作りを目指してください。
…安売りは絶対にNGです。経営の難易度を著しく高め、かつ、
創造力を奪います。

売れた時には、大きな利益を出せる収益構造を当初から設計し
ましょう。高めの粗利益率の設定、高めの値付けを心掛けてく
ださい。値決めを外すなら高めに外してください。ビジネスと
して完成した時点での営業利益率は20%以上で設計してくださ
い。
安売り戦略は、経営の難易度を高め、事業体の創造力を奪い去
る原因になります。

■手持ち資金を潤沢(Ample)に維持してください。
…資金余力は企業経営の余裕代、時間を提供してくれます。財
務機能を持ってください。

資金は可能な限り潤沢に持ち続けましょう。借入れの金利負担
よりも、資金に困るリスクの方がはるかに深刻であることを認
識してください。また、借入れのタイミングは、自社が資金を
必要とするタイミング(借り手の都合)ではなく、金融機関が
融資できるタイミング(貸し手の論理)に沿うことが重要です。
総じて貸し手の方が強いからです。
資金余力がもたらす経営者の心の余裕と、増加分の金利負担を、
天秤にかけて比較してください。

■変化に対応できる柔軟性(Flexible)のある企業体を維持し
てください。
…計画のずれを想定した経営を行ってください。

計画(売上の達成)が遅れることを想定しながら経営してくだ
さい。「コントロールできない売上を、コントロールできる売
上以外の経費の執行で調整する」、これが経営管理です。経費
の執行をワンテンポ遅らせる…これが不透明な時代に、企業体
力が十分でない事業体が選択すべき経営のコツです。また、遅
れを許容するための資金余力を持てる財務戦略が重要です。

■経営判断を明確(Clearly)にしてください。
…感覚に頼らず、数字を基準にした論理的な経営を行ってくだ
さい。

曖昧な経営判断、お人好しな対応を止めましょう。
経営は、感覚や概念ではなく、数字で管理してください。感覚
や概念を基準に考えると、判断が曖昧になりがちです。数字を
基準にした判断は、その判断の精度を各段に向上させます。
経営が締まります。

経営の判断基準は何か?永遠のテーマです。
経営の判断基準は無限にあります。逆にも真あり、敢えて真逆
を攻めることで成功することもあります。
それでも、王道をお薦めいたします。王道とは、多くの偉人が
語り続けた経営の道です。
上記の方針は、偉人が語る経営の道に近似しているはずです。
当然です、偉人の言葉を借りているからです。
経営者の皆さま方が、理詰めで考えて、腑に落ちた部分につい
ては、今後の指針として、深く、深く…心に刻んでください。

本年度の、皆さま方の更なるご発展とご健勝を心より祈念いた
します。
感謝・合掌

銀行員から「営業キャッシュフローがマイナスなので・・・」
と、言われることが多々あります。

営業CFがマイナスとは、キャッシュベースの営業収入が営業
支出を下回っている状態ですので、財務分析上は、悪い兆候と
受け取られます。主に、「営業状況が悪く、資金繰りを圧迫し
ているのでは?」という兆候です。しかし、先行投資を積極的
に行い、売上高を急激に伸ばしている会社も、営業CFがマイ
ナスになることがあります。

先行投資によりキャッシュフローがマイナスになっている場合
は、先行投資を止めれば、いつでもキャッシュフローをプラス
に転じることができます。営業不振によるものとは全く違いま
すが、営業CFのメカニズムを深く理解していない銀行員も多
くいますので、営業CFがマイナスの企業は、総じて悪いイメ
ージを持たれます。

粗利率30%、販管費支出が月100万円の通信販売事業者の
ケースで考えてみます。100万円の販管費支出をカバーする
には、100万円の粗利益が必要ですので、最低でも、233
万円の仕入れを行って、333万円の売上高を獲得しなければ
なりません。

もし、営業不振により、売上高が300万円しか獲得できなけ
れば、当然33万円の資金赤字となります。(営業収入300
万円-仕入233万円-販管費100万円)

しかし、営業が好調で400万円の売上高を獲得していても、
さらに500万円の売上高を目指して、350万円の仕入をし
ていれば、50万円の資金赤字となります。(営業収入400
万円-仕入350万円-販管費100万円)

前者の場合は、他人が買ってくれなければ、営業CFをプラス
に転じることはできませんが、後者の場合は、400万円の売
上高に合わせて、仕入を280万円に抑えれば、いつでも20
万円の営業キャッシュフローを確保できます。

このことを銀行員に理解してもらうためには、資金繰り表が有
効です。資金繰り表を示して、「もし、ここの売上高が予想を
下回っても、仕入れを抑えれば営業CFはプラスになります・
・・」という風に、シミュレーションを交えて説明すれば、
「なるほどそういうことか!」と理解してもらえます。

もちろん、営業CFのメカニズムを理解したうえで、「先行投
資を目一杯行う。」という経営スタンスをリスクと捉える銀行
員もいます。しかし、冒頭のセリフ「営業キャッシュフローが
マイナスなので・・・」から始まっても、最終的に資金調達が
できた事例は1つや2つではありません。

いよいよ年の瀬です。
一年を締めくくり、良い新年をお迎えください。

■一年という時間は、長くもあり、短くもあり、頃合いの時間
です。大きな何かを成し遂げるには短過ぎます。一方、真剣に
取り組めば、相当のことが出来る時間です。ひとつのステージ
に目途を付けるのに頃合いの長さです。

○年初に何かを決めたとしましょう。一生懸命に取り組めば、
年末には何か手応えを実感できるはずです。
○さらに、翌年には次のステージを目指してスタートします。
年末には、確かな実感を感じ取れるでしょう。
○そして、三年目には、成果の断片を手中にできるでしょう。
○これを十年続けることが出来たなら、大きな功績を残せるは
ずです。
一事業十年の計で取り組んでください。

■一ヶ月という時間は、長くもあり、短くもあり、頃合いの時
間です。大きな何かを成し遂げることはできませんが、仮説と
検証をワンサイクル以上回せる時間です。仮説をランクアップ
させるのに頃合いの長さです。

○月初めに立てた仮説を実行に移して、月末には結果を検証し
ます。
○仮説と検証のワンサイクル(デミングサークル)を一巡でき
ます。
○これを十二回回せる期間が一年です。一年という時間は、相
当な時間です。

■一年を総括してみましょう。

○まず総括が重要です。
・今年一年の軌跡を振り返りましょう。どんな風に考えて、ど
んな風に行動し、その結果どうなったのかを丁寧に整理して
ください。
・良かった点、改善すべき点を洗い出し、来年の指針にしまし
ょう。
○総括が十分でなければ、同じ過ちを繰り返します。
・人は間違えます。しかし、間違えから学ぶことが出来れば、
それは成功の糧になります。一方、間違えを総括できなけれ
ば、間違えを繰り返します。
・間違えを、確実に「糧」にしましょう。
○年初に立てた今年一年の目標を思い出してください。
・そもそも明確な目標を持っていなければ、来年は、明確な目
標を持ってみませんか。目標を置けば、その目標がより明確
であればあるほど、実現の可能性は高くなります。目標作り
から始めてください。
・年初目標の達成率が低ければ、そもそも目標が明確であった
かどうかを検証してください。来年の目標は、より明確に描
いてください。また、目標の進捗確認が出来ていましたか。
年初の目標は、出来れば一ヶ月毎、最低でも三ヶ月毎の進捗
確認と修正が必要です。
・目標の達成率が高ければ、来年は、もっと大きな、届きそう
もない目標を立ててみませんか。自分を過小評価せず、自分
の潜在能力を引き出すぐらいの目標を立案してください。

■いずれにしても、前向きに考えましょう。

〇今年あった良くないことに焦点を当てて悔やむのを止めまし
ょう。どうせなら、今年あった良いことだけを取り出して喜
びましょう。
〇むかついた相手のことを思い出して恨むのはよしましょう。
どうせなら、良くしてくれた人を思い出して感謝しましょう。
〇うまく行かなかったビジネスシーンを嘆くのもやめましょう。
どうせなら、成功した体験を記憶から取り出しましょう。
〇人は考え方次第でその人生が変わります。
恨み・憎しみ・後悔・嘆き…このようなネガティブな言葉は、
除夜の鐘と共に記憶から消し去りましょう。
愛・感謝・喜び・笑顔…来年からはポジティブな言葉とだけ付
き合っていきましょう。

◆来年はもっと積極的に生きましょう。
◆来年はもっと明るく笑顔で生きましょう。
◆来年はもっと感謝して生きましょう。
◆来年はもっとビジネスを成功させましょう。
◆そして、来年はもっともっと幸せになりましょう。
◆こんなことを自身が考え、そして、こんなことを考えている
人達とお付き合いしましょう。

こんな決意と共に新しい年を迎えてください。
一年間お世話になりました。感謝・合掌。

殆どの経営者様が、会社の借入に対して個人で連帯保証をして
います。連帯保証人は、会社が返済できなくなった時、個人の
資産を処分してでも返済をしなくてはなりません。また、保証
債務は、相続により相続人に引き継がれますので、奥様やご子
息にも負担がかかる可能性があります。大変重たい制度です。

このような重たい連帯保証制度が、中小企業の思い切ったチャ
レンジや円滑な事業承継を阻害しているとして、2014年に「経
営者保証に関するガイドライン」がまとめられました。経営者
保証に依らない融資に取り組もうという内容です。

日本政策金融公庫は、ガイドラインに沿って、早い段階から経
営者の保証を取らない融資に積極的に取り組み始めましたが、
信用保証協会と民間の金融機関は消極的というイメージでした。
しかし、ここ最近、信用保証協会も、ようやく経営者保証を取
らない保証制度に取り組むようになったと感じます。

経営者保証を取らない信用保証協会の制度を利用するには、次
の要件を満たす必要があります。

1.法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている。
2.法人と経営者の間の資金のやりとりが、社会通念上適切な
範囲を超えていない。
3.法人から適時適切に財務情報が提供されており、本制度に
よる保証付融資を実行後も提供すること。
4.法人のみの資産・収益力で借入返済が可能であると判断し
得るものとして、次の「無担保無保証要件」または「有担
保無保証人要件」のいずれかに該当すること。

■ 無担保無保証人要件
以下の1を充足し、かつ2または3のいずれか1項目を充足す
ること。
1.自己資本比率が20%以上
2.使用総資本事業利益率が10%以上
3.インタレスト・カバレッジ・レーシオが2.0倍以上

■ 有担保無保証人要件
以下の1および2をともに充足すること。
1.上記の無担保無保証人要件1~3のいずれか1項目を充足
すること。
2.法人及び経営者本人等が所有する不動産担保等にて保全の
充足が図られていること。

要件は、財務管理体制を問うものばかりです。個人保証は大変
重たい制度です。個人保証を外すために、財務管理体制の見直
しをしてはいかがでしょうか。ご相談ください。

同じ努力を続けても、その成果の大小は、その選択する事業、
ビジネスモデルや事業立地によって大きく変わります。努力が
よりたくさんの成果を生み出せるような事業を選択してくださ
い。(中小零細企業にとっての)良い事業について検証してみ
ます。

1.社長(会社)が得意で好きな事業を狙う。

社長が不得手な事業や好きでない事業に手を出すべきではあり
ません。IT音痴な社長が、高度なITリテラシーを求められ
る事業を行うべきではありません。また、ラーメンが嫌いな社
長が、ラーメン屋さんを開業してもうまくいきません。

◎得意なこと、好きなことを事業にする、これは最初に確認す
べきことでしょう。

2.(できるだけ小さい)マーケットサイズの市場を狙う。

BIGマーケットへの参入は、中小零細企業が行うことではあ
りません。今想定しているマーケットが大き過ぎるなら、対象
とするマーケットを敢えて絞り込んでください。
BIGマーケットは、多くのBIGカンパニーが、その資本力
とブランド力を駆使して戦う厳しい戦場(レッドオーシャン)
です。中小零細企業が入り込める市場ではありません。

◎狙うマーケットサイズの大きさが適切か、これも確認してく
ださい。

3.多大な資金を必要としない事業を狙う。

自身で調達できる資金内(自己資金+可能な借入れ)で、一旦
事業が立ちあげられる事業を選択してください。力不相応な資
金計画を立てて、資金さえあれば…このないものネダリは止め
ましょう。ステージを一つずつ超えて行きましょう。
また、事業拡大時に多大な事業資金を必要とする事業、金融事
業・投資事業や粗利益率の低い事業は、中小零細企業が取組む
事業ではありません。

◎必要な資金総額が力相応か、これも確認してください。

4.付加価値の高い(高価格帯)事業を狙う。

大雑把に分類すると、低価格帯ゾーンのBIGマーケット(ロ
アマス)はBIGカンパニー向け、一方、高価格帯のニッチマ
ーケット(アッパーニッチ)は中小零細企業向けです。ミドル
ゾーンやロアゾーンではなく、アッパーゾーンの価格帯を狙っ
てください。1斤200円の食パンマーケットは大手メーカーで寡
占状態ですが、1斤800円の食パンマーケットには、まだまだ空
きがあるはずです。

◎アッパーニッチ(高価格帯の隙間)を狙ってください。

5.オペレーションがシンプル・簡単な事業に仕上げる。

複雑さは高コストの主因です。運営コストを押し上げるだけで
なく、運営者に高いスキルを求めることになります。現場のオ
ペレーションでの差別化ではなく、ビジネスモデルや事業立地
での差別化を目指しましょう。事業の設計図は単純・明快が理
想です。

◎シンプルな運営、シンプルな現場、意識してください。

6.最後に、「週刊東洋経済、2015年9月12日、特集経
営学の教科書」(東洋経済新報社)に寄稿された、「高収益企
業の創り方」(東洋経済新報社、三品和広氏〔神戸大学大学院・
経営学研究科教授〕)の著者である、三品和広教授の記事を引
用して紹介させていただきます。
『…(高収益企業の研究を通じて)成功例に共通している点は
一目瞭然だった。「事業立地」がよいということだ。仕事の仕
方の工夫や製品開発ではなく、そもそも「何屋さんをやるか」
の選び方が優れている。事業立地の考え方では、ある市場の中
でどこにポジションするかよりもむしろ、そもそもどの市場を
選ぶかが重要になってくる。…』

一生懸命頑張ること、これは中小零細企業経営者にとって重要
なことです。ただ、これは成功のための必要条件であって、十
分条件ではありません。十分条件は、頑張ることで、社長自身
も会社も、従業員も報われる事業を選定・設計することです。
社長には、この十分条件を検証し続ける責務があります。これ
こそが、経営者に求められる経営力です。この経営力を磨くた
めに費やす勉強時間とお金をしっかり確保してください。努力
がよりたくさんの成果を生み出せるような事業を選択してくだ
さい。

事業計画書とは未来に向かって事業をどのように進めていくか
をまとめた資料です。事業プランをまとめた「事業概要書」と、
売上と利益の推移見込みをまとめた「数値計画書」で構成され
るのが一般的です。

インターネット等から、「事業計画書の書き方」等の情報を入
手することは容易ですが、ひとことで「事業計画書」と言って
も、その目的によって書き方は違います。まずは、ご自身が、
何のために事業計画書を作成しようとしているかを明確にしま
しょう。

■ 事業計画書を作成する目的の例
・自身の構想をまとめるため。
・従業員、株主等に会社のビジョンを示すため。
・金融機関から資金を調達するため。

自身の構想をまとめるために作成する事業計画書は、ご自身の
思いのままに作成すればよいでしょう。見せる相手は自分です
ので、自分が納得するように作成します。数値計画も、ご自身
が実現可能と考える最大値で作成するのが一般的ではないでし
ょうか。

従業員、株主等に会社のビジョンを示すために作成する場合は、
自社がいかに素晴らしい会社であるかを伝えなくてはなりませ
ん。消極的な計画では従業員の士気も上がらないでしょうし、
投資家も魅力を感じません。従って数値計画は、希望的観測を
含めて、少しオーバーに作成するのが一般的かもしれません。

気をつけていただきたいのは金融機関に提出する事業計画書で
す。誤解を恐れずに申し上げますと、金融機関に事業計画書を
提出する目的は、会社の魅力を伝えることより、返済の確実性
を伝えることの方が優先されます。金融機関は、「資金があれ
ば、優秀な人材が集まれば、ヒット商品が出れば・・・日本有
数のビッグカンパニーになれる。」といった、多くの前提条件
の上に成り立った事業計画書よりも、「資金が獲得できなかっ
たとしても、優秀な人材が集まらなかったとしても、ヒット商
品が出なかったとしても・・・返済は大丈夫です。」という事
業計画書を望んでいます。

また、金融機関からいくらの支援を取りつけようとしているか
でも計画書の内容は変わります。1,000万円の融資依頼に
対して、世界制覇を目論む事業計画書を作成してしまうと、夢
想家と思われてしまいます。この場合は、将来的には世界制覇
を目論んでいるが・・・まずは1,000万円で県内制覇をす
るという計画書を作成するのが妥当です。

金融機関向けに提出する事業計画書の作成ポイントは、「返済
の確実性を示すために、今回調達する資金で実現できる範囲の
計画を作成すること。」です。心掛けてください。