経営者の皆様は、日々「売上を上げなければ」「利益を出さな
ければ」と考えているのではないでしょうか。これは「PL脳」
と呼ばれる思考パターンです。PLとは損益計算書のことで、
売上や利益を示す大切な財務諸表です。しかし、PLだけにと
らわれすぎると、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。

■ PL脳の問題点
PL脳の最大の問題は、短期的な視点に陥りやすいことです。

1.売上至上主義:無理な値引きで売上を伸ばそうとし、利益
率が下がる

2.コスト削減偏重:将来への投資(研究開発や人材育成)を
削り、長期的な競争力が低下する

3.借入を避ける:「無借金経営」にこだわり、成長のチャン
スを逃す

これらは一時的にPLを良く見せますが、長期的には企業価値
を損なう可能性があります。

■ PL脳からの脱却
では、どうすればPL脳から抜け出せるでしょうか?

1.長期的視点を持つ:5年後、10年後の自社の姿を描き、
そこに向かって計画を立てましょう。

2.キャッシュフローを重視する:利益は会計上の数字ですが、
キャッシュは実際のお金の動きです。キャッシュフロー計算書
を定期的にチェックしましょう。

3.投資を恐れない:新しい設備や技術、人材への投資は短期
的にはコストになりますが、長期的な成長には不可欠です。

4.バランスシート(BS)も見る:PLだけでなく、BSも
確認しましょう。資産や負債の状況を把握することで、より総
合的な経営判断ができます。

5.非財務指標も重視する:顧客満足度や従業員のモチベーシ
ョンなど、数字に表れない要素も企業の価値を左右します。

■ 金融機関の理解を得るために
PL脳から脱却しようとすると、一時的にPLが悪化する可能
性があります。そのとき、金融機関の理解を得るのが難しいと
感じるかもしれません。しかし、多くの金融機関も企業の長期
的な成長を支援したいと考えていますので、以下のポイントを
押さえて、金融機関とコミュニケーションを取りましょう。

1.事業計画を明確に:なぜその投資が必要か、どのような成
果を期待しているかを具体的に説明しましょう。

2.定期的な報告:計画の進捗状況を定期的に報告し、信頼関
係を築きましょう。

3.キャッシュフロー重視:PLだけでなく、キャッシュフロ
ーの見通しも示しましょう。

4.業界動向の共有:自社の取り組みが業界トレンドに沿って
いることを説明しましょう。

PL脳から脱却し、長期的な視点で経営することは、決して難
しいことではありません。日々の小さな意識の変化から始めて
はいかがでしょうか。そうすることで、自社の真の価値を高め、
持続的な成長への道を切り開くことができると思います。

 

2018年1月、厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイド
ライン」を作成し「モデル就業規則」上で、それまで記載して
いた「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規
定を削除しました。そして、新たに「第67条に労働者は、勤務
時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」
という、副業を認める条文を追記しました。上記から6年が経
過しましたが、副業が緩やかに浸透してきたように感じます。

副業を認めることには、雇用者側にとって多くのメリットとい
くつかのリスクが存在します。長短を勘案して副業について検
討してください。

以下にメリットとリスクについてそれぞれの要点をまとめます。

■1.雇用者側のメリット

1.スキルの向上
従業員が副業を通じて新たなスキルや経験を身につけることが
でき、その知識を本業にも活用できます。

2.従業員の満足度向上
副業を通じてキャリアの選択肢と収入を増やすことができるた
め、従業員の満足度が向上し、結果的に離職率が低下します。

3.新しいアイデアの導入
異なる業界や環境での経験を持つ従業員から新しいアイデアや
視点がもたらされ、組織内の革新を促進します。

4.競争力の強化
副業を認めることで、企業は柔軟性を持って働ける魅力的な職
場と見なされ、優秀な人材の獲得や維持が容易になります。

5.組織のリスク分散
従業員が副業によって収入源を分散している場合、組織全体と
しての経済的リスクが軽減されることがあります。

■2.雇用者側のリスク

1.業務への集中力低下
従業員が副業に時間を割くことで、本業の生産性や集中力が低
下する可能性があります。

2.機密情報の漏えい
副業先が競合企業である場合、重要な情報が漏れるリスクがあ
ります。

3.法的・規制の問題
労働時間規制の違反や労働者の健康問題が起こる可能性があり、
企業が法的責任を問われることがあります。

4.内部の不公平感
副業をしていない従業員との間で不公平感が生じることがあり、
職場の士気やチームワークに影響を与える可能性があります。

5.タレントの流出
従業員が副業でより良い機会を見つけた場合、企業を離れる可
能性があります。

副業を認める際には、これらのメリットを最大化し、リスクを
最小限に抑えるために、明確なガイドラインと適切な管理体制
が必要です。副業に関するポリシーを設定し、従業員に対する
教育とサポートを行うことで、副業がもたらす利点を活かし、
潜在的な問題を予防することが必要です。

近い将来、副業を容認するように立法化されるのではないでし
ょうか。そうならなくても、副業禁止の就業規則が、採用にお
ける大きなデメリットになる時代が近く訪れます。この機会に
副業について考えてみてください。

節税の目的はキャッシュアウトを減らして資金を増加させるこ
とです。しかし、本来の目的を忘れ、節税自体が目的となって
しまっている経営者様が多くおられます。

ある社長様のお話です。その社長様はウェブサイトの制作事業
で起業しましたが、大手企業をクライアントに持っていたため、
設立当初からまとまった売上が立っていました。しかし、支払
う税金を少しでも減らすことが経営者の技量だと考え、極端に
言うと1億円の売上が出来れば、9,990万円の費用を使うよう
にしていたそうです。

税金とどう向き合っていくかというのは、経営の大きなテーマ
のひとつです。納税が資金繰りを圧迫することもありますし、
税金に対する過度な意識が、会社の成長を妨げることもありま
す。同社は後者のケースです。

キャッシュフローを最大化することが本来の目的であるはずな
のに、節税に意識が行き過ぎると、税金を出来るだけ払わない
ことが目的になってしまいます。利益を出さないように費用を
増やせば、税金を少なくするという目的は達成できますが、手
元にキャッシュは残りません。財務内容も悪くなり、借入もま
まならないため、資金繰りは当然厳しくなります。

同社の社長様も、設立から5年ほど経ってようやくそのことに
気づいたそうで、「節税を止めた途端に資金繰りが楽になりま
した。銀行が積極的に融資をしてくれるようになり、1,000万
円近くの税金を支払っても、億単位の資金を調達できるので資
金に余裕ができました。」とおっしゃっておられました。

税金は最大でも利益の35%程度です。利益以上に税金を払うこ
とは決してありませんので、税金が原因で倒産することは理論
上ありません。ただ、利益を資産の購入に充てたり、利益の受
取よりも税金の支払いが先に来たりする場合は納税が苦しくな
ります。この場合の問題は税金ではなくファイナンスです。税
金を払わないことに一生懸命になるより、ファイナンスを適切
に行い、税金を無理なく支払えるようにすることの方が重要です。

節税をしているのに資金繰りが苦しいと感じておられる社長様
はファイナンスを上手く活用できていないかもしれません。
当事務所は税務だけでなく、ファイナンスに関するアドバイス
も行っております。是非ご相談ください。

「今年度の最低賃金について議論していた厚生労働省の審議会
は24日夜に決着し、物価の上昇が続いていることなどを踏まえ、
過去最大となる時給で50円引き上げる目安でまとまりました。
全国平均の時給は1054円となり、これまでで最も高くなります。
最低賃金は企業が労働者に最低限支払わなければならない賃金
で、現在の時給は全国平均で1004円です。24日夜、労使双方
が参加した審議会が決着し、時給で50円、率にして5%引き上
げるとする目安でまとまりました。引き上げ額は去年の43円を
超えて過去最大です。」(2024年7月25日 厚生労働省ニュース
より引用〕

最低賃金の上昇率は、すべての報酬の昇給率にも影響します。
賃上げ5%が必要であるとの意味です。賃上げ5%以上の予算
化が必要です。

賃金が上がることは、労働者にとっては収入の増加や生活水準
の向上を意味しますが、企業にとってはさまざまな対応を迫ら
れる重要な課題です。対策にウルトラCはありません。貴社に
とって必要な項目を確認し、丁寧に対応していくしかありませ
ん。企業が賃金の引き上げにどのように対応するかについて、
以下に解説いたします。

■1.コスト管理の見直し

最低賃金の引き上げは、企業の人件費の増加を直接引き起こし
ます。特に、労働集約型の業界や中小企業では、この影響が大
きくなります。企業はまず、コスト構造全体を見直す必要があ
ります。無駄な経費の削減や業務効率化、固定費の変動費化な
ど、総コストを削減するための取り組みが求められます。

■2.労働生産性の向上

コストを削減する一方で、労働生産性を向上させることも重要
です。これには、従業員のスキルアップや教育訓練の強化、業
務プロセスの改善、そして自動化技術の導入などが含まれます。
例えば、最新のIT技術やロボット等を活用して業務を効率化
することにより、同じ労働時間でより多くの成果を上げられる
ようにすることが必要です。

■3.商品・サービスの価格設定

最低賃金の上昇は、最終的には商品の価格に転嫁されることが
一般的です。ただし、価格を上げることで顧客離れが起こるリ
スクもあります。企業は市場動向や競合他社の動きを注視し、
適切な価格設定を行う必要があります。また、価格を上げる際
には、付加価値の向上やサービスの改善を同時に行うことで、
顧客に納得してもらう工夫も必要です。

■4.雇用形態の多様化

人件費の増加に対しては、雇用形態の見直しも一つの対策にな
ります。正社員を減らし、パートタイムやアルバイト、契約社
員を増やすことで、柔軟な人員配置を行うことができます。ま
た、リモートワークの導入やフレックスタイム制の導入など、
働き方の多様化を進めることも有効です。これにより、効率的
な運営を行うことが重要です。

■5.財務戦略の再検討

最低賃金の引き上げによるコスト増加を乗り切るために、企業
の財務戦略も再検討が必要です。借入金の見直しや資金調達方
法の多様化、投資計画の修正など、企業の財務基盤を強化する
取り組みが求められます。また、政府や地方自治体の助成金や
補助金を活用することにより、最低賃金の引き上げに伴う財務
的な負担を軽減することも必要です。

■6.社内コミュニケーションの強化

最低賃金の引き上げに対する企業の対応策を従業員に理解して
もらうことも重要です。透明性のあるコミュニケーションを通
じて、企業の方針や取り組みを従業員に伝え、協力を求めるこ
とが必要です。また、従業員の意見やアイデアを積極的に取り
入れることで、現場のニーズに合った対応策を策定することに
も心がけましょう。

■7.顧客対応の強化

最低賃金の引き上げにより、コスト増加分を価格に転嫁する場
合、顧客対応も重要な課題となります。顧客に対して価格改定
の理由を丁寧に説明し、理解を得る努力が必要です。また、価
格改定に伴い、顧客サービスの向上や付加価値の提供を通じて、
顧客満足度を維持・向上させることが求められます。

最低賃金の引き上げは、企業にとってさまざまな課題を引き起
こしますが、それに対する適切な対応策を講じることで、企業
の持続可能な成長を実現することが可能です。コスト管理の見
直し、労働生産性の向上、価格設定の工夫、雇用形態の多様化、
財務戦略の再検討、社内外のコミュニケーションの強化など、
総合的な対策を講じることが重要です。企業は、変化する経済
環境に柔軟に対応し、持続的な競争力を維持するための努力を
続ける必要があります。

厳しいと感じる方も多いでしょうが、避けて通れない現実です。
受け入れて対策を打つしかありません。

小売業において、適切な財務管理は事業の成功と持続可能性の
鍵となります。その中でも、在庫管理は特に重要な要素です。
在庫は小売業の主要な資産であり、適切に管理することで収益
性を高め、キャッシュフローを改善することができます。

■ 在庫管理の重要性
1)資金効率の向上
過剰在庫は資金を固定化し、運転資金を圧迫します。適切な在
庫水準を維持することで、資金効率を高め、他の事業活動に資
金を振り向けることができます。

2)利益率の改善
在庫回転率を上げることで、商品の鮮度を保ち、値下げロスを
減らすことができます。これは直接的に利益率の向上につなが
ります。

3)機会損失の回避
適切な在庫管理は品切れを防ぎ、潜在的な売上機会を逃さない
ようにします。これは顧客満足度の向上にも寄与します。

4)キャッシュフローの改善
在庫を適正水準に保つことで、仕入れにかかる支出を抑え、キ
ャッシュフローを改善することができます。

■ 在庫管理の改善策
1)在庫管理システムの導入
デジタル技術を活用した在庫管理システムを導入することで、
リアルタイムの在庫状況把握や自動発注が可能になります。こ
れにより、人為的ミスを減らし、効率的な在庫管理が実現でき
ます。

2)ABC分析の実施
商品をA(高価値)、B(中価値)、C(低価値)にランク分
けし、それぞれに適した管理方法を適用します。これにより、
限られたリソースを効果的に配分できます。

3)需要予測の精度向上
過去の販売データ、季節変動、市場トレンドなどを分析し、よ
り正確な需要予測を行います。最近では、AIを活用した予測
システム等も開発されています。

4)ジャストインタイム(JIT)方式の導入
必要な商品を、必要な時に、必要な量だけ仕入れるJIT方式
を導入することで、在庫水準を最小限に抑えることができます。

5)サプライチェーンの最適化
サプライヤーとの関係強化や、物流の効率化を図ることで、リ
ードタイムを短縮し、より柔軟な在庫管理が可能になります。

6)定期的な棚卸と分析
実際の在庫数と記録上の在庫数を定期的に照合し、差異があれ
ば原因を究明します。また、滞留在庫や季節商品の分析を行い、
適切な対策を講じます。

7)KPIの設定と監視
在庫回転率、商品回転期間、在庫比率などのKPIを設定し、
定期的にモニタリングします。これにより、在庫管理の効果を
測定し、継続的な改善につなげることができます。

8)クロスドッキングの活用
一部の商品に関しては、在庫を持たずに直接顧客に配送するク
ロスドッキング方式を採用することで、在庫リスクを軽減でき
ます。

適切な在庫管理は、単に在庫水準を下げることではなく、売上
と利益を最大化しつつ、キャッシュフローを改善することを目
指すものです。上記の改善策を参考に、自社の状況に合わせた
最適な在庫管理の仕組みを構築し、定期的な見直しと改善を重
ねることで、財務面での健全性を高め、競争力のある店舗運営
が実現できます。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

…前回号の続きです。

冒頭に申し上げますが、今は値上げが容認されやすい環境にあ
ります。この潮流に乗ってください。この前提で以下をご確認
ください。

■勝ち組と負け組の価格戦略は真逆です。

市場が飽和した日本のマーケットにおいては、モノやサービス
を安く買おうとするエネルギーが蔓延しています。モノやサー
ビスを提供する企業サイドも、その趨勢に迎合することで、自
社の売上を確保しようと考える傾向が強いようです。
一方、十分な利益を確保できる価格設定を行ったうえで、隆々
と経営を続ける企業もたくさんあります。当然、たくさんの顧
客に支えられているはずです。

前者と後者、雑駁に分類するなら負け組と勝ち組です。
前者(負け組)が4割、後者(勝ち組)が2割、中間が4割、
このような分類になりそうです。

◆前者(負け組)企業の価格戦略は…

「価格(安売り)を売るための道具」だと思っています。
「価格は安い方が売れる」と思っています。
「価格は、できるだけ安めに設定するべき」と思っています。
「価格が高すぎて売れない」ことを過度に嫌います。
「売れないより、薄利でも売れた方がよい」と考えています。
※うまく行ってたくさん売れても「繁盛貧乏」に陥ります。儲
からないのに忙しい状態でバランスしてしまいます。後は頑張
って・頑張り続けて…現状維持が関の山です。

◆後者(勝ち組)企業の価格戦略は…

「価格を売るための道具には使わない」との信念を持っていま
す。
「価格が安くても売れるわけではない」と思っています。
「価格は、できるだけ高く設定すべき」と思っています。
「(仮に)高すぎて売れないことが有っても仕方ない」と思っ
ています。
「薄利で売るよりも、売れない方がよい」と考えています。
※うまくいけば、たくさん売れて儲かる「繁盛高収益」の状態
になれます。利益で次の投資ができ、さらなる成長を目指せま
す。うまくいかなければ、「閑散貧乏」の状態です。やり直せ
ます。

■価格に対する二つの潮流…

モノやサービスを安く買おうとする潮流に巻き込まれることは
得策ではありません。もう一つの潮流、「良いモノ・必要なモノ
が欲しい。対価は払う」に乗せましょう。気を付けてください。
前者の潮流の方が目立っています。後者は静かに流れています。
値上げは粛々と実施されます。

■もう一度「価格戦略=値決め」を再考してください。

「値決め」は経営の要諦です。であるにも関わらず、値決めに
掛ける手間暇が少なすぎると思っています。総じて安く付けす
ぎているとも思っています。間違えた「値決め」が経営に与え
るダメージを過小評価してはいけません。

事業は付加価値を求めつづけることでのみ継続できます。値決
めは重要な経営判断です。安売りは悪です。利益を計り、利益
を求めてください。また、コストは自然に膨らみます。意識し
て抑え込んでください。高収益(Profitable)な企業体作りを
強く意識してください。

◎「価格戦略=値決め」は、経営成績に甚大な影響を与えてい
ます。勇気をもって「価格戦略=値決め」をご再考ください。

◎今は値上げが容認されやすい環境にあります。この潮流に乗
ってください。少なくとも、コストの上昇分は必ず値上げして
ください。

多くの飲食店経営者の皆様は、事業拡大と利益増加を目指して
日々奮闘されていることと思います。年間300万円の利益を出
す店舗1店舗経営されている場合、その利益を倍増させるには
どうすればよいでしょうか?多くの方が真っ先に考えるのは、
2号店の出店ではないかと思います。しかし、今回は別の視点
から、より安全で効果的な利益倍増の方法をご提案します。

■ 新規出店のリスクを考える
新規出店は確かに魅力があります。店舗数を増やすことで、ブ
ランドの認知度向上や規模の経済による仕入れコストの削減な
ど、様々なメリットが期待できます。しかし、同時に大きなリ
スクも伴います。

新規出店には多額の初期投資が必要です。家賃、内装費、設備
投資、人材採用・育成など、想像以上の出費が待っています。
さらに、新店舗が軌道に乗るまでには時間がかかり、その間は
赤字覚悟の運営を強いられる可能性が高いです。

■ 既存店舗改善のメリット
では、既存店舗の改善に注力するとどうでしょうか?利益率の
向上と固定費の削減に焦点を当てることで、新たな大きな投資
なしに利益を増やすことができます。このアプローチには、以
下のようなメリットがあります。

1)リスクが低い:新規出店に比べ、既存店舗の改善は比較的
リスクが低く、確実性が高いです。

2)即効性がある:改善の効果が直接利益に反映されるため、
成果が見えやすいです。

3)経営ノウハウの蓄積:1店舗の運営に集中することで、経
営スキルを磨くことができます。

4)ブランド力の向上:1店舗の評判を高めることで、将来の
多店舗展開の基盤を作れます。

5)キャッシュフローの安定:新規出店に伴う資金繰りのリス
クを避けられます。

■ 具体的な改善策
では、具体的にどのような改善を行えばよいでしょうか?以下
に、利益率の改善と固定費の削減のためのアイデアをいくつか
挙げてみます。

1)利益率の改善:
・F/Lコスト(食材費と人件費)の最適化:適切な原価管理と
メニュー設計、効率的な人員配置を行います。

・高付加価値メニューの開発:利益率の高い商品を提供し、客
単価を上げます。

・販売促進の強化:リピーター獲得や新規顧客の開拓に注力し
ます。

2)固定費の削減:
・水道光熱費の節約:省エネ設備の導入や従業員の意識改革を
行います。

・家賃の見直し:可能であれば、家主との交渉や立地の再検討
を行います。

・業務効率化:ITツールの導入やプロセスの見直しで人件費
を抑制します。

■ 長期的な視点も忘れずに
既存店舗の改善に注力することは、短期的には非常に効果的な
戦略です。しかし、長期的な成長を考えると、将来的な多店舗
展開も視野に入れるべきです。既存店舗の改善で得たノウハウ
と安定した収益基盤を元に、慎重に計画を立てて展開していく
ことが、持続可能な成長につながります。

■ まとめ
飲食店経営において、利益倍増は決して夢物語ではありません。
しかし、その道筋は必ずしも新規出店だけではないのです。既
存店舗の改善に注力することで、より安全かつ効果的に利益を
増やすことができます。自店の強みを見極め、地道な改善を積
み重ねることが、長期的な成功への近道となります。

企業経営の成否と、その企業が設定している価格帯や価格戦略
の相関は強いと感じます。勝ち組は総じて安くない価格帯を狙
い、値引きを好まない傾向にあります。一方、負け組は安い価
格帯を狙い、更に値引きを多発します。

『値決めこそ経営』(京セラ名誉会長、稲盛和夫先生)、この
言葉を肝に銘じてください。どんなに良いものを創りだしても、
その値決めを間違えると台無しになります。故に、値決めは大
変難しい最高レベルの経営判断事項です。であるにもかかわら
ず、値決めを安易に、どちらかというと安めにつけてしまう経
営者は少なくありません。松下幸之助先生はその著書の中で、
パナソニック(当時松下電器)は、相当大きくなるまで、松下
幸之助先生自身が値決めの最終決裁をされていた、と語ってお
られます。

「自社の値決めが正しいのか?」この解は誰にもわかりません
が、少なくとも多くの手間暇と知恵を最大限投入して、悩んで、
悩んで、悩み抜いて決める…この習慣を持っていただきたいと
思っています。

過去(この数十年)において、日本の企業の多くが、どちらか
というと安すぎる値決めを繰り返してきたために、今の経済の
停滞(デフレ)を招いたのではないかとの仮説を持っています。
特にこの傾向は中小企業に顕著です。

以下、【安売り症候群】という疾病を整理いたします。自社・
ご自身にあてはめてご確認ください。

■【安売り症候群】という疾病の正体は…(有病率50%)

◆価格を売るための道具に使うと「繁盛貧乏」になります。

「値決め」は経営の要諦です。であるにも関わらず、値決めに
掛ける手間暇が少なすぎると思っています。総じて安く付けす
ぎているとも思っています。間違えた「値決め」が経営に与え
るダメージを過小評価してはいけません。
経営者は閑散な状態を嫌います。故に、安すぎる「値決め」を
して、貧乏しても繁盛したいと考える傾向があります。「繁盛
貧乏」がはびこるのはこのためでしょう。
経営者は楽な道を選びます。苦労して付加価値を積み上げるよ
りも、価格を低く抑えて価値とバランスしようと考えてしまい
ます。価格を売るための道具に使ってしまいます。
安売り戦略の大罪は、良いものを創り出そうとする知恵を奪い
取ることです。この愚策を長年続けている集団から、新たな商
品やサービスを創り出す創造力は生まれません。商品やサービ
スの価値と価格のバランスは、その価格を下げて市場に合わせ
るのではなく、その価値を向上させることで調整してください。
多くの偉人たちが語る経営の王道です。

◆「値決め」が弱気で利益を出せない経営体、さらに、新しい
価値を生み出す創造力を無くしてしまった経営体を『安売り症
候群』と呼びます。

◆『安売り症候群』の経営体には、以下のような症状が現れま
す。

□1.頑張っているのに儲からない。
□2.新しい商品、サービスを創造できていない。
□3.利益は出なくて良い、と思うことがある。
□4.値上げをしたいと思っていてもできない。
□5.ぎりぎりの経営をしていると感じる。
いかがでしょうか?

◆病名:『安売り症候群』を整理します。

値決めに対する姿勢が弱気で、利益管理も曖昧になる病です。

●原因

安くないと売れないとの思い込みが原因です。良いものには相
応の値段を(それなりのものはそれなりの値段を)付けてくだ
さい。良いものを安く売る必要はありません。原価が上がれば
価格を見直す、この当たり前の企業行動を取らなければ、利益
がどんどん減ります。利益が薄くなればなるほど、良いものを
作ろうとする知恵や創造力を失います。最後は、薄利は善、利
益は悪の心境に陥ります。こうなると末期です。

●症状

二つのレベルに分かれます。繁盛貧乏のレベルが第一段階です。
このレベルは頑張っているのに値決めを間違えていて儲からな
い状況です。この段階では価格の見直しを行えば容易に治癒で
きます。第一のレベルを続けていると、頑張っても儲からない
と思い込み、頑張る意欲、より良いものを創造しようとする力
を失くしてしまいます。最後には、儲からない自分を正当化す
るために、儲けは悪、儲からないことが善、ビジネスそのもの
を否定するようになります。

『値決めこそ経営』(京セラ名誉会長、稲盛和夫先生)です。
「値決め」には、多くの手間暇と知恵を最大限投入して、悩ん
で、悩んで、悩み抜いて決める…この習慣を持っていただきた
いと思っています。
「値決め」は現場ではなく、トップが決めるべき事項です。

補助金の採択と融資の関係について、ある企業様の事例を交え
ながらご説明させていただきます。

■ ある企業様の事例
ある企業様から次のようなご相談をいただきました。事業再構
築補助金の採択を受けたものの、メインバンクから融資を断ら
れたというケースです。

■ 経営者様の主張
・銀行の担当者が、採択された時点で融資はできると言った
・そのため、既に工事を発注してしまった
・工事の遅延は損失につながり、新規事業の中止はさらに大き
な損失を招く
・国の認定を受けた事業計画なのに、なぜ融資を断られるのか

経営者様は、「補助金の採択=融資を受けられるのは当然の権
利」とお考えでしたので、融資を断られたことを銀行の意地悪
や嫌がらせではないかとお怒りになっていました。

■ 融資が断られた真の理由
しかしながら、決算書を拝見すると、融資が困難な理由は明確
でした。それは「赤字債務超過」の状態にあったためです。

赤字債務超過とは、簡潔に言うと、負債が資産を上回っている
状態を指します。これは経営上非常に深刻な問題であり、金融
機関にとっても大きな懸念事項となります。

■ 赤字債務超過の影響
赤字債務超過に陥ると、通常、金融機関からの新規融資は極め
て困難になります。まずは、この事実を十分にご理解いただく
必要があります。ただし、日本政策金融公庫の融資やコロナ関
連の特別融資など、政策的な理由で例外的に融資が可能な場合
もあります。しかし、これらは通常のケースではないことをご
認識ください。

■ 補助金採択と融資の関係
事業再構築補助金の採択を受けたからといって、必ずしも金融
機関の融資が保証されるわけではありません。補助金の採択と
金融機関の融資判断は別物であり、やはり企業の財務状況が重
要な判断基準となります。

■ まとめ
赤字債務超過の状態では、基本的に融資を受けることが困難で
あるという認識を持つことが重要です。
経営者の皆様には、赤字債務超過に陥ってから資金調達に奔走
するのではなく、そのような状況に陥らないよう、日頃から財
務管理に十分注意を払っていただくことをお勧めいたします。

…前回号からのつづきです。

■頑張りすぎる経営からの脱却!目指すべきは『ダム経営』
(松下幸之助先生)です。

◎以下は、『ダム経営』(松下幸之助先生)の要点です。

『ダム経営とは、経営に必要な人・モノ・金に余裕を持った経
営をする方法のことです。例えば、工場で機械が100%動い
ていなければ利益が出ないようでは、何かがあればすぐに利益
が出なくなります。そうではなく、80%稼働でも利益が出る
ようにしなければなりません。人に対しても同じです。社員の
80%が働けば利益が出るようにすることを指します。資金に
ついても、例えば、銀行から融資を受ける時にも、返済に余裕
があるようにすることです。ダム経営とは、人・モノ・金に余
裕を持たせることです。』

◎以下、松下幸之助先生のダム経営の講演を聴いた経営者との
有名なやり取りです。

(某経営者)「うちの会社は人も金も汲々としている。松下さ
んのような大企業はダム経営ができるかもしれませんが、我々
のような小さな会社がダム経営をできるようにするにはどうす
ればいいのですか?」

(松下幸之助先生)「どうしたらダム経営ができるようになる
のか、方法論は私にもわからない。しかし、そうなりたいと強
く思うことが重要だ。」

■『ダム経営』(松下幸之助先生)を導入するためには…

◆正解は「そうなりたいと強く思うこと」(松下幸之助先生)
です。これが松下幸之助先生のよく考えられた末のご回答です。

ただし、具体論として敢えて付け加えるならば、

◆その1:余計なものを徹底的に削ぎ取る経営を行うこと、ズ
バリ経営の【単純化(絞り込み)=Simple化】です。な
ぜなら、少なくない中小企業は、過去において長期間『増収と
拡大』を第一義に経営してきました。その過程で、数多の余計
なモノと事に埋もれています。結果として、経営資源が分散さ
れ、社内のありとあらゆるものが複雑になり、動きが悪くなっ
ています。対応が遅くなり、ミスが多発し、全体にコスト高に
なっています。各商品やサービスの磨きこみも十分でなく、総
花的な品揃え、サービスを提供しており、これといった強みも
ない状況に陥っているからです。経営が散らかっているのです。

◆その2:利益を優先する経営を行うこと、ズバリ経営の【高
収益化=Profitable化】です。なぜなら、過去にお
ける長期間の『増収と拡大』一辺倒の経営は、時に利益をない
がしろにしても仕方ないとの考え方を広く社内に浸透させてし
まっているからです。『利益より売上、利益より規模の拡大』
とする無言のスローガンを社内に根付かせてしまっています。

『減収(売上減)と規模の縮小』を一定期間容認し、
【単純化(絞り込み)=Simple化】と
【高収益化=Profitable化】を
具体的な施策として取り組むことで、『ダム経営』(松下幸之
助先生)の実現を目指すことを当面の課題とする経営に舵を切
られることをお薦めしたいと思っています。経営が、会社が大
きく変わるはずです。

人口減少に起因する市場規模の縮小、市場の成熟化、さらには
働き方改革が叫ばれる令和の時代には、過去の我武者羅に頑張
る経営では到底生き延びて行けないように感じます。今こそ、
『余力のある経営』を目指すべきではないでしょうか。

※昭和の高度成長期において、『ダム経営』を提唱された松下幸
之助先生は、まさに『経営の神様』です。改めて敬意を表した
いとの思いで一杯です。