貴社が融資を申し込んだ後、金融機関の内部でどのようなプロ
セスを通じて審査が行われているかご存じでしょうか。審査の
プロセスを知ることで、融資獲得のコツが分かります。

金融機関の担当者は、融資の申し込みを受けたら稟議書を作成
します。稟議書は、担当者→代理→次長→副部長→部長(支店
長)等、少なくとも4~5名の目を通って決裁となるのが一般
的です。

決裁者は、支店の権限内であれば支店で決裁となりますが、支
店の権限範囲外であれば本部の審査役が決裁者となります。3
百万円の融資案件でも、30億円の案件でも同じ稟議書を作成
し、同じ様に回覧します。

担当者が稟議書を作成するにあたって最も必要なのは情報です。
融資の受け方を熟知している企業は、試算表、事業計画書、返
済計画書、資金繰り計画書、担保一覧などの豊富な情報を担当
者に提供します。目の前の担当者の先にいる数名の上司を納得
させないと融資がおりないことを知っているからです。

一方、とある企業は融資申し込みに際して試算表の提出すら嫌
がります。金融機関の担当者は情報不足により内容の薄い稟議
書しか作成できません。当然ながら数名の上司を納得させるこ
とも難しくなります。

金融機関の担当者は貴社のプレゼン担当でもあります。上司に
向けて最高のプレゼンをしてもらえなければ、決裁を勝ち取る
ことはできません。決して情報の提供を渋らず、上司と渡り合
える武器を提供してあげてください。

もし、どのような情報を提供すればよいか分からない。情報を
まとめるのが苦手等という場合は、是非、弊所までご相談くだ
さい。融資申込資料の作成をお手伝いさせていただきます。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

『経済における革新は、新しい欲望がまず消費者の間に自発的
に現われ、その圧力によって生産機構の方向が変えられるとい
うふうに行われるのではなく…(略)…、むしろ新しい欲望が
生産の側から教え込まれ、したがってイニシアティブは生産の
側にあるというふうにおこなわれるのが常である』
(ヨーゼフ・ シュムペーター )

■成熟社会における商品やサービスの開発について、大きなヒ
ントを、シュンペーターは提供してくれています。

・過去の経験や知識を探るだけでは、なかなか良い商品・サー
ビスは生み出せません。
・もう一つ、大局的な創造力・提案力が必要です。

○日常的に高頻度で消費する食品や雑貨、様々なサービスを、
消費者の近隣に高密度で配置したコンビニチェーン、この業態
を消費者は自ら望んだでしょうか?これらを利用してその恩恵
を知り、結果としてなくてはならないそれになったはずです。

○街中のいたるところに出来上がったコインパーキング場、自
動車を足として利用する人たちにとってはなくてはならない存
在です。小規模な遊休地を活用して、時間単位で課金する仕組
みを開発できたからこれらが成立しています。

○スマートフォンを手元に置いているはずです。この様な機能
を備えたIT端末を消費者は自ら望んだでしょうか?こんなこ
とができるから、便利で楽しいから、…ぜひ使ってください、
といわれて使い始めたら手放せなくなったはずです。

■シュンペーターは、これらの新しい何かを生み出すために
『5つの新結合』を提唱しています。

1.新しい財貨(製品)
・消費者がまだ知らない製品、または品質など。
2.新しい生産方式
・新しい生産方式や取扱い方法など。
フランチャイズ方式なども含まれる。
3.新しい販路の開拓
・従来の販売先ではない先など。
4.原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
・原料や半製品の新しい使い方など。
5.新しい組織の実現
・古い企業ではなく、新しい企業の出現など。

シュンペーターは、これらの新結合(イノベーション)を起こ
す経営者のことを企業家(起業家)と呼んでいます。また、企
業家であることと、事業を単に運営することとは別の行為であ
ると区別しています。

■シュンペーターは、変革を妨げる三つのハードルとして以下
を挙げています。

1.経験よりも洞察を必要とするが、経験に頼りがちであること。
2.実証されていない新しいことを始める難しさ。
3.新しいことを始めることで受ける、社会からの抵抗と批判。

シュンペーターは、新結合を狙う企業家は、(当初は)潮の流
れに逆らって泳ぐようなものだ、とも述べています。

■シュンペーターが提唱するイノベーションとは…

1.新たな欲望を生む魅力を消費者に提示する。
2.5つの新結合をヒントにする。
3.企業家であり続ける。

今から事業を立ち上げる経営者だけでなく、今隆々と経営を続
けている経営者にも、イノベーションは必要です。継続してイ
ノベーションを続けて行かなければ、いつかは衰退の憂き目に
甘んじるからです。

『社会の上層はいわばホテルのようなものであって、いつも人
々で一杯ではあるが、いつも違った人々で一杯なのである。こ
の人々というのは、われわれ多くのものが認めようとするより
もはるかに著しい程度で下から上がってきた人々である。』
(ヨーゼフ・ シュムペーター)

引用図書:「古代から現代まで2時間で学ぶ戦略の教室」
(ダイヤモンド社、鈴木博毅氏著)

複数部門を経営する企業や、複数のアイテムを取り扱う企業に
とって、資金や人員等の経営資源をどこに配分するかは、経営
者にとって最も重要な判断の一つです。この判断を助けるツー
ルが「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)
分析」です。

PPM分析とは、各事業や商品を「花形」「金のなる木」「問
題児」「負け犬」の4つに分類し、経営資源の最適な配分を検
討するためのツールです。

元々は、大企業向けのフレームワークとして開発されましたが、
中小企業でも活用できる部分があります。本コラムでは、中小
企業におけるPPM分析の具体的な手順を紹介します。

PPM分析を中小企業で実施する具体的な手順は以下の通りで
す:

1.データの収集
・各部門の売上高や利益率などの財務データを集める
・市場規模や成長率に関する業界データを調査する
※業界団体の統計や政府の経済指標などを参考に、市場規模を
推定します。
・主要競合他社の情報を収集する

2.市場成長率の算出
・市場成長率 = (本年度の市場規模 / 前年度の市場規模)ー1
・各部門が属する市場の成長率を計算する

3.相対的市場シェアの算出
・相対的市場シェア = 自社シェア / 最大競合他社シェア
・各部門のシェアを最大手競合と比較して算出する

4.PPMマトリクスの作成
・縦軸に市場成長率、横軸に相対的市場シェアをとったグラフ
を作成
・各部門を該当する象限(花形・金のなる木・問題児・負け犬)
に配置

5.分析と戦略立案
・各部門の位置づけを確認し、今後の方向性を検討
・経営資源の配分や重点施策を決定

6.定期的な見直し
・半年や1年ごとに分析を更新し、変化を把握

中小企業の場合、厳密な数値にこだわりすぎず、おおよその位
置づけを把握することが重要です。また、PPM分析だけでな
く、自社の強みや顧客との関係性なども加味して総合的に判断
することをおすすめします。

PPM分析を活用して経営戦略を立てたい方、融資資金の効果
的な使い方を相談したい方は、ぜひ当事務所にお問い合わせく
ださい。

■多くの偉人が、経営者に必要な資質の一つに脳の持久力=
『胆力』を挙げています。『胆力』とは何か?考察してみまし
ょう。

・新しい事業の構想を練る。
・高付加価値の商品やサービスを開発する。
・新しい販売方法を考える。
・効率的な業務の運営方法を考える。
・有事に対応する。

何かを考えるという行為は、大きな力を必要とします。なかな
か思いつかないことを頭の中から絞り出す、小さなひらめきに
論理的な積み上げや検証を繰り返す、来る日も来る日も、そし
て行き詰っては元に戻り、そして前進する…相応の何かを創造
しようとすれば、わからないことを考え続ける力が必要です。
このプロセスに耐え得る力を『胆力』と定義すればわかり易い
はずです。

「知力は論理を要求する。しかし、論理的に考えるからといっ
て、『最後の結論は論理的には不明確です』だけでは行動はと
れない。わからないことはわからないなりに認めて、しかし一
定の方向が正しいであろうと自分なりに納得する結論に至る論
理を構築できるための知力。それが、行動のバイタリティーを
生み出すのに、もっとも重要なのである。では、知力を生み出
す知のエネルギーとは何だろうか。それは、わからないなりに
考え抜くための『考える』プロセスを耐えるエネルギーであり、
そのプロセスでの論理の積み上をきちんとできる脳と心のエネ
ルギーである。」
(「よき経営者の姿」日本経済新聞社、伊丹敬之氏著より引用)

上記は、もっともわかりやすく『胆力』を解説しています。
※本誌は名著です。ご購読をお勧めします。

■よく考える…この意味をよく考えてください。

企画やアイデアは偶然思いつくようなものではないはずです。
自分の頭に考えさせて、思いつかせるものです。漠然と求める
ものがあって、求めるもの自体も明瞭でない状況から、雲をつ
かむようにアイデアのかけらを寄せ集める、寄せ集めてみても
形にならない、再度バラス。また、寄せ集めてみる、少し形が
見えてくる、使い物にならないので一部を残してバラス。何か
が足りないので、仮説を立てて外部からも情報を集める。時に
何千回・何万回も繰り返しながら創り上げる…これが企画やア
イデアの正体です。この過程で、脳細胞が何度も音を立てて破
裂するぐらいの勢いで考えることが必要でしょう。

■よく考えるために必要な能力こそが『胆力』です。

経営者には、胆力が必要です。そして、胆力を持ち続けるため
には、常に高いレベルのエネルギーを維持しておかねばなりま
せん。伊丹敬之氏のお言葉を借りるなら「…わからないなりに
考え抜くための『考える』プロセスを耐えるエネルギーであり、
そのプロセスでの論理の積み上をきちんとできる脳と心のエネ
ルギー…」です。故に、『胆力』は経営者にとって極めて重要
な資質であって、かつ、その欠落は致命傷であると言われるゆ
えんです。

本田技研工業の第二の創業者と言われる名経営者の藤沢武夫氏
は、以下の言葉を残して引退されました。

「三日間くらい、寝不足続きに考えたとしても間違いのない結
論を出せるようでなければ、経営者とはいえない。平常のとき
には問題がないが、経営者の決断場の異常事態発生のとき、年
齢からくる粘りのない体での『判断の間違い』が企業を破滅さ
せた例を多く知っている。…」
(「藤沢武夫の研究」かのう書房、山本祐輔氏著より引用)

『胆力』『よく考える』について、自分自身の生き方と照らし
合わせて再考してください。

中小企業経営者にとって、銀行からの借入は重要な資金調達手
段です。しかし、多くの経営者が金利にこだわりすぎるあまり、
事業成長の機会を逃している可能性があります。本コラムでは、
金利にこだわることのデメリット、WACC(加重平均資本コス
ト)とROIC(投下資本利益率)の観点から、積極的な借入と
投資の重要性について解説します。

■ 金利へのこだわりがもたらすデメリット
金利にこだわりすぎることで、以下のようなデメリットが生じ
る可能性があります。

・銀行との関係悪化:過度な金利交渉は、長期的なパートナー
シップ構築の妨げになります。

・融資機会の喪失:低金利にこだわるあまり、必要な資金調達
の機会を逃す可能性があります。

・成長機会の見逃し:有望な投資案件があっても、金利が高い
という理由で見送ってしまうかもしれません。

■ WACCとROICの重要性
経営者が注目すべきは、単なる借入金利ではなく、WACCと
ROICの関係です。

・WACC(加重平均資本コスト):
企業が資金調達に要する平均的なコスト

・ROIC(投下資本利益率):
投資した資本に対する収益性を示す指標

WACCがROICを下回っている状況では、借入を行って投資する
ことで企業価値を高められる可能性が高くなります。つまり、
資金調達のコストよりも高い収益率が見込める投資機会がある
場合、積極的に借入を行うべきと考えます。

■ 成長志向の経営戦略
中小企業の本来の目的は事業の成長です。金利にこだわるより
も、以下の点に注力することが重要です。

・投資機会の発掘:市場動向を分析し、高いROICが見込める
投資案件を積極的に探索します。

・資金の有効活用:調達した資金を効率的に運用し、事業拡大
や競争力強化につなげます。

・長期的視点:一時的な金利の高低ではなく、中長期的な成長
戦略に基づいた投資判断を行います。

中小企業の経営者は、金利にこだわりすぎることなく、WACC
とROICの関係を重視した財務戦略を採用すべきです。事業成長
の機会を逃さず、積極的な投資を行うことで、企業価値の向上
と持続的な成長を実現できます。同時に、銀行との良好な関係
を構築し、戦略的パートナーシップを通じて、より強固な経営
基盤を築くことが重要です。金利は確かに考慮すべき要素の一
つですが、それ以上に重要なのは、借入を通じていかに事業を
成長させ、競争力を高めていくかという長期的視点です。

中小企業経営者は、百%経営者業務のみを行っているわけでは
ありません。執行部分、大企業流に言うなら執行役員部分や部
長、場合によっては担当者の仕事も担っています。経営者業務
と執行業務を分けて考えておかないと、どうしても執行業務に
追われます。結果として、経営者不在の経営が続くことになり
ます。

■優秀な店舗デザイナーA氏は、数名を連れて起業しました。

○A氏は優秀なデザイナーです。デザインのクオリティーは抜
群です。デザインを24時間考え続けながら、素晴らしいアウ
トプットを行います。クライアントからも高い評価を得ていま
す。執行者として評価するなら満点かもしれません。

○一方、会社の経営は順調ではありません。仕事を安定的に受
注する仕組みがないからです。A氏はいつも、店舗のデザイン
に関する読書に耽っています。A氏は店舗デザインが大好きで、
24時間365日そのことのみを考えています。

○この会社は経営者不在の状況が続いています。A氏は、自分
の好きなデザインに対する執着は強いものの、経営を考えるこ
とが嫌い、苦手なようです。会社としての成長は難しいでしょ
う。本来A氏は、トップデザイナーとしての執行業務と、社長
としての経営者業務を同時に担わねばなりません。今のA氏は、
後者の業務を行っていません。経営が上手くいくはずありませ
ん。

逆に、創業者や小規模企業経営者の場合、自分自身が執行者と
しての役割を果たさず、もっぱら経営のみに専念することも、
物理的に不可能です。最も優秀な執行者、社員としての業務を
担うことも必要です。

■経営管理に長けたB氏は、数名を連れて起業しました。

○B氏は上場企業の取締役まで経験した敏腕ビジネスマンです。
経営管理は大の得意分野です。机上での計画書作りやマネージ
メントは得意ですが、現場で業務を執行するつもりはないよう
です。大きな資本で、人材を確保して始める起業ならこれで良
いのですが、小資本・少人数での起業には向かないタイプです。

○創業者や小規模企業経営者の場合、自らが最も優秀な開発マ
ン・営業マンでなければなりません。この機能を他人に頼るの
は、その資金力に無理があります。経営者としての仕事だけで
なく、執行者としての仕事の比率を高くとる必要があります。

小さな会社と大きな会社では、その仕組みが異なります。小規
模創業から企業規模を拡大できた経営者は、その経営者として
の仕事と、執行者としての仕事の割合を上手にコントロールで
きてきたようです。

■経営者業務と執行業務の業務比率のイメージ…

◆創業時の業務比率、経営者業務:執行業務=2:8
◆50人超の人員の時の比率、経営者業務:執行業務=6:4
◆300人超の人員の時の比率、経営者業務:執行業務=9:1
◆1,000人超の人員の時の比率、経営者業務:執行業務=10:0

○創業時の業務比率、経営者業務:執行業務=0:10の経営
者がいます。A氏です。食ってはいけるかもしれませんが、会
社の成長は望めません。

○創業時の業務比率、経営者業務:執行業務=10:0の経営
者がいます。B氏です。そもそも会社が立ち上がらないはずで
す。(大資本での創業は除く。)

経営者は、会社の置かれている状況やステージによって、その
業務分配比率をバランスよく調整していかねばなりません。こ
のバランス感覚も、経営者にとって必要な資質の一つです。

銀行借入は、企業にとって重要な資金調達手段であり、その
利用方法によって事業の成否が左右されることがあります。
ここでは、良い借入と悪い借入について考えてみます。

まず、良い借入の例として、売上の増加に伴う仕入資金不足
を補うための借入があります。これは、売上が順調に伸びて
いる状況で発生する正常な資金需要であり、売掛金の回収が
確実であれば積極的に借入を行うべきです。ただし、販売先
の倒産や不良品の返品が発生すると、借入だけが残るリスク
があるため、注意が必要です。また、売上金の回収時期と仕
入代金の支払い時期を調整する等して、運転資金の必要額を
減らす努力も大切です。

次に、本社ビルを購入するための借入も良い借入の一例です。
キャッシュフローが安定しており、現在の家賃よりも返済額
や固定資産税額が低ければ、経費削減につながります。しか
し、不動産の流動性を考慮し、売却のしやすさも判断基準に
含めるべきです。

一方、悪い借入の例として、売上の減少を補うための借入が
あります。これは、人件費などの経費が支払えない場合に発
生し、赤字補填の可能性が高いです。受注が決まっていて入
金が見込まれる場合を除き、返済の目処が無い借入は避ける
べきです。リスケジュールなどで対応するのが良いでしょう。

銀行の担当者が熱心にすすめてくる借入についても考えてみ
ます。資金の使い道が明確でない場合でも、倒産回避のため
の資金として借入を行うことは良い戦略です。しかし、無計
画に借入を増やすと、返済が困難になるリスクがあるため、
慎重な判断が求められます。

新たに店舗を出店するための借入も、良い借入となる可能性
があります。既存店舗のキャッシュフローで新店舗の出店資
金を返済できる場合は、安心して挑戦できます。しかし、新
店舗の見込みキャッシュフローに依存する場合や、既存店舗
が赤字の場合は、リスクが高まります。

借入は、事業を拡大したり、倒産を回避したりするための重
要なツールです。適切な借入を行うことで、企業は成長の機
会を得ることができます。しかし、借入には常にリスクが伴
うため、計画的かつ慎重な判断が求められます。良い借入を
積極的に活用し、事業の成長を目指しましょう。

日本の労働市場は、生産年齢人口の減少に直面しており、これ
までの解決策としては女性や高齢者の労働力への参加が促進さ
れてきました。しかし、就業者数の増加が頭打ちとなり、労働
市場は新たな人材供給の制約に直面しています。さらに、労働
市場のホワイト化により、総労働時間の短縮と働く人に無理を
強いることができない社会環境が整備されました。今後は、本
当の意味での人手不足が起こります。

この問題を解決するために、デジタルトランスフォーメーショ
ン(DX化)が重要な戦略として考えられています。以下に要
点を整理して解説いたします。これ以外の選択肢は無いと言っ
ても過言ではありません。中小企業においても、本気で取り組
んでいかねばならない課題です。

◆1.業務自動化の推進

日本の企業は、業務自動化を通じて労働力不足を緩和すること
ができます。特に、RPA(Robotic Process Automation)
は、簡単な繰り返し作業を自動化することで、従業員をより創
造的または戦略的な業務に再配置するのに役立ちます。さらに、
人工知能(AI)と機械学習を利用することで、顧客サービス、
在庫管理、販売予測など、さまざまな業務プロセスを最適化し、
より複雑な意思決定を支援することが可能になります。

◆2.クラウド技術の利用

クラウド技術の活用は、データとアプリケーションのアクセス
を地理的な位置に依存しないものに変え、リモートワークやテ
レワークの普及を促進します。これにより、働き方の柔軟性が
増し、家庭と仕事のバランスを取りやすくなるため、特に女性
や育児中の親の労働参加を支援できます。また、クラウドを利
用することで、データの一元管理が可能となり、各部署やプロ
ジェクト間での情報共有がスムーズになります。

◆3.デジタルスキルの向上

DXを成功させるためには、従業員自身のデジタルスキルを向
上させることが必須です。企業は、継続的な教育プログラムを
提供し、従業員が新しいテクノロジーを効果的に活用できるよ
う支援する必要があります。これには、オンラインコースの提
供、ワークショップの開催、そして実際のプロジェクトへの技
術の統合が含まれます。

◆4.組織全体のデジタル化へのシフト

デジタルトランスフォーメーションは技術だけの問題ではなく、
企業文化や組織構造にも影響を及ぼします。経営層はデジタル
ファーストの姿勢を示し、イノベーションを推進する文化を構
築することが重要です。これにより、従業員は新しいアイデア
を提案しやすくなり、組織全体が変革に向けて動きやすくなり
ます。

◆5.セキュリティとプライバシーの確保

デジタル化が進む中で、データのセキュリティとプライバシー
の保護はますます重要になります。企業は適切なセキュリティ
対策を講じることで、サイバー攻撃やデータ漏洩のリスクを最
小限に抑え、顧客や従業員からの信頼を維持することが必要で
す。

このように、DX化は日本の人手不足問題に対する有効な対策
となり得ますが、その成功は技術の導入だけでなく、組織文化、
従業員のスキル、そしてセキュリティ対策の強化にも依存しま
す。これらの要素が統合されたアプローチにより、中小企業も
持続可能な成長を目指す事ができるはずです。

向う数十年間は生産年齢人口が増加しないことは確定した事実
です。一方、DX化のコストは大幅に下がり、そのクオリティー
や品質も日進月歩です。今こそDX化を推進するとの経営判断
が必要ではないでしょうか。

あるスタートアップ経営者から資金調達の相談を受けました。
エクイティで〇億円の調達を行ったが、次回はより高い株価で
エクイティファイナンスを実施したいため、まずはデッドファ
イナンスを活用して業績を向上させたいと考えている。しかし、
デッドファイナンスの経験がなく、自身で金融機関をあたった
が、反応は良くないというものでした。

エクイティを提供する投資家と、デッドを提供する金融機関で
は、考え方が全く異なります。それぞれのポイントをおさえた
事業計画書を、2つ用意する重要性について解説します。

■ エクイティファイナンスとは?
エクイティファイナンスは、企業が株式を発行して投資家から
資金を調達する方法です。投資家は企業の成長性や市場での拡
大可能性を重視します。このため、エクイティ用の事業計画書
では、以下の要素を強調することが求められます。

・成長戦略:市場規模や成長予測、競合優位性を明確にし、ど
のようにして市場シェアを拡大するかを示します。

・革新性:製品やサービスの独自性や革新性をアピールし、な
ぜそれが市場で成功するのかを説明します。

・チームの強み:経営陣やチームの経験や実績を強調し、プロ
ジェクトを成功に導く能力を示します。

数値計画は、大きな売上、大きな利益を描かないと投資家から
は魅力を感じてもらえません。

■デッドファイナンスとは?
デッドファイナンスは、銀行や金融機関からお金を借りる方法
です。金融機関は、企業が安定して利益を上げ、確実に返済で
きるかどうかを重視します。デッド用の事業計画書では、次の
要素が重要です。

・収益性:具体的な収益予測や利益率を示し、安定したキャッ
シュフローを確保できることを証明します。

・リスク管理:リスク要因を特定し、それに対する対策を明示
することで、金融機関に安心感を与えます。

・返済計画:具体的な返済スケジュールや資金繰り計画を提示
し、確実に返済可能であることを示します。

大きな売上、大きな利益ではなく、返済可能な安定した収益と
利益を確保できるかを重視します。

■ まとめ
スタートアップが資金調達を行う際には、エクイティとデッド
の違いを理解し、それぞれに適した事業計画書を用意すること
が重要です。これにより、資金調達の成功率を高め、企業の成
長を加速させることが可能となります。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所にて承っております。お気軽にご相談ください。

本年5月に公開された上記の白書の概要について、抜粋して引
用いたします。詳細は以下を確認してください。
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/PDF/2024gaiyou.pdf

『事業者が直面している課題として、売上高が感染症による落
ち込みから回復し、企業の人手不足が深刻化していることが挙
げられる。今後の展望として、就業者数の増加が見込めない中
で、日本の国際競争力を維持するためには、省力化投資や単価
の引上げを通じて、中小企業の生産性を向上させていくことが
期待される。』

(中小企業白書)
成長する中小企業の行動を分析すると、企業の成長には、人へ
の投資、設備投資、M&A、研究開発投資といった投資行動が
有効である。また、成長投資に伴う資金調達手段の検討も必要
である。

(小規模企業白書)
小規模事業者は、中小企業と比べ厳しい経営環境にある中で、
コストを把握した適正な価格の設定や、顧客ターゲットの明確
化に取り組むことで、売上高の増加につながることが期待でき
るほか、支援機関の活用も効果的である。また、新たな担い手
の参入も生産性向上の効果が期待できる。

◆人手不足
・売上高が感染症の落ち込みから回復する中で、人手不足が深
刻化。
・これまでは、生産年齢人口の減少を補う形で女性・高齢者の
就業が進んできたが、足下は就業者数の増加が頭打ちとなり、
人材の供給制約に直面。

◆雇用者一人当たり労働時間の減少と人手確保のための取組
・時間外労働の上限規制に伴い、雇用者一人当たり労働時間の
減少が労働投入量を下押ししている。
・人材を十分に確保できている企業では、働きやすい職場環境・
制度の整備が進んでいる。

◆人材確保・育成
・人材の確保に向けては、経営戦略と一体化した人材戦略を策
定した上で、職場環境の整備に取り組むことが重要。
・人材育成は、人材の定着や労働生産性の向上にもつながるこ
とが期待される。

◆賃上げ
・物価に見合った賃金の引上げを通じて、需要の拡大につなげ
る好循環を実現することが重要。
・春闘の賃上げ率・最低賃金の改定率は過去最高水準。一方で、
人材確保の必要性や物価動向を背景に、賃上げの原資となる業
績の改善が見られない中で、賃上げを行う企業が増加。

◆省力化投資
・人手不足への対応策として、採用等の人材確保に加えて省力
化に向けた設備投資も必要であるが、規模の小さな企業ほど省
力化投資が進んでおらず、省力化の取組余地が大きい。
・また、省力化投資は人手不足緩和だけでなく売上高増加にも
つながることが期待される。

◆生産性
・日本の経済成長は海外と比べ見劣りする中で、今後は就業者
数の減少が本格化する。
・国際的に見ても日本の生産性は低く、日本の国際競争力を維
持するためには中小企業の生産性の引上げが必要。

◆生産性の分子・付加価値の向上に向けて
・生産性向上に向けて、日本企業は低コスト化・数量確保の取
組を続けてきた。この結果、売上高や利益率は大企業が増加す
る一方、中小企業は発注側の売上減価低減の動きの中で低迷。
・今後は低コスト化・数量増加以上に、単価の引上げによる生
産性の向上も追及する必要がある。

◆価格転嫁
・賃上げ原資の確保に向けては、価格転嫁の促進が重要。価格
交渉が可能な取引環境が醸成されつつあるが、コスト増加分を
十分に転嫁できておらず、転嫁率向上のための取組強化が課題。
・十分な価格転嫁のためには、適切な価格交渉が重要。 転嫁に
関する協議の実施とともに、商品・製品の原価構成を把握して
交渉を進めることが有効。

◆パートナーシップ構築宣言と取引の実態
・パートナーシップ構築宣言企業は非宣言企業と比べて、より
多くの発注先と価格協議を行っており、価格転嫁にもより高い
水準で応じている傾向にある。
・ただし、 協議に十分に応じていない企業も一定数存在するた
め、宣言の実効性向上のための取組も重要。

◆事業承継
・足下では経営者年齢の分布が平準化しつつあるものの、半数
近くの中小企業で後継者が不在。
・一方、後継者が決まっている中小企業においても、承継の課
題を抱えている企業が見られる。

◆経営改善・再生支援
・感染症の感染拡大以降、経営改善・再生支援のニーズが高ま
っている。
・金融機関の経営支援により、財務内容の改善等の効果が期待
できる。経営改善・再生支援の効果を高めるためには、関係機
関が一丸となって経営改善・再生支援に取り組むことが求めら
れる。

詳細は以下を確認してください。
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/PDF/2024gaiyou.pdf