夏場にかけて、資金繰りに注意が必要となる企業が少なくあり
ません。特に6月から8月は、夏季賞与や季節商品の仕入れな
ど、キャッシュアウトの要因が重なりやすい時期です。現金の
流れが一時的に偏ることで、資金のやり繰りに不安を感じる経
営者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
売上が上がっている企業でも油断は禁物です。仕入れや人件費
といった支出が先行すると、「黒字のはずなのにお金が足りな
い」という“資金繰り赤字”が発生します。こうした問題の多く
は、「事前にわかっていた支出」に対応できなかったことが原
因です。
資金繰りの本質は、“困ったとき”ではなく、“困る前”に動ける
かどうかです。数ヶ月先までのキャッシュフローを見える化し、
計画的に資金を整える。それが、財務の強さを決める分かれ道
になります。
たとえば、夏季賞与は毎年発生する定例支出です。そうであれ
ば、これに合わせた運転資金の調達は、経営のリスク管理その
ものです。早めに銀行に相談することで、必要な資金をスムー
ズに準備できますし、金融機関側にも好印象を与えることがで
きます。
アパレルや食品など、季節商材を扱う企業では、春から夏にか
けての在庫確保が不可欠です。こうした仕入れ先行型のビジネ
スでは、資金の準備が販売チャンスを逃さないための「攻めの
備え」となります。
また、決算月によって納税時期は異なりますが、いずれにせよ
資金繰りへの影響は大きいため、事前に納税額を把握しておく
ことも欠かせません。
借入について心理的な抵抗感を持つ方もいらっしゃいますが、
重要なのは“借りること”ではなく“いつ・どう使うか”です。必
要なときに、必要な資金を、根拠を持って動かせること。それ
こそが、堅実で信頼される経営のあり方ではないでしょうか。
資金繰りの山場は、危機ではなく「チャンスを整えるタイミン
グ」と捉える。先手を打つ資金戦略で、夏をしっかり乗り切り
ましょう。