銀行対応で差が出るのは、話し方よりも相談のタイミングです。
今回は、銀行に相談するタイミングをどう考えるかを整理しま
す。

銀行に相談する場面は、大きく二つあります。
・資金が必要になったとき。
・資金が必要になりそうなとき。
経営に効いてくるのは後者です。

資金が足りなくなってからの相談は、選択肢が少なくなります。
融資の審査時間を確保しづらくなり、資料準備も慌ただしくな
ります。
銀行側も、状況が切迫しているほど慎重になります。
結果として、条件面でも不利になりやすくなります。

相談のタイミングを判断する基準として、キャッシュポジショ
ンを使う方法があります。
最低でも月商一か月分以上のキャッシュを維持する。
この基準を下回りそうな段階で、銀行に状況を共有する。
この動き方ができると、余裕を持って選択肢を整理できます。

例えば、今は月商一か月分以上のキャッシュがあるとしても、
数か月後に賞与や納税、設備投資が重なり、残高が基準を下回
る見込みがある。
この段階で相談しておけば、借入の要否、借入額、実行時期を
落ち着いて検討できます。

銀行にとっても、余裕がある段階の相談は好まれます。
資金繰りを管理している会社として受け止められます。
先に共有があると、銀行側も社内調整を進めやすくなります。

一方で、資金が厳しくなってからの相談は、説明の焦点がずれ
やすくなります。
・なぜ今のタイミングになったのか。
・手元資金がどこまで減ったのか。
・今後の入金見通しはどうか。
こうした確認が中心になり、事業の将来よりも、目先の資金繰
りの話に偏りがちです。

相談のタイミングが早い会社は、会話の質も変わります。
資金繰り表を見ながら、次の三点を整理して伝えられます。
・基準を下回る見込みがいつ頃か。
・下回る原因は売掛金、在庫、投資、返済、季節要因のどれか。
・対策として何を検討しているか。

この整理ができていると、銀行側は判断しやすくなります。
融資の相談でありながら、経営の管理体制を評価してもらう場
にもなります。

銀行への相談は、困ったときの駆け込みではなく、経営判断の
一部として組み込む方が安定します。
月商一か月分というキャッシュの基準は、相談のタイミングを
決めるうえでも有効です。
基準を守るために早めに動く。
この姿勢が、銀行との関係を長期的に安定させます。

前回号で紹介した通り、協業戦略は中小企業が成長の限界を突
破するための有力な経営手段です。では、実際に協業によって
成果を上げている中小企業は、どのような取り組みを行ってい
るのでしょうか。ここでは、中小企業経営者が自社に応用しや
すい形で、協業の成功事例を五つ紹介します。

第一の事例は、販売協業による市場拡大です。
地方で専門性の高い製品を製造していたメーカーが、全国に顧
客基盤を持つ商社と協業しました。メーカーは商品力には自信
がありましたが、営業人材が限られ、販路拡大が進んでいませ
んでした。そこで商社の営業網を活用し、自社製品を既存顧客
に組み込んでもらう形で展開した結果、短期間で売上が大きく
伸長しました。自社で営業体制を構築していれば数年かかった
成長を、協業によって一気に実現した好例です。

第二の事例は、開発協業による新規事業創出です。
既存事業が成熟期に入っていたサービス業の企業が、ITに強
みを持つ企業と協業し、新サービスを立ち上げました。自社は
業界知見と顧客理解を提供し、パートナー企業はシステム開発
とデータ活用を担いました。単独では着想止まりだった構想が、
協業によって事業化され、新たな収益の柱へと成長しています。
強みの異なる企業同士が役割を明確に分担したことが成功要因
です。

第三の事例は、人材協業による経営力の強化です。
専門人材の採用に苦戦していた中小企業が、同業他社や専門会
社と協業し、プロジェクト単位で人材を共有しました。正社員
採用に比べ固定費を抑えつつ、高度な専門知識を経営に取り込
むことができ、業務の質とスピードが大きく向上しました。
「人を雇う」という発想から、「人と組む」という発想に転換
したことが、経営の柔軟性を高めました。

第四の事例は、DX協業による生産性向上です。
アナログ業務が中心だった企業が、DXに強みを持つパートナ
ー企業と協業し、業務プロセスの抜本的な見直しに着手しまし
た。
単なるシステム導入ではなく、業務フローそのものを再設計し
たことで、間接業務の工数削減とミスの減少を実現しました。
DXを「ITの問題」ではなく、「経営改革」と捉え、外部の
知見を積極的に活用した点が成功につながっています。

第五の事例は、協業から発展した長期的パートナーシップです。
当初は限定的な業務協業としてスタートしましたが、相互理解
が深まり、次第に事業計画や投資判断まで共有する関係へと発
展しました。結果として、資本提携やM&Aも視野に入る戦略
的関係へ進化しています。協業を単発で終わらせず、中長期の
企業価値向上につなげた点が特徴です。

これらの事例に共通しているのは、協業を「場当たり的な対応」
ではなく、「経営戦略」として設計している点です。自社の強
みを明確にし、何を提供し、何を得るのかを定義したうえで協
業に臨んでいます。

中小企業にとって、協業は特別な企業だけのものではありませ
ん。むしろ、経営資源に制約があるからこそ、協業の効果は大
きくなります。自社だけで抱え込む経営から脱却し、外部と組
むことで成長を加速させる。この発想転換が、次の成長ステー
ジへの扉を開くことになります。

前回は、銀行との関係は融資の場面だけで決まるものではなく、
日常の姿勢の積み重ねで評価されやすいという話をしました。
今回は、銀行が決算書で何を確認しているのかを、もう一段具
体的に整理します。

銀行は売上や利益の大きさだけで判断していません。
損益計算書の数字が、貸借対照表の動きとつながっているかど
うかも確認しています。
事業の実態と数字の動きが合っているかを見ています。

代表的な例は、利益が出ているのに現預金が減っているケース
です。
仮に営業利益が800万円出ていたとしても、同じ期間に売掛金
が1,200万円増え、在庫が600万円増え、買掛金が200万円減っ
ていた場合、運転資金として2,000万円が追加で必要になりま
す。
利益800万円に対して運転資金2,000万円が増えているため、
現預金は差し引きで1,200万円減る形になります。

ただ、この形は、必ずしも悪い話ではありません。
売上拡大に伴う運転資金の増加として説明がつく場合も多くあ
ります。
しかし、銀行は、売掛金の増加に回収遅れが混ざっていないか、
在庫の増加に滞留品が混ざっていないかを確認したくなります。
数字の動きが読めない状態は、融資判断ではリスクとして扱わ
れやすいからです。

同じ売掛金でも、伸び方が不自然な場合は注意が必要です。
売上は前年から10%増なのに、売掛金が前年から50%増といっ
た形になると、入金サイトの長期化や回収遅延を疑われやすく
なります。
経営側が、取引先別の増減や入金予定の見通しを把握している
場合、数字のズレが事業のストーリーとして説明できます。

在庫についても同様です。
売上が横ばいなのに在庫だけが増え続ける場合、販売が追いつ
いていない可能性が出てきます。
将来の値下げや廃棄による損失が発生するリスクも想定されま
す。
銀行は在庫の中身や滞留状況を確認し、資金がどこに滞留して
いるかを把握しようとします。

こうした確認は、銀行が意地悪をしているわけではありません。
返済が継続できるかどうかを判断するために、利益だけでなく
資金の動きまで見ているという話です。

一月にお伝えしたキャッシュポジションの基準ともつながりま
す。
最低でも月商一か月分以上のキャッシュを意識している会社は、
利益と運転資金の動きにも目が向きやすくなります。
その結果、銀行との会話でも数字の説明が具体的になり、信頼
につながります。

次回は、銀行に相談するタイミングをどう考えるかについてお
話しします。

事業を飛躍的に成長させるために、中小企業経営者が今こそ本
気で検討すべき経営戦略の一つが「協業戦略」です。協業とは、
単なる業務提携や外注ではありません。自社と他社の経営資源
を戦略的に組み合わせ、単独では決して到達できない成長スピ
ードと事業規模を実現するための、明確な経営判断です。

多くの中小企業は、人材・資金・時間という制約の中で経営を
行っています。新規事業の創出、販路拡大、付加価値向上、D
X対応など、経営者の頭の中には数多くの課題が並んでいるは
ずです。しかし、それらをすべて自社単独で解決しようとする
ほど、経営は重くなり、意思決定は遅れ、結果として成長機会
を逃してしまいます。自前主義を前提とした経営は、すでに限
界に近づいています。

まず最も取り組みやすく、効果が見えやすいのが販売における
協業です。自社が持たない顧客層や販売チャネルを持つ企業と
組むことで、市場開拓のスピードは劇的に向上します。新規営
業体制を一から構築するには相応の時間とコストが必要ですが、
既存の顧客基盤を相互に活用すれば、短期間で売上機会を創出
できます。販売協業は、成長を加速させるための最短ルートの
一つです。

次に重要なのが開発における協業です。商品やサービスの開発
には、技術力、専門知識、市場理解が不可欠ですが、これらを
すべて自社で揃えることは容易ではありません。技術を持つ企
業、業界知見を持つ企業と協業することで、開発リスクを分散
しながら、競争力の高い商品やサービスを生み出すことが可能
になります。成熟市場では、単独開発よりも、複数の強みを掛
け合わせた協業型開発の方が成功確率は高まります。

三つ目は人材に関する協業です。慢性的な人手不足の中で、
「採用すれば解決する」という発想はすでに現実的ではありま
せん。専門人材を持つ企業との共同プロジェクト、人材の相互
活用、外部パートナーとのチーム編成など、「雇う」以外の選
択肢を持つことで、経営の柔軟性は大きく高まります。人材協
業は、固定費を抑えながら経営力を引き上げる、極めて合理的
な手段です。

四つ目がDX領域での協業です。DXは単なるITツールの導
入ではなく、業務プロセスやビジネスモデルそのものを変革す
る取り組みです。これを自社だけで完結させようとすれば、試
行錯誤に時間を費やし、成果が出る前に頓挫するケースも少な
くありません。DXに知見を持つ企業と協業することで、変革
のスピードを高め、実効性のあるDXを推進することが可能に
なります。DXは、協業を前提に設計すべき経営テーマです。

協業戦略を成功させるために、経営者が最も重視すべきは「目
的の明確化」です。何のために組むのか、自社は何を提供し、
何を得るのか。この点が曖昧な協業は、必ず形骸化します。収
益構造、役割分担、意思決定のルール、将来的な発展や解消の
可能性まで含めて設計することが経営者の責任です。

すべてを自前で抱え込む時代は、確実に終わりに近づいていま
す。中小企業だからこそ、外部と組むことで成長の限界を超え
ることができます。協業戦略とは、弱みを補うための妥協では
なく、強みを最大化するための攻めの経営判断です。今こそ、
自社の強みを再定義し、「誰と、どのような成長を実現するの
か」を本気で考える時ではないでしょうか。

二月からは、銀行との付き合い方をテーマにお話ししていきま
す。

銀行対応というと、
・融資を受けるときだけ関係するもの
・資金が苦しくなったときに考えるもの
という印象を持つ経営者も少なくありません。

実務の現場で感じるのは、銀行との関係は日常の積み重ねで決
まるという点です。
資金が足りなくなってから突然相談しても、選択肢は多く残り
ません。

銀行は、融資の可否だけで会社を見ているわけではありません。
・どのような姿勢で経営をしているか
・数字をどの程度把握しているか
・先を見た判断をしているか
こうした点を、普段のやり取りから確認しています。

一月にお伝えしたキャッシュポジションの基準は、銀行対応と
も密接につながっています。最低でも月商一か月分以上のキャ
ッシュを意識して管理している会社は、資金繰りに対する考え
方が整理されており、その考え方は、銀行との会話にも自然に
表れます。

例えば、「資金が減ってから相談するのではなく、基準を下回
りそうな段階で現状を共有する。」この姿勢だけでも、銀行側
の受け止め方は大きく変わります。

銀行は、困っている会社を切り捨てたいわけではありません。
一方で、状況が見えない会社に対しては慎重になります。
数字を把握し、基準を持ち、先を見て動いているかどうか。
ここが信頼の分かれ目です。

銀行対応で大切なのは、うまく話すことではありません。
・正確に経営状況を把握していること
・無理な経営をしていないこと
・判断に一貫性があること
この三点が伝わるだけで、関係は安定します。

今月は、
・銀行が何を見ているのか
・どのタイミングで相談するのが望ましいのか
・どのような説明が評価されやすいのか
を順番に整理していきます。

銀行を味方にできるかどうかは、特別な交渉力で決まるもので
はありません。
日々の財務管理と考え方の延長線上にあります。

成長を志向する中小企業にとって、現在の経営環境は決して甘
いものではありません。人手不足の常態化、原材料やエネルギ
ー価格の上昇、価格転嫁の難しさなど、経営判断を迫られる局
面は年々増えています。しかし、こうした厳しい環境の中でも、
着実に業績を伸ばす企業が存在する一方で、静かに体力を失っ
ていく企業があるのも事実です。その差は、経営者の努力や社
員の真面目さだけではありません。経営数字とどこまで真剣に
向き合っているかという点にも大きく影響されます。

多くの中小企業では、決算書は今なお「税務申告のための書類」
にとどまっています。売上高や営業利益といった結果の数字は
見ていても、「なぜその数字になったのか」「どこに経営上の
歪みが潜んでいるのか」まで踏み込めていないケースが少なく
ありません。成長を本気で望むのであれば、まずこの姿勢を改
めなければなりません。経営数字は、過去の成績表ではなく、
未来の選択肢を示す地図だからです。

まず経営者が押さえるべきは、「売上・利益」だけではありま
せん。重要なのは、その数字がどこから生まれ、どこで削られ
ているのかを理解することです。数字は結果ではなく、経営構
造を映し出す鏡です。

第一に確認すべきは、どの商品、どの顧客が本当に利益を生ん
でいるのかという点です。売上規模の大きさや取引年数の長さ
と、利益への貢献度は必ずしも一致しません。値引き、過剰な
サービス、属人的な対応が常態化し、気づかぬうちに利益を圧
迫しているケースは少なくありません。商品別・顧客別に粗利
益を分解することで、初めて「伸ばすべき事業」と「見直すべ
き取引」が明確になります。

第二に、固定費と変動費の構造を正しく把握する必要がありま
す。売上が減っても下がらないコストは何か、売上に連動して
増減するコストは何か。この構造を理解せずに価格戦略や事業
拡大を考えることは極めて危険です。特に固定費比率が高い企
業ほど、売上変動に対する耐性は弱く、数字に基づくコスト構
造の理解が経営の安定性を左右します。

第三に、人件費が生み出す付加価値を直視しなければなりませ
ん。人件費は単なるコストではなく、企業の競争力そのもので
す。一人当たりの粗利益や付加価値を把握せずに、「人が足り
ない」「人件費が重い」と語ることはできません。採用や賃上
げ、配置転換、外注化といった判断は、感情論ではなく数字に
基づいて行うべき経営判断です。

第四に見落とされがちなのが、在庫や売掛金に資金が滞留して
いないかという視点です。損益計算書上は黒字であっても、回
収されない売掛金や動かない在庫が増えれば、資金繰りは確実
に悪化します。これらは決算書の利益には表れにくいものの、
企業の体力を静かに、しかし確実に蝕みます。キャッシュの流
れを意識した数字管理なくして、持続的な成長は望めません。

成長とは、単に売上を伸ばすことではありません。利益とキャ
ッシュを伴い、再現性をもって拡大していくことです。そのた
めには、経営数字を結果として眺めるのではなく、構造として
分解し、因果関係を理解する必要があります。数字を分解して
初めて、「次に何を打つべきか」「何をやめるべきか」が見え
てきます。

経営数字の管理は、管理そのものが目的ではありません。真の
目的は、意思決定の質とスピードを高めることにあります。値
上げをするのか、事業を絞るのか、人を増やすのか外注化する
のか。数字に基づいた判断は、迷いを減らし、経営者に覚悟あ
る決断を促します。

中小企業が次の成長ステージへ進むために必要なのは、特別な
才能や派手な戦略ではありません。必要なのは、経営数字と正
面から向き合い、数字で判断する覚悟です。成長を本気で望む
のであれば、まずは経営数字の管理レベルを一段引き上げるこ
と。そこから、企業の未来は確実に変わり始めます。

一月は、資金繰りをテーマにお話ししてきました。
年初に資金の流れを整理し、資金繰り表を作り、確認すべきポ
イントを押さえる。
そのうえで、資金繰りが悪化しやすい考え方についても整理し
ました。

最後に確認しておきたいのは、社長自身がどの水準を下回った
ら動くのかという基準です。

資金繰りが不安定になる会社の多くは、明確な基準を持たない
まま経営判断をしています。
預金が減ってきたと感じた段階で不安になり、増えていれば問
題ないと判断する。
このような感覚的な判断が続くと、対応のタイミングはどうし
ても遅れます。

そこで意識したいのが、キャッシュポジションの基準です。
一つの目安として、最低でも月商一か月分以上のキャッシュを
確保しておく。
この水準を下回りそうになった段階で、対策を検討する。
こうした基準を数字で持っておくことが、判断を早めます。

月商一か月分という水準は、過度に保守的な数字ではありませ
ん。
売上の入金がずれ込むこともあれば、想定していなかった支出
が発生することもあります。
売上が一時的に落ちる局面も珍しくありません。
最低限の時間を確保するためのラインとして、現実的な水準で
す。

基準が明確になると、経営判断の質が変わります。
まだ余裕がある段階で、資金繰り表を見直すことができます。
借入の検討や銀行への相談も、落ち着いた状態で進められます。

反対に、基準を持たないまま経営を続けていると、
・もう少し様子を見る
・来月になったら考える
といった判断が積み重なります。
この積み重ねが、資金繰りを一気に苦しくします。

資金繰りの管理は、特別なテクニックではありません。
数字を確認し、決めておいた基準と照らし合わせ、必要な行動
を取る。
この繰り返しです。

年初のこの時期に、
・自社のキャッシュポジションは月商一か月分を下回っていな
いか。
・今後の動きで下回る可能性はないか。
一度、資金繰り表と預金残高を並べて確認してみてください。

2026年、日本政府は中小企業の自立的成長を後押しするため、
大規模かつ戦略的な支援施策を打ち出しています。今後の経営
環境は、価格転嫁の実現や人材不足、デジタル化の加速といっ
た複雑な課題に直面しますが、国の施策を上手く活用できれば、
それらを突破口に変えることができます。

ここでは、中小企業経営者が注目すべき7つの視点を整理し、
政策活用の具体的な戦略をご提案します。

◆【1】公正な取引ルールを味方に、適正な価格交渉を

2026年1月に「中小受託取引適正化法」が施行され、政府は価
格交渉の適正化を強力に支援します。取引Gメンによる監視強
化や支援体制の整備により、価格転嫁の実現可能性が大きく広
がっています。
経営者は、納入単価の見直しや見積根拠の明確化に取り組み、
公的支援を活用して取引条件をより有利に改善するべきです。

◆【2】「生産性革命補助金」で、成長を実現する投資を

政府は約3,400億円規模の「中小企業生産性革命推進事業」を
継続・強化しています。これにはAI導入、省力化設備、業務
デジタル化など、現場の課題解決に直結する支援が多く含まれ
ています。
企業は単なるコスト削減にとどまらず、「売上を生む生産性向
上」を目的とした設備投資を行い、国の補助制度と組み合わせ
て自社の成長戦略を加速させるべきです。

◆【3】「100億円企業」支援枠の活用で、中堅企業へジャン
プアップ

成長意欲の高い企業には、「大規模成長投資補助金」として約
1,000億円規模の支援が用意されています。これにより、地方
の中堅企業が一気にスケールアップを図ることが可能となりま
す。
設備投資、グローバル展開、研究開発のいずれも対象となって
おり、中長期的な成長ビジョンを描ける企業には最適なタイミ
ングです。

◆【4】人への投資が、企業の持続可能性を左右する

政府は2026年度、賃上げやリスキリング(再教育)を軸とした
人材支援策を拡充しています。業務改善や人事制度改革に取り
組む企業には、各種助成金が用意されています。
「人材不足=成長制約」とならないためには、給与水準の見直
しや柔軟な働き方の導入を含め、職場の魅力を高める施策が必
要不可欠です。

◆【5】事業承継・M&Aを「守り」ではなく「攻め」の選択
肢に

後継者難が進む中で、政府はM&Aや事業承継に関する補助金
・専門家支援を強化しています。廃業回避だけでなく、他社と
の連携や統合により成長スピードを加速させることも視野に入
れるべきです。
今後は、「事業を引き継ぐ・引き継がせる」ことが、重要な経
営戦略の一環となります。

◆【6】資金調達を「守り」から「攻め」のツールへ

低利融資や信用保証制度の整備により、資金繰りに悩む中小企
業への支援が強化されています。加えて、事業再構築や設備投
資といった「攻めの資金需要」に対応した制度も充実していま
す。
補助金と併用することで資金の効率的活用が可能となり、成長
へのレバレッジ効果が高まります。

◆【7】地域発・世界市場への挑戦を現実のものに

地域経済の活性化を目的とした地方創生関連施策も、引き続き
重点が置かれています。さらに、中小企業による海外展開支援
も強化されており、ASEAN諸国など成長市場へのアクセス
が容易になっています。
「地域で勝つ」「世界で勝つ」ことを同時に目指す戦略が、今
後の中小企業には求められています。

2026年は、中小企業にとって「変革を促す年」となるでしょう。
単なる経済対策ではなく、「未来への投資」と捉え、政策を自
社の戦略に組み込むことが何よりも重要です。制度を正しく理
解し、タイミングを逃さずに活用することで、貴社の持続的成
長と競争優位の確立が現実のものになるはずです。

資金繰り表の見方について、ここまで三週続けてお話ししてき
ました。
今回は、資金繰りが悪化しやすい会社に共通して見られる考え
方を整理します。

資金繰りが苦しくなる原因は、突発的な事故のように語られる
ことがあります。

・取引先の倒産
・急な売上減少
・想定外の支出etc

もちろん、外部要因が引き金になることはあります。
ただ、実務の現場で見ていると、資金繰りが崩れる会社には、
事前に共通した考え方が存在しています。

最も多いのは、黒字であれば問題ないという認識です。
損益計算書が黒字であれば安心できる。
この考え方が、資金繰りの確認を後回しにします。

黒字と資金の余裕は別物です。
売上が伸びる局面では、売掛金や在庫が増え、資金は外に出て
いきます。
決算書上は良く見えても、預金残高は静かに減っていきます。

次に多いのは、資金が減ってから対策を考える姿勢です。
資金繰りが厳しくなった段階で、銀行に相談する。
経費削減を検討する。
こうした対応は、選択肢がかなり限られた状態での判断になり
ます。

資金に余裕があるうちであれば、
・借入条件の調整
・投資時期の見直し
・支出の分散
といった柔軟な手を打つことができます。
余裕がなくなってからでは、選べる道は大きく狭まります。

もう一つ注意したいのは、感覚による判断です。
・今月は大丈夫そう
・しばらくは問題なさそう
こうした感覚は、資金繰りが安定している時期ほど当たりにく
くなります。

売上が順調なときほど、判断は楽観的になります。
その結果、資金の減少に気づくタイミングが遅れます。

資金繰りが安定している会社は、特別なことをしているわけで
はありません。
資金の動きを定期的に確認し、先の数字を見たうえで判断して
います。
良いときほど慎重に、悪くなる前に手を打つ。
この積み重ねが、結果として会社を守ります。

資金繰りは、管理能力の差よりも考え方の差が表れやすい分野
です。
考え方が変われば、行動も自然に変わります。

…前回号の続きです。

事業計画の要諦は、事業立地を成長分野に転換することです。

創業以来、先代の代から…ただ同じ事業を継続しています。事
業を創る、事業立地を再定義する、イノベーションを仕掛ける、
こうした発想自体が存在しません。それでも、社長も従業員も
皆、真面目に日々の仕事に取り組んでいます。結果として、そ
の会社は静かに衰退し、ある時突然、その役割を終えることに
なります。

「今年生まれた子どもが二十年後に就職する頃、存在している
会社の半分は、今はまだ存在していない」と言われます。二十
年で企業の半分が入れ替わるという仮説です。おそらく現実に
近いでしょう。AIに代替される業種が話題になりますが、自
社が該当するかを過度に心配する必要はありません。結局、す
べての企業は時代に取って代わられる存在だからです。

変化しなければ、企業は存在意義を失います。時代ごとのニー
ズに応え続けることが、生き残るための条件です。経営とは、
連続した小さな変化を積み重ねる営みです。その小さな変化が、
やがて大きな変革へとつながります。急激に変わったように見
える企業も、実態は小さな変化の積み重ねに過ぎません。

■本稿では「事業計画を策定する」というテーマについて述べ
ています。

事業計画とは、変化を生み出すための“種”です。何を、どの
ように変え、いつまでにどの姿を目指すのか、この仮説こそが
事業計画です。過去の延長線上にある数値計画を作って満足し
てはいけません。

■事業計画作成時の重要ポイント

策定にあたって、次の要素が含まれているか確認してください。

・事業立地の見直しやイノベーションが織り込まれているか
・収益モデルの創造・再構築ができているか
・現状認識は十分か
・(仮)のゴール〔マイルストーン〕を設定できているか
・全体として整合性の取れた数値計画になっているか
・数値計画と資金計画の整合性を確認しているか
・マネジメント体制は成長に耐えうるか、また妥当か
・日々修正しながら現実的に対応できる設計か

■経営者の仕事は、事業立地とビジネスモデルの検証・構築、
すなわち事業計画の立案と見直しに尽きます。

経営者の仕事は多岐にわたります。しかし重要度の低いものか
ら削ぎ落としていくと、最後に残るのは「事業立地とビジネス
モデルの検証・構築」、つまり事業計画の立案と見直しです。
それにもかかわらず、多くの経営者はこの最重要業務を疎かに
しています。その結果、経営者不在の企業体になっています。
創業時や先代から受け継いだビジネスモデルを進化させること
なく、惰性で継続しているのです。過去の事業を時間軸で延ば
しただけの数値計画を事業計画と呼び、自己満足に陥っていま
す。体裁の良い数値計画は、決して事業計画ではありません。
肝に銘じてください。

■経営者には三つの「胆力」が求められます。

経営にウルトラCはほとんどありません。一つひとつ理詰めで
考え、確実に行動し、都度修正しながら積み上げていく。この
地道な営みを淡々と続けることが、王道です。

・理詰めで考え続ける知力と、それを持続する知的胆力
・行動し続ける実行力と、それを支える肉体的胆力
・思うように進まない状況に耐える精神力と、その精神的胆力

■事業計画とは、江戸時代に中国奥地を目指す長旅の旅程表の
ようなものです。

存在が定かでないゴールに向かい、一歩ずつ進まねばなりませ
ん。日本から中国奥地を目指すなら、まず大陸へ渡る方法を考
え、航路を探し、港へ向かうための資金を用意します。大陸に
渡っても、先の道が見えるとは限りません。それでも前に進み
ます。ゴールまでの費用が読めなくても、一歩ずつ進みます。
その過程では、数多くのトラブルにも遭遇するでしょう。それ
らを回避し、あるいは解決しながら、不確実なゴールに向かっ
て歩み続けるのです。この旅に、明確な終点はありません。

経営とは、ゴールではなく、そのプロセスそのものなのかもし
れません。知的胆力、肉体的胆力、精神的胆力を鍛えながら、
経営という長い旅に挑み続けましょう。楽しみながら。

新年を迎えるにあたり、経営を見つめ直す一つの契機となれば
幸いです。