中小企業経営者は、百%経営者業務のみを行っているわけでは
ありません。執行部分、大企業流にいうなら執行役員部分や部
長、場合によっては担当者の仕事も担っています。経営者業務
と執行業務を分けて考えておかないと、どうしても執行業務に
追われます。結果として、経営者不在の経営が続くことになり
ます。
※世の中の大半の中小企業経営者は、百%執行業務を行ってお
り、経営者不在の状況が続いています。目先の業績は作れても、
中長期の経営指針を創造できていません。創業時、事業継承時
と同じ事業モデルを営々と継続しています。これが実情ではな
いでしょうか?

■優秀な店舗デザイナーA氏は、数名を連れて起業しました。

A氏は優秀なデザイナーです。デザインのクオリティーは抜群
です。デザインを24時間考え続けながら、素晴らしいアウトプ
ットを創出しています。クライアントからも高い評価を得てい
ます。執行者として評価するなら満点かもしれません。
一方、会社の経営は順調ではありません。仕事を安定的に受注
する仕組みがないからです。
A氏はいつも、デザインに関する読書に耽っていますが、経営
に関する勉強には興味を持ちません。
A氏はデザインが大好きで、24時間365日そのことのみを
考えています。

この会社は経営者不在の状況が続いています。A氏は、自分の
好きなデザインに対する執着は強いものの、経営を考えること
が嫌い、苦手なようです。会社としての成長は難しいでしょう。
本来A氏は、デザイナーとしての執行業務と、社長としての経
営者業務を同時に担わねばなりません。今のA氏は、後者の業
務を行っていません。経営が上手くいくはずありません。

逆に、創業者や小規模企業経営者の場合、自分自身が執行者と
しての役割を果たさず、もっぱら経営のみに専念することも、
物理的に不可能です。最も優秀な執行者、社員としての業務を
担うことも必要です。

■経営管理に長けたB氏は、数名を連れて起業しました。

B氏は上場企業の取締役まで経験した敏腕ビジネスマンです。
経営管理は大の得意分野です。机上での計画書作りやマネージ
メントは得意ですが、現場で業務を執行するつもりはないよう
です。大きな資本で、人材を確保して始める起業ならこれで良
いのですが、小資本・少人数での起業には向かないタイプです。
創業者や小規模企業経営者の場合、自らが最も優秀な開発マン
・営業マンでなければなりません。この機能を他人に頼るのは、
その資金力に無理があります。
経営者としての仕事だけでなく、執行者としての仕事の比率を
高くとる必要があります。

小さな会社と大きな会社では、その仕組みが異なります。小規
模創業から企業規模を拡大できた経営者は、その経営者として
の仕事と、執行者としての仕事の割合を上手にコントロールで
きてきたようです。

■経営者業務と執行業務の業務比率のイメージ…

◆創業時の業務比率、経営者業務:執行業務=2:8
◆50人超の人員の時の比率、経営者業務:執行業務=6:4
◆300人超の人員の時の比率、経営者業務:執行業務=9:1
◆1,000人超の人員の時の比率、経営者業務:執行業務=10:0

創業時の業務比率、経営者業務:執行業務=0:10の経営者
がいます。A氏です。食ってはいけるかもしれませんが、会社
の成長は望めません。
※多くの中小零細企業はA氏と同じ状況です。経営者業務とは
何か?この機会に考えてください。

創業時の業務比率、経営者業務:執行業務=10:0の経営者
がいます。B氏です。そもそも会社が立ち上がらないはずです。
(大資本での創業は除く。)

経営者は、会社の置かれている状況やステージによって、その
業務分配比率をバランスよく調整していかねばなりません。こ
のバランス感覚も、経営者にとって必要な資質の一つです。

貴方の会社のステージはどこですか?
貴方の業務分配比率は適切ですか?
自問自答してください。

創業してから1年経たずに自己破産を申請したAさんのお話を
聞く機会がありました。金融機関から融資を受けて創業したが、
思うように売上が伸びず、借入の返済が厳しくなったことが、
自己破産に至った要因だそうです。

通帳の残高が日々減少していく恐怖は、実際に味わった経験の
ある方にしか分からないでしょう。Aさんも、不安で誰かに相
談しなくてはという気持ちだったと言います。

Aさんは弁護士さんに相談しました。借入の返済が厳しくなっ
たことに強い不安を感じていたため、弁護士さんを頼って相談
した結果、自己破産が最善とすすめられたそうです。

お客様もつき始めていたため、もう少し事業を継続したいとい
う気持ちもあったようですが、弁護士さんは弁護士の立場で解
決策を提示しますので、このような状況で弁護士さんに相談す
れば、自己破産をすすめられるのは当然です。

もし、弁護士さんの代わりに、何度も苦しい状況を乗り越えて
きた先輩経営者に相談していたらどうだったでしょう。「創業
時に予想通りに売上が上がらないことなんて普通だよ。」とい
って励ましてくれたかもしれません。もしくは、具体的な経営
のアドバイスや資金の援助をしてくれたかもしれません。

相談相手を選ぶときは、相手が相談内容に精通しているかどう
かはもちろん、相手がどのような立場に立っているかを見極め
なくてはなりません。法律の相談を税理士さんにしていたり、
経営の相談を弁護士さんにしていたり、相談する相手を間違っ
ているケースをよくお見かけします。

ただ、金融機関対応について相談できる専門家は多くありませ
ん。経営者、税理士さん、コンサルタント等が部分的に金融機
関対応の知識や経験を持ち合わせていることはありますが、体
系的網羅的、かつ実務レベルで金融機関の考え方やトレンドを
把握している方は少ないです。

「知る」ことで多くの事を解決できます。故に、賢明な社長は
日々勉強に励みます。

■消防士は火に対する知見を有しています。

故に、大丈夫、危険だ…これらを正しく判断できます。危険な
火災現場に遭遇しても、最小限のリスクで最大限の対応ができ
るのはこのためです。仮に、無知な消防士(?)が消火活動を
行ったとすると、過度に恐れて適切な消化活動ができない、ま
たは、蛮勇で無茶なそれを行うことになるはずです。いずれも
正しい消火活動とは程遠い結果になります。
消防士は、日々欠かさず、火に対する勉強と訓練を積んでくれ
ています。

■社長も経営を「知る」ことが重要です。

経営には不安がつきまといます。具体的な不安、漠然とした不
安…無限の不安が心に降り注いできます。ある種の必然で仕方
ありませんが、これらの不安を軽くする方法はあります。

◆人は、わからないことに多くの不安を感じるようです。
・「知る」ことで多くの不安が解消されます。
・「知る」ためには勉強が必要です。
故に、賢明な社長は日々勉強に励みます。

◆「知る」ことで、程度加減がわかります。
・「知る」ことで、ここまでは大丈夫、これ以上はダメ、この
境界が見えます。
・「知る」ことで、経営判断の精度が向上します。
故に、賢明な社長は日々勉強に励みます。

◆「知る」ことで、「自分の知らないこと」を認識できます。
・知らないことを認識すること(=「無知の知」)は重要です。
・「知る」ことに重点的に取り組むことができます。
・「自分の知らないこと」には取り組まない、または、他人の
知恵を借りる癖が付きます。
故に、賢明な社長は日々勉強に励みます。

■過度の心配は払しょくしましょう。チャンスを逃してしまい
ます。逆に、蛮勇もご法度です。会社をつぶしてしまいます。

「無知」な社長は二つのパターンに分かれます。

◆1.過度に恐れて攻めることができない社長。
リスクを過大評価して、一歩も前に進めません。前に向かって
アクセルを踏めない原因の一つは「知らない・わからない」か
らではないでしょうか?

◆2.蛮勇を背景に突っ走る社長。
リスクや実力を省みることなく、とにかくアクセルを踏み続け
ます。過度に邁進できる理由の一つは「知らない・わからない」
からではないでしょうか?
いずれも正しい経営とは程遠い結果になります。

■「知る」ことは大変大きな収穫をもたらします。

社長が経営の勉強をすることには大変大きな意味を持ちます。
その経営成績、収穫に直結します。ただ、社長が勉強すべきテ
ーマは極めて広範囲で、何からどのようにすればよいかわから
ない、とおっしゃる方も少なくありません。まさにその通りで
すが、これにもヒントはあります。
不安なことから勉強してください。不安を解消しましょう。

■何が不安なのでしょうか?人・モノ・金…?

人の問題は、人的投資を続ければ改善します。
モノの問題も、開発投資を続ければ改善します。
経営上の問題は、結局お金の問題に終結します。
少し乱暴な論理を展開するならば、(中小零細企業)経営の問
題はほぼすべてお金の問題に置き換えることができます。結局
お金の心配が一番大きな最初の問題ではないでしょうか?

まずはお金の不安を完全に払しょくしませんか?
お金の不安を払しょくするためには「お金について知る」こと
です。「財務とは何?」多分このあたりから始める必要があり
そうです。

・「無知」は大きな損失を招きます。損をします。
・「無知」は不安の大きな原因の一つです。病みます。
「知る」ことで多くの事を解決できます。故に、賢明な社長は
日々勉強に励みます。

経営判断、与信判断、節税の判断は、経理の成果物である財務
諸表を基に行います。よって、経理業務は直接収益を上げるこ
とはありませんが、決しておろそかにしてはいけない業務です。
数字の管理が雑な企業とそうでない企業では、経営成績にも相
関関係があるように感じます。

■ 経理の目的は正確な利益数値を求めることです。
経理の主な仕事は、事業活動で発生する取引を、1円単位で正
確に記録することです。小さな記録の集合体が、決算書や試算
表といった財務諸表になります。取引記録の漏れや間違いがひ
とつでもあれば、正しい利益を把握することはできません。た
だ何となく経理の担当者を置いて業務にあたらせるのではなく、
「正しい利益数値を求める。」という明確な目的を与える必要
があります。

■ あらゆる判断は利益数値を基に行われます。
経営判断、融資の審査、法人税等の計算は、全て利益の数値を
基に行われます。お手元にある試算表や決算書が不正確であれ
ば、その資料を基に下した判断は当然間違ったものになります。
経理はあらゆる判断の基礎となる大変重要な業務を担っていま
す。

■ 融資を断られる理由は経理が弱いためです。
「融資を断られた。」というご相談をお受けすることがありま
すが、その半数が、「断られた。」のではなく、「検討不能で
あった。」と感じます。「試算表を作成していない。」とか、
「試算表の数字が正しくない。」ということでは、そもそも金
融機関側は検討のしようがありません。実際に、一度断られた
企業様でも、弊所で正確な試算表を作成することで融資を受け
られたケースは多くあります。中小企業が、本来受けられる融
資を受けられていない要因のひとつに、経理体制が弱いことが
あげられます。

大企業と中小企業では、経理業務に対する取り組み方が大きく
違います。大企業だから経理業務に力を入れているのではなく、
伸びる企業は共通して経理業務(数値管理)を大切にしていま
す。経理業務の質をあげることが、業績の向上にもつながるか
もしれません。

誰にも叱られない立場、これこそ社長の特権であり最大のウイ
ークポイントです。頑張る人はとことん頑張り、怠惰な人はど
んどん堕落します。結果、雲泥の差が出ます。自分の考え方や
生き方を、自分で計りながら生きていくことを求められる立場、
これが社長です。楽しさと怖さが入り混じった感覚、これが社
長業でしょう。
社長として、正しい生活習慣を身に付けましょう。

◆1.「一人でしっかり考える時間」を確保しましょう。

毎日、できれば2時間ぐらい、自社の経営、自分のなすべきこ
と・行ったことについて、外部との情報を遮断して、自分の頭
の中だけで考える時間を確保してください。
・そもそも自分は何をしたいのか?
・これからどのように経営を行うのか?
・近々何をするのか?明日は何をするのか?
・今日の成果と反省は?
・自分に不足しているのは何か?どんな学びが必要か?
等々

◎365日、1日も欠かさずしっかり考える時間が必要です。

◆2.「決めたことは確実に実行」してください。

決めたら石にかじりついてでも確実に実行しましょう。結果は
ともあれ、自分が決めたことの実行率は百%を維持しましょう。
また、従業員に対しても、実行率百%を守らせてください。仕
事なので当たり前です。能力に応じてできることを計り、量を
調整することは必要です。

◎日々◆1.の「一人でしっかり考える時間」で総括してくだ
さい。

◆3.「余計なことをしない」肝に銘じてください。

余計なことにたくさんの時間とお金を浪費しています。
仕事と称して遊ばないようにしましょう。遊びは遊びと認識し
てしっかり遊んでください。
仕事と遊びの境界線がわからなくなっている社長も少なくあり
ません。仕事に対する目的意識が明確なら、このような混同は
起きにくいはずです。

◎日々◆1.の「一人でしっかり考える時間」で総括してくだ
さい。

◆4.「凡事・細事は素早く確実に済ませましょう。」

メールの返信や書類の返答等、様々な凡事や細事も社長にはつ
きまといます。先送りせずに、今この瞬間にさっさとけりを付
けましょう。終わらせましょう。凡事・細事の翌日以降への先
送りをゼロにしてください。どうせやることは、できるだけ早
く終わらせてしまう、この習慣も重要です。

◎日々◆1.の「一人でしっかり考える時間」で総括してくだ
さい。

◆5.「健康的な生活」を送りましょう。

睡眠を十分にとり、できるだけ健康的な食生活を意識して日々
を過ごしましょう。また、一定の休息も意識してとってくださ
い。頑張りすぎると思考が停止してしまいます。
頑張る社長には余暇や休息が必要です。

◆6.「24時間、365日経営のことを忘れない」でください。

法人(事業)に魂を注ぎ込むことができるのは、社長だけです。
休みながら、遊びながら、眠りながらも、会社のことを思いや
ってあげてください。

正しい生活習慣は健康な肉体や精神を構築します。会社・法人
も同じです。社長の生き様が、そのまま会社・事業の実態とし
て表れます。また、社長に限らず、このような生き方を習得で
きたビジネスマンは、間違えなく勝ち組になれます。
原因と結果、因果関係は明確です。意識して実行してください。
事業が成功するか否かは社長一人の問題です。

事業資金が潤沢にあれば、新店舗を出店したり、工場を作ったり、優秀な人材を雇用したり・・・経営の選択肢が広がります。
当然、事業の元手となる資金は、借入よりも自己資金の方がリスクは小さくなります。しかし、利益の積み重ねである自己資金の形成には多大な時間を要しますので、時間を短縮する方法として、他人資本(借入)の活用があります。人間の寿命には限界がありますので、経営者として成し遂げたいビジョンが大きければ大きいほど、他人資本(借入)の活用は避けて通れない経営の要素です。

しかし、他人資本(借入)を上手に活用できている中小企業は多くありません。理由は、財務のプロフェッショナルではない経営者自身が、本業の合間に銀行対応を行っているからです。銀行対応を含めた財務活動は、財務に関する専門知識を要求されますので、本来であれば財務の専任を置いた方が上手くいきます。大手企業で言う財務部長です。

中小企業では財務部長という職種はあまり馴染みがありませんので、ウィキペディアでご紹介しますと、「財務部長(CFO)とはキャッシュ・フローや投資の管理、経営計画策定における数値的裏付けの作成と管理など、業務範囲は多岐にわたり、CEO・COOの「片腕」ともいうべき存在である。英国においてはほとんど全員が会計士の資格を有する。米国においても会計士が過半数を占める役職である。また、理事会又は取締役会の構成員である場合が多い。」となっています。

中小企業に財務部長がいない理由は、ひとつが財務部長の報酬です。会計士の資格を持っていない方でも、財務部長の年俸相場は非常に高額です。もうひとつは、中小企業は大企業に比べて財務に関する仕事量が少ないことです。仕事量が少ないところに高額な専任担当者を常時雇用する必然性はありません。

しかし、仕事量が少ないからといって、中小企業に財務が重要でない訳では決してありません。資金調達力に乏しい中小企業にとって、財務の成否は会社の存続や成長に大きな影響を与えます。

中小企業が、「仕事量としては少ないが、重要な財務業務をどのようにカバーすべきか。」という問題は、財務業務を専門家に部分的に委託することで概ね解決できます。企業側は専門家を常時雇用する必要はありませんのでコストを大幅に抑えることができますし、受ける専門家も複数社より財務業務を請け負うことで収益面をクリアできます。

当事務所でご用意している財務支援サービスは、まさにこのような財務部長のシェアリングサービスです。是非、ご活用ください。

■勝ち組と負け組の価格戦略は真逆です。

◆市場が飽和した日本のマーケットにおいては、モノやサービ スを安く買おうとするエネルギーが蔓延しています。モノや サービスを提供する企業サイドも、その趨勢に迎合することで、自社の売上を確保しようと考える傾向が強いようです。

◇一方、十分な利益を確保できる価格設定を行ったうえで、隆々と経営を続ける企業もたくさんあります。当然、たくさんの顧客に支えられているはずです。

◆前者と◇後者、雑駁に分類するなら負け組と勝ち組です。
◆前者(負け組)が4割、◇後者(勝ち組)が2割、中間が4割、このような分類になりそうです。

◆前者(負け組)の企業の価格戦略は…
・「価格(安売り)を売るための道具」だと思っています。
・「価格は安い方が売れる」と思っています。
・「価格は、できるだけ安めに設定するべき」と思っています。
・「価格が高すぎて売れない」ことを過度に嫌います。
・「売れないより、薄利でも売れた方がよい」と考えています。
※うまく行ってたくさん売れても「繁盛貧乏」に陥ります。儲からないのに忙しい状態でバランスしてしまいます。後は頑張って・頑張り続けて…現状維持が関の山です。

◇後者(勝ち組)の企業の価格戦略は…
・「価格を売るための道具には使わない」との信念を持っています。
・「価格が安くても売れるわけではない」と思っています。
・「価格は、できるだけ高く設定すべき」と思っています。
・「(仮に)高すぎて売れないことが有っても仕方ない」と思っています。
・「薄利で売るよりも、売れない方がよい」と考えています。
※うまく行けば、たくさん売れて儲かる「繁盛高収益」の状態になれます。利益で次の投資ができ、さらなる成長を目指せます。うまく行かなければ、「閑散貧乏」の状態です。やり直せます。

■価格に対する二つの潮流…

◆モノやサービスを安く買おうとする潮流に巻き込まれることは得策ではありません。
◇もう一つの潮流、「良いモノ・必要なモノが欲しい。対価は払う」に乗せましょう。
気を付けてください。
◆前者の潮流の方が目立っています。◇後者は静かに流れています。

■もう一度「価格戦略=値決め」を再考してください。

「値決め」は経営の要諦です。であるにも関わらず、値決めに掛ける手間暇が少なすぎると思っています。総じて安く付けすぎているとも思っています。間違えた「値決め」が経営に与えるダメージを過小評価してはいけません。経営者は閑散な状態を嫌います。故に、安すぎる「値決め」をして、貧乏しても繁盛したいと考える傾向があります。「繁盛貧乏」がはびこるのはこのためでしょう。
経営者は楽な道を選びます。苦労して付加価値を積み上げるよりも、価格を低く抑えて価値とバランスしようと考えてしまいます。価格を売るための道具に使ってしまいます。安売り戦略の大罪は、良いものを創り出そうとする知恵を奪い取ることです。この愚策を長年続けている集団から、新たな商品やサービスを創り出す創造力は生まれません。商品やサービスの価値と価格のバランスは、その価格を下げて市場に合わせるのではなく、その価値を向上させることで調整してください。
多くの偉人たちが語る経営の王道です。

事業は付加価値を求めつづけることでのみ継続できます。値決めは重要な経営判断です。安売りは悪です。利益を計り、利益を求めてください。また、コストは自然に膨らみます。意識して抑え込んでください。高収益(Profitable)な企業体作りを強く意識してください。

事業承継時には大きな資金が必要になります。例えば、後継者の場合、相続等で分散した株式等を買い集める資金や、相続や贈与によって株式を取得した場合の納税資金等が想定されます。
他にも、親族ではない役員や従業員が事業を承継する場合、株式や事業を買い取るための資金が必要になります。また、経営者が交代したことにより信用状態が悪化し、銀行の借入条件や取引先の支払条件が厳しくなってしまうこともあるでしょう。

政府は経営者の高齢化に伴い、中小企業が営む事業が次世代にしっかりと引き継がれるよう、様々な制度を整備しています。
せっかく事業を引き継ぐ意欲のある後継者や従業員がいるにも関わらず、資金面で断念することがないよう、日本政策金融公庫や信用保証協会は、事業承継時に利用できる融資・保証制度を用意しています。

これらの制度を利用するためには、まず、経営承継円滑化法に基づく認定を受けなくてはなりません。認定を受けるためには、下記を記載した認定申請書を作成し、窓口を通じて経済産業大臣の認定を受けます。

(認定申請書の主な記載事項)
1.事業承継を行うこととなった原因
・先代経営者の死亡または代表者の退任

2.事業活動の継続に支障を生じさせる主な事由
・申請者が、申請者以外の者が有する株式を取得する必要があること。
・申請者が、申請者以外の者が有する事業用資産を取得する必要があること。
・申請者の売上高が減少することが見込まれること。
・仕入先からの取引条件について申請者の不利益となる設定又は変更が行われたこと。
・取引先金融機関との取引に支障が生じたこと。

認定を受けたら、会社の資金ニーズは信用保証協会へ、代表者個人の資金ニーズは日本政策金融公庫に申し込みます。信用保証協会では、通常の無担保枠とは別枠で保証を受けられる制度を用意しており、日本政策金融公庫では、代表者個人が低利で融資を受けられる制度を用意しています。

事業承継時の資金調達についても弊所までご相談ください。

■忙しいとは?時間がないとは?この言葉にどのような意味があるのかわからなくなる数字です。

◆「144時間」「176時間」この数字が何か考えてください。
○前者は5月の定時間内就業時間です。(土日と5月1日・2日を休みとした時)
○後者は6月の定時間内就業時間です。(土日を休みとした時)※平成29年度カレンダーより。
144時間を100とすると、176時間は122になります。実に22%も就業できる時間が違います。(業務量を同じとした時…)

5月度の残業時間を32時間とするなら、6月度は残業無しです。
5月度の残業時間を0時間とするなら、6月度は32時間時間が余ります。
5月と6月の差をどう埋めているのでしょうか?

◆「10,000時間」「80時間」この数字が何か考えてください。
○前者は勤続4年~5年の社員の累積勤務時間です。
○後者は2週間の勤務時間(定時内)です。
仕事が遅れている社員と、先手を打てている社員の仕事の進捗の時間差は、せいぜい2週間です。4~5年の社員にあてはめると、その差は0.1%以内です。
なぜ0.1%分、2週間仕事を先行してできないのでしょうか?

■労働時間の短縮には、定休日を作ることが最善です。

◆「365日」「12日」この数字が何か考えてください。
○前者は年中無休の営業体制を指します。
○後者は月一回の定休日を指します。
月一回の定休日を設けるだけで、3.3%営業時間(就業時間)を短縮できます。

◆「365日」「52日」この数字が何か考えてください。
○前者は年中無休の営業体制を指します。
○後者は週一回の定休日を指します。
週一回の定休日を設けることができれば、14.2%営業時間(就業時間)を短縮できます。
隔週の定休日を設けるだけでも、7.1%営業時間(就業時間)を短縮できます。

■給料が安いのか?高いのか?相対的に考えるための数字です。

◆「1,500円」「250,000円」この数字が何かを考えてください。
○前者はアルバイトの時給1,500円を指します。
○後者は約167時間(1か月定時就業時間)働いた時の月給です。
月給25万円は払えても、アルバイトに時給1,500円を提示できない中小企業は少なくありません。どうしてでしょうか?

◆「2~3倍」「3倍~無限大」この数字が何かを考えてください。
○前者は同年代の一般社員と部長クラス(最上級管理職)の年収の差(諸説ありますが)です。
○後者は同年代(40~50歳)の能力の差です。比較的単純な業務のスピード差は3倍以上、そのできる業務の範囲の違いは、できるかできないか、無限大の差がついています。
報酬にもっと差をつけるべきなのでしょうか?悩ましい事柄です。

■値上げと値引きについて考えるための数字です。

◆「3%」値上げの時、「3%」売れ個数減でも売上は現状維持、かつ「1.5%」増益です。
◆「3%」値下げの時、「3%」売れ個数増で売上は現状維持、一方「1.5%」減益です。
※共に原価率は50%とし、販管費は固定費と考えた時。
値下げ・安売りの選択肢がいかに利益を圧迫するか?よく考えてください。

■継続がいかに重要か?を示す数字です。

◆「3年」「10,000時間」この数字が何かを考えてください。
○前者は「石の上にも3年」(ことわざ)
○後者は「10,000時間の法則」(マルコム・グラドウェル氏)
共に物事を一定以上習得するために要する時間の目安を指します。貴社は新しいテーマに対して3年間継続して取り組めているでしょうか?中途半端は何一つ身に付かないようです。

選択したビジネスモデルによって、将来が大きく変わるのは当然です。しかし、同じビジネスモデルであっても、選択する取引条件が違えば同様に将来は変わります。

月額3万円程度の利用料を売上高とするA社とB社があります。
A社は普通に契約月から毎月3万円の利用料を徴収していますが、B社は当初6か月分の利用料を一括で徴収しています。

A社は毎月5件程度の新規契約を獲得していますが、損益分岐点売上高に達するまでには長期間を有しますので、資金繰りは非常に厳しい状況です。また、現状の業績では金融機関を頼ることもできません。

一方B社も、A社同様当初は毎月5件程度の新規契約でしたが、初月から100万円程度の収入がありましたので、すぐに営業マンを増員し、今では月商1,000万円に迫る勢いです。A社とB社は類似したビジネスモデルですが、取引条件の違いで結果は大きく違っています。

ソフトウェアの受託開発をしているA社と、ソフトウェアをパッケージ化して販売しているB社があります。A社の開発期間は数か月に及びますが、代金を全額回収できるのは開発が完了した後です。一方のB社はソフトウェアを商品化しているため、販売した翌月には代金を回収することができます。

A社は開発期間の人件費を確保するため、いつも資金繰りに奔走しています。また、売上高を増やそうと思っても、さらに多くの人件費が必要になるため、思うように売上高を増やすこともできません。一方のB社は、パッケージ商品の販売ですので、資金を気にすることなく売上を増やすことができます。そして稼いだ資金を次の開発に投資しています。

潤沢な自己資金を有している中小零細企業は少なく、また、借入にも限度があります。よって自力でキャッシュをどれだけ稼げるかどうかが成否を大きく左右します。もちろん利益も重要ですが、いくら利益率の高いビジネスモデルであっても、売上代金を回収するまでの期間が長ければ、事業の継続は困難です。

・売上代金をもっと早く回収できる方法はないか?
・支払をもっと遅らせる方法はないか?
・在庫の回転期間をもっと短くできる方法はないか?

キャッシュを稼ぐ力を強化するため、今一度考えてみてはいかがでしょうか。