前回は、銀行との関係は融資の場面だけで決まるものではなく、
日常の姿勢の積み重ねで評価されやすいという話をしました。
今回は、銀行が決算書で何を確認しているのかを、もう一段具
体的に整理します。

銀行は売上や利益の大きさだけで判断していません。
損益計算書の数字が、貸借対照表の動きとつながっているかど
うかも確認しています。
事業の実態と数字の動きが合っているかを見ています。

代表的な例は、利益が出ているのに現預金が減っているケース
です。
仮に営業利益が800万円出ていたとしても、同じ期間に売掛金
が1,200万円増え、在庫が600万円増え、買掛金が200万円減っ
ていた場合、運転資金として2,000万円が追加で必要になりま
す。
利益800万円に対して運転資金2,000万円が増えているため、
現預金は差し引きで1,200万円減る形になります。

ただ、この形は、必ずしも悪い話ではありません。
売上拡大に伴う運転資金の増加として説明がつく場合も多くあ
ります。
しかし、銀行は、売掛金の増加に回収遅れが混ざっていないか、
在庫の増加に滞留品が混ざっていないかを確認したくなります。
数字の動きが読めない状態は、融資判断ではリスクとして扱わ
れやすいからです。

同じ売掛金でも、伸び方が不自然な場合は注意が必要です。
売上は前年から10%増なのに、売掛金が前年から50%増といっ
た形になると、入金サイトの長期化や回収遅延を疑われやすく
なります。
経営側が、取引先別の増減や入金予定の見通しを把握している
場合、数字のズレが事業のストーリーとして説明できます。

在庫についても同様です。
売上が横ばいなのに在庫だけが増え続ける場合、販売が追いつ
いていない可能性が出てきます。
将来の値下げや廃棄による損失が発生するリスクも想定されま
す。
銀行は在庫の中身や滞留状況を確認し、資金がどこに滞留して
いるかを把握しようとします。

こうした確認は、銀行が意地悪をしているわけではありません。
返済が継続できるかどうかを判断するために、利益だけでなく
資金の動きまで見ているという話です。

一月にお伝えしたキャッシュポジションの基準ともつながりま
す。
最低でも月商一か月分以上のキャッシュを意識している会社は、
利益と運転資金の動きにも目が向きやすくなります。
その結果、銀行との会話でも数字の説明が具体的になり、信頼
につながります。

次回は、銀行に相談するタイミングをどう考えるかについてお
話しします。

事業を飛躍的に成長させるために、中小企業経営者が今こそ本
気で検討すべき経営戦略の一つが「協業戦略」です。協業とは、
単なる業務提携や外注ではありません。自社と他社の経営資源
を戦略的に組み合わせ、単独では決して到達できない成長スピ
ードと事業規模を実現するための、明確な経営判断です。

多くの中小企業は、人材・資金・時間という制約の中で経営を
行っています。新規事業の創出、販路拡大、付加価値向上、D
X対応など、経営者の頭の中には数多くの課題が並んでいるは
ずです。しかし、それらをすべて自社単独で解決しようとする
ほど、経営は重くなり、意思決定は遅れ、結果として成長機会
を逃してしまいます。自前主義を前提とした経営は、すでに限
界に近づいています。

まず最も取り組みやすく、効果が見えやすいのが販売における
協業です。自社が持たない顧客層や販売チャネルを持つ企業と
組むことで、市場開拓のスピードは劇的に向上します。新規営
業体制を一から構築するには相応の時間とコストが必要ですが、
既存の顧客基盤を相互に活用すれば、短期間で売上機会を創出
できます。販売協業は、成長を加速させるための最短ルートの
一つです。

次に重要なのが開発における協業です。商品やサービスの開発
には、技術力、専門知識、市場理解が不可欠ですが、これらを
すべて自社で揃えることは容易ではありません。技術を持つ企
業、業界知見を持つ企業と協業することで、開発リスクを分散
しながら、競争力の高い商品やサービスを生み出すことが可能
になります。成熟市場では、単独開発よりも、複数の強みを掛
け合わせた協業型開発の方が成功確率は高まります。

三つ目は人材に関する協業です。慢性的な人手不足の中で、
「採用すれば解決する」という発想はすでに現実的ではありま
せん。専門人材を持つ企業との共同プロジェクト、人材の相互
活用、外部パートナーとのチーム編成など、「雇う」以外の選
択肢を持つことで、経営の柔軟性は大きく高まります。人材協
業は、固定費を抑えながら経営力を引き上げる、極めて合理的
な手段です。

四つ目がDX領域での協業です。DXは単なるITツールの導
入ではなく、業務プロセスやビジネスモデルそのものを変革す
る取り組みです。これを自社だけで完結させようとすれば、試
行錯誤に時間を費やし、成果が出る前に頓挫するケースも少な
くありません。DXに知見を持つ企業と協業することで、変革
のスピードを高め、実効性のあるDXを推進することが可能に
なります。DXは、協業を前提に設計すべき経営テーマです。

協業戦略を成功させるために、経営者が最も重視すべきは「目
的の明確化」です。何のために組むのか、自社は何を提供し、
何を得るのか。この点が曖昧な協業は、必ず形骸化します。収
益構造、役割分担、意思決定のルール、将来的な発展や解消の
可能性まで含めて設計することが経営者の責任です。

すべてを自前で抱え込む時代は、確実に終わりに近づいていま
す。中小企業だからこそ、外部と組むことで成長の限界を超え
ることができます。協業戦略とは、弱みを補うための妥協では
なく、強みを最大化するための攻めの経営判断です。今こそ、
自社の強みを再定義し、「誰と、どのような成長を実現するの
か」を本気で考える時ではないでしょうか。