令和8年の幕開けにあたり、日本の中小企業はかつてない構造
的な変化に直面しています。原材料費やエネルギーコストの高
騰による物価上昇、少子高齢化がもたらす人手不足、そして市
場環境の急速な変化に対応するための事業再構築。これらの課
題は一企業の努力だけでは解決が難しく、同時に“変化にどう
適応するか”が企業存続のカギとなります。

以下では、これら三大課題に対する具体的な視点と行動指針を
示します。今こそ、守りから攻めへの意識転換が求められてい
ます。

■【1】物価上昇:価格転嫁は「説得」から「納得」へ

物価上昇は経営体力を確実に削ります。原価高騰を吸収するだ
けの余力がない中小企業にとって、価格転嫁の技術が問われる
年になるでしょう。

単なる「値上げ」では顧客の理解は得られません。大切なのは、
“なぜその価格が必要なのか”を丁寧に伝えること。製品・サー
ビスの背景、品質、持続可能性への取り組みなど、価格に見合
った価値を伝えるストーリーテリングが不可欠です。

あわせて、業務効率化によるコスト構造の見直しも重要です。
クラウドツールやAIの導入で人件費や間接費を削減し、価格転
嫁の必要性そのものを低減させる取り組みが求められます。

■【2】人手不足:採るより育て、繋ぎ、活かす

中小企業の多くが「人が足りない」と嘆く一方、雇ってもすぐ
辞めてしまう現実も深刻です。もはや採用に頼るだけでは立ち
行かず、「定着」と「戦力化」こそが競争力の源泉となります。

具体的には、柔軟な勤務体系の整備(時短勤務、在宅ワーク、
副業容認など)や、成長を実感できるキャリア設計が効果的で
す。働きやすさと働きがいの両立を意識した職場環境が、人材
の流出を防ぎます。

また、シニアや外国人、育児・介護と両立する層など、多様な
人材の受け入れ体制の構築が必要です。業務マニュアルや研修
体制を整え、誰もが早期に活躍できる仕組みを作りましょう。
AIを活用した教育やサポートツールの導入も視野に入れるべき
です。

■【3】事業再構築:「縮小均衡」から「成長戦略」へ

停滞からの脱却には、今こそ大胆な事業見直しと再構築が必要
です。顧客ニーズは変化しており、従来の延長線上では成長は
望めません。

ここで大切なのは、“自社が本当に提供すべき価値は何か”を見
極め、限られた経営資源を集中させることです。小規模でも新
規事業や新市場へのチャレンジを始める企業は増えています。
既存顧客との関係を活かしたサービスの横展開や、ニッチ市場
への特化は有効な戦略です。

補助金制度や支援機関の活用も積極的に行いましょう。また、
AIやデジタルツールを活用したマーケティングや業務改善は、
再構築のスピードと確度を高める武器になります。

変化に強い組織こそ、未来を拓きます。
令和8年は、「変化に順応する企業」が「選ばれる企業」とな
る年です。先の読めない時代においても、正しい情報をもとに
迅速に意思決定し、小さく試し、大きく育てる。その柔軟性と
スピードこそが、これからの中小企業に求められる資質です。

経営者の皆様には、今年を“守り”ではなく“変革の始まり”と捉
えていただき、社内外に新たな価値を生み出す礎としていただ
きたいと願います。

あけましておめでとうございます。
本年も中小企業経営に役立つ財務の話をお届けしていきます。

年始に多くの経営者の方と話をすると、
・今年は売上を伸ばしたい
・今年こそ利益を残したい
そんな言葉をよく聞きます。

一方で、
財務の視点から見ると、年初にまず考えていただきたいのは
今年いくらお金が増えるかではなく、いくらお金が減る可能性
があるかという点です。

会社は利益が出ても倒れます。
逆に言えば、利益が少なくても資金が回っていれば生き残れま
す。
この違いを分けるのが資金繰りです。

資金繰りというと、苦しくなったときに考えるもの、銀行に求
められて作るもの、そのような印象を持たれがちですが、本来
は逆です。

余裕があるときにこそ、資金繰りを考える。
何も起きていない年初こそ、資金の流れを整理する。
これをしておけば多少の環境変化があっても大きく崩れません。

年初におすすめしたいのは、難しい資料を作ることではありま
せん。
・今ある預金はいくらか。
・毎月必ず出ていくお金はいくらか。
・売上が少し落ちたら何か月耐えられるか。

この三つを把握するだけでも、経営の見え方は大きく変わりま
す。

一年は長いようで、資金繰りの視点ではあっという間です。
売上が伸びているときほど、お金は静かに減っていきます。
その変化は、決算書が出来上がる頃には手遅れになっているこ
とも少なくありません。

ですので、今年一年をどう戦うかを考える前に、今年一年をど
うやって生き残るかを考える。それが財務の出発点です。

今年も一緒に、数字で会社を守る一年にしていきましょう。