前週号で、人が辞める理由の一つにあげた、【従業員の能力】
と【その従業員に求める業務】のミスマッチに関連して、
「ピーターの法則」をご紹介します。

■「ピーターの法則」〔その組織の仕事は、まだ出世の余地の
ある、無能レベルに達していない人間によってのみ遂行されて
いる。〕、言われてみれば「なるほど」と納得できることは少
なくありません。「もっと早く知っておれば…」と後悔します。
「知らないことがたくさんある、いや、我々は世の中のことの
大半を知らない」、この境地こそ「無知の知」(=自分が無知
であることを自覚する。)で、この考え方にたどり着いた時に
はじめて、人は成長のためのスタートラインに立てる…ある偉
人の言葉です。

■『ピーターの法則』、ご存知でしたか?以下は、よくあるマ
ネージメントの愚行です。

○「第一線の営業マンとして頭角を現したA君、主任に昇進さ
せてチームを持たせたら、途端に覇気を無くしてしまった。将
来の幹部候補生として期待していたが、係長への昇進も見込め
ない。それでも不得手な主任に留めています。」

○「営業部長として営業の中核部門を背負ってくれていたB部
長、営業成績を長期間維持、向上させた功績で取締役に昇進さ
せて経営陣に加えたが、経営者としての手腕は発揮されない。
平の取締役で生涯を終えてもらうことになりそうだ。それでも
不得手な経営陣に留めています。」

第一線の営業マンとして優秀であったA君を、不得手なマネー
ジャーに昇進させたうえで放置する愚行を行っています。敏腕
営業部長を、不得手な経営陣に昇進させたうえで放置する愚行
を行っています。

■ピーターの法則〔ウィキペディアより引用〕により、上記の
愚行が提唱されています。

〔南カリフォルニア大学教授の教育学者ローレンス・J・ピー
ター(Laurence J. Peter)によりレイモンド・ハル(Raymond
Hull)との共著 THE PETER PRINCIPLE の中で提唱された。日
本では1969年、『ピーターの法則―〈創造的〉無能のすすめ(
ローレンス・J・ピーター/レイモンド・ハル 田中融二氏訳)』
がダイヤモンド社より出版された(2003年再版の新訳は渡辺伸
也氏)。〕

1.能力主義の階層社会では、人間は能力の極限まで出世する。
すると有能な平(ひら)構成員も無能な中間管理職になる。
2.時が経つにつれて人間はみな出世していく。無能な平構成
員はそのまま平構成員の地位に落ち着き、有能な平構成員
は無能な中間管理職の地位に落ち着く。その結果、各階層
は無能な人間で埋め尽くされる。
3.その組織の仕事は、まだ出世の余地のある、無能レベルに
達していない人間によって遂行される。

■解決方法として、以下を提唱されておられます。

「この問題を回避するために組織がとりうる手段として、次の
段階の仕事をこなせる技術と仕事のやり方を身につけるまで人
材の昇進を控える方法が挙げられる。例えば、管理能力を示さ
ない限りは部下を管理する地位に昇進させない、などである。
◆第1の帰結は、現在の仕事に専念している者は昇進させず、
代わりに昇給させるべきである。
◆第2の帰結は、新たな地位に対して、十分な訓練を受けた場
合にだけ、その者を昇進させるべきである。これにより、昇
進の(後ではなく)前に管理能力に欠ける者を発見すること
ができる。」

今後のマネージメントや、自身のキャリア形成に大変役立つ知
識です。頭の引き出しに、所番地を決めて保存してください。

■3つの最適化、このバランスが崩れた時に人は退職します。
在籍中であれば、経営的にも不合理な状態です。

1.【従業員の市場価値】と【会社が支払う給与】のミスマッチ
2.【会社が従業員に求める業務】と【会社が支払う給与】の
ミスマッチ
3.【従業員の能力】と【その従業員に求める業務】のミスマッチ

「ピーターの法則」は、3つ目の【従業員の能力】と【その従
業員に求める業務】のミスマッチについて言及されているとも
解釈できます。また、その解として、
●「現在の仕事に専念している者は昇進させず、代わりに昇給
させる。」
●「新たな地位に対して、十分な訓練を受けた場合にだけ、そ
の者を昇進させる。」
を提言されています。

貴社におかれましても、この機会にご検証ください。

借入が必要になりそうだと分かっていても、日々の業務に忙殺
されて後回しになり、いよいよ資金が切れそうなタイミングで
金融機関に駆け込む・・・ご経験のある社長様も多いのではな
いでしょうか。

本来、資金調達業務は、資金が不足した時だけ行う業務ではあ
りません。どれぐらいの資金が、何のために、いつ頃必要なの
かを事前に把握し、どれぐらいの資金を、どこから、どのよう
にして調達するかを戦略的に進めていく業務です。財務業務を
戦略的に進めるためには、財務に関する知識や経験が必要です。
まずは貴社の財務レベルをチェックしてみましょう。

□今期、どれくらいの資金調達が必要か分かっている。
□公庫、信金、地銀、メガバンク、ベンチャーキャピタル・・・
各金融機関の特性を熟知しており、どの金融機関から調達す
るのが最善か分かっている。
□短期借入、長期借入、社債、リース、出資・・・借入の種類
と特徴を熟知しており、どの方法で調達するのが最善か分か
っている。
□金融機関の考え方を熟知しており、金融機関が評価するポイ
ントが分かっている。
□融資を受けやすくするために必要な資料が何か分かっている。

いかがでしょうか。チェックの数が少ない場合は財務レベルに
改善の余地があります。業績が落ち込めば、途端に資金調達が
難しくなる可能性がありますので、次にご提案する財務戦略を
実践してみてはどうでしょうか。

■ 小規模企業に適した財務戦略

1.調達目標額を決める
仮に業績が落ち込んだ時、金融機関は助けになりません。自分
の身は自分で守らなくてはならないため、有事に備えて、「借
りられるだけ借りておく」ことを目標にしてはいかがでしょう
か。

2.取引金融機関(調達先)を選定する
小規模企業の調達先の選定基準は、「最も安い金利の金融機関
ではなく、最も多く貸してくれる金融機関」です。銀行の知名
度や、多少の金利差に惑わされず、積極的に融資をしてくれる
金融機関を選びましょう。年商3億円未満の企業の場合は、信
用金庫(組合)→地銀→メガバンクの順であたるのがセオリー
です。

3.金融機関と良好な関係を構築する
最大限の調達を行うためには、金融機関を味方につけることが
必須です。金融機関が好むのは、ディスクローズをしっかりと
行える企業です。試算表や資金繰り表をリアルタイムで作成し、
定期的に提出することで、金融機関からの信頼は大きく高まり
ます。

この程度の財務戦略を実践するだけでも金融機関の反応は大き
く変わるはずです。資金調達は一発勝負ではありません。お金
を借りる時だけ対処するのではなく、戦略を持ち、日頃から資
金調達に備えておくと安心です。

○銀行融資プランナー協会の正会員である当事務所は、
『貴社の財務部長代行』を廉価でお引き受けいたします。

○金融機関対応に関するご相談は、銀行融資プランナー協会
正会員事務所である当事務所にて承っております。
お気軽にご相談ください。

■お問い合わせ先
【 吉川和良税理士事務所 yoshikawa@mas-cpta.com 】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ お役立ち情報
『生涯現役起業支援助成金について』
…40歳以上の方の起業を支援してくれる助成金です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「生涯現役起業支援助成金」は中高年齢者(40歳以上)が、
起業する場合に、事業運営のために必要となる従業員(中高年
齢者等)の雇入れを行う際に要した、募集・採用や教育訓練の
実施にかかる費用の一部を助成してくれるものです。
平成30年4月からは、この助成金の支給を受けた事業主が新
たに生産性要件に該当した場合に、すでに支給された助成金額
の25%の額を追加で支給することも予定されています。
起業をお考えの方はご検討ください。

概要をみておきましょう。

■対象者
起業(いわゆるベンチャー企業の創業)を行う中高年齢者(起
業日の年齢が40歳以上)が対象です。

■支給要件
(1)起業者が起業した法人または個人事業の業務に専ら従事
すること。
(2)起業基準日から起算して11か月以内に「雇用創出等の
措置に係る計画書」を提出し、都道府県労働局長の認定
を受けていること。
※認定にあたっては、公的機関等の実施する創業支援を受けて
いること、当該事業分野において一定年数以上の職務経験を
有していることなど、事業継続性の確認があります。
(3)計画書で定めた計画期間内(12か月以内)に、対象労
働者を一定数以上新たに雇い入れること。

【雇入れ基準】
次のいずれかの基準を満たすことが要件です。
◇60歳以上の対象労働者を1人以上
◇40歳以上60歳未満の対象労働者を2人以上
◇40歳未満の対象労働者を3人(40歳以上の対象労働者を
1人雇用する場合は2人)以上

■対象経費
募集及び採用並びに教育訓練に係る経費(人件費を除く。)が
対象となります。

■助成金額
(1)起業者が60歳以上の場合
募集及び採用並びに教育訓練に係る経費の2/3以内で上限
200万円が支給されます。

(2)起業者が40歳以上60歳未満の場合
募集及び採用並びに教育訓練に係る経費の1/2以内で上限
150万円が支給されます。

詳しくは厚生労働省のホームページをご確認ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000115906.html

■大企業と中小零細企業では背景が違います。

大企業は、従業員や就職希望者に対して、自社に対する愛社精
神、忠誠心、帰属意識等のブランドロイヤリティーを提供でき
ます。相応のBIGカンパニーや著名なベンチャー企業は、社
長個人の魅力ではなく、このブランドロイヤリティーが、継続
的な就業や就職動機として機能します。
一方、中小企業、まして零細企業にブランドロイヤリティーは
存在しません。社長個人がこの役目を果たさねばなりません。
言いかえると、「社長自身の器量やポテンシャルを越える人材
は採用できない、仮に採用できても辞めてしまう」、というこ
とです。故に、より優秀な人材を採用したいのなら、社長自身
が自らの器量やポテンシャルを高めていく努力を続けていくし
か方法がありません。
悲観論ではなく、事実として認識してください。人事はこの認
識から始めなくてはなりません。この前提条件を踏まえて、以
下のテクニカルな話に言及します。

■雇用の安定のための人事における3つの最適化とは…

◆人事業務で一番大切なことは、最適化です。
すべてにおいて最適化のポイントを求め続けることこそ人事担
当者の仕事です。中小零細企業では社長の仕事です。最適化が
なされておれば、人は概ね辞めません。採用もできます。離職
率が極端に高いのは、人が採用できないのは、最適化できてい
ないからです。
離職率が高いからレクリエーションを充実させる…間違えでは
ありませんが、本筋ではありません。採用できないから上手な
キャッチコピーを考える、採用媒体を見直す…間違えではあり
ませんが、本筋ではありません。

◆最適化とは…
1.【従業員の市場価値】と【会社が支払う給与】
2.【会社が従業員に求める業務】と【会社が支払う給与】
3.【従業員の能力】と【その従業員に求める業務】
の三つをバランスさせることです。

1.給与はその従業員の市場価値に適合させることが重要です。
給与はその人の市場価値に対して、安すぎても、高すぎてもい
けません。

○優秀な従業員を安く使えている、これは長続きしません。ど
こかで辞表がでます。
○割高な給与を支払っている、これも長続きしません。どこか
で社長のストレスが爆発します。辞めさせる羽目になります。

2.求める業務に応じた給与を支払ってください。
給与は求める業務に対して、安すぎても、高すぎてもいけませ
ん。

○難解な業務を、薄給の人に求めてはいけません。どこかで辞
表がでます。
○安易な業務を、高給の人に割り当ててはいけません。どこか
で社長のストレスが爆発します。辞めさせる羽目になります。

3.従業員の能力に合わせて業務を割り当ててください。
割り当てる業務は、従業員の能力に対して、難しすぎても容易
過ぎてもいけません。

○能力の低い人に、難解な業務を背負わせてはいけません。ど
こかで辞表がでます。
○能力の高い人には、それ相応の業務を担ってもらいましょう。
有効に活用しましょう。

言うは易く行うは難し…ですが、事業体の人事の肝は上記です。
(程度加減の)正解はだれにもわかりませんが、そのゴールの
無い道をきわめることが人事です。
社長にとって大切なことは、上記の理屈を理解して、程度加減
を是正しながら判断・行動することです。

◆絶対にやってはいけないこと…
○よくできる人材を、薄給を承知で便利に使い続けること
ある日突然辞表がでます。適正な給与(地位)の是正を実施し
なかったことが原因です。

○道理を越えた高給を支払って雇用する、慰留すること
長続きしません。社長の、組織内のアンバランスが限度を超え
た時、辞めさせる羽目になります。そして、大きな罪を作りま
す。その人の人生を歪めてしまいます。

○能力の低い人に、(精神論として)高度な仕事を任せること
訓練の機会・期間を設けずに、業務を何段階もステップアップ
させること、これに耐え得るのはほんの少数です。大半の人は
挫折します。訓練の機会・期間を経ずにやってはいけません。

同様の理屈で…
○薄給で優秀な人材を求めること
○薄給で採用して高度な仕事を求めること
○ただただ高給を訴求して人を採用すること

■最後に二つ…

1.人事をある程度適正に行えば、人はそれ程辞めません。
小さな会社で人が次々に入れ替わるのであれば、それは人事が
なされていないからです。是正が必要です。一方、それでも一
定の比率で人は辞めます。会社への不満とか?ではありません。
人それぞれです。可能な限り円満に送り出してあげることが得
策です。

2.力不相応の人材を求めてもうまくいきません。
これも達観が必要です。まずは(今の)力相応の従業員を求め
ましょう。優秀な人材が集まらないと嘆く社長様も少なくあり
ません。自社や自分の現状を棚にあげて、優秀な人材を求める
社長様がいますが、これも無いものネダリです。

◎良い会社になった時に、優秀な従業員が入社します。良い従
業員が集まるから良い会社になるのではありません。
◎今の実力相応の従業員が入社してきます。鏡の原理です。
◎まれに、将来性に賭けて入社してくれる人もいます。(今の)
力不相応な従業員の雇用は、社長自身が一本釣りするしかあ
りません。これをやってください。できなければあきらめま
しょう。

貴社の人事に対する考え方を、この機会にご一考ください。

借入には1年以内に返済期日が到来する短期借入と、返済期日
が1年超の長期借入があります。運転資金の借入は短期借入で
行うのが一般的でしたが、近年は運転資金の借入も長期で行う
ことが多くなっています。「長期運転資金」という名目です。

◆短期借入と長期借入の違い
短期借入と長期借入は、返済期間だけでなく、「返済原資」も
違います。返済原資とは、返済に充てられる資金のことです。

短期借入の返済原資は売掛金の回収金です。モノやサービスは
売れたが、代金の回収までに時間を要する場合、その資金ギャ
ップを埋めるために利用するのが短期借入です。よって、返済
は回収した売上代金で行います。赤字の会社でも短期融資を受
けられることがあるのは、返済原資が利益ではなく売上代金の
回収金であるためです。

一方、長期借入の返済原資は利益と減価償却費です。よって、
赤字、かつ将来も利益がでる見込みがない場合は、返済原資が
ありませんので長期借入は困難です。

◆短期借入と長期借入のメリット・デメリット
短期借入の返済方法は期日一括返済であることが多く、期日に
期限を延長してもらえるならば、ずっと返済をしなくても良い
というメリットがあります。しかし、期日に期限を延長しても
らえなかった場合は、まとまった返済資金を用意しなくてはな
らない点がリスクです。

長期運転資金は毎月一定の約定返済があるため、計画的に返済
をしていくことが可能です。しかし、1,000万円の資金ギャッ
プを埋めるために1,000万円の借入をしても、約定返済分は資
金が不足しますので、実際に必要な金額よりも余分に借りなく
てはならないという点がデメリットです。

◆短期と長期どちらで調達を行うべきか
資金繰りの観点から考えると、毎月発生する資金ギャップ(経
常運転資金)は約定返済のない短期借入で調達し、利益は返済
に回さずにキャッシュに積み上げることで資金繰りは安定しま
す。投資回収に長い年月を要する設備投資や、更なる売上拡大
に挑戦するための運転資金(増加運転資金)は、利益が出るま
でに時間を要するため、長期借入で調達した方が資金繰りは安
定します。

■事業体の収益や拡張性は、事業立地(誰に何を売るのか?)
とビジネスモデルで大半が決まります。マネージメントやマー
ケティングの上手下手は、それらの下位の概念です。マネージ
メントやマーケティングを考える前に、事業立地(誰に何を売
るのか?)やビジネスモデルに着眼してください。
時間が経過するほど、事業立地(誰に何を売るのか?)とビジ
ネスモデルの差が顕在化します。
お尋ねします。貴社は1.受注型ですか、2.プロダクト型で
すか、3.ストアー型ですか、4.プラットフォーム型を狙っ
ていますか?

◆1.受注型とは、建設業などの請負業、下請けと呼ばれる製
造業、個別事案ごとに対応するコンサルタント業等、顧客の要
望を受けて個別に製品やサービスを提供するビジネスの型です。
突出した技術やスキル、または対応能力(キャパシティー)を
有している企業は、価格競争に巻き込まれにくく、大きな収益
を上げています。
一方、顧客ごとの対応が必要になり、ビジネスとしての定型化
が難しい、また、売上が発注先の意向に左右されやすいために、
ビジネスとしての拡張性に難があるといわれています。突出し
た技術やスキル、または対応能力(キャパシティー)を有して
いる企業以外は、発注元の意向に沿った納期・価格が設定され
てしまい、価格主導権を握れません。ボリュームの大きい(単
価の高い)建設業等を除いては、BIGカンパニーになりにく
いビジネスモデルです。

◆2.プロダクト型とは、自らのサービスを商品化・定型化し
て、顧客に採用(購入)の可否を選択してもらうビジネス形態
です。もちろん、提供する商品やサービスが選ばれるに値する
価値を有していなければなりません。故に、徹底的に磨き込ま
れた強い商品・サービスでなければなりません。一点特化・絞
り込みが必要です。
徹底的に磨き込まれた強い商品・サービスを自らの意志で開発
し販売するこの型は、経営が効率的で、収益性と拡張性を担保
できます。何より、価格主導権を自社が握ることになります。
(今までの)エクセレント企業の多くは、(配下に多くの受注
型企業を抱えた)このビジネスモデルです。

◎一般論として、事業体は受注型からプロダクト型に進化して
いきます。受注生産から自社ブランドの製品開発・販売への移
行は正統派の戦略です。受注型の建売建設業から自社ブランド
のハウスメーカーへの移行例は多くみられます。個別対応のコ
ンサルタント会社は、ノウハウを商品化してプロダクト型に移
行します。

◆3.ストアー型とは、プロダクト型の横への拡張型を指しま
す。プロダクトで成功した事業体は、規模の拡大のために、総
じて横展開を始めます。力があれば、その業容を拡大できます
が、力が無ければ、あれも、これも…総花的で、弱い商品・サ
ービスの集合体になり下がります。分散症候群を患います。商
品・サービスの品ぞろえは、自社の実力との兼ね合い、力相応
でなければなりません。総じて力以上に幅を広げすぎるケース
が多いように感じます。規模の拡大と共に、収益力の低下が懸
念されるビジネスモデルです。

◎多くの中小企業は、事業の拡大を狙ってプロダクト型からス
トアー型に移行する時に、その商品やサービスの幅を広げます。
しかし、その幅の拡大が売上の増大に比して大きいため、その
生産性を著しく引き下げる結果を招きます。繁盛貧乏に陥りま
す。そして、この状態で停滞しています。『選択と集中』とは、
ストアー型をプロダクト型に戻すことです。プロダクト型の企
業は、ストアー型に移行せず、プラットフォームの構築を狙う
べきとの持論を持っています。

◆4.プラットフォーム型とは、『関連事業者や顧客が集まる
「場」を自社が創る』モデルです。精鋭の経営者は、このプラ
ットフォーム型を狙っています。フェイスブック、楽天、アマ
ゾン、アップル…すべてプラットフォーム型です。
容易ではありませんが、自社が狙う極めてニッチな分野に限定
すれば、実現できる可能性はあります。狙ってみましょう。

◆5.さらに付け加えるなら、プラットフォームを構築できた
精鋭企業は、このプラットフォームを活用して金融事業をはじ
めます。大きな収益を稼ぎ出しています。最後は金融事業です。

◎受注型はプロダクト型へ、ストアー型もプロダクト型へ、プ
ロダクト型はプラットフォームの構築を狙ってください。

■事業立地を見直して、かつ、ビジネスの型を転換する!

事業の立地、立ち位置をよく確認してください。
一歩隣を掘ってみませんか。
(僭越ながら)当事務所は、税務を担う「税理士」事務所に対
して、税務+財務を担う「新・税理士」業務を営んでいます。
「税理士」事務所は星の数ほどありますが、「新・税理士」は
極小です。これが事業立地の見直し、ポジショニングチェンジ
です。貴社にも応用できるはずです。
受注型の企業は、高付加価値、アッパーニッチの自社商品・サ
ービスを開発してプロダクト型企業に転身してください。収益
力と規模の拡大の両方を手中に収めることができるかもしれま
せん。ストアー型の企業は、絞り込んで(Simple化)プロダク
ト型企業に戻してください。分散を是正することで会社が劇的
に変わります。その上で、プラットフォームの構築を目指して
ください。

■経営者の仕事は、事業立地とビジネスモデルの検証・構築以
外にありません。

経営者の仕事は何?あれもこれも…たくさんありますが、重要
度で下位から消去して最後に残るのは、「事業立地とビジネス
モデルの検証・構築」です。であるにも関わらず、大半の経営
者はこれらの仕事をぞんざいにしています。創業時に考えたビ
ジネスモデルや、親から受け継いだビジネスモデルを進化・発
展させることなくただただ継続しています。ビジネスモデルは
時間と共に風化し、当然企業体も寿命を終えることになります。
最後にもう一度申し上げますが、経営にとって最も大切なのは
「事業立地とビジネスモデルの検証・構築」です。是非この機
会に仕事の優先順位を変えてください。「事業立地とビジネス
モデル」を少し変更することで、会社全体の生産性が2倍にな
るかも知れません。

金融機関対応に関して、よく頂戴するご質問と回答事例をまと
めました。回答は、あくまでも金融機関との円滑な関係構築を
目的としたものであり、税務面や経営面から見た場合は、また
違った回答になるかもしれません。ご了承願います。

Q:税務調査で指摘を受け多額の追徴課税を支払った。銀行は
今後も融資をしてくれるのか。
A:税務調査の指摘の多くは利益の過少申告ではないでしょう
か。過去の帳簿が間違っていたという点において、決して
ポジティブな事ではありませんが、実際はもっと利益が出
ていたということですので、その後の融資に影響を与える
ことはあまりありません。

Q:会社の資金でビットコインを購入しても問題はないか。
A:問題があります。事業資金として借りたお金を、事業以外
のことに使用した場合は資金使途違反です。多くの方が、
借りたお金ではなく自己資金を運用しているだけと主張さ
れますが、金融機関は堅実経営を好みますので、よほどの
余剰資金でない限り、投機的な経営姿勢そのものをネガテ
ィブに捉えます。

Q:立派な事業計画書を作成したにも関わらず融資を断られた。
A:融資審査において、最もプライオリティが高いのは、「未
来の計画」ではなく「過去の実績」です。未来は過去の延
長線上にありますので、机上の計画よりも、過去の実績を
しっかりと検証した方が、未来を正しく予測できるという
考え方なのでしょう。よって、過去の実績が当落線上より
も低い場合は、残念ながら、どんなに立派な事業計画書で
あっても効果的ではありません。事業計画書が効果を発揮
するのは、過去の実績が当落線上にある場合、もしくは、
過去の実績に比較して大きな金額を調達しようとしている
場合です。

Q:金利が安い金融機関に借り換えをしても問題ないか。
A:金額にもよりますが、一括返済、他行への乗り換えという
行為は、企業側が考えるよりも大きな影響を金融機関に与
えます。大変難しい判断です。企業として、経済合理性で
判断するのは正しいことですが、多少の金利の違いだけで
コロコロと金融機関を変える企業は好かれません。業績が
好調な間はそれでも金融機関はついてくると思いますが、
業績が落ち込んだ時に頼れる金融機関を失くしてはいけま
せん。金融機関は仕入先と同等と考え、どこかひとつは、
しっかりと信頼関係を築いておくことをおすすめします。

税務に付加して、金融機関対応と財務に対する強みを有するこ
とを宣言する当事務所には、様々な相談が寄せられます。前回
に続いて、一部をご紹介させていただきます。

■Q13:
「売上が安定しない。いつも不安がつきまとう。」

◆A13:
「売上が安定しない。いつも不安がつきまとう。」創業当初か
ら順調に業績を伸ばされ、初年度から2億円近い売上(税引き
前利益は700万円超です。)を計上された社長様からのご相
談です。極めて順調な立ち上がりですが、300万円の資本金
と、創業融資700万円、売上の割には小資本です。

○「再来月の売上が読めない。万が一、売上が急激に減少すれ
ば倒産するのではないか?日々不安だ。」とおっしゃっておら
れます。

・売掛金の回収サイトを、買掛金の支払いサイトよりも早く設
定することで、増加の運転資金を伴わない成長を実現されてい
ます。
・月末の現預金残高は多いように見えますが、月中は極小にな
っています。不安なはずです。

○近未来の資金繰りシミュレーションを当事務所で実施しまし
た。
※この「近未来の資金繰りシミュレーション」については、随
時対応させていただきます。ご相談ください。社長様の安心材
料になります。または、問題点が確認できます。

・最悪な状況、売上高が前年比で通年20%ダウン(社長様コ
メント)した時の近未来の資金繰り状況は?
〈結果〉赤字転落しますが、一年以内に資金繰りが切れること
はない。

・粗利益率が2%上がった(当事務所提示)時の資金繰り状況
は?
〈結果〉社長様の想定以上に資金繰り・利益が増えることの気
付き。

・当事務所より、資金調達計画を提示して、即刻資金調達でき
る(可能性大)旨を伝えて、この資金調達計画を資金繰り計画
に織り込みます。
〈結果〉社長様の不安の払しょくと、成長への確信を持たれる。

・新規の雇用計画、固定費増を織り込んで、近未来の資金繰り
計画を立案しました。
〈結果〉売上10%増、粗利益率2%増、固定費1,000万
円増…、資金調達3,000万円

○資金調達と継続的なフォローが重要です。

・上記計画に対する進捗管理を毎月行います。計画にずれがあ
れば、都度社長様と対応を協議します。
・必要な資金調達に関しては、当事務所が窓口になって適時行
います。
・資金のダムを作って、そのダムの高さを維持し続けています。
常に、月商の数か月分の資金を有しています。
・トラブルで、受注が一定期間滞った期間がありましたが、資
金余力があったために、慌てずに対応することができました。

◎当事務所は、上記の様なサービスをご提供できます。税務に
付加して、金融機関対応を含む財務の機能を提供する「資金繰
り円滑化サービス=財務部長の代行業務」です。貴社も是非導
入してください。

■Q14:
「資金繰りに時間が取られる。いつも気を使っている。」

◆A14:
余裕資金をほとんど持ち合わせていないために、月中の資金繰
りを行っておられます。10日の入金を15日の支払いに…、
日々の資金残高を気にしながらやりくりされておられます。
当所で診断した結果、借入れ余力は十分にあります。

○借入れ余力があるにもかかわらず、手持ち資金を極小にして、
その結果資金繰りに時間と神経を使っておられる社長様は少な
くありません。

・借入れに対する過度の嫌悪感がそうさせているのでしょうか?
・資金繰りを行うことも社長の仕事だと考えておられるのでし
ょうか?
・金利のコストが、社長の手間暇、社長が神経をすり減らすこ
とより高いと考えておられるのでしょうか?
・何かが起これば、最悪倒産の危機を迎えます。このリスクを
どう回避するのでしょうか?

◎月商の2か月分程度の資金を、通年を通して持ち続ける資金
計画を作成し、運転資金の調達、継続管理、借換えの継続実施
を当事務所が行っています。今では、「常に資金繰りを気にし
ながら生きてきた…早くこうすべきだった。」(社長様)とお
っしゃっておられます。
税務に付加して、金融機関対応を含む財務の機能を提供する
「資金繰り円滑化サービス=財務部長の代行業務」です。貴社
も是非導入してください。

政治家を通じて融資の口利きを依頼するという話を、しばしば
耳にしますが、実際のところ効果はあるのでしょうか。先日ご
相談をお受けした事例をご紹介します。

ホームページを見て来所されたA社長のご相談内容は、「資金
調達が上手く行かない・・・」ということでした。決算書を確
認したところ、融資を断られる原因であろう財務内容の問題点
が見つかりました。ただ、事業計画書を作成して説明をすれば、
資金調達の可能性はゼロではないと判断できるものです。

早速、事業計画書を作成して銀行を訪問しました。担当者は
30歳手前の若い方でしたが、要領を得た受け答えができる大
変印象の良い方でした。

まずは、財務分析結果をお見せしながら、銀行がどのように判
断しているかを確認していきます。結果、銀行が懸念している
点は、弊所にて事前に想定していた通りであることが分かりま
した。よって、次に事業計画書をお見せし、財務面の課題を解
決するストーリーを説明しました。

担当者は、「このストーリーなら本部を説得できるかもしれな
い。」と理解を示しましたが、その後、「ただ問題は・・・」
と神妙に話を切り出しました。話の主旨は次のとおりです。

・数か月前に県会議員が訪れてきて、同社に融資をするよう依
頼して帰った。
・その後、本部の方にも金融庁から連絡が入った。
・そのような形で圧力をかけてくるA社長に対して、支店長が
相当立腹しているため、当面は融資の検討すら難しいかもし
れない。

政治家に融資の口利きをしてもらうという事案は、コンプライ
アンスが厳しくなった近年では、かなり減っていると感じます。
また、その効果についても、政府系金融機関であれば少しは影
響力があるかもしれませんが、民間の金融機関に至っては、殆
ど効果はないと思います。

金融機関は、人が審査をするのではなく、仕組みで審査をする
方向に舵を切ってきましたので、仕組みで出した評価から大き
く逸脱する案件を取り上げることは難しくなっています。

無理に押し込もうとするのではなく、仕組みにアジャストでき
るよう、計画書等の説明資料を準備する方が効果的なようです。

税務に付加して、金融機関対応と財務に対する強みを有するこ
とを宣言する当事務所には、様々な相談が寄せられます。
前回に続いて、一部をご紹介させていただきます。

■Q11:
「新しい投資計画書を示しながら新規の融資を打診したが、計
画書の内容を確認するまでもなく、『融資は難しいです。(銀
行担当者)』」と言われた。

◆A11:
精魂込めて作り上げた投資計画書を確認してもらえない段階で、
融資を断られたことに納得がいかない様子の相談者様でしたが
…金融機関は、新規の融資を検討する時、まず、直近の決算書
(及び試算表)を確認します。この決算書と足元の推移が健全
であると判断した時に、新規融資の検討を開始します。健全で
なければ、新規融資の検討自体を行いません。

○直近の決算書(及び試算表)の確認方法は…
1.直近の決算書から簡易キャッシュフロー(税引き後利益+
減価償却費)を確認します。この簡易キャッシュフローの金額
が、現時点の借入総額の10分の1以上であることが最低条件で
す。
2.債務超過でないことが必要です。
※1又は2が突出して優良な時、または、提供できる担保があ
る場合など、上記の限りではありません。上記はあくまでも簡
易的な診断です。実際には、突っ込んだ財務分析を行います。

○1と2を満たす時、現時点においては健全である…と判断さ
れて、新規融資の検討、投資計画書の確認を始めます。直近の
決算書の確認で融資できないとなれば、当然投資計画書の確認
は行いません。

◎当事務所にて、診断を行った結果、新規融資を受けられる可
能性は極めて低いことがわかりました。相談者様に対しては、
融資を受けられない理由、どうなれば融資を受けられるのかを
ご説明して納得いただきました。

■Q12:
「リスケジュールの交渉中だが、直近に借入れた銀行分だけは、
返済額も少ないので返済を続けようと考えていたが、他の金融
機関が強硬に反対してきた。ダメなのか?」

◆A12:
数カ月前に融資を受けたばかりの金融機関にリスケジュールの
相談をしたら、厳しい口調で叱責されたそうです。であるなら
ば、その金融機関に対しては返済を続けて、他の金融機関には
リスケジュールをお願いしようと他の金融機関に相談したら、
他の金融機関に断られた、との相談です。

○融資の借入れを行ってすぐに返済猶予を求めることは、そも
そも返済できないことがわかっていたのに借入れを行ったので
はないか、との疑念を生みます。返済できないことがわかって
いて借入れを起こす行為は、信義に反します。程度加減によっ
ては法律に違反する犯罪行為になります。新規借り入れ直後の
返済猶予は認められないケースがあります。

○金融機関に対して返済猶予などの金融支援を依頼する時は、
衡平でなければならないとするルール「衡平性の原則※」
(=すべての金融機関に対して衡平に金融支援を受ける。)
が適用されます。ある金融機関にのみ返済を続ける、このよう
な例外は原則成立しません。この場合は、返済猶予依頼先の金
融機関の同意が得られません。
このままでは、すべての借入れに対してリスケジュールができ
ません。
※一部例外があります。

◎当事務所にて、状況の確認を行った結果、当該事象は、直近
借入後の予見不可能な緊急事態による急激な業績の悪化が原因
であり、借入れ時においては予見が難しかった旨を、対象金融
機関に丁寧に説明しました。一部担保(実質価値は小さい)を
追加で提供して了解を得ました。(これも厳密に言うと「衡平
性の原則」から外れますが。)
借入先の全金融機関からリスケジュールの承諾を得ることがで
きました。
当事務所が、モニタリングを継続し、会社様のサポートと金融
機関への窓口業務を担っています。

弊所の顧問先様で、創業から順調に業績を伸ばしているA社が
あります。もちろん営業的な面が上手く行っていることが主な
要因ですが、借入れをしなくても資金繰りに困らない取引条件
でビジネスをスタートできたことも大きな要因です。

信用力が低く銀行借入れが困難なスタートアップ企業は、仕入
や人件費等の支払日より、売上金の入金が先にくるよう、販売
先や支払先と交渉しなくてはなりません。もし支払日が1日で
も前になってしまえば、売上金が入金されるまでの立替資金が
必要になるため、銀行等の協力が成長の絶対条件となってしま
います。

A社は、売上は末締めの翌月末回収である一方、仕入は25日締
め翌々月5日払いとしています。毎月末日に回収した資金を5日
の支払資金に充てることができるため、銀行の協力がなくても
大きく売り上げを伸ばすことができました。

他にも、支払日を翌月にずらすメリットはあります。月末時点
の現預金残高が大きくなるというメリットです。たとえ5日後
には現預金残高が半減するとしても、試算表等は末日で作成し
ますので、試算表の上では、現預金の残高が膨らみます。当然
買掛金も膨らむため、安全性分析ではそれほど変わりませんが、
単純に現預金残高を評価する金融機関もあるため、財務面でも
有効です。

もうひとつA社が優れている点は、仕入の平均支払サイトを55
日にできた点です。A社の代表は支払日を5日後ろにずらすだ
けでなく、締日を5日前にする交渉も行いました。結果は同じ
はずですが、支払日を10日伸ばす交渉よりも、支払日を5日伸
ばして締日を5日前倒しする交渉の方が通りやすかったようで
す。

この10日は中小企業にとって大変大きなインパクトがあります。
「支払を先延ばししたところで、いつかは払わなくてはならな
いのだから一緒でしょう?」とおっしゃる方もいらっしゃいま
すが、企業は永遠に生き続けますので、払わなくてはならない
日は訪れません。

月の仕入額が1,000万円であれば10日分の333万円は永遠に買掛
金となります。仕入額1億円になれば3,333万円です。無利子か
つ返済不要の借入と同じ効果です。

取引条件に強く拘っている中小企業様は少ないと感じます。
取引条件がキャッシュフローに与える影響をしっかりと理解し、
もっと強く拘ってみてはいかがでしょうか。